特許第6222489号(P6222489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222489
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   G03G15/20 535
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-77519(P2015-77519)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197197(P2016-197197A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】福永 靖幸
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−91224(JP,A)
【文献】 特開2011−191572(JP,A)
【文献】 実開昭55−79350(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G13/20
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材と、
上記定着部材に圧接し、未定着トナー像を担持した用紙を上記定着部材との間に挟持して用紙上に未定着トナー像を溶融して定着するニップ部を形成する加圧部材と、
上記ニップ部のニップ圧を調整するニップ圧調整機構とを備えた定着装置であって、
上記ニップ圧調整機構は、
上記加圧部材を一端側に回転自在に支持するアーム部材と、
上記アーム部材の他端側を押圧して上記加圧部材を上記定着部材に押し付ける圧縮バネと、
上記アーム部材の他端側に並設され、上記圧縮バネのバネ圧で上記アーム部材と共に押圧されるレバーと、
上記レバーに回転自在に支持されたコロと、
上記レバーの側方に回転可能に並設され、上記コロと当接する偏心カムと、
上記偏心カムに駆動力を伝達して該偏心カムを回転させる駆動ギヤ列と、
を備え、
上記偏心カムは、最大半径部と、該最大半径部から離れた位置に設けられ凹部の底面で構成された最小半径部とを有し、
上記加圧部材は、上記コロが上記凹部に対向すると、上記圧縮バネのバネ圧で上記レバー及びアーム部材を介して上記定着部材に圧接し、上記コロが上記最大半径部に対向すると、上記圧縮バネのバネ圧に抗して上記レバー及びアーム部材を介して上記定着部材から離れる方向に移動することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
上記凹部は、回転方向上流側の深さが、回転方向下流側の深さよりも深いことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、
上記コロが上記最小半径部に対向している状態で、上記コロと上記凹部底面との間に隙間が形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラーや定着ベルト等の定着部材と加圧ローラー等の加圧部材との圧接により形成されるニップ部のニップ圧を調整するニップ圧調整機構を有する定着装置、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている定着装置は、例えば封筒等を通紙した時のしわ防止や、定着ローラーが長時間圧接された状態で放置されることで発生する凹状の永久歪み、いわゆるCセット現象を防止するためにニップ部のニップ圧を調整するニップ圧調整機構を備えている。
【0003】
このニップ圧調整機構は、偏心カムを駆動ギヤ列を介してモーターにより180°反転させて最小半径部と最大半径部とに切り替えることで、加圧ローラーを定着ローラーに押し付ける圧縮バネのバネ圧を増減させてニップ部の圧力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−201976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のニップ圧調整機構では、偏心カムが最小半径部から最大半径部に切り替わる方向に回転する場合には、圧縮バネは徐々に伸びるため、偏心カムはモーターの停止と同時にその位置に止まる。
【0006】
しかし、これとは逆に、偏心カムが最大半径部から最小半径部に切り替わる方向に回転する場合には、圧縮バネのバネ圧が解放されるため、その反発力により偏心カムが先回しされて、モーターが回転させる以上に偏心カムが回転してしまい、所定のニップ圧が得られないおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、偏心カムを規定の停止位置に停止させてニップ圧を安定化することで、定着性能を向上させた定着装置、及びそれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る定着装置は、定着部材と、上記定着部材に圧接し、未定着トナー像を担持した用紙を上記定着部材との間に挟持して用紙上に未定着トナー像を溶融して定着するニップ部を形成する加圧部材と、上記ニップ部のニップ圧を調整するニップ圧調整機構とを備えている。上記ニップ圧調整機構は、上記加圧部材を一端側に回転自在に支持するアーム部材と、上記アーム部材の他端側を押圧して上記加圧部材を上記定着部材に押し付ける圧縮バネと、上記アーム部材の他端側に並設され、上記圧縮バネのバネ圧で上記アーム部材と共に押圧されるレバーと、上記レバーに回転自在に支持されたコロと、上記レバーの側方に回転可能に並設され、上記コロと当接する偏心カムと、上記偏心カムに駆動力を伝達して該偏心カムを回転させる駆動ギヤ列と、を備え、上記偏心カムは、最大半径部と、該最大半径部から離れた位置に設けられ凹部の底面で構成された最小半径部とを有し、上記加圧部材は、上記コロが上記凹部に対向すると、上記圧縮バネのバネ圧で上記レバー及びアーム部材を介して上記定着部材に圧接し、上記コロが上記最大半径部に対向すると、上記圧縮バネのバネ圧に抗して上記レバー及びアーム部材を介して上記定着部材から離れる方向に移動する。
【0009】
この構成によれば、偏心カムが最大半径部から最小半径部に切り替わると、コロが凹部に対向するため、圧縮バネのバネ圧が解放されても、その反発力により偏心カムが先回しされることがなく、偏心カムはモーターが回転させる以上には回転せず、規定の停止位置に停止する。したがって、安定したニップ圧が得られ、定着装置の定着性能が向上する。
【0010】
この場合、上記凹部は、回転方向上流側の深さが、回転方向下流側の深さよりも深いことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、コロがスムーズに凹部に対向する一方、偏心カムの回転し過ぎが確実に防止される。
【0012】
また、上記コロが上記最小半径部に対向している状態で、上記コロと上記凹部底面との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、圧縮バネのバネ圧が損失なく加圧部材に掛かる。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、上記定着装置を備えている。
【0015】
この構成によれば、定着性能の向上した定着装置を備えた画像形成装置となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コロが偏心カムの凹部に対向することで、圧縮バネの反発力によりカムが先回しされてモーターが回転させる以上に偏心カムが回転してしまう事態が解消され、偏心カムを規定の停止位置に停止させて安定したニップ圧により定着性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、画像形成装置の内部構造を示す概略図である。
図2図2は、定着装置の外観斜視図である。
図3図3は、定着装置の内部構造を示す断面図である。
図4図4は、図3のA部拡大図である。
図5図5は、偏心カムの拡大図である。
図6図6は、定着装置の駆動構成を示す斜視図である。
図7図7は、定着ローラー回転時の動力伝達の説明図である。
図8図8は、図7の状態からニップ圧を低減ないし解除する態勢を整えた状態の動力伝達の説明図である。
図9図9は、図8の状態からニップ圧を低減ないし解除した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、画像形成装置1を示し、本例では胴内排紙方式のタンデム型カラー複写機である。この画像形成装置1は、下側装置本体2と上側装置本体3とを備えている。
【0020】
下側装置本体2内には、給紙部4、画像形成部5及び定着装置6等が収容され、上側装置本体3内には、画像読取部7が収容されている。下側装置本体2と上側装置本体3との間には、排紙空間8が形成され、排紙空間8には、用紙排出トレイ9が設けられている。
【0021】
給紙部4から排紙空間8に至る用紙搬送経路Lには、用紙Pを挟持して搬送する複数の搬送ローラー10が配置されている。
【0022】
給紙部4は、用紙Pが収容される給紙カセット11と、給紙カセット11内の用紙Pを取り出して用紙搬送経路Lに送り出すためのピックアップローラー12とを有している。給紙カセット11より送り出された用紙Pは、搬送ローラー10により画像形成部5に供給される。
【0023】
画像形成部5は、図1右側から順にマゼンタ用、シアン用、イエロー用及びブラック用と並べられた4つの画像形成ユニット13M,13C,13Y,13Kを備え、これら画像形成ユニット13M,13C,13Y,13Kの上方には、無端状の中間転写ベルト14が駆動ローラー15とテンションローラー16に張架されて配置されている。
【0024】
各画像形成ユニット13M,13C,13Y,13Kは、像担持体である感光体ドラム17を備え、感光体ドラム17の周囲に現像器18、露光装置19、帯電器20及びクリーニング装置21が配置されている。
【0025】
帯電器20は、感光体ドラム17の周面を一様に帯電させる。露光装置19には、図示しないレーザー光源、ポリゴンミラー等が設けられ、レーザー光源から出射されたレーザー光が、ポリゴンミラーを介して感光体ドラム17の周面に照射される。照射されたレーザー光により、感光体ドラム17の周面に所定の画像データ(例えば画像読取部7にて読み取った原稿画像のデータ)に応じた静電潜像が形成される。現像器18は、感光体ドラム17の周面の静電潜像にトナーを供給してトナー像として顕像化する。
【0026】
感光体ドラム17は、中間転写ベルト14に下方から接触し、1次転写ローラー22で中間転写ベルト14に圧接して1次転写部を形成している。この1次転写部において、中間転写ベルト14の回転とともに、所定のタイミングで各感光体ドラム17のトナー像が中間転写ベルト14に順次転写される。これにより、中間転写ベルト14の表面には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたトナー像が形成される。
【0027】
クリーニング装置21は、転写後の感光体ドラム17の周面に付着残存したトナーを清掃する。なお、図示しないが、感光体ドラム17の周囲には、感光体ドラム17の周面の残留電荷を除去する除電器が配置されている。これらにより、画像形成部5が構成されている。
【0028】
用紙搬送経路Lの定着装置6下方には、バイアス電位が印加された2次転写ローラー23が駆動ローラー15と対向して配置され、2次転写ローラー23は、駆動ローラー15とで中間転写ベルト14を挟んで中間転写ベルト14に圧接して2次転写部を形成している。この2次転写部において、中間転写ベルト14の表面のトナー像が用紙Pに転写され、転写後の用紙Pは定着装置6に供給される。転写後に、図示しないベルトクリーニング装置が中間転写ベルト14に残存するトナーを清掃する。
【0029】
定着装置6は、定着ハウジング24内に収容された定着ローラー(定着部材)25及び加圧ローラー(加圧部材)26を備えている(図2及び図3参照)。定着ローラー25は、熱源であるハロゲンヒーターを内蔵し、このハロゲンヒーターにより加熱される。加圧ローラー26は定着ローラー25に圧接され、両者間にニップ部N(図1参照)が形成される。画像形成部5から定着装置6に供給された,未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着ローラー25と加圧ローラー26との間のニップ部Nで挟持されて加熱及び加圧されることにより、用紙P上に未定着トナー像を溶融して定着させる。
【0030】
定着装置6にてトナー像が定着された用紙Pは、定着ローラー25及び加圧ローラー26により用紙搬送経路Lの下流側へと送り出され、搬送ローラー10により排紙空間8の用紙排出トレイ9に排出される。
【0031】
加圧ローラー26の両端には、図3に示すように、支軸27が突出し、支軸27はベアリング28に支持されている。ベアリング28は、上下に延びるアーム部材29の上端側に固定されている。アーム部材29の上端は、回動軸(図示せず)で定着ハウジング24に支持され、アーム部材29は、加圧ローラー26を上端側に回転自在に支持して回動軸を支点に上下に回動するようになっている。
【0032】
定着ハウジング24内の下端には、固定板30が取り付けられ、固定板30には、水平に延びる伸縮自在な板状のバー31の一端(図3左端)が固定されている。バー31の他端(図3右端)側には、横方向(紙面表裏方向)に広い幅広部31a(図7図9参照)が形成され、幅広部31aには、挿入孔31b(図7図9参照)が形成され、アーム部材29先端が挿入孔31bにバー31長手方向に遊びをもって挿入されている。バー31の他端(図3右端)は幅狭になっていて、後述するレバー34下端側を貫通してレバー34に支持されている。
【0033】
バー31には、下側圧縮バネ32が巻装されている。下側圧縮バネ32は、固定板30とバー31の幅広部31aの端縁31cとの間に縮装されて、バネ圧でバー31を伸ばし、アーム部材29の下端側をバー31で押圧してアーム部材29を回動軸を支点に図3で反時計回りに回動させ、加圧ローラー26を定着ローラー25に押し付けるようになっている。
【0034】
下側圧縮バネ32の上方近傍には、上側圧縮バネ33が並設され、上側圧縮バネ33の一端(図3左端)は固定板30に固定されているとともに、他端(図3右端)はアーム部材29に固定されている。この上側圧縮バネ33は、下側圧縮バネ32がほぼ伸びきっているときに下側圧縮バネ32の1/10程度の弱いバネ圧でアーム部材29を図3で反時計回りに押圧するようになっている。
【0035】
アーム部材29下端側で下側圧縮バネ32及び上側圧縮バネ33と反対側には、図4に拡大して示すように、上下に延びるレバー34が並設され、レバー34の上端は、定着ハウジング24の固定側24aに支持され、レバー34が下側圧縮バネ32のバネ圧でアーム部材29と共に押圧されて上下に回動するようになっている。また、レバー34にはコロ35が軸36で回転自在に支持されている。
【0036】
レバー34の反アーム部材29側の側方には、コロ35と当接する偏心カム37が回転可能にカム軸38に支持されて並設されている。偏心カム37は、図5に拡大して示すように、カム軸38から遠い最大半径部R1と、最大半径部R1から180°離れた位置に設けられカム軸38に近い最小半径部R2とを有し、最大半径部R1は、コロ35の位置がばらついても最大半径部R1からはみ出さないように中心角θが約60°の幅をもって構成されている。
【0037】
偏心カム37の最小半径部R2は、凹部39の底面で構成され、コロ35が最小半径部R2に対向すると、コロ35の一部が凹部39に嵌るようになっている。これにより、偏心カム37が最大半径部R1から最小半径部R2に切り替わると、下側圧縮バネ32のバネ圧が解放されてコロ35が勢いよく凹部39に嵌り、下側圧縮バネ32の反発力によりコロ35が凹部39から飛び出そうとするが、凹部39の側壁でコロ35の飛び出しが規制される。したがって、コロ35は最小半径部R2を行き過ぎることなく、最小半径部R2に安定して止まり、偏心カム37の先回しが防止されて偏心カム37は後述するモーターが回転させる以上には回転せず、規定の停止位置に停止するため、ニップ圧の安定化が図られ、定着装置6の定着性能を向上させることができる。
【0038】
偏心カム37は、図5で凹部39より下側(回転方向上流側)が登り傾斜面37aに、凹部39より上側(回転方向下流側)が下り傾斜面37bにそれぞれ形成されている。凹部39の登り傾斜面37aの深さD1が、凹部39の下り傾斜面37bの深さD2よりも深いため、偏心カム37は非対称形になっている。これにより、コロ35を図5で矢印のように時計回りに回転した偏心カム37の凹部39にスムーズに対向させることができる一方、偏心カム37の回転し過ぎを防止することができる。また、下り傾斜面37bの深さD2が登り傾斜面37aの深さD1よりも浅くなっていることで、下り傾斜面37bが緩やかになり、偏心カム37が最大半径部R1から最小半径部R2に切り替わる際に、偏心カム37が先回しされる力を最小限に抑えることができる。
【0039】
そして、コロ35が凹部39(最小半径部R2)に対向すると、図3及び図4に示すように、バー31が下側圧縮バネ32のバネ圧で伸びてレバー34が図3で反時計回りに回動する。これに伴ってアーム部材29が回動軸を支点に図3で反時計回りに回動することで、加圧ローラー26がレバー34及びアーム部材29を介して定着ローラー25に圧接し、ニップ部Nで所定のニップ圧を発生させるようになっている。このコロ35が最小半径部R2に対向している状態で、コロ35と凹部39底面(最小半径部R2)との間に隙間Cが形成される(図4参照)。これにより、下側圧縮バネ32のバネ圧を損失なく加圧ローラー26に掛けることができるようになっている。
【0040】
一方、コロ35が最小半径部R2と180°反対側の最大半径部R1に対向すると、レバー34が最大半径部R1に押されて時計回りに回動し、バー31を下側圧縮バネ32のバネ圧に抗して縮める。これに伴ってアーム部材29が回動軸を支点に図3で時計回りに回動することで、加圧ローラー26がレバー34及びアーム部材29を介して定着ローラー25から離れる方向に移動し、ニップ部Nのニップ圧が低減ないし解除されるようになっている。
【0041】
このようなニップ圧の調整は、上述したアーム部材29、バー31、下側圧縮バネ32、上側圧縮バネ33、レバー34、コロ35及び偏心カム37等を含むニップ圧調整機構100により行われる。
【0042】
ニップ圧調整機構100は、偏心カム37に駆動力を伝達して該偏心カム37を回転させる図6図9に示すような駆動ギヤ列をも備えている。すなわち、図示しないモーター(ステッピングモーター)に連結された駆動入力ギヤ40、定着ローラー25に一体で回転するように取り付けられた定着ローラーギヤ41、偏心カム37に一体で回転するように取り付けられたカム駆動ギヤ42、駆動入力ギヤ40の回転動作に追従して移動する遊星ギヤ43、及び駆動入力ギヤ40と遊星ギヤ43との間に配置された中間ギヤ44,45を備えている。駆動入力ギヤ40には、ワンウェイクラッチ(図示せず)が内蔵されている。カム軸38には、アクチュエーター(図示しない)が取り付けられていて、このアクチュエーターをPIセンサー(Photo Interrupter Sensor)(図示しない)で検知することで、偏心カム37の向きを180°反転制御する。
【0043】
そして、通常の定着ローラー25回転時には、モーターから駆動入力ギヤ40に反時計回りに回転駆動力が入力され、遊星ギヤ43がカム駆動ギヤ42から離れてカム駆動ギヤ42との噛み合いが解消される。また、駆動入力ギヤ40に内蔵されたワンウェイクラッチが噛み合い方向に回転され、駆動入力ギヤ40の回転駆動が図7で矢印で示すように定着ローラーギヤ41に伝達される。この段階では、偏心カム37は、図3及び図4に示すように、最小半径部R2をコロ35に対向させてコロ35の一部が凹部39に嵌っていて、アーム部材29及びレバー34が下側圧縮バネ32のバネ圧で反時計回りに回動して加圧ローラー26を定着ローラー25に押し付け、ニップ部Nに所定のニップ圧を発生させている。
【0044】
一方、封筒等を通紙した時のしわ防止や、定着ローラー25のCセット現象防止のためにニップ部Nのニップ圧を調整する際には、モーターから駆動入力ギヤ40に時計回りに回転駆動力が入力され、遊星ギヤ43がカム駆動ギヤ42に接近してカム駆動ギヤ42と噛み合う。また、駆動入力ギヤ40に内蔵されたワンウェイクラッチが滑り方向に回転され、駆動入力ギヤ40の回転駆動が図8及び図9で矢印で示すように中間ギヤ44,45から遊星ギヤ43を経てカム駆動ギヤ42にだけ伝達される。カム駆動ギヤ42の回転により偏心カム37が180°回転し、コロ35が凹部39から脱して偏心カム37の最大半径部R1がコロ35に対向する。これにより、アーム部材29及びレバー34が、図8から図9に示すように、下側圧縮バネ32を縮めながら時計回りに回動して加圧ローラー26を定着ローラー25から離れる方向に移動させ、ニップ部Nのニップ圧を低減ないし解除する。
【0045】
この状態から、偏心カム37を最大半径部R1から最小半径部R2に切り替える際に、上述の如くコロ35が凹部39に対向して偏心カム37の先回しを規制して偏心カム37を規定の停止位置に停止させることができるので、安定した定着機能を有する定着装置を備えた画像形成装置1を得ることができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、定着装置6として、ローラー定着方式を例示したが、これに限定されるものではなく、ベルト定着方式に適用できるのは言うまでもない。
【0047】
また、上記実施形態では、画像形成装置1がカラー複写機である場合を示したが、これに限らず、カラープリンター、モノクロ複写機、モノクロプリンター、デジタル複合機、ファクシミリ等、種々の画像形成装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、定着ローラーや定着ベルト等の定着部材と加圧ローラー等の加圧部材との圧接により形成されるニップ部のニップ圧を調整するニップ圧調整機構を有する定着装置、及びそれを備えた画像形成装置について有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 画像形成装置
6 定着装置
25 定着ローラー(定着部材)
26 加圧ローラー(加圧部材)
29 アーム部材
32 下側圧縮バネ
34 レバー
35 コロ
37 偏心カム
39 凹部
40 駆動入力ギヤ
41 定着ローラーギヤ
42 カム駆動ギヤ
43 遊星ギヤ
44,45 中間ギヤ
100 ニップ圧調整機構
C 隙間
D1 凹部の回転方向上流側の深さ
D2 凹部の回転方向下流側の深さ
N ニップ部
P 用紙
R1 最大半径部
R2 最小半径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9