特許第6222496号(P6222496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222496サージ防護装置およびサージ防護装置を搭載したフィールド機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222496
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】サージ防護装置およびサージ防護装置を搭載したフィールド機器
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02H9/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-30148(P2016-30148)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-147909(P2017-147909A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】突合 利哉
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−082454(JP,A)
【文献】 実開昭58−076154(JP,U)
【文献】 特開平07−212971(JP,A)
【文献】 特開平08−212905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/02−7/22
H02H 3/08−3/253
7/00
7/10−7/20
9/00−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電源端子を備えるフィールド機器に搭載するサージ防護装置であって、
前記電源端子に電源ケーブルとともに接続される一対の端子金具と、
前記一対の端子金具と接続する2つの極と、前記2つの極間にサージ電圧が印加された場合にサージ電流を流す接地極とを有するサージ防護素子が実装された回路基板と、
前記接地極に接続されたアース配線用ケーブルと、
前記回路基板を収容し、前記一対の端子金具と前記アース配線用ケーブルとが外部に突出した本体部と、
を備え
前記一対の端子金具は、前記アース配線用ケーブルの延伸方向に並ぶとともに、根元から先端方向が前記延伸方向に対して斜めになっていることを特徴とするサージ防護装置。
【請求項2】
前記回路基板には、前記一対の端子金具が直接取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のサージ防護装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサージ防護装置が搭載され、前記少なくとも一対の電源端子が内部に設けられたケース本体を備えるフィールド機器であって、
前記サージ防護装置が、前記ケース本体内部に収められていることを特徴とするフィールド機器。
【請求項4】
前記ケース本体内部に、前記一対の電源端子が配置された電源端子台部と、前記電源端子以外の端子が配置された他端子台部とを備え、
前記電源端子台部の高さと、前記他端子台部の高さとが異なることを特徴とする請求項3に記載のフィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド機器の電源端子に接続可能なサージ防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フィールド機器は電源端子を備えており、電源端子に電源ケーブルを接続することで動作に必要な電力の供給を受ける。2線式伝送器であれば、電源ケーブルが4−20mAの範囲で可変する電流出力信号ケーブルを兼ねることになる。
【0003】
電源ケーブルには、落雷や高電圧設備の影響等により、サージ電圧と呼ばれる瞬間的で大きな異常電圧が混入する場合がある。このサージ電圧からフィールド機器を保護するためにサージ防護装置(避雷器、アレスタ、サージアブソーバ、過渡保護装置等とも呼ばれる)が用いられる。
【0004】
サージ防護装置は、フィールド機器の回路基板に実装する場合や、サージ防護モジュールとしてフィールド機器に搭載する場合等がある。サージ防護モジュールとして用いられるサージ防護装置は、電源ケーブルを接続する正極負極一対の電源側端子と、保護対象フィールド機器の電源端子に接続するための正極負極一対の装置側端子とを備えており、正極負極端子間にサージ防護素子を接続した構成となっている。
【0005】
サージ防護素子としては、金属酸化物バリスタ、アヴァランシェダイオード、ガス入り放電管、サージ防護サイリスタ等が用いられている。また、ノイズ除去等を目的とするフィルタ機能等をサージ防護装置に組み込むことも行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−216433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防爆仕様のフィールド機器にモジュール型のサージ防護装置を接続する場合、端子台の電源端子に接続したサージ防護装置をフィールド機器のケース内に収める必要がある。また、フィールド機器は、電源端子のみならずセンサ端子、アース端子等複数の端子を備えるものが多く、それぞれの端子には必要に応じた配線がなされるため、ケース内部には線を敷設するスペースや、配線のための作業スペースを確保しなければならない。このため、サージ防護装置を小型化したいという要求がある。
【0008】
さらには、サージ防護装置は、サージ防護素子にサージ電流を流すことによりサージ電圧からフィールド機器を保護するため、サージ防護素子自体がサージ電圧により損傷を受ける場合がある。このような場合に備えて、配線等の作業をし易くして、サージ防護装置の交換を簡易に行なえることが好ましい。
【0009】
そこで、本発明は、フィールド機器に搭載可能な小型で簡易に交換可能なサージ防護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様であるサージ防護装置は、少なくとも一対の電源端子を備えるフィールド機器に搭載するサージ防護装置であって、前記電源端子に電源ケーブルとともに接続される一対の端子金具と、前記一対の端子金具と接続する2つの極と、前記2つの極間にサージ電圧が印加された場合にサージ電流を流す接地極とを有するサージ防護素子が実装された回路基板と、前記接地極に接続されたアース配線用ケーブルと、前記回路基板を収容し、前記一対の端子金具と前記アース配線用ケーブルとが外部に突出した本体部と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記回路基板には、前記一対の端子金具が直接取り付けられているものであってもよい。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様であるフィールド機器は、前記サージ防護装置が搭載され、前記少なくとも一対の電源端子が内部に設けられたケース本体を備えるフィールド機器であって、前記サージ防護装置が、前記ケース本体内部に収められていることを特徴とする。
ここで、前記ケース本体内部に、前記一対の電源端子が配置された電源端子台部と、前記電源端子以外の端子が配置された他端子台部とを備え、前記電源端子台部の高さと、前記他端子台部の高さとが異なるようにしてもよい。
上記課題を解決するため、本発明の第3の態様であるサージ防護装置は、電源ケーブルに印加されるサージ電圧から防護対象装置を防護するサージ防護装置であって、前記電源ケーブルに接続される一対の端子金具と、前記一対の端子金具と接続する2つの極と、前記2つの極間にサージ電圧が印加された場合にサージ電流を流す接地極とを有するサージ防護素子が実装された回路基板と、前記接地極に接続されたアース配線用ケーブルと、前記回路基板を収容し、前記一対の端子金具と前記アース配線用ケーブルとが外部に突出した本体部とを備え、前記一対の端子金具が前記防護対象装置との接続端子金具を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィールド機器に搭載可能な小型で簡易に交換可能なサージ防護装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るサージ防護装置の外形を示す斜視図である。
図2】サージ防護装置の上面図、側面図、断面図である。
図3】サージ防護装置が取り付けられる温度伝送器の端子台を示す斜視図である。
図4】電源ケーブルとセンサケーブルとの配線を示す図である。
図5】サージ防護装置が取り付けられた温度伝送器の端子台を示す斜視図である。
図6】電源端子にサージ防護装置と電源ケーブルを接続したときの、温度伝送器を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るサージ防護装置100の外形を示す斜視図である。サージ防護装置100は、フィールド機器に搭載するのに好適であり、本実施形態では、フィールド機器として2線式の温度伝送器に搭載する場合を例に説明する。
【0014】
本図に示すように、サージ防護装置100は、本体部110と、本体部110から延びて、先端に圧着端子140が取り付けられ、根元が熱圧縮チューブ150で保護されたアース配線用ケーブル130と、本体部110内部から突出した一対の端子金具120とを備えている。一対の端子金具120は、先開のY形で、アース配線用ケーブル130の延伸方向に並んでいる。便宜上、端子金具120が突出している面を上面とし、伸びた状態のアース配線用ケーブル130の延伸方向を単に延伸方向とする。
【0015】
本実施形態のサージ防護装置100において、端子金具120は、電源ケーブルを接続する電源側端子と、保護対象装置の電源端子に接続するための装置側端子とを兼ねている。
【0016】
図2(a)は、サージ防護装置100の上面図であり、図2(b)は、サージ防護装置100の横面図である。また、図2(c)は、図2(a)におけるA−A断面図であり、図2(d)は、図2(b)におけるB−B断面図である。
【0017】
一対の端子金具120は、プラス側端子121とマイナス側端子122とで構成されており、本体部110の内部から上面に突出してすぐに横方向に直角に折り曲げられている。折り曲げられた状態で、根元からY形の先端方向が延伸方向に対して斜めになっている。これは、後述するように、温度伝送器のケース本体内に設けられた端子台の形状に対応させたものである。
【0018】
サージ防護装置100の本体部110は、回路基板160を収容するケース部111と、ケース部111を上面から覆う蓋部112とで構成され、内部は保護のためシリコン等の充填剤162で満たされている。
【0019】
回路基板160には、3極のサージ防護素子161が実装されている。正極はプラス側端子121と接続し、負極はマイナス側端子122と接続し、接地極はアース配線用ケーブル130と接続している。サージ防護素子161は、正極−負極間にサージ電圧が印加された場合、サージ電流を接地極からアース(対地)へ流すように構成されている。
【0020】
回路基板160には、プラス側端子121、マイナス側端子122が直接取り付けられるとともに、サージ防護素子161以外の素子を実装しないことで、回路基板160のサイズが小さくなるようにしている。なお、より小さい形状のサージ防護素子161を選択することで、他の部品を回路基板160に実装することも可能である。
【0021】
本体部110は、サージ防護素子161が実装された回路基板160を収容可能で、なるべく小さなサイズとするために、上面から見て長方形の一隅が窪んだ形状とし、窪んでいない長辺側に回路基板160を配置するようにしている。
【0022】
図3は、サージ防護装置100が取り付けられる温度伝送器200の端子台を示す斜視図である。温度伝送器200内部の仕切られた空間である配線接続室に配置された端子台には、電源ケーブルを接続するための一対の電源端子210、熱電対・測温抵抗体等を接続するための複数個のセンサ端子220が円弧状に並んで設けられており、これらと離間してアース端子230が設けられている。
【0023】
各端子の周辺は接続先端子のガイドとなるとともに端子間の電気的絶縁を確保するための仕切壁が形成されている。電源端子210は、円弧状の端子列の端部に配置されていることから、配線の便宜上、仕切壁が中心方向に対して斜めに形成されている。サージ防護装置100の一対の端子金具120の形状と間隔は、電源端子210および周辺の壁の位置と形状に対応している。
【0024】
温度伝送器200において、電源端子210の台部とセンサ端子220の台部とは高さが異なって形成されている。具体的には、電源端子210の台部がセンサ端子220の台部よりも高く形成されている。
【0025】
これは、図4に示すように電源ケーブル310とセンサケーブル320とを各端子に配線する際に、両ケーブルをケース本体250内の端子台部分で交差させることができ、ケーブル同士の干渉を防いで作業を容易とさせるためである。円弧状の電源端子210の台部とセンサ端子220の台部の内側は、台部に対して窪んだ窪部240となっている。サージ防護装置161の交換時に、交換前の電源ケーブル310とセンサケーブル320の取り外し、および交換後の各ケーブルの接続が容易であり、サージ防護装置161の交換が容易となる。
【0026】
図5に示すように、サージ防護装置100は、一対の端子金具120を一対の電源端子210に接続したときに、本体部110が窪部240の一隅に収まるようになっている。この状態で、アース配線用ケーブル130を窪部240の底面付近を這わせ、先端の圧着端子140をアース端子230に接続する。アース配線用ケーブル130は、接続されたときにケーブルが無駄に迂回しないような長さとする。また、一対の端子金具120が電源端子210の高さに合致するように、本体部110の奥行も窪部240の深さに対応させる。
【0027】
サージ防護装置100の端子金具120を電源端子210に接続した状態で、電源ケーブルを配線し、電源端子210のねじを締め上げることで、サージ防護装置100の端子金具120と、電源ケーブルと、電源端子210とが同一箇所で直接的に接続されることになる。
【0028】
サージ防護装置100の本体は必要最小限のサイズで、窪部240に収まっているため、スペース的な余裕が確保されており、電源ケーブルやセンサケーブルの配線の支障となることは無い。
【0029】
サージ電圧によりサージ防護素子161が損傷した場合やメンテナンス時には、電源端子210およびアース端子230のねじを弛めることで、サージ防護装置100を容易に取り外すことができ、取り付けも容易に行なうことができる。
【0030】
図6は、電源端子210にサージ防護装置100と電源ケーブルを接続したときの、温度伝送器200を模式的に示す図である。本図に示すように、ケース本体250は、内部隔壁251により端子台を収容する配線接続室と回路基板260と表示装置270とを収容するアンプ室とに仕切られている。
【0031】
防爆仕様を満たすため、配線接続室は端子部カバー290で覆われ、アンプ室はアンプ部カバー280で覆われる。アース配線用ケーブル130が接続されたアース端子230は、ケース本体250に繋がっていて、ケース本体250がアースに接続(接地)される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のサージ防護装置100では、端子金具120が、電源ケーブルを接続する電源側端子と、保護対象装置の電源端子に接続するための装置側端子とを兼用している。また、回路基板160には、サージ防護素子161以外の素子は搭載しないようにしている。さらには、本体部110を小型化するとともに、端子金具120や本体部110の形状を搭載先の端子台の形状に対応させている。これらにより、フィールド機器に好適な小型で簡易に交換可能なサージ防護装置が実現されている。
【0033】
なお、上記の実施形態では、フィールド機器として2線式の温度伝送器200を例に説明したが、本発明は、2線式の温度伝送器に限られず、差圧伝送器、渦流量計、pH計等の2線式フィールド機器、あるいは電磁流量計、コリオリ流量計、超音波流量計等の商用電源等から電源供給される4線式フィールド機器のアナログ電流出力部や、各種通信部分等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
100…サージ防護装置、110…本体部、111…ケース部、112…蓋部、120…端子金具、121…プラス側端子、122…マイナス側端子、130…アース配線用ケーブル、140…圧着端子、150…熱圧縮チューブ、160…回路基板、161…サージ防護素子、162…充填剤、200…温度伝送器、210…電源端子、220…センサ端子、230…アース端子、240…窪部、250…ケース本体、251…内部隔壁、260…回路基板、270…表示装置、280…アンプ部カバー、290…端子部カバー、310…電源ケーブル、320…センサケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6