(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222497
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】関節式に互いに連結された2つの車両間の移行部のベローズの材料シートでもあり、乗降用ステップまたは搭乗ブリッジのキャノピーの材料シートでもある材料シート
(51)【国際特許分類】
B61D 17/22 20060101AFI20171023BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20171023BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20171023BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20171023BHJP
B60D 5/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
B61D17/22 Z
B32B5/02 Z
B32B5/24 101
B32B5/26
B60D5/00
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-36214(P2016-36214)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-149386(P2017-149386A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】516060255
【氏名又は名称】フゥナー ゲーエムベーハー アンド カンパニー ケージー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴャークリーフェ
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−304264(JP,A)
【文献】
特開2006−232266(JP,A)
【文献】
特開2009−233513(JP,A)
【文献】
特開2007−107123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/22
B62D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節式に互いに連結された2つの車両間の移行部(3)のベローズ(6)の材料シート(20)、または、搭乗ブリッジもしくは乗降用ステップのキャノピーの材料シートであって、該材料シート(20)は、両側にエラストマー被覆(21、22)を有する少なくとも1つの抗張担持層を有しており、少なくとも1つの該抗張担持層は、フリース(9)から形成されており、該フリース(9)と該エラストマー被覆(21、22)との間には接着促進層(7)が配置されている材料シート(20)。
【請求項2】
前記フリース(9)はフリース布、フリースライン、フリースウェブまたはフリース生地として形成されている
ことを特徴とする、
請求項1に記載の材料シート(20)。
【請求項3】
前記フリース(9)は複数のウェブ層(10、11、12)を有することを特徴とする、
請求項1または2に記載の材料シート(20)。
【請求項4】
前記ウェブ層(10、11、12)は、前記フリース(9)が様々な方向で様々な張力を吸収できるように形成されており、及び/または、相互に結合されていることを特徴とする、
請求項3に記載の材料シート(20)。
【請求項5】
個々の前記ウェブ層(10、11、12)は、一方向的に並べられた繊維を有する
ことを特徴とする、
請求項3または4に記載の材料シート(20)。
【請求項6】
一方向的に並べられた前記繊維から作られた個々の前記ウェブ層(10、11、12)は、個々の該ウェブ層(10、11、12)の該繊維が交差し合うように積み上げられていることを特徴とする、
請求項5に記載の材料シート(20)。
【請求項7】
前記フリース(9)の少なくとも1つの層は弾性繊維を有することを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の材料シート(20)。
【請求項8】
前記フリース(9)の前記繊維は様々な太さを有することを特徴とする、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の材料シート(20)。
【請求項9】
前記フリース(9)の個々の前記ウェブ層(10、11、12)の前記繊維は様々な太さを有することを特徴とする、請求項3〜8のうちいずれか一項に記載の材料シート(20)。
【請求項10】
第1の径を有する繊維による少なくとも1つの前記ウェブ層(10、11、12)は、前記第1の径よりも小さい第2の径を有する繊維による少なくとも2つの前記ウェブ層(10、11、12)の間に埋め込まれていることを特徴とする、
請求項9に記載の材料シート(20)。
【請求項11】
前記材料シート(20)の少なくとも1つの前記外的エラストマー被覆(21、22)は穿孔(26)を有していることを特徴とする、
請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の材料シート(20)。
【請求項12】
前記穿孔(26)はマイクロパーフォレーションとして形成されていることを特徴とする、
請求項11に記載の材料シート(20)。
【請求項13】
前記ウェブ層(10、11、12)は様々な材料の前記繊維を有することを特徴とする、
請求項3から12のうちいずれか一項に記載の材料シート(20)。
【請求項14】
前記ウェブ層(10、11、12)の前記繊維は様々な材料で形成されていることを特徴とする、
請求項3から12のうちいずれか一項に記載の材料シート(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節式に互いに連結された2つの車両間の移行部のベローズの材料シートに関し、乗降用ステップまたは搭乗ブリッジのキャノピーの材料シートにも関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べた種類のベローズは、普通は少なくとも1つの抗張担持層で構成されており、大抵は布地で構成されていて、この布地は、抗張担持層としては、両側でエラストマーに囲まれている。蛇腹は、このような材料シートから作られる。これに関連して、いわゆる二重蛇腹は公知であり、すなわち、1つの蛇腹がもう1つの蛇腹の内部に配置されて、移行部の蛇腹装置を形成している蛇腹は公知である。このような二重蛇腹は、詳細には、高速列車で使用され、とりわけ、騒音低減を向上させる働きがある。詳細には、高速列車にそのような二重蛇腹を使用することによって、そのような高速列車がトンネルに突入する際、または、2つの高速列車がすれ違う際に発生する圧力衝撃は、車両内部への伝播が避けられ、少なくとも、圧力衝撃の強度は弱められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、騒音低減は、単に高速列車だけではなく、路面電車または連結式バス等、一般にあらゆる公共交通機関において、やっかいな問題である。しかしながら、路面電車及び連結式バスでは、費用上の理由から、そのような二重蛇腹の設置を差し控えることになるであろう。すなわち、比較的簡単で特に比較的費用効率の良い仕方で騒音低減の問題を解決することに対する関心は、確かに存在するのである。
【0004】
従って、本発明が解決しようとする課題は、例えば、路面電車または連結式バスにおいてベローズを費用効率良く実施する場合にも使用可能であるような、高い遮音値を示し、しかも製造コストの安い、冒頭に述べた種類の材料シートを準備することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
さて、驚くべきことには、両側にエラストマー被覆を備え、エラストマー被覆とフリースとの間に接着促進層が準備されたフリースを抗張担持層として用いた場合には、そのような材料シートは吸音性があるだけでなく、結局は遮音性もあることが明らかになった。以下の詳しい説明のためには、フリースは、定義に従って、交絡した繊維製のウェブ層を少なくとも1つ、好ましくは複数含んでおり、複数のウェブ層同士が交絡していることも可能である。各ウェブ層は数多くの繊維を有しており、これらの繊維は、1方向性または2方向性の配向が可能である。吸音効果及び遮音効果は、次のようにして得られる。すなわち、フリース自体が、発生した騒音をウェブとして吸収するのである。例えばEPDMまたはシリコンのような樹脂製の被覆は、質量が比較的大きいため、遮音性がある。そこで、これらを組み合わせると、二重蛇腹で抗張担持体として布地を用いた場合に実現可能である遮音値に近いレベルの、高い遮音値を実現する材料シートが出来る。高い遮音値を達成することに関して重要であるのは、一方のフリースと、他方のエラストマー材料製の被覆との間に接着促進層を用いることである。概して、フリースは、かなり浸透性が高い。光沢機によってエラストマー被覆をフリースに塗布すると、原則的には常に、フリースの厚み及び密度次第では、エラストマー材料がフリース層の中へ完全に浸み込んでしまう恐れがある。さて、驚くべきことには、一方のフリースと他方のエラストマー被覆との間に接着促進層を用いれば、エラストマー被覆は加硫の前及び加硫の間にフリースの中へ深く浸入できないように妨げられることが明らかになった。主として接着促進層によって、確実に、エラストマー被覆はフリースの表面上にとどまり、しかもフリースとの間に安定した結合が作り出される。もしも、エラストマー層が完全にフリースに浸み込んでしまえば、フリースの吸音効果はほとんどゼロになり、そのため、音響効果に関する遮音値が低下してしまうであろう。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有利な特徴及び実施形態は、下位請求項から生じる。
【0007】
フリースは、フリース布、フリースライン、フリースウェブまたはフリース生地として形成されていることができ、有利には複数のウェブ層を含む。これらの複数の層は、前述のように、個別の繊維製ウェブ層として相互に交絡することにより、各層の間に安定した安定した結合を生じさせることができる。
【0008】
これらの層は、個別には、フリースが全体としては様々な方向で様々な張力を吸収できるように形成されており、及び/または、相互に結合されている。このことは、車両の縦方向において、詳細には曲線に沿った走行の際に、しばしば比較的大きな伸びが、詳細には側壁領域において達成されなければならないという事情を背景として重要になる。すなわち、個々の層またはウェブは、一方向的に並べられた繊維を有しており、一方向的に形成された繊維で作られた個々のウェブ層は、個々の層の繊維が交差し合うようにして積み上げられている。その結果として、例えば、2つの繊維製ウェブ層が90°の角度を取って配置されている場合に、そのようなフリースは、45°の角度では、比較的大きな伸縮性を提供するのに対して、0°及び90°の角度領域では提供しない。このことの直接の帰結として、そのようなフリースの使用領域は、外的な状況に対して比較的簡単に適合可能である。また、これに関連して、個々のウェブ層では、様々な樹脂材料から作られた繊維の使用を考えることも可能である。この点に関して、例えば、費用上の理由から、アラミド製被覆層である2つのウェブ層の間に、ポリエステル製ウェブである中間層を配置することは想定できる。このような方法で構成されたフリースは、アラミド製被覆層によって、優れた難燃性を有することになる。
【0009】
また、ウェブ層の内部でも、繊維が様々な材料で作られ、詳細には、樹脂で作られている場合には、そのため、結局、フリース全体を様々な使用目的に適合させるためには有利であることができる。
【0010】
本発明の有利な特徴によれば、フリースは、弾性繊維の中に配置された、少なくとも1つのウェブ層を有する。そのような弾性繊維は、例えば、シリコンまたはEPDMから形成されていることができる。このような方法で構成されたフリースにおいては、1つの方向では高い弾性が達成されるのに対して、そのようなフリースの非伸縮性繊維が複数のウェブ層と共に配向されている別の方向では、本質的に、伸縮性が全く無いか、または伸縮性が極めて小さくなることが有利である。伸縮性である種類の、または、非伸縮性である種類の繊維から作られたウェブもしくはウェブ層を備えた、そのようなフリースは、詳細には、破壊行為によって損傷を受ける恐れが大きい場所でも使用できる。詳細には、伸縮性の繊維が例えば車両の縦方向に対して平行に側壁の中に配向されているときには、本質的には常に実際に、このような繊維が、予想される切断方向に対して直角に配向されることになり、そのように伸縮性の繊維が、予想される切断方向に対して直角に配向されている場合には、側壁の全高にわたってベローズを切り裂くことができるのは非常に稀なケースに限られることが達成される。その理由は、伸縮性の繊維が、繊維の伸縮性の故に、切断の長さ次第では、切断の方向で樹枝状に積み重なることになり、そうすれば、非常に大きな力をかけなければ、切断し続けることができないようになるからである。
【0011】
本発明のもう1つの特徴によれば、フリースの繊維は、様々な太さを有することが準備されている。さらに、繊維の強さまたは太さは、材料シートの応力方向に左右される。具体的には、この場合に、フリースの個々の層またはウェブの繊維は様々な太さを有しており、有利には、比較的太い繊維による少なくとも1つの層は、比較的細い繊維による少なくとも2つの層の間に埋め込まれるように準備されていることができる。その理由は、繊維の間の間隔が等しいことを前提するならば、どちらかというと、比較的太いまたは比較的強い繊維によるフリースのウェブのほうが、比較的細い繊維による層よりも、エラストマーが比較的浸み込みやすいからである。
【0012】
本発明の特に有利な特徴は、材料シートの少なくとも1つの外的エラストマー被覆が、穿孔を有しており、詳細には、個々のチャネルを備えたいわゆるマイクロパーフォレーションを有することに現れている。騒音の発生側に穿孔が準備されており、すなわち、騒音が穿孔の開口部を通り、この場合には、詳細にはマイクロパーフォレーションの開口部を通ってフリースの中に到達し、フリースの中で吸収されるならば、有利である。マイクロパーフォレーションとは、開口部がマイクロメートル領域にある穿孔のことである。
【0013】
以下では、図によって本発明の実例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】2つの車両部分の間の移行部の一部としてのベローズを備えた連結式車両を示す概略図である。
【
図2】フリースを構成するために積み上げて配置された3つのウェブ層を示す概略図である。
【
図3】エラストマーで両側に被覆が施されたフリースの断面を示す概略図である。
【
図4】エラストマーで両側に被覆が施されており、しかしながら1つの側のエラストマー被覆が穿孔を有しているフリースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1によれば、1で示した連結式車両は、全体としては、2つの車両部分2及び4の間に、3で示した移行部を有しており、この移行部は、全体としては、6で示したベローズを含んでいる。ベローズ6は、蛇腹として形成されており、相互に縫い合わせられた数多くの蛇腹を、材料シートとして具備しており、さらに、これらの材料シートは、周囲を取り囲むベローズ枠によって支持されている。
【0016】
さて、本発明の主題は、関節式に互いに連結された2つの車両間の移行部の一部として蛇腹を形成し、ベローズによって、人が天候の影響を受けることなく1つの車両部分から別の車両部分へ移動できるようにするための材料シートである。
【0017】
図2は、これに関連して、フリース9を形成している3つの繊維ウェブ10、11及び12を示しており、これらの繊維ウェブは、お互いに90°または45°の角度を取って配置されており、その一方で、ウェブ層10は、ウェブ層11及び12に対して、それぞれ45°の角度を取って配置されている。使用可能であるウェブ層は、フリースを形成しており、フリースは、両側のエラストマー被覆とともに材料シートを形成している。
【0018】
フリース9それ自体は、
図3に従って、4つのウェブ層を有しており、個々のウェブ層の繊維11及び12は、交差し合うようにして、詳細には90°の角度で配置されている。フリース9として形成された抗張担持体は、複数のウェブ層11及び12を含んでおり、両側には、材料シート20を形成するためにエラストマー被覆21、22を有しており、これらの2つのエラストマー被覆を様々なエラストマー材料から形成することを考えることは確かに可能である。その場合には、例えば、1つの外層をシリコンから形成するのに対して、もう1つの外層をEPDMから形成することを準備しておくことができる。一方の各エラストマー層と、他方のフリースとの間には、接着促進層7が準備されており、エラストマー被覆とフリースとの間の継ぎ目のない連結と共に、この接着促進層のおかげで、カレンダー加工の間に、つまり、被覆プロセスの間に、非加硫状態のエラストマー被覆がフリースに完全に浸み込んでしまわないことも保証される。すなわち、接着促進層は、エラストマー被覆に対する障壁の役目を果たす。この場合に、接着促進層は、被覆材料に応じて、ポリオレフィン接着促進剤またはシロン接着促進剤として形成されていることができる。
【0019】
図4からは、1つのエラストマー被覆のいわゆるマイクロパーフォレーションが生じる。マイクロパーフォレーションは、数多くのチャネル25を含んでおり、これらのチャネルは、エラストマー被覆21の外側から、フリースとして形成された抗張担持体の中まで穿通している。これらの穿孔は、詳細にはマイクロパーフォレーションであり、材料シートの、騒音源の在る側に準備されており、つまり、詳細には、ベローズの外側に準備されている。
【符号の説明】
【0020】
1 連結式車両
2 車両部分
3 移行部
4 車両部分
6 ベローズ
7 接着促進層
9 フリース
10、11、12 ウェブ層
20 材料シート
21、22 エラストマー被覆
25 チャネル
26 穿孔