特許第6222499号(P6222499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222499
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B65H31/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-60356(P2016-60356)
(22)【出願日】2016年3月24日
(62)【分割の表示】特願2012-41932(P2012-41932)の分割
【原出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2016-121022(P2016-121022A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 善行
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋介
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−091409(JP,A)
【文献】 特開平11−222349(JP,A)
【文献】 特開2005−022836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00−31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を収容する媒体収容部と、
前記媒体収容部から媒体を装置後方側に向けて送り出す給送手段と、
前記媒体収容部に収容された媒体の先端と対向配置され、前記給送手段により給送される媒体の先端が接しながら下流側に進むことで媒体を分離する分離斜面と、
前記媒体収容部から送り出された媒体を装置前方側に向けて反転させる湾曲反転経路と、
前記湾曲反転経路の外側経路における装置後方側に配置された従動ローラーと、
前記湾曲反転経路により反転された媒体に記録を行う記録手段と、
前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出手段と、
前記排出手段により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、を備え、
前記従動ローラーは、鉛直方向から見て前記分離斜面と重なる部位を有し、
前記湾曲反転経路の内側経路を反転ローラーで構成し、
前記湾曲反転経路の外側経路に配置された前記従動ローラーは、前記反転ローラーとの間で媒体をニップし、
前記媒体受けトレイは、媒体排出方向にスライドすることにより、装置本体内部に収納される収納位置と、装置本体から突出して媒体を受ける突出位置と、の間を変位し、
前記媒体受けトレイが前記収納位置にある際に、前記媒体受けトレイは、鉛直方向から見て前記反転ローラーと重なる部位を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
媒体を収容する媒体収容部と、
前記媒体収容部から媒体を装置後方側に向けて送り出す給送手段と、
前記媒体収容部に収容された媒体の先端と対向配置され、前記給送手段により給送される媒体の先端が接しながら下流側に進むことで媒体を分離する分離斜面と、
前記媒体収容部から送り出された媒体を装置前方側に向けて反転させる湾曲反転経路と、
前記湾曲反転経路の外側経路における装置後方側に配置された従動ローラーと、
前記湾曲反転経路により反転された媒体に記録を行う記録手段と、
前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出手段と、
前記排出手段により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、を備え、
前記従動ローラーは、鉛直方向から見て前記分離斜面と重なる部位を有し、
前記媒体受けトレイは、媒体排出方向にスライドすることにより、装置本体内部に収納される収納位置と、装置本体から突出して媒体を受ける突出位置と、の間を変位し、
前記媒体受けトレイが前記収納位置にある際に、前記媒体受けトレイは、鉛直方向から見て前記従動ローラーと重なる部位を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項に記載の記録装置において、前記湾曲反転経路の内側経路を反転ローラーで構成し、
前記湾曲反転経路の外側経路に配置された前記従動ローラーは、前記反転ローラーとの間で媒体をニップする、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の記録装置において、前記従動ローラー及び前記反転ローラーの双方が、鉛直方向から見て前記分離斜面と重なる部位を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録が行われて排出される媒体を受ける媒体受けトレイを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例としてのプリンターには、記録が実行されて排出される媒体(例えば、記録用紙)を受ける排紙受けトレイ(排紙スタッカーなどと呼ばれることもあるが、以下では「トレイ」と言うこととする)が設けられ、当該トレイに、記録の行われた記録用紙が順次積重される様に構成されている。
【0003】
トレイは、非使用時には占有スペースを小さく、一方で使用時には記録用紙を受ける面を広く展開できる様に、多段式に構成されたものが用いられる場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−001705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでトレイが記録装置の内部に収納された収納状態と、トレイを記録装置から引き出して使用する使用状態と、を取りうる様に構成する場合、収納状態においてトレイが装置内部のスペースを占有することから、装置の大型化を招き易い。
【0006】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、装置内部におけるトレイの収納スペースを節約することで、装置の大型化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為の、本発明の一つの態様は、媒体を収容する媒体収容部と、前記媒体収容部から媒体を装置後方側に向けて送り出す給送手段と、前記媒体収容部に収容された媒体の先端と対向配置され、前記給送手段により給送される媒体を分離する分離斜面と、前記媒体収容部から送り出された媒体を装置前方側に向けて反転させる湾曲反転経路と、前記湾曲反転経路の外側経路における装置後方側に配置された従動ローラーと、前記湾曲反転経路により反転された媒体に記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出手段と、を備え、前記従動ローラーは、鉛直方向から見て前記分離斜面と重なる部位を有することを特徴とする。
また、本発明の第1の態様に係る記録装置は、媒体を収容する媒体収容部と、前記媒体収容部から媒体を送り出す給送手段と、前記媒体収容部から送り出された媒体に記録を行う記録手段と、前記記録手段により記録の行われた媒体を排出する排出手段と、前記給送手段を避ける逃げ部が形成された、前記排出手段により排出される媒体を受ける媒体受けトレイとを備えたことを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記排出手段により排出される媒体を受ける媒体受けトレイは、前記給送手段を避ける逃げ部が形成されているので、装置の高さ方向において前記給送手段と媒体受けトレイとを重畳させる必要がなく、高さ方向で両者をオーバーラップさせることができ、装置の高さ方向寸法の増大を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、媒体排出方向にスライドすることにより、前記記録装置の本体内部に収納される収納位置と、前記記録装置の本体から突出して媒体を受ける突出位置と、の間を変位し、前記媒体受けトレイが前記収納位置にある際に、前記逃げ部の内側に前記給送手段が位置することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記媒体受けトレイは、媒体排出方向にスライドすることにより、前記記録装置の本体内部に収納される収納状態と、前記記録装置の本体から突出して媒体を受ける突出状態と、を取りうるので、収納状態において前記記録装置の設置スペースを節約できるとともに、使用状態において媒体を受ける媒体受け面を大きく確保することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記給送手段は、前記媒体収容部の底面に対して進退する方向に変位可能に設けられた給送ローラーと、前記給送ローラーを支持するとともに、前記給送ローラーが変位し得る様に揺動可能に設けられたローラー支持部材と、を備え、前記媒体受けトレイが前記収納位置にある際に、前記逃げ部の内側に前記ローラー支持部材が位置することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記媒体受けトレイは、媒体を受ける媒体受け面の全領域が一の部材により形成され、前記逃げ部が前記一の部材に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記媒体受けトレイは、媒体を受ける媒体受け面の全領域が一の部材により形成され、前記逃げ部が前記一の部材に形成されているので、前記媒体受けトレイの全体的な剛性を向上させることができるとともに、構造の簡素化によって低コスト化を図ることができる。そして、前記逃げ部が形成されていることにより、収納状態においても前記媒体受けトレイの寸法を大きく確保することができ、一の部材によって媒体受けトレイを構成しても、前記媒体受け面を大きく確保することができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記媒体受けトレイは、媒体を受ける媒体受け面の下流側に、媒体排出方向と交差する方向における媒体の両端部が乗り上がる隆起部を備えるとともに、前記媒体受け面の上流側に、前記逃げ部が媒体排出方向と交差する方向における中央部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記媒体受けトレイは、媒体を受ける媒体受け面の下流側に、媒体の両端部が乗り上がる隆起部を備えるとともに、前記媒体受け面の上流側に、前記逃げ部が中央部に設けられているので、前記媒体受けトレイに排出された媒体にカールが形成され易くなり、排出された媒体の先端が前記媒体受けトレイの先端からはみ出して垂れ下がり、ひいては落下してしまうことを防止できる。
【0016】
本発明の第6の態様は、第2から第5の態様のいずれかにおいて、前記媒体受けトレイにおいて媒体排出方向と交差する方向の端部には、媒体排出方向に沿ってラック&ピニオン機構を構成するラック部が形成されており、前記ラック部が動力を受けることにより前記媒体受けトレイがスライド動作する構成を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の態様は、第2から第6の態様のいずれかにおいて、前記媒体受けトレイは、装置の高さ方向において前記媒体収容部と前記記録手段との間に位置しており、前記媒体受けトレイが前記収納位置にある際に、前記媒体受けトレイにおける上流側の端部が、前記媒体収容部から送り出されて前記記録手段へと向かう媒体の給送経路を塞ぐ位置にあることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記媒体受けトレイが前記収納位置にある際に、前記媒体受けトレイにおける上流側の端部が、前記媒体収容部から送り出されて前記記録手段へと向かう媒体の給送経路を塞ぐ位置にあるので、前記媒体受けトレイにおいて媒体を受ける媒体受け面を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るプリンターの外観斜視図。
図2】本発明に係るプリンターの外観斜視図。
図3】本発明に係るプリンターの外観斜視図。
図4】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
図5】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
図6】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
図7】給送手段と排紙受けトレイとの配置関係を示す斜視図。
図8】排紙受けトレイの斜視図。
図9】装置本体から排紙受けトレイが突出した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0021】
図1図3は本発明に係る「記録装置」の一実施形態であるインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の外観斜視図、図4図6はプリンター1の用紙搬送経路を示す側断面図、図7は給送手段9と排紙受けトレイ8との配置関係を示す斜視図、図8は排紙受けトレイ8の斜視図、図9は装置本体2から排紙受けトレイ8が突出した状態を示す斜視図である。
【0022】
■■■1.プリンターの全体構成■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以下、図1図6を参照しつつプリンター1の全体構成について概説する。プリンター1は、媒体の一例としての記録用紙にインクジェット記録を行う装置本体(記録部)2の上部にスキャナユニット3(図4図6)を備えており、即ちインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。
【0023】
スキャナユニット3は、装置本体2に対して回動可能に設けられており、回動することにより、閉じた状態(図1)と開いた状態(不図示)とをとり得る。

スキャナユニット3において上部のカバー4は開閉可能なカバーであり、当該カバー4を開放することにより、スキャナユニット3の原稿台3a(図4図6)が表れる様になっている。
【0024】
装置前面において符号5は、電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印 刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネルである。この操作パネル5はチルト可能に構成されており、図1は全閉状態を、図2は全開状態を、図3は半開き状態を、それぞれ示している。図1図3に示す様に操作パネル5は、ユーザーが操作し易い角度に調整できる様になっている。尚、操作パネル5の開き角は、図示しない角度保持手段により保持され、またボタン操作の為に閉方向の外力を受けた場合であってもその角度が保持される様になっている。
【0025】
装置前面において符号59は下段側トレイ50に設けられた開閉可能なカバーであり、図1はカバー59が閉じた状態を、図2及び図3はカバー59が開いた状態を、それぞれ示している。そしてこのカバー59を開くことにより、下段側トレイ50、上段側トレイ60、排紙受けトレイ8、のこれらが露呈可能となり、下段側トレイ50や上段側トレイ60の着脱作業や、排紙受けトレイ8のスライド動作が実行可能となる。
【0026】
排紙受けトレイ8は、図示しないモーターによって装置本体2に収納された収納位置(図1図2図4)と、装置本体2の前方側に突出した突出位置(図3図5図6)と、の間をスライド変位可能に設けられており、装置本体2の前方側に突出した突出位置をとることで、記録が行われて排出される記録用紙を受けることができる。
【0027】
下段側トレイ50と、その上部に設けられる上段側トレイ60は、複数枚の記録用紙を収容可能であり、装置本体2に対して着脱可能となっている。
【0028】
続いて、装置本体2の後方上部において符号6は開閉可能な手差しカバーであり、この手差しカバー6を開くことにより、手差しトレイ7(図4図6)を利用した記録用紙の手差しでの給紙が行える様になっている。
【0029】
続いて、主として図4図6を参照しつつプリンター1の用紙搬送経路について説明する。本実施形態に係るプリンター1は、装置底部に下段側トレイ50及び上段側トレイ60を備え、当該下段側トレイ50或いは上段側トレイ60から記録用紙を1枚ずつ給送する。
【0030】
上段側トレイ60は、給送可能位置(図6)と退避位置(図4図5)との間をスライド変位可能に設けられており、そして図示しないモーターの動力を受けて、給送可能位置(図6)と退避位置(図4図5)との間を変位する様に構成されている。
【0031】
尚、図4図6においては、下段側トレイ50に収容される用紙を符号P1で、上段側トレイ60に収容される用紙を符号P2で、それぞれ示している(以下、特に区別する必要がない場合は「用紙P」と言う)。また、下段側トレイ50から送り出される用紙P1の通過軌跡を破線T1で、上段側トレイ60から送り出される用紙P2の通過軌跡を破線T2で、それぞれ示している。
【0032】
図示しないモーターによって回転駆動される給送ローラー(ピックアップローラーとも呼ばれる)10は、回動軸12を中心に揺動する「ローラー支持部材」としての揺動部材11に設けられており、上段側トレイ60が最も装置前方側(図4図6において右方向:上段側トレイ60の引き抜き方向側)にスライドした状態、即ち上段側トレイ60が退避位置にあるときは(図4図5の状態)、下段側トレイ50に収容された用紙P1の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P1を下段側トレイ50から送り出す。
【0033】
また上段側トレイ60が最も装置後方側(図4図6において左方向:上段側トレイ60の装着方向側であり、用紙送り出し方向側でもある)にスライドした突き当たり位置にあるとき、即ち上段側トレイ60の給送可能位置では(図6の状態)、給送ローラー10が上段側トレイ60に収容された用紙P2の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P2を上段側トレイ60から送り出す。
【0034】
尚、本実施形態では図8に示す様に回動軸12は揺動部材11の揺動軸を構成するとともに、図示しないモーターの動力を受けて回転することで、図7に示す様に回動軸12に設けられた伝達歯車13から、歯車輪列14を介し、給送ローラー10へと動力を伝達する。また本実施形態において揺動部材11と給送ローラー10は、用紙Pを給送する給送手段9(図7)を構成する。
【0035】
続いて装置本体2において下段側トレイ50及び上段側トレイ60の先端と対向する位置には、分離斜面16が設けられており、下段側トレイ50が装着された状態では、下段側トレイ50の先端に設けられたストッパー(不図示)が、分離斜面16より奥方(図4図6において左側)に入り込み、下段側トレイ50に収容された用紙先端が分離斜面16と当接可能な状態となる。
【0036】
また上段側トレイ60においては、当該上段側トレイ60が給送可能位置(突き当たり位置:図6)に位置決めされた状態において、上段側トレイ60の先端に設けられたストッパー60cが、分離斜面16より奥方に入り込み、上段側トレイ60に収容された用紙先端が分離斜面16と当接可能な状態となる。
【0037】
そして下段側トレイ50或いは上段側トレイ60から送り出される用紙Pは、その先端が分離斜面16に接しながら下流側に進むことで、給送されるべき最上位の用紙Pと次位以降の用紙Pとの分離が行われる。
【0038】
分離手段14の先には、図示しないモーターによって回転駆動される中間ローラー17が設けられており、この中間ローラー17によって用紙Pは湾曲反転させられ、装置前方側へと向かう。尚、符号19、20、21は従動回転可能な従動ローラーであり、少なくとも用紙Pは、従動ローラー19と中間ローラー17とによってニップされ、また従動ローラー20と中間ローラー17とによってニップされて、下流側へと送られる。
【0039】
中間ローラー17の先には、図示しないモーターによって回転駆動される搬送駆動ローラー24と、該搬送駆動ローラー24に接して従動回転する搬送従動ローラー25とが設けられており、これらローラーによって用紙Pが記録ヘッド30の下へと送られる。
【0040】
続いてインクを吐出する記録ヘッド30はキャリッジ29の底部に設けられ、当該キャリッジ29は図示しないモーターによって主走査方向(図4図6の紙面表裏方向)に往復動する様に駆動される。
【0041】
記録ヘッド30と対向する位置には支持部材28が設けられ、当該支持部材28によって、用紙Pと記録ヘッド30との間の間隔が規定される。そして支持部材28の下流側には、図示しないモーターによって回転駆動される排出駆動ローラー31と、当該排出駆動ローラー31に接して従動回転する排出従動ローラー32とを備えた排出手段が設けられている。記録ヘッド30によって記録の行われた用紙Pは、これらローラーにより、上述した排紙受けトレイ8へ向けて排出される。
【0042】
■■■2.排紙受けトレイ8の詳細■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以上がプリンター1の全体構成であり、以下、媒体受けトレイとしての排紙受けトレイ8について更に詳説する。
排紙受けトレイ8は、本実施形態では用紙を受ける用紙受け面8aの全領域が一の部材により形成されており、即ち多段式(引き出し式)ではなく一段式のトレイとして構成されている。より具体的には、本実施形態では排紙受けトレイ8の全体が樹脂材料によって一体的に形成されている。これにより排紙受けトレイとして全体的な剛性の向上が図られているとともに、構造の簡素化により低コスト化が図られている。
【0043】
排紙受けトレイ8は、その端部(用紙排出方向と交差する方向(用紙幅方向)の端部)8eが、装置本体2の基体を構成するフレーム34(図9)に対してスライド可能に支持されている。この排紙トレイ8の両端部(用紙排出方向と交差する方向の両端部)には用紙排出方向に沿ってラック部8fが形成されている。ラック部8fはラック&ピニオン機構を構成するラックであり、図示を省略するピニオン歯車が噛合している。そして図示しないモーターの動力により前記ピニオン歯車が回転することにより、排紙受けトレイ8がスライド動作する。尚、本実施形態ではラック部8fは両端部に形成されているが、いずれか一端側にのみ形成されていても良い。
【0044】
排紙受けトレイ8において用紙排出方向の上流側(図4図6において左側、図7及び図8において左上側)には、給送手段9を避ける逃げ部8gが形成されている。この逃げ部8gは、その幅(用紙幅方向の幅)hが揺動部材11の幅よりやや大きめに設定されており、即ち逃げ部8gの内側で揺動部材11が揺動できる様に設定されている。また、本実施形態では用紙幅方向における給送基準位置は用紙中央に設定されている為、逃げ部8gは、用紙幅方向においてほぼ中央に形成されている。
【0045】
この逃げ部8gは、以下の様な作用効果を奏する。即ち、排紙受けトレイ8は装置本体2の内部に収納可能に設けられるが、装置本体内に収納された状態において給送手段9と排紙受けトレイ8とを重畳して設けると、装置の大型化(特に、高さ方向寸法の増大)を招き易い。
【0046】
しかしながら上述した通り、排紙受けトレイ8は、給送手段9を避ける逃げ部8gが形成されているので、装置の高さ方向において給送手段9と排紙受けトレイ8とを重畳させる必要がなく、高さ方向で両者をオーバーラップさせることができ、装置の高さ方向寸法の増大を抑制することができる。
【0047】
次に排紙受けトレイ8において用紙受け面8aの下流側には、用紙両端部が乗り上がる隆起部8dが形成されており、この隆起部8dに用紙両端(用紙排出方向と交差する方向(用紙幅方向)における両端)が乗り上がることにより、用紙にカールが形成される。図8において符号P’及び仮想線で示す用紙はその様なカールが形成された状態を示しており、下流側の両端部が隆起部8dに乗り上がり、またこれに加えて上流側の中央部が逃げ部8gにやや入り込む様な状態となることで、用紙にカールが形成される。
【0048】
これにより、用紙先端が用紙受け面8aからはみ出して垂れ下がり、ひいては落下してしまうことを防止することができる。尚、図8に示す様な用紙のカールを形成する為には、逃げ部8gは用紙幅方向の中央部に形成されることが好ましいが、逃げ部8gが用紙幅方向の端部に形成されている様な場合でも、下流側の両端部に隆起部8dが形成されていれば、用紙にカールの形成を促すことができる。
【0049】
加えて排紙受けトレイ8は、用紙を受ける用紙受け面8aの下流側に斜面8bが形成され、即ち支持される用紙が上向き傾斜となる様に構成されているので、これによっても排出された用紙が容易に下方に落下しない様になっている。
【0050】
尚、本実施形態では、装置高さ方向において下段側トレイ50及び上段側トレイ60と、記録ヘッド30との間に排紙受けトレイ8が位置しており、排紙受けトレイ8が収納位置にある際に(図4)、その上流側端部8hが用紙給送経路を塞がない様にクリアランスL1(図4)が形成される。しかしながらこのクリアランスL1を更に小さくし、排紙受けトレイ8の上流側端部8hが用紙給送経路を塞ぐ様に形成すれば(上流側端部8hと分離斜面16とがほぼ接している様な状態)、排紙受けトレイ8即ち用紙受け面8aを更に大きく確保することができ、より確実に用紙を受けることが可能となる。
【0051】
また、図4図6において符号34aは、フレーム34に形成された、下段側トレイ50及び上段側トレイ60の収容領域と排紙受けトレイ8の収容領域とを仕切る仕切板であるが、この仕切板34aを廃止することで、装置の高さ方向寸法を更に低く抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体(記録部)、3…スキャナ部、4…原稿カバー、5…操作パネル、6…手差しカバー、7…手差しトレイ、8…排紙受けトレイ、8a…用紙支持面、8b…斜面、8d…隆起部、8e…端部、8f…ラック部、8g…逃げ部、9…給送手段、10…給送ローラー、11…揺動部材、12…回動軸、13…伝達歯車、14…歯車輪列、16…分離斜面、17…中間ローラー、18〜21…従動ローラー、19…従動ローラー、20…従動ローラー、21…従動ローラー、24…搬送駆動ローラー、25…搬送従動ローラー、28…支持部材、29…キャリッジ、30…記録ヘッド、31…排出駆動ローラー、32…排出従動ローラー、34…フレーム、34a…仕切板、50…下段側トレイ、59…カバー、60…上段側トレイ、60c…ストッパー、P、P1、P2…記録用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9