特許第6222512号(P6222512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222512
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】穿刺針アダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/04 20060101AFI20171023BHJP
   A61M 5/162 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61M39/04 100
   A61M5/162 500Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-228712(P2012-228712)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-79355(P2014-79355A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正彦
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4740146(JP,B2)
【文献】 特開2009−172099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/04
A61M 5/162
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針と、前記穿刺針をメスコネクタに穿刺したときに前記メスコネクタに係合する係止爪とを備えた穿刺針アダプタであって、
前記穿刺針アダプタは、4つのアームが略十字形状になるように突出した天板を更に備え、
前記穿刺針は、前記天板の中央から突出しており、
前記4つのアームのそれぞれの先端から、スリットを介して分割された2本の弾性片が、前記穿刺針と対向するように前記穿刺針と同じ側に向かって延び、
互いに隣り合う2つのアームからそれぞれ延びた2本の弾性片の先端が架橋部を介して接続されて略U字形状の保持片が形成されており、
前記係止爪は、前記保持片の前記架橋部に、前記穿刺針に向かって突出して形成されており、
前記係止爪は、前記天板とは反対側に、前記穿刺針に近づくにしたがって前記天板に近づくように傾斜した摺動面を備え、
前記保持片を構成する前記2本の弾性片が弾性変形することにより、前記係止爪は前記穿刺針から離れる向きに変位可能であり、
前記天板の前記穿刺針とは反対側の面に、前記穿刺針と連通し且つ筒状のオスルアーを挿入可能な自閉式のコネクタが設けられていることを特徴とする穿刺針アダプタ。
【請求項2】
前記係止爪の前記天板に対向する係止面は、前記穿刺針に近づくにしたがって前記天板に近づくように傾斜している請求項1に記載の穿刺針アダプタ。
【請求項3】
前記弾性片は、前記天板から遠ざかるにしたがって前記穿刺針から離れるように傾斜している請求項1又は2に記載の穿刺針アダプタ。
【請求項4】
前記スリットは、前記アームの前記先端又はその近傍にまで達している請求項1〜3のいずれかに記載の穿刺針アダプタ。
【請求項5】
前記保持片の前記架橋部の前記天板とは反対側の端縁が、滑らかな曲線で構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の穿刺針アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺針をメスコネクタに穿刺した状態を安定的に維持するための係止爪を備えた穿刺針アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を静脈を通じて患者に投与する場合、調製された薬液が貯留された薬液容器のメスコネクタ(ポート)と患者の静脈とが柔軟なチューブを含む輸液セットを介して接続される。薬液容器のメスコネクタには、通常、ゴム栓が設けられている。このゴム栓に、輸液セットの上流側端に設けられた、鋭利な先端を有する穿刺針(「瓶針」と呼ばれることもある)を穿刺することにより、薬液容器と輸液セットとが連通される。
【0003】
ゴム栓に穿刺針を単に穿刺しただけでは、外力や振動がメスコネクタ又は穿刺針に印加されることにより、穿刺針がゴム栓から意図せずに抜け落ちる可能性がある。その結果、薬液が外界に漏出することがある。
【0004】
薬液が、例えば一部の抗がん剤のように劇薬に指定された危険な薬剤を含む場合がある。このような危険な薬液が漏出して、作業者の指などに付着したり、その蒸気を作業者が吸引したりする事態は何としても回避しなければならない。
【0005】
穿刺針がゴム栓から意図せずに抜け落ちるのを防止するために、メスコネクタに係合する係合構造を穿刺針に一体的に設けた各種の穿刺針アダプタが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ハウジングの中央から突出した穿刺針を取り囲むように、ハウジングから4つの係合フック要素が立設された穿刺針アダプタが記載されている。各係合フック要素の先端には穿刺針に向かって突出したフック突起が設けられている。フック突起が、メスコネクタのフランジに係合することにより、穿刺針がゴム栓から抜け落ちるのが防止される。
【0007】
特許文献2には、穿刺針を取り囲むように略円筒形状のシュロウドを設けた穿刺針アダプタが記載されている。シュロウドの内周面には、比較的短く且つ高剛性の一対の第1爪と、比較的長く且つ可塑的に変形可能な一対の第2爪とが、穿刺針に向かって突出している。相対的に大きな外径を有するフランジを備えたメスコネクタに接続する場合、第2爪が変形し、第1爪がメスコネクタのフランジに係合する。相対的に小さな外径を有するフランジを備えたメスコネクタに接続する場合には、第2爪がメスコネクタのフランジに係合する。このように、メスコネクタのフランジの大きさに応じて第1爪及び第2爪のいずれかがフランジに係合することにより、穿刺針がゴム栓から抜け落ちるのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−511940号公報
【特許文献2】特許第4509569号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1に記載の穿刺針アダプタは、係合フック要素の可動範囲が小さいので、接続しうるフランジのサイズに制限がある。例えば、大きな外径を有するフランジに係合フック要素のフック突起を係合させることは困難である。
【0010】
上記の特許文献2に記載の穿刺アダプタは、2種類の爪を備えるので、特許文献1の穿刺アダプタに比べて、接続しうるフランジのサイズの範囲が広い。しかしながら、2種類の爪にはそれぞれ最適なフランジのサイズがあり、このサイズを外れたサイズのフランジには2種類の爪のいずれをも係合させることは困難である。また、略円筒形状のシュロウドが穿刺針の周囲を取り囲んでいるので、穿刺針をメスコネクタのゴム栓に穿刺する場合に、穿刺針のゴム栓への穿刺状態をシュロウドの外から視認することが困難である。
【0011】
本発明は、メスコネクタに係合する係止爪を備えた穿刺針アダプタに関するものである。本発明の第1の目的は、当該穿刺針アダプタにおいて、接続可能なメスコネクタのサイズの範囲を拡大することにある。本発明の第2の目的は、当該穿刺針アダプタにおいて、穿刺針とメスコネクタとの接続状態を視認可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の穿刺針アダプタは、穿刺針と、前記穿刺針をメスコネクタに穿刺したときに前記メスコネクタに係合する係止爪とを備える。前記穿刺針アダプタは、4つのアームが略十字形状になるように突出した天板を更に備える。前記穿刺針は、前記天板の中央から突出している。前記4つのアームのそれぞれの先端から、スリットを介して分割された2本の弾性片が、前記穿刺針と対向するように前記穿刺針と同じ側に向かって延びている。互いに隣り合う2つのアームからそれぞれ延びた2本の弾性片の先端が架橋部を介して接続されて略U字形状の保持片が形成されている。前記係止爪は、前記保持片の前記架橋部に、前記穿刺針に向かって突出して形成されている。前記係止爪は、前記天板とは反対側に、前記穿刺針に近づくにしたがって前記天板に近づくように傾斜した摺動面を備える。前記保持片を構成する前記2本の弾性片が弾性変形することにより、前記係止爪は前記穿刺針から離れる向きに変位可能である。前記天板の前記穿刺針とは反対側の面に、前記穿刺針と連通し且つ筒状のオスルアーを挿入可能な自閉式のコネクタが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の穿刺針アダプタは、穿刺針がメスコネクタに穿刺されているときにメスコネクタに係合する係止爪とを備える。従って、メスコネクタに穿刺された穿刺針が、外力や振動等によって意図せずにメスコネクタから抜け落ちる可能性が低い。
【0014】
係止爪が設けられた略U字形状の保持片が、隣り合うアームに、これらを架橋するように設けられている。従って、保持片を構成する2本の弾性片は、弾性的に大きく曲げ変形することができる。その結果、接続可能なメスコネクタのサイズの範囲が広い。
【0015】
天板から突出した2本のアームと、当該2本のアームに接続された略U字形状の保持片とによって大きな開口が形成される。この開口を介して、穿刺針や、穿刺針がメスコネクタに穿刺される過程を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの上方から見た斜視図である。
図1B図1Bは、本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの下方から見た斜視図である。
図2A図2Aは、図1Aの2A−2A線を含む上下方向面に沿った本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの断面図である。
図2B図2Bは、図1Aの2B−2B線を含む上下方向面に沿った本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの断面図である。
図3図3は、メスコネクタと接続する直前の、本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの斜視図である。
図4A図4Aは、メスコネクタと接続された本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの上方から見た斜視図である。
図4B図4Bは、メスコネクタと接続された本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの下方から見た斜視図である。
図5図5は、図4Aの5−5線を含む上下方向面に沿った、メスコネクタと接続された本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記の穿刺針アダプタにおいて、前記係止爪の前記天板に対向する係止面は、前記穿刺針に近づくにしたがって前記天板に近づくように傾斜していることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、メスコネクタが大きな外径を有する場合であっても、メスコネクタと係止爪との係合が意図せずに解除される可能性が低減する。従って、穿刺針がメスコネクタから意図せずに抜け落ちる可能性が更に低減する。
【0018】
前記弾性片は、前記天板から遠ざかるにしたがって前記穿刺針から離れるように傾斜していることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、穿刺針アダプタとメスコネクタとを接続する際に印加する、穿刺針アダプタをメスコネクタに押し込むための押し込み力によって、弾性片を容易に曲げ変形させることができるので、押し込み力を小さくすることができる。
【0019】
前記スリットは、前記アームの前記先端又はその近傍にまで達していることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、アームの強度を低下させることなく、弾性片の弾性曲げ変形可能範囲を大きくすることができるので、接続可能なメスコネクタのサイズの範囲を更に拡大することができる。
【0020】
前記保持片の前記架橋部の前記天板とは反対側の端縁が、滑らかな曲線で構成されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、作業者の指が架橋部の端縁に触れることによって、痛みを感じたり、指を傷付けたりする可能性が低減する。
【0021】
前記係止爪は、前記天板とは反対側に、前記穿刺針に近づくにしたがって前記天板に近づくように傾斜した摺動面を備える。かかる構成によれば、穿刺針をメスコネクタに向かって押し込むだけで、係止爪をメスコネクタに係合させることができる。従って、メスコネクタとの接続作業を簡単化することができる。
【0022】
前記天板の前記穿刺針とは反対側の面に、前記穿刺針と連通した自閉式のコネクタが設けられている。かかる構成によれば、穿刺針アダプタと例えば輸液セットとが接続されていない状態において、薬液が外界に漏れ出る可能性が低減する。
【0023】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図では、実際の部材の寸法および各部材の寸法比率等は必ずしも忠実に表されてはいない。
【0024】
図1Aは、本発明の一実施形態にかかる穿刺針アダプタ1の上方から見た斜視図、図1Bは穿刺針アダプタ1の下方から見た斜視図である。図2Aは、図1Aの2A−2A線を含む上下方向面に沿った穿刺針アダプタ1の断面図、図2Bは、図1Aの2B−2B線を含む上下方向面に沿った穿刺針アダプタ1の断面図である。図2A図2Bにおいて、一点鎖線1aは、穿刺針アダプタ1の中心軸である。以下の説明の便宜のため、中心軸1aの方向を「上下方向」と言い、図2A図2Bの紙面の上側を穿刺針アダプタ1の「上側」と言い、図2A図2Bの紙面の下側を穿刺針アダプタ1の「下側」と言う。中心軸1aに垂直な面に平行な方向を「水平方向」と言い、中心軸1aに垂直に交差する直線の方向を「半径方向」と言う。但し、「上下方向」、「上側」、「下側」、「水平方向」は、穿刺針アダプタ1の実際の使用時の向きを意味するものではない。
【0025】
穿刺針アダプタ1は、中心軸1aに沿って延びた穿刺針10を備える。穿刺針10は、略十字形状を有する天板20の中央から下側に向かって突出しており、その下側端に鋭利な先端を備える。穿刺針10の内部には、液体(例えば薬液)が流れる流路11が形成されている。穿刺針10の先端近傍のテーパ状の外周面には、流路11と連通した2つの開口12が形成されている。2つの開口12は、中心軸1aに対して対称位置に設けられている。
【0026】
天板20は、半径方向にほぼ沿って延びた4つのアーム21を備える。4つのアーム21は、中心軸1aに対して等角度間隔で配置されている。その結果、天板20は、略十字形状を有している。各アーム21の先端21aからは、2本の弾性片22が、穿刺針10と対向するように下方に向かって延びている。共通するアーム21に設けられた2本弾性片22はスリット23を介して分割されている。上下方向において、スリット23は、アーム21の先端21aとほぼ同じ高さにまで達している。
【0027】
互いに隣り合う2つのアーム21からそれぞれ延びた2本の弾性片22のうち近い方同士が、その先端(下側端)で接続されて略U字形状の保持片25が構成されている。保持片25を構成する2本の弾性片22の先端を接続(架橋)する部分を、保持片25の架橋部24という。換言すれば、保持片25は、2本の弾性片22と、当該2本の弾性片22の先端を接続する架橋部24とを備え、当該2本の弾性片22の基端(上側端)は互いに隣り合う別個のアーム21にそれぞれ接続されている。このように構成された略U字形状の4つの保持片25が、穿刺針10を取り囲むように、スリット23を挟んで、中心軸1aに対して等角度間隔で配置されている。架橋部24の穿刺針10に対向する側の面には、穿刺針10に向かって突出する係止爪30が設けられている。架橋部24の下側の端縁24aは、なだらかな曲線に形成されている。
【0028】
図1Aに示されているように、天板20が4つのアーム21が突出した略十字形状を有すること、及び、隣り合うアーム21を略U字形状の保持片25が繋いでいることにより、天板20と保持片25とで囲まれた大きな開口26が形成されている。穿刺針アダプタ1の外側から、開口26を介して、穿刺針10を見通すことができる。
【0029】
弾性片22は、短冊状の薄板であり、その主面(最も大きな面積を有する面)は穿刺針10に対向している。弾性片22の長手方向は、穿刺針10とほぼ平行である。但し、より正確には、図2Aから理解できるように、弾性片22は、下側にいくにしたがって穿刺針10までの距離が大きくなるように(即ち、穿刺針アダプタ1が全体して末広がり形状となるように)、中心軸1aに対してわずかに傾斜している。このような各弾性片22は、中心軸1aを含む面内において弾性的に曲げ変形することができる。保持片25を構成する2本の弾性片22が曲げ変形することにより、係止爪30は穿刺針10から離れる向きに変位することができる。
【0030】
図2Bは、中心軸1aと、係止爪30の穿刺針10に最も接近した頂部31とを通る面に沿った穿刺針アダプタ1の断面図である。この図2Bに最もよく示されているように、係止爪30は、天板20と対向する係止面32と、頂部31よりも下側の摺動面33とを備えている。係止面32は、半径方向において穿刺針10に近づくにしたがって天板20に近づくようにわずかに傾斜している。摺動面33も、半径方向において穿刺針10に近づくにしたがって天板20に近づくように傾斜している。係止面32より、摺動面33の方が、半径方向に対する傾斜角度が大きい。係止面32と摺動面33とが楔状に交差する位置に頂部31が設けられている。
【0031】
天板20の中央に、コネクタ40が上方に向かって突出している。図2A図2Bに示されているように、コネクタ40は、略円筒形状を有する筒状部41と、筒状部41の上端に設けられた隔壁部材(「セプタム」と呼ばれることがある)42と、隔壁部材42にかぶせられたキャップ43とを備える。筒状部41内の内腔41aは、穿刺針10内の流路11と連通している。隔壁部材42は、円形の平面視形状を有し、ゴム等の弾性材料からなる薄板である。隔壁部材42の中央に、隔壁部材42を上下方向に貫通する直線状のスリット(切り込み)42aが形成されている。筒状部41の上端に隔壁部材42を載置し、隔壁部材42の上方からキャップ43をかぶせる。筒状部41の外周面から突出した係合突起41pがキャップ43の周囲壁を貫通する係合孔43h内に嵌入し、係合突起41pと係合孔43hとが係合する(図1A図1Bを参照)。隔壁部材42は筒状部41とキャップ43とにより上下方向に挟持される。隔壁部材42のスリット42aは、キャップ43の上面に形成された開口43a内に露出する(図1Aを参照)。隔壁部材42のスリット42aに、鋭利な先端を有しない筒状のオスルアー(図示せず)を挿入すると、隔壁部材42が弾性変形し、筒状部41内の内腔41aとオスルアーとが連通する。オスルアーを隔壁部材42から引き抜くと、隔壁部材42は直ちに初期状態に復帰し、スリット42aは液密に閉じられる。このように、隔壁部材42は、自閉式の弁体として機能する。このような自閉式のコネクタ40は、「ニードルレスポート」とも呼ばれる。
【0032】
本実施形態の穿刺針アダプタ1を構成する、穿刺針10、天板20、保持片25、係止爪30、筒状部41は、樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成されることが好ましい。使用できる樹脂材料は、特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、スチレンエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体などを例示することができるが、医療用に用いられることや弾性片22が繰り返し弾性曲げ変形されることを考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。キャップ43の材料は、特に制限はないが、硬質の材料であることが好ましく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂材料を用いることができる。隔壁部材42の材料は、特に制限はないが、軟質の材料であることが好ましく、例えば、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム材料や、熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0033】
次に、以上のように構成された本実施形態の穿刺針アダプタ1の使用方法を説明する。
【0034】
最初に、図3に示すように、穿刺針アダプタ1をメスコネクタ80に対向させる。メスコネクタ80は、円筒形状を有するフランジ83の中央の開口内に円柱形状のゴム部材81を嵌入して当該開口を液密に封止した、いわゆる「ゴム栓」である。メスコネクタ80と同様の構成は、例えばバイアル瓶にも設けられている。フランジ83は円筒形状を有するコネクタ本体85の一端に設けられており、コネクタ本体85の他端86は薬液を貯留するための薬液容器(図示せず)に接続されている。薬液容器の構成は特に制限はなく、形状保持性を有しない袋状の容器や、形状保持性を有するが外力を加えると容易に変形しうるボトル形状又は箱形状を有する容器など、任意の容器であってもよい。コネクタ本体85が薬液容器に、一部品として一体的に設けられていてもよい。
【0035】
フランジ83の外周面83bは円筒面である。フランジ83は、コネクタ本体85のフランジ83のすぐ下の部分(くびれ部分)84よりも大きな外径を有し、半径方向に膨らんでいる。従って、フランジ83の外周面83bの下側端縁83cには、外周面83bとこれより下側のくびれ部分84との間の外径差に基づく段差が形成されている。
【0036】
図3の状態から、穿刺針アダプタ1の穿刺針10の先端を、ゴム部材81に当接させ、更にゴム部材81内に押し込む。穿刺針10がゴム部材81内に進入するのとほぼ同時に又はこれと前後して、保持片25の係止爪30の摺動面33(図1B図2A図2Bを参照)が、フランジ83の上側の外周端縁(上側端縁)83aに当接する。穿刺針10のゴム部材81に対する進入深さが深くなるにしたがって、上側端縁83aが摺動面33上を摺動し、保持片25の弾性片22が弾性的に曲げ変形して、係止爪30は穿刺針10から離れる向き(外向き)に変位する。係止爪30の頂部31は、上側端縁83aを越えたのち、フランジ83の外周面83b上を下方に向かって摺動する。係止爪30の頂部31が、外周面83bの下側端縁83cに達すると、保持片25の弾性片22が弾性回復して、頂部31が、フランジ83より下のくびれ部分84に嵌入する。
【0037】
かくして、図4A図4B図5に示すように、穿刺針アダプタ1をメスコネクタ80に接続することができる。図5の断面は、中心軸1aと係止爪30の頂部31とを通る。
【0038】
図5に示されているように、穿刺針10がゴム部材81を貫通し、穿刺針10の先端近傍に形成された開口12がゴム部材81より下側に露出している。従って、穿刺針10の流路11とメスコネクタ80とが連通する。
【0039】
係止爪30が、フランジ83の下側端縁83cに係合している。従って、外力(例えば、穿刺針アダプタ1とメスコネクタ80とを分離する向きの引っ張り力)や振動が穿刺針アダプタ1やメスコネクタ80に印加されても、穿刺針10がゴム部材81から意図せずに抜け落ちることはない。
【0040】
アーム21の先端21aから延びた狭幅で薄板の弾性片22は、フランジ83の外径に応じて弾性的に曲げ変形する。従って、本発明の穿刺針アダプタ1を接続することができるフランジ83の外径の範囲は相対的に広い。
【0041】
スリット23(図1Aを参照)の上端位置が高いほど、弾性片22の弾性的な曲げ変形可能領域が大きくなるので、接続可能なフランジ83の外径の上限が拡大する。本実施形態のように、スリット23が、アーム21の先端21a又はその近傍にまで達していることは、弾性片22の弾性的な曲げ変形可能領域が最大化されるので、穿刺針アダプタ1を接続することができるフランジ83の外径の範囲(特に上限値)を拡大するのに有利である。
【0042】
但し、スリット23が、水平方向に略平行なアーム21にも及んでいると、アーム21の強度が低下する。アーム21の強度が低いと、穿刺針アダプタ1をメスコネクタ80に接続する過程でフランジ83の上側端縁83aが係止爪30の摺動面33に当接したとき、弾性片22が曲げ変形するのではなく、上側端縁83aから受ける上向きの力によってアーム21が上側に曲げ変形してしまう。この場合、係止爪30をフランジ83の下側端縁83cに係合させることができない。従って、スリット23は、水平方向にほぼ沿って延びるアーム21には及んでいないことが好ましい。
【0043】
保持片25を構成する2本の弾性片22の基端は、異なるアーム21に接続されている。保持片25を構成する当該2本の弾性片22の主面は同一面を形成せず、それぞれが穿刺針10に対向している。従って、係止爪30が穿刺針10から離れる向きに変位するとき、弾性片22は、わずかに捩れながら曲げ変形する。この構成では、弾性片22が捩れることなく単に曲げ変形する構成に比べて、弾性片22の曲げ変形に対する破壊強度が向上する。これは、弾性的な曲げ変形範囲の拡大に有利である。
【0044】
保持片25が略U字形状を有しているので、図3及び図4Aから理解できるように、保持片25と天板20のアーム21とで囲まれた大きな開口26を介して、穿刺針10やゴム部材81、さらに穿刺針10のゴム部材81への穿刺状態を容易に視認することができる。これは、より確実な穿刺作業を行うのに有利である。
【0045】
図5から理解できるように、フランジ83の外径が大きいほど、穿刺針アダプタ1をメスコネクタ80に接続したときの係止爪30の半径方向の外側への変位量は大きくなる。係止爪30が半径方向の外側へ変位するとき、係止爪30は揺動し、その姿勢(向き)が変化する。上述したように、弾性片22が曲げ変形していない初期状態(無負荷状態)において、係止爪30の係止面33は、頂部31側が天板20に近くなるように傾斜している。このため、係止爪30が半径方向の外側へ変位しても、頂部31が係止面33より高い状態を維持することができる。従って、係止面33が上記のように傾斜していることによって、図5のように接続された穿刺針アダプタ1とメスコネクタ80に両者を分離する向きの引っ張り力が加えられたときの、係止爪30とフランジ83との係合の外れにくさを、フランジ83が大きな外径を有する場合にも確保することができる。その結果、メスコネクタ80のフランジ83の外径が大きくても、穿刺針10がゴム部材81から意図せずに抜け落ちる可能性を更に低減することができる。但し、弾性片22が曲げ変形していない初期状態(無負荷状態)において係止面33が上記のように傾斜している必要はなく、例えば水平面と平行であってもよい。
【0046】
係止爪30が、頂部31に対して天板20とは反対側に、穿刺針10に近づくにしたがって天板10に近づくように傾斜した摺動面33を備えている。このため、上記したように、穿刺針10をゴム部材81に押し込む動作と並行して、係止爪30は、フランジ83の上側端縁83aに当接して変位する。従って、係止爪30をフランジ83に係合させるための特別な操作が不要であり、メスコネクタ80との接続作業が簡単である。
【0047】
弾性片22は、天板20から遠ざかるにしたがって、穿刺針10から離れるように、末広がり状に傾斜している。弾性片22がこのように傾斜していると、穿刺針アダプタ1をメスコネクタ80に接続する過程でフランジ83の上側端縁83aが係止爪30の摺動面33に上向きの力を印加したとき、アーム21を上側に曲げ変形させることなく、弾性片22を容易に曲げ変形させることができる。従って、穿刺針アダプタ1とメスコネクタ80を接続するための、メスコネクタ80に対する穿刺針アダプタ1の押し込み力を小さくすることができる。但し、弾性片22は、上記のように傾斜している必要はなく、例えば中心軸1aと平行であってもよい。
【0048】
保持片25の架橋部24の端縁24aが滑らかな曲線で形成されているので、作業者の指が当該端縁24aに触れても、痛みを感じたり、指を傷付けたりすることがない。このため、例えば、図4A図4B図5に示すように接続された穿刺針アダプタ1とメスコネクタ80とを分離する作業、特に係止爪30とフランジ83との係合を解除する作業を、作業者が保持片25の架橋部24に指を掛けて容易に行うことができる。
【0049】
天板20の上面に設けられたコネクタ40は自閉式コネクタである。従って、コネクタ40に接続されたオスルアーをコネクタ40から引き抜くと、隔壁部材42のスリット42aは直ちに閉じられる。従って、危険な薬液が外界に漏出するという可能性を低減することができる。
【0050】
上記の実施形態は例示に過ぎない。本発明は上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0051】
上記の実施形態では、穿刺針10内には、液体が流れる1本の流路11のみが形成されていたが、液体が流れる流路に加えて、容器内の負圧を防ぐために気体が流れる流路が形成されていてもよい。
【0052】
天板20の上面に形成されたコネクタ40の構成は、上記の実施形態で示したニードルレスポートに限定されない。例えば、テーパ面を備えた公知のコネクタであってもよい。あるいは、天板20の上面に、輸液セットの柔軟なチューブが着脱可能なコネクタを介することなく直接接続されていてもよい。
【0053】
穿刺針10が穿刺されるメスコネクタを備えた容器の構成は任意である。変形可能な容器であってもよく、あるいはバイアル瓶のような実質的に変形不能の容器であってもよい。
【0054】
穿刺針10の流路を流れる液体は、薬液であってもよいが、薬液以外の任意の液体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の利用分野は、特に制限はないが、液体(特に、薬液)を貯留した容器のメスコネクタのゴム栓に接続する穿刺針アダプタとして好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 穿刺針アダプタ
10 穿刺針
11 流路
20 天板
21 アーム
21a アームの先端
22 弾性片
23 スリット
24 架橋部
24a 架橋部の端縁
25 保持片
26 開口
30 係止爪
31 頂部
32 係止面
33 摺動面
40 コネクタ
80 メスコネクタ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5