(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のアンテナ素子の前記第1の端部と前記中間部材の前記第1のアンテナ素子と対向する側との間の第1の距離と、前記第2のアンテナ素子の前記第2の端部と前記中間部材の前記第2のアンテナ素子と対向する側との間の第2の距離と、が同じとなっていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
前記筐体の、前記第1のアンテナ素子に対向する領域の部材が、絶縁性を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナ装置。
前記中間部材は、前記装着帯を前記筐体に付設するための、前記筐体と前記装着帯との間に設けられた棒状部材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るアンテナ装置及び電子機器について、実施形態を示して詳しく説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係るアンテナ装置を適用した電子機器の第1の実施形態を示す概略構成図である。ここで、
図1(a)は、本実施形態に係る電子機器の外観構成を示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示した電子機器をベルト部側から見た側面を示す図であり、
図1(c)は、
図1(b)に示した電子機器におけるIC−IC線(本明細書においては
図1中に示したローマ数字の「1」に対応する記号として便宜的に「I」を用いる。)に沿った断面構造を示す概略図である。なお、
図1においては、図示を明瞭にするために、ベルトアンテナ122に便宜的にハッチングを施して示した。また、
図2は、本実施形態に係る電子機器の要部の拡大図である。ここで、
図2(b)は、
図1(c)に示したIIB部(本明細書においては
図1中に示したローマ数字の「2」に対応する記号として便宜的に「II」を用いる。)の拡大断面図である。なお、
図2においては、図示を明瞭にするために、ベルト部120の帯状部材121を省略してベルトアンテナ122のみを示し、便宜的にハッチングを施した。また、
図3は、本実施形態に適用されるベルトアンテナの組み付け構造、及び、他の平面形状を示す概略図である。
【0013】
第1の実施形態に係る電子機器100Aは、例えば
図1(a)〜(c)に示すように、機器本体110と、機器本体110に付設されて、機器本体110を手首等の人体(対象物)に装着するためのベルト部(装着帯)120と、を備えた腕時計型の形状を有している。
【0014】
機器本体110は、例えば
図1(a)〜(c)に示すように、矩形状の平面形状を有する一対の面(図面上面及び下面)が対向して配置された平板状(又は、タブレット形状)の筐体(ケース)111に、表示部112や入力操作部113、回路基板114やアンテナ素子等の、電子機器100A特有の動作や機能を実現するための構成が組み込まれている。
【0015】
具体的には、筐体111の一面側(図面上面側)には、例えば表示部112が設けられ、電子機器100Aの動作や機能に応じた種々の情報が表示される。また、筐体111の一面側や側面には、例えば操作スイッチやタッチパネル等の入力操作部113が設けられ、ユーザにより電子機器100Aの動作や機能、表示部112に表示される情報を操作、設定する際に使用される。
【0016】
また、筐体111は、内部に密閉された空間を有し、例えば
図2(b)に示すように、回路基板114や電磁波の放射器となるアンテナ素子(以下、便宜的に「本体アンテナ」と記す;第1のアンテナ素子)115等が設けられている。本体アンテナ115は、絶縁性の回路基板114上に、通信回路(図示を省略)とともに搭載された構成を有している。回路基板114に搭載される本体アンテナ115及び通信回路は、例えば無線LANやブルートゥース(Bluetooth(登録商標))等の近距離無線通信技術を用いて、電子機器100Aと外部の通信機器(パーソナルコンピュータやスマートフォン、ネットワーク機器等)との間で各種データを送受信する機能や、GPS衛星からの電磁波を受信して、電子機器100Aを携帯するユーザの現在位置を測定する機能等を実現する。通信回路は、所望の通信機能を実現するために、本体アンテナ115に電力を供給し、当該本体アンテナ115を介して、所定の周波数の電磁波を送受信する。ここで、本体アンテナ115は、送受信する電磁波やその通信方式等に応じて、直線偏波用や円偏波用の各種のアンテナ素子が適用される。また、電子機器100Aにより実現される通信機能に応じて、回路基板114上には、1乃至複数のアンテナ素子が搭載される。なお、
図1、
図2においては、本体アンテナ115として、小型かつ薄型の筐体111であっても内蔵が可能な直線偏波用のチップアンテナを適用した場合の構成を示す。
【0017】
そして、本実施形態に係る電子機器100Aにおいては、例えば
図2(a)、(b)に示すように、本体アンテナ115に対向する筐体111の一側面(
図2(b)右側の側面)に、当該側面の延在方向(又は本体アンテナ115の延在方向;
図1(b)の左右方向)に沿って、電磁波の中継器となる中間エレメント(中間部材)116が設けられている。ここで、中間エレメント116は、詳しくは後述するが、例えば棒状(角柱状、円柱状等)や平板状、薄膜状等の形状を有し、銅等の金属材料が適用される。また、中間エレメント116は、
図2(a)、(b)に示すように、本体アンテナ115、及び、後述するベルトアンテナ122の基部122aの延在方向と同方向に延在し、かつ、本体アンテナ115のベルトアンテナ122側の面、すなわち電磁波を主に放射する面と、ベルトアンテナ122の本体アンテナ115側の基部122aとに挟まれた領域の中に設けられていている。そして、本体アンテナ115及びベルトアンテナ122の基部122aのそれぞれに対して、所定の離間距離(間隙)を有して対向するように配置される。この中間エレメント116と本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との各離間距離は、均等又は略均等であることが望ましい。また、中間エレメント116は、例えば、本体アンテナ115から放射される電磁波に対して共振する適切な長さに設定される。また、中間エレメント116は、機器本体110やベルト部120に設けられる他の金属部品や導電性部材とも接触しておらず、電気的に独立した状態(フローティング状態)になるように設けられていて、外部から電力が供給されない無給電素子となっている。
【0018】
このような中間エレメント116は、例えば
図2(b)に示すように、上述した棒状や平板状、薄膜状等の導電性部材を、本体アンテナ115やベルトアンテナ122に対向するように、筐体111の上記の一側面に埋め込むものであってもよいし、一側面の内面側(本体アンテナ115側)や外面側(ベルトアンテナ122側)の表面に配置するものであってもよい。ここで、中間エレメント116は、インサート成形法等を用いて筐体111に一部が露出するように導電性部材が埋め込まれているものであってもよいし、筐体111の内側や外側の表面に、導電性塗料を塗布する手法や、導電性の薄膜を貼り付ける手法、金属蒸着法やスパッタリング法により形成する手法等を適用するものであってもよい。
【0019】
機器本体110の筐体111は、少なくとも内部に設けられた本体アンテナ115と対向し、かつ、上記の中間エレメント116が設けられている領域及びその近傍(換言すると、
図2(b)に示す本体アンテナ115が設けられている空間を取り囲む領域)部分が、樹脂材料等の絶縁性部材により形成されている。ここで、筐体111の絶縁性部材により形成された領域は、中間エレメント116により完全に塞がれておらず、中間エレメント116が設けられていない領域を介して、本体アンテナ115からの電磁波が筐体111外部に放射されるように構成されている。
【0020】
また、ベルト部120は、ウレタン樹脂等の絶縁性材料からなる帯状部材121を有し、例えば
図1(a)〜(c)に示すように、機器本体110の他面側(図面下面側)であって、かつ、機器本体110の対向する一対の側面(
図1(c)の左右両側の側面)近傍に、それぞれ取り付けられている。帯状部材121には、筐体111の側面に設けられた中間エレメント116に対向し、かつ、近接する領域に、所定の平面形状を有する、導波器となるアンテナ素子(以下、便宜的に「ベルトアンテナ」と記す;第2のアンテナ素子)122が設けられている。ここで、ベルトアンテナ122は、例えば銅等の金属材料や導電性の樹脂材料等からなる棒や薄板、膜等が適用され、例えば導電性塗料を塗布する手法や金属蒸着法、スパッタリング法等を用いて所定の平面形状にパターニングすることにより形成される。そして、ベルトアンテナ122は、例えば
図3(a)に示すように、帯状部材121に設けられた凹状の収納部121aに収納された状態で、例えば帯状部材121と同等の素材のカバー部材123により収納部121aを閉止することにより、帯状部材121の内部に組み込まれる。
【0021】
具体的には、ベルトアンテナ122は、例えば
図1、
図2に示すように、均一な幅及び厚みを有する棒状又は薄板状の部材を、機器本体110の筐体111側を基部122aとし、その両端側を所定の位置で折り曲げてベルト部120の先端方向(図面下方)に向かって一対の突出部122bを突出させた形状を有している。すなわち、ベルトアンテナ122は、棒状の部材が略コの字型の平面形状を有するように形成されている。このようなベルトアンテナ122において、基部122aは、機器本体110の筐体111の側面に設けられる中間エレメント116に対して、同一方向に延在し、所定の離間距離を有して対向するように(すなわち、平行に)配置される。これにより、ベルトアンテナ122の基部122aは、本体アンテナ115から放射され、中間エレメント116を介して伝搬される電磁波を受ける受け側の辺(第1の辺)Saを構成する。また、ベルトアンテナ122の突出部122bは、受け側の辺Saにおいて受けた電磁波に対して共振して再放射するための放射側の辺(第2の辺)Sbを構成する。このように、ベルトアンテナ122は、機器本体110や中間エレメント116、ベルト部120に設けられる他の金属部品や導電性部材とも接触しておらず、電気的に独立した状態(フローティング状態)になるように設けられていて、外部から電力が供給されない無給電素子となっている。
【0022】
ここで、本実施形態においては、ベルトアンテナ122の受け側の辺Sa(又は、基部122a)と放射側の辺Sb(又は、突出部122b)は、略垂直になるように設定されている。また、ベルトアンテナ122の受け側の辺Sa(基部122a)及び放射側の辺Sb(突出部122b)の長さが、各々、本体アンテナ115により送受信される電磁波の波長λの1/2
n(n=0、1、2、3:実質的にはλ、λ/2、λ/4、λ/8)になるように設定されている。具体的には、ベルトアンテナ122の受け側の辺Sa(基部122a)の長さは、例えば上記波長λの1/8(=λ/8)に設定され、放射側の辺Sb(突出部122b)の長さが、例えば上記波長λの1/4(=λ/4)に設定されている。これにより、ベルトアンテナ122は、放射器である本体アンテナ115及びその周辺から放射され、中継器である中間エレメント116を介して伝搬される電磁波に対して共振して、同等又はより強い電磁波を外部へ放射する導波器として機能する。
【0023】
上述したように、本実施形態に係るアンテナ装置は、
図2(a)、(b)に示すように、機器本体110の筐体111の内部に設けられた本体アンテナ115と、ベルト部120の帯状部材121に設けられたベルトアンテナ122との間の領域に、筐体111の側面に設けられた中間エレメント116が配置された構成を有している。詳しくは後述するが、特に、本実施形態においては、
図2(b)に示すように、本体アンテナ115と、中間エレメント116と、ベルトアンテナ122とが、実質的に同一の曲面(又は平面)PL上に、それぞれの延在方向を互いに一致又は略一致させて対向させ、かつ、互いに近接して配置された構成を有している。
【0024】
すなわち、ベルトアンテナ122及び中間エレメント116は、その延在方向が、本体アンテナ115から放射される電磁波の偏波方向と一致又は略一致するように設けられている。また、中間エレメント116は、筐体111の内部に設けられた本体アンテナ115とベルトアンテナ122との双方に対して電界結合を生じるように、その位置が設定されている。そして、ベルトアンテナ122は、筐体111の内部に設けられた本体アンテナ115により送受信され、電界結合された中間エレメント116を介して伝搬される電磁波の周波数で共振する配置、形状及び寸法を有している。
【0025】
このような構成を有することにより、
図2(c)に示すように、放射器となる本体アンテナ115と中継器となる中間エレメント116との間、及び、中間エレメント116と導波器となるベルトアンテナ122との間に生じる電界結合を強めることができ、後述するようにアンテナ装置における電磁波の送受信特性(アンテナ特性)が改善する。ここで、ベルト部120が機器本体110に対して可動する構造である場合、機器本体110を人体の手首等に装着するためにベルト部120を手首等に巻き付けたときと手首等から外したときとで機器本体110とベルト部120との角度が変わることがあり、更に、機器本体110を人体の手首等に装着したときでも、装着する部分の太さが変わると機器本体110とベルト部120との角度が変わることがある。このように機器本体110とベルト部120との角度が変わった場合には、本体アンテナ115と中間エレメント116とベルトアンテナ122との相互の位置関係も変わることになる。この場合、機器本体110を人体の手首等に装着して機器本体110を使用している状態でアンテナ装置のアンテナ特性が改善されて、良好な無線通信機能が得られることが好ましい。このため、機器本体110を平均的な太さの手首等に装着しているときに、
図2(b)に示しているように、本体アンテナ115と中間エレメント116とベルトアンテナ122とが同一の曲面PL上に配置されて、中間エレメント116とベルトアンテナ122の基部122aとの間隔が比較的狭くなるように、中間エレメント116の位置を設定することが好ましい。
【0026】
なお、導波器であるベルトアンテナ122は、
図1、
図2に示したコの字型の平面形状に限定されるものではなく、上述したように、放射器である本体アンテナ115から放射され、中継器である中間エレメント116を介して伝搬される電磁波を受けて励振し、外部に再放射することができる形状や寸法を有するものであれば、他の平面形状を有するものであってもよい。具体的には、ベルトアンテナ122は、例えば
図3(b)に示すように、機器本体110側(図面上方)を基部122aとする幅広部を有し、ベルト部120の先端方向(図面下方)に向かって幅が狭くなる一対の突出部122bが形成された平面形状を有するものを良好に適用することができる。また、ベルトアンテナ122は、例えば
図3(c)に示すように、
図3(b)に示したベルトアンテナ122において、基部122aに大きく切れ込みを形成した略U字型の平面形状を有するものを良好に適用することができる。また、ベルトアンテナ122は、例えば
図3(d)に示すように、
図3(b)に示したベルトアンテナ122において、基部122aの幅広部から略均一な幅の、単一の突出部122bが形成された平面形状を有するものを良好に適用することができる。また、ベルトアンテナ122は、例えば
図3(e)に示すように、基部122aの一端側にのみ突出部122bが形成されたL字型の平面形状を有するものを良好に適用することができる。また、ベルトアンテナ122は、例えば
図3(f)に示すように、基部122aの一端側から延在する突出部122bが螺旋状(又は渦巻き状)に形成された平面形状を有するものを良好に適用することができる。
【0027】
また、ベルト部120の任意の領域に、ベルトアンテナ122を設けるための構成についても、
図3(a)に示した組み込み方法に限定されるものではなく、導波器としての機能を実現することができるものであれば、他の構造を有するものであってもよい。例えば、ベルトアンテナ122は、絶縁性材料からなる帯状部材121の表面に、導電性塗料を塗布する手法や、導電性の薄膜を貼り付ける手法、金属蒸着法やスパッタリング法等を適用するものであってもよい。また、ベルトアンテナ122は、インサート成形法等を用いてベルト部120の帯状部材121に導電性の部材が埋め込まれているものであってもよいし、2色成形法等を用いて絶縁性の樹脂材料からなる帯状部材121に、導電性の樹脂が一体的に形成されているものであってもよい。
【0028】
このような構成を有するアンテナ装置によれば、機器本体110に設けられた本体アンテナ115と、ベルト部120に設けられたベルトアンテナ122との間の領域に、双方に対して電界結合を生じる中間エレメント116が配置されているので、本体アンテナ115から放射された電磁波が、中間エレメント116を介してベルトアンテナ122に伝搬され、励振されて再放射される。これにより、電磁波を機器本体110の筐体111の内部に閉じ込めることなく外部に良好に放射することができ、更に、中間エレメント116によって、実質的に、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間隔を、実際の間隔より狭くしたのと同等の効果を得ることができる。これにより、構造上、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間隔をある程度以下に狭くすることができない構造であっても、電磁波の送受信特性(アンテナ特性)を改善させることができる。したがって、筐体111の内部に設けられる本体アンテナ115として、小型や薄型のアンテナを適用することができるので、必要なアンテナ特性を得るためのアンテナ素子周辺の電子部品のレイアウト設計や、筐体111のデザインにおける制約を抑制することができ、筐体111を小型化しつつ、電磁波の送受信特性に優れたアンテナ装置を実現することができる。
【0029】
また、ベルトアンテナ122を機器本体110に付設されたベルト部120に配置する際に、筐体111の側面に配置されている中間エレメント116が本体アンテナ115及びベルトアンテナ122の双方に近接するように形状や寸法を設定することにより、ベルトアンテナ122をベルト部120の任意の領域に任意の形状で配置することができ、設計自由度を高めることができる。したがって、伝送線路を適切に設計することにより、電磁波の送受信特性が良好で、かつ、円偏波に対応したアンテナ装置や、指向性制御が可能なアンテナ装置を実現することができる。
【0030】
また、ベルトアンテナ122を帯状部材121の表面に露出して設けた構成を適用した場合には、当該ベルトアンテナ122が電子機器100Aのユーザだけでなく、多くの人に視覚的に認識されることになる。この場合、上記の電磁波に対して共振する機能を実現しつつ、ベルトアンテナ122の素材や形状等を任意に設定することにより、ベルトアンテナ122を電子機器100Aの装飾やデザインの一部として組み入れることができ、商品価値を一層高めることができる。また、ベルトアンテナ122をベルト部120に設けることにより、機器本体110の設計変更を極力抑制することができるので、機器本体110の製造工程やコストへの影響を極力抑制することができる。
【0031】
(作用効果の検証)
次に、本実施形態における効果(電磁波の送受信特性の改善効果)について、シミュレーション実験の結果を示して具体的に説明する。ここでは、本実施形態に係るアンテナ装置における本体アンテナ115及びベルトアンテナ122に対する、中間エレメント116の有無、形状及び配置と、電磁波の送受信特性との関係について説明する。
【0032】
図4は、本実施形態に係るアンテナ装置におけるシミュレーション実験に適用したパラメータを説明するための図であって、本実施形態に係る中間エレメント116の有無、形状や寸法)及び配置状態を示す概略斜視図である。なお、
図4においては、図示を明瞭にするために、ベルト部120の帯状部材121を省略してベルトアンテナ122のみを示すとともに、本体アンテナ115、中間エレメント116、ベルトアンテナ122に、便宜的にハッチングを施した。また、
図5は、本実施形態に係るアンテナ装置における中間エレメントの有無、形状及び配置と、電磁波の送受信特性との関係(シミュレーション結果)を示す図である。
【0033】
本実施形態においては、
図4(a)〜(d)に示すような構成を有する電子機器(アンテナ装置)を対象にしてシミュレーション実験を実行した。ここで、このシミュレーション実験においては、ベルトアンテナ122として、断面が1mm□(1mm×1mm)で全長が106.1mmの銅製の棒状部材を用い、基部122a(受け側の辺Sa)を31.1mmに設定して、その両端側を直角に折り曲げて突出部122b(放射側の辺Sb;75mm)とした、コの字型の平面形状を有する部材を適用した。上記のベルトアンテナ122の全長106.1mmは、このシミュレーション実験で用いる電磁波の波長λの概ね1/2(=λ/2)に相当する。
【0034】
そして、このシミュレーション実験において、
図4(a)に示すアンテナ装置は、中間エレメント116を介在させることなく、本体アンテナ115に直接対向するようにベルトアンテナ122を配置した構成を有している。このアンテナ装置において、
図4(a)に示すように、ベルトアンテナ122を機器本体110から遠ざかる方向(図中、Y軸方向)に移動させて、初期位置(ベルト部120端部の最適位置)からの変位Baを変えながら、GPSに適用される1.57542GHzの周波数を有する電磁波の送受信効率、及び、ベルトアンテナ122から放射される共振電波の周波数を導出するシミュレーション実験を行った。これによれば、
図5に示すように、変位Baが大きくなるほど(すなわち、ベルトアンテナ122を機器本体110から離すほど)、送受信効率が顕著に劣化する傾向(図中、送受信効率の変化特性SP1)を示した。また、変位Baを概ね3mm以上に設定した場合に、ベルトアンテナ122から放射される共振電波の周波数が安定する傾向(図中、共振周波数の変化特性SP2)を示した。
【0035】
また、
図4(b)〜(d)に示すアンテナ装置は、
図4(a)に示した本体アンテナ115とベルトアンテナ122との離間距離を固定した状態(例えば5mm)で、双方の間の領域に、
図4(e)に示すように、長さ(図中、X軸方向の寸法)が31.1mm、厚み(図中、Z軸方向の寸法)が0.6〜0.7mmの形状を有する各中間エレメント116を配置した構成を有している。そして、このアンテナ装置において、中間エレメント116の幅(図中、Y軸方向の寸法)を変化(1.2mm、3.0mm、4.0mm)させることにより、中間エレメント116と本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との各離間距離(間隙;1.9mm、1.0mm、0.5mm)を変えて、上述した場合と同様に、GPSに適用される電磁波(1.57542GHz)の送受信効率を導出するシミュレーション実験を行った。ここで、中間エレメント116と本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との各離間距離(間隙)は均等になるように、中間エレメント116を配置した。これによれば、
図5に示すように、中間エレメント116の幅が大きくなるほど(本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との間隙が狭くなるほど)、送受信効率が向上する傾向(図中、送受信効率RS1=−6.43dB、RS2=−5.36dB、RS3=−4.28dB)を示した。特に、
図4(d)に示すように、中間エレメント116の幅を4.0mm(本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との離間距離をそれぞれ0.5mm)に設定した場合には、
図4(a)に示した構成において、ベルトアンテナ122の位置を、初期位置からの変位Baを2mm以下に設定した場合と同等の送受信効率(RS3=−4.28dB;
図5中、破線矢印参照)が得られることが判明した。また、このとき、ベルトアンテナ122から放射される共振電波の周波数が十分安定することも判明した。ここで、
図4(a)に示したように、中間エレメント116を介在させない構成において、ベルトアンテナ122の位置を、初期位置からの変位Baを5mmに設定した場合の送受信効率RS0は−6.57dBであった。
【0036】
これらのシミュレーション実験の結果によれば、本体アンテナ115とベルトアンテナ122とを比較的離して配置した場合(例えば5.0mm以上)であっても、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間の領域に、両者に近接して対向するように中間エレメント116を配置することにより、アンテナ装置における電磁波の送受信特性(アンテナ特性)が改善することが判明した。これは、
図2(c)に示したように、中間エレメント116と本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との離間距離(間隙)を十分狭くすることにより、それぞれとの間に生じる電界結合が強まって、中間エレメント116が、本体アンテナ115から放射された電磁波をベルトアンテナ122に伝搬するための中継器として機能することによるものであると推測される。これにより、本体アンテナ115とベルトアンテナ122とを、実質的に近接して配置した場合と同等の電磁波の送受信効率を得ることができる。またこのとき、十分に安定した共振周波数を得ることもできる。そして、このことは次のような利点を有している。
【0037】
すなわち、
図4(a)に示したように、中間エレメント116を介在させることなく、本体アンテナ115にベルトアンテナ122を直接対向するように配置した構成においては、
図5に示したように、両者の離間距離(厳密には初期位置からの変位Ba)を狭くして近接させるほど、電磁波の送受信効率が向上する。このような構成を、実際の製品に適用した場合、様々な物理的な仕様により、両者を近接して配置することができない場合がある。具体的には、例えば防水性能(20気圧防水等)を重視する電子機器においては、機器本体110の筐体111の形状や厚みは重厚になり、ベルト部120の取り付け構造は堅牢化される。このような場合、本体アンテナ115とベルトアンテナ122とを近接させて配置することができず、電磁波の送受信効率を十分向上させることができない場合がある。
【0038】
そこで、本実施形態においては、
図2に示したように、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間の領域に、本体アンテナ115及びベルトアンテナ122に十分近接させて中間エレメント116が配置される。これにより、
図5に示したように、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との離間距離が比較的離れている場合であっても、電磁波の送受信効率を向上させつつ、安定した共振周波数を実現することができるので、上記の防水機能のような物理的な仕様を十分に満たしながら、比較的高い送受信効率及び安定した共振周波数特性も得ることができる。
【0039】
また、本実施形態に係るアンテナ装置においては、上記の中間エレメント116は、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間に存在する樹脂製の筐体111に埋め込む形態や、表面に貼り付ける形態等で配置される。ここで、中間エレメント116は、他の部品や部材と電気的、物理的に接触している必要がないので、既存の製品に簡易かつ低コストで適用することができるとともに、中間エレメント116を配置しても、例えば防水機能のような物理的な仕様に影響することはない。また、大幅な設計変更を必要とすることなく、上述した効果を得ることができる。
【0040】
なお、図示を省略したが、発明者らは同様のシミュレーション実験により、ベルトアンテナ122に
図3(b)〜(f)に示した各種の平面形状を適用した場合であっても、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間の領域に、中間エレメント116を配置することにより、概ね高い送受信効率及び安定した共振周波数が得られる傾向があることを確認した。
【0041】
また、一般的な電子機器の筐体には、金属製のケースが多用されているが、この金属製のケース自体がループ状になっている場合には、上述した中間エレメントのように中継器として機能することはない。これは、中継器としての機能を実現するためには、中間エレメントとなる導電性部材に両端となる部分が必要であるが、一般的なケースはループ状であるため共振構造とはならないからである。また、仮に、ケースが非ループ形状を有している場合であっても、その大きさを上述したような中間エレメントに必要なサイズ(本体アンテナ115により送受信される電磁波の波長λの1/2
n倍の長さ)に設定することも、一般的な電子機器においては困難である。
【0042】
(変形例)
上述した第1の実施形態においては、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間の領域に、本体アンテナ115及びベルトアンテナ122に対して近接して対向するように中間エレメント116を配置する構成を示した。本実施形態の変形例においては、このように配置された中間エレメント116の長さを、本体アンテナ115から放射される電磁波の波長の1/2
n倍(具体的には、1/2又は1/4)に相当する寸法に設定した構成を有している。
【0043】
これにより、中間エレメント116は、放射器である本体アンテナ115及びその周辺から放射される電磁波に対して共振して、同等又はより強い電磁波を外部へ放射する。すなわち、中間エレメント116がベルトアンテナ122と同様に導波器としても機能する。したがって、中間エレメント116における電磁波の再放射が、ベルトアンテナ122における電磁波の再放射と影響し合って、電磁波の送受信時の指向性を向上させることができる。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る電子機器の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、平板状(又は、タブレット形状)の筐体111を有する機器本体110に、手首等の人体への装着用のベルト部120が付設された電子機器100Aにおいて、機器本体110に放射器となる本体アンテナ115と、電磁波の送受信特性の改善のための中継器となる中間エレメント116とが設けられ、また、ベルト部120に導波器となるベルトアンテナ122が設けられた構成を示した。第2の実施形態においては、機器本体110にベルト部120を付設するためのバネ棒を、上述した中継器として適用した構成を有している。
【0045】
図6は、本発明に係るアンテナ装置を適用した電子機器の第2の実施形態を示す概略構成図である。ここで、
図6(a)は、本実施形態に係る電子機器の外観構成を示す斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示した電子機器をベルト部側から見た側面を示す図であり、
図6(c)は、
図6(b)に示した電子機器におけるVIC−VIC線(本明細書においては
図6中に示したローマ数字の「6」に対応する記号として便宜的に「VI」を用いる。)に沿った断面構造を示す概略図である。なお、
図6においては、図示を明瞭にするために、ベルトアンテナ122に便宜的にハッチングを施して示した。また、
図7は、本実施形態に係る電子機器の要部の拡大図である。ここで、
図7(b)は、
図6(c)に示したVIIB部(本明細書においては
図6中に示したローマ数字の「7」に対応する記号として便宜的に「VII」を用いる。)の拡大断面図である。なお、
図6、
図7において、上述した第1の実施形態と同等の構成については同一の符号を付して説明を簡略化する。
【0046】
第2の実施形態に係る電子機器100Bは、例えば
図6(a)〜(c)に示すように、上述した第1の実施形態と同様に、腕時計型の形状を有し、特に、機器本体110の装着面(人体への密着面)が、手首等の人体に装着する際の密着感や装着感を向上させるために湾曲した形状を有している。具体的には、機器本体110は、表示部112や入力操作部113、回路基板114等が組み込まれた筐体111の主要部111aから対向する2方向に、それぞれ装着される人体に沿って延在する延長部111bを有している。そして、この延長部111bの端部には、機器本体110を人体に装着するためのベルト部120が取り付けられている。ここで、機器本体110とベルト部120との取り付け構造は、例えば、伸縮構造を有する金属製のバネ棒(中間部材、棒状部材)117がベルト部120の取り付け穴に挿通され、さらに、バネ棒117の伸縮力によりベルト部120が機器本体110の取り付け部に取り付けられている。
【0047】
筐体111の延長部111bには、例えば
図7(b)に示すように、端部に組み込まれたバネ棒117の延在方向と同方向に延在し、かつ、バネ棒117に対して、所定の離間距離(間隙)を有して対向するように、電磁波の放射器となる本体アンテナ115が設けられている。本体アンテナ115は、主要部111aに設けられた回路基板114に搭載された通信回路(図示を省略)に電気的に接続されている。
【0048】
筐体111の延長部111bの端部に組み込まれたバネ棒117は、機器本体110に対してベルト部120を取り付ける機能に加え、電磁波の中継器としての機能を有している。すなわち、バネ棒117は、上述した第1の実施形態に示した中間エレメント116と同等の機能を有している。ここで、バネ棒117は、例えばステンレス(SUS)等の金属材料からなり、
図7(a)、(b)に示すように、本体アンテナ115、及び、ベルト部120に設けられるベルトアンテナ122の基部122aの延在方向と同方向に延在し、かつ、本体アンテナ115及びベルトアンテナ122の基部122aのそれぞれに対して、所定の離間距離(間隙)を有して対向するように組み込まれている。このバネ棒117と本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との各離間距離は、均等又は略均等であることが望ましい。また、バネ棒117は、例えば、本体アンテナ115から放射される電磁波に対して共振する適切な長さに設定される。また、バネ棒117は、機器本体110やベルト部120に設けられる他の金属部品や導電性部材とも接触しておらず、電気的に独立した状態(フローティング状態)になるように設けられる。
【0049】
機器本体110の筐体111は、少なくとも本体アンテナ115が設けられた延長部111b、特に、本体アンテナ115とバネ棒117との間の領域及びその近傍部分(換言すると、
図7(b)に示す本体アンテナ115とバネ棒117が設けられている延長部111bの端部の近傍領域)が、樹脂材料等の絶縁性部材により形成されている。
【0050】
また、ベルト部120は、上述した第1の実施形態と同様に、絶縁性材料からなる帯状部材121を有し、例えば
図6(a)〜(c)に示すように、機器本体110の筐体111の主要部111aから対向する2方向に延在する延長部111bのそれぞれの端部に、バネ棒117を介して取り付けられている。帯状部材121には、筐体111の延長部111bの端部に組み込まれたバネ棒117に対向し、かつ、近接する領域に、所定の平面形状を有する、導波器となるベルトアンテナ122が設けられている。
【0051】
具体的には、ベルトアンテナ122は、上述した第1の実施形態と同様に、例えば
図6、
図7に示すように、棒状の部材が略コの字型の平面形状を有するように形成され、ベルトアンテナ122の基部122aが、機器本体110の筐体111の延長部111bの端部に組み込まれたバネ棒117に対して、同一方向に延在し、所定の離間距離を有して対向するように(すなわち、平行に)配置される。ベルトアンテナ122の突出部122bは、基部122aの両端側を所定の位置で折り曲げてベルト部120の先端方向(図面下方)に向かって突出した形状を有している。この場合においても、上述した第1の実施形態と同様に、ベルトアンテナ122の基部122aは、本体アンテナ115から放射され、バネ棒117を介して伝搬される電磁波を受ける受け側の辺Saを構成する。また、ベルトアンテナ122の突出部122bは、受け側の辺Saにおいて受けた電磁波に対して共振して再放射するための放射側の辺Sbを構成する。また、本実施形態においても、
図7(b)に示すように、本体アンテナ115と、バネ棒117と、ベルトアンテナ122とが、実質的に同一の曲面(又は平面)PL上に、それぞれの延在方向を互いに一致又は略一致させて対向させ、かつ、互いに近接して配置された構成を有している。
【0052】
すなわち、ベルトアンテナ122及びバネ棒117は、その延在方向が、本体アンテナ115から放射される電磁波の偏波方向と一致又は略一致するように設けられている。また、ベルトアンテナ122は、筐体111の内部に設けられた本体アンテナ115により送受信され、電界結合されたバネ棒117を介して伝搬される電磁波の周波数で共振する配置、形状及び寸法を有している。
【0053】
このような構成を有することにより、上述した第1の実施形態と同様に、
図2(c)に示したように、放射器となる本体アンテナ115と、中継器となるバネ棒117との間、及び、バネ棒117と導波器となるベルトアンテナ122との間に生じる電界結合が強まって、アンテナ装置における電磁波の送受信特性が改善するとともに、後述するように電磁波の送受信時の電力効率(アンテナ効率)が改善する。
【0054】
なお、導波器であるベルトアンテナ122は、
図6、
図7に示したコの字型の平面形状に限定されるものではなく、放射器である本体アンテナ115から放射され、中継器であるバネ棒117を介して伝搬される電磁波を受けて励振し、外部に再放射することができる形状や寸法を有するものであれば、
図3(b)〜(f)に示したように、他の平面形状を有するものであってもよい。
【0055】
また、本体アンテナ115とバネ棒117とベルトアンテナ122を、
図7(b)に示したように、同一の曲面(又は平面)PL上に配置したものに限定されるものではなく、例えばベルトアンテナ122を、平面視してバネ棒117上に重なり合う位置に配置するものであってもよい。これによれば、本体アンテナ115とベルトアンテナ122を、バネ棒117を介してより近接させることができ、電磁波の送受信特性をさらに改善することができる。
【0056】
(作用効果の検証)
次に、本実施形態における効果(電磁波の送受信特性の改善効果)について、シミュレーション実験の結果を示して具体的に説明する。ここでは、本実施形態に係るアンテナ装置における本体アンテナ115及びバネ棒117に対する、ベルトアンテナ122の有無及び形状と、電磁波の送受信特性との関係について説明する。
【0057】
図8は、本実施形態に係るアンテナ装置におけるシミュレーション実験に適用したパラメータ、及び、シミュレーション結果を説明するための図である。ここで、
図8(a)〜(c)は、本実施形態に係るベルトアンテナ122の有無及び形状を示す概略斜視図である。また、
図8(d)は、本実施形態に係るベルトアンテナ122の有無及び形状と、電磁波の送受信特性との関係(シミュレーション結果)を示す図である。なお、
図8(a)〜(c)においては、図示を明瞭にするために、ベルト部120の帯状部材121を省略してベルトアンテナ122のみを示すとともに、本体アンテナ115、バネ棒117、ベルトアンテナ122に、便宜的にハッチングを施した。
【0058】
本実施形態においては、
図8(a)〜(c)に示すような構成を有する電子機器(アンテナ装置)を対象にしてシミュレーション実験を実行した。ここで、このシミュレーション実験においては、バネ棒117として、直径2.4mm、長さ30mmのステンレス製の円筒部材を適用した。
【0059】
そして、このシミュレーション実験において、
図8(a)に示すアンテナ装置は、導波器となるベルトアンテナ122を設けることなく、本体アンテナ115にバネ棒117のみが所定の離間距離で近接して対向するように配置された構成を有している。このアンテナ装置において、第1の実施形態に示したシミュレーション実験と同様に、GPSに適用される電磁波(1.57542GHz)を送受信する際のアンテナ効率を導出するシミュレーション実験を行った。これによれば、アンテナ効率は、(空間に放射された全電力)/(アンテナに入力した全電力)により算出され、
図8(d)に示すように、−0.08287dBの値が得られた。また、この場合の実効効率は、(空間に放射された全電力)/(アンテナ端子に給電された全電力)により算出され、
図8(d)に示すように、−1.31532dBの値が得られた。
【0060】
また、
図8(b)、(c)に示すアンテナ装置は、
図8(a)に示した本体アンテナ115とバネ棒117との離間距離を保持した状態で、ベルト部120に、
図3(e)に示したように、L字型の平面形状を有するベルトアンテナ122を設けた構成、及び、
図3(f)に示したように、螺旋状(又は渦巻き状)の平面形状を有するベルトアンテナ122を設けた構成を有している。ここで、ベルトアンテナ122は、厚みが0.2mmの金属製の板状部材を用い、基部122a(受け側の辺Sa)を20〜30mmに設定してバネ棒117に対向させ、その一端側を直角に折り曲げて直線状又は螺旋状の突出部122b(放射側の辺Sb)とした。そして、これらのアンテナ装置において、GPSに適用される電磁波(1.57542GHz)を送受信する際のアンテナ効率を導出するシミュレーション実験を行った。これによれば、L字型のベルトアンテナ122を設けた場合のアンテナ効率は、
図8(d)に示すように、−0.03663dBの値が得られた。また、この場合の実効効率は、
図8(d)に示すように、−0.7469dBの値が得られた。また、螺旋状のベルトアンテナ122を設けた場合のアンテナ効率は、
図8(d)に示すように、−0.03303dBの値が得られた。また、この場合の実効効率は、
図8(d)に示すように、−0.77638dBの値が得られた。
【0061】
これらのシミュレーション実験の結果によれば、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間の領域に、中継器となるバネ棒117を配置することにより、ベルトアンテナ122を設けない構成に比較して、アンテナ効率が相対的に改善することが判明した。またこの場合、上述した第1の実施形態に示したように、ベルトアンテナ122の平面形状に関わりなく、電磁波の送受信特性が改善するとともに、十分に安定した共振周波数を得ることができる。これは、上述した実施形態と同様に、
図2(c)に示したように、中間エレメント116に相当するバネ棒117と本体アンテナ115及びベルトアンテナ122との離間距離を十分狭くすることにより、それぞれとの間に生じる電界結合が強まって、電力損失が低減するとともに、バネ棒117が、本体アンテナ115から放射された電磁波をベルトアンテナ122に伝搬するための中継器として機能することによるものであると推測される。これにより、本体アンテナ115とベルトアンテナ122とを、実質的に近接して配置した場合と同等のアンテナ特性を得ることができる。
【0062】
また、本実施形態において、本体アンテナ115とベルトアンテナ122との間に配置されるバネ棒117は、機器本体110とベルト部120とを接続する際に必須かつ既存の構成部品であるので、電子機器100Bの物理的な仕様への影響がなく、また、大幅な設計変更を必要とすることなく、上述した効果を得ることができる。
【0063】
なお、上述した各実施形態においては、本発明の適用対象として腕時計型の電子機器を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、小型の筐体を有し、かつ、無線通信機能を備えた電子機器において、放射器となる本体アンテナと、導波器となるアンテナ素子とを近接させて配置するアンテナ装置を適用する際に、実製品の物理的な仕様により、放射器と導波器とを十分近接させることができない場合に、本発明を良好に適用することができる。
【0064】
また、上述した各実施形態においては、放射器となる本体アンテナと導波器となるベルトアンテナとの間の領域に、中継器となる単一(1個)の中間エレメントを配置する場合について示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、本体アンテナとベルトアンテナ間の領域に、複数個の中間エレメントが平行に配列されているものであってもよい。この場合、
図2(b)、
図7(b)に示したように、本体アンテナと、複数個の中間エレメントと、ベルトアンテナとが、同一の曲面(又は平面)上に、それぞれの延在方向を互いに一致又は略一致させて対向させ、かつ、互いに近接して配置されていることが望ましい。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0066】
(付記)
[1]
電力が供給されて特定の周波数の電磁波を送信又は受信する第1のアンテナ素子と、
前記第1のアンテナ素子と離間し、導電性を有する材料により形成され、電気的に独立して設けられ、前記電磁波を送信又は受信する第2のアンテナ素子と、
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の領域に、前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子から離間し、導電性を有する材料により形成され、電気的に独立して設けられ、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との双方に対して電界結合を生じる位置に配置されている中間部材と、
内部に密閉された空間を有する筐体と、
前記筐体に付設された、該筐体を対象物に装着するための装着帯と、
を備え、
前記第1のアンテナ素子は、前記筐体の内部に設けられ、
前記第2のアンテナ素子は、前記装着帯に設けられ、
前記中間部材は、前記筐体の内面、前記筐体の外面、筐体を構成する部材の内部、及び、前記筐体と前記装着帯との間、の何れかに設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【0067】
[2]
前記第1のアンテナ素子の前記第2のアンテナ素子側の第1の端部は第1の延在方向に沿って延在し、
前記中間部材と、前記第2のアンテナ素子の前記第1のアンテナ素子側の第2の端部とは、前記第1の延在方向に沿って延在して設けられ、
前記装着帯は、前記筐体に対して、該筐体に対する角度が可変に付設されており、
前記中間部材は、前記筐体が前記装着帯によって前記対象物に装着されている状態で、前記第1のアンテナ素子の前記第1の端部と、前記第2のアンテナ素子の前記第2の端部とに挟まれる領域の中となる位置に設けられることを特徴とする[1]に記載のアンテナ装置。
【0068】
[3]
前記第1のアンテナ素子の前記第1の端部と前記中間部材の前記第1のアンテナ素子と対向する側との間の第1の距離と、前記第2のアンテナ素子の前記第2の端部と前記中間部材の前記第2のアンテナ素子と対向する側との間の第2の距離と、が同じとなっていることを特徴とする[2]に記載のアンテナ装置。
【0069】
[4]
前記筐体の、前記第1のアンテナ素子に対向する領域の部材が、絶縁性を有する材料により形成されていることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0070】
[5]
前記装着帯の、前記第2のアンテナ素子に接している領域の部材が、絶縁性を有する部材により形成され、
前記第2のアンテナ素子は、前記特定の周波数で共振する形状及び寸法を有していることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0071】
[6]
前記第2のアンテナ素子は、直線状の第1の辺と第2の辺とを有し、前記第1の辺及び前記第2の辺の長さは前記特定の周波数の波長の1/2
n(n=0、1、2、3、・・)の長さに設定され、前記第1の辺と前記第2の辺とが互いに交差する方向に延在して屈曲した形状を有していることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0072】
[7]
前記中間部材は、前記装着帯を前記筐体に付設するための、前記筐体と前記装着帯との間に設けられた棒状部材であることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0073】
[8]
前記中間部材は、前記特定の周波数で共振する形状及び寸法を有していることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0074】
[9]
外部の機器との通信を制御する通信制御機能を有する電子機器本体部と、
前記[1]乃至[8]のいずれかに記載のアンテナ装置と、
を備え、
前記第1のアンテナ素子に前記電子機器本体部から前記電力が供給されていることを特徴とする電子機器。