特許第6222537号(P6222537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222537ジクロロベンゼン変成抑制方法及びジクロロベンゼン製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222537
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ジクロロベンゼン変成抑制方法及びジクロロベンゼン製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/22 20060101AFI20171023BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20171023BHJP
   A01N 29/04 20060101ALI20171023BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A01N25/22
   A01M1/20 C
   A01N29/04
   A01P7/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-245824(P2010-245824)
(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公開番号】特開2012-97031(P2012-97031A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年6月27日
【審判番号】不服2015-20057(P2015-20057/J1)
【審判請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】白坂 浩明
(72)【発明者】
【氏名】浦上 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】酒井 真紀
(72)【発明者】
【氏名】笠原 達男
(72)【発明者】
【氏名】浦上 裕次
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−188601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルトジクロロベンゼンの受光によるトリクロロビフェニルへの変成を、オルトジクロロベンゼンより比重が軽い油状物質、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルの添加によって、抑制すること
を特徴とするジクロロベンゼン変成抑制方法。
【請求項2】
パラジクロロベンゼンの受光によるトリクロロビフェニルへの変成を、固体の揮散性物質又は光触媒と、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルの添加によって、抑制すること
を特徴とするジクロロベンゼン変成抑制方法。
【請求項3】
前記油状物質は、
ヒマシ油であること
を特徴とする請求項1に記載のジクロロベンゼン変成抑制方法。
【請求項4】
前記光触媒は、
酸化チタン又はフタロシアニン銅であること
を特徴とする請求項に記載のジクロロベンゼン変成抑制方法。
【請求項5】
オルトジクロロベンゼンと、オルトジクロロベンゼンより比重が軽い油状物質、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルを含むこと
を特徴とするオルトジクロロベンゼン製剤。
【請求項6】
パラジクロロベンゼンと、光触媒と、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルを含むこと
を特徴とするパラジクロロベンゼン製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防虫剤や防臭剤の主成分であるパラジクロロベンゼンやオルトジクロロベンゼンなどのジクロロベンゼンの変成抑制方法と、この変成抑制方法が適用されたジクロロベンゼン製剤に関するものである。
さらに詳しくは、光が当たることによって、ジクロロベンゼンがトリクロロビフェニルに変成するのを防止するジクロロベンゼン変成抑制方法と、受光によるトリクロロビフェニルの生成が、一定の添加剤を用いることにより、100%近く抑制されたジクロロベンゼン製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パラジクロロベンゼンや、オルトジクロロベンゼンなどのジクロロベンゼンを防虫剤や防臭剤として用いることは広く知られている。
【0003】
例えば、パラジクロロベンゼンは昇華性を有する固体(結晶)であって、強力な防虫及び防臭作用を有するものである。
すなわち、パラジクロロベンゼンは、その結晶の一定量を打錠して所定の形状、例えば、タブレット状、ボール状あるいは棒状等に成型してパラジクロロベンゼン錠剤とし、得たパラジクロロベンゼン錠剤を、衣料品等とともにタンス等の収納具内に入れておくと、この錠剤からパラジクロロベンゼンが昇華し、その気体成分が収納具内に揮散し、防虫効果を発揮する。
また、トイレ等に設置すれば防臭効果を発揮するので、パラジクロロベンゼン錠剤は、衣料品等の防虫剤やトイレ等の防臭剤として広く用いられている。
【0004】
一方、オルトジクロロベンゼンは揮散性を有する液体であって、汲み取り式トイレなどに用いられる芳香性を有する、うじ用殺虫剤として用いられている。
【0005】
このようにジクロロベンゼンは、防虫剤や防臭剤として古くから利用されている。
しかしながら、ジクロロベンゼン錠剤を防虫剤や防臭剤として用いる際、特有の臭気の発生、揮発性の不均一などに欠点を有するもので、その改良のために、これまでに種々の提案がなされている。
【0006】
かかる欠点を解決するため、出願人は、パラジクロロベンゼンから添加された油状物質が滲み出すことがなく、製品保存時、及び使用時に油状物質とパラジクロロベンゼンのどちらかが先に消失することなく両者を略均等に揮散させることができるとともに、パラジクロロベンゼン製剤が揮散完了した後に、固形状の残渣が残らないパラジクロロベンゼン製剤とその製造方法を、特許第3810853号公報(特許文献1)において提案している。
【0007】
この特許文献1で提案されたパラジクロロベンゼン製剤は、具体的には、パラジクロロベンゼンと、このパラジクロロベンゼンに略均一に分散された揮散性の油状物質を、前記パラジクロロベンゼン100重量部に対して0.3重量部〜1.0重量部の濃度で含有するパラジクロロベンゼン製剤に対し、前記油状物質の揮散を制御する保持剤を、油状物質に対して0.5重量部〜20重量部の濃度で添加することによって、前記パラジクロロベンゼンと油状物質を、比均等揮散率40%以内でほぼ均等に揮散させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3810853号公報(請求項1,段落0001,0009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これら防虫剤や消臭剤として広く使用されているジクロロベンゼンは、光が当たると、ごく微量のトリクロロビフェニルを生成することが、近年明らかにされた。
【0010】
すなわち、このジクロロベンゼンに光が当たると、ポリ塩化ビフェニルの一種であるトリクロロビフェニル、パラジクロロベンゼンの場合は、2,4’,5−トリクロロビフェニルが生成することが明らかにされている。
【0011】
一方、ポリ塩化ビフェニルのうち、特に4塩化物〜6塩化物が内分泌撹乱物質であることが判明し、その人体への有害性が懸念されている。
3塩化物のトリクロロビフェニルについては、その毒性については未だ明らかにされてはいないが、ポリ塩化ビフェニルに属する化合物であるので、かかる物質が生じることは好ましいものではない。
【0012】
前記トリクロロビフェニルの発生は、ジクロロベンゼン類が光に暴露されることによって進行する反応であることから、トリクロロビフェニルの生成を抑える手段として、ジクロロベンゼン製剤を、遮光性を有する包材で包装を施すという手段が考えられる。
【0013】
しかしながら、パラジクロロベンゼンのような昇華性物質を用いた防虫剤などの製剤の場合、目視で製剤がなくなったことで効力が切れたこと確認することができる視認性を備える必要がある。
したがって、前記の遮光包装では、このような視認性が損なわれるおそれがある。
また、遮光性のある包装に限定されるため、包装のためのコスト上昇を招き、かつデザインも制約されてしまうという課題がある。
【0014】
かかる課題を解決するため、発明者等は、ジクロロベンゼンに光が当たることによってジクロロベンゼンが変成し、トリクロロビフェニルを生成することを抑制する方法と、その抑制方法の適用されたジクロロベンゼン製剤を、特定の包装に拠ることなく提供するため鋭意研究を行なった。
【0015】
すなわち、この発明は、ジクロロベンゼンに光が当たることによってジクロロベンゼンが変成することを抑え、遮光性包材による視認性の阻害やデザイン上の制約を受けることのないジクロロベンゼン変成抑制方法と、ジクロロベンゼン製剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、この発明のジクロロベンゼン変成抑制方法は、
オルトジクロロベンゼンの受光によるトリクロロビフェニルへの変成を、オルトジクロロベンゼンより比重が軽い油状物質、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルの添加によって、抑制すること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項2に記載の発明は、
パラジクロロベンゼンの受光によるトリクロロビフェニルへの変成を、固体の揮散性物質又は光触媒と、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルの添加によって、抑制すること
を特徴とするジクロロベンゼン変成抑制方法である。
【0018】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項に記載のジクロロベンゼン変成抑制方法において、
前記油状物質は、
ヒマシ油であること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項に記載のジクロロベンゼン変成抑制方法において、
前記光触媒は、
酸化チタン又はフタロシアニン銅であること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項5に記載の発明は、
オルトジクロロベンゼンと、オルトジクロロベンゼンより比重が軽い油状物質、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルを含むこと
を特徴とするオルトジクロロベンゼン製剤である。
【0021】
さらに、この発明の請求項6に記載の発明は、
パラジクロロベンゼンと、光触媒と、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルを含むこと
を特徴とするパラジクロロベンゼン製剤である
【発明の効果】
【0022】
この発明のジクロロベンゼン変成抑制方法及びジクロロベンゼン製剤によれば、防虫剤又は防臭剤の主成分であるジクロロベンゼンに、特定の油状物質又は光触媒と、フタル酸ジイソノニル及び/又はシリコンオイルを添加するという簡単な手段によって、ジクロロベンゼンのトリクロロビフェニルへの変成を顕著に抑止することができる。
【0023】
前記効果は、紫外線吸収剤又は光触媒による光の吸収・エネルギーの変換等によって、また、油状物質による光の遮蔽・反射効果、さらには、ジクロロベンゼンの希釈・拡散効果によるものと推定されるが、確たる理由は不明である。
しかしながら、それらの添加によって、この発明において奏される前記効果は、予測を上回る優れたものである。
【0024】
特に、この発明にかかるジクロロベンゼン変成抑制方法及びジクロロベンゼン製剤によれば、ジクロロベンゼンからなる製剤を、遮光性包材を用いることによる製剤の視認性を損なうことがない。
また、包装のコストを上げることないとともに、デザインの制約を受けることもなく、製剤中のジクロロベンゼンが光を受けて、トリクロロビフェニルに変成することを抑えたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明は、ジクロロベンゼンを主成分とする防虫剤又は防臭剤において、主成分であるジクロロベンゼンが、受光によって変成することを、特定の添加剤を使用することによって抑制しようとするものである。
【0026】
前記添加剤としては、油状物質又は紫外線吸収剤もしくは光触媒が挙げられる。
これらの添加剤は、ジクロロベンゼンの拡散性を向上させる、光を反射させる、光を吸収するなどの特性を有するものと推測されるもので、それらの特性によって、この発明の効果が奏されるものと推測される。
【0027】
前記油状物質としては、特に揮散性の油状物質を挙げることができる。
この油状物質は、ジクロロベンゼンの拡散性を向上させる特性、例えば、パラジクロロベンゼンの場合であれば、その結晶の界面あるいは結晶の内部にまで入り込み、パラジクロロベンゼンの2分子が接触する機会を減少させ、パラジクロロベンゼンの拡散性を向上させる特性を有し、ジクロロベンゼンの2分子が接触してトリクロロビフェニルに変成することを抑制すると判断されるものである。
【0028】
また、これら油状物質は、油状物質がジクロロベンゼンの表面に油膜を形成することで光を反射させて、ジクロロベンゼンに光が到達するのを阻害し、光によるジクロロベンゼンのトリクロロビフェニルへの変成を抑制する機能を有し、トリクロロビフェニルへの変成を抑制しているものと推測される。
【0029】
また、パラジクロロベンゼンのように昇華性の固体状の製剤の場合は、パラジクロロベンゼンと油状物質を混合して打錠製剤化した場合に、前記油状物質が滲出し、パラジクロロベンゼン製剤の表面を油膜状に被覆して、パラジクロロベンゼンへの光の到達を阻害すると推測される。
【0030】
また、オルトジクロロベンゼンのように液体状の製剤では、比重を利用し、オルトジクロロベンゼンの上方に油状物質を位置させることによって、光が透過してオルトジクロロベンゼンに光が到達し、トリクロロビフェニルを生成するのを阻害すると推測される。
【0031】
この発明においては、かかる油状物質として、例えば、
香料としても用いられるベンズアルデヒド、α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、リナロール、リモネン、メントール、酢酸リナリル、アミルシンナミックアルデヒド、アンスラニン酸メチル、イソオイゲノール、カプロン酸アリル、酢酸イソブチル、酢酸ベンジル、サリチル酸イソアミル、シトラール、デシルアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、酢酸イソアミル、ツヨシ、チモール、カルバクロール、ヒノキチオール、ビオゾール、アリルイソチオシアネート、クロロブタノールなど
を挙げることができる。
【0032】
また、天然精油としては、例えば、
植物抽出油であるヒマシ油、ホウコウハクユビターアーモンド油、ヒノキ油、ナツメグ油、ゼラニウム油、ラベンダー油、ライム油、ペパーミント油、ベチパー油、スィートオレンジ油、タイム油、チョウジ油、セージ油、バジル油、ヒバ油など
を挙げることができる。
【0033】
また、動物抽出物であるムスク、アンバーグリス、シベットなど、また、これらの合成物(例えば、アンバーグリス様成分として知られるアンブロオキサイドなど)を、適当な溶媒に溶解した精油を用いてもよい。
さらに、天然精油抽出物としては、精油中の構成成分である液状成分又は固体成分を、適当な溶媒に溶解させたものを単独あるいは複数用いてもよい。
【0034】
また、油状物質として、例えば、
エンペントリン、アレスリン、レスメトリン、ペルメトリン、エトフェンプロックス、テトラメスリン、フラメトリン、フェノトリン、プラレトリンなど
のピレスロイド系の化合物を用いてもよい。
【0035】
また、固体の揮散性物質である、2,4,6−イソプロピル−1,3,5−トリオキサン(商品名「サンサブリ」;小川香料(株)製)、トリシクロドデカン(商品名「アイサワーD」;出光石油化学(株)製)、アダマンタン、2−ヒドロキシカンファー(慣用名;ボルネオール)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(慣用名;ネオペンチルグリコール)、シクロデカンなどを適当な溶媒に溶解させた油状物質を用いてもよい。
【0036】
さらに、特許文献1に示される揮発性油状物質、特に天然植物精油の保持剤として利用される液状物質、例えば、
フタル酸ジエステル類、トリエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール誘導体、ベンジルアルコール誘導体、液体パラフィン、シリコンオイルなど
を挙げることができる。
この中でも、フタル酸ジアルキルが、この発明にとり好適である。
【0037】
つぎに、添加剤として例示されるものは、紫外線吸収剤及び光触媒である。
これらの添加剤は、光を吸収し、あるいは光エネルギーを変換させる機能を有するものであって、その機能によってジクロロベンゼンが受光し、トリクロロビフェニルが生成することを阻害するものと推測される。
【0038】
前記紫外線吸収剤としては、安息香酸エステル系、サリチル酸系、ケイ皮酸系、ウロカニン系、ベンゾフェノン系などを挙げることができる。
【0039】
より具体的には、
パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチルなどの安息香酸エステル系紫外線吸収剤、
サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸p−tert−ブチルフェニルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤、
ケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピルなどのケイ皮酸系紫外線吸収剤、
ウロカニン酸エチルなどのウロカニン系紫外線吸収剤、
ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤
などを挙げることができる。
【0040】
また、光触媒としては、金属酸化物半導体、金属硫化物半導体、金属錯体およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
具体的には、金属酸化物半導体として、
酸化チタン(アナターゼ型結晶性、ルチル型結晶性、アナターゼ/ルチル混晶型酸化チタン)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In)、酸化銀(AgO)、酸化マンガン(MnO)、酸化銅(CuO)、酸化鉄(Fe)、酸化スズ(SnO)、酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)など
を挙げることができる。
【0042】
また、金属硫化物半導体としては、
硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化インジウム(In)、硫化鉛(PbS)、硫化銅(CuS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化タングステン(WS)、硫化アンチモン(Sb)、硫化ビスマス(Bi)など
を挙げることができ、これ等の半導体としては、シリカ、バイコールガラス、ゼオライトに担持されたものも用いられる。
【0043】
さらに、金属錯体としては、
ルテミウム(Ru)錯体、レニウム(Re)などを中心金属とするポリピリジル錯体、亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)などのポルフィリン錯体と金属フタロシアニンなど、ポリパラフェニレン(PPP)とコバルトサイクラム(Co−Cyclam)錯体、金属カルボニル錯体など
を挙げることができる。
【0044】
この発明におけるジクロロベンゼンとしては、一般的なパラジクロロベンゼンとオルトジクロロベンゼンを挙げることができる。
【0045】
これらジクロロベンゼンに対する前記添加剤の添加量は、添加剤の種類あるいはその機能の強弱により異なる。
少量の添加、例えば、ジクロロベンゼン100質量部当たり0.1質量部でも効果が認められる。
したがって、多量添加、例えば500質量部も加えれば、当然のことであるが、添加剤の種類を問わず効果が認められるが、目的とする効果とコストを考慮すれば、通常1質量部〜30質量部の範囲で、添加剤の特性に応じて用いられる。
それによって、ジクロロベンゼンの受光によるトリクロロビフェニルへの変成を抑制することができ、しかも、添加剤無添加の場合に比し、95%以上という抑制率で抑制することができる。
【0046】
この発明のジクロロベンゼン製剤として、パラジクロロベンゼンを用いる場合には、パラジクロロベンゼンと、前記した添加剤の他に、目的に応じて任意に他の薬剤を添加することができる。
かかる添加剤としては、例えば、気化性防黴剤、抗酸化剤、安定剤、結着剤、着色剤等を挙げることができる。
これら添加剤を添加し、打錠することによってタブレット状又はボール状あるいは棒状等に成型された製剤が得られ、衣料品等の防虫剤やトイレ等の防臭剤などに使用するパラジクロロベンゼン製剤を得ることができる。
【0047】
また、オルトジクロロベンゼンを用いる場合には、オルトジクロロベンゼンと、前記した添加剤と、必要に応じてクレゾールなどの消毒剤等、その他の薬剤を含む乳剤の形態とすることで、汲み取り式トイレなどに用いられる、うじ用殺虫剤を得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例に基づいて、この発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、この発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
<実施例1〜7,9及び10、対象例1〜、比較例1〜4>
薬剤成分であるジクロロベンゼンとジクロロベンゼン変成抑制用の添加剤を、表1に示すように種々組み合わせて、実施例1〜7,9及び10、対象例1〜の製剤を作製した。
なお、比較例としては、添加剤の無い製剤(比較例1,2)、遮光試験用の製剤(比較例3)、製剤を用いない場合(比較例4)について行った。
なお、添加剤(2)は通常、天然精油などを加える場合に保持剤として使用されているものである。
【0050】
【表1】
【0051】
<評価試験1>
実施例1〜7,9及び10、対象例1〜、比較例1〜2について、各1gを蛍光灯照射(室温)下に48時間静置し、添加剤が添加されていない比較例1〜2と対比することにより、トリクロロビフェニル生成の抑制率(%)を求め、表2に示した。
また、比較例3(比較例1と同一処方)については、遮光下において48時間静置したもので、その際のトリクロロビフェニル生成の抑制率(%)を求めた。
【0052】
前記の抑制率(%)は、蛍光灯の照射下に48時間静置した際の、ジクロロベンゼン(添加剤含有物と添加剤非含有物)に含まれるトリクロロビフェニルの量を、ガスクロマトグラフ質量分析計によって測定し、下記の計算式で求めたものである。
<計算式>
{(添加剤を含有しないジクロロベンゼンからのトリクロロビフェニル変成量−添加剤含有ジクロロベンゼンからのトリクロロビフェニル変成量)/(添加剤を含有しないジクロロベンゼンからのトリクロロビフェニル変成量)}×100
【0053】
<評価試験2>
実施例1〜7,9及び10、対象例1〜、比較例1,2,4について、各1gと、供試虫(コイガ5〜6週令)20頭および蝕害布(羊毛)を50リットル密閉容器内に設置した。
7日間経過後、蝕害量及び供試虫の状態を調べた。
蝕害量は、試験前後の重量変化率(%)を求め、表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
評価試験1によって、実施例1〜7,9及び10、対象例1〜においては、添加剤を使用しない比較例1,2との比較で、比較例3の遮光した場合と同程度までトリクロロビフェニルの生成が抑制されていることが分かる。
このことから、この発明には、ジクロロベンゼンに光が当たることにより生成するトリクロロビフェニルの生成を抑止する効果があることが分かる。
【0056】
また、評価試験2の実施例1〜7,9及び10、対象例1〜から明らかなように、この発明のジクロロベンゼン変抑制方法、またジクロロベンゼン製剤によれば、蝕害布の重量変化が殆どない。
さらに、供試虫が全数死亡していることから、防虫・殺虫効果も従来のもの(比較例1,2)と同等であることが確認された。
このことから、この発明にかかるジクロロベンゼン変成抑制方法、またジクロロベンゼン製剤は、ジクロロベンゼンの特性(防虫・殺虫活性)に殆ど悪影響を及ぼさないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、受光によるジクロロベンゼンのトリクロロビフェニルへの変成を抑制し、ジクロロベンゼンを防虫剤や消臭剤として使用する際の問題点を解消するので、それら防虫剤や消臭剤を製造ないし取扱う業界に利用される可能性の高いものである。