特許第6222543号(P6222543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222543建築用軸組部材およびそれを使用した建築用軸組み構法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222543
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】建築用軸組部材およびそれを使用した建築用軸組み構法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20171023BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   E04B1/58 508L
   E04B1/26 G
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-92041(P2013-92041)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-214480(P2014-214480A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395021066
【氏名又は名称】すてきナイスグループ 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】平田 恒一郎
(72)【発明者】
【氏名】横路 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松浦 裕紀
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−146920(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3057334(JP,U)
【文献】 特開2004−204926(JP,A)
【文献】 実開昭56−097413(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する一方の木材に装着されるフック部材と、他方の木材に装着されるロック部材からなる軸組部材であって、
前記フック部材は、
所要の厚みを有する板状のフック主体からなるもので、その基端側には、その上下の縁部にピン挿通部がそれぞれ形成されるとともに、その先端側には、前記ロック部材の係着部と係合する係合部が、その中心から一方側に偏倚させて突出形成され、前記係合部の外周面に、当該フック部材の回動を阻止するための回転防止用ピンを挿通させるためのピン孔が、軸方向に沿って設けられ、
前記ロック部材は、
軸部の基端部に設けられた係止板を有するとともに、先端部にリング状の溝部を介して係着部を有するものであること
を特徴とする建築用軸組部材。
【請求項2】
前記フック部材の係合部は、
円柱状であって、その中心部に先端面に開口するスリットが形成されるとともに、スリットの相対する内面が、前記ロック部材の係着部と密着係合するよう形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の建築用軸組部材。
【請求項3】
前記スリットは、
前記係合部を有するフック部材に対して、直交するよう形成されていること
を特徴とする請求項2に記載の建築用軸組部材。
【請求項4】
前記ロック部材の軸部は、
その断面が、角型になるよう形成されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の建築用軸組部材。
【請求項5】
前記フック部材のピン挿通部は、
前記フック主体の基端側の上下の縁部に形成された、上下対称のU字状の溝部からなること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の建築用軸組部材。
【請求項6】
前記ロック部材の係着部は、
前記フック部材の係合部と密着可能な形状を有すること
を特徴とする請求項1に記載の建築用軸組部材。
【請求項7】
交差させる木材の一方に装着されるロック部材と、他方の木材に装着されるフック部材とからなる軸組部材を使用した軸組み方法であって、
前記ロック部材を装着する一方の木材の側面に、前記フック部材の先端部に突出形成された係合部を受け入れる装着部を形成するとともに、この装着部に貫通する挿通孔を、前記側面と相対する側面から形成し、
前記挿通孔から前記ロック部材の軸部を挿通して、ロック部材の先端に設けられた係着部を前記装着部内に突出させ、
ついで、前記フック部材を水平な状態で、その係合部を前記ロック部材の係着部に係合させたのち、当該フック部材を90°回転させてフック部材を前記一方の木材の側面に対して直交状態とし、
前記一方の木材に直交状態で保持されているフック部材の係合部の外周部に形成されたピン孔から、ピンを挿通させて前記フック部材の回転を阻止し、
しかるのち、あらかじめ前記フック部材の装着部を小口に形成した他方の木材の、前記装着部内にフック部材を嵌め込み、前記一方の木材にあらかじめ形成したピン挿通孔からピンを、フック部材に形成したピン挿通孔に打ち込んで、フック部材を固定すること
を特徴とする建築用軸組み法。
【請求項8】
前記ロック部材の軸部は、
その断面が、角型になるよう形成されていること
と特徴とする請求項7に記載の建築用軸組み法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建築における軸組構法に使用される建築用軸組部材と、この建築用軸組部材を使用した建築用軸組み構法に関するものであって、建築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築において、柱部材と梁部材を直交状態で結合させるに際して使用される建築用軸組構造と軸組具として、例えば、特許第3996343号公報(特許文献1)がある。
【0003】
前記特許文献1に記載の建築用軸組構造は、互いに交差し合って軸組固定される柱状の受部材及び交差部材と、両部材間にあって両部材を互いに係止固定せしめる軸組フックとを備え、この軸組フックが受部材内に挿入係止されて、受部材側に軸組フック自体を係着せしめる係止フックと、前記係着状態で受部材の軸組面より突出して交差部材の木口側を受け止めて係止する受けフックとを備えてなるものである。
【0004】
かかる建築用軸組構造において、前記受部材内に挿入され、その挿入端側が、受部材内部で前記係止フックと係脱可能に係止されることにより、前記受けフックが交差部材を受け止めた際に、受部材の前記軸組面の反対側からの支持反力を補うように牽引作用をする補強連結具を設け、この補強連結具が棒状のピンからなり、係止フックに係止される係止部が、前記ピンの端部周面に形成され、係止フックを収容係止する溝状の係止部を有するものである。
【0005】
前記建築用軸組構造に用いられる軸組具は、軸組固定される柱状の受部材と交差部材間にあって、両部材を互いに係止固定せしめ、受部材内に挿入係止されて、受部材側に軸組フック自体を係着せしめる係止フックと、前記係着状態で受部材の軸組面より突出し、交差部材の木口側を受止めて係止する受けフックとを備えた軸組フックと、前記受部材内に挿入され、その挿入端側が受部材内部で、前記係止フックと係脱可能に係合されることにより、前記受けフックが交差部材を受け止めた際に、受部材の前記軸組面の反対側からの支持反力を補うように牽引作用をする補強連結具とからなるものである。
【0006】
すなわち、この特許文献1に記載の軸組具は、軸組フックと、この軸組フックに係着させる連結補強具とから構成されるものである。
前記軸組フックは、前記特許文献1の図3で明らかなように、受けフックと、この受けフックの一端面に設けられる係止フックおよびキー部で構成されている。
【0007】
前記連結補強具は、棒状のピンからなるもので、その端部近傍の周面には、前記係止フックと係合する溝状の係止部が形成されている。
【0008】
かかる軸組フックは、柱部材の一端面内に軸組フックが装着され、この軸組フックに形成された係止フックに、前記一端面と相対する他端面から挿入された連結補強具の端面に形成した溝状の係止部を係着させ、軸組具を柱部材内に固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3996343号公報(請求項1,図2図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載の軸組具における係止フックとキー部は、同文献の図4に示されているように、受けフックの一方の側縁に係止アームを介して係止フックが付設され、前記係止アームと一体にキー部が付設されている。
【0011】
特に、前記係止アームの端面に付設される係止フックは、出願人が作成した図5で明らかなように、正面視が縦長の楕円形状であって、その厚さは約8mm、キー部も正面視が縦長の楕円形状で、厚さは約6mmと、強度を必要とするためきわめて重厚な造りとなっている(参照)
そのため、この軸組具を受け入れる受部材(柱)には、図4(A)および(B)に示すように、前記軸組具の形状と相応する装着部を形成する必要がある。
【0012】
しかしながら、装着部の形状がきわめて複雑であるため、あらかじめ装着部を形成するためのプレカット工場が限定されるとともに、プレカットの精度が求められるため、装置そのものが高価なものになる。
【0013】
さらに、前記軸組具を受部材に装着した場合、当該軸組具が振動などによって受部材内で上下動するのを防止するため、特許文献1の図7に示される樹脂製のスペーサを必須とするが、樹脂製のため、下からの突き上げである逆せん断力に弱い。
かつ、軸組具が鋳物製であるのに対し、前記スペーサは樹脂であるため、使用者に不安感を与えるという問題を有している。
【0014】
さらにまた、柱に2つの梁を直交させて設ける場合、受フックに形成する係止フックおよびキー部の形成位置が異なる複種類の軸受具を必要とするために、相対的に軸組構法のコストを押し上げるという課題がある。
【0015】
この発明はかかる現状に鑑み、柱や梁などへの軸組具の装着に際し、ドリルやノミによる穴開け加工で行うことができ、軸組部材の柱や梁への固定は、軸組部材を構成する一方の連結固定部材を90°回転させるという容易な手法で実施でき、柱に2本の梁を直交させて配置する場合には、形状の異なる軸受部材を使用するのではなく、1種類の軸受具を2個使用して行うことのできる施工が容易な建築用軸組部材と、この建築用軸組部材を使用した建築用軸組み構法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の建築用軸組部材は、
交差する一方の木材に装着されるフック部材と、他方の木材に装着されるロック部材か
らなる軸組部材であって、
前記フック部材は、
所要の厚みを有する板状のフック主体からなるもので、その基端側には、その上下の縁部にピン挿通部がそれぞれ形成されるとともに、その先端側には、前記ロック部材の係着部と係合する係合部が、その中心から一方側に偏倚させて突出形成され、前記係合部の外周面に、当該フック部材の回動を阻止するための回転防止用ピンを挿通させるためのピン孔が、軸方向に沿って設けられ、
前記ロック部材は、
軸部の基端部に設けられた係止板を有するとともに、先端部にリング状の溝部を介して
係着部を有するものであること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の建築用軸組部材において、
前記フック部材の係合部は、
円柱状であって、その中心部に先端面に開口するスリットが形成されるとともに、スリットの相対する内面が、前記ロック部材の係着部と密着係合するよう形成されていること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の建築用軸組部材において、
前記スリットは、
前記係合部を有するフック部材に対して、直交するよう形成されていること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項4に記載の建築用軸組部材は、
請求項1〜3のいずれかに記載の建築用軸組部材において、
前記ロック部材の軸部は、
その断面が、角型になるよう形成されていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の建築用軸組部材において、
前記フック部材のピン挿通部は、
前記フック主体の基端側の上下の縁部に形成された、上下対称のU字状の溝部からなること
を特徴とするものである
【0021】
この発明の請求項6に記載の建築用軸組部材は、
請求項1に記載の建築用軸組部材において、
前記ロック部材の係着部は、
前記フック部材の係合部と密着可能な形状を有すること
を特徴とするものである。
【0022】
さらに、この発明の請求項7に記載の発明は、
交差させる木材の一方に装着されるロック部材と、他方の木材に装着されるフック部材とからなる軸組部材を使用した軸組み方法であって、
前記ロック部材を装着する一方の木材の側面に、前記フック部材の先端部に突出形成された係合部を受け入れる装着部を形成するとともに、この装着部に貫通する挿通孔を、前記側面と相対する側面から形成し、
前記挿通孔から前記ロック部材の軸部を挿通して、ロック部材の先端に設けられた係着部を前記装着部内に突出させ、
ついで、前記フック部材を水平な状態で、その係合部を前記ロック部材の係着部に係合させたのち、当該フック部材を90°回転させてフック部材を前記一方の木材の側面に対して直交状態とし、
前記一方の木材に直交状態で保持されているフック部材の係合部の外周部に形成されたピン孔から、ピンを挿通させて前記フック部材の回転を阻止し、
しかるのち、あらかじめ前記フック部材の装着部を小口に形成した他方の木材の、前記装着部内にフック部材を嵌め込み、前記一方の木材にあらかじめ形成したピン挿通孔からピンを、フック部材に形成したピン挿通孔に打ち込んで、フック部材を固定すること
を特徴とする建築用軸組み法である。
【0023】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項7に記載の建築用軸組み法において、
前記ロック部材の軸部は、
その断面が、角型になるよう形成されていること
と特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかる建築用軸組部材は、板状体からなるフック主体の先端面に、中心から偏倚させて設けた係合部を突出形成させたフック部材と、前記係合部と係合可能な係着部が軸部の先端部に設けられたロック部材とからなるものであって、いずれもその構成がきわめて簡単なものであるので、ドリルや、ノミおよび/または丸ノコによる穴あけ加工のみで、フック部材とロック部材をそれぞれ木材に、それぞれ装着させることができる。
【0025】
その結果、軸組部材を装着するための穴開け加工のためのプレカット形状が簡単であるので、プレカット工場の選択肢が増えるとともに、プレカットにもハイレベルな技術が要求されないので、相対的に軸組み作業の短縮化とコストの低減を図ることができる。
【0026】
さらに、軸組みされる木材が下方から受ける逆せん断応力は、前記軸組部材と木材で抵抗を受けるため、構築物の強度を大幅に向上させることができる。
【0027】
さらにまた、フック部材に設けられる係合部は、フック主体の先端部に偏倚させた状態で設けられているので、従来の軸組部材のように形状の異なる複数の軸組部材をあらかじめ準備する必要がなく、1種類の軸組部材で対応することが可能となった。
【0028】
この発明にかかる建築用軸組み構法は、使用する軸組部材の構成が簡易であるので、軸組みしようとする木材に対し、ドリルや、ノミおよび/または丸ノコのみで穴あけ加工を行うことができるので、軸組みにおける作業能率を大幅に向上させることができ、熟練者でなくても軸組み構法を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、この発明にかかる軸組部材の概略説明図である。
図2図2は、この発明の軸組部材を構成するフック部材とロック部材の係合方法を示す説明図であって、(A)は装着前を、(B)はロック部材に対してフック部材を水平状態で係合させた状態を、(C)はフック部材を90°回動させる状態を、(D)はフック部材とロック部材の係合状態を示すものである。
図3図3は、使用状態の一例を示す説明図である。
図4図4は、従来の軸組具を装着するための柱部材に形成される装着部の形状を示すものであって、(A)は、軸組フックを装着するためのプレカット形状を、(B)は補強連結部を装着するためのプレカット形状を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明にかかる軸組部材と、この軸組部材を使用した建築用軸組み構造を、添付の図面に基づいて説明する。
なお、この発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内において、種々改良を加えることができるものである。
【0031】
この発明にかかる軸組部材1は、図1に示すように、フック部材2とロック部材3とで構成されるものである。
前記フック部材2は、剛性を有する金属又は高強度のFRPなどからなるもので、所要の厚みを有する板状体でフック主体2aが形成される。
【0032】
このフック主体2aの基端側の上下の縁部には、それぞれU字状の溝部を上下対称に形成して、固定用のピンのピン挿通部4,4としたもので、基端部には、前記フック主体2aの縦方向の幅よりも幅狭の把手部5が形成されている。
なお、図中、4aも、固定用のピンのピン挿通部であって、前記ピン挿通部4,4と共労してフック部材2を軸組部材に強固に固定するものである。
【0033】
前記フック主体2aの中央部には窓部6が開口され、フック主体2aの軽量化を図るとともに、先端面には、係合部7を、前記先端面の中心部から一方側(実施例では上方)に偏倚させて突出形成している。
【0034】
前記係合部7は、図1および図2で明らかなように、短い円柱体からなるもので、その中心部に、前記フック主体2aの先端部と直交する状態(水平状態)で幅広のスリット8が形成されている。
この係合部7は、後述するロック部材3の先端部に設けられた係着部13と係合させるためのもので、スリット8を挟んだ各内周面は、図2で明らかなように、それぞれ弧状に形成されている。
【0035】
なお、前記係合部7の外周面の一部には、前記フック部材2の回動を防止するためのピンを挿通させるためのピン孔9が形成されているので、図1に示すように、ピン10を前記ピン孔9に挿通させることによって、フック部材2の回動を防止するものである。
【0036】
前記ロック部材3は、所要の長さを有する角状の軸部11の基端側に付設され、木材の側面に埋め込まれる係止板12と、先端側には、前記軸部11と一体の小径の軸を介して前記係合部7と密着係合する係着部13とからなるものである。
【0037】
前記係着部13は、フック部材2の係合部7に形成されたスリット8と係合可能な頭部を有し、その上下面は、前記係合部7内に形成された弧状面と密着係合するよう弧状に形成されている。
【0038】
かかるフック部材2とロック部材3は、フック部材2の係合部7と、ロック部材3の係着部13を図2(A)に示すように相対させ、水平状態にあるフック部材2に対して、前記係着部13を図2(B)に示すように係合部7に差し込み、しかるのち、図2(C)に示すように、フック部材2を90°回転させることによって、図2(D)に示すように確実に両者を結合させることができるものである。
【0039】
かかる構成からなるフック部材2とロック部材3からなる軸組部材1は、以下のように使用される。
【0040】
図3は、軸組部材を構成する柱材14に対し、2本の梁材15,16を直交させて軸組みする場合を示すものであって、同一形状の2組の軸組部材A(フック部材A1,ロック部材A2)と、軸組部材B(フック部材B1,ロック部材B2)が使用される。
【0041】
まず、柱材14の相対する一方の側面に、フック部材A1の係合部7を装着するための装着部(図示せず)を形成するとともに、この装着部に貫通する挿通部を、他方の面から形成してロック部材A2の挿通部とする。
なお、図示しないが、前記他方の面には、ロック部材2の係止板12を係着させるための凹状の係合部が形成され、前記係止板12の表面と柱材14の表面が面一となるよう構成される。
【0042】
同様に、前記一方の面に隣接する側面に、フック部材B1の係合部7を装着するための装着部(図示せず)を形成するとともに、この装着部に貫通する挿通部を、他方の面から形成してロック部材B2の挿通部とする。
【0043】
しかるのち、前記各挿通部にロック部材A2およびロック部材B2を図3に示すように挿通させ、各装着部に顕出したロック部材A1およびB1の係着部に、それぞれフック部材A1,B1を水平状態に維持しながら、その係合部7を係着させ、両者を密着係合させたのち、各フック部材A1,B1を90°回転させて図3に示すように、柱材14に対して直交状態で保持する。
【0044】
ついで、柱材14に直交状態で保持されてフック部材A1,B1の各ピン孔に回動防止用のピンを打ち込み、各フック部材A1,B1を柱材14に固定するものである。
【0045】
柱材14に固定された各フック部材A1,B1に対し、小口に前記フック部材A1,B1を受け入れるための装着部を形成した梁材15,16を、それぞれ対応して配置したのち、小口に形成された装着部にそれぞれフック部材A1,B1を装着し、各フック部材A1,B1に形成されたピン挿通部4,4aに対応してあらかじめ梁材15,16に形成されたピン挿通孔(図示せず)からピンを打ち込み、柱材14に対し梁材15,16を固定して軸組みするものである。
【0046】
なお、前記柱材14に2組の軸組部材を設ける場合、各係合部7,7は、各フック主体2aの先端面に偏倚させて設けられているので、その位置を縦方向において位相させることによって、各フック部材2の取付位置を同じ高さにすることができるものである。
【0047】
以上述べたように、1本に柱材14に対し、2本の梁材15,16を軸組みする場合であっても、使用する軸組部材は同一形状のものを、各フック部材に設けた係合部の位置を上下方向で違えることによって対応させることができるので、上下方向に間隔を狭めた状態でも装着できる。
【0048】
しかも、使用するのは、1種類の軸組部材で済むので、従来の軸組具のように形状のことなる複数の軸組具を用意する必要がなく、作業性や経済性に優れたものである。
【0049】
さらに、前記ロック部材3は、軸部11の断面を角型としているので、軸組しようとする木材に装着した場合、それ自体回転することがない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明の建築用軸組部材およびそれを使用した建築用軸組み構法は、軸組部材がフック部材とロック部材で構成され、前記フック部材には、ロック部材と係合する係合部が先端面の中心から偏倚した位置に設けられているので、1種類の軸受部材で柱材に対して複数の梁材を軸組することが可能であるため、広い範囲で軸組を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 軸組部材
2 フック部材
3 ロック部材
4 ピン挿通部
4a ピン挿通部
5 把手部
6 窓部
7 係合部
8 スリット
9 ピン孔
10 ピン
11 軸部
12 係止板
13 係着部
14 柱材
15 梁材
16 梁材
図1
図2
図3
図4