(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のラジエータシール構造を備える車両では、ラジエータ(熱交換器)の前面の下方位置にインタークーラ(熱交換器)が配置される。すなわち、ラジエータの前面のうち、下部は前方からインタークーラに覆われ、上部はインタークーラの上方に露出している。このように、ラジエータの前面がインタークーラの上方に露出しているので、冷却ファンによってラジエータの前面側に発生する負圧の領域(負圧域)がインタークーラの上方の開放された空間に拡散する。このため、冷却ファンによって発生する負圧をインタークーラに対して有効に活用することが難しく、インタークーラへの空気の流量を十分に確保できない可能性がある。
【0006】
また、走行風がインタークーラを通過することなくインタークーラの上方からインタークーラの後面側の負圧域に流入する可能性がある。この場合、走行風がインタークーラの後面側の負圧域の圧力を上昇させることによって、インタークーラの前後の圧力差が小さくなるおそれがあり、インタークーラへの空気の流量が低下するおそれがある。
【0007】
これに対し、特許文献2に記載の熱交換器のシール構造では、第2の熱交換器と第1の熱交換器とが略同じ大きさで形成されて締結ボルトにより互いに締結固定され、第2の熱交換器及び第1の熱交換器の外周に軟質樹脂フィルムが一体に被覆されるので、上記不都合は生じ難い。しかし、第2の熱交換器と第1の熱交換器とが略同じ大きさなので、一体化された熱交換器(冷却装置)の周囲に配置される他の部品等は、冷却装置から発生する熱による影響を第2の熱交換器及び第1の熱交換器の双方から受け易い。このため、冷却装置の周囲の他の部品等が高温化し易くなる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、熱交換器への空気の流量を十分に確保することができ、且つ周囲の部品の高温化を抑制することが可能な車両の冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の車両の冷却装置は、第1熱交換器と第2熱交換器とクロージャとファンとを備える。第1熱交換器は、車体フレームに支持され、第1前面から第1後面への空気の通過を許容する。第2熱交換器は、第1熱交換器の後方に配置されて車体フレームに支持され、第2前面から第2後面への空気の通過を許容する。第1熱交換器の第1後面の面積は、第2熱交換器の第2前面の面積よりも小さい。クロージャは、第1熱交換器の周縁と第2熱交換器の周縁とを連続して第1熱交換器と第2熱交換器との間隙を塞ぎ、第1熱交換器の第1後面から第2熱交換器の第2前面への空気の中継流路を区画形成する。ファンは、第2熱交換器の後方に配置され、第1熱交換器の第1前面から中継流路を介して第2熱交換器の第2後面へ通過する空気の流れを生成する。
本発明の一態様の車両の冷却装置は、第1熱交換器と第2熱交換器とクロージャとファンとエアダムとを備える。第1熱交換器は、車体フレームに支持され、第1前面から第1後面への空気の通過を許容する。第2熱交換器は、第1熱交換器の後方に配置されて車体フレームに支持され、第2前面から第2後面への空気の通過を許容する。クロージャは、第1熱交換器の周縁と第2熱交換器の周縁とを連続して第1熱交換器と第2熱交換器との間隙を塞ぎ、第1熱交換器の第1後面から第2熱交換器の第2前面への空気の中継流路を区画形成する。ファンは、第2熱交換器の後方に配置され、第1熱交換器の第1前面から中継流路を介して第2熱交換器の第2後面へ通過する空気の流れを生成する。エアダムは、ファンよりも下方に配置されて前後方向に交叉し車幅方向に延びて前上方を向く案内面を有し、車体フレームに対して固定される。第1熱交換器の第1後面の面積は、第2熱交換器の第2前面の面積よりも小さい。
第1熱交換器の第1後面は、第2熱交換器の第2前面のうち上端側の領域に対向せずに下端側の領域に対向する。エアダムの案内面は、第1熱交換器及び第2熱交換器の下方を通過する走行風を、後上方へ流通させてファンの後方へ案内する。
【0010】
上記構成では、クロージャが第1熱交換器の周縁と第2熱交換器の周縁とを連続して第1熱交換器と第2熱交換器との間隙を塞ぐので、ファンが生成する空気の流れによって第2熱交換器の前方に発生する負圧域は、第1熱交換器と第2熱交換器との間から中継流路の外部へ拡散しない。このため、ファンにより発生する負圧を第1熱交換器に対して有効に活用することができ、第1熱交換器への空気の流量を十分に確保することができる。
【0011】
また、クロージャが第1熱交換器と第2熱交換器との間隙を塞ぐので、第1熱交換器と第2熱交換器との間から第1熱交換器の第1後面側への走行風の流入が防止される。これにより、走行風による第1熱交換器の第1後面側の圧力の上昇を防止することができるので、第1熱交換器の第1前面側と第1後面側との圧力差を減少させることなく、第1熱交換器への空気の流量を十分に確保することができる。
【0012】
また、クロージャが第1熱交換器と第2熱交換器との間隙を塞ぐので、第1熱交換器を通過した空気は、第1熱交換器と第2熱交換器との間隙から外部へ流出することがなく、クロージャによって確実に第2熱交換器の第2前面へ案内される。このため、第2熱交換器への空気の流量を確実に確保することができる。
【0013】
また、第1熱交換器の第1後面の面積が第2熱交換器の第2前面の面積よりも小さいので、第1熱交換器を第2熱交換器よりも小型化することができる。このように、第1熱交換器を第2熱交換器よりも小型化することによって、第1熱交換器を小さくした分だけ冷却装置から発生する熱の影響が及ぶ範囲を縮小することができるので、冷却装置の周囲に配置される他の部品の高温化を抑制することが可能となる。
【0015】
また、エアダムの案内面が走行風をファンの後方へ案内するので、ファンの吐出口側の動圧を走行風の動圧によって補助することができる。すなわち、ファンから後方へ吐出される空気とファンの後方の外部の空気との間の抵抗(流路抵抗)を低減することができるので、第1熱交換器等(中継流路及び第2熱交換器を含む)を通過する空気の量はそのまま維持しつつ、ファンの回転数を低下させる等、ファンの負担を低減して燃費の向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換器への空気の流量を十分に確保することができ、且つ周囲の部品の高温化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示し、
図2中の太い矢印は走行風の流れを示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る冷却装置10を備えるトラック(車両)1は、キャブ2が概ねエンジン3の上方に配置される小型のキャブオーバー型のトラック1であって、キャブ2やエンジン3等を支持する車体フレーム4と、トラック1の前端下部で車幅方向に延びるフロントバンパ9と、キャブ2の車幅方向両側の下方に配置される左右のフロントタイヤ6と、車体フレーム4に固定されて左右のフロントタイヤ6を支持するサスクロスフレーム(
図3参照)8とを有する。なお。
図1には、左側のフロントタイヤ6のみを示す。
【0020】
図2に示すように、キャブ2は、キャブ2の前端で略鉛直方向に起立してフロントバンパ9の上方に配置されるフロントパネル5と、キャブ2の下端面を区画するフロアパネル11とを有する。フロアパネル11は、キャブの前端から後方へ延びるフロアパネル前方部12と、フロアパネル前方部12の後端から後上方へ傾斜して延びるフロアパネル傾斜部13と、フロアパネル傾斜部13の後端からフロアパネル前方部12に対して略平行に曲折してキャブの後端まで延びるフロアパネル後方部14とを有し、フロアパネル傾斜部13及びフロアパネル後方部14の下方にエンジン3や冷却装置10を収容するエンジンルーム15を区画する。フロントパネル5の下端部の車幅方向中央部には、エンジンルーム15への空気(走行風)の流入を許容するラジエータ開口16が形成される。ラジエータ開口16は、複数の通気口を有するラジエータグリル(図示省略)で塞がれる。
【0021】
図2及び
図3に示すように、車体フレーム4は、車幅方向両側でトラック1の前後に亘って延びる左右のサイドフレーム7と、車幅方向に沿って延びて左右のサイドフレーム7を連結する複数のクロスフレーム17とを有する。左右のサイドフレーム7には、左右のブラケット18を介してサスクロスフレーム8が固定される。なお、
図2には、右側のサイドフレーム7のみを示している。
【0022】
左右のブラケット18は、前後方向に延びてサイドフレーム7の下面にボルト等によって固定される取付板部19と、取付板部19の前部から下方へ延びる前脚部20と、取付板部19の後部から下方へ延びる後脚部21とをそれぞれ有する。左右のブラケット18の前脚部20及び後脚部21には、サスペンションアーム22及びフロントタイヤ6がそれぞれ連結され、左右でほぼ同様の構成を有するため、以下では左側について説明し、右側の説明を省略する。
【0023】
サスペンションアーム22は、略V字形状に形成され、前後方向に延びる軸(図示省略)を介してその両端部23,24がブラケット18の前脚部20と後脚部21とに傾動自在にそれぞれ連結される。サスペンションアーム22の両端部23,24から車幅方向外側に延びて交叉する先端部25は、フロントタイヤ6に連結される。
【0024】
サスクロスフレーム8は、車幅方向に延びて左右のブラケット18のそれぞれの前脚部20同士を連結する略矩形管形状の第1サスクロスフレーム26と、車幅方向に延びて左右のブラケット18のそれぞれの後脚部21同士を連結する略矩形管形状の第2サスクロスフレーム27と、第1サスクロスフレーム26と第2サスクロスフレーム27との間の車幅方向両側で前後方向に延びて第1サスクロスフレーム26と第2サスクロスフレーム27とを連結する略矩形管形状の左右のストラット28とを有する。なお、第1サスクロスフレーム26及び第2サスクロスフレーム27の形状は、略矩形管形状に限定されず、例えば、下方へ開口する断面略U字状等であってもよい。
【0025】
図2及び
図3に示すように、エンジンルーム15のうちフロアパネル後方部14の下方の左右のサイドフレーム7の間にはエンジン3が搭載され、エンジン3は、エンジンマウント(図示省略)を介して左右のサイドフレーム7に固定される。エンジン3の前端は、第1サスクロスフレーム26よりも後方であって、第2サスクロスフレーム27よりも前方に配置される。エンジン3の前方には、冷却装置10が配置されて左右のサイドフレーム7に固定される。
【0026】
図4及び
図5に示すように、冷却装置10は、ラジエータ(第2熱交換器)29とチャージエアクーラ(第1熱交換器)30とクロージャ33とファン31とシュラウド32とエアダム34(
図2及び
図3参照)とを有する。冷却装置10のうち、ラジエータ29とチャージエアクーラ(以下、CACと称する)30とクロージャ33とファン31とシュラウド32とは、第1サスクロスフレーム26との間に間隙を設けた状態で第1サスクロスフレーム26よりも上方に配置され、エアダム34は、第1サスクロスフレーム26に固定される(
図2及び
図3参照)。なお、CAC30は、インタークーラと称される場合もある。
【0027】
ラジエータ29は、上部タンク35と、下部タンク36と、上部タンク35と下部タンク36とに挟まれたラジエータコア37とを有する板状の構造体であって、フロアパネル後方部14の前端部の下方に配置され、左右のサイドフレーム7にブラケット(図示省略)を介して固定される。ラジエータ29は、前面(第2前面)29aから後面(第2後面)29bへの空気(冷却風)の通過を許容する。上部タンク35には、上部タンク35に接続されるラジエータホース38aからエンジン3等の冷却液が送り込まれる。上部タンク35に送り込まれた冷却液は、ラジエータコア37の複数の細いチューブ(図示省略)内を上方から下方へ通過し、ラジエータコア37を通過する際に、ラジエータ29の前面29aから後面29bへ通過する冷却風との間で熱交換することによって冷却される。冷却された冷却液は、下部タンク36へ流入し、下部タンク36に接続されるラジエータホース38bからエンジン3等へ送り込まれる。
【0028】
CAC30は、車幅方向両端部で上下に延びる左右のCACタンク40と、左右のCACタンク40に挟まれたCACコア41とを有する板状の構造体であって、前面(第1前面)30aから後面(第1後面)30bへの冷却風の通過を許容する。CAC30は、ラジエータ29よりも小型であり、CAC30の前面30a及び後面30bの面積は、ラジエータ29の前面29a及び後面29bの面積よりも小さい。CAC30の後面30bがラジエータ29の前面29aから所定距離だけ前方へ離間した状態で、CAC30は、ラジエータ29の前方、且つフロアパネル傾斜部13の前端部の下方に配置され、左右のサイドフレーム7にブラケット(図示省略)を介して固定される。左右のCACタンク40の一方には、一側の給気管(図示省略)が接続され、該給気管からエンジン3の過給機(図示省略)によって過給された高温の吸気ガスが送り込まれる。一方のCACタンク40に送り込まれた吸気ガスは、CACコア41の複数の細いチューブ44内を一側から他側へ通過し、CACコア41を通過する際に、CAC30の前面30aから後面30bへ通過する冷却風との間で熱交換することによって冷却される。冷却された吸気ガスは、他方のCACタンク40へ流入し、他方のCACタンク40に接続される他側の給気管(図示省略)からエンジン3へ送り込まれる。なお、本実施形態では、CAC30が左右のサイドフレーム7にブラケットを介して固定されたが、これに限定されるものではなく、ラジエータ29及び後述するクロージャ33を介して左右のサイドフレーム7に固定されてもよい。
【0029】
クロージャ33は、樹脂製の板状部材によって形成されて前方から後方へ向かって拡幅する略矩形筒状体であって、前端部のCAC固定部46と、後端部のラジエータ固定部47と、中間部の流路形成部48とを有する。CAC固定部46は、前後方向へ直線状に延びる略矩形筒状体であって、CAC30の周縁よりも僅かに大きく形成されて前方へ開口する前端開口33aを有する。CAC30は、CAC固定部46に前端開口33aから挿入された状態でボルト等(図示省略)によってクロージャ33に固定される。ラジエータ固定部47は、前後方向へ直線状に延びる略矩形筒状体であって、ラジエータ29の周縁よりも僅かに大きく形成されて後方へ開口する後端開口33bを有する。ラジエータ29は、後端開口33bからラジエータ固定部47に挿入された状態でボルト等(図示省略)によってクロージャ33に固定される。流路形成部48は、CAC固定部46の後端からラジエータ固定部47の前端まで連続して延びる略矩形筒状体であって、CAC固定部46からラジエータ固定部47まで斜め後上方へ直線状に延びる上板部と、前後方向へ直線状に延びる左右の側板部及び底板部とを有し、CAC30の後面30bからラジエータ29の前面29aへの冷却風の中継流路45を区画形成する。すなわち、クロージャ33は、CAC30の周縁とラジエータ29の周縁とを連続してCAC30とラジエータ29との間の上記所定距離の間隙を塞ぐ。なお、クロージャは、樹脂製に限定されるものではなく、クロージャ全体が金属で形成されたり、或いは、流路形成部48が中間部にワイヤー等の補強部を有するキャンバスによって形成されたりしてもよい。
【0030】
ファン31は、ラジエータ29の後面29bとエンジン3(
図2参照)との間に配置される軸流ファンであって、ハブ39と、ハブ39の外周から略放射状に延びる複数の羽根42とを有し、回転軸43に連結される。ファン31は、回転軸43側のプーリー(図示省略)やVベルト(図示省略)やエンジン3側のプーリー(図示省略)等を介してエンジン3に連結され、エンジン3によって回転駆動される。ファン31は、回転駆動された際にCAC30の前面30aから中継流路45を介してラジエータ29の後面29bへ通過する冷却風の流れを生成する。
【0031】
シュラウド32は、略矩形状の前端開口32aから略円形状の後端開口32bへ向かって先細る略テーパ状の内周面50を有する筒状体であって、シュラウド32の前端部の外周面からシュラウド32の外側へ向かって突出するフランジ部49を介してラジエータ29の後面29bの周縁部にボルト等(図示省略)によって固定される。シュラウド32と第1サスクロスフレーム26との間には間隙が設けられる。シュラウド32は、内側にファン31を収容し、シュラウド32の内周面50がファン31の羽根42の近傍に配置される。シュラウド32の内周面50は、ファン31によって生成されてCAC30の前面30aから中継流路45を介してラジエータ29の後面29bへ通過した冷却風を後端開口32bへ案内する。後端開口32bへ案内された冷却風は、後端開口32bから吐出される。
【0032】
なお、ラジエータ29とCAC30との間の上記所定距離は、ファン31の送風能力や、ラジエータ29及びCAC30の冷却能力を効率的に利用することができる好適な距離を実験やシミュレーションや計算などによって求め、上記距離に設定されている。
【0033】
図2及び
図3に示すように、エアダム34は、車幅方向に延びて起立する取付板部53と、取付板部53の下端縁から曲折して前下方へ延びる案内板部54と、取付板部53及び案内板部54の車幅方向両端縁を連結する略三角形状の左右の補強板部55とを一体的に有し、取付板部53の後面と第1サスクロスフレーム26の前面とが相対向して密接した状態で溶接やボルト等(図示省略)によって第1サスクロスフレーム26に固定されて下方へ延びる。すなわち、エアダム34は、前後方向に交叉して車幅方向に延びて前方(本実施形態では前上方)を向く案内板部54の上面(案内面)56を有し、第1サスクロスフレーム26を介して車体フレーム4に対して固定される。案内板部54の上面56は、トラック1の走行時にCAC30及びラジエータ29の下方を通過する走行風をシュラウド32と第1サスクロスフレーム26との間の間隙から後上方のファン31の後方へ案内する。なお、本実施形態では、案内板部54が取付板部53の下端縁から曲折して前下方へ延びたが、これに限定されるものではなく、CAC30及びラジエータ29の下方を通過する走行風をファン31の後方へ案内するものであればよい。例えば、案内板部54が取付板部53の下端縁から連続して下方へ直線状に延びてもよい。また、エアダム34を固定する箇所は第1サスクロスフレーム26に限定されず、例えば、エアダム34用のブラケット等を別個に設けてもよい。
【0034】
次に、トラック1の走行時の走行風の流れ及びファン31が生成する冷却風の流れについて説明する。
【0035】
トラック1の走行時には、フロントパネル5の下端部のラジエータ開口16から走行風がエンジンルーム15へ流入する。また、フロントバンパ9の下方からトラック1の後方へ向かってトラック1の下方を走行風が通過する。
【0036】
ラジエータ開口16からエンジンルーム15へ流入した走行風の動圧がCAC30の前面30aに作用する。エンジン3の過給機によって過給された高温の吸気ガスやエンジン3等の冷却液を冷却するために、ファン31が回転軸43を介してエンジン3によって回転駆動される。ファン31が回転駆動されるとファン31の前方に負圧が発生し、シュラウド32の内部及びクロージャ33の内部(ラジエータ29、中継流路45、及びCAC30を含む)が負圧域となる。CAC30の前面30a側の外部の空気(走行風)と、CAC30の後面30b側の負圧域との圧力差により、CAC30の前面30aからCAC30の後面30bへ空気(冷却風)が通過する。CAC30を通過した冷却風は、さらに圧力が低いファン31側へ向かってクロージャ33の内周面に案内されて中継流路45を通過し、ラジエータ29の前面29aへ流れる。冷却風は、ラジエータ29の前面29aから後面29bへラジエータ29を通過し、シュラウド32の内周面50によって後端開口32bへ案内されて後端開口32bから吐出される。
【0037】
一方、フロントバンパ9の下方からトラック1の後方へ向かってトラック1の下方を通過する走行風は、CAC30及びラジエータ29の下方を通過し、エアダム34に衝突する。エアダム34に衝突した走行風は、案内板部54の上面56に案内されて、シュラウド32と第1サスクロスフレーム26との間の間隙から後上方のファン31の後方へ流れる。エアダム34によってファン31の後方へ案内された走行風は、シュラウド32の後端開口32bから吐出された冷却風に合流し、冷却風とともにトラック1の下方へ抜けて後方へ流れる。
【0038】
上記のように構成された冷却装置10では、クロージャ33がCAC30の周縁とラジエータ29の周縁とを連続してCAC30とラジエータ29との間隙を塞ぐので、ファン31が生成する冷却風の流れによってラジエータ29の前方に発生する負圧域は、CAC30とラジエータ29との間から中継流路45の外部へ拡散しない。このため、ファン31により発生する負圧をCAC30に対して有効に活用することができ、CAC30への冷却風の流量を十分に確保することができる。
【0039】
また、クロージャ33がCAC30とラジエータ29との間隙を塞ぐので、CAC30とラジエータ29との間からCAC30の後面30b側への走行風の流入が防止される。これにより、走行風によるCAC30の後面30b側の圧力の上昇を防止することができるので、CAC30の前面30a側と後面30b側との圧力差を減少させることなく、CAC30への冷却風の流量を十分に確保することができる。
【0040】
また、クロージャ33がCAC30とラジエータ29との間隙を塞ぐので、CAC30を通過した冷却風は、CAC30とラジエータ29との間隙から中継流路45の外部へ流出することがなく、クロージャ33によって確実にラジエータ29の前面29aへ案内される。このため、ラジエータ29への冷却風の流量を確実に確保することができる。
【0041】
また、CAC30がラジエータ29よりも小型の板状体なので、CAC30をフロアパネル傾斜部13の後方の近傍に配置することなく、フロアパネル傾斜部13からCAC30を下方へ離間させた状態で、冷却装置10をエンジンルーム15内に配置することができる。このように、フロアパネル傾斜部13からCAC30が離間した分だけ、フロアパネル傾斜部13がCAC30から発生する熱の影響を受け難いので、フロアパネル傾斜部13の温度上昇を抑えることができるとともに、キャブ2内の高温化を抑制することが可能となる。
【0042】
従って、本実施形態によれば、CAC30及びラジエータ29への冷却風の流量を十分に確保することができ、且つ周囲の部品の高温化を抑制することができる。
【0043】
また、エアダム34が走行風をファン31の後方へ案内し、該走行風がファン31によって後端開口32bから吐出された冷却風と合流するので、ファン31によって吐出された冷却風の動圧をエアダム34に案内された走行風の動圧によって補助することが可能となる。すなわち、ファン31から後方へ吐出される冷却風とファン31後方の外部の空気との間の抵抗(流路抵抗)を低減することができるので、後述するように、CAC30等(中継流路45及びラジエータ29を含む)を通過する冷却風の量はそのまま維持しつつ、ファン31の回転数を低下させる等、ファン31の負担を低減して燃費の向上に寄与することができる。
【0044】
エアダム34を設けることにより、ファン31の負担を低減して燃費の向上に寄与することができることについて、
図6のファン31の特性を示す圧力―流量曲線図に基づいて説明する。
図6では、縦軸をファン31の静圧(Pa)とし、横軸を冷却風の流量(m
3/min)とし、ファン特性(Ps1,Ps2)と流路抵抗(R1,R2)との関係を示している。ファン特性Ps1のファン31に対し、エアダム34を設けない場合には、ファン31の後方の流路抵抗がR1であり、冷却風の流量はQ1(
図6中、白丸Aで示す位置)である。一方、ファン特性Ps1のファン31に対し、エアダム34を設けた場合には、エアダム34が走行風をファン31の後方へ案内するので、流路抵抗がR2に低減し、冷却風の流量がQ2(
図6中、白丸Bで示す位置)に増大する。すなわち、エアダム34を設けた場合には、ファン31の回転数(ファン特性Ps1)を変更することなく、冷却風の流量を増大させることができる。また、冷却風の流量をQ1から増大させる必要がなければ、プーリー比を変更する(例えば、ファン31側のプーリーの直径を大きくする)などしてファン31の回転数を下げることによりファン特性をPs1からPs2へ変更し、流量Q1(
図6中、白丸Cで示す位置)を維持することができる。このように、エアダム34を設けることにより、ファン31の回転数を下げても、CAC30等を通過する冷却風の流量Q1を確保することができるので、ファン31の負担を低減して燃費の向上に寄与することができる。
【0045】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、小型のキャブオーバー型のトラック1に冷却装置10を搭載した態様を説明したが、これに限定されるものではなく、大型のトラック等、様々な車両に冷却装置10を搭載してもよい。
【0047】
また、ファン31は、エンジン3に連結されるエンジンファンに限定されず、例えば、モータに接続されて電気によって回転駆動する電動ファンであってもよい。
【0048】
また、第1熱交換器及び第2熱交換器は、それぞれチャージエアクーラ30及びラジエータ29に限定されず、エアコン用のコンデンサやオイルクーラー等であってもよい。