(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用アンダーカバー(床下気流整流装置)では、荷台の下部の側面から底面を覆うので、比較的大きな重量物になり易い。このため、車両用アンダーカバーの自重や取付部の補強部材等によって車両の重量増加を招き易い。
【0006】
このような不都合は、特許文献2に記載のサイドガード(床下気流整流装置)と同様に、荷台の下方の燃料タンク等の機能部品(床下部材)等を下方から覆うことなく側方からのみ覆い、且つ、荷台との間に所定間隔の間隙部を形成することによって回避することが可能である。
【0007】
しかし、荷台の下方の床下部材を下方から覆っていないので、車両の走行中にサイドガードの表面の湾曲に沿って車体下面に流入する横風や、車両の下方を前方から後方へ通過する走行風が床下部材の周囲の空間に下方から流入して空気抵抗を増大させる可能性がある。
【0008】
また、荷台との間に間隙部を形成するので、車両の走行時に車両の側方を通過する走行風が間隙部からサイドガードの内側へ流入し易い。このため、間隙部から荷台の下方へ流入した走行風が床下部材の周囲の空間に側方から流入して空気抵抗を増大させる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、車両の重量増加を抑制しつつ、車両の走行時に走行風による空気抵抗を低減することが可能な車両の床下気流整流装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の車両の床下気流整流装置は、荷台と荷台よりも下方に配置される床下部材とを有する車両の床下気流整流装置であって、床下空間に配置される袋体を備える。床下空間は、荷台の下面と床下部材とによって区画されて車幅方向外側及び下側の少なくとも一側が開放される。袋体は、気体が給排気されることによって膨縮可能であり、給気されて床下空間で膨らんだ展開状態で、床下部材に近接又は接触して床下空間の少なくとも一部を埋め、車両の走行時に床下空間への走行風の流入を抑制する。
本発明の第1の態様の車両の床下気流整流装置は、複数の床下部材を有する車両の上記床下気流整流装置であって、床下空間が、複数の床下部材のうちの少なくとも2つの床下部材に挟まれた空間、又は複数の床下部材のうちの少なくとも1つの床下部材と荷台の下面とに挟まれた空間であり、荷台の下面と複数の床下部材とによって区画される。
【0011】
なお、床下空間は、上方が荷台の下面によって区画され、前方、後方、側方、及び下方の少なくとも一方が床下部材によって区画されていればよい。
【0012】
上記構成では、車幅方向外側及び下側の少なくとも一側が開放される床下空間の少なくとも一部を展開状態の袋体が埋め、車両の走行時に床下空間への走行風の流入を展開状態の袋体が抑制するので、車両の側方や下方を通過する走行風の床下空間への流入による空気抵抗の増大を抑えることができる。
【0013】
また、床下空間の形状は、床下部材の形状によって規定されるので、必ずしも一様ではない。一方、床下空間で膨らむ袋体は、床下部材に接した後、床下部材の外面に沿って展開が進むので、展開完了時の袋体の形状を床下空間に合致させることができる。従って、展開状態の袋体によって様々な形状の床下空間を埋めることができ、様々な仕様の車両に対して袋体を個別に設計することなく汎用部品として使用することができる。また、袋体は、気体によって膨らむので、車両の重量増加を招き難い。
【0014】
また、排気によって袋体が収縮するので、床下部材等の整備作業や点検作業などの際、袋体を収縮させて容易に車体から取り外すことができ、床下部材等に対する整備作業や点検作業などの作業性の低下を抑えることができる。
【0015】
本発明の第2の態様の車両の床下気流整流装置は、上記第1の態様の車両の床下気流整流装置であって、袋体
が、展開状態で荷台の下面及び床下部材に近接又は接触
する。
【0016】
上記構成では、展開状態の袋体が床下部材に加えて荷台の下面にも近接又は接触するので、荷台の下面と床下部材との間の床下空間への車両の側方を通過する走行風の流入を抑えて、該走行風の流入による空気抵抗の増大を防止することができる。
【0017】
また、床下部材の下端が路面の近傍に配置される場合には、袋体と床下部材とによって荷台の下面から路面の近傍までを塞ぐことができ、車両の下方への横風の流入を抑えることが可能となる。このため、車両の下方を通過する走行風に対する横風の影響を抑えることができ、横風による走行安定性の低下を抑制することができる。
【0018】
本発明の第3の態様の車両の床下気流整流装置は、上記第1の態様または上記第2の態様の車両の床下気流整流装置であって、展開状態の袋体
が、床下部材の車幅方向外端部と車幅方向の略同じ位置に配置される車幅方向外側面、及び床下部材の下端部と略同じ高さ位置に配置される下面の少なくとも一方を有
する。
【0019】
上記構成では、展開状態の袋体の車幅方向外側面を床下部材の車幅方向外端部と車幅方向の略同じ位置に配置する場合には、車両の走行時に車両の側方を通過する走行風が後方へ円滑に流れ易くなる。また、展開状態の袋体の下面を床下部材の下端部と略同じ高さ位置に配置する場合には、車両の走行時に車両の下方を通過する走行風が後方へ円滑に流れ易くなる。従って、走行風による空気抵抗をさらに低減することができる。
【0020】
本発明の第4の態様の車両の床下気流整流装置は、荷台と前記荷台よりも下方に配置される床下部材とを有する車両の床下気流整流装置であって、床下空間に配置される袋体を備える。床下空間は、荷台の下面と床下部材とによって区画されて車幅方向外側及び下側の少なくとも一側が開放される。袋体は、荷台の後端部の下方の床下空間に配置され、気体が給排気されることによって膨縮可能である。給気されて床下空間で膨らんだ展開状態の袋体は、袋体の前方から後方へ向かって斜め後上方へ傾斜して延びる下面を有し、床下部材に近接又は接触して床下空間の少なくとも一部を埋め、車両の走行時に床下空間への走行風の流入を抑制する。
【0021】
上記構成では、展開状態の袋体の下面が袋体の前方から後方へ向かって斜め後上方へ傾斜して延びるので、車両の下方を通過する走行風の流路が後方へ向かって徐々に拡大し、該走行風を袋体の下面に沿って荷台の後方へ円滑に流すことができ、走行風による渦の発生を抑えて空気抵抗を低減することができる。また、車両の下方を通過する走行風を袋体の下面に沿って斜め後上方の荷台の後方へ流すことができるので、荷台の後方での負圧の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両の重量増加を抑制しつつ、車両の走行時に走行風による空気抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る床下気流整流装置10が適用されるトラック(車両)1は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)の上方に配置されるキャブオーバー型のトラック1であって、トラック1の車幅方向両側で前後方向に沿って延びる左右1対のサイドフレーム3a,3bと、車幅方向に沿って延びて左右のサイドフレーム3a,3bを連結する複数のクロスフレーム4と、左右のサイドフレーム3a,3bの後部に下方から支持される箱型の荷台5と、荷台5の下方に配置される後述する複数の床下部材7と、エアバッグコントローラ74とを備える。なお、後述するように、左右のサイドフレーム3a,3b及び複数のクロスフレーム4も複数の床下部材7に含まれる。
【0026】
荷台5は、前後で対向して起立する前パネル8及び荷室開閉扉9と、左右で対向して起立する1対の側方パネル11と、上方の天井パネル12と、下方の床パネル13とによって箱状に形成されている。各面体は、隣接する他の4つの面体と略直角に交叉している。
【0027】
複数の床下部材7は、床パネル13の下面6よりも下方に配置される各種の部材、部品、装置等であって、左右のサイドフレーム3a,3b、複数のクロスフレーム4、燃料タンク14、前輪用スペアタイヤ15、後輪用スペアタイヤ16、工具箱17、バッテリ18、エアタンク19、ランプユニット20、左右フェンダー21、リアアンダーランプロテクタ22、デファレンシャルギアボックス29、左右の後輪23,24の車軸25等を含む。
【0028】
燃料タンク14は、上部に給油口27を有する箱体であって、荷台5の前部下方で左側のサイドフレーム3aよりも車幅方向外側に配置され、左側のサイドフレーム3aに対してバンド26によって固定される。燃料タンク14の下端は、路面の近傍に配置される。
【0029】
前輪用スペアタイヤ15は、燃料タンク14と左側の後輪23との間に配置され、左側のサイドフレーム3aに対してブラケット(図示省略)や吊り下げ用のチェーン(図示省略)等を介して脱着自在に搭載される。前輪用スペアタイヤ15の下端は、路面の近傍の燃料タンク14の下端と略同じ高さ位置に配置される。
【0030】
後輪用スペアタイヤ16は、左右のサイドフレーム3a,3bの後部の下方に配置され、左右のサイドフレーム3a,3bに対してブラケット(図示省略)や吊り下げ用のチェーン(図示省略)等を介して着脱自在に搭載される。
【0031】
工具箱17は、内部に工具等を収納する箱体であって、左側の後輪23の後方に配置されて左側のサイドフレーム3aに対して固定される。工具箱17の下端は、路面の近傍の燃料タンク14の下端と略同じ高さ位置に配置される。
【0032】
バッテリ18は、荷台5の前部下方で右側のサイドフレーム3bよりも車幅方向外側に配置され、右側のサイドフレーム3bに対してブラケット等(図示省略)を介して着脱自在に固定される。
【0033】
エアタンク19は、前後方向に隣接した状態で車幅方向に延びる2本の略円筒状のタンクであって、エアタンク19の内圧を逐次検出してエアバッグコントローラ74へ出力するタンク内圧センサ76と、給気バルブ及び排気バルブとして機能するソレノイドバルブ77とをそれぞれ有し、バッテリ18と右側の後輪24との間に配置されて右側のサイドフレーム3bに対してブラケット(図示省略)やバンド30等によって固定される。エアタンク19には、コンプレッサ75(
図4参照)によって圧縮された空気が貯留される。
【0034】
ランプユニット20は、ブレーキランプ(図示省略)やウィンカー(図示省略)等を有し、荷台5の床パネル13の後端縁に固定されて下方へ延びる。
【0035】
左右のフェンダー21は、側面視で下方に広く開口する略U字状部材であり、左右の後輪23,24の上方に配置される。
【0036】
リアアンダーランプロテクタ22は、トラック1の後端下部で車幅方向に延びて、ブラケット28を介して左右のサイドフレーム3a,3bの後端部に固定される。
【0037】
デファレンシャルギアボックス29は、左右のサイドフレーム3a,3bの後部の下方の後輪用スペアタイヤ16よりも前方、且つ左右のサイドフレーム3a,3bの間に配置される。
【0038】
車軸25は、デファレンシャルギアボックス29から車幅方向両側へ延びて左右の後輪23,24同士を連結する。
【0039】
荷台5の床パネル13の下面6と複数の床下部材7との間には第1〜第7の床下空間42a〜42gが存在する。床下空間42a〜42gのそれぞれは、後述するように、上方が荷台5の床パネル13の下面6によって区画され、前方、後方、側方、及び下方の少なくとも一方が複数の床下部材7の少なくとも1つによって区画される。
【0040】
床下気流整流装置10は、トラック1の荷台5の下方に配置されてトラック1に対して固定される複数のエアバッグ(袋体)31〜41を有する。なお、トラック1の左側に配置されるエアバッグ32〜36と、右側に配置されるエアバッグ38〜41とは、床下空間42のうちの左右両側にそれぞれ配置されるが、エアバッグは略同様の構成であるため、以下では左側について説明し、右側についての説明を省略する。
【0041】
図3に示すように、第1のエアバッグ31は、空気(気体)が給排気されることによって膨縮可能な袋体であって、複数のベルト通し67と給気口68と排気口69とエアバッグ内圧センサ81とを有し、給気口68と排気口69とが、それぞれホース78を介してエアタンク19のソレノイドバルブ77に連結される(
図4参照)。エアバッグ内圧センサ81は、第1のエアバッグ31の内圧を逐次検出してエアバッグコントローラ74へ出力する。なお、後述する複数のエアバッグ32〜37は、第1のエアバッグ31と同様に複数のベルト通し67と給気口68と排気口69とエアバッグ内圧センサ81とを有し、ホース78を介してエアタンク19のソレノイドバルブ77に連結されるので、その説明を省略する。
【0042】
第1のエアバッグ31は、荷台5の床パネル13の下面6とデファレンシャルギアボックス29の後端面と後輪用スペアタイヤ16の前側面とによって区画されて下側が開放される第1の床下空間42aに配置される。第1のエアバッグ31は、第1の床下空間42aよりも上下方向に短い袋体であって、第1のエアバッグ31の複数のベルト通し67挿通する左右一対のバンド43によって左右のサイドフレーム3a,3bに対して固定される。第1の床下空間42aバンド43は、締緩可能なラチェット機構(図示省略)を有する帯状体であって、左右のサイドフレーム3a,3bに1つずつ着脱可能に設けられる。第1のエアバッグ31を左右のサイドフレーム3a,3bに対して固定する際には、収縮した状態の第1のエアバッグ31を第1の床下空間42aに配置し、給気して膨らませた状態(以下、展開状態と称する)で第1のエアバッグ31を左右のバンド43のラチェット機構によって締めつける。展開状態の第1のエアバッグ31は、左右のサイドフレーム3a,3bのそれぞれの下面とデファレンシャルギアボックス29の後端面と後輪用スペアタイヤ16の前側面とに接触して第1の床下空間42aのうち左右のサイドフレーム3a,3bよりも下方の領域(第1の床下空間42aの一部)を埋める。第1のエアバッグ31の下面44は、デファレンシャルギアボックス29の下面72と略同じ高さ位置に配置される。なお、後述する複数のエアバッグ32〜37のそれぞれをトラック1に対して固定する各バンドの構成及びバンドによる固定方法は、第1のエアバッグ31のバンド43の構成及び固定方法と略同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
第2のエアバッグ32は、床パネル13の下面6と燃料タンク14の上面と左側のサイドフレーム3aの車幅方向外側面とによって区画されて車幅方向外側が開放される第2の床下空間42bに配置される。第2のエアバッグ32は、第2の床下空間42bよりも前方へ長く延びる袋体であって、左側のサイドフレーム3aに対して前後一対のバンド45によって固定される。展開状態の第2のエアバッグ32は、床パネル13の下面6と燃料タンク14の上面と左側のサイドフレーム3aの車幅方向外側面とに接触して第2の床下空間42bを埋める。展開状態の第2のエアバッグ32の車幅方向外側面46は、燃料タンク14の車幅方向外側面(床下部材の車幅方向外端部)47と略同一平面上(車幅方向の略同じ位置)に配置される。
【0044】
第3のエアバッグ33は、床パネル13の下面6と燃料タンク14の後面と前輪用スペアタイヤ15の前側面とによって区画されて車幅方向外側及び下側が開放される第3の床下空間42cに配置される。第3のエアバッグ33は、第3の床下空間42cと略同じ大きさの袋体であって、左側のサイドフレーム3a及び荷台5の床パネル13に対してバンド48によって固定される。展開状態の第3のエアバッグ33は、荷台5の床パネル13の下面6と燃料タンク14の後面と前輪用スペアタイヤ15の前側面とに接触して第3の床下空間42cを埋める。展開状態の第3のエアバッグ33の車幅方向外側面49は、燃料タンク14の車幅方向外側面47と略同一平面上に配置され、第3のエアバッグ33の下面50は、燃料タンク14の下面(床下部材の下端部)51と略同じ高さ位置に配置される。
【0045】
第4のエアバッグ34は、荷台5の床パネル13の下面6と前輪用スペアタイヤ15の上面と左側のフェンダー21の前面とによって区画されて車幅方向外側が開放される第4の床下空間42dのうち、前輪用スペアタイヤ15を上方から支持する吊り下げ用のチェーン(図示省略)等よりも車幅方向外側の領域に配置される。第4のエアバッグ34は、第4の床下空間42dよりも車幅方向に短い袋体であって、荷台5の床パネル13に対して前後一対のバンド53によって固定される。展開状態の第4のエアバッグ34は、荷台5の床パネル13の下面6と前輪用スペアタイヤ15の上面と左側のフェンダー21の前面とに接触して、第4の床下空間42dのうちの前輪用スペアタイヤ15を上方から支持する吊り下げ用のチェーン等よりも車幅方向外側の領域(第4の床下空間の一部)を埋める。展開状態の第4のエアバッグ34の車幅方向外側面54は、前輪用スペアタイヤ15の車幅方向外端部73と車幅方向の略同じ位置に配置される。
【0046】
第5のエアバッグ35は、荷台5の床パネル13の下面6と燃料タンク14の前面とによって区画されて車幅方向外側及び下側が開放される第5の床下空間42eのうち、第2のエアバッグ32よりも下方の領域に配置される。第5のエアバッグ35は、第5の床下空間42eよりも上下方向に短い袋体であって、燃料タンク14に対して左右一対のバンド57によって固定される。展開状態の第5のエアバッグ35は、第2のエアバッグ32と燃料タンク14の前面とに接触して、第5の床下空間42eのうちの第2のエアバッグ32よりも下方の領域を埋める。すなわち、展開状態の第5のエアバッグ35と第2のエアバッグ32の前部とが第5の床下空間42eを埋める。展開状態の第5のエアバッグ35の車幅方向外側面58は、燃料タンク14の車幅方向外側面47と略同一平面上に配置され、第5のエアバッグ35の下面59は、燃料タンク14の下面51と略同じ高さ位置に配置される。
【0047】
第6のエアバッグ36は、荷台5の床パネル13の下面6と工具箱17の前面と左側のフェンダー21の後面とによって区画されて車幅方向外側及び下側が開放される第6の床下空間42fに配置される。第6のエアバッグ36は、第6の床下空間42fよりも前後方向に短い袋体であって、左側のサイドフレーム3aに対して前後一対のバンド60によって固定される。展開状態の第6のエアバッグ36は、床パネル13の下面6と工具箱17の前面とに接触して第6の床下空間42fを埋める。展開状態の第6のエアバッグ36の車幅方向外側面61は、工具箱17の車幅方向外側面62と略同一平面上に配置され、第6のエアバッグ36の下面55は、工具箱17の下面63と略同じ高さ位置に配置される。
【0048】
第7のエアバッグ37は、荷台5の床パネル13の下面6の後端部52とランプユニット20の前面と工具箱17の後面と後輪用スペアタイヤ16の後側面とによって区画されて車幅方向外側及び下側が開放される第7の床下空間42gに配置される。第7のエアバッグ37は、側面視略三角形状に形成されて車幅方向に延びる袋体であって、荷台5の床パネル13に対して複数のバンド64によって固定される。展開状態の第7のエアバッグ37は、床パネル13の下面6とランプユニット20の後面とに接触し、工具箱17の後面と後輪用スペアタイヤ16の後側面とに近接して第7の床下空間42gを埋める。展開状態の第7のエアバッグ37の車幅方向両端面65は、荷台5の側方パネル11の車幅方向両端面と略同一平面上にそれぞれ配置され、第7のエアバッグ37の下面66は、後輪用スペアタイヤ16の後下端70の高さ位置からランプユニット20の前下端71へ向かって斜め後上方へ傾斜して延びる。なお、第7のエアバッグ37の車幅方向両端面65は、荷台5の側方パネル11の車幅方向両端面よりも車幅方向内側にそれぞれ配置されてもよい。また、展開状態の第7のエアバッグ37は、工具箱17の後面や後輪用スペアタイヤ16の後側面に接触してもよい。
【0049】
図4に示すように、エアバッグコントローラ74は、記憶部79とCPU(Central Processing Unit)80とを有する。記憶部79は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などによって構成され、CPU80が各種処理を実行するための各種プログラムや各種データが記憶されている。各種プログラムには、CPU80がエアバッグの内圧制御処理を実行するための内圧制御処理プログラムが含まれる。各種データには、後述する第1のタンク圧力値、第2のタンク圧力値、及びエアバッグ圧力範囲などが含まれる。なお、記憶部79に記憶される種々のデータは、実験やシミュレーションなどによって得られた測定値や理論値に基づいて設定される。また、これらのデータは、各プログラムに含まれた状態で記憶されてもよい。
【0050】
第1のタンク圧力値は、ブレーキやエアーサスペンション等に最低限必要な空気の量(圧力)を示す値よりも十分に大きな値である。また、第2のタンク圧力値は、第1のタンク圧力値よりも大きな値であり、第2のタンク圧力値と第1のタンク圧力値との差分は、エアバッグの内圧制御を行うのために必要十分な空気の量(圧力)である。また、エアバッグ圧力範囲は、内圧下限値と内圧上限値とを有し、内圧下限値よりも高く、且つ内圧上限値よりも低い範囲である。エアバッグの内圧がエアバッグ圧力範囲内である場合には、エアバッグが破断することなく走行風の圧力に対する剛性を十分に確保して、走行風を後方へ案内することができる。
【0051】
次に、エアバッグコントローラ74が第1のエアバッグ31に対して行うエアバッグの内圧制御処理について説明する。エアバッグコントローラ74(CPU80)は、タンク内圧センサ76とエアバッグ内圧センサ81とから入力されたデータに基づいて、コンプレッサ75やソレノイドバルブ77を制御する。なお、他のエアバッグ(第2〜第7のエアバッグ32〜37)について行う処理も第1のエアバッグ31に対して行う処理と同様なので、その説明を省略する。
【0052】
エアバッグコントローラ74は、タンク内圧センサ76から入力されたデータ(エアタンク19の内圧)と、記憶部79に記憶されている第1のタンク圧力値とを比較し、エアタンク19の内圧が第1のタンク圧力値よりも低い場合には、エアタンク19の内圧が第1のタンク圧力値よりも高くなるまで、コンプレッサ75を作動させてエアタンク19の内圧を回復させる。一方、エアタンク19の内圧が第1のタンク圧力値よりも高く、且つ記憶部79に記憶されている第2のタンク圧力値よりも低い場合には、エアバッグコントローラ74は、トラック1の減速時にコンプレッサ75を作動させてエアタンク19の内圧を上昇させる。
【0053】
エアタンク19の内圧が第2のタンク圧力値よりも大きい場合には、エアバッグコントローラ74は、エアバッグ内圧センサ81から入力されたデータ(エアバッグの内圧)と、記憶部79に記憶されているエアバッグ圧力範囲とを比較する。エアバッグの内圧がエアバッグ圧力範囲の内圧下限値よりも低い場合には、エアバッグコントローラ74は、エアバッグの内圧がエアバッグ圧力範囲内に回復するまで、ソレノイドバルブ77を給気側へ開放し、エアバッグの内圧を上昇させる。一方、エアバッグの内圧がエアバッグ圧力範囲の内圧上限値よりも高い場合には、エアバッグコントローラ74は、エアバッグの内圧がエアバッグ圧力範囲内に回復するまで、ソレノイドバルブ77を排気側へ開放し、エアバッグの内圧を低下させる。
【0054】
エアバッグの内圧がエアバッグ圧力範囲内に回復すると、エアバッグコントローラ74は、ソレノイドバルブ77を閉止する。なお、コンプレッサ75やソレノイドバルブ77に対するエアバッグコントローラ74の制御は、上記制御に限定されるものではない。
【0055】
上記のように構成された床下気流整流装置10では、下側が開放される所定の床下空間42(第1,第3,第5〜第7の床下空間42a,42c,42e〜42g)を展開状態の所定のエアバッグ(第1,第3,第5〜第7のエアバッグ31,33,35〜37)が埋めるので、トラック1の下方を通過する走行風の前記所定の床下空間42a,42c,42e〜42gへの流入が展開状態の前記所定のエアバッグ31,33,35〜37によって抑制される。これにより、トラック1の下方を通過する走行風の前記所定の床下空間42a,42c,42e〜42gへの流入による空気抵抗の増大を抑えることができる。
【0056】
また、車幅方向外側が開放される所定の床下空間42(第2〜第7の床下空間42b〜42g)を展開状態の所定のエアバッグ(第2〜第7のエアバッグ32〜37)が埋めるので、トラック1の側方を通過する走行風の前記所定の床下空間42b〜42gへの流入が展開状態の前記所定のエアバッグ32〜37によって抑制される。これにより、トラック1の側方を通過する走行風の前記所定の床下空間42b〜42gへの流入による空気抵抗の増大を抑えることができる。
【0057】
また、展開状態の所定のエアバッグ(第2〜第4,第6,第7のエアバッグ32〜34,36,37)が荷台5の床パネル13の下面6及び複数の床下部材7(燃料タンク14等)に接触するので、荷台5の床パネル13の下面6と複数の床下部材7との間の床下空間42(第2〜第4,第6,第7の床下空間42b〜42d,42f,42g)へのトラック1の側方を通過する走行風の流入を抑えて、該走行風の流入による空気抵抗の増大を防止することができる。
【0058】
また、所定の床下部材7(燃料タンク14、前輪用スペアタイヤ15、及び工具箱17)の下端が路面の近傍に配置されるので、展開状態の所定のエアバッグ(第2〜第6のエアバッグ32〜36)と前記所定の床下部材14,15,17とによって荷台5の床パネル13の下面6から路面の近傍までを塞ぐことができ、トラック1の下方への横風の流入を抑えることが可能となる。このため、トラック1の下方を通過する走行風に対する横風の影響を抑えることができ、横風による走行安定性の低下を抑制することができる。
【0059】
また、展開状態の第2〜第6のエアバッグ32〜36の車幅方向外側面46,49,54,58,61が所定の床下部材7(燃料タンク14、前輪用スペアタイヤ15、及び工具箱17)の車幅方向外端部47,73,62と車幅方向の略同じ位置に配置されるので、トラック1の走行時にトラック1の側方を通過する走行風が後方へ円滑に流れ易くなり、走行風による空気抵抗をさらに低減することができる。
【0060】
また、展開状態の第1,第3,第5,第6のエアバッグ31,33,35,36の下面44,50,59,55が所定の床下部材7(デファレンシャルギアボックス29、燃料タンク14、及び工具箱17)の下面72,51,63と略同じ高さ位置に配置されるので、トラック1の走行時にトラック1の下方を通過する走行風が後方へ円滑に流れ易くなり、走行風による空気抵抗をさらに低減することができる。
【0061】
また、展開状態の第7のエアバッグ37の下面66が第7のエアバッグ37の前方から後方へ向かって斜め後上方へ傾斜して延びるので、トラック1の下方を通過する走行風の流路が後方へ向かって徐々に拡大し、走行風を第7のエアバッグ37の下面66に沿って荷台5の後方へ円滑に流すことができ、走行風による渦の発生を抑えて空気抵抗を低減することができる。また、トラック1の下方を通過する走行風を第7のエアバッグ37の下面66に沿って斜め後上方の荷台5の荷室開閉扉9の後方へ流すことができるので、荷台5の荷室開閉扉9の後方での負圧の発生を抑制することができる。
【0062】
また、床下空間42a〜42gの形状は、複数の床下部材7によってそれぞれ異なる形状に規定される。一方、床下空間42a〜42gで膨らむそれぞれのエアバッグ31〜37は、周囲の床下部材7に接した後、床下部材7の外面に沿って展開が進むので、展開完了時のエアバッグ31〜37の形状を床下空間42a〜42gのそれぞれに合致させることができる。従って、展開状態のエアバッグによって様々な形状の床下空間42を埋めることができ、様々な仕様の車両に対してエアバッグを個別に設計することなく汎用部品として使用することができる。また、エアバッグは、気体によって膨らむので、トラック1の重量増加を招き難い。
【0063】
また、複数のエアバッグ31〜41のそれぞれは、空気を排気することによって収縮可能なので、燃料タンク14等の床下部材7の整備作業や点検作業などの際、エアバッグ31〜41を収縮させて容易にエアバッグ31〜41をトラック1から取り外すことができ、床下部材7に対する整備作業や点検作業などの作業性の低下を抑えることができる。
【0064】
従って、本実施形態によれば、トラック1の重量増加を抑制しつつ、トラック1の走行時に走行風による空気抵抗を低減することができる。
【0065】
また、エアバッグコントローラ74によってエアバッグの内圧を維持することができるので、外気圧が変化したりエアバッグの空気が抜けたりしても、エアバッグの内圧の変化を抑えることができる。
【0066】
また、トラック1の減速時にコンプレッサ75を作動させてエアバッグの内圧制御のために必要な空気の量をエアタンク19に確保するので、コンプレッサ75の作動による燃費の低下を抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1〜第7の床下空間42a〜42gとして説明したが、これに限定されるものではなく、上方が荷台5の床パネル13の下面6によって区画され、前方、後方、側方、及び下方の少なくとも一方が複数の床下部材7の少なくとも1つによって区画される床下空間42であればよい。例えば、第1〜第7の床下空間42a〜42gのそれぞれをさらに細かく分けてもよいし、又は第1〜第7の床下空間42a〜42gのうちの少なくとも2つの床下空間を一体化した大きな床下空間であってもよい。或いは、第1〜第7の床下空間42a〜42g以外の床下空間であってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、床下気流整流装置10が複数のエアバッグ31〜41を有したが、これに限定されるものではなく、少なくとも1つのエアバッグを有していればよい。或いは、複数のエアバッグ31〜41に加えて、床パネル13の下面6とリアアンダーランプロテクタ22とによって区画される床下空間や、床パネル13の下面6と車軸25とによって区画される床下空間に配置されるエアバッグを有してもよい。
【0069】
また、複数のエアバッグ31〜41のうち、互いに隣接するエアバッグ同士を一体形成してもよい。例えば、第2〜第5のエアバッグ32〜35を一体形成し、この一体形成されたエアバッグによって第2〜第5の床下空間42b〜42eを埋めてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、第1〜第7のエアバッグ31〜37のそれぞれの車幅方向外側面の車幅方向の位置や下面の高さ位置を、それぞれに隣接する床下部材7の車幅方向外側面や下面と略同じ位置に配置したが、これに限定されるものではなく、床下部材7の車幅方向外側面よりも車幅方向内側に配置されたり、床下部材7の下面よりも上方に配置されたりしてもよい。
【0071】
また、第7のエアバッグ37の下面66を前方から後方へ向かって斜め後上方へ傾斜させなくてもよい。例えば、略水平に延びる下面であってもよい。
【0072】
また、複数のエアバッグ31〜37のうち、荷台5の床パネル13の下面6や床下部材7に接触するエアバッグは、荷台5の床パネル13の下面6や床下部材7に近接してもよい。
【0073】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0074】
例えば、上記実施形態では、箱型の荷台3を備えるトラック1に床下気流整流装置10を適用したが、これに限定されるものではなく、側方や後方にあおり板を有して上方へ開放している荷台を備える平ボディー車等に適用してもよい。
【0075】
また、トラック1は、荷台5の車幅方向両側面の下方に荷台5の床パネル13の車幅方向両端縁から路面の近傍まで延び、又は荷台5の床パネル13との間に間隙を設けた状態で路面の近傍まで延びるサイドスカートを備えてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、締緩可能なラチェット機構(図示省略)を有するバンドによって複数のエアバッグをトラック1に対して固定したが、これに限定されるものではなく、紐で縛ったり網やシートで覆ったりしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、エアバッグコントローラ74を設けてエアバッグの内圧(空気量)を制御したが、エアバッグコントローラ74を設けなくてもよい。例えば、エアバッグに給気バルブと排気バルブとを設け、給気する際にのみエアタンク19からのホース等を前記給気バルブに繋いでエアバッグに給気してもよい。エアバッグを収縮させる際には、前記排気バルブを開放した状態でエアバッグを手で押圧して排気してもよい。この場合、トラック1の排気ガス(気体)を排出するマフラー(図示省略)とエアバッグの前記給気バルブとをホース等によって連結してトラック1の排気ガスをエアバッグに給気することによってエアバッグを膨らませてもよい。