特許第6222557号(P6222557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222557
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20171023BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20171023BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20171023BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20171023BHJP
【FI】
   F21S8/12 141
   F21S8/12 150
   F21S8/10 171
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-216363(P2013-216363)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-79660(P2015-79660A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】中矢 喜昭
【審査官】 津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0080207(US,A1)
【文献】 特開2013−073811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21S 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方側から車両後方側に向かって順に配置された、第1レンズ部、第2レンズ部、導光部及び光源を備え、前記光源からの光が、前記導光部で導光された後、前記第2レンズ部、前記第1レンズ部の順に透過して前方に照射されて、すれ違いビーム用配光パターンを形成する車両用灯具において、
前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部は、車両前後方向に延びる基準軸上に配置されており、
前記導光部は、前記光源からの光が前記導光部内部に入射する入射面と、前記導光部内部に入射した前記光源からの光が出射する出射面と、を含み、前記基準軸より上に配置されており、
前記導光部の出射面の下端縁は、カットオフラインに対応した形状の段差付きエッジ部を含み、前記基準軸近傍に配置されており、
前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部は、焦点が前記段差付きエッジ部近傍に位置する投影レンズを構成しており、
前記光源は、横長の発光面を含み、前記横長の発光面が前記導光部の入射面近傍において当該入射面に対向した状態で前記基準軸より上かつ前記基準軸近傍に配置されており、
前記導光部の出射面と前記第2レンズ部の入射面は、面接触しており、
前記投影レンズの後方焦点面は、前記段差付きエッジ部に略一致し
前記第1レンズ部は、その出射面が前記基準軸に直交する平面形状の光学面でその入射面が車両後方側に向かって凸の光学面の凸レンズとして構成されており、
前記第2レンズ部は、その出射面が車両前方側に向かって凸の光学面でその入射面が車両後方側に向かって凸の光学面の、全体として略球状のレンズとして構成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2レンズ部の出射面の曲率が前記第1レンズ部の入射面の曲率より小さいことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
第2レンズ部及び導光部は、前記導光部の出射面と前記第2レンズ部の入射面とが面接触した部分が存在しない一体のレンズ体として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記後方焦点面上には、前記導光部内部に入射し、当該導光部の下端面で内面反射された後、前記後方焦点面に到達する前記光源からの光と、前記導光部内部に入射し、前記導光部の下端面で内面反射されることなく前記後方焦点面に到達する前記光源からの光によって、前記すれ違いビーム用配光パターンに対応する光度分布が形成され、
前記光度分布が前記投影レンズによって前方に反転投影されることで、前記すれ違いビーム用配光パターンが形成されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係り、特に、光源と光源の前方に配置されたレンズとを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の分野においては、光源と光源の前方に配置されたレンズとを備え、光源からの直射光が、レンズを透過して前方に照射されて、上端縁にカットオフラインを含むすれ違いビーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載の車両用灯具200の斜視図である。
【0004】
図8に示すように、特許文献1に記載の車両用灯具200は、光源210、光源210の前方に配置された凸レンズ220、凸レンズ220の周囲を囲むように配置された付加レンズ230を備え、光源210からの直射光の一部(車両前後方向に延びる基準軸AXに対して狭角方向に放出される相対強度が強い光)が凸レンズ220を透過して前方に照射されるとともに、光源210からの直射光の他の一部(基準軸AXに対して広角方向に放出される相対強度が弱い光)が付加レンズ230内部に入射し、当該付加レンズ230内部で内面反射されて進路を変更された後、前方に照射されて、上端縁にカットオフラインを含むすれ違いビーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5196314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の車両用灯具200においては、付加レンズ230の作用により光源210からの直射光の他の一部(基準軸AXに対して広角方向に放出される相対強度が弱い光)を利用する構成であるため、光利用効率が向上するものの、付加レンズ230が凸レンズ220の周囲を囲むように配置されているため、その分、車両用灯具200が大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光利用効率が向上し、かつ、小型化できる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両前方側から車両後方側に向かって順に配置された、第1レンズ部、第2レンズ部、導光部及び光源を備え、前記光源からの光が、前記導光部で導光された後、前記第2レンズ部、前記第1レンズ部の順に透過して前方に照射されて、すれ違いビーム用配光パターンを形成する車両用灯具において、前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部は、車両前後方向に延びる基準軸上に配置されており、前記導光部は、前記光源からの光が前記導光部内部に入射する入射面と、前記導光部内部に入射した前記光源からの光が出射する出射面と、を含み、前記基準軸より上に配置されており、前記導光部の出射面の下端縁は、カットオフラインに対応した形状の段差付きエッジ部を含み、前記基準軸近傍に配置されており、前記第1レンズ部及び前記第2レンズ部は、焦点が前記段差付きエッジ部近傍に位置する投影レンズを構成しており、前記光源は、横長の発光面を含み、前記横長の発光面が前記導光部の入射面近傍において当該入射面に対向した状態で前記基準軸より上かつ前記基準軸近傍に配置されており、前記導光部の出射面と前記第2レンズ部の入射面は、面接触しており、前記投影レンズの後方焦点面は、前記段差付きエッジ部に略一致し、前記第1レンズ部は、その出射面が前記基準軸に直交する平面形状の光学面でその入射面が車両後方側に向かって凸の光学面の凸レンズとして構成されており、前記第2レンズ部は、その出射面が車両前方側に向かって凸の光学面でその入射面が車両後方側に向かって凸の光学面の、全体として略球状のレンズとして構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、光利用効率が向上し、かつ、小型化できる車両用灯具を提供することができる。
【0010】
光利用効率が向上するのは、光源(発光面)が導光部の入射面近傍において当該入射面に対向した状態で配置されているため、光源(発光面)からの光の略全てが、導光部の入射面から導光部内部に入射することによるものである。
【0011】
小型化できるのは、従来技術(例えば特許第5196314号公報)に記載の付加レンズを用いることなく、光利用効率を向上させることができることによるものである。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、第2レンズ部と導光部とが物理的に分離した別部材として構成されているため、各々を容易に製造することができる。また、導光部を耐熱性の高い材料製とし、第2レンズ部を透明樹脂製とすることができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2レンズ部の出射面の曲率が前記第1レンズ部の入射面の曲率より小さいことを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明によれば、投影レンズを、球面収差が除去され、かつ、アッベの正弦条件を満たす収差の少ないレンズとして構成することができる。その結果、遠方照度を高めつつ、水平線よりも上にコマ収差等に起因する幻惑光が発生しない(又はほとんど発生しない)明瞭なカットオフラインを持つすれ違いビーム用配光パターンを形成することができる。
【0016】
これは、投影レンズを、一つのレンズではなく、第1レンズ部及び第2レンズ部(特に、第1レンズ部の出射面及び入射面並びに第2レンズ部の出射面)で構成し、かつ、第2レンズ部の出射面の曲率を第1レンズ部の入射面の曲率より小さくしたことによるものである。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、第2レンズ部及び導光部は、前記導光部の出射面と前記第2レンズ部の入射面とが面接触した部分が存在しない一体のレンズ体として構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、第2レンズ部と導光部の界面における光量ロスをなくすことができる。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の発明において、前記後方焦点面上には、前記導光部内部に入射し、当該導光部の下端面で内面反射された後、前記後方焦点面に到達する前記光源からの光と、前記導光部内部に入射し、前記導光部の下端面で内面反射されることなく前記後方焦点面に到達する前記光源からの光によって、前記すれ違いビーム用配光パターンに対応する光度分布が形成され、前記光度分布が前記投影レンズによって前方に反転投影されることで、前記すれ違いビーム用配光パターンが形成されることを特徴とする。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、水平線付近にホットゾーン(高光度領域)を含む遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンを形成することができる。

【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光利用効率が向上し、かつ、小型化できる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態の車両用灯具10の縦断面図である。
図2】車両用灯具10の斜視図(レンズホルダ20省略)である。
図3】光源18からの光の光路図である。
図4】車両用灯具10から前方に照射される光により、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるすれ違いビーム用配光パターンPLoの例である。
図5】導光部16の斜視図である。
図6図5中の矢印A方向から見た矢視図(正面図)である。
図7】導光部16の入射面16b近傍の拡大図である。
図8】特許文献1に記載の車両用灯具200の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具10について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は本実施形態の車両用灯具10の縦断面図、図2は斜視図(レンズホルダ20省略)、図3は光源18からの光の光路図、図4は車両用灯具10から前方に照射される光により、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるすれ違いビーム用配光パターンPLoの例である。
【0025】
図1図2に示すように、本実施形態の車両用灯具10は、車両前方側から車両後方側に向かって順に配置された、第1レンズ部12、第2レンズ部14、導光部16及び光源18を備え、図3に示すように、光源18からの光が、導光部16で導光された後、第2レンズ部14、第1レンズ部12の順に透過して前方に照射されて、図4に示すように、上端縁にカットオフラインCL(CL1〜CL3)を含むすれ違いビーム用配光パターンPLoを形成する車両用灯具として構成されている。
【0026】
図1に示すように、第1レンズ部12は、前方側表面12a(以下出射面12aと称する)が無限の曲率半径をもつ平面形状の光学面で後方側表面12b(以下入射面12bと称する)が車両後方側に向かって凸の光学面(負の曲率の光学面)の平凸レンズとして構成されている。なお、本実施形態では、第1レンズ部12の出射面12aは車両前後方向に延びる基準軸AX(光軸とも称される)に直交する平面形状の光学面として構成されており、第1レンズ部12の入射面12bの曲率半径は48mm程度に設定されている。
【0027】
第1レンズ部12は、レンズホルダ20に保持されて、基準軸AX上に配置されている。レンズホルダ20は、ヒートシンク22の前面22aに固定されて、図1に示す位置に配置されている。
【0028】
第2レンズ部14は、前方側表面14a(以下出射面14aと称する)が車両前方側に向かって凸の光学面(正の曲率の光学面)で後方側表面14b(以下入射面14bと称する)が車両後方側に向かって凸の光学面の、全体として球状のレンズ部と、フランジ部14cと、を含むレンズ部として構成されている。なお、本実施形態では、第2レンズ部14の出射面14aは、車両前方側に向かって凸の光学面(正の曲率の光学面)で、次の多項式を満たす非球面形状に最適化されている。
【0029】
【数1】
【0030】
本実施形態で用いた上記多項式中の各変数は、次の表のとおりである。
【0031】
【表1】
【0032】
第2レンズ部14は、その入射面14bが導光部16の出射面16aに面接触した状態でフランジ部14cが導光部16に保持されて、基準軸AX上に配置されている。なお、第2レンズ部14の入射面14bと導光部16の出射面16aとは、シリコン樹脂等の透明接着剤で接着されている。第2レンズ部14の周囲は、内部構造を覆い隠す目的でレンズホルダ20の内周面に設けられた遮蔽部20aで取り囲まれている。なお、第2レンズ部14は、光学的機能を奏さない部分がカットされた形状に構成されていてもよい。
【0033】
第1レンズ部12及び第2レンズ部14(特に、第1レンズ部12の出射面12a及び入射面12b並びに第2レンズ部14の出射面14a)は、焦点Fが導光部16の出射面16aと第2レンズ部14の入射面14bの界面上(例えば、導光部16の出射面16aの下端縁16a1(段付きエッジ部)近傍)に位置する投影レンズ(以下投影レンズ24と称する)を構成している。そして、投影レンズ24の像面湾曲(後方焦点面)は、導光部16の出射面16aと第2レンズ部14の入射面14bの界面(少なくとも導光部16の出射面16aの下端縁16a1、すなわち段付きエッジ部)に略一致している。
【0034】
以上のように、投影レンズ24を、一つのレンズではなく、第1レンズ部12及び第2レンズ部14(特に、第1レンズ部12の出射面12a及び入射面12b並びに第2レンズ部14の出射面14a)で構成し、かつ、第2レンズ部14の出射面14aの曲率を第1レンズ部12の入射面12bの曲率より小さくすることで、投影レンズ24を、球面収差が除去され、かつ、アッベの正弦条件を満たす収差の少ないレンズとして構成することができる。その結果、遠方照度を高めつつ、水平線Hよりも上にコマ収差等に起因する幻惑光が発生しない(又はほとんど発生しない)明瞭なカットオフラインCL(CL1〜CL3)を持つすれ違いビーム用配光パターンPLoを形成することができる。
【0035】
導光部16は、光源18からの光が導光部16内部に入射する車両後方側の光学面16b(以下入射面16bと称する)と、導光部16内部に入射した光源18からの光が出射する車両前方側の光学面16a(以下出射面16aと称する)と、を含んでいる。入射面16bは、平面形状の光学面として構成されている。なお、本実施形態では、入射面16bは、基準軸AXに直交する平面形状の光学面として構成されている。出射面16aは、第2レンズ部14の入射面14bが面接触するように、当該第2レンズ部14の入射面14bに対応して車両後方側に向かって凹の光学面として構成されている。
【0036】
導光部16は、ヒートシンク22の前面22aに固定されて、基準軸AXより上に配置されている。導光部16の出射面16aの下端縁16a1は、カットオフラインCL(CL1〜CL3)に対応した形状の段差付きエッジ部を含み、基準軸AX近傍に配置されている。
【0037】
図5は導光部16の斜視図、図6図5中の矢印A方向から見た矢視図(正面図)である。
【0038】
図5図6に示すように、導光部16の出射面16aの下端縁16a1(段付きエッジ部)は、左水平カットオフラインCL1に対応する辺e1、右水平カットオフラインCL2に対応する辺e2、及び、左水平カットオフラインCL1と右水平カットオフラインCL2とを接続する斜めカットオフラインCL3に対応する辺e3を含んでいる。導光部16の下端面16cは、出射面16aの下端縁16a1(段付きエッジ部)が基準軸AXに沿って車両後方側に引き延ばされて、入射面16bの下端縁16b1に接続された形状の光学面として構成されている。導光部16の下端面16cは、光源18を構成する発光面18b1の下端縁(下側の長辺)よりも若干下方に配置されている(図6参照)。
【0039】
第1レンズ部12、第2レンズ部14及び導光部16は、ポリカーボネイト(PC)製であってよいし、それ以外のアクリル(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シリコン樹脂等の透明樹脂製であってもよいし、ガラス製であってもよい。
【0040】
本実施形態では、第2レンズ部14と導光部16とが物理的に分離した別部材として構成されているため、各々を容易に製造することができる。また、導光部16を耐熱性の高い材料製(例えばガラス製)とし、第2レンズ部14を透明樹脂製とすることができる。なお、導光部16は、発熱する光源18の近くに配置されるため、耐熱性の高い材料製とするのが好ましい。
【0041】
図6に示すように、光源18は、例えば、金属製の基板18a、横長矩形の発光面18b1(本実施形態では1×4mm)を含む白色LED光源等の半導体発光素子18bを備えている。基板18aの表面には、三つの半導体発光素子18b(本実施形態では光束が1000lm程度の三つの白色LED光源)が水平方向に一列に実装されて、横長矩形の発光面を構成している。なお、半導体発光素子18bは、白色LED光源に限らず、白色LD光源であってもよい。半導体発光素子18bの数は、三つに限らず、適宜の数とすることができる。
【0042】
光源18(発光面18b1)から放出される光の指向特性はランバーシアンで、I(θ)=I×cosθで表すことができる。これは、光源18(発光面18b1)が放出する光の広がりを表している。但し、I(θ)は光源18(発光面18b1)の光軸(発光面18b1の略中心を通りかつ発光面18b1に直交する方向に延びている)から角度θ傾いた方向の光度を表し、Iは光源18(発光面18b1)の光軸上の光度を表している。光源18(発光面18b1)では、その光軸上(θ=0)の光度が最大となる。
【0043】
図1に示すように、光源18は、その発光面18b1が導光部16の入射面16b近傍において当該入射面16bに対向した状態で基板18aの裏面がヒートシンク22の前面22aに固定されて、基準軸AXより上かつ基準軸AX近傍に配置されている。
【0044】
このように光源18(発光面18b1)が導光部16の入射面16b(その下端縁16b1)近傍において当該入射面16bに対向した状態で配置されているため、光源18(発光面18b1)からの光の略全てが、導光部16の入射面16bから導光部16内部に入射する。光源18(発光面18b1)と導光部16の入射面16bとの間の間隔は、光源18からの光を効率よく入射させる観点から、小さい方が好ましく、特に、1mm以下であるのが好ましい。本実施形態では、光源18(発光面18b1)と導光部16の入射面16bとの間の間隔は、約0.2mmに設定されている。
【0045】
図7は、導光部16の入射面16b近傍の拡大図で、光源18(発光面18b1)からの光の光路を表している。
【0046】
図7に示すように、導光部16内部に入射する光源18(発光面18b1)からの光は、入射面16bの屈折作用により、光源18(発光面18b1)の光軸AX18に対して約45度の範囲内に集光された光となり、出射面16aに向かって(本実施形態では約2mm程度)導光部16内部を導光されて、出射面16aから出射することで、導光部16の出射面16a(すなわち後方焦点面上)にすれ違いビーム用配光パターンPLoに対応する光度分布を形成する。
【0047】
この光度分布は、導光部16内部に入射し、導光部16の下端面16cで内面反射(全反射)された後、後方焦点面に到達する光源18(発光面18b1)からの光と、導光部16内部に入射し、導光部16の下端面16cで内面反射(全反射)されることなく後方焦点面に到達する光源18(発光面18b1)からの光によって形成される。この光度分布は、ホットゾーンZ(高光度領域。図4参照)に対応する領域がその周囲に比べて明るいものとなる。
【0048】
これは、光源18(発光面18b1)が導光部16の入射面16b(その下端縁16b1)近傍において当該入射面16bに対向した状態で配置されていること、及び、導光部16の入射面16bから導光部16内部に入射する光源18(発光面18b1)からの光の一部が、導光部16の下端面16cで内面反射(全反射)された後、後方焦点面上のホットゾーンZ(図4参照)に対応する領域に向かうこと、によるものである。
【0049】
また、この光度分布は、光源18(発光面18b1)が投影レンズ24の焦点Fから車両後方側に(本実施形態では約2mm程度)デフォーカスされた位置に配置されているため、光源18(発光面18b1)の輝度ムラがほとんど現れないものとなる。
【0050】
また、この光度分布は、導光部16の出射面16aの下端縁16a1が段付きエッジ部を含んでいるため、カットオフラインCL(CL1〜CL3)に対応する辺e1〜e3を含むものとなる。
【0051】
上記光度分布が投影レンズ24によって前方に反転投影されることで、図4に示すように、上端縁にカットオフラインCL(CL1〜CL3)を含むすれ違いビーム用配光パターンPLoが形成される。すれ違いビーム用配光パターンPLoは、水平線H付近にホットゾーンZ(高光度領域)を含む遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンとなる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、光利用効率が向上し、かつ、小型化できる車両用灯具10を提供することができる。
【0053】
光利用効率が向上するのは、光源18(発光面18b1)が導光部16の入射面16b近傍において当該入射面16bに対向した状態で配置されているため、光源18(発光面18b1)からの光の略全てが、導光部16の入射面16bから導光部16内部に入射することによるものである。
【0054】
小型化できるのは、従来技術(例えば特許第5196314号公報)に記載の付加レンズを用いることなく、光利用効率を向上させることができることによるものである。
【0055】
次に、変形例について説明する。
【0056】
上記実施形態では、第2レンズ部14と導光部16とが物理的に分離した別部材として構成されている例について説明したが、これに限定されず、第2レンズ部14と導光部16とが、導光部16の出射面16aと第2レンズ部14の入射面14bとが面接触した部分が存在しない一体のレンズ体として構成されていてもよい。
【0057】
このようにすれば、第2レンズ部14と導光部16の界面における光量ロスをなくすことができる。
【0058】
上記実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
【0059】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用灯具、12…第1レンズ部、12a…前方側表面(出射面)、12b…後方側表面(入射面)、14…第2レンズ部、14a…前方側表面(出射面)、14b…後方側表面(入射面)、14c…フランジ部、16…導光部、16a…出射面、16a1…下端縁、16a2…下端面、16b…入射面、18…光源、18a…基板、18b…半導体発光素子、18b1…発光面、20…レンズホルダ、20a…遮蔽部、22…ヒートシンク、22a…前面、24…投影レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8