特許第6222558号(P6222558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222558
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20171023BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01L21/30 572B
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 646
   H01L21/304 648G
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-221489(P2013-221489)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82650(P2015-82650A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170324
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 昌秀
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敬次
(72)【発明者】
【氏名】根来 世
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−228438(JP,A)
【文献】 特開2013−207080(JP,A)
【文献】 特開2012−138510(JP,A)
【文献】 特開2013−077626(JP,A)
【文献】 特開2013−021178(JP,A)
【文献】 特開2008−246319(JP,A)
【文献】 特開2013−074090(JP,A)
【文献】 特開2013−077624(JP,A)
【文献】 特開2009−200365(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211610(US,A1)
【文献】 特開2013−182957(JP,A)
【文献】 特開2008−004878(JP,A)
【文献】 特開2008−209542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する方法であって、
硫酸と過酸化水素水とを混合することにより生成されたSPMを基板に供給するSPM供給工程と、
SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して変更することにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、
前記SPM供給工程の前に、過酸化水素水を基板に供給する過酸化水素水供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する方法であって、
硫酸と過酸化水素水とを混合することにより生成されたSPMを基板に供給するSPM供給工程と、
SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して連続的に変更することにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項3】
前記SPM供給工程の前に、基板を加熱することにより基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記過酸化水素水供給工程の前に、SPMよりも比抵抗が大きい導電性の除電液を基板に供給する除電液供給工程をさらに含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記過酸化水素水供給工程は、前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温よりも低温の過酸化水素水を基板に供給する工程であり、
前記基板処理方法は、前記過酸化水素水供給工程と並行して、基板および基板上の過酸化水素水を加熱することにより基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに含む、請求項1または4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する装置であって、
硫酸と過酸化水素水とを混合することによりSPMを生成するSPM生成手段と、
前記SPM生成手段により生成されたSPMを基板に供給するSPM供給手段と、
SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を変更する混合比変更手段と、
過酸化水素水を基板に供給する過酸化水素水供給手段と、
前記SPM生成手段、SPM供給手段混合比変更手段、および過酸化水素水供給手段を制御する制御装置とを含み、
前記制御装置は、
硫酸と過酸化水素水とを前記SPM生成手段に混合させることにより生成されたSPMを前記SPM供給手段に基板に供給させるSPM供給工程と、
SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して前記混合比変更手段に変更させることにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、
前記SPM供給工程の前に、過酸化水素水を前記過酸化水素水供給手段に基板に供給させる過酸化水素水供給工程とを実行する、基板処理装置。
【請求項7】
表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する装置であって、
硫酸と過酸化水素水とを混合することによりSPMを生成するSPM生成手段と、
前記SPM生成手段により生成されたSPMを基板に供給するSPM供給手段と、
SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を連続的に変更する混合比変更手段と、
前記SPM生成手段、SPM供給手段、および混合比変更手段を制御する制御装置とを含み、
前記制御装置は、
硫酸と過酸化水素水とを前記SPM生成手段に混合させることにより生成されたSPMを前記SPM供給手段に基板に供給させるSPM供給工程と、
SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して前記混合比変更手段に連続的に変更させることにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、を実行する、基板処理装置。
【請求項8】
前記基板処理装置は、基板を加熱する加熱手段をさらに含み、
前記制御装置は、
前記SPM供給工程の前に、前記加熱手段に基板を加熱させることにより基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに実行する、請求項6または7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板処理装置は、SPMよりも比抵抗が大きい導電性の除電液を基板に供給する除電液供給手段をさらに含み、
前記制御装置は、
前記過酸化水素水供給工程の前に、SPMよりも比抵抗が大きい導電性の除電液を前記除電液供給手段に基板に供給させる除電液供給工程をさらに実行する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板処理装置は、基板を加熱する加熱手段をさらに含み、
前記過酸化水素水供給手段は、前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温よりも低温の過酸化水素水を基板に供給するものであり、
前記制御装置は、
前記過酸化水素水供給工程と並行して、基板および基板上の過酸化水素水を前記加熱手段に加熱させることにより、基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに実行する、請求項6または9に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、不要になったレジストを半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板から除去するレジスト剥離工程が行われる。
特許文献1には、高温のSPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture)を基板に供給することにより、イオン注入により表層が硬化したレジストを基板から除去する方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、基板の加熱によってレジストの硬化層を破裂(ポッピング)させることにより、ドライエッチングにより表層が硬化したレジストを除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−4878号公報
【特許文献2】特開2008−209542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なレジストは感光性樹脂と溶剤とを含む。硬化した表層によって内部が密閉されたレジストで覆われた基板を急激に加熱すると、レジスト内部の溶剤が瞬間的に気化し、レジストの内圧が急激に高まる。そのため、内圧の急激な上昇によってレジストの硬化層が破裂し、剥離し難い硬化層が破壊される。しかしながら、このようなレジストの内部にパターンが配置されている場合(たとえば、図7参照)、硬化層が破裂した際に生じる衝撃によって、パターンがダメージを受けるおそれがある。SPMの供給によってレジストを除去する場合、基板に供給されるSPMの温度を低下させれば、レジストの破裂を抑制または防止できると考えられる。しかしながら、SPMの温度を低下させると、SPMの剥離能力が低下するので、レジストを基板から確実に除去できないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、パターンダメージの発生を抑制または防止しつつ、表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板からレジストを除去できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する方法であって、硫酸と過酸化水素水とを混合することにより生成されたSPMを基板に供給するSPM供給工程と、SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して変更することにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、前記SPM供給工程の前に、過酸化水素水を基板に供給する過酸化水素水供給工程とを含む、基板処理方法である。
請求項2記載の発明は、表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する方法であって、硫酸と過酸化水素水とを混合することにより生成されたSPMを基板に供給するSPM供給工程と、SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して連続的に変更することにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、を含む、基板処理方法である。
【0008】
れらの方法によれば、硫酸と過酸化水素水とが混合されることにより、SPMが生成される。そして、生成されたSPMが、表層が硬化しており内部が硬化していないレジストで覆われた基板に供給される。SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比は、基板へのSPMの供給が行われているときに変更され、これによって、基板に供給されるSPMの液温が、レジストの剥離に適した剥離温度まで上昇する。レジストの表層に位置する硬化層は、液温が上昇するSPMと反応する。これにより、レジストの内部および外部を繋ぐ穴が、SPMの液温上昇の過程で硬化層に形成される。したがって、レジストの非硬化層が気化したとしても、気化した成分が硬化層の穴を通って排出されるので、レジストの内圧が上昇し難い。そのため、剥離温度のSPMを最初から基板に供給する場合よりも、レジストの破裂(硬化層の破裂)が発生し難い。これにより、レジスト内に配置されたパターンのダメージを抑制または防止しつつ、レジストを基板から除去することができる。
【0009】
請求項に記載の発明は、前記SPM供給工程の前に、基板を加熱することにより基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、SPMが基板に供給される前に基板が加熱され、基板に対するSPMの供給が開始されるときのSPMの液温(初期温度)に基板の温度が近づけられる。したがって、SPMの供給開始によりレジストの温度が急激に上昇することを抑制または防止できる。そのため、SPMの初期温度が高い場合であっても、SPMの供給開始時にレジストの内圧が急激に高まることを抑制または防止できる。これにより、レジストの破裂に起因するパターンダメージの発生を抑制または防止できる。
【0010】
請求項に記載の発明は、前記過酸化水素水供給工程の前に、SPMよりも比抵抗が大きい導電性の除電液を基板に供給する除電液供給工程をさらに含む、請求項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、SPMが基板に供給される前に電気を通す除電液が基板に供給される。そのため、基板が帯電している場合には、基板から除電液に電荷が移動し、電荷が基板から除去される。特に、除電液の比抵抗がSPMの比抵抗よりも大きいので、電荷が基板から除電液にゆっくりと移動する。そのため、急激な電荷の移動による発熱により基板に形成されたデバイスが損傷することを防止できる。これにより、基板の品質の低下を抑制または防止できる。
【0011】
さらに、この方法によれば、除電液が基板に供給された後に過酸化水素水が基板に供給される。その後、SPMが基板に供給される。基板に残留している除電液は、過酸化水素水の供給によって基板から除去される。したがって、SPMは、除電液の残留量が減少した状態で基板に供給される。そのため、SPMおよび除電液が基板上で混ざり合い、SPMの性質が大幅に変化することを抑制または防止できる。また、SPMおよび除電液が基板の一部の領域だけで混ざり合い、SPMの濃度の均一性が低下することを抑制または防止できる。これにより、基板の品質の低下を抑制または防止できる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記過酸化水素水供給工程は、前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温よりも低温の過酸化水素水を基板に供給する工程であり、前記基板処理方法は、前記過酸化水素水供給工程と並行して、基板および基板上の過酸化水素水を加熱することにより基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに含む、請求項1または4に記載の基板処理方法である。
【0013】
この方法によれば、除電液が基板に供給された後に、SPMの初期温度(基板に対するSPMの供給が開始されるときのSPMの液温)よりも低温の過酸化水素水が基板に供給される。そして、過酸化水素水が基板に保持されているときに基板が加熱され、基板の温度がSPMの初期温度に近づけられる。したがって、SPMの供給開始によりレジストの温度が急激に上昇することを抑制または防止できる。これにより、レジストの破裂に起因するパターンダメージの発生を抑制または防止できる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する装置であって、硫酸と過酸化水素水とを混合することによりSPMを生成するSPM生成手段と、前記SPM生成手段により生成されたSPMを基板に供給するSPM供給手段と、SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を変更する混合比変更手段と、過酸化水素水を基板に供給する過酸化水素水供給手段と、前記SPM生成手段、SPM供給手段混合比変更手段、および過酸化水素水供給手段を制御する制御装置とを含む、基板処理装置である。
【0015】
前記制御装置は、硫酸と過酸化水素水とを前記SPM生成手段に混合させることにより生成されたSPMを前記SPM供給手段に基板に供給させるSPM供給工程と、SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して前記混合比変更手段に変更させることにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、前記SPM供給工程の前に、過酸化水素水を前記過酸化水素水供給手段に基板に供給させる過酸化水素水供給工程とを実行する。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
請求項7に記載の発明は、表層が硬化したレジスト内にパターンが配置された基板から前記レジストを除去する装置であって、硫酸と過酸化水素水とを混合することによりSPMを生成するSPM生成手段と、前記SPM生成手段により生成されたSPMを基板に供給するSPM供給手段と、SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を連続的に変更する混合比変更手段と、前記SPM生成手段、SPM供給手段、および混合比変更手段を制御する制御装置とを含む、基板処理装置である。
前記制御装置は、硫酸と過酸化水素水とを前記SPM生成手段に混合させることにより生成されたSPMを前記SPM供給手段に基板に供給させるSPM供給工程と、SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比を前記SPM供給工程と並行して前記混合比変更手段に連続的に変更させることにより、前記SPM供給工程において基板に供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程と、を実行する。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記基板処理装置は、基板を加熱する加熱手段をさらに含み、前記制御装置は、前記SPM供給工程の前に、前記加熱手段に基板を加熱させることにより基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに実行する、請求項6または7に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記基板処理装置は、SPMよりも比抵抗が大きい導電性の除電液を基板に供給する除電液供給手段をさらに含み、前記制御装置は、前記過酸化水素水供給工程の前に、SPMよりも比抵抗が大きい導電性の除電液を前記除電液供給手段に基板に供給させる除電液供給工程をさらに実行する、請求項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、前記基板処理装置は、基板を加熱する加熱手段をさらに含み、前記過酸化水素水供給手段は、前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温よりも低温の過酸化水素水を基板に供給するものであり、前記制御装置は、前記過酸化水素水供給工程と並行して、基板および基板上の過酸化水素水を前記加熱手段に加熱させることにより、基板の温度を前記液温上昇工程の開始時におけるSPMの液温に近づける加熱工程をさらに実行する、請求項6または9に記載の基板処理装置である。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の模式的な平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置に備えられたチャンバーの内部を水平に見た模式図である。
図3】スピンベースおよびこれに関連する構成の模式的な平面図である。
図4】赤外線ヒータの縦断面図である。
図5】処理ユニットによって行われる処理例の概略を示すタイムチャートである。
図6】基板に供給されるSPMの液温の変化を示すグラフである。
図7】SPMの液温が剥離温度に達する前の基板の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の模式的な平面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられたチャンバー4の内部を水平に見た模式図である。図3は、スピンベース7およびこれに関連する構成の模式的な平面図である。図4は、赤外線ヒータ58の縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液や処理ガスによって基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、各処理ユニット2のチャンバー4に対して基板Wの搬入および搬出を行う基板搬送ロボットCRと、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉などを制御する制御装置3とを含む。
【0023】
図2に示すように、各処理ユニット2は、枚葉式のユニットである。各処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な基板回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、薬液やリンス液などの処理液をスピンチャック5に保持されている基板Wに供給する処理液供給装置と、スピンチャック5に保持されている基板Wを基板Wの上方から加熱する加熱装置と、基板回転軸線A1まわりにスピンチャック5を取り囲む筒状のカップ6とを含む。
【0024】
図2に示すように、スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース7と、スピンベース7の上面外周部から上方に突出する複数のチャックピン8と、複数のチャックピン8を開閉させる図示しないチャック開閉機構とを含む。スピンチャック5は、さらに、スピンベース7の中央部から基板回転軸線A1に沿って下方に延びるスピン軸9と、スピン軸9を回転させることによりスピンベース7およびチャックピン8を基板回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ10とを含む。
【0025】
図3に示すように、スピンベース7の外径は、基板Wの直径よりも大きい。スピンベース7の中心線は、基板回転軸線A1上に配置されている。複数のチャックピン8は、スピンベース7の外周部でスピンベース7に保持されている。複数のチャックピン8は、周方向(基板回転軸線A1まわりの方向)に間隔を空けて配置されている。チャックピン8は、チャックピン8が基板Wの周端面に押し付けられる閉位置(図2および図3に示す位置)と、チャックピン8が基板Wの周端面から離れる開位置との間で、鉛直なピン回動軸線まわりにスピンベース7に対して回転可能である。チャック開閉機構は、ピン回動軸線まわりにチャックピン8を回動させる。
【0026】
制御装置3は、チャック開閉機構を制御することにより、複数のチャックピン8が基板Wを把持する閉状態(図2および図3に示す状態)と、複数のチャックピン8による基板Wの把持が解除される開状態との間で、複数のチャックピン8の状態を切り替える。基板Wがスピンチャック5に搬送されるときには、制御装置3は、各チャックピン8を開位置に退避させる。制御装置3は、この状態で、基板搬送ロボットCRに基板Wを複数のチャックピン8に載置させる。その後、制御装置3は、各チャックピン8を閉位置に移動させる。これにより、基板Wの下面とスピンベース7の上面とが上下方向に離れた状態で、基板Wが複数のチャックピン8に把持される。この状態で、制御装置3がスピンモータ10を回転させると、基板Wは、スピンベース7およびチャックピン8と共に基板回転軸線A1まわりに回転する。
【0027】
図2に示すように、処理液供給装置は、レジスト剥離液の一例であるSPM(HSOとHとを含む混合液)などの薬液を基板Wの上面に向けて吐出する第1薬液ノズル11と、第1薬液ノズル11が先端部に取り付けられた第1ノズルアーム12と、第1ノズルアーム12を移動させることにより、第1薬液ノズル11を移動させる第1ノズル移動装置13とを含む。
【0028】
図3に示すように、第1ノズル移動装置13は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる第1ノズル回動軸線A2まわりに第1ノズルアーム12を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って第1薬液ノズル11を水平に移動させる。第1ノズル移動装置13は、第1薬液ノズル11から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、第1薬液ノズル11が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置(図3に示す位置)との間で、第1薬液ノズル11を水平に移動させる。
【0029】
図2に示すように、処理液供給装置は、SPMなどの薬液を第1薬液ノズル11に案内する第1薬液配管14と、第1薬液配管14によって第1薬液ノズル11に案内される硫酸および過酸化水素水を撹拌する撹拌配管15と、第1薬液配管14に供給される硫酸および過酸化水素水を撹拌配管15の上流で混合する混合バルブ16とを含む。
図2に示すように、処理液供給装置は、硫酸(液体)を収容する硫酸タンク17と、硫酸を加熱することにより硫酸タンク17内の硫酸の温度を室温よりも高い温度(60〜90℃の範囲内の一定温度。たとえば、80℃)に維持する第1ヒータ21と、硫酸タンク17内の硫酸を混合バルブ16に案内する硫酸配管18と、硫酸配管18の内部を開閉する硫酸バルブ19と、硫酸配管18から混合バルブ16に供給される硫酸の流量を増減させる硫酸流量調整バルブ20とを含む。図示はしないが、硫酸流量調整バルブ20は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他の流量調整バルブについても同様である。
【0030】
図2に示すように、処理液供給装置は、過酸化水素水を収容する過酸化水素水タンク22と、過酸化水素水タンク22内の室温(20〜30℃の範囲内の一定温度。たとえば、25℃)の過酸化水素水を混合バルブ16に案内する過酸化水素水配管23と、過酸化水素水配管23の内部を開閉する過酸化水素水バルブ24と、過酸化水素水配管23から混合バルブ16に供給される過酸化水素水の流量を増減させる過酸化水素水流量調整バルブ25とを含む。
【0031】
硫酸バルブ19が開かれると、高温の硫酸が、硫酸流量調整バルブ20の開度に対応する流量で、硫酸配管18から混合バルブ16に供給される。また、過酸化水素水バルブ24が開かれると、過酸化水素水タンク22内の室温の過酸化水素水が、過酸化水素水流量調整バルブ25の開度に対応する流量で、過酸化水素水配管23から混合バルブ16に供給される。これにより、硫酸および過酸化水素水が、所定の割合(硫酸の割合を「X1」とし、過酸化水素水の割合を「Y1」とすると、たとえば、X1>Y1)で混合バルブ16に供給される。
【0032】
混合バルブ16に供給された硫酸および過酸化水素水は、撹拌配管15を経て第1薬液配管14から第1薬液ノズル11に供給される。その過程で、硫酸および過酸化水素水が、混合バルブ16で混合され、撹拌配管15で撹拌される。これにより、硫酸および過酸化水素水が均一に混ざり合い、硫酸および過酸化水素水の反応によって硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)が混合前の硫酸および過酸化水素水の温度よりも高い温度(たとえば、100℃以上)まで加熱される。そのため、硫酸および過酸化水素水の混合によって生成された高温のSPMが第1薬液ノズル11から吐出される。SPMは、酸化力が強いペルオキソ一硫酸(Peroxymonosulfuric acid)を含む混合薬液である。
【0033】
図2に示すように、処理液供給装置は、SC1(NHOHとHとを含む混合液)などの薬液を基板Wの上面に向けて吐出する第2薬液ノズル29と、第2薬液ノズル29が先端部に取り付けられた第2ノズルアーム30と、第2ノズルアーム30を移動させることにより、第2薬液ノズル29を移動させる第2ノズル移動装置31とを含む。
図3に示すように、第2ノズル移動装置31は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる第2ノズル回動軸線A3まわりに第2ノズルアーム30を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って第2薬液ノズル29を水平に移動させる。第2ノズル移動装置31は、第2薬液ノズル29から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、第2薬液ノズル29が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で、第2薬液ノズル29を水平に移動させる。
【0034】
図2に示すように、処理液供給装置は、SPMの温度よりも低く室温よりも高い温度(たとえば、30〜50℃)のSC1を第2薬液ノズル29に案内する第2薬液配管33と、第2薬液配管33の内部を開閉する第2薬液バルブ34とを含む。第2薬液バルブ34が開かれると、第2薬液供給源からのSC1が、第2薬液配管33から第2薬液ノズル29に供給される。これにより、たとえば40℃のSC1(液体)が、第2薬液ノズル29から吐出される。
【0035】
図2に示すように、処理液供給装置は、リンス液を基板Wの上面に向けて吐出する第1リンス液ノズル36と、リンス液を基板Wの上面に向けて吐出する第2リンス液ノズル37と、第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37が先端部に取り付けられた第3ノズルアーム38と、第3ノズルアーム38を移動させることにより、第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37を移動させる第3ノズル移動装置39とを含む。
【0036】
図示はしないが、第3ノズル移動装置39は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる第3ノズル回動軸線まわりに第3ノズルアーム38を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37を水平に移動させる。第3ノズル移動装置39は、第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で、第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37を水平に移動させる。
【0037】
図2に示すように、処理液供給装置は、リンス液供給源からのリンス液を第1リンス液ノズル36に案内する第1リンス液配管40と、第1リンス液配管40の内部を開閉する第1リンス液バルブ41とを含む。処理液供給装置は、さらに、リンス液供給源からのリンス液を第2リンス液ノズル37に案内する第2リンス液配管42と、第2リンス液配管42の内部を開閉する第2リンス液バルブ43とを含む。
【0038】
第1リンス液バルブ41が開かれると、室温(たとえば、25℃)のリンス液が、第1リンス液ノズル36から吐出される。同様に、第2リンス液バルブ43が開かれると、室温(たとえば、25℃)のリンス液が、第2リンス液ノズル37から吐出される。第1リンス液ノズル36に供給されるリンス液は、純水(脱イオン水:Deionzied water)である。第2リンス液ノズル37に供給されるリンス液は、炭酸水である。
【0039】
第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37に供給されるリンス液は、純水および炭酸水に限らず、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール、)または希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、などであってもよい。炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA、および希釈濃度の塩酸水は、いずれも、SPMよりも比抵抗が高く、かつ電気を通す除電液の一例でもある。
【0040】
図2に示すように、カップ6は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方に配置されている。カップ6は、スピンベース7を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で処理液が基板Wに供給されると、処理液が基板Wから基板Wの周囲に飛散する。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いたカップ6の上端部は、スピンベース7よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液やリンス液などの処理液は、カップ6によって受け止められる。そして、カップ6に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または排液装置に送られる。
【0041】
図2に示すように、加熱装置は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上方に配置された赤外線ヒータ58と、赤外線ヒータ58が先端部に取り付けられたヒータアーム59と、ヒータアーム59を移動させることにより、赤外線ヒータ58を移動させるヒータ移動装置60とを含む。
図2に示すように、赤外線ヒータ58は、赤外線を含む光を発する赤外線ランプ61と、赤外線ランプ61を収容するランプハウジング62とを含む。赤外線ランプ61は、ランプハウジング62内に配置されている。図3に示すように、ランプハウジング62は、平面視で基板Wよりも小さい。したがって、赤外線ヒータ58は、平面視で基板Wよりも小さい。赤外線ランプ61およびランプハウジング62は、ヒータアーム59に取り付けられている。したがって、赤外線ランプ61およびランプハウジング62は、ヒータアーム59と共に移動する。
【0042】
図4に示すように、赤外線ランプ61は、制御装置3に接続されている。赤外線ランプ61に供給される電力は、制御装置3によって調整される。赤外線ランプ61は、たとえばハロゲンランプである。赤外線ランプ61は、ハロゲンランプの代わりに、カーボンヒータ等の他の発熱体であってもよい。赤外線ランプ61は、フィラメントと、フィラメントを収容する石英管とを含む。ランプハウジング62の少なくとも一部は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。したがって、赤外線ランプ61が光を発すると、赤外線ランプ61からの光が、ランプハウジング62を透過してランプハウジング62の外面から外方に放出される。
【0043】
図4に示すように、ランプハウジング62は、基板Wの上面と平行な底壁を有している。赤外線ランプ61は、底壁の上方に配置されている。底壁の下面は、基板Wの上面と平行でかつ平坦な基板対向面58aを含む。赤外線ヒータ58が基板Wの上方に配置されている状態では、赤外線ヒータ58の基板対向面58aが、間隔を空けて基板Wの上面に上下方向に対向する。この状態で赤外線ランプ61が光を発すると、赤外線を含む光が、基板対向面58aから基板Wの上面に向かい、基板Wの上面に照射される。基板対向面58aは、たとえば、直径が基板Wの半径よりも小さい円形である。基板対向面58aは、円形に限らず、長手方向の長さが基板Wの半径以上で基板Wの直径未満である矩形状であってもよいし、円形および矩形以外の形状であってもよい。
【0044】
図4に示すように、赤外線ランプ61は、水平面に沿って配置された有端の円環部63と、円環部63の一端部および他端部から上方に延びる一対の鉛直部64とを含む。ランプハウジング62は、赤外線を透過させる透過部材を含む。透過部材は、上下方向に延びる筒状の収容部65と、収容部65の下端を塞ぐ円板状の底板部66とを含む。ランプハウジング62は、さらに、収容部65の上端を塞ぐ蓋部材67と、赤外線ランプ61の一対の鉛直部64を支持する支持部材68とを含む。赤外線ランプ61は、支持部材68を介して蓋部材67に支持されている。赤外線ランプ61の円環部63は、収容部65と底板部66と蓋部材67とによって区画された空間に配置されている。底板部66は、赤外線ランプ61の下方に配置されており、間隔を空けて赤外線ランプ61に上下方向に対向している。
【0045】
図2に示すように、ヒータ移動装置60は、赤外線ヒータ58を所定の高さで保持している。図3に示すように、ヒータ移動装置60は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びるヒータ回動軸線A4まわりにヒータアーム59を回動させることにより、赤外線ヒータ58を水平に移動させる。これにより、赤外線が照射される照射位置(基板Wの上面内の一部の領域)が基板Wの上面内で移動する。ヒータ移動装置60は、平面視で基板Wの中心を通る軌跡に沿って赤外線ヒータ58を水平に移動させる。したがって、赤外線ヒータ58は、スピンチャック5の上方を含む水平面内で移動する。また、ヒータ移動装置60は、赤外線ヒータ58を鉛直方向に移動させることにより、基板対向面58aと基板Wとの距離を変化させる。
【0046】
図4に示すように、赤外線ヒータ58からの光は、基板Wの上面内の照射位置に照射される。制御装置3は、赤外線ヒータ58が赤外線を発している状態で、スピンチャック5によって基板Wを回転させながら、ヒータ移動装置60によって赤外線ヒータ58をヒータ回動軸線A4まわりに回動させる。これにより、基板Wの上面が、加熱位置としての照射位置によって走査される。そのため、処理液などの液体が基板W上に保持されている状態で赤外線ランプ61が赤外線を発すると、基板Wおよび処理液の温度が上昇する。
【0047】
図5は、処理ユニット2によって行われる処理例の概略を示すタイムチャートである。図6は、基板Wに供給されるSPMの液温の変化を示すグラフである。図7は、SPMの液温が剥離温度に達する前の基板Wの状態を示す模式図である。図7に示すように、以下では、表層に位置する硬化層と硬化層で覆われた非硬化層とを含むレジスト(フォトレジストの薄膜)によって表面(デバイス形成面)が部分的に覆われており、表面に形成されたパターン全体がこのレジストの内部に配置された基板Wからレジストを除去するレジスト剥離工程について説明する。また、以下では、主として図2および図5を参照する。図6および図7については適宜参照する。
【0048】
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(図5のステップS1)が行われる。具体的には、制御装置3は、全てのノズル等がスピンチャック5の上方から退避している状態で、基板Wを保持している基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRに基板Wを複数のチャックピン8上に載置させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内から退避させる。また、制御装置3は、基板Wが複数のチャックピン8上に載置された後、各チャックピン8を開位置から閉位置に移動させる。その後、制御装置3は、スピンモータ10によって基板Wの回転を開始させる。
【0049】
次に、除電液の一例である炭酸水を基板Wに供給する除電液供給工程(図5のステップS2)が行われる。具体的には、制御装置3は、第3ノズル移動装置39を制御することにより、除電液ノズルとしての第2リンス液ノズル37を退避位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を開いて、室温の炭酸水を基板Wの上面中央部に向けて第2リンス液ノズル37に吐出させる。そして、第2リンス液バルブ43が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第2リンス液バルブ43を閉じて、第2リンス液ノズル37からの炭酸水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第3ノズル移動装置39を制御することにより、第2リンス液ノズル37を基板Wの上方から退避させる。
【0050】
第2リンス液ノズル37から吐出された炭酸水は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。したがって、炭酸水が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う炭酸水の液膜が基板W上に形成される。そのため、基板Wが帯電している場合には、基板Wから炭酸水に電荷が移動し、電荷が基板Wから除去される。特に、炭酸水の比抵抗がSPMの比抵抗よりも大きいので、電荷が基板Wから炭酸水にゆっくりと移動する。そのため、急激な電荷の移動による発熱や放電により基板Wに形成されたデバイスが損傷することを防止できる。
【0051】
なお、第2リンス液ノズル37が炭酸水を吐出しているとき、制御装置3は、基板Wの上面に対する炭酸水の着液位置を中央部で静止させてもよいし、中央部と周縁部との間で移動させてもよい。また、制御装置3は、炭酸水の液膜が基板W上に形成された後、基板Wを低回転速度(たとえば1〜30rpm)で回転させる、もしくは基板Wの回転を停止させると共に、第2リンス液ノズル37からの炭酸水の吐出を停止させることにより、炭酸水の吐出が停止された状態で、基板Wの上面全域を覆う炭酸水の液膜を基板W上に保持させてもよい。
【0052】
次に、室温の過酸化水素水を基板Wに供給する第1過酸化水素水供給工程(図5のステップS3)と、基板Wおよび基板W上の液体を赤外線ヒータ58によって加熱する加熱工程(図5のステップS4)とが並行して行われる。
第1過酸化水素水供給工程に関しては、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1薬液ノズル11を退避位置から処理位置に移動させる。これにより、第1薬液ノズル11が基板Wの上方に配置される。その後、制御装置3は、硫酸バルブ19が閉じられた状態で過酸化水素水バルブ24を開いて、室温の過酸化水素水を回転している基板Wの上面中央部に向けて第1薬液ノズル11に吐出させる。第1薬液ノズル11が過酸化水素水を吐出しているとき、制御装置3は、基板Wの上面に対する過酸化水素水の着液位置を中央部で静止させてもよいし、中央部と周縁部との間で移動させてもよい。
【0053】
第1薬液ノズル11から吐出された過酸化水素水は、炭酸水で覆われている基板Wの上面中央部に着液する。そのため、基板W上の炭酸水が中央部からその周囲に押し流される。基板Wの上面中央部に着液した過酸化水素水は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、基板W上の炭酸水は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、平面視円形の過酸化水素水の液膜の外縁が基板Wの中央部から基板Wの周縁まで瞬時に広がり、基板W上の炭酸水が短時間で過酸化水素水に置換される。これにより、炭酸水が基板Wから除去される。
【0054】
加熱工程に関しては、制御装置3は、ヒータ移動装置60を制御することにより、赤外線ヒータ58を退避位置から処理位置に移動させる。また、制御装置3は、赤外線ヒータ58が基板Wの上方に移動する前もしくは移動した後に、赤外線ヒータ58に発光を開始させる。これにより、赤外線ヒータ58の温度が、基板Wに対するSPMの供給開始時のSPMの液温以上の加熱温度(たとえば、120℃以下)まで上昇し、加熱温度に維持される。その後、制御装置3は、ヒータ移動装置60によって赤外線ヒータ58を移動させることにより、基板Wの上面に対する赤外線の照射位置を基板Wの上面内で移動させる。これにより、基板Wおよび基板W上の液体の温度が加熱温度に近づけられる。制御装置3は、赤外線ヒータ58による基板Wの加熱が所定時間にわたって行われた後、赤外線ヒータ58の発光を停止させる。その後、制御装置3は、ヒータ移動装置60を制御することにより、赤外線ヒータ58を基板Wの上方から退避させる。
【0055】
次に、レジスト剥離液の一例であるSPMを基板Wに供給するSPM供給工程(図5のステップS5)と、硫酸および過酸化水素水の混合比を変更することより基板Wに供給されるSPMの液温を上昇させる液温上昇工程(図5のステップS6)とが並行して行われる。
SPM供給工程に関しては、制御装置3は、赤外線ヒータ58の発光が停止された後、第1薬液ノズル11が基板Wの上方で過酸化水素水を吐出している状態で、硫酸バルブ19を開く。これにより、硫酸および過酸化水素水が所定の混合比で混合され、SPMが生成される。そのため、混合前の硫酸および過酸化水素水の温度よりも高い初期温度(たとえば、50℃)のSPMが、回転している基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル11から吐出される。第1薬液ノズル11がSPMを吐出しているとき、制御装置3は、基板Wの上面に対するSPMの着液位置を中央部で静止させてもよいし、中央部と周縁部との間で移動させてもよい。
【0056】
液温上昇工程に関しては、図6に示すように、制御装置3は、硫酸流量調整バルブ20および過酸化水素水流量調整バルブ25の少なくとも一方の開度を変更することにより、第1薬液ノズル11からのSPMの吐出流量を一定に維持しながら、過酸化水素水に対する硫酸の割合が減少するように、硫酸および過酸化水素水の混合比を初期混合比から剥離混合比に連続的もしくは段階的に徐々に変更する。具体的には、制御装置3は、過酸化水素水と混合される硫酸の流量を減少させると共に、硫酸と混合される過酸化水素水の流量を増加させる。これにより、硫酸および過酸化水素水の混合により生成される熱量が増加し、SPMの液温が緩やかに上昇する。そのため、初期温度よりも高い剥離温度(たとえば、160℃)のSPMが生成され、第1薬液ノズル11から吐出される。
【0057】
第1薬液ノズル11から吐出されたSPMは、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。したがって、SPMが基板Wの上面全域に供給され、基板W上の過酸化水素水がSPMに置換される。そのため、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に形成される。剥離温度に達する前のSPMは、基板W上のレジストと化学反応する。これにより、図7に示すように、レジストの硬化層に穴があき、レジストの非硬化層が硬化層から露出する。そのため、SPMの液温が初期温度から剥離温度に上昇して、レジストの非硬化層が気化等により膨張したとしても、レジスト成分は、硬化層の穴を通って硬化層の外に移動する。そのため、硬化層の破裂によるパターンのダメージを防止できる。さらに、SPMの液温が初期温度から剥離温度に上昇して、レジストの剥離能力が高まるので、表層が硬化したレジストを確実に除去できる。これにより、パターンのダメージを防止しつつ、レジストを除去できる。
【0058】
次に、室温の過酸化水素水を基板Wに供給する第2過酸化水素水供給工程(図5のステップS7)が行われる。具体的には、制御装置3は、第1薬液ノズル11が基板Wの上方でSPMを吐出している状態、つまり硫酸バルブ19および過酸化水素水バルブ24が開かれている状態で、硫酸バルブ19を閉じる。これにより、第1薬液ノズル11への硫酸の供給が停止され、室温の過酸化水素水だけが、回転している基板Wの上面に向けて第1薬液ノズル11から吐出される。第1薬液ノズル11が過酸化水素水を吐出しているとき、制御装置3は、基板Wの上面に対する過酸化水素水の着液位置を中央部で静止させてもよいし、中央部と周縁部との間で移動させてもよい。
【0059】
第1薬液ノズル11から吐出された過酸化水素水は、SPMで覆われている基板Wの上面中央部に着液する。そのため、基板W上のSPMが中央部からその周囲に押し流される。基板Wの上面中央部に着液した過酸化水素水は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、基板W上のSPMは、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、平面視円形の過酸化水素水の液膜の外縁が基板Wの中央部から基板Wの周縁まで瞬時に広がり、基板W上のSPMが短時間で過酸化水素水に置換される。これにより、SPMが基板Wから除去される。
【0060】
次に、リンス液の一例である室温の純水を基板Wに供給する第1リンス液供給工程(図5のステップS8)が行われる。具体的には、制御装置3は、第3ノズル移動装置39を制御することにより、第1リンス液ノズル36を退避位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、第1リンス液バルブ41を開いて、室温の純水を基板Wの上面中央部に向けて第1リンス液ノズル36に吐出させる。そして、第1リンス液バルブ41が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第1リンス液バルブ41を閉じて、第1リンス液ノズル36からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第3ノズル移動装置39を制御することにより、第1リンス液ノズル36を基板Wの上方から退避させる。
【0061】
第1リンス液ノズル36から吐出された純水は、薬液で覆われている基板Wの上面中央部に着液する。そのため、基板W上の薬液が中央部からその周囲に押し流される。基板Wの上面中央部に着液した純水は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、基板W上の薬液は、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、平面視円形の純水の液膜の外縁が基板Wの中央部から基板Wの周縁まで瞬時に広がり、基板W上の薬液が短時間で純水に置換される。これにより、基板W上の薬液が純水によって洗い流される。
【0062】
次に、SC1を基板Wに供給するSC1供給工程(図5のステップS9)が行われる。具体的には、制御装置3は、第2ノズル移動装置31を制御することにより、第2薬液ノズル29を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、第2薬液ノズル29が基板Wの上方に配置された後、第2薬液バルブ34を開いて、回転している基板Wの上面に向けてSC1を第2薬液ノズル29に吐出させる。制御装置3は、この状態で第2ノズル移動装置31を制御することにより、基板Wの上面に対するSC1の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。そして、第2薬液バルブ34が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第2薬液バルブ34を閉じてSC1の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第2ノズル移動装置31を制御することにより、第2薬液ノズル29を基板Wの上方から退避させる。
【0063】
第2薬液ノズル29から吐出されたSC1は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、基板W上の純水は、SC1によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板W上の純水の液膜が、基板Wの上面全域を覆うSC1の液膜に置換される。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対するSC1の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、SC1の着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査される。そのため、第2薬液ノズル29から吐出されたSC1が、基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域が均一に処理される。
【0064】
次に、リンス液の一例である室温の純水を基板Wに供給する第2リンス液供給工程(図5のステップS10)が行われる。具体的には、制御装置3は、第3ノズル移動装置39を制御することにより、第1リンス液ノズル36を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、第1リンス液ノズル36が基板Wの上方に配置された後、第1リンス液バルブ41を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けて第1リンス液ノズル36に純水を吐出させる。これにより、基板W上のSC1が、純水によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。そのため、基板W上のSC1の液膜が、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜に置換される。そして、第1リンス液バルブ41が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、第1リンス液バルブ41を閉じて純水の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第1ノズル移動装置13を制御することにより、第1リンス液ノズル36を基板Wの上方から退避させる。
【0065】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(図5のステップS11)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、除電液供給工程(図5のステップS2)から第2リンス液供給工程(図5のステップS10)までの回転速度よりも大きい乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。そして、基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ10を制御することにより、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させる。
【0066】
次に、基板Wをチャンバー4内から搬出する搬出工程(図5のステップS12)が行われる。具体的には、制御装置3は、各チャックピン8を閉位置から開位置に移動させて、スピンチャック5による基板Wの把持を解除させる。その後、制御装置3は、全てのノズル等がスピンチャック5の上方から退避している状態で、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドにスピンチャック5上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0067】
以上のように本実施形態では、硫酸と過酸化水素水とが混合されることにより、SPMが生成される。そして、生成されたSPMが、レジストで覆われた基板Wに供給される。レジストの表層は、イオン注入やドライエッチングによる変質によって硬化しており、レジストの内部は、表層に位置する硬化層によって密閉されている。SPMの生成に用いられる硫酸および過酸化水素水の混合比は、基板WへのSPMの供給が行われているときに変更され、これによって、基板Wに供給されるSPMの液温が、レジストの剥離に適した剥離温度まで上昇する。レジストの表層に位置する硬化層は、液温が上昇するSPMと反応する。これにより、レジストの内部および外部を繋ぐ穴が、SPMの液温上昇の過程で硬化層に形成される。したがって、レジストの非硬化層が気化したとしても、気化した成分が硬化層の穴を通って排出されるので、レジストの内圧が上昇し難い。そのため、剥離温度のSPMを最初から基板Wに供給する場合よりも、レジストの破裂(硬化層の破裂)が発生し難い。これにより、レジスト内に配置されたパターンのダメージを抑制または防止しつつ、レジストを基板Wから除去することができる。
【0068】
また本実施形態では、SPMが基板Wに供給される前に基板Wが加熱され、基板Wに対するSPMの供給が開始されるときのSPMの液温(初期温度)に基板Wの温度が近づけられる。したがって、SPMの供給開始によりレジストの温度が急激に上昇することを抑制または防止できる。そのため、SPMの初期温度が高い場合であっても、SPMの供給開始時にレジストの内圧が急激に高まることを抑制または防止できる。これにより、レジストの破裂に起因するパターンダメージの発生を抑制または防止できる。
【0069】
また本実施形態では、SPMが基板Wに供給される前に電気を通す除電液が基板Wに供給される。そのため、基板Wが帯電している場合には、基板Wから除電液に電荷が移動し、電荷が基板Wから除去される。特に、除電液の比抵抗がSPMの比抵抗よりも大きいので、電荷が基板Wから除電液にゆっくりと移動する。そのため、急激な電荷の移動による発熱や放電により基板Wに形成されたデバイスが損傷することを防止できる。これにより、基板Wの品質の低下を抑制または防止できる。
【0070】
また本実施形態では、除電液が基板Wに供給された後に過酸化水素水が基板Wに供給される。その後、SPMが基板Wに供給される。基板Wに残留している除電液は、過酸化水素水の供給によって基板Wから除去される。したがって、SPMは、除電液の残留量が減少した状態で基板Wに供給される。除電液とSPMとは一般的に反応性が高い。そのため、SPMが過剰に昇温してしまうことを抑制または防止できる。また、SPMおよび除電液が基板Wの一部の領域だけで混ざり合い、SPMの濃度の均一性が低下することを抑制または防止できる。これにより、基板Wの品質の低下を抑制または防止できる。
【0071】
また本実施形態では、除電液が基板Wに供給された後に、SPMの初期温度(基板Wに対するSPMの供給が開始されるときのSPMの液温)よりも低温の過酸化水素水が基板Wに供給される。そして、過酸化水素水が基板Wに保持されているときに基板Wが加熱され、基板Wの温度がSPMの初期温度に近づけられる。したがって、SPMの供給開始によりレジストの温度が急激に上昇することを抑制または防止できる。これにより、レジストの破裂に起因するパターンダメージの発生を抑制または防止できる。
【0072】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、SPM供給工程の前に赤外線ヒータ58によって基板Wを加熱する場合について説明したが、加熱工程が省略されてもよい。
また、前述の実施形態では、除電液の一例である炭酸水をSPM供給工程の前に基板Wに供給する場合について説明したが、除電液供給工程が省略されてもよい。この場合、除電液供給工程に加えて、SPM供給工程の前に除電液を基板Wから除去する第1過酸化水素水供給工程が省略されてもよい。
【0073】
また、前述の実施形態では、SPMおよび過酸化水素水が共通のノズル(第1薬液ノズル11)から吐出される場合について説明したが、SPMおよび過酸化水素水は別々のノズルから吐出されてもよい。
また、前述の実施形態では、赤外線ヒータ58による基板Wの加熱が停止されている状態で、SPMが基板Wに供給される場合について説明したが、SPMが基板Wに保持されている状態で、基板Wが赤外線ヒータ58によって加熱されてもよい。また、基板Wを加熱する加熱装置は、赤外線ヒータ58に限らず、電熱線を備える電熱器であってもよい。
【0074】
また、前述の実施形態では、第1薬液ノズル11にSPMを吐出させながら、基板Wの上面全域をSPMの液膜で覆う場合について説明したが、制御装置3は、硫酸および過酸化水素水の混合比が剥離混合比に達した後、基板Wを低速回転速度(たとえば1〜30rpm)で回転させる、もしくは基板Wの回転を停止させると共に、第1薬液ノズル11からのSPMの吐出を停止させることにより、SPMの吐出が停止された状態で、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜を基板W上に保持させてもよい。
【0075】
また、前述の実施形態では、赤外線ヒータ58による基板W等の加熱が停止されている状態で、SPM供給工程(図5のステップS5)におけるSPMの吐出が開始される場合について説明したが、SPM供給工程の途中で赤外線ヒータ58による基板W等の加熱が開始(再開)されてもよい。具体的には、SPM供給工程の初期はSPMの温度が比較的低いものの、その後SPMの温度が上昇するので、たとえばSPM供給工程の後半から赤外線ヒータ58による基板W等の加熱が開始されてもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、スピンチャック5が、複数のチャックピン8を備える挟持式のチャックである場合について説明したが、スピンチャック5は、スピンベース7(吸着ベース)の上面に基板Wの下面(裏面)を吸着させるバキューム式のチャックであってもよい。
また、前述の実施形態では、第1薬液ノズル11および第2薬液ノズル29が、別々のノズルアームに取り付けられている場合について説明したが、共通のノズルアームに取り付けられていてもよい。同様に、赤外線ヒータ58は、第1薬液ノズル11などの処理液を吐出する処理液ノズルと共通のアームに取り付けられていてもよい。また、第1リンス液ノズル36および第2リンス液ノズル37が、共通のノズルアームに取り付けられている場合について説明したが、別々のノズルアームに取り付けられていてもよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板を処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
5 :スピンチャック
11 :第1薬液ノズル
15 :撹拌配管
16 :混合バルブ
17 :硫酸タンク
19 :硫酸バルブ
20 :硫酸流量調整バルブ
21 :第1ヒータ
22 :過酸化水素水タンク
24 :過酸化水素水バルブ
25 :過酸化水素水流量調整バルブ
36 :第1リンス液ノズル
37 :第2リンス液ノズル
58 :赤外線ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7