(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸気弁(55)に対応した吸気側カム(76)を有する吸気側カムシャフト(77)ならびに排気弁(56)に対応した排気側カム(78)を有する排気側カムシャフト(79)が機関本体(29)のシリンダヘッド(45)に回転自在に支持され、前記シリンダヘッド(45)に支持される吸気側ロッカシャフト(84)に前記吸気弁(55)および前記吸気側カム(76)間に介設される吸気側ロッカアーム(80)が揺動自在に支持され、前記シリンダヘッド(45)に支持される排気側ロッカシャフト(85)に前記排気弁(55)および前記排気側カム(78)間に介設される排気側ロッカアーム(81)が揺動自在に支持され、前記吸気側および前記排気側ロッカアーム(80,81)に、それらのロッカアーム(80,81)と、前記吸気側および前記排気側カム(76,78)との摺接部にオイルを供給するためのロッカアーム側油路(160,161)がそれぞれ設けられ、それらのロッカアーム側油路(160,161)に通じるロッカシャフト内油路(162,163)が前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト(84,85)内にそれぞれ設けられる内燃機関用動弁装置のオイル供給構造において、前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)を回転自在に支持して前記シリンダヘッド(45)に設けられるカムシャフト支持部(82)に、前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)を迂回する連絡油路(164)が、前記機関本体(29)のシリンダボディ(44)側からのオイルを導くようにして前記シリンダヘッド(45)に設けられるオイル供給路(165)に通じるようにして設けられ、前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)を回転自在に支持するようにして前記カムシャフト支持部(82)に形成される吸気側および排気側カムシャフト軸受部(82a,82b)にオイルを導く吸気側および排気側ジャーナル油路(166,167)と、前記ロッカシャフト内油路(162,163)に通じるようにして前記シリンダヘッド(45)に設けられるオイル通路(169,170)側にオイルを導くようにして前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路(166,167)と並列に前記連絡油路(164)に連なる分岐油路(168)とが、前記カムシャフト支持部(82)に設けられることを特徴とする内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
前記カムシャフト支持部(82)が、前記シリンダヘッド(45)に一体に設けられる軸受壁(105)と、前記吸気側および前記排気側カムシャフト軸受部(82a,82b)を前記軸受壁(105)と協働して形成するようにして該軸受壁(105)に固定されるカムホルダ(106)とから成り、前記カムホルダ(106)に、前記オイル供給路(165)の一部と、該オイル供給路(165)に通じる前記連絡油路(164)と、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路(166,167)と、前記分岐油路(168)の一部とが設けられることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
一対の前記オイル通路(169,170)が、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト(84,85)内にそれぞれ設けられる前記ロッカシャフト内油路(162,163)に個別に通じるようにして前記シリンダヘッド(45)に設けられ、前記分岐油路(168)が、前記一対のオイル通路(169,170)に分かれて連通するように分岐して前記カムシャフト支持部(82)に設けられることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
前記分岐油路(168)の分岐部(168d)が、前記軸受壁(105)および前記カムホルダ(106)の接合部に設けられることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
前記カムホルダ(106)が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)を前記軸受壁(105)との間に挟む部分を一体に有するように形成され、前記連絡油路(164)が前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)の配列方向と直交する方向に直線状に延びて形成され、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路(166,167)が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)にそれぞれ摺接するようにして前記カムホルダ(106)に形成される吸気側カムシャフト摺接面(109)および排気側カムシャフト摺接面(110)の最頂部および前記連絡油路(164)間を結ぶように形成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面(109,110)に、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路(166,167)を開口させる溝(171,172)が前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)の軸線方向に延びるようにして形成されることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
前記吸気弁(55)および前記排気弁(56)のうち一方の弁(55)が1つの燃焼室(52)に対して複数個配設されるとともに前記燃焼室(52)に対して放射状配置とされ、前記吸気弁(55)および前記排気弁(56)のうち他方の弁(56)は前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)の軸線に直交する平面に沿うように配置され、前記カムシャフト支持部(82)から突出した前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)の軸端に、クランクシャフト(42)からの回転動力を伝達する調時伝動機構(88)の一部を構成する被動部材(92,93)がそれぞれ固定され、前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面(109,110)のうち前記一方の弁(55)側に配置される一方のカムシャフト摺接面(109)を他方のカムシャフト摺接面(110)よりも前記調時伝動機構(88)側にオフセットして配置するように前記カムホルダ(106)が形成され、前記連絡油路(164)が前記吸気側および前記排気側カムシャフト(77,79)の軸線を含む平面への投影図上で前記他方のカムシャフト摺接面(110)の幅方向中央部を通るようにして前記カムホルダ(106)に設けられ、前記一方のカムシャフト摺接面(109)に形成される前記溝(171)が、前記他方のカムシャフト摺接面(110)に形成される前記溝(172)よりも、前記調時伝動機構(88)側に長く形成されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
前記吸気弁(55)および前記排気弁(56)のうちの一方の弁(55)が1つの燃焼室(52)に対して一対配設されるとともに前記燃焼室(52)に対して放射状配置とされ、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト(84,85)のうち前記一方の弁(55)に対応した一対のロッカシャフト(84)を挿通、固定する一対の挿通孔(151,152)が、それらの挿通孔(151,152)の中心軸線(C1,C2)の延長線を相互に交差させるようにして前記シリンダヘッド(45)に相互に独立して設けられ、前記オイル通路(169,170)から一対の前記挿通孔(151,152)にオイルを導く一対の連通路(173,174)が相互に独立して前記シリンダヘッド(45)に設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関用動弁装置のオイル供給構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1で開示されたものでは、カムシャフトの軸受部を潤滑する環状の潤滑油通路からはカムシャフトに設けられた小孔からカムシャフト内にオイルが流入し、そのオイルが他の軸受部に流れる構造となっており、そのような構成ではカムシャフトの回転数増大に応じて前記軸受部でのオイル消費量が増加していくことになる。その結果、内燃機関の回転数によっては前記軸受部を潤滑する環状の潤滑油通路から吸気側および排気側ロッカシャフト内のロッカシャフト内油路にオイルを均等に分配して供給することが難しい場合があり、オイル供給の改善が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、カムシャフトの回転数変化にかかわらず、ロッカアームへのオイル供給量を確保し得るようにした内燃機関用動弁装置のオイル供給構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、吸気弁に対応した吸気側カムを有する吸気側カムシャフトならびに排気弁に対応した排気側カムを有する排気側カムシャフトが機関本体のシリンダヘッドに回転自在に支持され、前記シリンダヘッドに支持される吸気側ロッカシャフトに前記吸気弁および前記吸気側カム間に介設される吸気側ロッカアームが揺動自在に支持され、前記シリンダヘッドに支持される排気側ロッカシャフトに前記排気弁および前記排気側カム間に介設される排気側ロッカアームが揺動自在に支持され、前記吸気側および前記排気側ロッカアームに、それらのロッカアームと、前記吸気側および前記排気側カムとの摺接部にオイルを供給するためのロッカアーム側油路がそれぞれ設けられ、それらのロッカアーム側油路に通じるロッカシャフト内油路が前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト内にそれぞれ設けられる内燃機関用動弁装置のオイル供給構造において、前記吸気側および前記排気側カムシャフトを回転自在に支持して前記シリンダヘッドに設けられるカムシャフト支持部に、前記吸気側および前記排気側カムシャフトを迂回する連絡油路が、前記機関本体のシリンダボディ側からのオイルを導くようにして前記シリンダヘッドに設けられるオイル供給路に通じるようにして設けられ、前記吸気側および前記排気側カムシャフトを回転自在に支持するようにして前記カムシャフト支持部に形成される吸気側および排気側カムシャフト軸受部にオイルを導く吸気側および排気側ジャーナル油路と、前記ロッカシャフト内油路に通じるようにして前記シリンダヘッドに設けられるオイル通路側にオイルを導くようにして前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路と並列に前記連絡油路に連なる分岐油路とが、前記カムシャフト支持部に設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記カムシャフト支持部が、前記シリンダヘッドに一体に設けられる軸受壁と、前記吸気側および前記排気側カムシャフト軸受部を前記軸受壁と協働して形成するようにして該軸受壁に固定されるカムホルダとから成り、前記カムホルダに、前記オイル供給路の一部と、該オイル供給路に通じる前記連絡油路と、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路と、前記分岐油路の一部とが設けられることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、一対の前記オイル通路が、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト内にそれぞれ設けられる前記ロッカシャフト内油路に個別に通じるようにして前記シリンダヘッドに設けられ、前記分岐油路が、前記一対のオイル通路に分かれて連通するように分岐して前記カムシャフト支持部に設けられることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記分岐油路の分岐部が、前記軸受壁および前記カムホルダの接合部に設けられることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第2〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記カムホルダが、前記吸気側および前記排気側カムシャフトを前記軸受壁との間に挟む部分を一体に有するように形成され、前記連絡油路が前記吸気側および前記排気側カムシャフトの配列方向と直交する方向に直線状に延びて形成され、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路が、前記吸気側および前記排気側カムシャフトにそれぞれ摺接するようにして前記カムホルダに形成される吸気側カムシャフト摺接面および排気側カムシャフト摺接面の最頂部および前記連絡油路間を結ぶように形成されることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第5の特徴の構成に加えて、前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面に、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路を開口させる溝が前記吸気側および前記排気側カムシャフトの軸線方向に延びるようにして形成されることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第6の特徴の構成に加えて、前記吸気弁および前記排気弁のうち一方の弁が1つの燃焼室に対して複数個配設されるとともに前記燃焼室に対して放射状配置とされ、前記吸気弁および前記排気弁のうち他方の弁は前記吸気側および前記排気側カムシャフトの軸線に直交する平面に沿うように配置され、前記カムシャフト支持部から突出した前記吸気側および前記排気側カムシャフトの軸端に、クランクシャフトからの回転動力を伝達する調時伝動機構の一部を構成する被動部材がそれぞれ固定され、前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面のうち前記一方の弁側に配置される一方のカムシャフト摺接面を他方のカムシャフト摺接面よりも前記調時伝動機構側にオフセットして配置するように前記カムホルダが形成され、前記連絡油路が前記吸気側および前記排気側カムシャフトの軸線を含む平面への投影図上で前記他方のカムシャフト摺接面の幅方向中央部を通るようにして前記カムホルダに設けられ、前記一方のカムシャフト摺接面に形成される前記溝が、前記他方のカムシャフト摺接面に形成される前記溝よりも、前記調時伝動機構側に長く形成されることを第7の特徴とする。
【0013】
さらに本発明は、第1〜第7の特徴の構成のいずれかに加えて、前記吸気弁および前記排気弁のうちの一方の弁が1つの燃焼室に対して一対配設されるとともに前記燃焼室に対して放射状配置とされ、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフトのうち前記一方の弁に対応した一対のロッカシャフトを挿通、固定する一対の挿通孔が、それらの挿通孔の中心軸線の延長線を相互に交差させるようにして前記シリンダヘッドに相互に独立して設けられ、前記オイル通路から一対の前記挿通孔にオイルを導く一対の連通路が相互に独立して前記シリンダヘッドに設けられることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の特徴によれば、吸気側および排気側ロッカアームにそれぞれ設けられるロッカアーム側油路に通じるロッカシャフト内油路が、シリンダヘッドに設けられるオイル通路に連通して吸気側および排気側ロッカシャフト内にそれぞれ設けられ、シリンダヘッドのカムシャフト支持部に、シリンダボディ側からのオイルを導く連絡油路が吸気側および排気側カムシャフトを迂回して設けられ、吸気側および排気側カムシャフト軸受部にオイルを導く吸気側および排気側ジャーナル油路と、オイル通路側にオイルを導く分岐油路とが、並列に連絡油路に連なっているので、カムシャフトの軸受部から分岐した連通路を介してロッカアーム側油路にオイルを供給するようにしたオイル供給構造に比べて、カムシャフトの回転数にかかわらずロッカアーム側油路に供給するオイル量を確保することができる。
【0015】
また本発明の第2の特徴によれば、カムシャフト支持部をシリンダヘッドに一体に設けられる軸受壁と協働して構成するカムホルダに、オイル供給路の一部と、連絡油路と、吸気側および排気側ジャーナル油路と、分岐油路の一部とが設けられるので、シリンダヘッドに比べて小さくかつシリンダヘッドから分離され得るカムホルダ側で、連絡油路の加工と、その連絡油路に対する複数の油路の接続部の加工とを行うようにして、油路の加工を容易とすることができる。
【0016】
本発明の第3の特徴によれば、分岐油路が、吸気側および排気側ロッカシャフトのロッカシャフト内油路に個別に通じる一対のオイル通路に直接連通するように分岐するので、吸気側および排気側ロッカシャフトのロッカシャフト内油路へのオイル供給量の均衡を図ることができる。
【0017】
本発明の第4の特徴によれば、分岐油路を、軸受壁およびカムホルダの接合部で分岐するように形成することで、軸受壁のカムホルダとの接合面から分岐油路の分岐部を加工することができ、分岐した分岐油路の加工が容易となる。
【0018】
本発明の第5の特徴によれば、吸気側および排気側カムシャフトを軸受壁との間に挟む部分を一体に有するカムホルダに、連絡油路が吸気側および排気側カムシャフトの配列方向と直交する方向に直線状に延びて形成され、吸気側および排気側ジャーナル油路が、カムホルダの吸気側カムシャフト摺接面および排気側カムシャフト摺接面の最頂部および連絡油路間を結ぶように形成されるので、吸気側および排気側ジャーナル油路を短くして加工工数を低減することができる。
【0019】
本発明の第6の特徴によれば、吸気側および排気側ジャーナル油路を開口させる溝が吸気側および排気側カムシャフトの軸線方向に延びるようにして吸気側および排気側カムシャフト摺接面に形成されるので、吸気側および排気側ジャーナル油路から供給されるオイルを吸気側および排気側カムシャフトの軸線方向に拡散して、吸気側および排気側カムシャフトと、カムシャフト支持部との間の潤滑性の向上を図ることができる。
【0020】
本発明の第7の特徴によれば、吸気弁および排気弁のうちの一方の弁が1つの燃焼室に対して複数個配設されるとともに燃焼室に対して放射状配置とされることに基づいて、一方の弁側の一方のカムシャフト摺接面が他方のカムシャフト摺接面よりも調時伝動機構側にオフセットして配置されたときに、吸気側および排気側カムシャフトの軸線を含む平面への投影図上で他方のカムシャフト摺接面の幅方向中央部を通るように連絡油路が配置されていても、一方のカムシャフト摺接面に形成される溝が他方のカムシャフト摺接面の溝よりも調時伝動機構側に長く形成されるので、被動部材が設けられていることによってカムシャフトの軸端には軸線に直交する方向の荷重がより大きくなるものの、カムシャフト支持部およびカムシャフト間の前記被動部材寄りの部分にも有効にオイルを供給することができ、良好な潤滑状態を確保することができる。
【0021】
さらに本発明の第8の特徴によれば、吸気弁および排気弁のうちの一方の弁が1つの燃焼室に対して一対配設されるとともに前記燃焼室に対して放射状配置とされていることに基づいて、吸気側および排気側ロッカシャフトのうち放射状配置の弁に対応した一対のロッカシャフトを挿通、固定する一対の挿通孔が、相互に交差する配置でシリンダヘッドに設けられ、それらの挿通孔にオイルを導くための相互に独立した一対の連通路がオイル通路に通じるようにしてシリンダヘッドに設けられるので、一対の挿通孔を相互に連通させることなくそれらの挿通孔にオイルを供給することを可能とし、挿通孔の全長を短くしてシリンダヘッドの剛性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について添付の
図1〜
図18を参照しながら説明すると、先ず
図1において、自動二輪車の車体フレームFは、前輪WFを軸支したフロントフォーク21を操向可能に支承するヘッドパイプ22と、該ヘッドパイプ22から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム23と、それらのメインフレーム23の前部から下方に垂下される左右一対のハンガ24と、前記メインフレーム23の後部から下方に延びる左右一対のピボットフレーム25と、前記メインフレーム23の後部に立設された支柱26の上端に前端部が支持されて後上がりに延びる左右一対のシートレール27と、前記メインフレーム23の後部および前記シートレール27の後部間を結ぶリヤステー28とを備える。
【0024】
前記車体フレームFにおけるメインフレーム23の後部、ハンガ24の下部およびピボットフレーム25の下部に、内燃機関Eの機関本体29が支持される。また内燃機関Eが発揮する動力で駆動される後輪WRを後端部で軸支するスイングアーム30の前端部がピボットフレーム25に上下揺動可能に支承されており、スイングアーム30の前部および車体フレームFの前記支柱26間には、リンク31およびリヤクッションユニット32が設けられる。
【0025】
前記メインフレーム23には、前記機関本体29の上方に配置される燃料タンク33が搭載され、該燃料タンク33の後方に配置される乗車用シート34が前記シートレール27で支持される。また前記機関本体29の前方にはラジエータ35が配置され、該ラジエータ35は前記車体フレームFおよび機関本体29で支持される。
【0026】
前記内燃機関Eの一部および前記車体フレームFの一部は、車体カバー37で覆われており、該車体カバー37は、ヘッドパイプ22の前方からメインフレーム23の後部までの間にわたって前記ラジエータ35および内燃機関Eの上部を覆うフロントカウル38と、フロントカウル38の両側後部に連なって前記内燃機関Eの下部を覆う左右一対のサイドカウル39と、前記シートレール27および前記リヤステー28を覆うリヤカウル40とを備える。
【0027】
図2および
図3において、前記内燃機関Eの機関本体29は、車幅方向に延びる軸線を有するクランクシャフト42を回転自在に支承するクランクケース43と、シリンダ軸線Cをわずかに後傾させて前記クランクケース43の前部上端に結合されるシリンダボディ44と、該シリンダボディ44の上端に結合されるシリンダヘッド45と、該シリンダヘッド45の上端に結合されるヘッドカバー46とを有して、たとえば単気筒に構成される。
【0028】
前記クランクケース43には後方に延びるミッションケース47が連設される。このミッションケース47内には、前記クランクシャフト42からの回転動力を変速する変速機(図示せず)が収容されており、該変速機の出力軸48がミッションケース47の左側壁から突出される。前記出力軸48には駆動スプロケット49が固定され、
図1で示すように、前記後輪WRの車軸には被動スプロケット50が固定されており、前記駆動スプロケット49および前記被動スプロケット50に無端状のチェーン51が巻き掛けられる。
【0029】
図4〜
図7を併せて参照して、前記シリンダボディ44および前記シリンダヘッド45間には、前記シリンダボディ44に摺動可能に嵌合されるピストン(図示せず)の頂部を臨ませる燃焼室52が形成されており、前記シリンダヘッド45の前部側壁45aには前記燃焼室52に通じ得る単一の吸気ポート53が設けられ、前記シリンダヘッド45の後部側壁45bには前記燃焼室52に通じ得る一対の排気ポート54が設けられる。また前記シリンダヘッド45には、前記燃焼室52への吸気を制御すべく前記燃焼室52および前記吸気ポート53間の連通・遮断を切換える吸気弁55と、前記燃焼室52からの排気を制御すべく前記燃焼室52および前記排気ポート54間の連通・遮断を切換える排気弁56とが、1つの燃焼室52に対して一対ずつ開閉可能に配設される。
【0030】
前記シリンダヘッド45の後部側壁45bには、一対の前記排気ポート54の一部を構成する排気側接続筒部58が後方に突出するようにして一体に突設されており、前記排気ポート54に通じる排気管59の上流端が前記排気側接続筒部58に接続される。この排気管59は、シリンダヘッド45の後部側壁45bから機関本体29の左側に彎曲して該機関本体29の前方に延び、該機関本体29の前方から下方に彎曲してクランクケース43の下方に回り込むように形成されており、ミッションケース47の下方に配置された排気マフラー60に排気管59の下流端が接続される。
【0031】
前記シリンダヘッド45の前部側壁45aには、前記吸気ポート53の一部を構成する吸気側接続筒部61が前上がりに突出するようにして一体に突設されており、前記吸気側接続筒部61には、前記吸気ポート53に通じるスロットルボディ62の下流端が接続される。前記スロットルボディ62には、金網によって上方に膨らんだ半球状に形成されて前記スロットルボディ62の上流端開口部を覆うフレームトラップ63が取付けられており、このフレームトラップ63を含む前記スロットルボディ62の上流部は、前記燃料タンク33の下方に配置される吸気チャンバ64(
図1参照)内に収容される。
【0032】
前記吸気チャンバ64の外側で前記スロットルボディ62には第1の燃料噴射弁65が取付けられ、前記フレームトラップ63から前記スロットルボディ62側に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁66が支持枠67を介して前記スロットルボディ62に取付けられ、第2の燃料噴射弁66は前記吸気チャンバ64内に配置される。
【0033】
一対ずつである前記吸気弁55および前記排気弁56の少なくとも一方は、1つの前記燃焼室52に対して放射状に配置されるものであり、この実施の形態では、一対の前記吸気弁55が放射状配置とされ、一対の前記排気弁56は前記クランクシャフト42の軸線に直交する平面に沿う通常配置とされる。
【0034】
図5に注目して、一対の前記吸気弁55のステム55aは、前記燃焼室52から遠ざかるにつれて相互に離隔するようにした放射状配置で前記シリンダヘッド45に設けられるガイド筒68に摺動可能に嵌合され、前記吸気弁55のステムエンド55bに固定されるリテーナ69および前記シリンダヘッド45間に設けられる弁ばね70で前記吸気弁55は閉弁方向に付勢される。
【0035】
図6に注目して、一対の前記排気弁56のステム56aは、前記クランクシャフト42の軸線に直交する平面に沿うように配置されて前記シリンダヘッド45に埋設されるガイド筒71に摺動可能に嵌合され、前記排気弁56のステムエンド56bに固定されるリテーナ72および前記シリンダヘッド45間に設けられる弁ばね73で前記排気弁56は閉弁方向に付勢される。
【0036】
前記吸気弁55および前記排気弁56を開閉駆動する動弁装置75は、一対の吸気弁55に個別に対応した一対の吸気側カム76を有して前記シリンダヘッド45に回転自在に支持される吸気側カムシャフト77と、一対の排気弁56に個別に対応した一対の排気側カム78を有して前記シリンダヘッド45に回転自在に支持される排気側カムシャフト79と、前記吸気弁55および前記吸気側カム76間に介設される一対の吸気側ロッカアーム80と、前記排気弁56および前記排気側カム78間に介設される一対の排気側ロッカアーム81とを備える。
【0037】
前記吸気側カムシャフト77は、前記クランクシャフト42と平行な軸線を有して前記吸気弁55のステム55aの上方への軸線延長線と交差するように配置され、前記排気側カムシャフト79は、前記クランクシャフト42および前記吸気側カムシャフト77と平行な軸線を有して前記排気弁56のステム56aの上方への軸線延長線と交差するように配置される。しかも相互に平行に延びる前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79は、前記シリンダヘッド45に設けられる第1および第2のカムシャフト支持部82,83で回転可能に支持される。
【0038】
前記一対の吸気側ロッカアーム80の一端部は、各吸気側ロッカアーム80に個別に対応しつつ前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79の軸線方向から見て前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79間に配置されるようにして前記シリンダヘッド45に支持される一対の吸気側ロッカシャフト84で揺動可能に支持され、前記一対の排気側ロッカアーム81の一端部は、各排気側ロッカアーム81に個別に対応しつつ前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79の軸線方向から見て前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79間に配置されるようにして前記シリンダヘッド45に支持される一対の排気側ロッカシャフト85で揺動可能に支持される。
【0039】
前記吸気側ロッカアーム80の他端部は、前記吸気側カム76に摺接するカムスリッパ80aを有して前記吸気弁55のステムエンド55bおよび前記吸気側カム76間に配置される。しかも前記吸気側カム76の外周は、前記吸気弁55が前記燃焼室52に対して放射状に配置されていることに基づいて、前記吸気側カムシャフト77の軸線に対して斜めに交差するように傾斜して形成されており、一対の吸気側ロッカシャフト84も前記吸気側カムシャフト77の軸線と平行な直線と斜めに交差する軸線を有して前記シリンダヘッド45に支持される。また前記排気側ロッカアーム81の他端部は、前記排気側カム78に摺接するカムスリッパ81aを有して前記排気弁56のステムエンド56bおよび前記排気側カム78間に配置される。
【0040】
図2に注目して、前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79には、前記クランクシャフト42からの回転動力が調時伝動機構88を介して伝達されるものであり、この調時伝動機構88は、前記クランクシャフト42に設けられる駆動スプロケット89と、前記シリンダヘッド45に回転自在に支持される被動輪としての被動スプロケット90と、前記駆動スプロケット89および前記被動スプロケット90に巻き掛けられる無端伝動帯としてのカムチェーン91と、前記第1のカムシャフト支持部82から突出した前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79の軸端にそれぞれ固定される被動ギヤ92,93と、前記被動スプロケット90とともに回転するようにして該被動スプロケット90に同軸かつ一体に設けられるとともに前記被動ギヤ92,93に共通に噛合する駆動ギヤ94とを備える。
【0041】
しかも前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94は、前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79の中心軸線間を結ぶ直線Lよりも前記クランクシャフト42側に配置される。
【0042】
前記クランクシャフト42および前記駆動スプロケット89は、
図2の矢印95で示す方向に回転するものであり、それに応じて前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94は、
図2の矢印96で示す方向に回転し、一対の被動ギヤ92,93すなわち吸気側カムシャフト77および排気側カムシャフト79は、
図2の矢印97で示す同一のカム回転方向に回転する。
【0043】
前記駆動スプロケット89および前記被動スプロケット90間の前記カムチェーン91のうち前記駆動スプロケット89から前記被動スプロケット90に送り出される側である弛緩側の外周にはスリッパ98が当接しており、このスリッパ98に前記カムチェーン91と反対側から当接するテンショナ99が前記シリンダボディ44に取付けられる。また前記駆動スプロケット89および前記被動スプロケット90間の前記カムチェーン91のうち前記駆動スプロケット89で牽引される側である緊張側の外周にはカムチェーンガイド100が当接される。
【0044】
前記スリッパ98は、前記カムチェーン91の弛緩側外周に凸曲面を摺接させるようにして弓形に形成され、該スリッパ98の前記クランクシャフト42側の一端部は、枢軸101を介してクランクケース43に回動可能に支承される。また前記カムチェーンガイド100は適度な剛性および弾性を有する合成樹脂によって前記カムチェーン91側に向けて沿った略弓形をなすように形成されており、該カムチェーンガイド100の前記クランクシャフト42側の端部は、ボルト102によって前記クランクケース43に固定される。また前記カムチェーンガイド100の前記被動スプロケット90側の端部は、前記シリンダヘッド45に設けられる当接支持部103に当接される。
【0045】
前記機関本体29における前記クランクケース43、前記シリンダボディ44および前記シリンダヘッド45には、前記調時伝動機構88の一部を構成する前記一対の被動ギヤ92,93、前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94を収容するとともに前記カムチェーン91を走行させる収容室104が形成され、前記スリッパ98および前記カムチェーンガイド100も前記収容室104に収容される。
【0046】
図8および
図9において、第1のカムシャフト支持部82は、前記収容室104の一部の内壁を構成して前記シリンダヘッド45に一体に形成される第1の軸受壁105と、前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79を回転自在に支持する吸気側カムシャフト軸受部82aならびに排気側カムシャフト軸受部82bを第1の軸受壁105と協働して形成するようにして第1の軸受壁105に固定される第1のカムホルダ106とから成る。
【0047】
図10および
図11を併せて参照して、第1の軸受壁105は、前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト78の外周の少なくとも一部、この実施の形態では一部に摺接して支持する一対の円弧状のカムシャフト摺接支持面107,108を有するようにして前記シリンダヘッド45に設けられ、第1のカムホルダ106には、前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト78の外周の残余の一部に摺接するカムシャフト摺接面109,110が形成される。
【0048】
図4および
図7に注目して、第1の軸受壁105の前記カムシャフト摺接支持面107,108よりも前記シリンダボディ44側で前記シリンダヘッド45には、前記吸気弁55および前記排気弁56の個数と同数すなわち4個の取付けボス部111,112,113,114が、前記シリンダヘッド45を前記シリンダボディ44とともに前記クランクケース43に締結するための通しボルト115を挿通させるようにして前記吸気弁55および前記排気弁56の周囲に設けられる。
【0049】
しかも前記吸気弁55および前記排気弁56のうち前記吸気弁55が前記燃焼室52に対して放射状に配置されていることから、前記吸気弁55の外方に配置される一対の前記取付けボス部111,112は、前記吸気弁55との干渉を避けるために、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に直交する方向で前記吸気側ロッカシャフト84の中心軸線からの距離L1を前記排気弁56の外方に配置される一対の前記取付けボス部113,114の前記排気側ロッカシャフト85の中心軸線からの距離L2よりも大きくした位置に配置される。一方、第1の軸受壁105には、前記吸気弁55の外方に配置される前記取付けボス部111,112のうち第1の軸受壁105側の前記取付けボス部111、ならびに前記排気弁56の外方に配置される前記取付けボス部113,114のうち第1の軸受壁105側の前記取付けボス部113への前記通しボルト115の挿通を可能とするために、一対の前記カムシャフト摺接支持面107,108の一部を切欠くようにして円弧状の切欠き部116,117が形成されるのであるが、前記吸気弁55の外方かつ第1の軸受壁105側の前記取付けボス部111を臨ませるための前記切欠き部116が大きくなって第1の軸受壁105の剛性低下を招くことを回避するために、前記一対の前記カムシャフト摺接支持面107,108のうち前記吸気弁55側に配置される一方のカムシャフト摺接支持面107を、前記排気弁56側に配置される他方の前記カムシャフト摺接支持面108よりも前記収容室104側にオフセットして配置するように、第1の軸受壁105が形成される。
【0050】
第1のカムホルダ106は、第1の軸受壁105の形状に対応して屈曲した一体形状を有するように形成されており、前記吸気弁55側で前記カムシャフト摺接支持面107および前記カムシャフト摺接面110の両側に配置される一対のボルト118と、前記排気弁56側で前記カムシャフト摺接支持面108および前記カムシャフト摺接面111の両側に配置される一対のボルト119とで第1の軸受壁105に固定される。
【0051】
図8に注目して、前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94は、前記被動スプロケット90を前記駆動ギヤ94よりも第1の軸受壁105側に配置するようにして、第1の軸受壁105に固定される支持軸121にボールベアリング122を介して回転自在に支承される。
【0052】
前記支持軸121は、一端部が第1の軸受壁105側に嵌合、固定される小径円筒部121aと、該小径円筒部121の他端から半径方向外方に張り出す鍔部121bと、該鍔部121bの外周に一端部が連なる大径円筒部121cとを一体に有して段付きの円筒状に形成される。一方、第1の軸受壁105には、有底のねじ孔123と、前記支持軸121における小径円筒部121aの一端部を嵌合するようにして前記ねじ孔123よりも大径に形成される支持軸嵌合孔124と、該支持軸嵌合孔124よりも大径のスペーサ嵌合孔125とが、この順に同軸に連なって形成される。また前記シリンダヘッド45のうち前記収容室104の一部を第1の記軸受壁105との間に形成する外壁126には、前記ねじ孔123、前記支持軸嵌合孔124および前記スペーサ嵌合孔125に対応した嵌合孔127が設けられており、この嵌合孔127には、前記支持軸121の前記大径円筒部121cが嵌合され、前記大径円筒部121cの外周には前記嵌合孔127の内周に密接する環状のシール部材128が装着される。
【0053】
前記支持軸121の小径円筒部121aには、前記ねじ孔123に螺合するボルト129が挿通されるものであり、このボルト129の拡径頭部129aを前記鍔部112bに当接、係合するまで前記ねじ孔123に前記ボルト129をねじ込むことで前記支持軸121が第1の軸受壁105に固定される。
【0054】
前記ボールベアリング122の内輪122aは、前記支持軸121の小径円筒部121aを囲繞し、前記支持軸121の前記鍔部121bと、前記スペーサ嵌合孔125に嵌合する嵌合筒部130aを有して第1の軸受壁105に当接するスペーサ130との間に挟持される。
【0055】
第1の軸受壁105には、前記被動スプロケット90の少なくとも一部、この実施の形態では前記被動スプロケット90の前記被動ギヤ92,93側の一部を収容するようにして、たとえばヘッドカバー46側に膨らんだ円弧状に形成されるスプロケット収容凹部131が形成される。一方、前記シリンダヘッド45における前記外壁126の内面には、前記駆動ギヤ94の一部を収容するギヤ収容凹部132が形成されており、このギヤ収容凹部132は、前記一対の被動ギヤ92,93および前記駆動ギヤ94の配置形状に対応して前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79側に開放したV字状をなすように形成される。しかも前記外壁126の外面のうち前記ギヤ収容凹部132に対応する部分には、ギヤ収容凹部132に対応した形状の突部126aが突設される。
【0056】
また第1の軸受壁105には、
図11で示すように、前記スプロケット収容凹部131よりも下方で前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94を両側から挟む一対の透孔133が設けられる。
【0057】
図12を参照して、第2のカムシャフト支持部83は、前記吸気側カムシャフト77および前記排気側カムシャフト79の軸線に沿う方向で前記シリンダヘッド45の略中央部で前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に直交する方向に延びて前記シリンダヘッド45に一体に形成される第2の軸受壁135と、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を回転自在に支持する吸気側および排気側カムシャフト軸受部83a,83bを第2の軸受壁135と協働して形成するようにして第2の軸受壁135に固定される第2のカムホルダ136とから成る。
【0058】
第2の軸受壁135は、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の外周の一部に摺接して支持する一対の円弧状のカムシャフト摺接支持面137,138を有するようにして前記シリンダヘッド45に設けられ、第2のカムホルダ136には、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の外周の残余の一部に摺接するカムシャフト摺接面139,140が形成される。
【0059】
第2のカムホルダ136は、第2の軸受壁135の形状に対応した一体形状を有するように形成されており、前記吸気弁55側で前記カムシャフト摺接支持面137および前記カムシャフト摺接面139の両側に配置される一対のボルト141と、前記排気弁56側で前記カムシャフト摺接支持面138および前記カムシャフト摺接面140の両側に配置される一対のボルト142とで第2の軸受壁135に固定される。
【0060】
一対の前記吸気弁55および一対の前記排気弁56で周囲が囲まれる部分で前記第2の軸受壁135には、前記燃焼室52に先端部を臨ませる点火プラグ(図示せず)を取付けるようにしてプラグ取付け孔143が設けられ、第2のカムホルダ136には、前記プラグ取付け孔143に通じる円形の開口部144が設けられる。
【0061】
また第2の軸受壁135には、シリンダヘッド45の軽量化を図るために前記プラグ取付け孔143の両側に配置される一対の透孔145が設けられる。
【0062】
図13において、一対の排気側ロッカシャフト85は、前記排気側カムシャフト79と平行な軸線を有して前記シリンダヘッド45に設けられる挿通孔146に挿通、固定される。前記挿通孔146は、前記収容室104側の端部を閉じるようにしつつ前記シリンダヘッド45の前記収容室104とは反対側の側壁から穿孔加工されるものであり、この挿通孔146の開口端を液密に閉じるプラグ147が前記シリンダヘッド45にねじ込まれる。
【0063】
図14で示すように、前記排気側ロッカシャフト85の外周の所定箇所には、円弧状の係止凹部148が形成されており、その係止凹部148に係合するようにしてボルト149が前記シリンダヘッド45に螺合される。これによって一対の前記排気側ロッカシャフト85が共通な前記挿通孔146内の所定箇所に挿通、固定されることになり、それらの排気側ロッカシャフト85の一部を臨ませるスリット150が前記シリンダヘッド45に形成される。そして前記排気側ロッカアーム81の一端部が前記スリット150内で前記排気側ロッカシャフト85に揺動可能に支持されることになる。
【0064】
図15において、一対の前記吸気側ロッカシャフト84は、第2のカムシャフト支持部83の両側に分かれて配置されるものであり、一対の前記吸気側ロッカシャフト84のうち第2のカムシャフト支持部83および前記収容室104間に配置される一方の吸気側ロッカシャフト84は、前記収容室104に臨んで第1の軸受壁105に形成された前記スプロケット収容凹部131に一端を開口させるとともに他端部を閉じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられる挿通孔151に挿通、固定され、一対の前記吸気側ロッカシャフト84のうち他方の吸気側ロッカシャフト84は、前記収容室104とは反対側で前記シリンダヘッド45の側壁側から穿孔加工させる有底の挿通孔152に挿通、固定される。しかも前記挿通孔151,152は、それらの挿通孔151,152の中心軸線C1,C2の延長線を相互に交差させるようにして前記シリンダヘッド45に相互に独立して設けられる。
【0065】
一対の前記吸気側ロッカシャフト84は、それらの吸気側ロッカシャフト84に個別に対応した一対の前記挿通孔151,152の所定箇所に挿通された状態で、前記シリンダヘッド45に螺合されるボルト153を前記吸気側ロッカシャフト84にそれぞれ係合させることで、前記挿通孔151,152の所定箇所に挿通、固定される。
【0066】
また前記吸気側ロッカシャフト84の一部を臨ませるスリット153が前記シリンダヘッド45に形成されており、前記吸気側ロッカアーム80の一端部が前記スリット153内で前記吸気側ロッカシャフト84に揺動可能に支持される。
【0067】
ところで前記シリンダヘッド45の前記外壁126には、前記収容室104を前記挿通孔151との間に挟む貫通孔155が、該貫通孔155から前記挿通孔151に前記吸気側ロッカシャフト84を差し込むことを可能として設けられ、この貫通孔155を液密に閉じるプラグ156が前記外壁126に螺合され、また前記挿通孔152の外端開口部を液密に閉じるプラグ157が前記シリンダヘッド45に螺合される。
【0068】
図5に注目して、一対の前記吸気側ロッカアーム80には、それらの吸気側ロッカアーム80と、前記吸気側カムシャフト77の前記吸気側カム76との摺接部にオイルを供給するためのロッカアーム側油路160がそれぞれ設けられ、このロッカアーム側油路160は、前記吸気側ロッカアーム80の長手方向に延びる通路部160aと、前記吸気側ロッカアーム80の長手方向中間部の上部に開口して前記通路部160aに通じる噴射孔部160bとから成るように形成される。
【0069】
図6に注目して、一対の前記排気側ロッカアーム81には、それらの排気側ロッカアーム81と、前記排気側カムシャフト79の前記排気側カム78との摺接部にオイルを供給するためのロッカアーム側油路161がそれぞれ設けられ、このロッカアーム側油路161は、前記排気側ロッカアーム81の長手方向に延びる通路部161aと、前記排気側ロッカアーム81の長手方向中間部の上部に開口して前記通路部161aに通じる噴射孔部161bとから成るように形成される。
【0070】
また一対の前記吸気側ロッカシャフト84には、それらの吸気側ロッカシャフト84に個別に対応した吸気側ロッカアーム80の前記ロッカアーム側油路160における通路部160aに通じるロッカシャフト内油路162がそれぞれ設けられ、一対の前記排気側ロッカシャフト85には、それらの排気側ロッカシャフト85に個別に対応した排気側ロッカアーム81の前記ロッカアーム側油路161における通路部161aに通じるロッカシャフト内油路163がそれぞれ設けられる。
【0071】
図16を併せて参照して、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を回転自在に支持して前記シリンダヘッド45に設けられる第1のカムシャフト支持部82には、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を迂回する連絡油路164が、前記シリンダボディ44側からのオイルを導くようにして前記シリンダヘッド45に設けられるオイル供給路165に通じるようにして設けられ、第1のカムシャフト支持部82に形成される吸気側および排気側カムシャフト軸受部82a,82bにオイルを導く吸気側および排気側ジャーナル油路166,167と、前記ロッカシャフト内油路162,163に通じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるオイル通路169,170側にオイルを導くようにして前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167と並列に前記連絡油路164に連なる分岐油路168とが、第1のカムシャフト支持部82に設けられる。
【0072】
しかも第1のカムシャフト支持部82を、シリンダヘッド45に設けられた第1の軸受壁105と協働して構成する第1のカムホルダ106に、前記オイル供給路165の一部と、該オイル供給路165に通じる前記連絡油路164と、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167と、前記分岐油路168の一部とが設けられる。
【0073】
ところで、一対の前記オイル通路169,170は、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト84,85内にそれぞれ設けられる前記ロッカシャフト内油路162,163に個別に通じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられ、前記分岐油路168は、前記一対のオイル通路169,170に分かれて連通するように分岐して第1のカムシャフト支持部82に設けられる。
【0074】
図17において、前記分岐油路168は、前記連絡油路164に通じる共通油路部168aと、その共通油路部168aに一端部を通じさせるとともに他端部を前記オイル通路169,170に個別に通じさせる個別油路部168b,168cとで構成されるものであり、第1のカムシャフト支持部82における第1の軸受壁105に形成される前記個別油路部168b,168cが、第1のカムシャフト支持部82における第1のカムホルダ106に形成される前記共通油路部168aに、第1の軸受壁105および第1のカムホルダ106の接合部で連通する。すなわち分岐油路168の分岐部168dが、第1の軸受壁105および第1のカムホルダ106の接合部に設けられることになる。
【0075】
図18を併せて参照して、前記連絡油路164は、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の配列方向と直交する方向に直線状に延びて第1のカムホルダ106に形成され、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79にそれぞれ摺接するようにして第1のカムホルダ106に形成される吸気側および排気側カムシャフト摺接面109,110の最頂部および前記連絡油路164間を結ぶように形成される。
【0076】
また第1のカムホルダ106の前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面109,110には、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,169を開口させる溝171,172が前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線方向に延びるようにして形成される。
【0077】
ところで前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面109,110のうち燃焼室52に対して放射状配置とされる吸気弁55側に配置される吸気側カムシャフト摺接面109を排気側カムシャフト摺接面110よりも前記調時伝動機構88および前記収容室104側にオフセットして配置するように第1のカムホルダ106が形成されており、前記連絡油路164は前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線を含む平面への投影図上で前記排気側カムシャフト摺接面110の幅方向中央部を通るようにして第1のカムホルダ106に設けられる。
【0078】
このような前記連絡油路164の配置に対応して前記吸気側カムシャフト摺接面109に形成される前記溝171は、前記排気側カムシャフト摺接面110に形成される前記溝172よりも、前記収容室104側に長く形成される。
【0079】
前記オイル通路169,170は、前記吸気弁55および前記排気弁56間に配置されるようにして前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79と平行にして前記シリンダヘッド45に設けられるものであり、前記オイル通路169は前記吸気側ロッカシャフト84を挿通するようにして前記シリンダヘッド45に設けられる一対の挿通孔151,152の下方に配置され、前記オイル通路170は、前記排気側ロッカシャフト85を挿通するようにして前記シリンダヘッド45に設けられる挿通孔146の下方に配置される。
【0080】
前記吸気側ロッカシャフト84を挿通するようにして前記シリンダヘッド45に設けられる一対の挿通孔151,152の下方に配置される前記オイル通路169は、上下に延びるようにしつつ相互に独立して前記シリンダヘッド45に設けられる一対の連通路173,174を介して一対の前記挿通孔151,152に連通され、前記挿通孔151,152内に導かれたオイルはロッカシャフト内油路162を介してロッカアーム側油路160に導かれる。
【0081】
また前記排気側ロッカシャフト85を挿通するようにして前記シリンダヘッド45に設けられる挿通孔146の下方に配置される前記オイル通路170は、上下に延びるようにして前記シリンダヘッド45に設けられる一対の連通路175を介して前記挿通孔146に連通され、前記挿通孔146内に導かれたオイルはロッカシャフト内油路163を介してロッカアーム側油路161に導かれる。
【0082】
ところで前記吸気側および前記排気側ロッカアーム80,81と、前記吸気側および前記排気側カム76,78との摺接部には、前記吸気側および前記排気側ロッカアーム80,81にそれぞれ設けられる前記ロッカアーム側油路160,161からオイルが供給されるのであるが、それらの摺接部のうち前記吸気側カム76および前記吸気側ロッカアーム80の摺接部へのロッカアーム側油路160からのオイル供給方向が
図5で示すようにカム回転方向97と同一方向であるのに対して、前記排気側カム78および前記排気側ロッカアーム81の摺接部へのロッカアーム側油路161からのオイル供給方向は
図6で示すようにカム回転方向97と逆方向であり、ロッカアーム側油路161から供給されるオイルの一部が排気側カム78の回転によって跳ね返されてしまい、前記排気側カム78および前記排気側ロッカアーム81の摺接部へのオイル供給量が不充分となる可能性がある。そこで前記排気側カム78および前記排気側ロッカアーム81の摺接部には、補助オイル供給手段176から前記カム回転方向97と同一方向からオイルが供給される。
【0083】
前記補助オイル供給手段176は、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線と平行に延びて前記シリンダヘッド45に設けられる補助オイル供給通路177と、その補助オイル供給通路177に通じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられる一対のオイル噴射孔178とを備えるものであり、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に直交する平面に沿うように配置される前記排気弁56側に配置されて前記シリンダヘッド45に設けられる。
【0084】
前記補助オイル供給路177は、前記シリンダボディ44側からのオイルを導くようにして前記シリンダヘッド45に設けられる前記オイル供給路165に通じるものであり、そのオイル供給路165の下流側の前記連絡油路164から分岐した一対の前記オイル通路169,170と、前記補助オイル供給通路177とが相互に平行に延びて前記シリンダヘッド45に設けられる。
【0085】
しかも前記一対のオイル通路169,170は、その一方170が前記排気弁56を前記補助オイル供給通路177との間に挟む位置に配置されるようにしつつ、前記吸気弁55および前記排気弁56間に配置される。
【0086】
図12に注目して、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の中間部を回転自在に支持する第2のカムシャフト支持部83が前記シリンダヘッド45に設けられるのであるが、第2のカムシャフト支持部83と、一対の前記オイル通路169,170のうち前記吸気弁55側に対応したオイル通路169から分岐したカムシャフト潤滑用通路179が前記吸気側カムシャフト77と第2のカムシャフト支持部83との間にオイルを供給するようにして前記シリンダヘッド45に設けられ、このカムシャフト潤滑用通路179は、前記オイル通路169から前記吸気側カムシャフト77の下方に至るようにして横方向に延びる通路部179aと、その通路部179aから上方に延びて第2のカムシャフト支持部83の吸気側カムシャフト軸受部83aに至る通路部179bとから成る。
【0087】
また前記補助オイル供給通路177から分岐したカムシャフト潤滑用通路180が、前記排気側カムシャフト79と第2のカムシャフト支持部83との間にオイルを供給するようにして前記シリンダヘッド45に設けられ、このカムシャフト潤滑用通路180は、前記補助オイル供給通路177から斜め上方に延びて第2のカムシャフト支持部83の排気側カムシャフト軸受部83bに至るように形成される。
【0088】
また前記一対のオイル通路169,170と、前記補助オイル供給通路177とは、前記シリンダヘッド45の同一の一側面45cからの加工で形成されるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるものであり、その一側面45cは、前記シリンダヘッド45の全側面のうち前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79にクランクシャフト42からの動力を伝達する調時伝動機構88を収容して前記機関本体29に形成される収容室104とは反対側に配置される側面であり、この実施の形態では前記収容室104が機関本体29の右側に形成されるので前記一側面45cは右側面である。すなわち前記オイル通路169,170および前記補助オイル供給通路177は、シリンダヘッド45の右側面である前記側面45cから穿孔加工され、前記側面45cでの前記オイル通路169,170および前記補助オイル供給通路177の開口端はプラグ181,182,183で液密に閉じられる。
【0089】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、吸気弁55および排気弁56に個別に対応した吸気側および排気側カムシャフト77、79がシリンダヘッド45に回転自在に支持され、前記シリンダヘッド45に回転自在に支持される被動スプロケット90に、クランクシャフト42からの回転動力を伝達するカムチェーン91が巻き掛けられ、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸端にそれぞれ設けられる一対の被動ギヤ92,93に共通に噛合する駆動ギヤ94が前記被動スプロケット90に同軸に設けられ、前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の中心軸線間を結ぶ直線Lよりも前記クランクシャフト42側に配置され、前記一対の被動ギヤ92,93、前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94を収容するとともに前記カムチェーン91を走行させるようにして機関本体29に形成される収容室104の一部の内壁を構成する第1の軸受壁105が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の外周の少なくとも一部に摺接して支持する一対のカムシャフト摺接支持面107,108を有するようにしてシリンダヘッド45に設けられ、前記駆動ギヤ94よりも前記第1の軸受壁105側に配置される前記スプロケット90の少なくとも一部を収容するスプロケット収容凹部131が第1の軸受壁105に形成されるので、吸気弁55および排気弁56の少なくとも一方が燃焼室52に対して放射状に配置されることによる吸気側および排気側カムシャフト77,79の軸線に沿う方向でのシリンダヘッド45の幅の増大を抑制しつつ、吸気側および排気側カムシャフト77,79の軸間距離を短縮することができ、シリンダヘッド45の小型化を図ることができる。
【0090】
また前記吸気弁55および前記排気弁56のうちの一方である吸気弁55が放射状配置とされ、前記排気弁56は前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に直交する平面に沿うように配置されるので、排気弁56側では通常の駆動方式をそのまま採用することが可能であり、前記吸気弁55および前記排気弁56の少なくとも一方の放射状配置による弁駆動構造の複雑化を吸気弁55側だけとして製造コストの低減を図ることができる。
【0091】
また前記シリンダヘッド45に、前記吸気弁55および前記排気弁56の個数と同数の取付けボス部111,112,113,114が、前記シリンダヘッド45を前記クランクケース43に締結するための通しボルト115を挿通させるようにして前記吸気弁55および前記排気弁56の周囲に設けられ、第1の軸受壁105が、一対の前記カムシャフト摺接支持面107,108のうち前記吸気弁55側に配置される一方のカムシャフト摺接支持面107を、他方の前記カムシャフト摺接支持面108よりも前記収容室104側にオフセットして配置するように形成されるので、前記スプロケット収容凹部131の深さを、放射状配置ではない排気弁56側では浅くして、加工形成時の加工工数を低減することができる。
【0092】
また前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を前記第1の軸受壁105との間に挟むようにして第1の軸受壁105に固定される第1のカムホルダ106が、前記第1の軸受壁105の形状に対応して屈曲した一体形状を有するように形成されるので、第1の軸受壁105が屈曲した形状を有するにもかかわらず、吸気側および排気側でカムホルダを別体とすることを回避し、部品点数の増加を招くことなくコスト低減を図ることができる。
【0093】
また前記シリンダヘッド45のうち前記収容室104の一部を前記第1の軸受壁105との間に形成する外壁126の内面に、前記駆動ギヤ94の一部を収容するギヤ収容凹部132が形成され、前記外壁126の外面に、前記ギヤ収容凹部132に対応した形状を有する突部126aが突設されるので、シリンダヘッド45の外壁126のうち前記駆動ギヤ94の一部を収容するギヤ収容凹部132に対応する部分だけが前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸方向に突出するようにして、シリンダヘッド45全体が大型化することを回避することができる。
【0094】
また前記ギヤ収容凹部132が、前記一対の被動ギヤ92,93および前記駆動ギヤ94の配置形状に対応して前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79側に開放したV字状をなすように形成されるので、前記駆動ギヤ94および前記被動スプロケット90の前記シリンダヘッド45の組付け時に、前記駆動ギヤ94を前記ギヤ収容凹部132に落とし込むことでおおよその位置決めが可能となり、組付け性の向上を図ることができる。
【0095】
また前記吸気弁55および前記排気弁56の一方である吸気弁55のステムエンド55bと、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の一方である吸気側カムシャフト77の吸気側カム76との間に、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79と平行な軸線を有して前記シリンダヘッド45に挿通、固定される吸気側ロッカシャフト84で揺動自在に支持される吸気側ロッカアーム80が設けられ、前記吸気側ロッカシャフト84を挿通させる挿通孔151が、前記スプロケット収容凹部131に一端を開口させて前記シリンダヘッド45に設けられ、前記収容室104を前記挿通孔151との間に挟む貫通孔155が、該貫通孔155から前記挿通孔151に前記吸気側ロッカシャフト84を差し込むことを可能として前記外壁126に設けられるので、貫通孔155に挿通した吸気側ロッカシャフト84を挿通孔151の一端に差し込む際に、挿通孔151の一端の位置を確認し易くして、吸気側ロッカシャフト84のシリンダヘッド45への組付け性を高めることができる。
【0096】
また第1の軸受壁105に、前記スプロケット収容凹部131よりも下方で前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94を両側から挟む一対の透孔133が設けられるので、クランクシャフト42および前記被動スプロケット90の軸線を結ぶ方向でシリンダヘッド45に前記被動スプロケット90および前記駆動ギヤ94側から負荷が作用するのに対して、その負荷作用方向を避けた位置に透孔133を配置することで剛性低下を避けてシリンダヘッド45の軽量化を図ることができる。
【0097】
また前記吸気側および前記排気側ロッカアーム80,81に、それらのロッカアーム80,81と、前記吸気側カム76および前記排気側カム78との摺接部にオイルを供給するためのロッカアーム側油路160,161がそれぞれ設けられ、それらのロッカアーム側油路160,161に通じるロッカシャフト内油路162,163が前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト84,85内にそれぞれ設けられており、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を回転自在に支持して前記シリンダヘッド45に設けられる第1のカムシャフト支持部82に、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を迂回する連絡油路164が、シリンダボディ44側からのオイルを導くようにして前記シリンダヘッド45に設けられるオイル供給路165に通じるようにして設けられ、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を回転自在に支持するようにして前記第1のカムシャフト支持部82に形成される吸気側および排気側カムシャフト軸受部82a,82bにオイルを導く吸気側および排気側ジャーナル油路166,167と、前記ロッカシャフト内油路162,163に通じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるオイル通路169,170側にオイルを導くようにして前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167と並列に前記連絡油路164に連なる分岐油路168とが、前記第1のカムシャフト支持部82に設けられるので、カムシャフトの軸受部から分岐した連通路を介してロッカアーム側油路にオイルを供給するようにしたオイル供給構造に比べて、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の回転数にかかわらずロッカアーム側油路160,161に供給するオイル量を確保することができる。
【0098】
また前記第1のカムシャフト支持部82が、前記シリンダヘッド45に一体に設けられる第1の軸受壁105と、前記吸気側および前記排気側カムシャフト軸受部82a,82bを前記第1の軸受壁105と協働して形成するようにして第1の軸受壁105に固定される第1のカムホルダ106とから成り、前記第1のカムホルダ106に、前記オイル供給路165の一部と、該オイル供給路165に通じる前記連絡油路164と、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167と、前記分岐油路168の一部とが設けられるので、シリンダヘッド45に比べて小さくかつシリンダヘッド45から分離され得る第1のカムホルダ106側で、連絡油路164の加工と、その連絡油路164に対する複数の油路166〜168の接続部の加工とを行うようにして、油路の加工を容易とすることができる。
【0099】
また一対の前記オイル通路169,170が、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト84,85内にそれぞれ設けられる前記ロッカシャフト内油路162,163に個別に通じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられ、前記分岐油路168が、前記一対のオイル通路169,170に分かれて連通するように分岐して前記第1のカムシャフト支持部82に設けられるので、分岐油路168が、吸気側および排気側ロッカシャフト84,85のロッカシャフト内油路162,163に個別に通じる一対のオイル通路169,170に直接連通するように分岐することになり、吸気側および排気側ロッカシャフト84,85のロッカシャフト内油路162,163へのオイル供給量の均衡を図ることができる。
【0100】
また前記分岐油路168の分岐部168dが、前記第1の軸受壁105および前記第1のカムホルダ106の接合部に設けられるので、第1の軸受壁105の第1のカムホルダ106との接合面から分岐油路168の分岐通路部168dを加工することができ、分岐した分岐油路168の加工が容易となる。
【0101】
また前記第1のカムホルダ106が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を前記第1の軸受壁105との間に挟む部分を一体に有するように形成され、前記連絡油路164が前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の配列方向と直交する方向に直線状に延びて形成され、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79にそれぞれ摺接するようにして前記第1のカムホルダ106に形成される吸気側カムシャフト摺接面109および排気側カムシャフト摺接面110の最頂部および前記連絡油路164間を結ぶように形成されるので、吸気側および排気側ジャーナル油路166,167を短くして加工工数を低減することができる。
【0102】
また前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面109,110に、前記吸気側および前記排気側ジャーナル油路166,167を開口させる溝171,172が前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線方向に延びるようにして形成されるので、吸気側および排気側ジャーナル油路166,167から供給されるオイルを吸気側および排気側カムシャフト77,79の軸線方向に拡散して、吸気側および排気側カムシャフト77,79と、第1のカムシャフト支持部82との間の潤滑性の向上を図ることができる。
【0103】
ところで前記吸気弁55が前記燃焼室52に対して放射状配置とされ、前記排気弁56は前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に直交する平面に沿うように配置され、前記第1のカムシャフト支持部82から突出した前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸端に、クランクシャフト42からの回転動力を伝達する調時伝動機構88の一部を構成する被動ギヤ92,93がそれぞれ固定され、前記吸気側および前記排気側カムシャフト摺接面109,110のうち前記吸気弁55側に配置される一方のカムシャフト摺接面109を他方のカムシャフト摺接面110よりも前記調時伝動機構88側にオフセットして配置するように前記第1のカムホルダ106が形成され、前記一方のカムシャフト摺接面109に形成される前記溝171が、前記他方のカムシャフト摺接面110に形成される前記溝72よりも、前記調時伝動機構88側に長く形成されるので、吸気側および排気側カムシャフト77,79の軸線を含む平面への投影図上で他方のカムシャフト摺接面110の幅方向中央部を通るように連絡油路164が配置されていても、被動ギヤ92が設けられていることによって吸気側カムシャフト77の軸端には軸線に直交する方向の荷重がより大きくなるものの、第1のカムシャフト支持部82および前記吸気側カムシャフト77間の前記被動ギヤ92寄りの部分にも有効にオイルを供給することができ、良好な潤滑状態を確保することができる。
【0104】
また前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト84,85のうち放射状配置される吸気弁55に対応した一対の吸気側ロッカシャフト84を挿通、固定する一対の挿通孔151,152が、それらの挿通孔151,152の中心軸線C1,C2の延長線を相互に交差させるようにして前記シリンダヘッド45に相互に独立して設けられ、前記オイル通路169,170から一対の前記挿通孔151,152にオイルを導く一対の連通路173,174が相互に独立して前記シリンダヘッド45に設けられるので、一対の挿通孔151,152を相互に連通させることなくそれらの挿通孔151,152にオイルを供給することを可能とし、挿通孔151,152の全長を短くしてシリンダヘッド45の剛性を確保することができる。
【0105】
また前記吸気側および前記排気側カム76,78ならびに前記吸気側および前記排気側ロッカアーム80,81の摺接部のうち前記ロッカアーム側油路160,161からのオイル供給方向がカム回転方向97と逆方向となる側の摺接部、この実施の形態では排気側カム78および排気側ロッカアーム81の摺接部には、補助オイル供給手段176から前記カム回転方向97と同一方向でオイルが供給されるので、カム回転方向97が排気側ロッカアーム81からのオイル供給方向と逆方向となる摺接部への充分なオイル供給量を確保することができる。
【0106】
また前記補助オイル供給手段176が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線と平行に延びて前記シリンダヘッド45に設けられる補助オイル供給通路177と、前記補助オイル供給通路177に通じるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるオイル噴射孔178とを備えるので、オイル噴射孔178の孔径を調整するだけで補助オイル供給手段176からのオイル供給量を容易に調整することができる。
【0107】
また吸気弁55が前記燃焼室52に対して放射状配置とされ、前記排気弁56が前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に直交する平面に沿うように配置され、前記補助オイル供給手段176が前記排気弁56側に配置されるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるので、補助オイル供給手段176のオイル噴射孔178を吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の軸線に沿う方向に向くようにして、複雑な向きに形成する必要がなく、補助オイル供給手段176の構造を簡素化することができる。
【0108】
また前記シリンダヘッド45に、前記シリンダボディ44側からのオイルを導くオイル供給路165が前記補助オイル供給通路177に通じるようにして設けられるとともに、前記オイル供給路165の下流側から分岐した一対のオイル通路169,170が、それらのオイル通路169,170の下流側を一対の前記ロッカアーム側油路160,161に通じさせるようにしつつ前記補助オイル供給通路177と平行に設けられ、前記一対のオイル通路169,170の一方170が前記排気弁56を前記補助オイル供給通路177との間に挟む位置に配置されるようにしつつ前記両オイル通路169,170が前記吸気弁55および前記排気弁56間に配置されるので、オイルを導く3つの通路169,170,177を吸気弁55および排気弁56の両側に振り分けて配置し、スペースを効率よく利用してシリンダヘッド45の小型化を図ることができる。
【0109】
また前記オイル供給路165の下流側からの分岐部168dよりも下方に配置される前記一対のオイル通路169,170の直上に、前記吸気側および前記排気側ロッカシャフト84,85を挿通するようにして前記シリンダヘッド45に設けられる2組の挿通孔151,152;146が配置され、前記ロッカシャフト内油路162,163に前記挿通孔151,152;146を介して前記オイル通路169,170からのオイルを導くための連通路173,174,175が、前記2組の挿通孔151,152;146および前記一対のオイル通路169,170間を結んで上下に延びるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるので、内燃機関Eの停止時にロッカアーム側油路160,161に導くためのオイルをオイル通路169,170に貯留しておくことができ、内燃機関Eの始動時にロッカアーム側油路160,161に迅速にオイルを供給することができ、オイル供給不足が生じる虞をなくすことができる。
【0110】
また前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79を回転自在に支持する第2のカムシャフト支持部83が前記シリンダヘッド45に設けられ、一対の前記オイル通路169,170のうち前記吸気弁55側に対応したオイル通路169および前記補助オイル供給通路177からそれぞれ分岐した一対のカムシャフト潤滑用通路179,180が、前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79と、前記第2のカムシャフト支持部83との間にオイルを供給するようにして前記シリンダヘッド45に設けられるので、オイル通路169および補助オイル供給通路177を利用して前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79の潤滑のための通路の一部とし、オイル通路構造の簡素化を図ることができる。
【0111】
また前記一対のオイル通路169,170および前記補助オイル供給通路177が、前記シリンダヘッド45の同一の一側面45cからの加工で形成されるようにして前記シリンダヘッド45に設けられるので、治具へのシリンダヘッド45の固定方向を変更することなく一対のオイル通路169,170および補助オイル供給通路177を連続して加工成形することができ、加工工数の低減を図ることができる。
【0112】
さらに前記シリンダヘッド45の前記一側面45cが、前記シリンダヘッド45の全側面のうち前記吸気側および前記排気側カムシャフト77,79にクランクシャフト42からの動力を伝達する調時伝動機構88を収容して前記機関本体29に形成される収容室104とは反対側に配置される側面であるので、収容室104の外壁126を貫通する加工用の貫通孔を形成する必要がなく、シリンダヘッド45の剛性を低減させることなくシリンダヘッド45の剛性を確保することができる。
【0113】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。