(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エレベータ用調速機のガバナシーブと当該ガバナシーブの下方に位置するテンションシーブとの間に無端状に巻き掛けられて張架されたガバナロープの横振れを抑制するガバナロープの制振装置であって、
作動流体が充填されたシリンダと、前記シリンダ内に収納され当該シリンダの軸心方向へ摺動自在に設けられたピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダから一部が突出したピストンロッドとを有する減衰器を備え、
前記減衰器が、前記横振れに伴う前記テンションシーブの上下動に連動して前記ピストンが前記シリンダに対し相対的に往復動するように、前記軸心方向が上下方向となる姿勢で前記テンションシーブの上側に設置され、
前記減衰器は、
前記ピストンロッドの前記シリンダから突出した部分を上側とし、下側となる前記シリンダが前記テンションシーブに連結された状態で、
前記ピストンが前記シリンダ内の摺動可能域の下端部に位置するように初期設置されていて、
前記摺動可能域の前記軸心方向の長さが、前記往復動の振幅よりも十分に長く、かつ、前記ガバナロープの据付け後からその交換までの期間に生じるロープ伸びに応じた前記テンションシーブの前記初期設置時の位置からの下降量よりも長く設定されていることを特徴とするガバナロープの制振装置。
エレベータ用調速機のガバナシーブと当該ガバナシーブの下方に位置するテンションシーブとの間に無端状に巻き掛けられて張架されたガバナロープの横振れを抑制するガバナロープの制振装置であって、
作動流体が充填されたシリンダと、前記シリンダ内に収納され当該シリンダの軸心方向へ摺動自在に設けられたピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダから一部が突出したピストンロッドとを有する減衰器を備え、
前記減衰器が、前記横振れに伴う前記テンションシーブの上下動に連動して前記ピストンが前記シリンダに対し相対的に往復動するように、前記軸心方向が上下方向となる姿勢で前記テンションシーブの上側に設置され、
前記減衰器は、
前記シリンダを上側とし、下側となる前記ピストンロッドの前記シリンダから突出した部分が前記テンションシーブに連結された状態で、
前記ピストンが前記シリンダ内の摺動可能域の上端部に位置するように初期設置されていて、
前記摺動可能域の前記軸心方向の長さが、前記往復動の振幅よりも十分に長く、かつ、前記ガバナロープの据付け後からその交換までの期間に生じるロープ伸びに応じた前記テンションシーブの前記初期設置時の位置からの下降量よりも長く設定されていることを特徴とするガバナロープの制振装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、強風や地震などの影響で建物が横揺れすると、その建物に設置されたエレベータの昇降路内に配されたロープが建物の揺れ方向へ加振され、横振れすることが知られている。横振れが生じたロープの固有振動数が建物の固有振動数に一致又は近似すると、共振によりロープの振れ幅は一段と大きくなる。そうなれば、昇降路内にある種々の機器や設備にロープが接触したり絡まったりするおそれが高まり、場合によっては、接触時の衝撃等によりこれらを破損する可能性もある。ここでいう「ロープ」には、主ロープや釣合ロープのほか、エレベータ用調速機のガバナシーブとテンションシーブとの間に無端状に巻き掛けられて張架され、かごの昇降に同期して走行するガバナロープも含まれる。
【0003】
このガバナロープの横振れ対策として、当該横振れに伴うテンションシーブの上下動に対し抵抗力を作用させてガバナロープの横振れを抑制する技術が下記特許文献に開示されている。当該特許文献に記載された制振装置は、ピット床もしくはその上側の位置に固定された減衰器をテンションシーブに吊設された錘と連結し、当該錘の上下動に連動してストロークするように構成されている。かかる制振装置によれば、減衰器の抵抗力が錘の縦振動を減衰させる減衰力として作用し、ガバナロープの横振れが抑制される。
【0004】
ところで、エレベータ用調速機を正常に作動させるには、かごの昇降速度に応じた回転速度でガバナシーブが確実に回転するようにしておく必要がある。そのため、テンションシーブと錘の自重でガバナロープに必要な張力が付与された緊張状態を保持し、かごと同期走行するガバナロープとガバナシーブとの間に所要の摩擦力が生じるようにしている。こうした恒常的な緊張状態で使用される結果、ガバナロープに伸びが生じる(以下、これを「ロープ伸び」と称す)。具体的には、ガバナロープを据付けした時に生じる「初期伸び」、緊張状態の持続からロープ長さが経年的に変化する「経年伸び」が挙げられる。
【0005】
ロープ伸びを生じると、ガバナロープの緊張状態を保持したまま、その伸長量に応じてテンションシーブと錘の位置が徐々に下降していく。ところが、上記した制振装置を備えている場合、減衰器のピストンが下死点に達すると、テンションシーブと錘の下降が阻害されてガバナロープの適正な緊張状態が保持されず、エレベータ用調速機が正常に作動しなくなるおそれがある。これを回避するためには、ロープ伸びに応じて減衰器の位置を下げることができる結合装置を介して減衰器をピット床に固定するなどし、定期的に結合装置による減衰器の位置調整を保守点検の一環として行う必要があるが、その作業は煩雑であり据付性および保守性の点で好ましくない。
【0006】
この点、特許文献1では、据付性と保守性を改善すべく、ロープ伸びに応じて減衰器の位置が下方へと自動的に調整される調整機構を設けた実施形態も開示されている。この調整機構は、鋸状に連続した複数の段部を有し、減衰器の下側に向けて延出する軸部材と、当該軸部材の段部に一端部が係合されるとともに他端部がばねに連結され、回転自在に軸支された係止片とを備える。かかる調整機構によれば、ガバナロープが伸びて減衰器が下降するときは軸部材が係止片を押し退けて下側へスライドする一方、減衰器の上昇は軸部材の段部に係合した係止片によって阻止されるため、ロープ伸びに応じて、減衰器が下方へと自動的に位置決めし直される。
【0007】
しかしながら、上記した調整機構は減衰器の下側にさらに軸部材が設けられている上、軸部材は減衰器と共に下降するため、軸部材の下端部がピット床にまで達することのないように、錘の下側に十分なスペースが必要となる。このようなスペースを確保するためには、ピット床を予め深く設計しておく必要があり、また、既設のエレベータに取り付けるためには、ピット床をさらに深く掘り下げる必要があるが、いずれの場合も建物側への工事負担が増大することは避けられない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るガバナロープの制振装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、ガバナロープの制振装置を単に「制振装置」と、エレベータ用調速機を単に「調速機」と称することとする。
【0017】
図1に示すように、エレベータ100において、昇降路最上部の機械室には巻上機101が設置されている。巻上機101の駆動シーブ102に巻き掛けられた主ロープ103の一端部にはかご104が、他端部には釣合錘105が連結されている。巻上機101のモータ(不図示)によって駆動シーブ102が回転駆動されると、これに伴って主ロープ103が走行し、主ロープ103で吊り下げられたかご104が、ガイドレール106に案内されて昇降路内を昇降する。
【0018】
また、エレベータ100には、かご104の昇降速度が定格速度を超過したことを機械的に検知する調速機107が設けられている。調速機107のガバナシーブ108とガバナシーブ108の下方に位置するテンションシーブ109との間には、無端状のガバナロープGが巻き掛けられている。テンションシーブ109には錘110が吊設されており、ガバナロープGは、これらの自重によって主ロープ103と平行に緊張した状態で張架されている。このガバナロープGの一部は、かご104側に備えた非常止め装置(不図示)を作動させる非常止めレバー111に固定されている。このため、ガバナロープGは、かご104の昇降に同期してかご104と同速度で走行する。このとき、ガバナロープGの走行速度と同速度で回転させられるガバナシーブ108の回転速度を調速機107で検出することで、昇降中のかご104の定格速度超過が検知される。
【0019】
本実施形態の制振装置10は、上記のように構成されたエレベータ100において、調速機107のガバナロープGに横振れが生じたとき、その横振れを抑制するために設けられる。ここでいう「横振れ」とは、ガバナロープGが、上下方向にまっすぐに緊張した状態を基準位置として、任意の水平方向へ周期的に変位する振動のことをいう。この制振装置10の詳細について、
図2および
図3を参照しながら説明する。
【0020】
制振装置10は、
図2および
図3に示すように、ガバナロープの振動エネルギーを減衰させるための抵抗力を生じさせる減衰器1を備えている。減衰器1は、テンションシーブ109の上側に設けられており、ガバナロープGの横振れに伴うテンションシーブ109の上下動に対し、その逆方向への抵抗力を作用させる。
【0021】
減衰器1は、有底円筒状をした単筒型のシリンダ11と、シリンダ11内に収納されたピストン12(
図3参照)と、ピストン12に連結されたピストンロッド13とを備えている。シリンダ11の内部は、ピストン12によって第一の空間S1と第二の空間S2とに仕切られている。ピストン12にはオリフィス14が設けられており、シリンダ11内の第一の空間S1と第二の空間S2とは当該オリフィス14を通じて連通している。シリンダ11内の第一の空間S1および第二の空間S2には、オリフィス14内を流動する作動流体となる作動油15が充填されている。ピストン12は、シリンダ11の軸心方向へ摺動自在に設けられており、シリンダ11に対しピストンロッド13と共に当該軸心方向へ相対的に往復動する。また、減衰器1は、シリンダ11の一方の端部からピストンロッド13の一部が突出した部分13A(以下、これを「突出部13A」と称す)を有している。このため、シリンダ11とピストンロッド13との間には、シリンダ11内からの作動油15の漏出を防ぐシール材(不図示)が設けられている。
【0022】
本実施形態において、減衰器1は、シリンダ11の軸心方向が上下方向となる姿勢で設けられている。より詳しくは、ピストンロッド13の突出部13Aを上側とし、当該突出部13Aの上端部が、シリンダ11の上方に位置する保持ブラケット2に保持されている一方、下側となるシリンダ11は、その底部側に取り付けられた連結具3と連結した板状部材から成る一対のリンク部材3A,3Bを介してテンションシーブ109に連結されている。よって、ピストン12がシリンダ11内を摺動する方向は、テンションシーブ109が上下動する方向と一致している。また、シリンダ11内の摺動上限位置ULPから摺動下限位置LLPまでが、ピストン12の摺動可能域SRとなる。
【0023】
保持ブラケット2は、公知のレールクリップ21によってガイドレール106に固定されている。ガイドレール106から延出した保持ブラケット2には、ガバナロープGを避けるように屈曲した屈曲部22(
図2(c)参照)が設けられている。屈曲部22を有する保持ブラケット2の先端部は、互いに平行するガバナロープGの中間部付近に配置されている。保持ブラケット2の先端部には、ピストンロッド13の突出部13Aを保持する保持部23(
図2(c)では不図示)が設けられており、ピストンロッド13が上下方向不動に固定されている。本実施形態では、テンションシーブ109の重心を通る鉛直線上にシリンダ11の軸心を重ねるようにして、減衰器1が保持ブラケット2の先端部から垂下されている。
【0024】
また、保持ブラケット2の下方にはガイドブラケット4が設けられている。ガイドブラケット4は、上記の保持ブラケット2と同様、レールクリップ41によってガイドレール106に固定されている。ガイドブラケット4は、ガイドレール106から、互いに平行するガバナロープGの中間部付近まで延出している。ガイドブラケット4の先端部には、片側のリンク部材3Aが挿通された開口部(不図示)を有するL字アングルから成るガイド部材42が設けられている。ガイド部材42がリンク部材3Aの変位を上下方向に案内することで、テンションシーブ109が上下動するように案内される。よって、減衰器1は、ガバナロープGの横振れに伴うテンションシーブ109の上下動に連動して、ピストン12がシリンダ11に対して相対的に往復動するようになっている。
【0025】
上記した態様で設置された減衰器1は、シリンダ11の上昇に伴いピストン12が摺動下限位置LLP側へ相対的に移動するときに生じる抵抗力の作用により、ガバナロープGの横振れを抑制する。例えば、ガバナロープGの全長が約300mのとき、地震等で想定されるテンションシーブ109の上下方向への最大変位は10mm程度である。よって、この場合に減衰器1による制振機能を確保するには、ピストン12が約10mmの振幅をもって往復動できるようにしておけばよい。また、減衰器1の初期設置時には、ピストン12の摺動下限位置LLPまでの摺動許容量が少なくとも10mm程度確保されていればよい。
【0026】
一方、当該減衰器1では、ピストン12の摺動上限位置ULPまでの摺動許容量が、ガバナロープGに生じるロープ伸びを吸収するための吸収代となる。この吸収代を出来るだけ多く確保するには、シリンダ11が下降する方向への可動域MRDの方が、シリンダ11が上昇する方向への可動域MRUよりも可能な限り大きく許容されていることが望ましい。したがって、本実施形態の減衰器1は、ピストン12が、制振機能を発揮するために必要な往復動を保障された状態で、シリンダ11内の摺動可能域SRの下端部に位置するように初期設置される。
【0027】
また、本実施形態の減衰器1は、シリンダ11の軸心方向におけるピストン12の摺動可能域SRの長さ(ストローク長)が、制振機能を発揮するために必要なピストン12の往復動の振幅よりも十分に長く設定されている。ここでいう「十分に」とは、前記した摺動可能域SRの長さからピストン12の往復動の振幅及びピストン12の厚みの分を差し引いた剰余長さが、ガバナロープGの据付け後からロープ交換を要する時期に至るまでの期間に生じるロープ伸びに応じたテンションシーブ109の最大下降量に相当する長さを少なくとも有していることを意味する。例えば、上記で例示した全長約300mのガバナロープGであれば、その伸長量が800mm程度にまで達することが想定される。この場合、テンションシーブ109の初期設置時の位置からの下降量は400mm程度になる。よって、前記した剰余長さが少なくとも400mmある減衰器1を選定すればよい。
【0028】
この点、本実施形態の制振装置10では、テンションシーブ109の上側に広がる自由度の高い空間が減衰器1の設置スペースとなるため、摺動可能域SRの長さに関する設計上の制約は、ほとんどないに等しい。このため、たとえ十分に長いストローク長を有する減衰器1を選定したとしても、その設置に際し、空間的および構造的な制約をほとんど受けることがないという点で有利である。
【0029】
但し、減衰器1の持つピストン12の摺動可能域SRを最大限に生かすべく、ガバナロープGの伸長量がロープ交換を要する限界値まで到達したとしても、初期設置時の位置から下降した錘110がピット床(不図示)まで到達しないだけのクリアランスを設けておく必要がある。上記で例示した全長約300mのガバナロープGであれば、錘110とピット床(不図示)との離隔距離が少なくとも400mmになるように、減衰器1の初期設置の位置が決定される。こうして錘110とピット床(不図示)との間に適正なクリアランスを設けるとともに、適切に選定された減衰器1を上記した形態で初期設置しておけば、ガバナロープGの据付け後からロープ交換を要する時期に至るまでに生じるロープ伸びのすべてを減衰器1で吸収することが可能となる。
【0030】
上記のように減衰器1が取り付けられたテンションシーブ109と錘110とは、板状部材から成る一対の吊下アーム5A,5Bによって連結されている。これら一対の吊下アーム5A,5Bと、上記した一対のリンク部材3A,3Bとの重なり部分には、テンションシーブ109の回転軸109Aが貫通している。一対の吊下アーム5A,5Bの各々には、平面視でコの字形状をしたフレーム部材から成る一対のストッパ6A,6Bが取り付けられている。ストッパ6A,6Bの各々は、ガバナロープGとテンションシーブ109とが接触した接触部の両端部付近に配置されている。ストッパ6A,6Bを備えていることで、横振れを生じたガバナロープGがテンションシーブ109から離脱することなく、当該横振れに伴ってテンションシーブ109が上下動するように構成されている。
【0031】
続いて、本実施形態の制振装置10の動作について説明する。はじめに、制振装置10がガバナロープGの横振れを抑制する際の制振動作について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
地震や強風などの影響でエレベータ100(
図1参照)が設置された建物に横揺れが発生すると、昇降路の上部に設置された巻上機101および調速機107も建物と共に横揺れする。その際、横揺れする建物の振動エネルギーが、調速機107のガバナシーブ108を通じてガバナロープGへ伝達され、当該ガバナロープGにも横振れが生じる。
【0033】
このとき、テンションシーブ109は、緊張状態にあったガバナロープGがその基準位置から水平方向へ振れるに伴い、ガバナロープGに引き上げられ、ガイド部材42に案内されて錘110と共に上昇する。テンションシーブ109は、その後、ガバナロープGが基準位置へ一旦復帰する際、自身と錘110各々の自重で元あった位置まで下降するが、ガバナロープGが基準位置を通過して先の振れ方向とは逆の方向へ振れる際には、再度、ガバナロープGに引き上げられ、ガイド部材42に案内されて錘110と共に上昇する。こうして、テンションシーブ109は、ガバナロープGに生じた横振れが収束するまで、ガバナロープGの振動周期の2倍にあたる振動周期で上下動を繰り返すこととなる。
【0034】
テンションシーブ109には、制振装置10を構成する減衰器1が上記した形態で連結されているので、当該減衰器1では、テンションシーブ109の上下動に同期連動してシリンダ11が昇降され、これに伴いピストン12がシリンダ11内の摺動可能域SRのごく一部の領域でシリンダ11に対する相対的な往復動を繰り返す。ここで、当該往復動の際、シリンダ11の上昇を妨げる方向に作用する抵抗力が、テンションシーブ109を引き上げようとするガバナロープGの振動エネルギーを積極的に減衰させる減衰力として働くことで、建物との間でのガバナロープGの共振倍率を低減しつつ、その振動が速やかに抑制される。
【0035】
図4を参照しながらより詳しく説明すると、ガバナロープGの緊張状態が適正に保持されているとき(すなわち、ガバナロープGが基準位置にあるとき)には、自身が上昇するための可動域MRUを有する位置(
図4(a))にあるシリンダ11が、テンションシーブ109の上昇に同期連動して、当該可動域MRUの範囲内で上昇する(
図4(b))。このとき、作動油15が、シリンダ11内の第二の空間S2から第一の空間S1へと移動するためにオリフィス14を通過する際に、上記の抵抗力が生じる。こうして上昇されたシリンダ11(
図4(b))は、テンションシーブ109の下降に同期連動して、元あった位置まで下降する(
図4(a))。シリンダ11がこのような上昇と下降を繰り返すことで、ガバナロープGの振動エネルギーが消費される結果、シリンダ11の上昇時の変位量は次第に減少し、ガバナロープGに生じた横振れが収束に至るのである。
【0036】
また、本実施形態の制振装置10は、ガバナロープGの据付け後からロープ交換を要する時期に至るまでの期間に亘って、人為的な保守作業を特に要することなく、ガバナロープGの緊張状態が維持されると共に上記した制振機能が保障されるという特性を有する。以下、当該特性のメカニズムについて、前記期間中に制振装置10の状態が経年変化する様子と併せて説明する。
【0037】
上記のとおり、ガバナロープGは通常、テンションシーブ109と錘110各々の自重により必要な張力が常時付与された状態で使用される。そのため、ガバナロープGが経年変化によるロープ伸びを生じることは不可避である。ガバナロープGにロープ伸びが生じると、適正な緊張状態は保持されたまま、その伸長量に応じてテンションシーブ109の位置が自然に下がっていく。
【0038】
図5に示すように、ピストンロッド13の突出部13Aが保持ブラケット2の先端部で保持された位置は、ロープ伸びの発生とは関係なく、減衰器1の初期設置時から上下方向不動に固定されたままである。このため、ピストンロッド13の一端に連結されたピストン12がロープ伸びに起因して上下方向に変位することはない。一方、シリンダ11はテンションシーブ109に連結されているので、テンションシーブ109がロープ伸びに起因して自然に下降すると、シリンダ11もこれに引き下げられるようにして、その初期設置時の位置(
図5(a))から徐々に下方へ変位していく。そして、例えば耐用年数の経過等によりガバナロープGの交換を要する時期に至ったときには、
図5(b)に示すように、ロープ伸びに応じてシリンダ11が経年的に下降していった結果、ピストン12が摺動上限位置ULPまで到達する。
【0039】
ここで、制振装置10の制振機能は、減衰器1のピストン12がシリンダ11に対し相対的に往復動することで発揮されるところ、当該往復動の振幅はピストン12の摺動可能域SRの長さに対して非常に小さいものとなる。よって、上記のような十分に長いストローク長を有する減衰器1では、その初期設置が適正である限り、制振機能発揮に必要なピストン12の往復動を常時保障しながら、シリンダ11の経年的な下降に伴ってピストン12が摺動上限位置ULPに到達することとなる。つまり、シリンダ11(及び、テンションシーブ109)の下降量が減衰器1のストローク長に達するまでの間、制振装置10の制振機能が損なわれることがない。
【0040】
また、その間、すなわち、シリンダ11(及び、テンションシーブ109)の下降量が減衰器1のストローク長に達するまでの間は、ガバナロープGにロープ伸びが生じても、ガバナロープGは適正な緊張状態に保持されたまま、その伸長量に応じてシリンダ11がテンションシーブ109と共に下方へ徐々に変位していく。こうして減衰器1のストローク長を最大限に生かしてガバナロープGに生じたロープ伸びが吸収されることにより、ガバナロープGの必要張力が維持され、ひいては、調速機107の正常かつ確実な作動が保障されるのである。この点、本実施形態では、テンションシーブ109と錘110各々の自重によってシリンダ11が自動的に変位するように構成されているため、ロープ伸びに応じた何らかの人為的な調整作業等は不要である。
【0041】
ところで、ガバナロープGの横振れは強風や地震などの自然現象に起因して生じるものであり、その発生のタイミングを正確かつ確実に予測することは実質上不可能に近い。しかしながら、本実施形態の制振装置10は、ガバナロープGの据付け後からロープ交換を要する時期に至るまでの期間に生じるロープ伸びをすべて吸収し得るだけの十分にストローク長の長い減衰器1が選定されているとしても、上記のとおり、シリンダ11とピストン12の相対的な位置関係の経年変化によって制振機能が損なわれることがなく、また、制振の目的となるガバナロープGの横振れの発生自体がトリガとなって作動するため、機能喪失や誤作動が生じるおそれはない。よって、ロープ伸びに応じたテンションシーブ109の下降量が減衰器1のストローク長に達するまでの間、そのロープ伸びに対するメンテナンスフリーが実現されるのである。
【0042】
このように、本実施形態の制振装置10によれば、減衰器1をテンションシーブ109の上側に設ける構成としているため、減衰器1の設置のためのスペースをテンションシーブ109の下方(例えば、ピット床まで)に確保する必要がほとんどない。よって、昇降路のピット床を深くする等の施工は必要なく、建物側への工事負担を強いられることがない。
【0043】
また、本実施形態の制振装置10によれば、テンションシーブ109の上側といった、上方に十分な空間のある設置スペースに減衰器1を設ける構成としているため、減衰器1として、上記したピストン12の往復動の振幅よりも十分に長いストローク長を有するものを選定することができる。しかも、そのような減衰器1をシリンダ11の軸心方向が上下方向となる姿勢で設けるに際し、その設置のための空間的および構造的な制約をほとんど受けることもない。とりわけ、ガバナロープGの据付け後からロープ交換を要する時期に至るまでの期間に生じるロープ伸びをすべて吸収し得る程度に十分長いストローク長を有する減衰器1を選定し、これを上記した態様で設置すれば、上記特性を生かしてロープ伸びに対するメンテナンスフリーを実現できる。これにより、調速機107および制振装置10各々の据付性と保守性が改善される。
【0044】
さらに、本実施形態の制振装置10によれば、ガバナロープGの振動エネルギーを減衰させるための公知の減衰器1をテンションシーブ109の上側に備えるだけであり、装置構成が至って簡易である。このため、故障等の不具合が生じ難く、定期的な保守点検の作業負荷を軽減することができる。また、減衰器1の設置態様についても、ブラケット(保持ブラケット2、ガイドブラケット4)やリンク部材3A,3Bなど公知の部材や既設のガイドレール106等を上手く利用できるため、装置構成をいたずらに複雑化させる必要もなく、既存のエレベータ100への後付け等にも低コストで容易に対応することが可能である。
【0045】
しかも、上記のような減衰器1を用いれば、シリンダ11内に充填する作動油15の粘性係数(粘度)のほか、ピストン12およびオリフィス14の形態等に応じて減衰係数Cの数値設定を調整できる。このため、想定されるガバナロープGの伸長量に応じたピストン12の摺動可能域SRの設計変更に関する自由度が高いという利点がある。また、減衰器1として、シリンダ11が単純な単層構造のいわゆる単筒式ダンパを採用すれば、ピストンロッド13のロッド径を増大し易く強度を確保しやすいという利点もある。
【0046】
そのうえ、本実施形態の制振装置10によれば、シリンダ11とピストン12の相対的な位置に関係なく減衰器1の制振機能が保障されるため、ガバナロープGに生じるロープ伸びの想定伸長量よりも摺動可能域SRの大きい減衰器1であっても何の問題もなく使用できる。したがって、ガバナロープGの形態(例えば、ロープの全長、ロープ径、ワイヤ線数、縒り方など)や、その据付け後の使用態様(例えば、錘110の重量、ロープ交換までの期間など)によって個別に異なる想定伸長量に合わせて専用設計された減衰器1を必ずしも用いる必要がなく、各種適用条件の異なる調速機107に対し共通部品での対応が可能であり、汎用性が高いという点でも有利である。
【0047】
以上、本実施形態の制振装置10について説明したが、本発明に係る制振装置は、その他の形態で実施することもできる。
【0048】
例えば、上記制振装置10において、減衰器1は、ピストン12がシリンダ11内を摺動する方向が、テンションシーブ109が上下動する方向と一致している限り、上記とは上下逆転した姿勢で設置されていても構わない。
【0049】
すなわち、
図6に示すように、減衰器1は、シリンダ11を上側とし、当該シリンダ11がテンションシーブ109の上方に位置する保持ブラケット2に上下方向不動に保持されている一方、下側となるピストンロッド13の突出部13Aの下端部は、上記した一対のリンク部材3A,3Bを介してテンションシーブ109(
図6では不図示)に連結された状態で、ピストン12がシリンダ11内の摺動可能域SRの上端部に位置するように初期設置されていてもよい。その場合、上記と同様、シリンダ11の軸心方向におけるピストン12の摺動可能域SRの長さが、制振機能を発揮するために必要なピストン12の往復動の振幅よりも十分に長くなるように減衰器1のストローク長を設定しておけばよい。
【0050】
なお、減衰器1の設置姿勢が上下逆転したときは、ピストン12が摺動上限位置ULP側へ移動するときに生じる抵抗力の作用により、ガバナロープGの横振れが抑制される。また、減衰器1の初期設置時におけるピストン12の摺動下限位置LLPまでの摺動許容量がロープ伸びの吸収代となる。このため、減衰器1の設置姿勢を上下逆転させる場合、ピストン12が下降する方向への可動域MRDの方が、ピストン12が上昇する方向への可動域MRUよりも大きく許容されるように初期設置すればよい。
【0051】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【0052】
例えば、上記した制振装置10では、減衰器1として作動油15の粘性抵抗を利用したオイルダンパを用いているが、作動油15に替えて空気や高圧ガスなどの気体が作動流体としてシリンダ11内に封入されているとともに、微細オリフィスを有するピストン12を備えたエアダンパを適用してもよい。
【0053】
上記した減衰器1は、ピストンロッド13がシリンダ11の一方の端部からのみ突出した構成となっているが、シリンダ11内におけるピストン12の位置が上記と同じ状態で初期設置される限り、ピストンロッド13がシリンダ11の両端部から突出した減衰器が用いられていてもよい。
【0054】
上記した減衰器1は、シリンダ11が単純な単層構造で、かつ、ピストンロッド13のロッド径を増大し易く強度を確保しやすい単筒式ダンパを採用しているが、シリンダが複層構造を成す公知の複筒式ダンパを採用することもできる。
【0055】
上記した制振装置10では、かご104の昇降を案内するガイドレール106を利用して減衰器1を設置するように構成されているが、ピストン12がシリンダ11内を摺動する方向をテンションシーブ109が上下動する方向に一致させた姿勢で、テンションシーブ109の上側の空間に設置される限り、その設置態様については何ら限定されるものではない。図示を省略するが、例えば、テンションシーブ109の上下動を案内する専用のガイドレールが別途設けられている場合には、それを利用して減衰器1を設置するようにしてもよい。
【0056】
上記した制振装置10では、一つの減衰器1を備えた構成であるが、当該減衰器1の数についても特に限定はなく、強度確保の観点から二以上の複数の減衰器1を備えた構成であってもよい。その場合、制振機能にアンバランスが生じないように、複数の減衰器1の各々は、テンションシーブ109の重心を通る鉛直線を対称軸とする線対称、もしくは、平面視で当該重心を回転中心とする回転対称となるように配置するのが望ましい。