特許第6222574号(P6222574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222574
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/514 20060101AFI20171023BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01R13/514
   H01R13/639 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-240874(P2014-240874)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-103393(P2016-103393A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 康雄
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−074514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/514
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にロック受部が設けられたハウジングと、
内側に複数の前記ハウジングを並列に収容可能な収容領域を有し、前記収容領域の奥面に、前記各ハウジングの前記ロック受部を弾性的に係止して前記ハウジングの前記収容領域からの離脱を規制するロック部が設けられたケースとを備え、前記ハウジングには、前記ロック受部に臨む位置から前記ハウジングへの挿入方向と反対側に延出して端面に開口する形態をなし、前記端面の開口を通して前記ロック部と前記ロック受部との係止を解除するための治具を挿入可能な治具挿入孔が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの外面のうち、前記ハウジングが前記収容領域に収容された状態で隣接するハウジングと対向する面は、ロック構造を有さず、前記隣接するハウジングと対面して当接可能とされていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のコネクタは、互いに嵌合可能な雌雄夫々のハウジングを備えている。雄ハウジングは、2つの嵌合凹部(収容領域)を有し、両嵌合凹部を挟んだ両端部に一対の鈎部が突出して設けられている。雌ハウジングは、ブロック状をなし、その外面に弾性係止片が突出して設けられている。両嵌合凹部内には、それぞれ雌ハウジングが嵌合される。雌ハウジングは、嵌合凹部に収容された状態で、鈎部に弾性係止片を弾性的に係止させることにより、嵌合凹部に抜け止めされた状態で保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−17497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、雄ハウジングにおける両嵌合凹部を挟んだ両端部に一対の鈎部が突出して設けられるため、雄ハウジングひいてはコネクタ全体が両嵌合凹部の並び方向に大型化するという問題がある。また、雌ハウジングの外面に弾性係止片が突出して設けられるため、例えば、複数の雌ハウジングを積層状態に保持して雄ハウジングに一括して嵌合しようとしても、弾性係止片が邪魔になって、各雌ハウジングの積層状態を維持することができないという問題もある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタを大型化することなく、複数のハウジングを積層可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内側にロック受部が設けられたハウジングと、内側に複数の前記ハウジングを並列に収容可能な収容領域を有し、前記収容領域の奥面に、前記各ハウジングの前記ロック受部を弾性的に係止して前記ハウジングの前記収容領域からの離脱を規制するロック部が設けられたケースとを備え、前記ハウジングには、前記ロック受部に臨む位置から前記ハウジングへの挿入方向と反対側に延出して端面に開口する形態をなし、前記端面の開口を通して前記ロック部と前記ロック受部との係止を解除するための治具を挿入可能な治具挿入孔が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
ロック受部がハウジングの内側に設けられ、ロック部がケース内の収容領域の奥面に設けられているから、ハウジングの外側にロック受部が突出したり、ケースの外側にロック部が突出したりすることがなく、ハウジングの並び方向に関してコネクタが大型になるのを防止することができる。また、ハウジングの外側にロック受部が突出しない構造であれば、複数のハウジングを並び方向に積層させることができる。また、ハウジングの内側にロック受部が設けられ、ケースの収容領域の奥面にロック部が設けられているため、ロック部とロック受部との係止を解除しづらいという事情があるものの、本構成によれば、治具挿入孔に治具を挿入することにより、ロック部とロック受部との係止を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るコネクタの分解斜視図である。
図2】ケースの正面図である。
図3】収容領域にハウジングが収容されたケースの正面図である。
図4】同じく断面図である。
図5】さらに、ロック部とロック受部との係止が係止解除用の治具によって解除される状態をあらわす断面図である。
図6】各ハウジングが嵌合治具に取り付けられた状態をあらわす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す
【0010】
前記ハウジングの外面のうち、前記ハウジングが前記収容領域に収容された状態で隣接するハウジングと対向する面は、ロック構造を有さず、前記隣接するハウジングと対面して当接可能とされている。これによれば、各ハウジングを並び方向に積層させた状態で嵌合治具(図6の符号50を参照)等に保持させ、嵌合治具等を介して、ケースの収容領域内に一括して嵌合することが可能となる。
【0011】
<実施例>
以下、実施例を図面に基づいて説明する。本発明のコネクタは、ケース10と、ケース10内に収容されて保持可能な複数のハウジング60とを備えている。ケース10は、バスバー90(図2を参照)を装着した相手ハウジングとして構成され、コネクタは、いわゆるジョイントコネクタとして構成されている。なお、以下の説明において前後方向については、ケース10内にハウジング60を収容させる際にハウジング60とケース10とが互いに向き合う面側を前側とし、上下方向については、図2図5を基準とする。
【0012】
ケース10は合成樹脂製であって、全体として上下方向に長い角箱状をなし、前方に開放されている(図1を参照)。図2及び図3に示すように、ケース10の外面には、4つの側面のそれぞれに、取付ロック部11が突出して設けられ、取付ロック部11を挟んだ両側に一対ずつのガイド壁12が前後方向に延出して設けられている。ケース10は、ガイド壁12によってガイドされつつ図示しないブラケット等の取付部材にスライドして装着され、取付ロック部11を介して取付部材に固定されるようになっている。
【0013】
図2に示すように、ケース10内には、バスバー90が突出して配置されている。また、ケース10内には、バスバー90の突出部91と対応する位置に、上下方向に複数並列に配置された収容領域13が設けられている。各収容領域13には、前方からハウジング60が収容可能とされている。
【0014】
図1及び図2に示すように、ケース10内の両側面には、各収容領域13と対応する位置毎に、前後方向に延出してケース10の後端に開口する嵌合凹部14が設けられ、さらに隣接する収容領域13間における嵌合凹部14を区画する壁15間に、前後方向に延出してケース10の後端に開口するガイド溝16が設けられている。また、ケース10の両側壁には、各収容領域13を挟んだ両側に、一対ずつのストッパ面17が前方に拡開して設けられている。なお、ケース10には、隣接する収容領域13間を仕切る壁が設けられていない。
【0015】
図2及び図4に示すように、ケース10内の各収容領域13の奥面18には、ハウジング60を抜け止め状態に保持可能なロック部21が設けられている。ロック部21は、収容領域13の奥面18の幅方向中央部から前方へ片持ち状に突出する形態とされ、収容領域13の奥面18を支点として上下方向に撓み変形可能とされている。ロック部21の先端部には、爪状のロック突起22が上向きに突出して設けられている。図4に示すように、ロック突起22の前面は、側断面視で円弧状をなし、ロック突起22の後面は、突出端(上端)に向けて後傾する逆テーパ状をなしている。ケース10の後壁には、ロック突起22と対向する位置に、ロック突起22の後面を成形する際に金型が通過することによって開口する型抜き孔23が設けられている。
【0016】
図2に示すように、ロック部21は、正面視して各収容領域13のほぼ中央部に設置されている。そして、各収容領域13には、ロック部21を挟んだ両側に、バスバー90の突出部91が対をなして配置されている。ケース10内の奥面18には、各ロック部21を挟んだ両側に、上下方向に延出する一対の装着溝24が開口して設けられ、装着溝24内に、バスバー90が圧入して装着されている。
【0017】
続いて、ハウジング60について説明すると、ハウジング60は合成樹脂製であって、全体として上下方向に薄い扁平ブロック状をなしている(図1を参照)。ハウジング60の上面の幅方向両端部には、図1及び図3に示すように、前後方向に延出する一対の嵌合溝61が設けられ、ハウジング60の下面の幅方向両端部には、前後方向に延出する一対の嵌合リブ62が設けられている。また、嵌合リブ62は、ハウジング60の両側方に張り出す形態になっている。
【0018】
ハウジング60の両側面には、図1に示すように、前部64側から一段外側に突出した嵌合部63が設けられている。嵌合部63は、ハウジング60が収容領域13に収容された状態で、嵌合凹部14内に嵌合可能とされている。嵌合リブ62の側方への張出部分がガイド溝16内に嵌合されることにより、ハウジング60が収容領域13内にガイドされつつ挿入されるようになっている。
【0019】
さらに、図1に示すように、ハウジング60の両側面の後端部には、ハウジング60の後端と嵌合リブ62との間において、ハウジング60の下縁に沿って前後方向に延出し、且つ側方に張り出すストッパ部65が設けられている。ストッパ部65の前端がストッパ面17に当て止めされることにより、ハウジング60が収容領域13内にそれ以上深く進入しないように規制されている(図3を参照)。そして、ハウジング60が収容領域13内に正規に収容された状態では、ハウジング60のストッパ部65を含む後端部がハウジング60の後方に露出して配置されるようになっている。
【0020】
図1及び図3に示すように、ハウジング60の幅方向中央部には、ロック部21を挿入可能なロック孔66が設けられている。ロック孔66は、断面略矩形の開口形状を有し、図4に示すように、ハウジング60を前後方向に貫通する形態になっている。図4に示すように、ハウジング60のロック孔66の孔面には、その前端部の上面に、爪状のロック受部67が下向きに突出して設けられている。ロック受部67の前端は、突出端(下端)に向けて後傾するテーパ状をなし、ロック受部67の後面は、突出端に向けて小さく後傾する逆テーパ状をなしている。ロック受部67には、ロック部21のロック突起22が係止可能とされている。ここで、ロック受部67の突出量は、ロック突起22の突出量とほぼ同一となるように設定されている。
【0021】
また、図4に示すように、ハウジング60のロック孔66内には、ロック孔66の略後半部を上下に分断する隔壁68が設けられている。詳細には隔壁68は、ロック孔66の上下方向中央よりもやや下側に配置されている。ロック孔66内のうち、隔壁68によって区画された上側の領域には、ロック受部67の後面からハウジング60の後端開口にかけて前後方向に延出する治具挿入孔69が設けられている。図5に示すように、治具挿入孔69にはハウジング60の後端開口から係止解除用の治具80がガイドされつつ挿入され、挿入された治具80によってロック部21とロック受部67との係止を解除することが可能となっている。
【0022】
また、図3に示すように、ハウジング60には、ロック孔66を挟んだ両側に、キャビティ71が対をなして設けられている。各キャビティ71には後方から詳細は図示しない端子金具75が挿入されて収容されるようになっている。端子金具75は図示しない電線の端末部に接続され、ハウジング60が収容領域13に収容された状態で、バスバー90と導通接続されるようになっている。
【0023】
次に、本実施例の作用を説明する。
ケース10内にハウジング60を収容するに際し、まずハウジング60が上下方向に積み重ねて配置される。具体的には、下側のハウジング60の上面に上側のハウジング60の下面がほぼ密着して対面するように各ハウジング60が積み上げられる。このとき、下側のハウジング60の嵌合溝61に上側のハウジング60の嵌合リブ62が嵌合することで、上下方向で隣接するハウジング60同士が幅方向に位置ずれするのが規制される(図3を参照)。
【0024】
上述したハウジング60の積層状態は、図6に示す嵌合治具50を用いることによって安定に保持される。図6に示すように、嵌合治具50は、門型枠状をなし、その枠内に各ハウジング60の後端部(ハウジング60が収容領域13に収容された状態で外側に露出する部分)を積層状態に保持可能とされている。
【0025】
各ハウジング60が対応する収容領域13に正対した状態で、嵌合治具50がケース10に接近させられる。すると、各ハウジング60が対応する収容領域13に一括して挿入される。ハウジング60が収容領域13に挿入される過程ではロック突起22がロック受部67と干渉してロック部21が撓み変形させられる。また、挿入過程では、ハウジング60の嵌合リブ62がガイド溝16に挿入されてハウジング60の挿入動作が案内される。ハウジング60が収容領域13に正規に挿入されると、嵌合部63が嵌合凹部14に嵌合されるとともに、ストッパ部65がストッパ面17に当接してそれ以上の挿入動作が規制される。また、図4に示すように、ハウジング60が収容領域13に正規に挿入されると、ロック部21が弾性的に復帰し、ロック突起22とロック受部67とが係止可能に配置される。これにより、ハウジング60がケース10内に抜け止めされた状態に保持される。
【0026】
ところで、メンテナンス等の事情によりケース10からハウジング60を離脱させる際には、図5に示すように、ハウジング60の後端開口から治具挿入孔69内に係止解除用の治具80を差し込む。治具80は前後方向に細長いピン状の治具本体81を有し、治具本体81が治具挿入孔69にガイドされつつ真っ直ぐ挿入される。治具本体81が治具挿入孔69に正規深さで挿入されると、治具本体81の先端がロック突起22と干渉して、ロック部21が下方へ撓み変形させられる。すると、ロック突起22がロック受部67から離間して、ロック部21とロック受部67との係止が解除される。あとは、ハウジング60をケース10から引き抜けば、ケース10からハウジング60を離脱させることが可能となる。
【0027】
以上説明したように、本実施例によれば、ロック受部67がハウジング60の内側に設けられ、ロック部21がケース10内の収容領域13の奥面18に設けられているため、ハウジング60の外側にロック受部67が突出したり、ケース10の外側にロック部21が突出したりすることがなく、コネクタが上下方向(ハウジング60の並び方向)に大型になるのを防止することができる。また、ハウジング60の外側にロック受部67が突出しないため、複数のハウジング60を上下方向に支障なく積層させることができる。とくに、本実施例の場合、嵌合治具50を介して積層状態にある各ハウジング60をケース10内に一括して嵌合可能となっているため、作業性のさらなる向上を図ることができる。また、ハウジング60の後端開口を通して治具挿入孔69に係止解除用の治具80を挿入することにより、ロック部21とロック受部67との係止を容易に解除することができる。
【0028】
<他の実施例>
以下、他の実施例を簡単に説明する。
(1)各ハウジングがケースの収容領域に収容された状態で、隣接するハウジング同士が互いに当接しない構成であってもよい。
(2)上記(1)の場合に、ケースには隣接するハウジング間を仕切る仕切壁が設けられていてもよい。
(3)ケースは、内部にバスバーが装着されず、ハウジングを収容するためのものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…ケース
11…取付ロック部
13…収容領域
18…(収容領域の)奥面
21…ロック部
60…ハウジング
67…ロック受部
69…治具挿入孔
80…(係止解除用の)治具


図1
図2
図3
図4
図5
図6