(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記接続切替部によって、前記弁体進退機構への接続が解除された前記変換機構に対し、予め設定されたメンテナンス用の動作を実行させる請求項1または2に記載の調整弁駆動機構。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態に係る蒸気タービンを図面に基づき説明する。
図1は、この実施形態の蒸気タービン10の構成を示す模式図である。
図1に示すように、この実施形態の蒸気タービン10は、タービン本体11と、作動流体としての蒸気が流通する蒸気流路12と、調整弁13と、レバー部材(弁体進退機構)14と、調整弁駆動機構15と、ロック機構16(
図5及び
図6参照)と、調整弁駆動機構15を制御する電子ガバナ(制御部)17と、を備える。
【0015】
(タービン本体)
タービン本体11は、筒状のケーシング111と、ケーシング111に設けられた軸受112と、軸受112に回転可能に支持されてケーシング111内部に配されたロータ113と、このロータ113の回転速度を検出する速度検出センサ114と、を有している。そして、ロータ113は、回転軸115と、この回転軸115に固定された複数枚のブレード116とを備えている。
このように構成されるブレード116が蒸気により回転し、その回転力により、圧縮機18が駆動される。
【0016】
(蒸気流路)
蒸気流路12は、タービン本体11に対して作動流体としての蒸気を供給する流路である。
蒸気流路12は、その一端側の蒸気導入口121から蒸気が導入される。蒸気流路12の他端側の蒸気供給口122は、タービン本体11に接続されている。また、蒸気導入口121と蒸気供給口122との間には、その流路幅が狭く絞られた絞り穴123が設けられている。なお、この実施形態では、この発明に係る「蒸気流路」として、タービン本体11に対して供給する蒸気が流通する流路を例に説明するが、蒸気流路12は、これに限られず、例えばタービン本体11から抽気した蒸気が流通する流路であってもよい。
【0017】
(調整弁)
調整弁13は、タービン本体11に供給する蒸気の量を調整する。この調整弁13は、棒状のアーム部材131と、アーム部材131の一端部に設けられた略半円形状の封止部材(弁体)132とを備えている。アーム部材131は、その他端部が、レバー部材14の長手方向の中間部に回動可能に取り付けられている。調整弁13が上記構成を備えることで、蒸気流路12に沿ってアーム部材131が直線運動することに伴って、その先端部の封止部材132が蒸気流路12の絞り穴123に対して嵌合または離間する。これにより、絞り穴123と封止部材132との間の開口の大きさが変化する。その結果、この絞り穴123を介してタービン本体11に供給される蒸気の流量が変化する。以下の説明において、調整弁13の封止部材132が蒸気流路12の絞り穴123より離間することをリフトと呼ぶ。また、調整弁駆動機構15の計画値における最大のリフト量をリフト量100%とし、調整弁13の封止部材132が絞り穴123と嵌合した状態をリフト量0%とする。
【0018】
(レバー部材)
レバー部材14は、調整弁駆動機構15の出力を調整弁13に伝達し、封止部材132を蒸気流路12に対して進退させる部材である。このレバー部材14は、その長手方向基端部が回動可能に支持されている。レバー部材14の長手方向の先端部にはレバー側ロッド19の一端部が回動可能に取り付けられている。この実施形態では、後述する二組の電動アクチュエータ23A,23B(
図8参照)を接続するために、レバー部材14の長手方向先端部には、幅方向両側に一対のレバー側ロッド19の一端部がそれぞれ回動可能に取り付けられている。また、上述したように、レバー部材14の長手方向の中間部には、調整弁13を構成するアーム部材131の他端部が回動可能に取り付けられている。さらに、レバー部材14は、アーム部材131の取付位置よりも先端側に、引きバネ20の一端が取り付けられている。この引きバネ20は、強制的に調整弁13を閉塞させる強制閉塞手段として機能する。引きバネ20の他端は、蒸気流路12のフレーム(図示せず)等に固定され、移動不能とされている。つまり、引きバネ20は、外力が作用しない状態では、レバー部材14を
図1における反時計回りに回動させる引張力を付与している。
【0019】
(調整弁駆動機構)
調整弁駆動機構15は、上述した調整弁13を駆動する機構である。調整弁駆動機構15は、二組の電動アクチュエータ(変換機構)23A,23B(
図8参照)を備えている。以下の説明において、電動アクチュエータ23Aと電動アクチュエータ23Bとを区別する必要がない場合においては、電動アクチュエータ23A,23B、単に電動アクチュエータ23と称する。
各電動アクチュエータ23は、固定して設置された一対のブラケット21と、これらブラケット21によって回動可能に支持された保持部材22と、を備えている。この保持部材22には、電動アクチュエータ23が保持されている。
【0020】
図2は、調整弁駆動機構15の周辺を示す斜視図である。なお、
図2においては、図示都合上、電動アクチュエータ23A,23Bのうちの一方のみを示し、さらに、タービン本体11等については図示を省略している。
一対のブラケット21は、断面略L字形状を有している。一対のブラケット21は、台座25の上に固定されている。台座25は、軸受カバー24に近接して設けられている。上記軸受カバー24は、
図1に示すロータ113の回転軸115を回転可能に支持する軸受112を収容している。
【0021】
図1及び
図2に示すように、保持部材22は、側面視で略U字形状となっている。保持部材22は、その略U字形状の両端部が、上述した一対のブラケット21によって回動可能に支持されている。
【0022】
図3(a)、および
図3(b)は、電動アクチュエータ23の内部構成を示す断面図である。
図3(a)、および
図3(b)に示すように、電動アクチュエータ23は、ボールネジ機構27と、ブレーキ28と、を備えるものである。
【0023】
ボールネジ機構27は、電動モータ(回転駆動源)26の回転運動をレバー側ロッド19の直線運動に変換する機構である。このボールネジ機構27は、電動モータ26と、電動モータ26の駆動軸に接続されたボールネジ(変換部)30と、ボールネジ30の回転によって進退移動するピストンユニット31とを有している。
【0024】
電動モータ26は、電力の供給を受けて回転するものである。この電動モータ26は、モータ収容部29に収容されている。モータ収容部29は、電動アクチュエータ23の基端部に設けられて内部が密閉されている。これにより、電動モータ26が周囲に存在する油から隔絶される防爆構造となっている。
【0025】
ボールネジ30は、長尺なネジ部材であって、その外周面には雄ネジ溝が切られている。ボールネジ30は、その一端部が電動モータ26の駆動軸に接続されている。ボールねじ30は、電動モータ26の回転に伴って回転駆動される。
【0026】
ピストンユニット31は、ボールネジ30に沿って往復動する。このピストンユニット31は、ナット311と、ピストンロッド312と、ロッドエンドコネクタ313と、アクチュエータ側ロッド314とを備えている。
【0027】
ナット311は、ボールネジ30に螺合される略円環形状の部材である。ナット311の内周面には、雌ネジ溝が切られている。
ピストンロッド312は、ボールネジ30の外側を覆う筒状に形成されている。ピストンロッド312は、ナット311の一端面に固定されている。
ロッドエンドコネクタ313は、ピストンロッド312の先端部に嵌合して装着される部材である。ロッドエンドコネクタ313は、先端側の内周面に雌ネジが形成されている。
【0028】
アクチュエータ側ロッド314は、ピストンロッド312を延長する方向に延びる部材である。このアクチュエータ側ロッド314は、その長手方向の一端部に雄ネジが形成されている。アクチュエータ側ロッド314の雄ネジがロッドエンドコネクタ313の雌ネジに対してねじ込まれて固定されている。
【0029】
すなわち、ピストンユニット31が上述した構成を備えることで、ボールネジ30が軸線回りに回転すると、
図3(b)に示すようにボールネジ30に螺合したナット311が、軸線に沿って、ボールネジ30の回転方向に応じた方向に移動する。ナット311の移動に伴って、ナット311に固定されているピストンロッド312、ロッドエンドコネクタ313、及びアクチュエータ側ロッド314も、ナット311と共にボールネジ30の軸線に沿って移動する。
【0030】
図4は、ボールネジ機構27のボールネジ30とナット311との断面図である。
図4に示すように、ボールネジ30の雄ネジ溝と、ナット311の雌ネジ溝との間には、周方向に複数のボール330が介装されている。ボールネジ30とナット311とは、これらボール330を介して螺合している。
ボールネジ機構27は、周方向において互いに隣接するボール330,330の間に、リテーナ331を備えている。これらリテーナ331は、周方向において互いに隣接するボール330,330間の摩擦を低減するとともに、作動時の発熱を抑えている。
【0031】
図3に示すように、電動アクチュエータ23は、電動モータ26を挟んでボールネジ30と逆側の位置にブレーキ28を備えている。ブレーキ28は、電磁ディスクブレーキからなる。ブレーキ28は、電力の供給が断たれときに作動して、電動モータ26の回転に制動をかけるようになっている。
【0032】
ブレーキ28は、電子ガバナ17(
図1参照)によってその動作が制御されている。電子ガバナ17は、ボールネジ30の周速が閾値を超えて大きくなった場合に、ブレーキ28を作動させる。つまり、ブレーキ28を作動させることで電動モータ26の回転に制動をかける。
【0033】
ピストンユニット31はピストンケーシング36によって覆われている。ピストンケーシング36は、その上端(
図3(a)、
図3(b)における左端)に、ピストンケーシング36を封止するとともに、ピストンロッド312を案内するピストンキャップ37を備えている。
【0034】
図5は、電動アクチュエータ23の周辺を示す斜視図である。
図5に示すように、電動アクチュエータ23は、保持部材22に固定されている。
アクチュエータ側ロッド314は、保持部材22の上端部に設けられたガイド板39の挿通孔39aに挿通されている。このアクチュエータ側ロッド314は、後述するカップリング機構32を介して前記レバー側ロッド19に接続されている。
このように設置された電動アクチュエータ23は、
図5に破線で示すように、保持部材22がブラケット21に支持される箇所を支点として回動が許容されている。
【0035】
(ロック機構)
図6は、ロック機構16の構成を示す概略平面図である。
ロック機構16は、調整弁13を移動不能にロックするための機構である。
図5及び
図6に示すように、ロック機構16は、支持棒161と、保持板162と、押圧部材164と、を有している。
支持棒161は、上述した台座25が形成される支持構造物等に下端部が固定され、上方へ延びる部材である。
保持板162は、支持棒161の上端部に固定されて水平方向に延びる部材である。保持板162の先端部には、平面視で略半円形状の嵌合溝162aが形成されている。
【0036】
押圧部材164は、保持板162と共にレバー側ロッド19を挟み込む部材である。押圧部材164は、一対の固定ボルト163を介して保持板162の先端部に着脱可能に取り付けられる。押圧部材164には、保持板162に対向する側に、平面視で略三角形状の切欠き164aが形成されている。
【0037】
上述したロック機構16によれば、保持板162の嵌合溝162aにレバー側ロッド19を嵌合させた後、固定ボルト163を用いて保持板162の先端部に押圧部材164を固定する。これにより、レバー側ロッド19が、保持板162と押圧部材164とによって挟み込まれる。その結果、レバー側ロッド19が移動不能な状態でロックされる。
【0038】
(リミットスイッチユニット)
図7に示すように、保持部材22には、そのガイド板39に、調整弁13が所定の範囲を超過して駆動したことを検知する制限センサとして機能するリミットスイッチユニット50が取り付けられている。
リミットスイッチユニット50は、ステー51と、リミットスイッチ52とを備えている。ステー51は、ガイド板39と直交するとともに、電動アクチュエータ23の長手方向に延びている。リミットスイッチ52は、ステー51の所定の位置に取り付けられている。アクチュエータ側ロッド314には、コンタクト金具53が取り付けられている。このコンタクト金具53は、カップリング機構32との接続部近傍に取り付けられている。また、コンタクト金具53は、リミットスイッチ52に接触可能な位置に取り付けられている。
【0039】
リミットスイッチユニット50は、電動アクチュエータ23により調整弁13が駆動する際、調整弁13が100%のリフト量を越え、計画値以上のリフト量、例えば105%のリフト量となったときに、スイッチが入るように設定されている。すなわち、リミットスイッチユニット50は、調整弁13が電動アクチュエータ23の計画値以上のリフト量に至った場合にONとなるように設定されている。リミットスイッチユニット50は、電子ガバナ17(
図1参照)と接続されている。電子ガバナ17は、リミットスイッチユニット50と通信を行って、調整弁13のリフト量が105%以上であるか否かの監視を行っている。
【0040】
(リフト量検知装置)
調整弁駆動機構15には、制限センサとして機能するリフト量検知装置55が設けられている。リフト量検知装置55は、サポート部材56と、伸縮バー57と、リフトセンサ58とを有している。
サポート部材56は、伸縮バー57を支持する部材である。このサポート部材56は、電動アクチュエータ23のモータ収容部29に取り付けられている。
【0041】
伸縮バー57は、サポート部材56とレバー部材14とを接続する部材である。この伸縮バー57は、電動アクチュエータ23のアクチュエータ側ロッド314に沿って延びている。伸縮バー57は、その上方をなす第一ロッド59がレバー部材14の長手方向先端部近傍に回動可能に接続されているとともに、その下方をなす第二ロッド60がサポート部材に回動可能に接続されている。第一ロッド59の下端には、第二ロッド60をその内周側に収容する円筒形状の円筒部材61が固定されている。すなわち、伸縮バー57は、第一ロッド59に固定された円筒部材61の内部を第二ロッド60が摺動することによって伸縮可能となっている。
【0042】
リフトセンサ58は、伸縮バー57のうちレバー部材14の回動に伴って上方に移動する部位の上下方向の変位を測定する。リフトセンサ58は、伸縮バー57の円筒部材61の上端に固定されたリフトセンサステー62を介して、伸縮バー57の円筒部材61の変位を測定する差動変圧器(LVDT,Linear Variable Differential Transformer)を用いたセンサである。具体的には、リフトセンサ58は、サポート部材56に固定された円筒形状のリフトセンサ本体部64と、リフトセンサ本体部64に収容されたコア部(図示せず)と、コア部と接続された棒形状のシャフト部65とを有している。シャフト部65は、伸縮バー57の延在方向と平行となるように配置されており、シャフト部65の上端がリフトセンサステー62に固定されている。
【0043】
リフト量検知装置55は、電子ガバナ17と接続されており、調整弁13のリフト量を検知するように出力調整されている。すなわち、電子ガバナ17によってリフト量を検知可能となっている。電子ガバナ17は、例えばリフト量検知装置55の出力により、リフト量が105%となったことを検知した場合に、ブレーキ28を作動させて調整弁13の開度を保持させる。同様に、電子ガバナ17は、リミットスイッチユニット50も監視しており、リミットスイッチユニット50のスイッチが入った場合、すなわち、調整弁13が100%のリフト量を超えたことを検知した場合にブレーキ28を作動させて調整弁13の開度を保持させる。
【0044】
(電子ガバナ)
電子ガバナ17は、調整弁駆動機構15の動作を制御する。
図1に示すように、電子ガバナ17には、圧縮機18における圧力や温度の検出結果に基づいてプロセス制御が行われた結果が入力される。また、電子ガバナ17には、タービン本体11を構成する速度検出センサ114によって検出されたブレード116の回転速度が入力される。さらに、電子ガバナ17には、操作盤34から入力されたユーザからの指示が入力される。電子ガバナ17は、これらの各入力に基づいて、調整弁駆動機構15の動作を制御する。より具体的には、電子ガバナ17は、上記各入力に基づいて、電動アクチュエータ23を構成する電動モータ26の動作を制御する。
【0045】
図8は、電動アクチュエータ23の制御ブロック図である。
この実施形態に係る蒸気タービン10は、電子ガバナ17による制御処理に基づいて、コントローラユニット35が電動アクチュエータ23の動作を制御する。
コントローラユニット35は、コントローラ351と、サーボドライブ352とを有している。また、コントローラユニット35には、電源ケーブル67を介して主電源(例えばAC230V)が供給されている。電源ケーブル67には、電源ケーブル67を流れる電力を測定する電圧計68が設けられている。電圧計68は、電子ガバナ17と接続されており、電源ケーブル67の電源電圧を電子ガバナ17に通知する。
【0046】
このように構成することで、電子ガバナ17の制御処理に基づいて、コントローラ351がサーボドライブ352に対して回転速度についての指令を発し、この指令に基づいてサーボドライブ352がモータケーブル69を介して電動モータ26に駆動電力を供給する。一方、電動モータ26において検出された回転速度や電流値や各所の温度等が、サーボドライブ352を介してコントローラ351に入力される。コントローラ351は、検出値について異常が検知されると、電動モータ26において重度または軽度の故障が発生したことを電子ガバナ17に通知する。
【0047】
コントローラユニット35は、サーボドライブ352を介してブレーキ28を制御する。ブレーキ28には、無停電電源装置(図示せず)による補助電力が補助電力ケーブル71を介して供給可能とされている。
【0048】
モータケーブル69には、モータケーブル69を流れる電力を遮断可能なスイッチ装置70が設けられている。スイッチ装置70には、無停電電源装置による補助電力が補助電力ケーブル71を介して供給可能とされている。
スイッチ装置70は、補助電力が供給されている状態において閉成(CLOSE)され、電動モータ26に電力が供給される。
補助電力ケーブル71には、補助電力を遮断可能な補助スイッチ装置72が設けられている。上記補助電力は、コントローラ351にも供給されている。
【0049】
(接続切替部)
図9は、二組設けられた電動アクチュエータ23の構成を示す斜視図である。
図10は、接続切替部の構成を示す断面図である。
図9に示すように、調整弁駆動機構15は、二組の電動アクチュエータ23A,23Bを備えている。また、
図8にて示したように、蒸気タービン10は、二組の電動アクチュエータ23A,23Bの動作を制御する手段として、二組のコントローラユニット35A,35Bを備えている。
すなわち、この実施形態の蒸気タービン10は、調整弁駆動機構15及びコントローラユニット35がそれぞれ冗長化されている。
以下の説明においては、コントローラユニット35Aとコントローラユニット35Bとを区別する必要がない場合においては、コントローラユニット35A,35Bを、単にコントローラユニット35と称する。
【0050】
調整弁駆動機構15は、電動アクチュエータ23A,23Bのそれぞれをレバー部材14に個別に接続可能とする接続切替部38を備える。二組の電動アクチュエータ23A,23Bは、レバー部材14の長手方向先端部の幅方向両側に設けられた一対のレバー側ロッド19,19に、それぞれカップリング機構32を介して接続されている。接続切替部38は、電動アクチュエータ23A,23Bのそれぞれに設けられたカップリング機構32を、電子ガバナ17の制御により動作させることで、電動アクチュエータ23A,23Bのそれぞれをレバー部材14に個別に接続させる。
【0051】
図10に示すように、各カップリング機構32には、カップリングハウジング320の一方の端面にレバー側ロッド挿入穴321が形成されている。また、各カップリング機構32には、カップリングハウジング320の他方の端面にアクチュエータ側ロッド挿入穴322が形成されている。
カップリングハウジング320のレバー側ロッド挿入穴321には、レバー側ロッド19が挿入されている。さらに、カップリングハウジング320とレバー側ロッド19とは、カップリングハウジング320とレバー側ロッド19とを貫通するピン33により、互いに接続されている。
【0052】
カップリングハウジング320のアクチュエータ側ロッド挿入穴322には、アクチュエータ側ロッド314の先端部が挿抜可能に挿入されている。
カップリングハウジング320の他方の端面には、筒状のフード部315が形成されている。このフード部315内には、一対の係合キーシャフト316,316が、その中心軸周りに回動自在に設けられている。係合キーシャフト316,316は、アクチュエータ側ロッド314の中心軸に直交した軸状で、アクチュエータ側ロッド314を挟んでその両側に位置するよう設けられている。係合キーシャフト316,316は、アクチュエータ側ロッド314と干渉しない位置に、互いに噛み合う歯車316g、316gを備えている。一方の歯車316gには、駆動アーム317の一端317aが接合されている。駆動アーム317の他端317bには、駆動アーム317を、一端317a側を中心として揺動させるための揺動機構318が設けられている。揺動機構318は、例えば、エアシリンダや電動アクチュエータ等からなる。この揺動機構318を伸縮させることにより駆動アーム317が揺動すると、互いに噛み合う歯車316g、316gを介し、係合キーシャフト316,316が互いに反対向きに回動するようになっている。
【0053】
係合キーシャフト316,316には、アクチュエータ側ロッド314と対向する位置に、例えば断面半月状の係合キー316k,316kが一体に形成されている。一方、アクチュエータ側ロッド314の外周面には、アクチュエータ側ロッド314とカップリングハウジング320とを係合させるための係合凹部319が形成されている。これら係合キー316k,316kは、揺動機構318により係合キーシャフト316,316が軸周りに回動するに伴い、係合凹部319に向けて出没する。
【0054】
これにより、
図10(a)に示すように、係合キー316k,316kを係合凹部319,319に入り込ませて係合させた状態では、アクチュエータ側ロッド314がカップリングハウジング320に接続される。また、
図10(b)、(c)に示すように、係合キー316k,316kを係合凹部319,319から抜き出して係合を解除した状態では、アクチュエータ側ロッド314がカップリングハウジング320に対して、アクチュエータ側ロッド314の中心軸方向に相対移動可能となる。
【0055】
カップリングハウジング320には、アクチュエータ側ロッド314に沿って延びるセンサロッド323が設けられている。アクチュエータ側ロッド314には、センサロッド323に沿って移動可能な検出子324が取り付けられている。センサロッド323においては、検出子324の位置を検出し、その検出信号を電子ガバナ17に出力する。これにより、電子ガバナ17では、アクチュエータ側ロッド314の位置を検出し、係合キー316k,316kが係合凹部319,319に係合して、アクチュエータ側ロッド314がカップリングハウジング320に接続された状態にあるか否かを検出する。
【0056】
また、カップリング機構32を電子ガバナ17で制御するため、複数組の電動アクチュエータ23A,23Bのそれぞれのボールネジ機構23は、温度(特に、ボールネジ30、ナット311の温度)、ボールネジ機構23の駆動電流、振動、前回メンテナンス動作を行ってからの作動サイクル数、前回メンテナンス動作を行ってからの稼働時間の少なくとも一つを計測するセンサやカウンタ(不図示)を計測部として備える。
【0057】
次に、この実施形態に係る蒸気タービン10の作用について説明する。
図11は、蒸気タービン10を運転する際の調整弁駆動機構15の制御の流れを示す図である。
図11に示すように、通常運転状態において、蒸気タービン10では、電子ガバナ17およびコントローラユニット35により、調整弁駆動機構15の動作を制御して調整弁13を駆動する(ステップS101)。電子ガバナ17では、圧縮機18の圧力や温度、ブレード116の回転速度、ユーザからの指示等に基づいて調整弁駆動機構15を制御する。
この通常運転状態では、電動アクチュエータ23A,23Bのうちの一つ(例えば電動アクチュエータ23A)において、アクチュエータ側ロッド314をカップリングハウジング320に接続する。すると、この電動アクチュエータ23Aにより、調整弁13が駆動される。
【0058】
図12は、使用中の電動アクチュエータ23Aにおける、時間の経過にともなう温度変化の一例を示すものである。
通常運転状態で電動アクチュエータ23Aが調整弁13の駆動のためにストローク動作を繰り返すと、その特定の範囲でボールネジ機構27の潤滑油が減少してくる。すると、ボールネジ機構27の作動抵抗が増大する。その結果、
図12に示すように、電動アクチュエータ23Aのボールネジ機構27の温度が時間の経過とともに上昇する。電動アクチュエータ23Aの駆動電流値、振動も、ボールネジ機構27の作動抵抗が増大すると、同様に上昇する。また、使用中の電動アクチュエータ23Aにおいて、前回メンテナンス動作を行ってからの電動アクチュエータ23Aの作動サイクル数、稼働時間は、時間の経過とともに増大する。
そこで、温度、駆動電流、振動、作動サイクル数、稼働時間等の計測パラメータには、それぞれ、使用上限を示す上限値L1と、上限値L1よりも低い閾値L2とが設定されている。
【0059】
電子ガバナ17は、不図示のセンサやカウンタにおける計測結果を、一定時間ごとに受信する(ステップS102)。電子ガバナ17は、受信した計測結果をモニタリングし、センサやカウンタにおける、使用中の電動アクチュエータ23Aの温度、駆動電流、振動、作動サイクル数、稼働時間等の計測パラメータ計測結果が、予め定めた閾値L2を超えたか否かを判定する(ステップS103)。そして、いずれかの計測パラメータで閾値L2を超えたときには(ステップS103でYes)電子ガバナ17は、レバー部材14に接続される電動アクチュエータ23を切り替える(ステップS104)。
これにはまず、使用していない電動アクチュエータ23Bにおいて、カップリング機構32の揺動機構318を作動させ、係合キー316k,316kを係合凹部319,319に係合させ、アクチュエータ側ロッド314をカップリングハウジング320に接続する。この状態で、電動アクチュエータ23Bを、使用中の電動アクチュエータ23Aと同期させて作動させる。これにより、調整弁13は連続的に駆動される。
【0060】
次いで、それまで使用していた電動アクチュエータ23Aにおいて、カップリング機構32の揺動機構318を作動させ、係合キー316k,316kを係合凹部319,319から離脱させて、アクチュエータ側ロッド314とカップリングハウジング320との接続を解除する。
【0061】
なお、使用中の電動アクチュエータ23Aの温度、駆動電流、振動、作動サイクル数、稼働時間等の計測結果が、予め定めた閾値L2を超えた場合にレバー部材14に接続される電動アクチュエータ23を切り替える動作は、予め設定されたコンピュータプログラムに基づいて自動的に行ってもよいが、蒸気タービン10の各部の運転状態(負荷、回転数、軸振動の安定、およびアラーム警報が発生していない状態であること)をオペレータが確認した後に実行するようにしても良い。
【0062】
カップリングハウジング320への接続を解除した、それまで使用していた電動アクチュエータ23Aは、ボールネジ30およびナット311間において潤滑油を行き渡らせる所定のグリースアップ動作(メンテナンス動作)を、電子ガバナ17の制御により自動的に実行させる(ステップS105)。これには、カップリングハウジング320から切り離した電動アクチュエータ23Aを、調整弁13を駆動するときにおける電動アクチュエータ23Aの直線動作の作動ストロークよりも大きな(例えば、数倍程度の)作動ストロークで作動させる。予め定めた作動ストローク、作動回数で、グリースアップ動作を実行させた後(ステップS106でYes)、電動アクチュエータ23Aのグリースアップ動作を停止させる(ステップS107)。
上記の一連の動作を、蒸気タービン10の通常運転状態が終わるまで(ステップS108でNo)、継続的に実行する。
【0063】
上述した実施形態の蒸気タービン10によれば、複数組の電動アクチュエータ23A,23Bのそれぞれをレバー部材14に対して個別に接続可能な接続切替部38を備えているので、例えば電動アクチュエータ23Aをレバー部材14に接続した状態で、接続切替部38により、使用していた電動アクチュエータ23Aのレバー部材14への接続を解除することができる。これによって、使用していた電動アクチュエータ23Aに対してメンテナンスを施すことができる。
【0064】
また、電動アクチュエータ23A,23Bの作動時に、ボールネジ機構27の特定範囲の潤滑油の減少によって作動抵抗が上昇する。そこで、ボールネジ機構27の温度(特に、ボールネジ30、ナット311の温度)、駆動電流、振動の少なくとも一つを計測することによって、電動アクチュエータ23A,23Bが使用限界に達する前の適切なタイミングで、使用していた電動アクチュエータ23A,23Bをレバー部材14への接続から解除し、メンテナンスを施すことができる。また、作動サイクル数または稼働時間を監視して制御を行うことで、定期的に電動アクチュエータ23A,23Bを切り替え、レバー部材14への接続が解除された電動アクチュエータ23A,23Bにメンテナンスを施す。このようにして、電動アクチュエータ23A,23Bのメンテナンスを完全自動化して実施することができる。
その結果、適切なタイミングでメンテナンスを施すことによって、電動アクチュエータ23A,23Bの耐久性を高めることができる。
【0065】
さらに、レバー部材14への接続から解除された、電動アクチュエータ23A,23Bに対し、自動的にメンテナンス用の動作を実行させることができる。メンテナンス用の動作としては、例えば、電動アクチュエータ23A,23Bの通常運転時の直線運動のストロークよりも、より大きなストロークで電動アクチュエータ23A,23Bを作動させることができる。これにより、ボールネジ30においてグリースアップを図ることができる。
【0066】
また、カップリングハウジング320には、アクチュエータ側ロッド314に沿って延びるセンサロッド323が設けられており、検出子324の位置を検出することによって、アクチュエータ側ロッド314がカップリングハウジング320に接続された状態にあるか否かを検出することができる。これにより、アクチュエータ側ロッド314がカップリングハウジング320に正しく接続されている場合のみ、電動アクチュエータ23を作動させて調整弁13を駆動させることができる。その結果、アクチュエータ側ロッド314がカップリングハウジング320に正しく接続されていない状態では、電動アクチュエータ23を作動できないようにすることができる。
【0067】
さらに、ボールネジ30と、ナット311との間において、互いに隣接するボール330,330の間に、リテーナ331を設けるようにしたことで、互いに隣接するボール330,330間の摩擦が低減し、作動時の発熱を抑えることが可能となっている。これにより、電動アクチュエータ23A,23Bの耐久性を高めることができる。
【0068】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、接続切替部38の一例としてカップリング機構32を例示したが、同様の機能を果たすことができるのであれば、上記構成に限られず他のいかなる構成としてもよい。
また、電動アクチュエータ23は、二組に限られるものでは無い。例えば、三組以上の電動アクチュエータを設けるようにしてもよい。
さらに、ボールネジ機構27が、互いに隣接するボール330,330の間にリテーナ331を備える場合について説明したが、リテーナ331を備えていないボールネジ機構27を用いても良い。
また、ボールネジ機構27に代えて、ローラネジ機構等、他の機構を採用してもよい。