特許第6222607号(P6222607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222607肉産業およびその他の食品産業から生じる副産物を保存する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222607
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】肉産業およびその他の食品産業から生じる副産物を保存する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3463 20060101AFI20171023BHJP
   A23L 3/358 20060101ALI20171023BHJP
   A23L 3/3472 20060101ALI20171023BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A23L3/3463
   A23L3/358
   A23L3/3472
   B09B3/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-522124(P2014-522124)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公表番号】特表2014-521328(P2014-521328A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】ES2012070568
(87)【国際公開番号】WO2013014320
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】P201131274
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】ES
(31)【優先権主張番号】P201230284
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】514022305
【氏名又は名称】ヒジェニツォ テクニカス リユニダス,エス.エル.ユー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】バエザ オルテガ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】エジア フェルナンデス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ ロペス,ミゲル アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】プマリーノ アルヴァレス,ジョセ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ボルゴー,ジェイム
(72)【発明者】
【氏名】グツマン アルコス,ジョセ マリア
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−066492(JP,A)
【文献】 特開2007−196163(JP,A)
【文献】 特開2006−326450(JP,A)
【文献】 特表2008−537732(JP,A)
【文献】 米国特許第03468674(US,A)
【文献】 特表平10−500855(JP,A)
【文献】 国際公開第83/003522(WO,A1)
【文献】 ソ連国特許発明第1337037(SU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00−3/3598
B09B 3/00
DWPI(Thomson Innovation)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉産業およびその他の食品産業からの副産物を保存する方法であって、冷蔵することなく、特に適切な防腐剤を前記副産物に添加することで、前記副産物の腐敗または劣化を劇的に軽減することを目的とする、方法において、
前記副産物を破砕、粉砕または分解することなく、収集用サイロまたは容器の中に前記副産物を投入するたびに、同時に、前記防腐剤に圧力をかけて加圧空気と合わせた混合物を生成して、この混合物によって、前記副産物の各層に前記防腐剤を均一に散布して前記防腐剤の噴霧を実現され、
浸出液の流出は、気密性ホッパーを使用して、前記防腐剤が前記浸出液と一緒に流されて流出するのを防止することで回避され、
前記副産物を関連の貯蔵容器内に投入する動作は、前記気密性ホッパーの高さの上半分に相当する位置にある排水口を基に、気密性を保って実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記気密性ホッパーへの副産物の様々な投入は、一箇所または複数箇所から実施され、その結果、前記副産物全体は、前記気密性ホッパー内で円錐形の構成になり、前記噴霧される防腐剤は、前記気密性ホッパーに貯蔵された前記副産物の表面に塗布されて、前記防腐剤を前記副産物に均一に散布できるようになることを特徴とする、請求項1に記載の肉産業およびその他の食品産業からの副産物を保存する方法。
【請求項3】
前記防腐剤の分量計量は、副産物と防腐剤との比率が所定限度内に収まるように、遠隔制御システムを介して実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の肉産業およびその他の食品産業からの副産物を保存する方法。
【請求項4】
前記副産物を破砕、粉砕または分解することなく、前記気密性ホッパーの中に前記副産物を投入する間、適量な前記防腐剤は、前記副産物の表面に混合されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の肉産業およびその他の食品産業からの副産物を保存する方法。
【請求項5】
前記防腐剤の分量計量は、手動で実施しても自動で実施してもよいことを特徴とする、請求項1,2および4のうちいずれか一項に記載の肉産業およびその他の食品産業からの副産物を保存する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚、魚の養殖および園芸などの産業から生じる副産物を保存するために特別に設計された新規な方法に関する。本発明は、様々な防腐剤を塗布することに基づくものであり、本発明の目的は、副産物を事前に粉砕、破砕、切断、分解または分離する必要なく、そのような副産物の腐敗または劣化を回避するまたは劇的に軽減することである。
【0002】
本発明は、肉および魚産業ならびに野菜加工産業の分野、特に肉、魚および野菜の副産物であって、引き続き、例えば肉粉または魚粉、動物性もしくは植物性の油または脂肪の製造などを行う他の産業に使用されるか、あるいはタンパク質または植物性濃縮飲料を生産するのに使用され、直接農場で使用されたり動物飼料工場用に使用されたりすることもある副産物の分野に該当する。
【背景技術】
【0003】
防腐剤の塗布は、ヒトまたは動物が使用する食べ物を保存するために、保存の前または後に利用されてきた。その例には、とりわけ、酢漬けのアンチョビ、なめし皮、またはソーセージなどがある。
【0004】
動物用の飼料に関しては、有機酸および無機酸、塩、精油または植物抽出物を、原材料に使用するか(とりわけ穀物もしくは大豆の飼料工場、または反芻動物用のサイレージの飼料工場で)、あるいは仕上がった飼料に使用する幅広い例がある。
【0005】
魚の副産物の場合、魚の副産物を対象とする魚肉処理場または死魚を対象とする人工ふ化場で、魚のサイレージ化技術が広く使用され、同技術は、副産物を物理的に粉砕して酸を添加し、できあがったサイレージを数ヶ月も保存して、粘性があるように見えるpH4.0未満のペーストにするというものである。
【0006】
副産物の場合、副産物を破砕、粉砕、切断、ほぐす、または分離しようとする物理的な処理が事前または事後にない状態での防腐剤の使用に関する公開文献は見つからず、ペーストを製造してサイレージを得るために、食肉産業または青果産業から出る副産物に塗布される同じ処理についての文献も見つかっていない。
【0007】
副産物は、一般に、生産されたままの状態で冷蔵することなく貯蔵されるため、腐敗または劣化が加速し、これが元の場所での貯蔵過程でも輸送過程でも起こる。
【0008】
サイレージの場合、防腐剤の使用が素早く効果を発揮するように、副産物を事前に粉砕する必要があり、これには、投資の視点からも現実の実務の視点からも経済的にマイナスの影響が生じる。
【0009】
通常、貯蔵も輸送も容器に入れて行われるが、容器内では浸出液の流出がかなりあるため、その流出を防止しなければ、防腐剤(防腐剤が添加されていると仮定)も一緒に流されてしまい、その結果、防腐剤の有効性が失われることになる。
【0010】
当然ながら、貯蔵過程および輸送過程での副産物の劣化度が大きいほど、最終的にその状態から得られる粉末、油などの品質はますます低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明により提供される方法は、前述の欠点を満足のいく形で解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのようにするために、さらに詳細には、本発明の方法は、副産物が生じたままの状態、すなわち破砕、粉砕などを行わない状態で、副産物を投入するたびに、防腐剤を副産物の容器に塗布または添加することを提供するものである。
【0013】
また、本発明の方法によれば、このような防腐剤の塗布を噴霧形態で実行するようにし、防腐剤と加圧空気との混合物を生成して、この混合物によって防腐剤を最適な形で均一に散布して副産物に到達するようにすることが予見される。
【0014】
当然ながら、副産物を該当するタンクまたは容器の中に投入する際は毎回、制御手段を用いて防腐剤の分量を正確に計量しなければならず、副産物/防腐剤の比率が所定限度内に収まるようにする。
【0015】
最後に、本発明のもう1つの特徴は、副産物を関連の貯蔵容器内に設置する動作が同じ観点から実施されるという点であり、したがって、副産物全体は全体的に円錐形の構成になり、ホッパーに貯蔵されている副産物の表面に防腐剤を噴霧して、前述の均質な散布をさらに促進する。
【0016】
前記容器は、実際に冷蔵していないサイロまたはタンク内で作製できるものであり、浸出液の流出およびそれに伴う防腐剤の同様の流出または無駄を回避するために、気密性でなければならない。
【0017】
本方法の代替案では、防腐剤の添加は、副産物を収集容器の中に投入する過程で実施し、副産物を投入するたびにこのような混合を実行しないことを想定する。
【0018】
防腐剤を塗布する際の噴霧段階を削除できるとともに、水流散布、または噴霧よりも安価なその他の任意の適切なシステムによって、この塗布を実行できることも検討できる。
【0019】
もう1つの変形例によれば、副産物への防腐剤の塗布は、副産物の表面に実施するか、あるいは関連の容器またはサイロ内にある副産物の積層物に形成された各層に実施することができる。
【0020】
本方法を経済的に改善するために、防腐剤を塗布する副産物のサイロまたは容器を気密性にシールせずに実行してもよい。
【0021】
最後に、防腐剤の塗布およびその適切な分量計量は、遠隔制御システムまたは手動のいずれかで区別なく実施でき、したがって、手動の場合は設備が著しく簡易化されるため、コスト削減になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
防腐剤には次のものを使用してよい:有機酸(ギ酸、プロピオン酸、酢酸、乳酸、酪酸、リグノスルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、フミン酸、クエン酸、吉草酸、エナンチル酸、エラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸など)、有機酸塩(ギ酸アンモニウム、ギ酸カルシウム、二ギ酸カリウム、ギ酸カリウム、プロピオン酸アンモニウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、リグノスルホン酸塩、酪酸、酢酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、リグノスルホン酸、フミン酸ナトリウム、フミン酸カリウム、クエン酸、吉草酸、エナンチル酸、エラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸など)、無機酸(リン酸、塩酸、硫酸、硝酸など)、抗結合剤、界面活性剤、リグニン誘導体、精油(カルバクロール、チモール、シンナムアルデヒドなど)、植物抽出物および/または香辛料(ローズマリー、オレガノなど)を様々に組み合わせたもの。
【0023】
これらの物質は、次の様々なシステムを通して微生物に対して一般的な防腐効果を有する。それは、微生物の内部に入り込む、微生物の壁を脆弱にする、微生物に不向きなpHまたは内部環境もしくは外部環境を生み出す、などである。したがって、前述の産業がその工場自体で生産した副産物に、発生後できる限り早くこれらの物質を塗布することで、副産物の劣化を大幅に低減することが可能になる。
【0024】
肉、魚、魚の養殖または園芸の産業における技術工程では、解体処理に伴う廃棄物が、冷蔵していないサイロまたはタンク内で終日蓄積されている。動物の解体処理、および魚または野菜の加工に続く数多くの劣化プロセスが、副産物の品質の重大な損失を招き始めており、したがって、副産物の品質が低下するほど、そこから生まれる肉粉または魚粉、動物性もしくは植物性の油または脂肪、またはタンパク質濃縮物もしくは植物派生物の品質はますます低下する。
【0025】
前述の様々な産業で稼働日中に保管用のサイロまたはホッパー内で副産物に様々な防腐剤を塗布することで、pH低下および/または媒体保存を実現して、保管時間中だけでなくその後の加工工場への輸送中も、発生した副産物を保存することが可能になる。この塗布は、副産物が保持ホッパーの中に落下する際に防腐剤を塗布する噴射システムによって、または単純に防腐剤を希釈する溶液を作り、処理する副産物を水中に落とすようにしてこの溶液に落下させることによって(溶液は部分的にまたは完全に副産物を包囲する)達成できる。このシステムは、事前または事後の破砕、またはその他任意の同様の物理的処理を必要としない上に、製品または溶液が副産物に直接塗布される。
【0026】
上記に考察したように、有機酸、無機酸、結合剤、リグニン誘導体、精油、植物抽出物および/または香辛料の混合物を、保持ホッパー内で塗布する必要があるシステムを使用して、肉、魚、動物性もしくは植物性の油または脂肪からできた副産物に塗布する。このシステムは、ホッパーの中に落下する肉の副産物および上記に列挙したその他のものに、前述の製品を周期的に添加する。保持ホッパー内に堆積する副産物の表面に対して製品が塗布されるように誘導する。
【0027】
副産物がホッパー内に堆積するにつれて、徐々に浸出液が発生し、これが添加された防腐剤と混ざる。多くの場合、保持ホッパーは、通常このような液体を除去して、とりわけ輸送する副産物の重量を軽減し、続いて、肉粉、魚粉、植物の副産物など、および油製品またはグリース製品の製造時に水分を除去するのに使われるエネルギー量を低減する。
【0028】
本発明によれば、塗布された製品の多くも失われるため、浸出液を除去しない方がよい。したがって、保管時間の大部分ではその行為を排除する。防腐剤を用いた処理はいずれの場合でも同じであるにもかかわらず、浸出液の流出を回避することと、ほとんどの浸出物が除去されている肉粉工場に副産物を送ることとの相違点は明らかであることがわかる。