特許第6222611号(P6222611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222611デジタル音声情報記録媒体、プログラムおよび音響再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6222611
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】デジタル音声情報記録媒体、プログラムおよび音響再生装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/06 20060101AFI20171023BHJP
   G09B 5/04 20060101ALI20171023BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G09B19/06
   G09B5/04
   G10K15/04 302F
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-203921(P2016-203921)
(22)【出願日】2016年9月28日
【審査請求日】2016年11月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503166713
【氏名又は名称】関口 博司
(72)【発明者】
【氏名】関口 博司
【審査官】 宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−323104(JP,A)
【文献】 特開2001−056636(JP,A)
【文献】 特開2011−085641(JP,A)
【文献】 特開2003−307997(JP,A)
【文献】 特開2015−022045(JP,A)
【文献】 特開2007−133052(JP,A)
【文献】 特開平06−274099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 5/00− 5/14,19/06
G10L 13/00,19/00
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより読み取り可能なデジタル音声情報記録媒体にあらかじめ記録されているデジタル音声情報再生するための制御手順を前記コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記デジタル音声情報記録媒体は、前記コンピュータの音響インターフェースを介して再生可能な前記デジタル音声情報と、前記デジタル音声情報に対する前記コンピュータの再生動作を制御するための制御情報と、が少なくとも記録され、
前記デジタル音声情報は、1以上のセンテンス相当デジタル音声情報で構成されるとともに、前記センテンス相当デジタル音声情報それぞれが、前記コンピュータの再生動作の一単位となるチャンク相当デジタル音声情報を少なくとも1つ有することで構成され、かつ、
前記制御情報は、前記チャンク相当デジタル音声情報それぞれについて、当該チャンク相当デジタル音声情報の、前記デジタル音声情報内における始点位置および終点位置を示す第1位置情報と、当該チャンク相当デジタル音声情報が属しているセンテンス相当デジタル音声情報の、前記デジタル音声情報内における始点位置および終点位置を示す第2位置情報と、当該チャンク相当デジタル音声情報の再生終了時点から所定の再生一時停止時間の経過後の前記コンピュータによる再生動作の内容を指示するための属性と、を少なくとも含んでおり、
前記制御手順は、
前記チャンク相当デジタル音声情報の何れかを前記コンピュータに再生させた後、次チャンク相当デジタル音声情報を再生させる前に挿入する前記再生一時停止時間を前記コンピュータのメモリに記憶させる第1の処理手順と、
前記デジタル音声情報の中から1つのチャンク相当デジタル音声情報を、前記制御情報に含まれている前記第1位置情報により与えられる始点位置から終点位置まで前記コンピュータに再生させた後、前記コンピュータの再生動作を停止させる第2の処理手順と、
前記コンピュータが前記第2の処理手順を実行し終えるごとに実行される第3の処理手順であって、前記コンピュータの再生動作を停止したままで再生停止時間を計測しながら、前記制御情報内の、前記第2の処理手順で前記コンピュータに再生されたチャンク相当デジタル音声情報に対応する前記属性を確認する第3の処理手順と、
前記第2の処理手順で前記コンピュータに再生させたチャンク相当デジタル音声情報が属しているセンテンス相当デジタル音声情報を、前記再生一時停止時間を挿入することなく、前記制御情報に含まれている前記第2位置情報により与えられる始点位置から終点位置まで前記コンピュータに連続再生させる第4の処理手順と、
を備え、
前記第3の処理手順は、計測される前記再生停止時間が前記コンピュータのメモリに記録された前記再生一時停止時間を経過した時点で、前記第2の処理手順で前記コンピュータに再生されたチャンク相当デジタル音声情報の前記属性に従って、前記第2の処理手順で前記コンピュータに再生させたチャンク相当デジタル音声情報に続く次チャンク相当デジタル音声情報を対象にして前記第2の処理手順に戻るか、または、前記第4の処理手順に進むかを判断する処理手順を更に含むことを特徴とする
プログラム。
【請求項2】
前記制御手順は、前記第2の処理手順乃至前記第4の処理手順の前記コンピュータに実行させている期間に、前記センテンス相当デジタル音声情報の何れかの再生指令を前記コンピュータの外部から受け取った時には再生指令の対象になったセンテンス相当音声情報を対象にして前記第4の処理手順を始めから前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項に記載のプログラム。
【請求項3】
前記制御手順は、前記第4の処理手順に先立ち、正常範囲の聴覚を持つ人間が聴き取れる音を発する処理手順をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
請求項乃至請求項の何れか一項に記載されたプログラムが収納されたコンピュータ読み取り可能な報記録媒体。
【請求項5】
請求項乃至請求項の何れか一項に記載されたプログラムがプログラム記憶用メモリに収納され、当該プログラムの制御の下で前記デジタル音声情報記録媒体に記録されているデジタル音声情報を再生する音響再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外国語のリスニングの学習用として使われるデジタル音声情報記録媒体およびアプリケーション・プログラムであって、パーソナル・コンピュータやプログラマブル端末に内蔵されたマイクロコンピュータの制御下で当該デジタル音声情報を音声に再生させるプログラムに関するものである。尚、本発明で扱う音声情報は総てデジタル音声情報故、ここから本明細書の中ではデジタルという単語を省略し単に音声情報と記す。
【背景技術】
【0002】
音楽の記録再生を主目的としたレコードが実用化された時代から、外国語のリスニング学習用の音声教材を収納して利用するものが現れ、音声情報記録媒体や再生機器の発達に応じ語学学習用の新しいプレーヤが次々と現れてきた。本発明の背景技術は、スマートフォンの様なプログラマブル通信端末やパーソナル・コンピュータ或いはプログラムをROMに埋め込んで動作させるプレーヤにインストールされて使用されるプログラムに関する技術で、特にデジタル音声情報を再生する為のプログラムに関する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許2581700
【特許文献2】日本国特許2983194
【特許文献3】WO2009/025155
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】湯舟英一(東洋大学)著「英文速読におけるチャンクとワーキングメモリの役割」Dialogue 2011,Vol.9 pp.1−20 ISN 1349−5135(http://talk−waseda.net/dialogue/no09_2010/2010dialogue09_k1.pdf)
【非特許文献2】田中茂範著「これなら話せる★チャンク英会話」コスモピア(株)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
日本には「聞き流しているだけで英語が話せるようになる」とか「聞いているだけである日突然英語が話せるようになった」というような宣伝が溢れている。確かに、聞いているだけでも多くを聞けば少しは耳が慣れ、英語で道を教えられるとか、英語で買い物ができる程度で良ければ、役立つと言えるだろう。その程度のレベルでも満足する人が多く居るのも事実である。
【0006】
しかし、その程度では、英米人とのビジネス上の交渉や国際会議で英語で議論出来るレベルとは言えない。日本では、博士号を取得したような頭が良い人達でも、長いこと英語を勉強したのに、英米人等が喋る英語を聴き取ることに苦労している人が非常に多い。例えば、学会などで論文を発表する時は、事前に喋り方を練習してから檀上に立つので、発表は問題なく出来る。しかし、発表が終わった後に、会場から質問が出た時、「聴き取れなくて困った。」という人が非常に多い。これらの人達は、「聞いているだけで・・・」式の教材の学習で達するレベルには既に達しているのである。しかし、その程度では、ビジネス・マンや研究者の仕事の場面で要求される聴き取り能力になっていないのだ。
【0007】
そもそも日本人だけが、何故、これほどまでに英会話の習得に苦労するのだろう。それには大きく二つの理由があることが知られている。即ち、日本語と英語に含まれている音素の数と質の違い、および言語構造、特に語順の違いである。ここではそれらの点を詳しく述べる場ではないので省略するが、これらの日本人のハンディキャップを克服して効率よく英語の聴き取り能力を向上させる学習方法は古くから研究されてきた。しかし未だ決定的な学習方法は見つかっていない。
【0008】
数在る英語の学習方法の中でもチャンクに着目した学習方法が優れていると古くから認められていて、論文や書籍を通じて推奨されている。その例が前記の非特許文献だ。これらの外にも、チャンクに着目した学習書がたくさん出版されていて、Googleで「英語」「チャンク」と検索すると非常に多くの記事や書籍等がヒットする。
【0009】
しかし、市場にあるものを見てみると、チャクに注目した教材は、「読み方」「書き方」「喋り方」に偏っている。つまり、「英語の聴き取り能力の向上」に焦点を当てたものとしては英語の音声をチャクを区切って、チャクとチャンクの間に固定長の無音区間を挿入して録音した教材が有るだけで、リスナーが聴きたい内容の音声教材をチャンクに焦点を当てて再生できる手段が無かった。
【0010】
しかし、日本人の英語習得上の最大のハンデキャップは、「聴き取り能力」だ。それなのに、なぜ「聴き取り能力の向上」を目的とした学習にチャンクを生かす方法が無いのか。それには理由がある。つまり、聴き取りの学習、特に自学自習をしようとすると、どうしても録音された音声情報を再生するプレーヤが必要になり、それにチャンクに着目して効率的に学習できる機能が付いていることが必要だ。ところが、個人が手軽に使えるCDプレーヤやカセット・テープ・プレーヤ用の教材としては、あるいはインターネットを介してスマートフォン等にダウンロードして使うプレーヤ用の教材としては、チャンクとチャンクの間に固定長の無音部を挿入した教材しか無い。理由は、プレーヤ側にチャンクとセンテンスの関係に着目した機能が付いていないからだ。これが課題であった。
【0011】
尚、センテンスとチャンクという用語は、言語学分野で使われている学術用語であるが、それらの学術用語を本発明を説明する時に使われる工学分野に適した用語にすると、センテンス相当デジタル音声情報またはセンテンス対応デジタル音声情報となり、そしてチャンクの方はチャンク相当デジタル音声情報またはチャンク対応デジタル音声情報となる。しかし、これらは文字数が多く、頻繁に出てくると煩わしくなる。そこで、ここで定義しておけば混乱や誤解を生じることはないので、工学分野の用語のセンテンス相当デジタル音声情報をセンテンスと定義し、チャンク相当デジタル音声情報をチャンクと定義する。即ち、本明細書のここから先では、センテンスとはセンテンス相当デジタル音声情報のことであり、チャンクとはチャンク相当デジタル音声情報のことである。
【0012】
普通の英語の音声情報をチャンクを区切って聴く為には、まずその英語の音声情報の中でチャンクを見つけ、チャンクの位置を記録しておく必要がある。チャンクを人間の手を出来るだけ煩わせずに自動的に見つける方法については本発明の発明者が過去に発明し開発に挑戦したものがある。前記特許文献3で開示したWO2009/025155で公開されている。この中で使っている用語の音声塊はチャンクのことだ。しかし、この技術は当時の特許出願者やその協力者達の財政的および多忙さの事情により試作機で終り、その先に進めなかった。
【0013】
しかし、本発明においては、チャンクを自動的に見つけることは必要条件ではない。音声情報再生装置により音声情報記録媒体から発せられた音声を人間が聴きながらチャンクを見つけ、その位置を記録していく方法でも良い。つまり、チャンクの見つけ方は、本発明と別の問題であり、無関係である。
【0014】
但し、本発明を産業上で利用するには、音声情報の中のチャンクを効率的に見つけ、本発明のプログラムで再生きる形式にする必要がある。発明者は、前記特許文献3で紹介した技術を使って既に半自動で効率的にチャンクの位置を見つけるオーサリング・システムも併行して開発している。
【0015】
発明者は、まず、チャンクとセンテンスの関係を使って容易に且つ効率的にリスニング学習をするにはどうすれば良いかを検討してみた。その結果、チャンクを聴き取れるようにするには、一つのチャンクの再生が終わったら、そこで再生を一旦停止して、聴き取れたと確認できたら、リスナーは次のチャンクの再生に進むことが必要だと容易に判った。この機能を第一の必要機能と呼ぶことにする。次のチャンクに進む前に、同じチャンクを繰り返し再生するリピート再生機能も有効である。第一の必要機能もリピート再生機能も周知技術を使って実現できるので、本発明の範囲には含まれていない。
【0016】
また、一つのチャンクの再生が終わったら、再生一時停止時間を挿入して、その停止時間が経過したら、リスナーが再生の指示を出さなくても自動的に次のチャンクを再生することも必要である。なぜなら両手がふさがった状態でリスニング学習をしようとすると、いちいち再生指示を出さねばならないことは不便だからだ。この機能を第二の必要機能と呼ぶことにする。この第二の必要機能も、周知技術を使って容易に実現できるので、本発明の範囲には含まれていない。
【0017】
しかし、実験をして検討してみて、これらだけでは不十分であると判った。一つは、再生一時停止時間が一定では、レベルの違う学習者にきめ細かく対応できない。学習者のレベルに合わせて再生一時停止時間の長さを設定できなければならない。これを第三の必要機能と呼ぶ。
【0018】
もう一つは、チャンクだけを一つ一つ聴き取れるようになったとしても、センテンスをチャンクとチャンクの間に再生一時停止時間を挿入せずに普通に再生しても聴き取れるようにならなければ、1つのセンテンスについてリスニング学習が完了したとは言えない。つまり、1つのセンテンスに属する複数のチャンクを単独で聴けるようになったあと、ワンタッチで容易に或いは自動的に当該センテンスを再生一時停止時間を挿入せずに普通に再生できなかればならない。これを第四の必要機能と呼ぶ。
【0019】
つまり、本発明が解決しようとしている課題は、音声情報記録媒体およびそれを再生処理させる為のプログラムにおいて、前記第三の必要機能と前記第四の必要機能の両方を具備したものが無いことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記第三の必要機能と前記第四の必要機能を満たしながら英語の音声情報を再生する為の音声情報記録媒体および当該音声情報記録媒体に収納された音声情報を再生させる時に少なくとも前記第三の必要機能と前記第四の必要機能を満たしながら再生する処理手順をコンピュータに実行させる為のプログラムが課題を解決するための手段となる。従って、その手段の中身を説明する為には、当該プログラムをプログラマブル端末やパーソナル・コンピュータにインストールして動作するプレーヤとしての機能で説明することになる。
【0021】
まず、第三および第四の必要機能を明確にする為にそれらのイメージを図1に図解する。図1A図1Bの横に長い太い実線1が両方とも同じ音声情報を表している。最初のセンテンス2は三個のチャンクから、2番目のセンテンス4は四個のチャンクから出来ている。図1Aの方は、普通の再生方式で再生する時のイメージ図で、音声情報としてはチャンクもセンテンスも、間に区切りや隙間はなく、続けて滑らかに普通に再生しているイメージ図である。最初のセンテンス2と2番目のセンテンス4の間やセンテンス4の終わりにある縦に短い棒3と5はセンテンスの区切りを示す為に付けてあるだけで音声情報には関係ない。
【0022】
図1Bの方は、各チャンクの終わりに、前記プレーヤの使用者が予め設定した停止時間6を挿入しながら再生するイメージ図である。第1のチャンクの終点B1と第2のチャンクの始点A2の位置を9に示している。始点はAで始まり終点はBで始まるとしてある。次のチャンクについても同じである。また、それぞれのチャンクには属性10がついている。属性10についての説明は、段落番号0028および段落番号0036以降に記す。
【0023】
また、図1Bは、後述する自動センテンス再生モードが選ばれている場合である。つまり、1つのチャンクの再生が終わった時に当該チャンクがセンテンスの最後のチャンクの場合に限り、自動的にそのチャンクが属するセンテンスの先頭に飛ぶことを点線7と、点線8で示している。即ち、第1のセンテンス2の時はチャンク(3)の終わりのB3の位置からチャンク(1)の先頭A1の位置つまりセンテンス2の先頭に飛び、2番目のセンテンス4の時はチャンク(7)の終わりB7の位置からチャンク(4)の先頭A4の位置、即ちセンテンス4の先頭に飛んで、そこからそれぞれのセンテンスの最後まで再生一時停止時間を挿入せずに続けて滑らかに再生する。
【0024】
また、前記第三の必要機能を実現する為には、本プログラムをインストールし実現したソフト的プレーヤの使用者が自分のレベルに応じた再生一時停止時間の長さを外部から設定する処理手順が必要になる。ただ、数値を入力することは通常の一般的なプログラムでも行われている手段であり、ここで改めて説明するまでもないので、数値入力の手順は省略する。但し、課題を解決する手段として大事なのは、使用者が自分のレベルに応じた再生一時停止時間の長さを設定できることだ。
【0025】
また、再生一時停止時間を設定する手段としては、もう一つの手段がある。即ち、停止する前のチャンクの長さの関数として導き出される長さの停止時間を自動的に設定することでも良い。つまり、英語の聴き取り能力が未熟な者にとっては、長いチャンクを聴き取る為には、再生一時停止時間が長い方がより理解し易くなるからである。
【0026】
本プログラムで実現するプレーヤの画面には、普通の音楽用プレーヤのように、再生スタート、再生ストップ、リピートなどのソフト的は操作ボタンが表示されるが、それらは本発明の範囲外なので、ここでは説明を省略する。但し、もう一つ本発明に必須の操作ボタンがある。それは、前記第四の必要機能であるセンテンスの再生を任意の時に指示可能にする操作ボタン例えば名称をセンテンス・ボタンとするボタンである。
【0027】
そして、前記の少なくとも4種の必要機能を実現しつつ再生する為の音声情報は、ヘッダーのほかに第1の領域と第2の領域を有している。第1の領域には、音声情報そのものが収納されている。そして、第2の領域には、第1の領域に収納されている音声情報の中の各チャンクに対応する制御情報が含まれている。
【0028】
各チャンクに対応する各制御情報には、当該チャンクの位置情報と、当該チャンクが属するセンテンスの位置情報、および、それぞれのチャンクが当該チャンクが属するセンテンスの中の最後のチャンクか否かを示す属性が含まれている。また、これら位置情報は、それぞれの始点と終点で表される場合と、始点のみで表される場合がある。始点のみで表わされていても、その一つ前の位置が一つ前のチャンクやセンテンスの終点であるから、プログラムの実行時に計算で求められる。同様の理由で位置情報は終点のみであってもよく、また前記各必要機能を実行する処理手順の実行時に各センテンスの中の最後のチャンクの位置を計算により求められる方式なら何でも良い。
【0029】
前記第1の領域の中に収納されている音声情報は、センテンスやチャンクが仮想的に区画になっていることで良く、音声情報自身に区画の切れ目は無くても良い、又有っても良い。但し、各センテンスおよび各チャンクの位置情報が前記第2の領域の中の各チャンクに対応する各制御情報に収納されていることが必要だ。
【0030】
また、前記制御情報が収納されている前記第2の領域は、前記第1の領域の隣や離れた別の位置に配置されるだけでなく、第1の領域の中に分散して配置されていても良い。
【0031】
本発明のプログラムの中には、コンピュータの制御下にあるメモリに収納された音声情報を再生する処理手順を制御する為の処理手順制御部を有している。そして、前記処理手順制御部には、再生するチャンクの順番を決める再生順序設定兼保持手段と、一つのチャンクを再生した後に再生を一時停止する時間を予め設定し保持しておく再生一時停止時間設定記憶手段が具備されている。
【0032】
また操作ボタンは、普通のプレーヤに具備されている操作ボタンは当然具備されるが、それらは本発明と直接関係ない為、それらの説明は省略する。また更に、前記処理手順制御部には、前記使用者が前記チャンクの再生指令を出す為の第1の操作ボタンと、使用者が任意の時に前記センテンスを再生する指示を出す為の第2の操作ボタン、並びに自動センテンス再生モード・非自動センテンス再生モードのどちらかを選択する第3の操作ボタンの少なくとも3つのボタンが具備されている。
【0033】
また、前記処理手順制御部は、プレーヤとしての全機能を制御するのでその機能は多岐にわたる。しかし、ここでは本発明の範囲に係る下記の6種の処理手順について説明する。
【0034】
まず、第1の処理手順は、再生一時停止時間設定記憶手段に前記使用者が停止して欲しい時間を入力する処理手順である。この処理手順は、プログラマバブル端末やパーソナル・コンピュータに標準的に備わっている数値入力機能を使用できる。まず、画面を設定画面に切り替えて、メニューより再生一時停止時間入力を選択し、現れた入力窓に望みの時間数を入力して、設定のアイコンをタップすることで、再生一時停止時間設定記憶手段にその時間が入力される。
【0035】
まず、前記第1の操作ボタンによりチャンクの再生指令が前記処理手順制御部に入力された時、第2の処理手順が実行される。即ち処理手順制御部は前記再生順序設定兼保持手段で設定されている順番のチャンクに対応する制御情報領域内のチャンクの始点の位置情報が示す位置から再生を開始させ、当該チャンクの終点の位置情報が示す位置で再生を停止させてから、第3の処理手順に進む。
【0036】
第3の処理手順では、第2の処理手順で再生を停止させたままにして前記再生一時停止時間設定記憶手段に記憶されている時間をカウントして監視し、記憶されている時間が経過した時、前記第3の操作ボタンで予め自動センテンス再生モードが選択されている場合、当該チャンクが属するセンテンスの最後のチャンクかどうかを前記制御情報の中の属性をチェックして、当該属性が最後のチャンクを示している場合で且つ自動センテンス再生モードが選択されている場合、第4の処理手順に進む。もし自動センテンス再生モードが選択されていない場合または当該属性が最後のチャンクを示していない場合は、前記再生順序設定兼保持手段で設定されている順番に1を加算して1つ先の番号に更新してから第2の処理手順に戻る。
【0037】
第4の処理手順では、その前段のその又前段の第2の処理手順で再生していたチャンクに対応する前記チャンク対応制御情報の中で示されるセンテンスの始点に飛び、そこから当該センテンスを当該センテンスの終点まで再生し、前記再生順序設定兼保持手段で設定されている順番に1を加算して1つ先の番号に更新してから第2の処理手順に戻る。これにより、前記使用者はセンテンスを再生する為に自分で第2の操作ボタンをタップしなくても、聴いていたチャンクに対応するセンテンスの先頭から自動的に聴くことができる。
【0038】
第5の処理手順は、前記処理手順制御部が第2の処理手順の下でチャンクを再生している最中に、前記第2の操作ボタンが前記使用者によりタップされた時の処理手順である。この場合、対応するセンテンスの再生指令が前記処理手順制御部に入力される。その後、前記処理手順制御部は直ちに前記再生順序設定兼保持手段で保持されている順番が示す当該再生中のチャンクに対応した前記制御情報の中のセンテンスの始点から当該センテンスの再生を開始させ、当該センテンスの終点で再生を停止させ、第2の処理手順に戻る。
【0039】
第6の処理手順は、前記処理手順制御部が第3の処理手順の下で再生を停止している間に前記第2の操作ボタンがタップされた場合の処理である。即ち、前記処理手順制御部は当該第3の処理手順の前段の第2の処理手順で再生していたチャンクの順番を前記再生順序設定兼保持手段に保持されている情報から割り出し、順番が割り出されたチャンクに属する前記制御情報の中のセンテンスの始点から当該センテンスの再生を開始させ、当該センテンスの終点で再生を停止させ、第3の処理手順に戻る。
【0040】
上記のように少なくとも6種類の処理手順が具備されていることよって自動的にチャンクとチャンクの間に再生一時停止時間を挿入しながら再生させたり、そのチャクが属するセンテンスを自動的に始めから終わりまで再生させることが出来、且つ前記使用者の意志によりその場から瞬時にセンテンスを始めから終わりまで再生させることが出来る。
【0041】
また、前記第3の処理手順で使用する再生一時停止時間設定記憶手段に記憶させる時間をTpとして、それを一定時間ではなく、停止する直前に再生しいた、即ち第2の処理手順で再生していたチャンクの再生時間をTsとして、TpをTsの関数Tp=F(Ts)としてもよい。例えば、Tp=1.1×Ts+0.5秒等としてもよい。
【0042】
尚、前記位置情報は、音声情報の中で予め決めらている基点からのバイト数等のデジタル量に基づく位置情報の場合と、音声情報の中で予め決めらている基点からの再生時の時間数に基づく位置情報の場合があり、どちらでも良い。
【0043】
更に使い易くする為に、前記第4の処理手順の先頭にピッという音を発する処理手順を付加する。この音は、可聴周波数の範囲の周波数で、0.01秒以上の時間幅で10dB以上の音量であれば、耳障りでない音であれば、何でも良い。そして、コンピュータに音を発する処理手順を実行させる為の追加のプログラムは当該分野の技術者であれば容易に作れる故、作り方についての説明は省略する。当該機能により、チャンク単位に再生していた時から当該チャンクが属するセンテンスの再生に切り替わることをセンテンスの再生が始まる前に聴覚を通じて明確に知らせる為、前記使用者はチャンクからセンテンスに切り替わることが楽に分かるので、聴く意識をチャンクからセンテンスに切り替えて聴くことが出来る。
【0044】
また、当該音声情報は、上述のように外部のオーサリング・システムで編集されるだけでなく、本プレーヤの中で編集しても良い。但し、本プレーヤがスマートフォンの場合、その中で編集するには、操作し難く重い処理になる為、外部で予め編集しておく方が効率的で現実的というだけである。
【0045】
世の中には、個人が手軽に使える音声情報を再生させるプレーヤとしては、ハードウエアで出来たプレーヤと、スマートフォンなどのプログラマブル端末に音声情報を取り込み、再生するプログラム型プレーヤがある。本発明は主として後者のプログラム型プレーヤを動作させるプログラムについてであるが、プログラマブルでないハードウエア型のプレーヤでもそのプレーヤがマイクロコンピュータで制御されているプレーヤであれば、本発明のプログラムを組み込むことで同じ機能を実現できる。
【0046】
段落番号0020でも述べたが、前記の各種特徴を生かしつつ再生する為に必要な音声記録媒体および当該音声記憶媒体に記録された音声情報を再生する少なくとも前記6種類の処理手順をコンピュータに実行させる為のプログラムが課題を解決するための手段となる。
【発明の効果】
【0047】
前記第一の必要機能と第二の必要機能だけが具備されたプレーヤでもある程度効果はある。それらは周知のことなので説明を省略する。ここでは、本発明の手段が備わっていればこそ新しく実現できる前記第三の必要機能と第四の必要機能が共に備わっている時の効果を記す。
【0048】
英語学習一般に言えることだ、学習者のレベルにピッタリ合ったものでないと、学習者がイライラしてきて、三日坊主に陥ることは、多くの学習者が体験している。従って、一つのチャンクが再生し終わった後の再生一時停止時間が一定では、学習者のレベルに合わせられない。それが、本発明により前記第三の必要機能を満たすことで、学習者のレベルや好みに合せた長さに再生一時停止時間を設定出来るので、リスニング学習の効率が上がる。
【0049】
前記第四の必要機能の方は、センテンスを構成するチャンクの総てが聴き取れたあと、自動的に或いはワンタッチの操作で当該センテンスの先頭から再生一時停止時間を挿入せずに連続して滑らかに再生させられるので、こちらもリスニング学習の効率が上がる。リスニング学習の目的は、チャンクを聴き取れるようにするのではなく、センテンスを聴き取れるようにする為だから。
【0050】
即ち、本発明によれば、前記第三と第四の必要機能が共に実現できるので、リスニング学習の効率を上げる効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明による音声情報再生のイメージ図である。〔図1A〕普通に(停止時間を挿入せずに)再生する時のイメージ図 〔図1B〕停止時間を挿入しながら再生する時のイメージ図である。
図2】本発明のプログラムがインストールされるコンピュータの例示的ハードウェア図である。
図3】本発明のデジタル音声情報再生制御用プログラムの構造を示す概念図である。
図4】第1の処理手順の流図である。
図5】第2の処理手順の流図である。
図6】第3の処理手順の流図である。
図7】第4の処理手順の流図である。
図8】第5の処理手順の流図である。
図9】第6の処理手順の流図である。
図10】本発明のプログラムをプログラマブル端末にインストールし動作させた時に表示される画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明を実施する形態は、本発明のプログラムを、スマート・フォン等のプログラマブム端末やパーソナル・コンピュータのメモリに、或いは非プログラマブルのハードウエア型プレーヤの中のROMにインストールして、本発明の方式の音声情報を再生するプレーヤとして動作させるものである。
【実施例】
【0053】
まず本発明のプログラムがインストールされるコンピュータの例示的ハードウエアを図2に示す。本発明のプログラムおよびデジタル音声情報はネットワーク20から通信インターフェース14を介して、バス15を通じてメモリ13にロードされる。メモリ13はアプリケーション・プログラムを収納する部分のRAM−Pと再生制御情報を含む音声情報を収納するRAM−Sの二つの領域がある。RAMは不揮発性の半導体メモリが一般的である。CPU11がROM12と連係してメモリ13の中のRAM−Pにダウンロードされたアプリケーション・プログラムを実行する。同プログラムが実行されることにより表示インターフェース16を介して、表示部17に操作に必要な情報とボタン(アイコン)が表示される。また、音響インターフェース+アンプ18を介してスピーカまたはイヤホン19から音が発せられる。
【0054】
図3は、本デジタル音声情報再生制御用プログラムの構造と、本発明の方式に基づく音声情報の構造の両方を示す概念図である。本プログラムが実行されることにより実現するプレーヤには、普通の音楽用プレーヤのように、必要な情報と操作に必要なボタン類が表示される。それが表示画面17であり、図2の17と同じものを意味している。その上に本発明に必須のチャンクの再生スタートを指示する第1の操作ボタン34とセンテンスの再生を指示する第2の操作ボタン33、および前記センテンス再生モードの自動再生モードと非自動再生モードを切り替える為の第3の操作ボタン35が表示される。
【0055】
実際のプレーヤにはその外に再生停止ボタンやリピート・ボタン等の複数のボタンが表示されるが、それらは本発明と本質的な関係がないので省略する。
【0056】
そして、図3の中の21は、外部からダウンロードされて図2のメモリ13の中のRAM−S部に収納された再生制御情報を含む音声情報を示している。そして、この中にはヘッダー22、第1の領域23、第2の領域24で構成されている。第1の領域23に収納された音声情報は、センテンスと各センテンスを構成するチャンクで構成されている。ヘッダーには、音声情報のタイトルや著作権者の名称等が収納されているが、ヘッダー22は本発明と直接関係ないので、無くても良い。
【0057】
第2の領域24の中には、各チャンクの始点および終点の位置情報、それと当該チャンクが属するセンテンスの始点および終点の位置情報がチャンク毎に示された制御情報25が収納されている。尚、図3にある制御情報25は二次元の表形式で描かれているが、必ずしも表形式でなくても良く、それぞれの対応関係が規定されたものであれば良い。
【0058】
チャンクおよびセンテンスの位置情報は、本発明と別に開発された専用のオーサリング・システム(図示せず)で、もとの音声情報から検出される。また、各センテンスの最後のチャンクに対応した制御情報にはそれが最後のチャンクであることを示す属性が二値の情報、例えば1が最後のチャンクであり、0が最後のチャンクでないことを示している。図1の音声情報のイメージ図の中の属性10にも0と1で示されている。属性も前もって前記のオーサリング・システムで予め検出され収納されている。属性の示し方はこの方法に限らず、プログラムの実行時に各センテンスの最後のチャンクであることが判別できれば別の方法でもよい。
【0059】
前記デジタル処理部26の中には、音声情報を再生する処理手順を制御する処理手順制御部28が備わっている。前記処理手順制御部28は、その内部に再生するチャンクの順番を決める再生順序設定兼保持手段29を有し、また前記チャンクを再生した後に次のチャンクを再生する前に再生を一時停止している時間を設定する再生一時停止時間設定記憶手段30を有している。
【0060】
更に、前記処理手順制御部28は、操作ボタン類制御手段32を有している。そして、操作ボタン類制御手段32は、表示インターフェース16を介して前記使用者がチャンクの再生指令を出す第1の操作ボタン34と前記センテンスを再生する為の指示を出す第2の操作ボタン33、およびセンテンスの前記の再生モードを選択する第3の操作ボタン35の少なくとも3つの操作ボタンに繋がっていて、それぞれの指令が前記表示インターフェース16と前記操作ボタン類制御手段32を介して前記処理手順制御部28に入力される。
【0061】
図3の25には制御情報の中の一例の中の一部が示されている。その中に1から7の7個のチャンクが見えている。1番から3番のチャンクが1番目のセンテンスに属し、また4番から7番のチャンクが2番目のセンテンスに含まれていることが分かる。これは図1のセンテンスとチャンクの関係に合せたものである。由って、1番目のセンテンスの始点の位置情報はチャンクの1番目の始点の位置情報A1と同じで、そのセンテンスの終点の位置情報は最後のチャンクの終点の位置情報と同じB3になる。2番目のセンテンスの始点の位置情報はチャンクの始点の位置情報A4になり、そのセンテンスの終点の位置情報は当該センテンスの4番目のチャンクの終点の位置情報B7となっている。
【0062】
次に、前記処理手順制御部28が処理を指示する第2の処理手順を図3図5を使って説明する。各処理手順の中は複数のステップで出来ている。図の中ではステップの番号を(Smn)のように表記する。mは処理手順の番号で、nは処理手順の中のステップの通し番号である。
【0063】
図4に示す第1の処理手順は、図3の前記再生一時停止時間設定記憶手段30に前記使用者が1つのチャク再生後に一時再生を停止して欲しい希望時間を入力する処理手順である。この処理手順は、プログラマバブル端末やパーソナル・コンピュータに標準的に備わっている数値入力機能を使用できる。その画面に切り替えるのが(S11)である。設定画面に切り替わったら、まず、(S12)でメニューより再生一時停止時間入力を選択し、(S13)で現れた入力窓に望みの時間数を入力して、(S14)でEnterアイコンをタップすることで、前記再生一時停止時間設定記憶手段30に当該希望時間が入力される。
【0064】
図5の(S21)で、図3の前記第1の操作ボタン34によりチャンクの再生指令が前記表示インターフェース16と前記操作ボタン類制御手段32を介して前記処理手順制御部28に入力される。(S22)で当該処理手順制御部28は前記再生順序設定兼保持手段29に保持されている順番を取り出す。(S23)でその順番のチャンクに対応する制御情報領域25内のチャンクの始点の位置情報を取り出す。(S24)で当該位置情報を図3の指示路36を介して再生制御手段27に渡す。(S25)で図3の再生制御手段27が再生を始める。(S26)で(S23)において取り込んだ位置情報の中のチャンクの終点の位置情報に達したかを調べ、未だ達していないNOの場合はそこで待つ。達したら(S27)に進み、そこで前記再生制御手段27に再生を停止させ、(S28)で第3の処理手順に移行する。
【0065】
尚、前記の再生させるという動作は、図3の処理手順制御部28から指示路36を介して再生制御手段27に再生指令を送り、再生制御手段27はインタフェース37を介し、第2の領域24の中の制御情報25から再生させるチャンクの始点の位置情報を取り出し、その始点の位置情報から第1の領域23に収納された音声情報をインターフェース37を介し取り出し、音響インターフェース18(1)を介して音響インターフェース18(2)に伝達し、スピーカまたはイヤフォン19から音として出力する。この機能は通常のプレーヤとほとんど同じなので、以後の説明では省略する。尚、音響インターフェース18(1)(2)およびスピーカまたはイヤフォン19は図2の18と19と同じものを意味している。
【0066】
第3の処理手順を図6を使って説明する。図6の(S31)で、第2の処理手順から移ってきたところから始まる。まず(S32)で図3の再生一時停止時間設定記憶手段30に設定されている時間をカウンター(図示せず)にセットする。次に(S33)でカウンターがカウントを開始する。(S34)でセットした時間に達したかを調べ、達していなかったら、待つ。達していたら(S35)に進み、再生モードをチェックする。もし、非自動センテンス再生モードの場合、(S38)に進み、前記再生順序設定兼記憶手段29の中の内容に1を足し、新しいチャンクの番号に更新する。それから、(S39)から図5の第2の処理手順の先頭(S29)に移行する。
【0067】
もし、(S35)で自動センテンス再生モードと判定された場合は、(S36)に進み、当該チャンクの制御情報の中の属性をチェックする。前記属性が0の場合、上記と同じように(S38)および(S39)により図5の第2の処理手順の先頭(S29)に移行する。前記属性が1の場合は、(S37)に進み、図7の第4の処理手順の先頭(S41)に移行する。
【0068】
第4の処理手順を図7を使って説明する。この処理手順は、自動センテンス再生モードの時のものである。即ち、図7の(S42)で再生が停止されたチャンクが属しているセンテンスの先頭の始点位置の情報と終点位置の情報を前記制御情報25から取り出し、始点位置から再生を始める。(S43)で再生点が当該センテンスの終点位置に達したかをチェックし、達していなければ待ち、達していたら、(S44)に進み、再生を停止して、前記再生順序設定兼記憶手段29の中の内容に1を足し、新しいチャンクの番号に更新する。それから、(S45)から図5の第2の処理手順の先頭(S29)に移行する。
【0069】
第5の処理手順を図8を使って説明する。この処理手順は自動センテンス再生モードと非自動センテンス再生モードに共通の処理手順である。図3の前記処理手順制御部28と再生制御手段27の下でチャンクを再生している最中に、前記第2の操作ボタン33によりセンテンスの再生指令が前記表示インターフェース18および作ボタン類制御手段32を介して前記処理手順制御部28に入力された時、図7の(S51)から処理手順が始まる。
【0070】
そのあと図8の(S52)で前記処理手順制御部28は前記再生順序設定兼保持手段29で設定されている再生中のチャンクの順番に基づき、(S53)で再生していたチャンクの再生を停止する。(S54)で当該再生中のチャンクに属する前記制御情報25の中のセンテンスの位置情報をインタフェース37を介して図3の再生制御手段27に取り込む。(S55)で当該位置情報の中のセンテンスの始点位置から当該センテンスの再生を開始する。(S56)で再生位置が前記制御情報の中の終点位置に達したかを調べ、達していなかった場合は待つ。達していたら、(S57)に進み、当該センテンスの終点情報が示す位置で再生を停止させ、第2の処理手順の先頭(S29)に移行する。
【0071】
第6の処理手順を図を使って説明する。これも自動センテンス再生モードと非自動センテンス再生モードに共通の処理手順である。チャンクの再生が停止している間に前記第2の操作ボタン33によりセンテンスの再生指令を前記表示インターフェース16および前記操作ボタン類制御手段32を介して前記処理手順制御部28に入力された場合の流図である。この場合は、図の(S61)から処理が始まる。
【0072】
次に(S62)で前記処理手順制御部28は前記再生順序設定兼保持手段29から再生を停止する直前に再生していたチャンクの順番情報を指示路36を介し前記再生制御手段27に渡す。そして次の(S63)で当該順番情報から前記制御情報25の中のセンテンスの位置情報を前記再生制御手段27に取り込む。(S64)で当該位置情報の中の始点位置から当該センテンスの再生を開始する。(S65)で再生位置が前記制御情報25内に有るセンテンスの終点位置に達したかを調べ、達していなかった場合は待つ。達していたら、(S66)に進み、当該センテンスの終点位置で再生を停止させ、図5の第3の処理手順の先頭(S31)に移行する。
【0073】
本発明のプログラムがプレーヤとして働くようにコンピュータに実行させる処理手順は少なくとも前記の6種の処理手順が必須である。その外にも、音声情報を再生するプレーヤとして動作させる為には、通常のプレーヤと同様の周知の機能を付加することになるが、それらは本発明の範囲と直接関係ないことと、周知のことなので省略する。
【0074】
図10の100に、本発明のプログラムをプログラマブル端末、例えばスマート・フォンにインストールして実行させた時の表示部の例を示す。最上部に3つの再生モード101が並ぶ。3つのうちどれかをタップするとそこが選ばれて、選ばれたことを示すために色が変る。
【0075】
101として示す行の中央のAutoPauseが本発明に当るチャンク単位に再生一時停止時間を挿入しながら再生するモードである。AutoPauseモードにはIとIIの二種類がある。1回目のタップでAutoPauseIになり、2回目のタップでIIになり、更にタップするとIに戻る。Iは前記の非自動センテンス再生モードで、IIが前記の自動センテンス再生モードである。仮に自動センテンス再生モードが選択されていても、操作アイコン部104の行の中のセンテンス再生ボタン(S)がタップされるとその場からその時再生中のチャンクが属するセンテンスの先頭に飛びそこから当該センテンスの終点まで再生し、先ほどのチャンクに戻り又そこからチャンク単位に再生する。
【0076】
表示された画面の上から2行目102には、教材を選ぶコンテンツNo.と、その右側に再生中か停止中かの再生状態を示すアイコンが表示される。図10の例では再生中のRUNが表示されている。また、その右側に再生中のチャンクの番号を示す窓がある。
【0077】
その下側の103には、再生中の英語のセンテンスが文字で表示される。そして、この例では、再生中のチャンクに対応する文字部にアンダーラインが表示される。アンダーラインの代わりに文字の色が変る方法や、文字の背景にハイライトを付ける方法もある。
【0078】
その下側の104には、操作用の6種のボタンが並ぶ。左から、チャンクを1つ戻す左向きの矢印、その右がチャンクを1つ進める右向きの矢印、その右側に再生停止ボタン、再生開始ボタン、センテンス再生ボタン、リピートボタンと続く。その下側が日本語表示部105であり、再生中のセンテンスの日本語訳の文字が表示される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
出願者は、本発明の方式の音声情報の再生制御をコンピュータに実行させるためのプログラムをインターネット等の通信回線を介して無償で配布し、ユーザの手持ちのプログラマブル機器例えばパーソナル・コンピュータやスマート・フォン等にインストールして新機能の付いたプレーヤとして使って貰えるようにする。今までもインターネット上で或いはパソコン上で無償で使えるプレーヤは有った。しかし、それらはどれも音楽用プレーヤを僅かに改造したものだった。例えば、上述した第一の必要機能乃至第二の必要機能を付加した程度のものだった。それらに較べれば、本プラグラムをインストールして実現したプレーヤは格段に使い易く、英語の聴き取り能力の強化に適している。
【0080】
そして、本プレーヤ用の英語音声教材コンテンツはコンテンツ提供者の方針にもよるが有償または無償で配布する。既にCD等で英語の音声教材を沢山保有している出版社と協力し、各種の音声情報コンテンツを配布する予定でいる。
【0081】
この場合、このプレーヤで再生出来る形に編集するのに手間がかかっては高価になってしまうが、前述したように完全自動までには成っていないが効率よく廉価に変換編集するオーサリング・システムも同時に開発しているので、元の音声教材と大きく変わらない価格で配布できる。この価格の問題が産業上で利用する場合の大変重要な問題である。発明者が過去に前記の特許日本国特許2581700に基づくCDプレーヤを開発した時、機能の良さは認められた為にベンチャー・キャピタル5社が投資してくれ、リンガマスター社を設立できたが、結果として失敗した。その理由の一つが音声教材を作るのにコストがかかり過ぎ、教材の種類を増やせなかったからだった。本発明では、その時のものに較べ、各段に廉価に音声情報を変換、編集できる。
【0082】
日本人が創業し日本国内に有る会社でありながら、社内の公用語を英語にする会社が出始めている。今はそういう時代である。その様な会社の中では、社員の英語の聴き取り能力を高める必要がある。由って、産業上の利用可能性は非常に高いといえる。
【0083】
最後に、特許出願の明細書に書くべき内容ではないかもしれないが一言付加する。発明者兼特許出願者は、日米貿易摩擦風が吹き荒れていた1984年に或る米国企業から国際貿易委員会(米国大統領への諮問機関)に言い掛かりに近い理由で訴えられ、ホノルルで2日間にわたるディポジションを受け、その後ワシントンDCの国際貿易委員会に召還され、すべて英語で反論し、勝訴した経験がある。その時の経験から自分のエレクトロニクスおよびコンピュータの知識を使って日本人の英語の聴き取り能力を向上させる方法はないかと考えつづけ、その結果、前記の[特許文献1]日本国特許2581700となる技術を発明した。その技術に基づいて1997年に多くの個人のエンジェル株主および5社のベンチャー・キャピタルから資金を得て、リンガマスター株式会社を創業した。しかし9年後に破綻し約11億円をドブに捨ててしまった。その後も英語音声の処理については何度か挑戦したが、実現には至らなかった。本発明が過去の集大成であり、産業界で利用して貰えると確信している。
【符号の説明】
【0084】
1…イメージ図の中の音声情報を示す直線
2…イメージ図の中の第1のセンテンス
3…イメージ図の中のセンテンスとセンテンスの区切り
6…イメージ図の中の停止時間
10…イメージ図の中の属性
11…本発明のプログラムがインストールされるコンピュータの例示的ハードウェアの 中のCPU
14…同ハードウェアの中の通信インターフェース
16…同ハードウェアの中の表示インターフェース(図2図3に共通)
17…同ハードウェアの中の表示部(図2図3に共通)
18…同ハードウェアの中の音響インターフェース+アンプ(図2図3に共通)
19…同ハードウェアの中のイヤホンまたはスピーカ(図2図3に共通)
20…ネットワーク
23…制御情報を含む音声情報の中の第1の領域
24…制御情報を含む音声情報の中の第2の領域
25…制御情報の内容の例
27…再生制御手段
28…処理手順制御部
29…再生順序設定兼保持手段
30…再生一時停止時間設定記憶手段
31…センテンス再生モード設定保持手段
32…操作ボタン類制御手段
33…センテンスの再生開始を指示する表示部上に表示されたボタン
34…チャンクの再生開始を指示する表示部上に表示されたボタン
35…センテンス再生モードの選択を指示する表示部上に表示されたボタン
100…本発明のプログラムがインストールされたプログラマブル端末の表示例
【要約】
【課題】 英語の自学自習においてチャンクに着目した学習が効果的であることは昔から知られていた。しかし、チャンクを取り入れた聴く力の学習方式としては、チャンクとチャンクの間に固定長の無音時間を挿入した録音教材程度しか無く、聴く力の訓練にチャンクを充分活用できていなかった。
【解決手段】 各チャンク再生後にリスナーの望みの長さの再生一時停止時間を挿入しつつ再生する処理手順と、デジタル音声情報の再生制御情報に各センテンスの最後のチャンクを識別する属性を備え、当該属性によりセンテンスの最後のチャンクを識別したら、再生後自動的に当該チャンクが属しているセンテンスを先頭から再生一時停止時間を挿入せずに当該センテンスの終りまで再生する処理手順と、少なくとも2つの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムおよび当該プログラムの為の音声情報記録媒体を提供する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10