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特許6222612透明蛍光サイアロンセラミックスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222612
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】透明蛍光サイアロンセラミックスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20171023BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C09K11/80
   C09K11/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-506190(P2016-506190)
(86)(22)【出願日】2015年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2015056680
(87)【国際公開番号】WO2015133612
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-44430(P2014-44430)
(32)【優先日】2014年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓実
(72)【発明者】
【氏名】多々見 純一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 由紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 健大
(72)【発明者】
【氏名】横内 正洋
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−142134(JP,A)
【文献】 特開2008−008794(JP,A)
【文献】 特開2005−272488(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030637(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/147066(WO,A1)
【文献】 特開2010−222466(JP,A)
【文献】 特開2009−227714(JP,A)
【文献】 透明蛍光β−SiAlONバルク体の作製,公益社団法人日本セラミックス協会−第27回秋季シンポジウム 講演予稿集−,日本,2014年 9月10日,2N03
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/80
C09K 11/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0≦x/z<3、0<y/z<1)で表される窒化ケイ素系化合物からなる母体と、発光中心元素と、を含有するサイアロン蛍光体からなり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで10%以上であることを特徴とする透明蛍光サイアロンセラミックス。
【請求項2】
前記窒化ケイ素系化合物は、一般式(Si,Al)(N,O)で表されるβ−サイアロンであり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで11%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明蛍光サイアロンセラミックス。
【請求項3】
前記窒化ケイ素系化合物は、一般式M(Si,Al)12(N,O)16(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.3≦x≦2)で表されるα−サイアロンであり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで65%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明蛍光サイアロンセラミックス。
【請求項4】
前記窒化ケイ素系化合物は、一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.2≦x/z≦0.6、0.4≦y/z≦0.8)で表わされ、ウルツ鉱型と類似の結晶構造を有する化合物であり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで19%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明蛍光サイアロンセラミックス。
【請求項5】
前記発光中心元素は、Eu、Ce、Mn、Tb、Yb、Dy、Sm、Tm、Pr、Nd、Pm、Ho、Er、Gd、Cr、Sn、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Ag、Cd、In、Sb、Au、Hg、Tl、Pb、BiおよびFeからなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明蛍光サイアロンセラミックス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法であって、
窒化ケイ素粉末、発光中心元素源となる物質および焼結助剤を少なくとも含む混合物を、一軸加圧成形して1次成形体を作製する工程と、
前記1次成形体を、冷間静水圧加圧成形して2次成形体を作製する工程と、
前記2次成形体を、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を作製する工程と、
前記焼結体を、窒素雰囲気下で加圧焼結処理する工程と、を有することを特徴とする透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法。
【請求項7】
前記焼結助剤として、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項に記載の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明蛍光サイアロンセラミックスおよびその製造方法に関する。
本願は、2014年3月6日に、日本に出願された特願2014−044430号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色発光ダイオード(LED)が実用化され、この青色LEDを利用した白色LEDが開発されている。白色LEDは、既存の白色光源に比べて消費電力が低く、長寿命であるため、液晶表示装置用バックライト、屋内外の照明機器等に適用されている。
白色LEDは、例えば、青色LEDの表面に蛍光体等を塗布したものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−173868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の窒化物セラミックス蛍光体は、粉体であるため、光透過性の樹脂に分散されて、青色LEDの表面に固定されている。この場合、窒化物セラミックス蛍光体と樹脂との屈折率差に起因する光の散乱により、白色LEDの発光効率が低減する。
このような課題は、窒化物セラミックス蛍光体のみからなる透明の塊(バルク体)を得ることによって解決できるものと考えられる。窒化物セラミックス蛍光体を透明化するためには、窒化物セラミックス蛍光体の原料粉末の焼結を促進して、焼結体内に存在し、光の散乱源となる気孔を除去する必要がある。また、窒化物セラミックス蛍光体は、屈折率が高いことから、焼成後に屈折率が低いガラス相が残存していると、透明性が低下する。しかしながら、窒化物セラミックス蛍光体から気孔を除去する方法や、窒化物セラミックス蛍光体にガラス相を残存させないようにする方法が確立されていなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、蛍光性および光透過性を有する透明蛍光サイアロンセラミックスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一の態様による透明蛍光サイアロンセラミックスは、一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0≦x/z<3、0<y/z<1)で表される窒化ケイ素系化合物からなる母体と、発光中心元素と、を含有するサイアロン蛍光体からなり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで10%以上であることを特徴とする透明蛍光サイアロンセラミックスである。
【0007】
[2]前記[1]の透明蛍光サイアロンセラミックスにおいて、前記窒化ケイ素系化合物は、一般式(Si,Al)(N,O)で表されるβ−サイアロンであり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで11%以上であってもよい。
【0008】
[3]前記[1]の透明蛍光サイアロンセラミックスにおいて、前記窒化ケイ素系化合物は、一般式M(Si,Al)12(N,O)16(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.3≦x≦2)で表されるα−サイアロンであり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで65%以上であってもよい。
【0009】
[4]前記[1]の透明蛍光サイアロンセラミックスにおいて、前記窒化ケイ素系化合物は、一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.2≦x/z≦0.6、0.4≦y/z≦0.8)で表わされ、ウルツ鉱型と類似の結晶構造を有する化合物であり、厚さ100μmのとき、可視光の直線透過率が波長800nmで19%以上であってもよい。
【0010】
[5]前記[1]〜[4]のいずれかの透明蛍光サイアロンセラミックスにおいて、前記発光中心元素は、Eu、Ce、Mn、Tb、Yb、Dy、Sm、Tm、Pr、Nd、Pm、Ho、Er、Gd、Cr、Sn、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Ag、Cd、In、Sb、Au、Hg、Tl、Pb、BiおよびFeからなる群から選択される1種であってもよい。
【0011】
[6]本発明の他の態様による透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法は、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法であって、窒化ケイ素粉末、発光中心元素源となる物質および焼結助剤を少なくとも含む混合物を、一軸加圧成形して1次成形体を作製する工程と、前記1次成形体を、冷間静水圧加圧成形して2次成形体を作製する工程と、前記2次成形体を、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を作製する工程と、前記焼結体を、窒素雰囲気下で加圧焼結処理する工程と、を有することを特徴とする透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法である。ここで、予備焼結とは、加圧焼結の前に0.1MPa〜1MPaの窒素雰囲気中で、2次成形体(焼結体)を緻密化させることをいう。また、加圧焼結とは、熱間等方圧加圧焼結(HIP焼結)、放電プラズマ焼結(SPS)、ホットプレス焼結(HP焼結)などに代表される焼結法である。
【0012】
[7]前記[6]の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法において、前記焼結助剤として、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、そのままの形態で所定の形状に成形して、白色LEDに適用することが可能であり、従来のように、サイアロン蛍光体を樹脂に分散させて用いる必要がなく、サイアロン蛍光体と樹脂との屈折率差に起因する光の散乱により、白色LEDの発光効率が低減することがない透明蛍光サイアロンセラミックスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実験例1〜4の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、可視光の透過率の測定を行った結果を示すグラフである。
図2】実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図3】実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図4】実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図5】実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図6】実験例5〜9の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、可視光の透過率の測定を行った結果を示すグラフである。
図7】実験例6および10の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図8】実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図9】実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
図10】実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、励起スペクトルの測定を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の透明蛍光サイアロンセラミックスおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
[透明蛍光サイアロンセラミックス]
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0≦x/z<3、0<y/z<1)で表される窒化ケイ素系化合物からなる母体と、発光中心元素と、を含有するサイアロン蛍光体からなる。
すなわち、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0≦x/z<3、0<y/z<1)で表される窒化ケイ素系化合物からなる母体と、その母体内に含まれる(存在する)発光中心元素と、を含有するサイアロン蛍光体からなる。
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、後述するように、窒化ケイ素粉を含む原料を焼結してなる焼結体である。透明蛍光サイアロンセラミックスは、粒子状(粉末状)ではなく、サイアロン蛍光体の単結晶が多数集合してなる多結晶体であり、任意の形状をなす焼結体である。この焼結体の形状としては、特に限定されず、例えば、円盤状、平板状、凸レンズ状、凹レンズ状、球状、半球状、立方体状、直方体状、角柱や円柱等の柱状、角筒や円筒等の筒状等が挙げられる。
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、例えば、白色LEDに適用される場合、光源となる青色LEDの外周を覆う形状に形成されて用いられる。
【0018】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスにおける「透明」とは、波長800nmにおける直線透過率が10%以上であることを示す。
【0019】
一般式M(Si,Al)(N,O)において、x=0、y=6、z=8の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、一般式(Si,Al)(N,O)で表されるβ−サイアロン;y=12、z=16の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、一般式M(Si,Al)12(N,O)16(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.3≦x≦2)で表されるα−サイアロン;MがCa、x=1、y=1、z=2の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、CaSiN;MがCa、x=2、y=5、z=8の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、CaSi;MがSr、x=1、y=28、z=32の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、SrSiAl19ON31;MがY、x=5、y=3、z=13の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、YSi12N;MがSi、x=5、y=26、z=37の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、SiAlSi2135である。
【0020】
β−サイアロンを表わす一般式(Si,Al)(N,O)は、一般式Si6−zAl8−z(但し、0≦z≦4.2)とも表わされる。
一般式Si6−zAl8−zにおいて、zが0以上1以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましい。
【0021】
α−サイアロンを表わす一般式M(Si,Al)12(N,O)16は、一般式MSi12−(b+c)Al(b+c)16−c(但し、Mは、Li、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.3≦x≦2、3.60≦b≦5.50、0≦c≦0.30)とも表わされる。
一般式MSi12−(b+c)Al(b+c)16−cにおいて、xが0.5以上2以下であることが好ましい。また、一般式MSi12−(b+c)Al(b+c)16−cにおいて、b/cが1.5以上であることが好ましい。
【0022】
また、一般式M(Si,Al)(N,O)において、x/zが0.2以上0.6以下、y/zが0.4以上0.8以下であることが好ましい。x=01、y=1、z=3の場合、上記の窒化ケイ素系化合物は、CaAlSiNである。
【0023】
本実施形態において、一般式M(Si,Al)(N,O)で表される窒化ケイ素系化合物は、これらに限定されず、発光中心元素を賦活することによって、蛍光を発するとともに、発光中心元素を含んだ状態で光透過性を有する化合物であれば、いかなる化合物でも用いられる。
【0024】
発光中心元素としては、Eu、Ce、Mn、Tb、Yb、Dy、Sm、Tm、Pr、Nd、Pm、Ho、Er、Gd、Cr、Sn、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Ag、Cd、In、Sb、Au、Hg、Tl、Pb、BiおよびFeからなる群から選択される1種が用いられる。
金属元素Mとしては、Li、Ca、Sr、Ba、Y、ランタニド金属(Ce、Laを除く)等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、上記の窒化ケイ素系化合物と発光中心元素との組み合わせを調整することによって、種々の蛍光色を発することができる。また、窒化ケイ素系化合物と発光中心元素との組み合わせによって、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスを透過する光の波長を調整することができる。これにより、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの色調を調整することができる。
【0026】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、例えば、窒化ケイ素系化合物がEuで賦活したβ−サイアロンである場合、厚さが100μmのとき、可視光の直線透過率が800nmで11%以上であり、発光可能な蛍光色が緑色である。
また、窒化ケイ素系化合物がCeで賦活したY−α−サイアロンである場合、厚さが100μmのとき、可視光の直線透過率が800nmで65%以上であり、発光可能な蛍光色が青色〜青緑色である。
また、窒化ケイ素系化合物がEuで賦活したCa−α−サイアロンである場合、厚さが100μmのとき、可視光の直線透過率が800nmで65%以上であり、発光可能な蛍光色が黄色である。
また、窒化ケイ素系化合物がEuで賦活したCaAlSiNである場合、厚さが100μmのとき、可視光の直線透過率が800nmで19%以上であり、発光可能な蛍光色が赤色である。
【0027】
また、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、窒化ケイ素系化合物からなる母体と、発光中心元素とを含有するサイアロン蛍光体からなる塊であり、そのままの形態で所定の形状に成形して、白色LEDに適用することができる。したがって、従来のように、サイアロン蛍光体を樹脂に分散させて用いる必要がないため、サイアロン蛍光体と樹脂との屈折率差に起因する光の散乱により、白色LEDの発光効率が低減することがない。
また、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、全体にわたってサイアロン蛍光体が均一に存在するので、蛍光の発光が偏りなく均一であるとともに、可視光の透過率も偏りなく均一である。
【0028】
さらに、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、後述する製造方法によって製造されているので、内部に気孔やガラス相が少ないため、気孔やガラス相に起因する透明性の低下が少なく、光透過性に優れたものとなる。
【0029】
[透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法]
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法は、窒化ケイ素粉末、発光中心元素源となる物質および焼結助剤を少なくとも含む混合物を、一軸加圧成形して1次成形体を作製する工程と、1次成形体を、冷間静水圧加圧成形して2次成形体を作製する工程と、2次成形体を、窒素雰囲気下でガス圧焼結し、焼結体を作製する工程と、を有する。
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法は、窒化ケイ素系化合物がβ−サイアロンである場合とα−サイアロンである場合に適用される。
以下、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法を、窒化ケイ素系化合物がβ−サイアロンである場合とα−サイアロンである場合とに分けて説明する。
【0030】
「窒化ケイ素系化合物がβ−サイアロンの場合」
まず、窒化ケイ素(Si)粉末、酸化アルミニウム(Al)粉末および窒化アルミニウム(AlN)粉末と、発光中心元素源となる物質と、焼結助剤の混合物とを所定の質量比となるように秤量する。
発光中心元素源となる物質としては、例えば、発光中心元素がEuの場合、酸化ユウロピウム(II)(EuO)、酸化ユウロピウム(III)(Eu)、窒化ユウロピウム(EuN)が用いられる。
焼結助剤としては、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種が用いられるが、酸化ハフニウム(HfO)と酸化イットリウム(III)(Y)を組み合わせて用いることが好ましい。
これらの原料粉末の混合比は、目的とする透明蛍光サイアロンセラミックスの蛍光性および光透過性に応じて適宜調整する。
【0031】
次いで、これらの原料粉末に、分散剤を添加して、ボールミルにより、エタノール中で湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得る。
【0032】
次いで、目開きの大きさが異なる2つ以上の篩を段階的に用い、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒する。
次いで、十分に融解したパラフィン等のバインダーと、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)等の滑剤と、シクロヘキサン等の溶媒とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製する。
【0033】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させる。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、所定の大きさの目開きを有する篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得る。
【0034】
次いで、金型を用いた成形後の成形体の厚さが所定の大きさとなるように、所定量の造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給する。
次いで、一軸加圧成形機を用いて、圧力25MPa〜50MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得る。
【0035】
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めする。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置を用いて、圧力200MPaで、1分間、1回、または、繰り返し10回の冷間静水圧加圧(Cold Isostatic Pressing、CIP)成形して、2次成形体を得る。
【0036】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、環状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去する。この脱脂工程では、2次成形体の加熱温度および加熱時間を2段階に設定する。1段階目の加熱では、加熱温度を250℃、加熱時間を3時間とする。2段階目の加熱では、加熱温度を500℃、加熱時間を3時間とする。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体の加熱温度を300℃〜600℃、加熱時間を1時間〜10時間とすることが好ましい。
【0037】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得る。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi製の棚板を設置し、その棚板状に2次成形体を配置する。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から目的とする焼結温度までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧する。2次成形体の焼結温度を1600℃〜1900℃、焼結時間を2時間とする。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88MPa〜0.91MPaとする。
【0038】
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却する。
【0039】
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工(Hot Isostatic Pressing、HIP)装置を用いて、窒素雰囲気下で、圧力50MPa〜200MPa、温度1700℃〜1800℃で、1時間、加圧焼結処理する。
これにより、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスを得る。
【0040】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法によれば、1次成形体を、冷間静水圧加圧成形して2次成形体を作製する工程と、2次成形体を、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を作製する工程と、焼結体を、窒素雰囲気下で加圧焼結処理する工程とを経ることにより、光の散乱源となる屈折率の異なる領域や、光の吸収源となるガラス相を除去することができる。その結果、得られる透明蛍光サイアロンセラミックスは、全体にわたってサイアロン蛍光体が均一に存在するので、蛍光の発光が偏りなく均一であるとともに、可視光の透過率も偏りなく均一である。また、透明蛍光サイアロンセラミックスは、内部に気孔やガラス相が少ないため、気孔やガラス相に起因する透明性の低下がなく、光透過性に優れたものとなる。特に、焼結助剤として、酸化イットリウム(III)(Y)に加えて、屈折率がβ−サイアロンに近い、酸化ハフニウム(HfO)を用いることにより、気孔とガラス相の除去効果が高くなり、より光透過性に優れた透明蛍光サイアロンセラミックスが得られる。
【0041】
「窒化ケイ素系化合物がY−α−サイアロンの場合」
まず、窒化ケイ素(Si)粉末および窒化アルミニウム(AlN)粉末と、発光中心元素源となる物質と、焼結助剤の混合物とを所定の質量比となるように秤量する。
発光中心元素源となる物質としては、例えば、発光中心元素がCeの場合、酸化セリウム(IV)(CeO)が用いられる。
焼結助剤としては、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび酸化シリコンからなる群から選択される少なくとも1種が用いられるが、窒化アルミニウム(AlN)と酸化イットリウム(III)(Y)を組み合わせて用いることが好ましい。
これらの原料粉末の混合比は、目的とする透明蛍光サイアロンセラミックスの蛍光性および光透過性に応じて適宜調整する。
【0042】
次いで、これらの原料粉末に、分散剤を添加して、ボールミルにより、エタノール中で湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得る。
【0043】
次いで、目開きの大きさが異なる2つ以上の篩を段階的に用い、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒する。
次いで、十分に融解したパラフィン等のバインダーと、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)等の滑剤と、シクロヘキサン等の溶媒とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製する。
【0044】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させる。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、所定の大きさの目開きを有する篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得る。
【0045】
次いで、金型を用いた成形後の成形体の厚さが所定の大きさとなるように、所定量の造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給する。
次いで、一軸加圧成形機を用いて、圧力50MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得る。
【0046】
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めする。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置を用いて、圧力200MPaで、1分間、1回、または、繰り返し10回の冷間静水圧加圧(Cold Isostatic Pressing、CIP)成形して、2次成形体を得る。
【0047】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、環状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去する。この脱脂工程では、2次成形体の加熱温度および加熱時間を2段階に設定する。1段階目の加熱では、加熱温度を500℃、加熱時間を3時間とする。2段階目の加熱では、加熱温度を560℃、加熱時間を3時間とする。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体の加熱温度を300℃〜600℃、加熱時間を1時間〜10時間とすることが好ましい。
【0048】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得る。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi製の棚板を設置し、その棚板状に2次成形体を配置する。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から目的とする焼結温度までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧する。2次成形体の焼結温度を1600℃、焼結時間を2時間とする。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88MPa〜0.91MPaとする。
【0049】
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却する。
【0050】
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工(Hot Isostatic Pressing、HIP)装置を用いて、窒素雰囲気下で、圧力50MPa〜200MPa、温度1600℃〜1800℃で、1時間、加圧焼結処理する。
これにより、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスを得る。
【0051】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法によれば、1次成形体を、冷間静水圧加圧成形して2次成形体を作製する工程と、2次成形体を、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を作製する工程と、焼結体を、窒素雰囲気下で加圧焼結処理する工程とを経ることにより、光の散乱源となる屈折率の異なる領域や、光の吸収源となるガラス相を除去することができる。その結果、得られる透明蛍光サイアロンセラミックスは、全体にわたってサイアロン蛍光体が均一に存在するので、蛍光の発光が偏りなく均一であるとともに、可視光の透過率も偏りなく均一である。また、透明蛍光サイアロンセラミックスは、内部に気孔やガラス相が少ないため、気孔やガラス相に起因する透明性の低下がなく、光透過性に優れたものとなる。
【0052】
「窒化ケイ素系化合物がCa−α−サイアロンの場合」
まず、窒化ケイ素(Si)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、発光中心元素源となる物質と、焼結助剤の混合物とを所定の質量比となるように秤量する。
発光中心元素源となる物質としては、例えば、発光中心元素がEuの場合、酸化ユーロピウム(III)(Eu)が用いられる。
焼結助剤としては、希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種が用いられるが、窒化アルミニウム(AlN)と炭酸カルシウム(CaCO)を組み合わせて用いることが好ましい。
これらの原料粉末の混合比は、目的とする透明蛍光サイアロンセラミックスの蛍光性および光透過性に応じて適宜調整する。
【0053】
次いで、これらの原料粉末に、分散剤を添加して、ボールミルにより、エタノール中で湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得る。
【0054】
次いで、目開きの大きさが異なる2つ以上の篩を段階的に用い、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒する。
次いで、十分に融解したパラフィン等のバインダーと、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)等の滑剤と、シクロヘキサン等の溶媒とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製する。
【0055】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させる。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、所定の大きさの目開きを有する篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得る。
【0056】
次いで、金型を用いた成形後の成形体の厚さが所定の大きさとなるように、所定量の造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給する。
次いで、一軸加圧成形機を用いて、圧力50MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得る。
【0057】
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めする。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置を用いて、圧力200MPaで、1分間、1回、または、繰り返し10回の冷間静水圧加圧(Cold Isostatic Pressing、CIP)成形して、2次成形体を得る。
【0058】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、環状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去する。この脱脂工程では、2次成形体の加熱温度および加熱時間を2段階に設定する。1段階目の加熱では、加熱温度を500℃、加熱時間を3時間とする。2段階目の加熱では、加熱温度を560℃、加熱時間を3時間とする。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体の加熱温度を300℃〜600℃、加熱時間を1時間〜10時間とすることが好ましい。
【0059】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得る。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi製の棚板を設置し、その棚板状に2次成形体を配置する。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から目的とする焼結温度までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧する。2次成形体の焼結温度を1600℃、焼結時間を2時間とする。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88MPa〜0.91MPaとする。
【0060】
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却する。
【0061】
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工(Hot Isostatic Pressing、HIP)装置を用いて、窒素雰囲気下で、圧力50MPa〜200MPa、温度1600℃〜1800℃で、1時間、加圧焼結処理する。
これにより、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスを得る。
【0062】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法によれば、1次成形体を、冷間静水圧加圧成形して2次成形体を作製する工程と、2次成形体を、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を作製する工程と、焼結体を、窒素雰囲気下で加圧焼結処理する工程とを経ることにより、光の散乱源となる屈折率の異なる領域や、光の吸収源となるガラス相を除去することができる。その結果、得られる透明蛍光サイアロンセラミックスは、全体にわたってサイアロン蛍光体が均一に存在するので、蛍光の発光が偏りなく均一であるとともに、可視光の透過率も偏りなく均一である。また、透明蛍光サイアロンセラミックスは、内部に気孔やガラス相が少ないため、気孔やガラス相に起因する透明性の低下がなく、光透過性に優れたものとなる。
【0063】
[透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法]
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法は、窒化ケイ素粉末、発光中心元素源となる物質および焼結助剤を少なくとも含む混合物を、窒素雰囲気下で加圧焼結処理する工程を有する。
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法は、一般式M(Si,Al)(N,O)(但し、Mは、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1種、0.2≦x/z≦0.6、0.4≦y/z≦0.8)で表わされ、ウルツ鉱型と類似の結晶構造を有する化合物である場合に適用される。
【0064】
まず、窒化ケイ素(Si)粉末、窒化カルシウム(Ca)粉末、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、発光中心元素源となる物質と、を所定の質量比となるように秤量する。
発光中心元素源となる物質としては、例えば、発光中心元素がEuの場合、酸化ユウロピウム(II)(EuO)、酸化ユウロピウム(III)(Eu)、窒化ユウロピウム(EuN)が用いられる。
これらの原料粉末の混合比は、目的とする透明蛍光サイアロンセラミックスの蛍光性および光透過性に応じて適宜調整する。
【0065】
次いで、これらの原料粉末を、ボールミルにより、乾式混合を行い、得られた混合粉末を、例えば、ガラス製の瓶に充填する。原料粉末の秤量、混合、充填の操作を、全てグローブボックス内で行う。
【0066】
次いで、混合粉末を黒鉛型に充填する。焼結中、試料への黒鉛の混入を防止するために、黒鉛のパンチ棒と試料の間に窒化ホウ素板を挟む。
【0067】
次いで、黒鉛型内の混合物を、窒素雰囲気下でパルス通電加圧焼結処理する。
パルス通電加圧焼結処理の条件を、温度1600℃〜1800℃、保持時間1分〜60分、圧力10MPa〜200MPaとする。
これにより、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスを得る。
【0068】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスの製造方法によれば、窒化ケイ素粉末、発光中心元素源となる物質および焼結助剤を少なくとも含む混合物を、窒素雰囲気下でパルス通電加圧焼結処理する工程を経ることにより、光の散乱源となる屈折率の異なる領域や、光の吸収源となるガラス相を除去することができる。その結果、得られる透明蛍光サイアロンセラミックスは、全体にわたってサイアロン蛍光体が均一に存在するので、蛍光の発光が偏りなく均一であるとともに、可視光の透過率も偏りなく均一である。また、透明蛍光サイアロンセラミックスは、内部に気孔やガラス相が少ないため、気孔やガラス相に起因する透明性の低下がなく、光透過性に優れたものとなる。
【0069】
本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、発光ダイオード(LED)、蛍光灯、シンチレータ、レーザー等の発光装置、テレビジョン、パソコン用ディスプレイ等の表示装置、センサ等に適用することができる。
従来、蛍光体は、粉末の形態で供給されていたため、蛍光体を、シンチレータのように単結晶を用いる分野には適用することが難しかった。本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、それ自体が任意の形状をなす焼結体であるので、単結晶を用いる分野にも広く適用することができる。
また、従来のYAG透明蛍光バルク体は、温度特性に課題があった。すなわち、YAG透明蛍光バルク体は、温度の上昇に伴って、発光強度が減少することが報告されている。これに対して、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、温度上昇に伴う消光が極めて小さい。すなわち、本実施形態の透明蛍光サイアロンセラミックスは、演色性等に優れる発光装置を実現できる。
【実施例】
【0070】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0071】
「実験例1」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、酸化アルミニウム(Al)粉末(商品名:AKP−30、住友化学社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化ユウロピウム(III)(Eu)(信越化学工業社製)と、酸化イットリウム(III)(Y)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)と、酸化ハフニウム(HfO)(商品名:HFE01PB、高純度化学研究所社製)とを、質量比で、92:1.5:2.5:1:2.5:5(=Si:Al:AlN:Eu:Y:HfO)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末の総量に対して、分散剤(商品名:セルナE503、ポリアクリル酸系、中京油脂社製)を2質量%添加して、ボールミル(ポット:窒化ケイ素製、内容積:400mL、サイアロンボール:粒径5mm、1400個)により、エタノール中で、回転速度110rpmで48時間、湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製した。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得た。
【0072】
次いで、♯32(呼び寸法:500μm)の篩と、♯48(呼び寸法:300μm)の篩とをこの順に用いて、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒した。
次いで、十分に融解したバインダーのパラフィン(融点46℃〜48℃、純正化学社製)と、滑剤のフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(純度97.0%、和光純薬工業社製)と、溶媒のシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業社製)とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製した。ここで、原料粉末の総量に対する、パラフィンの添加量を4質量%、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の添加量を2質量%とした。また、シクロヘキサンの添加量を35mL/100gとした。
【0073】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させた。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、♯60(呼び寸法:250μm)の篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得た。
次いで、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型を用いた成形後の成形体の厚さが2mmとなるように、0.7gの造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給した。
次いで、一軸加圧成形機(商品名:MP−500H、マルトー社製)を用いて、圧力500MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得た。
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めした。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置(商品名:SEハンディCIP50−2000、アプライドパワージャパン社製)を用いて、圧力200MPaで、60秒間、1回、または、繰り返し10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た。
【0074】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、管状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去した。この脱脂工程では、温度500℃で3時間の加熱と温度560℃で3時間の加熱を行った。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体を、温度250℃で3時間加熱した。
【0075】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉(商品名:ハイマルチ5000、富士電波工業社製)を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得た。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi製の棚板を設置し、その棚板上に2次成形体を配置した。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から1600℃までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧した。2次成形体の焼結温度を1600℃、焼結時間を2時間とした。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88〜0.91MPaとした。
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却した。
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工装置(商品名:SYSTEM15X、神戸製鋼社製)を用いて、窒素雰囲気下で、圧力100MPa、1700℃で、1時間、加圧焼結処理し、実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0076】
(透過率の測定)
実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、可視光の直線透過率の測定を行った。
厚さ100μmの試料をテープで冶具に固定し、LAMBDA750(Perkin Elmer社製)を用い、測定波長域を300nm〜800nmとし、可視光の透過率を測定した。結果を表1および図1に示す。
【0077】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。
発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定では、FP6300(Jasco製)を用い、測定波長域を、発光スペクトルを405nm励起で430nm〜700nm、励起スペクトルを540nm励起で280nm〜500nm(270nmカットフィルタ下)とした。結果を図2に示す。
【0078】
「実験例2」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si)粉末と、酸化アルミニウム(Al)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化ユウロピウム(III)(Eu)と、酸化イットリウム(III)(Y)と、酸化ハフニウム(HfO)とを、質量比で、92:1.5:3.5:1:2.5:5(=Si:Al:AlN:Eu:Y:HfO)となるように秤量した以外は実験例1と同様にして、実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0079】
(透過率の測定)
実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および図1に示す。
【0080】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。結果を図3に示す。
【0081】
「実験例3」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si)粉末と、酸化アルミニウム(Al)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化ユウロピウム(III)(Eu)と、酸化イットリウム(III)(Y)と、酸化ハフニウム(HfO)とを、質量比で、92:1.5:5:1:2.5:5(=Si:Al:AlN:Eu:Y:HfO)となるように秤量した以外は実験例1と同様にして、実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0082】
(透過率の測定)
実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を図1に示す。
【0083】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。結果を図4に示す。
【0084】
「実験例4」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si)粉末と、酸化アルミニウム(Al)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化ユウロピウム(III)(Eu)と、酸化イットリウム(III)(Y)と、酸化ハフニウム(HfO)とを、質量比で、92:1.5:1.5:1:2.5:5(=Si:Al:AlN:Eu:Y:HfO)となるように秤量した以外は実験例1と同様にして、実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0085】
(透過率の測定)
実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を図1に示す。
【0086】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。結果を図5に示す。
【0087】
「実験例5」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化セリウム(IV)(CeO)(信越化学工業社製)と、酸化イットリウム(III)(Y)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)とを、モル比で、21:9:0.2:0.9(=Si:AlN:CeO:Y)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末の総量に対して、分散剤(商品名:セルナE503、ポリアクリル酸系、中京油脂社製)を2質量%添加して、ボールミル(ポット:窒化ケイ素製、内容積:400mL、サイアロンボール:粒径5mm、1400個)により、エタノール中で、回転速度110rpmで48時間、湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製した。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得た。
【0088】
次いで、♯32(呼び寸法:500μm)の篩と、♯48(呼び寸法:300μm)の篩とをこの順に用いて、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒した。
次いで、十分に融解したバインダーのパラフィン(融点46〜48℃、純正化学社製)と、滑剤のフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(純度97.0%、和光純薬工業社製)と、溶媒のシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業社製)とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製した。ここで、原料粉末の総量に対する、パラフィンの添加量を4質量%、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の添加量を2質量%とした。また、シクロヘキサンの添加量を35mL/100gとした。
【0089】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させた。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、♯60(呼び寸法:250μm)の篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得た。
次いで、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型を用いた成形後の成形体の厚さが2mmとなるように、0.7gの造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給した。
次いで、一軸加圧成形機(商品名:MP−500H、マルトー社製)を用いて、圧力500MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得た。
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めした。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置(商品名:SEハンディCIP50−2000、アプライドパワージャパン社製)を用いて、圧力200MPaで、60秒間、1回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た。
【0090】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、管状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去した。この脱脂工程では、温度500℃で3時間の加熱と温度560℃で3時間の加熱を行った。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体を、温度250℃で3時間加熱した。
【0091】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉(商品名:ハイマルチ5000、富士電波工業社製)を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得た。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi製の棚板を設置し、その棚板上に2次成形体を配置した。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から1600℃までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧した。2次成形体の焼結温度を1600℃、焼結時間を2時間とした。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88〜0.91MPaとした。
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却した。
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工装置(商品名:SYSTEM15X、神戸製鋼社製)を用いて、窒素雰囲気下で、圧力100MPa、1600℃で、1時間、加圧焼結処理し、実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0092】
(透過率の測定)
実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および図6に示す。
【0093】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0094】
「実験例6」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た以外は実験例5と同様にして、実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0095】
(透過率の測定)
実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および図6に示す。
【0096】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0097】
「実験例7」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末(商品名:R800、平均粒径:20〜50μm、エアウォーター社製)を、サイアロン原料粉末の1つである窒化ケイ素(Si)粉末に対する質量比が92:3となるように添加した以外は実験例5と同様にして、実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0098】
(透過率の測定)
実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および図6に示す。
【0099】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0100】
「実験例8」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た以外は実験例7と同様にして、実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0101】
(透過率の測定)
実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および図6に示す。
【0102】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0103】
「実験例9」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末を、サイアロン原料粉末の1つである窒化ケイ素(Si)粉末に対する質量比が92:5となるように添加した以外は実験例5と同様にして、実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0104】
(透過率の測定)
実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を図6に示す。
【0105】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0106】
「実験例10」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化セリウム(IV)(CeO)と、酸化イットリウム(III)(Y)とを、モル比で、21:9:0.5:1(=Si:AlN:CeO:Y)となるように秤量し、10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た以外は実験例5と同様にして、実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0107】
(透過率の測定)
実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光スペクトルの測定結果を図7、励起スペクトルの測定結果を図8に示す。
また、発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0109】
「実験例11」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化イットリウム(III)(Y)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)と、酸化ユーロピウム(III)(Eu)(信越化学工業社製)を、モル比で、21:9:0.9:0.1(=Si:AlN:Y:Eu)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末の総量に対して、分散剤(商品名:セルナE503、ポリアクリル酸系、中京油脂社製)を2質量%添加して、ボールミル(ポット:ポリスチレン製、内容積:250mL、サイアロンボール:粒径5mm、700個)により、エタノール中で、回転速度110rpmで48時間、湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製した。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得た。
【0110】
次いで、♯32(呼び寸法:500μm)の篩と、♯48(呼び寸法:300μm)の篩とをこの順に用いて、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒した。
次いで、十分に融解したバインダーのパラフィン(融点46℃〜48℃、純正化学社製)と、滑剤のフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(純度97.0%、和光純薬工業社製)と、溶媒のシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業社製)とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製した。ここで、原料粉末の総量に対する、パラフィンの添加量を4質量%、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の添加量を2質量%とした。また、シクロヘキサンの添加量を35mL/100gとした。
【0111】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させた。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、♯60(呼び寸法:250μm)の篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得た。
次いで、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型を用いた成形後の成形体の厚さが2mmとなるように、0.7gの造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給した。
次いで、一軸加圧成形機(商品名:MP−500H、マルトー社製)を用いて、圧力500MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得た。
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めした。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置(商品名:SEハンディCIP50−2000、アプライドパワージャパン社製)を用いて、圧力200MPaで、60秒間、1回の冷間静水圧加圧成形を10回繰り返して、2次成形体を得た。
【0112】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、管状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去した。この脱脂工程では、温度500℃で3時間の加熱を行った。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体を、温度250℃で3時間加熱した。
【0113】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉(商品名:ハイマルチ5000、富士電波工業社製)を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得た。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi製の棚板を設置し、その棚板上に2次成形体を配置した。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から1600℃までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧した。2次成形体の焼結温度を1700℃、焼結条件を2時間として作製した焼結体は、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却した後、熱間等方圧加圧加工装置(商品名:SYSTEM15X、神戸製鋼社製)を用いて、窒素雰囲気下で、圧力100MPa、1600℃で、1時間、加圧焼結処理し、実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0114】
(透過率の測定)
実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0116】
「実験例12」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化イットリウム(III)(Y)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)と、CaCO(純正化学社製)と、酸化ユーロピウム(III)(Eu)(信越化学工業社製)を、モル比で、21:9:0.675:0.45:0.1(=Si:AlN:Y:CaCO:Eu)となるように秤量した以外は、実験例11と同様にして、実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
【0117】
(透過率の測定)
実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0118】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1および図9に示す。
【0119】
「実験例13」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Hグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化ユウロピウム(III)(Eu)(信越化学工業社製)と、窒化カルシウム(Ca)(SIGMA−ALDLICH社製)とを、モル比で、1:1:0.016:0.984(=Si:Al:Eu:Ca)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末を、ボールミルで5時間乾式混合を行い、得られた混合粉末を瓶に充填した。原料粉末の秤量、混合、充填の操作は、全てグローボックス内で行った。
【0120】
次いで、混合粉末3gを直径25mmの黒鉛型に充填し、黒鉛のパンチ棒と試料の間にBN板を挟み、30MPaで一軸加圧しながら、放電プラズマ焼結装置(商品名:SPS―1050、富士電波工機社製)で焼成して焼結体を作製して、実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
焼結温度は1760℃、焼結時間は10分間、焼成雰囲気は窒素ガス中とした。
また、実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0121】
(透過率の測定)
実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0122】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例12と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定では、FP6300(Jasco製)を用い、測定波長域を、発光スペクトルを471nm励起で485nm〜750nm、励起スペクトルを633nm励起で220nm〜600nmとした。結果を図10に示す。また、発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1、図2図3図4の結果から、実験例1〜実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスは、緑色の蛍光色を発光することができる。また、表1、図5図7および図8の結果から、実験例5〜実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスは、青色〜青緑色の蛍光色を発光することができる。また、表1および図9の結果から、実験例11および実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスは、黄色の蛍光色を発光することができる。また、表1と図10の結果から、実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスは、赤色の蛍光色を発光することができる。
図6の結果から、造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末の添加量が増加すると、透明蛍光サイアロンセラミックスにおける可視光の透過率が低下することが分かった。これは、造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末の添加により、透明蛍光サイアロンセラミックス内に形成された細孔に空気を含むことに起因するものと考えられる。また、冷間静水圧加圧成形の回数が1回と10回では、得られた透明蛍光サイアロンセラミックスにおける可視光の透過率にほとんど差異がないことが分かった。
また、図7および図8の結果から、酸化セリウム(IV)(CeO)の添加量を変えることにより、透明蛍光サイアロンセラミックスにおける発光波長および励起波長をシフトできることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、そのままの形態で所定の形状に成形して、白色LEDに適用することが可能であり、従来のように、サイアロン蛍光体を樹脂に分散させて用いる必要がなく、サイアロン蛍光体と樹脂との屈折率差に起因する光の散乱により、白色LEDの発光効率が低減することがない透明蛍光サイアロンセラミックスが得られる。従って、本発明は極めて有用である。
図1
図2
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図4
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図10