【実施例】
【0070】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0071】
「実験例1」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末(商品名:AKP−30、住友化学社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化ユウロピウム(III)(Eu
2O
3)(信越化学工業社製)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)と、酸化ハフニウム(HfO
2)(商品名:HFE01PB、高純度化学研究所社製)とを、質量比で、92:1.5:2.5:1:2.5:5(=Si
3N
4:Al
2O
3:AlN:Eu
2O
3:Y
2O
3:HfO
2)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末の総量に対して、分散剤(商品名:セルナE503、ポリアクリル酸系、中京油脂社製)を2質量%添加して、ボールミル(ポット:窒化ケイ素製、内容積:400mL、サイアロンボール:粒径5mm、1400個)により、エタノール中で、回転速度110rpmで48時間、湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製した。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得た。
【0072】
次いで、♯32(呼び寸法:500μm)の篩と、♯48(呼び寸法:300μm)の篩とをこの順に用いて、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒した。
次いで、十分に融解したバインダーのパラフィン(融点46℃〜48℃、純正化学社製)と、滑剤のフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(純度97.0%、和光純薬工業社製)と、溶媒のシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業社製)とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製した。ここで、原料粉末の総量に対する、パラフィンの添加量を4質量%、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の添加量を2質量%とした。また、シクロヘキサンの添加量を35mL/100gとした。
【0073】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させた。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、♯60(呼び寸法:250μm)の篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得た。
次いで、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型を用いた成形後の成形体の厚さが2mmとなるように、0.7gの造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給した。
次いで、一軸加圧成形機(商品名:MP−500H、マルトー社製)を用いて、圧力500MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得た。
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めした。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置(商品名:SEハンディCIP50−2000、アプライドパワージャパン社製)を用いて、圧力200MPaで、60秒間、1回、または、繰り返し10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た。
【0074】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、管状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去した。この脱脂工程では、温度500℃で3時間の加熱と温度560℃で3時間の加熱を行った。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体を、温度250℃で3時間加熱した。
【0075】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉(商品名:ハイマルチ5000、富士電波工業社製)を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得た。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi
3N
4製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi
3N
4製の棚板を設置し、その棚板上に2次成形体を配置した。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10
−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から1600℃までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧した。2次成形体の焼結温度を1600℃、焼結時間を2時間とした。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88〜0.91MPaとした。
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却した。
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工装置(商品名:SYSTEM15X、神戸製鋼社製)を用いて、窒素雰囲気下で、圧力100MPa、1700℃で、1時間、加圧焼結処理し、実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0076】
(透過率の測定)
実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、可視光の直線透過率の測定を行った。
厚さ100μmの試料をテープで冶具に固定し、LAMBDA750(Perkin Elmer社製)を用い、測定波長域を300nm〜800nmとし、可視光の透過率を測定した。結果を表1および
図1に示す。
【0077】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例1の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。
発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定では、FP6300(Jasco製)を用い、測定波長域を、発光スペクトルを405nm励起で430nm〜700nm、励起スペクトルを540nm励起で280nm〜500nm(270nmカットフィルタ下)とした。結果を
図2に示す。
【0078】
「実験例2」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末と、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化ユウロピウム(III)(Eu
2O
3)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)と、酸化ハフニウム(HfO
2)とを、質量比で、92:1.5:3.5:1:2.5:5(=Si
3N
4:Al
2O
3:AlN:Eu
2O
3:Y
2O
3:HfO
2)となるように秤量した以外は実験例1と同様にして、実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0079】
(透過率の測定)
実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および
図1に示す。
【0080】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例2の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。結果を
図3に示す。
【0081】
「実験例3」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末と、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化ユウロピウム(III)(Eu
2O
3)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)と、酸化ハフニウム(HfO
2)とを、質量比で、92:1.5:5:1:2.5:5(=Si
3N
4:Al
2O
3:AlN:Eu
2O
3:Y
2O
3:HfO
2)となるように秤量した以外は実験例1と同様にして、実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0082】
(透過率の測定)
実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を
図1に示す。
【0083】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例3の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。結果を
図4に示す。
【0084】
「実験例4」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末と、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化ユウロピウム(III)(Eu
2O
3)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)と、酸化ハフニウム(HfO
2)とを、質量比で、92:1.5:1.5:1:2.5:5(=Si
3N
4:Al
2O
3:AlN:Eu
2O
3:Y
2O
3:HfO
2)となるように秤量した以外は実験例1と同様にして、実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0085】
(透過率の測定)
実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を
図1に示す。
【0086】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。結果を
図5に示す。
【0087】
「実験例5」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化セリウム(IV)(CeO
2)(信越化学工業社製)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)とを、モル比で、21:9:0.2:0.9(=Si
3N
4:AlN:CeO
2:Y
2O
3)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末の総量に対して、分散剤(商品名:セルナE503、ポリアクリル酸系、中京油脂社製)を2質量%添加して、ボールミル(ポット:窒化ケイ素製、内容積:400mL、サイアロンボール:粒径5mm、1400個)により、エタノール中で、回転速度110rpmで48時間、湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製した。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得た。
【0088】
次いで、♯32(呼び寸法:500μm)の篩と、♯48(呼び寸法:300μm)の篩とをこの順に用いて、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒した。
次いで、十分に融解したバインダーのパラフィン(融点46〜48℃、純正化学社製)と、滑剤のフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(純度97.0%、和光純薬工業社製)と、溶媒のシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業社製)とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製した。ここで、原料粉末の総量に対する、パラフィンの添加量を4質量%、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の添加量を2質量%とした。また、シクロヘキサンの添加量を35mL/100gとした。
【0089】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させた。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、♯60(呼び寸法:250μm)の篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得た。
次いで、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型を用いた成形後の成形体の厚さが2mmとなるように、0.7gの造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給した。
次いで、一軸加圧成形機(商品名:MP−500H、マルトー社製)を用いて、圧力500MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得た。
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めした。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置(商品名:SEハンディCIP50−2000、アプライドパワージャパン社製)を用いて、圧力200MPaで、60秒間、1回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た。
【0090】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、管状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去した。この脱脂工程では、温度500℃で3時間の加熱と温度560℃で3時間の加熱を行った。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体を、温度250℃で3時間加熱した。
【0091】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉(商品名:ハイマルチ5000、富士電波工業社製)を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得た。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi
3N
4製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi
3N
4製の棚板を設置し、その棚板上に2次成形体を配置した。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10
−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から1600℃までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧した。2次成形体の焼結温度を1600℃、焼結時間を2時間とした。また、焼結時の圧力を、窒素雰囲気下、0.88〜0.91MPaとした。
次いで、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却した。
次いで、焼結体を、熱間等方圧加圧加工装置(商品名:SYSTEM15X、神戸製鋼社製)を用いて、窒素雰囲気下で、圧力100MPa、1600℃で、1時間、加圧焼結処理し、実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0092】
(透過率の測定)
実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および
図6に示す。
【0093】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例5の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0094】
「実験例6」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た以外は実験例5と同様にして、実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0095】
(透過率の測定)
実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および
図6に示す。
【0096】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例6の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0097】
「実験例7」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末(商品名:R800、平均粒径:20〜50μm、エアウォーター社製)を、サイアロン原料粉末の1つである窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末に対する質量比が92:3となるように添加した以外は実験例5と同様にして、実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0098】
(透過率の測定)
実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および
図6に示す。
【0099】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例7の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0100】
「実験例8」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た以外は実験例7と同様にして、実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0101】
(透過率の測定)
実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1および
図6に示す。
【0102】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例8の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0103】
「実験例9」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末を、サイアロン原料粉末の1つである窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末に対する質量比が92:5となるように添加した以外は実験例5と同様にして、実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0104】
(透過率の測定)
実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を
図6に示す。
【0105】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例9の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0106】
「実験例10」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末と、窒化アルミニウム(AlN)粉末と、酸化セリウム(IV)(CeO
2)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)とを、モル比で、21:9:0.5:1(=Si
3N
4:AlN:CeO
2:Y
2O
3)となるように秤量し、10回の冷間静水圧加圧成形して、2次成形体を得た以外は実験例5と同様にして、実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0107】
(透過率の測定)
実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例10の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光スペクトルの測定結果を
図7、励起スペクトルの測定結果を
図8に示す。
また、発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0109】
「実験例11」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)と、酸化ユーロピウム(III)(Eu
2O
3)(信越化学工業社製)を、モル比で、21:9:0.9:0.1(=Si
3N
4:AlN:Y
2O
3:Eu
2O
3)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末の総量に対して、分散剤(商品名:セルナE503、ポリアクリル酸系、中京油脂社製)を2質量%添加して、ボールミル(ポット:ポリスチレン製、内容積:250mL、サイアロンボール:粒径5mm、700個)により、エタノール中で、回転速度110rpmで48時間、湿式混合を行い、原料粉末を含むスラリーを調製した。
次いで、得られたスラリーを、マントルヒーター等のヒーターを用いて加熱して、スラリーに含まれるエタノールを十分に蒸発させて、原料粉末の混合物(混合粉末)を得た。
【0110】
次いで、♯32(呼び寸法:500μm)の篩と、♯48(呼び寸法:300μm)の篩とをこの順に用いて、上記の混合粉末を、それらの篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する混合粉末を造粒した。
次いで、十分に融解したバインダーのパラフィン(融点46℃〜48℃、純正化学社製)と、滑剤のフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(純度97.0%、和光純薬工業社製)と、溶媒のシクロヘキサン(純度99.5%、和光純薬工業社製)とを、十分に攪拌、混合して、バインダー溶液を調製した。ここで、原料粉末の総量に対する、パラフィンの添加量を4質量%、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の添加量を2質量%とした。また、シクロヘキサンの添加量を35mL/100gとした。
【0111】
次いで、そのバインダー溶液に、造粒した混合粉末を添加し、混合粉末全体にバインダー溶液が染み渡るように混合しながら、その混合物を加熱して、溶媒を蒸発させた。
次いで、溶媒を十分に蒸発させた後、♯60(呼び寸法:250μm)の篩を用い、混合粉末を、その篩を強制的に通過させて、所定の粒径を有する造粒粉末を得た。
次いで、直径15mmの円筒形状のステンレス製金型を用いた成形後の成形体の厚さが2mmとなるように、0.7gの造粒粉末を採取し、その造粒粉末を金型内に供給した。
次いで、一軸加圧成形機(商品名:MP−500H、マルトー社製)を用いて、圧力500MPaで、30秒間、一軸加圧成形を行い、1次成形体を得た。
次いで、得られた1次成形体の面取りを行い、真空パックにて袋詰めした。
次いで、真空パックに袋詰めされた1次成形体を、冷間静水圧加圧装置(商品名:SEハンディCIP50−2000、アプライドパワージャパン社製)を用いて、圧力200MPaで、60秒間、1回の冷間静水圧加圧成形を10回繰り返して、2次成形体を得た。
【0112】
次いで、アルミナボート上に、2次成形体を載置し、管状抵抗炉を用いて、70L/minの空気気流中、2次成形体を加熱し、2次成形体を脱脂し、2次成形体に含まれるバインダーを除去した。この脱脂工程では、温度500℃で3時間の加熱を行った。
また、2次成形体に含まれるバインダーや滑剤がある程度蒸発することを促すため、または、バインダーや滑剤の熱分解による炭素の残留を防ぐためには、2次成形体を、温度250℃で3時間加熱した。
【0113】
次いで、脱脂した2次成形体を、多目的高温焼結炉(商品名:ハイマルチ5000、富士電波工業社製)を用い、窒素雰囲気下で予備焼結し、焼結体を得た。
2次成形体を焼結するには、カーボン製の筐体内に、反応焼結により作製された多孔質のSi
3N
4製の坩堝を配置し、さらに、その坩堝の中に多孔質のSi
3N
4製の棚板を設置し、その棚板上に2次成形体を配置した。
この焼結工程では、室温から1200℃までは真空下(6.7×10−2Pa以下)、20℃/minで昇温し、1200℃で、窒素ガスで0.25MPaまで加圧し、1200℃から1600℃までは、10℃/minで昇温しながら、4L/minの窒素ガス流で0.9MPaまで加圧した。2次成形体の焼結温度を1700℃、焼結条件を2時間として作製した焼結体は、焼結終了後、焼結体を室温まで自然放冷して冷却した後、熱間等方圧加圧加工装置(商品名:SYSTEM15X、神戸製鋼社製)を用いて、窒素雰囲気下で、圧力100MPa、1600℃で、1時間、加圧焼結処理し、実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
また、実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0114】
(透過率の測定)
実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0116】
「実験例12」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Fグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化イットリウム(III)(Y
2O
3)(商品名:RU−P、純度>99.9%、平均粒径:1.1μm、信越化学工業社製)と、CaCO
3(純正化学社製)と、酸化ユーロピウム(III)(Eu
2O
3)(信越化学工業社製)を、モル比で、21:9:0.675:0.45:0.1(=Si
3N
4:AlN:Y
2O
3:CaCO
3:Eu
2O
3)となるように秤量した以外は、実験例11と同様にして、実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
【0117】
(透過率の測定)
実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0118】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1および
図9に示す。
【0119】
「実験例13」
(透明蛍光サイアロンセラミックスの製造)
まず、窒化ケイ素(Si
3N
4)粉末(商品名:SN−E10、純度>98%、平均粒径:0.6μm、宇部興産社製)と、窒化アルミニウム(AlN)粉末(Hグレード、純度>98%、平均粒径:1.29μm、トクヤマ社製)と、酸化ユウロピウム(III)(Eu
2O
3)(信越化学工業社製)と、窒化カルシウム(Ca
3N
2)(SIGMA−ALDLICH社製)とを、モル比で、1:1:0.016:0.984(=Si:Al:Eu:Ca)となるように秤量した。
次いで、これらの原料粉末を、ボールミルで5時間乾式混合を行い、得られた混合粉末を瓶に充填した。原料粉末の秤量、混合、充填の操作は、全てグローボックス内で行った。
【0120】
次いで、混合粉末3gを直径25mmの黒鉛型に充填し、黒鉛のパンチ棒と試料の間にBN板を挟み、30MPaで一軸加圧しながら、放電プラズマ焼結装置(商品名:SPS―1050、富士電波工機社製)で焼成して焼結体を作製して、実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスを得た。
焼結温度は1760℃、焼結時間は10分間、焼成雰囲気は窒素ガス中とした。
また、実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスの形状は、円柱状であった。また、実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスの厚さは、機械加工により薄片化し、最終的に100μmとした。薄片化と同時に、両面鏡面研磨を行った。
【0121】
(透過率の測定)
実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例1と同様にして、可視光の直線透過率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0122】
(発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定)
実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスについて、実験例12と同様にして、発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定を行った。発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定では、FP6300(Jasco製)を用い、測定波長域を、発光スペクトルを471nm励起で485nm〜750nm、励起スペクトルを633nm励起で220nm〜600nmとした。結果を
図10に示す。また、発光波長ピークと励起波長ピークの測定結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1、
図2、
図3、
図4の結果から、実験例1〜実験例4の透明蛍光サイアロンセラミックスは、緑色の蛍光色を発光することができる。また、表1、
図5、
図7および
図8の結果から、実験例5〜実験例11の透明蛍光サイアロンセラミックスは、青色〜青緑色の蛍光色を発光することができる。また、表1および
図9の結果から、実験例11および実験例12の透明蛍光サイアロンセラミックスは、黄色の蛍光色を発光することができる。また、表1と
図10の結果から、実験例13の透明蛍光サイアロンセラミックスは、赤色の蛍光色を発光することができる。
図6の結果から、造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末の添加量が増加すると、透明蛍光サイアロンセラミックスにおける可視光の透過率が低下することが分かった。これは、造孔剤として、フェノール樹脂球状粉末の添加により、透明蛍光サイアロンセラミックス内に形成された細孔に空気を含むことに起因するものと考えられる。また、冷間静水圧加圧成形の回数が1回と10回では、得られた透明蛍光サイアロンセラミックスにおける可視光の透過率にほとんど差異がないことが分かった。
また、
図7および
図8の結果から、酸化セリウム(IV)(CeO
2)の添加量を変えることにより、透明蛍光サイアロンセラミックスにおける発光波長および励起波長をシフトできることが分かった。