(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービン動翼を覆うハウジングの流入口からスクロール部に至り、単一で構成され、又は複数に分割されて構成されるとともに、第一壁面及び、該第一壁面に対向する第二壁面をその一部として内面が形成されて前記タービン動翼に流体を供給する吸込流路内に配置され、流体の流れの上流から下流に向かって延び、前記第一壁面及び前記第二壁面に対して近接離間する方向に回動可能に前記ハウジングに設けられ、前記上流側の端部で前記第一壁面との間に上流側絞り流路を形成し、かつ、前記下流側の端部で前記第二壁面との間に下流側絞り流路を形成する弁本体を備え、
前記弁本体では、
前記上流側の端部は、前記第一壁面に対向した端部であり、該上流側の端部は、前記上流側から下流側向かって該第一壁面に漸次近接した後に漸次離間する第一面で形成されており、
前記下流側の端部には、前記第二壁面に対向する第二面を有する開閉弁装置。
前記弁本体には、前記第二面に開口する上流側開口と、該上流側開口よりも前記下流側で前記第一面に開口する下流側開口と、これら上流側開口と下流側開口とを接続するとともに前記第一面と前記第二面との間を貫通する貫通孔部とが形成されている請求項1に記載の開閉弁装置。
前記弁本体は、前記第一面として前記下流側に向かって該第一壁面に漸次近接する凸面、該凸面の下流側に連続して前記第二面に向かって凹状に湾曲する第一凹面、及び、該第一凹面の下流側に連続し、該第一凹面よりも大きな曲率半径で前記第二面に向かって凹状に湾曲する第二凹面と、
前記第二面として前記第一面から離間する側に向かって凸状に湾曲する凸面と、
を有する請求項1又は2に記載の開閉弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来例である
図11に示す構成では、開閉弁101の作動流体F0の流れ方向に対する角度が大きくなると、ディフーザ効果によって下流側で作動流体F0が剥離して逆流が発生し(
図10の破線Yに示す速度分布を参照)、圧力損失が増大してタービン100の運転効率低下を招く可能性がある。
特にターボチャージャや小型のガスタービンでは、開閉弁は1000℃レベルの高温ガスに晒された状態となるため、開閉弁の駆動機構における熱応力、熱変形、摩耗等の発生を回避する必要がある。このため、駆動機構を保護するような機構を設けたり、開閉弁とハウジングとのクリアランスを確保したりする必要がある。そしてこのような保護機構や、クリアランスからの漏れ流れによっても運転効率が低下してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、簡易な構造で、運転効率を向上することが可能な開閉弁装置、及びこの開閉弁装置を備える回転機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様の開閉弁装置は、タービン動翼を覆うハウジングの流入口からスクロール部に至り、単一で構成され、又は複数に分割されて構成されるとともに、第一壁面及び、該第一壁面に対向する第二壁面をその一部として内面が形成されて前記タービン動翼に流体を供給する吸込流路内に配置され、流体の流れの上流から下流に向かって延び、前記第一壁面及び前記第二壁面に対して近接離間する方向に回動可能に前記ハウジングに設けられ、前記上流側の端部で前記第一壁面との間に上流側絞り流路を形成し、かつ、前記下流側の端部で前記第二壁面との間に下流側絞り流路を形成する弁本体を備え、前記弁本体では、前記上流側の端部は、前記第一壁面に対向した端部であり、該上流側の端部は、前記上流側から下流側向かって該第一壁面に漸次近接した後に漸次離間する第一面で形成されており、前記下流側の端部には、前記第二壁面に対向する第二面を有している。
【0012】
このような開閉弁装置によれば、弁本体を回動させることにより、ハウジングの第一壁面との間の隙間、即ち、上流側絞り流路の流路幅を調整することができ、タービン動翼に流入する流体の流量を変化させることができる。
そして、上流側絞り流路では、弁本体の第一面の形状に応じて、徐々に流路幅が小さくなり、その後、徐々に流路幅が大きくなる。このため、上流側絞り流路を通過する流体は、第一面から剥離することを抑制されながら、ディフューザ効果によって圧力回復される。
さらに、下流側絞り流路を流体が通過すると流体は加速されるため、下流側絞り流路周辺の静圧が低下する。このため、第一壁面と弁本体との間の流路を流通する流体は、下流側絞り流路によって形成された静圧低下領域に向かって加速される。従って、第一面からの流体の剥離を抑制することができる。即ち、弁本体の下流側で流体の速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の第二の態様に係る開閉弁装置では、上記第一の態様における前記弁本体には、前記第二面に開口する上流側開口と、該上流側開口よりも前記下流側で前記第一面に開口する下流側開口と、これら上流側開口と下流側開口とを接続するとともに前記第一面と前記第二面との間を貫通する貫通孔部とが形成されていてもよい。
【0014】
このように弁本体に貫通孔部が形成されていることで、貫通孔部に上流側開口から流体が流入し、下流側開口から流出する。この結果、下流側開口の出口周辺で流体の流速が増大して静圧が低下するため、第一面を沿って流れる流体を下流側に向かって、加速させることができる。よって、弁本体の下流側で流体の速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下をさらに抑制することができる。
【0015】
また、本発明の第三の態様に係る開閉弁装置では、上記第一又は第二の態様における前記弁本体は、前記第一面として前記下流側に向かって該第一壁面に漸次近接する凸面、該凸面の下流側に連続して前記第二面に向かって凹状に湾曲する第一凹面、及び、該第一凹面の下流側に連続し、該第一凹面よりも大きな曲率半径で前記第二面に向かって凹状に湾曲する第二凹面と、前記第二面として前記第一面から離間する側に向かって凸状に湾曲する凸面と、を有していてもよい。
【0016】
このように、上流側絞り流路を通過した流体は凸面に沿って流通した後に、第一凹面と第二凹面とに沿って下流側へ流通することになる。この際、まず第一凹面によって第一壁面との間の流路幅の増加率を大きくとりつつ流体を流通させることができる。その後、第二凹面によって流路幅の増加率を小さく抑えながら流体を流通させることができる。即ち、より流速が速く、境界層が発達し易い下流側に曲率半径がより大きな第二凹面を設けることで、第一面からの流体の剥離をより効果的に抑制することができる。
さらに、第二壁面側に第二面としての凸面が設けられていることで、上流側で第二壁面との間の流路幅の減少率が急激に大きくなった後に、次第に流路幅の減少率が小さくなる。即ち、下流側絞り流路に向かって第二面に沿って流通する流体は加速され、下流側絞り流路周辺の静圧が低下する。このため、第一壁面と弁本体との間の流路を流通する流体は、下流側絞り流路によって形成された静圧低下領域に向かって加速され、第一面からの流体の剥離を抑制することができる。
よって、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の第四の態様に係る開閉弁装置は、上記第一から第三のいずれかの態様における前記弁本体を回動させる回動部を、前記ハウジングと別体として備えていてもよい。
【0018】
このように回動部を別体で備えることで、ハウジングの製造とは異なる工程で、回動部を別途加工することができ、加工精度を向上させることができる。このため、第一壁面及び第二壁面と弁本体とのクリアランスを可能な限り小さくできるような正確な加工が可能であり、クリアランスからの漏れ流れによる運転効率低下を抑制することができる。
また、回動部と弁本体との取り付け部分の加工精度を向上することが容易となり、取り付け部分の剛性を向上でき、取り付け部分の耐久性を向上でき、開閉弁装置の信頼性の向上につながる。
【0019】
また、本発明の第五の態様に係る開閉弁装置は、上記第一から第四のいずれかの態様における前記弁本体を、上流側から下流側に向かって列をなすように複数備え、各々の前記弁本体を個別に回動させる回動部を備えていてもよい。
【0020】
このように、弁本体が複数設けられて各々を回動させることで、最も上流側に位置する弁本体と第一壁面との間で上流側絞り流路を形成し、最も下流側に位置する弁本体と第二壁面との間で下流側絞り流路を形成することができる。さらに、これら弁本体を各々に回動させることで、上流側絞り流路及び下流側絞り流路の流路幅を任意に変化させることができる。また、これら弁本体を各々に回動させることで、弁本体同士の間で、上流から下流に向けて流体を流通させることが可能である。即ち、弁本体同士の間を流体が流通し、弁本体の第一面側に流出する。この結果、この流体の流出する位置で静圧が低下する。よって、第一面を沿って流れる流体を、下流側に向かって加速させることができる。従って、弁本体の下流側で流体の速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下を抑制することができる。
また、各々の弁本体の回動角を選択することで、列をなす複数の弁本体全体として、第二壁面へ向かって凸状をなす形状としたり、第一壁面に向かって凸状をなす形状としたり、任意の形状の弁本体を選択することができる。よって、流体の流れ場の状況に応じて、各々の弁本体を回動させることで、剥離等の抑制を効果的に行うことができる。
【0021】
また、本発明の第六の態様に係る回転機械は、軸線を中心として回転する回転軸と、回転軸とともに回転するタービン動翼と、前記回転軸及び前記タービン動翼を覆うとともに、該タービン動翼に流体を供給する吸込流路が形成されたハウジングと、前記吸込流路内で、前記ハウジングに設けられた上記第一から第五のいずれかの態様に記載の開閉弁装置と、を備えている。
【0022】
このような回転機械によれば、開閉弁装置を備えていることで、上流側絞り流路では、弁本体の第一面の形状に応じて、徐々に流路幅が小さくなり、その後、徐々に流路幅が大きくなる。このため、上流側絞り流路を通過する流体は、第一面から剥離することを抑制されながら、ディフューザ効果によって圧力回復される。さらに、下流側絞り流路を流体が通過すると流体は加速されるため、下流側絞り流路周辺の静圧が低下する。このため、第一壁面と弁本体との間の流路を流通する流体は、下流側絞り流路によって形成された静圧低下領域に向かって加速される。従って、第一面からの流体の剥離を抑制することができ、即ち、弁本体の下流側で流体の速度分布が均一化の方向に向かう。この結果、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の第七の態様に係る回転機械では、上記第六の態様における前記ハウジングでは、前記第二壁面が、前記スクロール部を前記流体の流通方向に交差する方向に二分割する分割壁面として形成されていてもよい。
【0024】
このようにスクロール部が二分割された回転機械であっても、弁本体の下流側で流体の速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり、全圧低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記の開閉弁装置、及び回転機械によれば、上流側絞り流路及び下流側絞り流路を形成するとともに、第一面を有する弁本体を設けることによって、簡易な構造で、運転効率を向上することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係るターボチャージャ1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ターボチャージャ1(回転機械)は、軸線O1を中心として回転する回転軸5と、回転軸5とともに回転するタービン2及び圧縮機3と、回転軸5を覆うハウジング4と、ハウジング4に設けられて回転軸5を支持する軸受装置7とを備えている。
【0028】
軸受装置7は、回転軸5のラジアル方向の荷重を受けるラジアル軸受7aと、スラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受7bとを有している。
【0029】
このターボチャージャ1は、図示しないエンジンからの排気ガスG(流体)によりタービン2が回転し、当該回転に伴って圧縮機3が圧縮した空気ARをエンジンに供給する。
【0030】
図2に示すように、タービン2は、タービン回転軸5aと、タービン回転軸5aに取り付けられたタービン動翼6と、タービン動翼6を覆うタービンハウジング4aと、タービンハウジング4aに設けられた開閉弁装置8とを備えている。
【0031】
タービン回転軸5aは、上記回転軸5におけるタービン2側の部分である。タービン回転軸5aは、圧縮機3側の圧縮機回転軸5bと一体となって、回転軸5を構成している。
【0032】
タービンハウジング4aは、圧縮機3を覆う圧縮機ハウジング4bと一体となってハウジング4を構成している。
【0033】
また、このタービンハウジング4aには、排気ガスGをタービン動翼6に取り込むスクロール流路C(吸込流路)が形成されている。
スクロール流路Cは、タービンハウジング4aに設けられて軸線O1の径方向外側に向かって延びて開口する入口部14(流入口)と、入口部14に連続してタービンハウジング4aに設けられ、周方向に渦巻き状にタービン動翼6に向かって延びるスクロール部15との内部に形成されている。
【0034】
入口部14には、スクロール流路Cの内面を形成する壁面17(第一壁面)と、この壁面17に軸線O1の方向に対向するように配されてタービン動翼6への入口から径方向外側に向かって延びる分割壁面18(第二壁面)とが形成されている。これにより、スクロール流路Cは軸線O1の方向に二つに分割されている。即ち、本実施形態のターボチャージャ1は、いわゆるツインスクロールターボとなっている。
以下、分割壁面18を挟んでスクロール流路Cにおけるタービン動翼6側の部分を第一流路C1とし、圧縮機3側の部分を第二流路C2とする。
【0035】
開閉弁装置8は、壁面17と分割壁面18との間にわたってタービンハウジング4aに設けられた弁本体10と、弁本体10をタービンハウジング4aに取り付ける回動部11とを備えている。
【0036】
弁本体10は、排気ガスGの流れの上流側から下流側に向かって、即ち、回転軸5の径方向に沿って延びる部材である。この弁本体10は、タービンハウジング4aの壁面17側を向く第一面21と、分割壁面18側を向く第二面22とを有しており、回転軸5の周方向から見た形状が翼形状をなしている。
【0037】
弁本体10は、上流側の端部(径方向外側の端部(前縁部10a))で壁面17との間に上流側絞り流路F1を形成し、下流側の端部(径方向内側(後縁部10b))で分割壁面18との間に下流側絞り流路F2を形成するように設けられている。上流側絞り流路F1及び下流側絞り流路F2は、排気ガスGの流路幅が小さくなる絞り部である。
【0038】
また、弁本体10の下流側の端部は、分割壁面18の先端部18aが、回転軸5の径方向に重なる位置まで延びている。換言すると、弁本体10の下流側の端部と回転軸5の軸線O1との距離は、先端部18aと回転軸5の軸線O1との距離に比べ小さくなっている。
【0039】
弁本体10における第一面21は、上流側の端部の位置となる前縁部10aに、後縁部10b側に向かって滑らかに湾曲して壁面17に漸次近接した後に、下流側に向かって壁面17から漸次離間するように直線状に形成されている。即ち、第一面21は、軸線O1の方向に壁面17側に向かって凸形状をなしている。
【0040】
弁本体10における第二面22は、第一面21と同様な形状をなしている。即ち、第二面22は、分割壁面17側に向かって凸形状をなしており、後縁部10b側に直線状に延びて形成されている。
【0041】
即ち、第一面21と第二面22とが後縁部10b側に向かって互いに離間した後、近接する。よって、弁本体10は、前縁部10aから後縁部10b側に向かって徐々に軸線O1方向に沿う方向の厚みが増大した後に徐々に厚みが減少し、前縁部10aに比べて後縁部10bでは、厚みが小さくなって先細り形状をなしている。
【0042】
回動部11は、入口部14でタービンハウジング4aに設けられて弁本体10を取り付けている。回動部11は、
図2に示すように、壁面17及び分割壁面18に近接離間する方向、即ち、回転軸5の周方向に沿って延びる軸線O2を中心として弁本体10を回動可能としている。この回動部11は不図示の制御部によって、弁本体10を所定の角度、回動させる。
【0043】
さらに、この回動部11は、弁本体10の回動中心となる軸線O2が弁本体10の外部に位置している。即ち、弁本体10の回動中心は、回転軸5の軸線O1の方向に圧縮機3側に、弁本体10から離間して配置されている。
【0044】
次に、
図3Aから
図3Cを参照して、弁本体10の動作について説明する。
具体的には、
図3Aに示すように、全開時は、弁本体10の前縁部10aが壁面17から離間し、第一面21が壁面17に沿うように配置される。また後縁部10bが分割壁面18から離間し、第二面22が分割壁面18に沿うように配置される。
本実施形態では、第一面21が壁面17に略平行になった状態が全開時となり、第一流路C1を通じてタービン動翼6に流入する排気ガスGの流量が最大となる。
【0045】
さらに、
図3Bに示すように、中間開度の場合には、全開時から開度θ(弁本体10の後縁部10bにおける壁面17から分割壁面18に向かう方向の傾き角)となって、弁本体10の前縁部10aが壁面17に近接し、後縁部10bが分割壁面18に近接する。この際、弁本体10の前縁部10aと壁面17との間には隙間が形成され、この隙間が上流側絞り流路F1となる。また、後縁部10bと分割壁面18との間にも隙間が形成され、この隙間が下流側絞り流路F2となる。
【0046】
そして、
図3Cに示すように、全閉時には弁本体10の前縁部10aが壁面17に接触するとともに、後縁部10bが分割壁面18の先端部に接触し、第一流路C1を閉塞する。
ここで、実際には全閉時は、弁本体10が完全に壁面17及び分割壁面18に接触する状態のみを示すのではなく、弁本体10と壁面17及び分割壁面18との間に微小な隙間が形成されている場合も含んでいる。
【0047】
ところで、開度θを大きくすることによって、弁本体10の翼弦長(前縁部10aから後縁部10bまでの長さ寸法)を小さくすることが可能である。この場合、弁本体10が高温の排気ガスGに晒される表面積が低減される。従って、開度θが10度よりも大きくなることが好ましい。またこの開度θは、15度から45度の範囲に設定することがさらに好ましい。
【0048】
このようなターボチャージャ1によると、弁本体10を回動部11によって回動させることにより、上流側絞り流路F1の流路幅を調整することができ、第一流路C1を通じてタービン動翼6に流入する排気ガスGの流量を変化させることができる。
【0049】
そして、中間開度の場合には、上流側絞り流路F1の形状は弁本体10の第一面21の形状に応じて、徐々に流路幅が小さくなり、その後、徐々に流路幅が大きくなる。このため、上流側絞り流路F1を通過する排気ガスGは、第一面21から剥離してしまうことを抑制されながら、ディフューザ効果によって圧力回復される。
【0050】
さらに、下流側絞り流路F2を排気ガスGが通過すると、排気ガスGは加速されるため、下流側絞り流路F2周辺の静圧が低下する。このため、弁本体10における第一面21と壁面17との間を流通する排気ガスGは、下流側絞り流路F2によって形成された上記の静圧低下領域S1(
図2参照)に向かって加速される。
【0051】
従って、第一面21からの排気ガスGの剥離を抑制することができる。即ち、
図2の破線Aに示すように、弁本体10の下流側で流体の速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり第一流路C1での全圧低下を抑制することができる。
【0052】
本実施形態のターボチャージャ1によると、上流側絞り流路F1及び下流側絞り流路F2を形成するとともに、翼形状をなす弁本体10を設けることによって、簡易な構造で、運転効率を向上することが可能である。
【0053】
ここで、本実施形態では弁本体10は、断面翼形状をなしているが、これに代えて、例えば断面楕円形状や、前縁部、後縁部を頂点とする断面ひし形状をなしていてもよい。即ち、前縁部から後縁部側に向かって第一面が漸次近接した後に漸次離間するように形成されていればよい。このため、第二面は必ずしも分割壁面18側に向かって凸形状をなしていなくともよく、例えば、周方向から見て直線状をなしていてもよい。
【0054】
〔第二実施形態〕
次に、
図4を参照して、本発明の第二実施形態に係るターボチャージャ31について説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、開閉弁装置30の弁本体32が第一実施形態とは異なっている。
【0055】
弁本体32は、第一実施形態と同様に断面翼形状をなしている。さらに、弁本体32には、第二面34に開口する上流側開口36と、第一面33に開口する下流側開口37と、上流側開口36と下流側開口37とを接続して弁本体32を貫通する貫通孔部38とが形成されている。
【0056】
上流側開口36は、弁本体32の回動中心となる軸線O2を回転軸5の径方向内外の両側から挟むようにして拡がり、第二面34に開口している。
【0057】
下流側開口37は、軸線O2よりも回転軸5の径方向内側の位置で、第一面33に開口している。下流側開口37の開口面積は上流側開口36の開口面積よりも小さくなっている。
即ち、弁本体32の前縁部32aと後縁部32bとを結ぶ直線に対して、上流側開口36は下流側開口37に比べて前縁部32aに近接して第二面34に開口し、下流側開口37は後縁部32bに近接して第一面33に開口している。
【0058】
貫通孔部38は、上流側開口36から徐々に孔径が小さくなる。また、貫通孔部38の内面のうち、弁本体32の後縁部32b側に位置する内面38aが、前縁部32a側に凸となるように円弧状に滑らかに湾曲して下流側開口37に接続されている。換言すると、貫通孔部38は、上流側開口36側では弁本体32の外方に向かって拡径するベルマウス状に形成されている。
【0059】
弁本体32に貫通孔部38が形成されていることで、貫通孔部38に上流側開口36から排気ガスGが流入して下流側開口37から流出する。この際、下流側開口37の出口周辺で排気ガスGの流速が増大して静圧が低下するため、第一面33を沿って流れる排気ガスGを下流側に向かって、加速させることができる。
【0060】
この結果、
図4の破線Bに示すように、弁本体32の下流側で排気ガスGの速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下をさらに抑制することができる。よって、本実施形態のターボチャージャ31では運転効率をさらに向上することが可能である。
【0061】
ここで、貫通孔部38は、弁本体32の回動中心となる軸線O2の方向に離間して複数形成されていてもよいし、一つのみが形成されていてもよい。同様に、弁本体32の延在方向(前縁部32aから後縁部32bに向かう方向)に複数形成されていてもよい。
【0062】
また、貫通孔部38の形状は必ずしも本実施形態の場合に限定されず、上流側開口36側がベルマウス状になっていなくともよい。例えば、上流側開口36から下流側開口37まで、断面積が一律となった単純な孔部であってもよい。さらに孔部は断面円形状でもよいし、断面矩形状であってもよい。
【0063】
〔第三実施形態〕
次に、
図5を参照して、本発明の第三実施形態に係るターボチャージャ41について説明する。
なお、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、開閉弁装置40の弁本体42が第一実施形態及び第二実施形態とは異なっている。
【0064】
弁本体42は、第一面43として、前縁部42aから後縁部42bに連続する凸面43a、第一凹面43b、及び第二凹面43cを有している。また第二面44として凸面44aを有している。
【0065】
第一面43の凸面43aは、弁本体42の前縁部42aに形成されており、後縁部42b側に向かって湾曲しつつ壁面17に漸次近接する。
【0066】
第一凹面43bは、凸面43aに対して後縁部42b側に滑らかに連続し、第二面44に向かって曲率半径R1で凹状に湾曲している。
【0067】
第二凹面43cは、第一凹面43bに対して後縁部42b側に滑らかに連続し、第一凹面43bよりも大きな曲率半径R2で第二面44に向かって湾曲している。
【0068】
第二面44の凸面44aは、前縁部42aから後縁部42b側に向かって延びるとともに、第一面43から離間する側に向かって凸状に湾曲している。
【0069】
本実施形態のターボチャージャ41によると、上流側絞り流路F1を通過した排気ガスGは、凸面43aに沿って流通した後に第一凹面43bと第二凹面43cとに沿って下流側へ流通することになる。この際、まず、より小さな曲率半径R1の第一凹面43bによって、壁面17との間の流路幅の増加率を大きくとりつつ排気ガスGを流通させることができる。
【0070】
その後、第二凹面43cによって流路幅の増加率を小さく抑えながら排気ガスGを流通させることができる。即ち、境界層が発達し易い下流側により大きな、曲率半径R2の第二凹面43cを設けることで、第一面43からの排気ガスGの剥離をより効果的に抑制することができる。
【0071】
さらに、第二面44が凸面44aとなっていることで、弁本体42が全閉の場合に近づくと、下流側絞り流路F2における上流側で分割壁面18との間の流路幅の減少率が急激に大きくなった後に、次第に流路幅の減少率が小さくなっていく(
図5のD部参照)。即ち、下流側絞り流路F2は、下流側に向かって流路面積が拡大するベルマウス形状となっている。
【0072】
この結果、第二面44の凸面44aに沿って流通する排気ガスGは、下流側絞り流路F2で下流側に向かって加速され、下流側絞り流路F2周辺の静圧が低下する。このため、壁面17と弁本体42との間を流通する排気ガスGは、下流側絞り流路F2によって形成された静圧低下領域S2に向かって加速され、第一面43からの排気ガスGの剥離を抑制することができる。よって、第一流路C1での圧力損失を抑えることが可能となり、全圧低下を抑制することができる。
【0073】
さらに、弁本体42の第二面44が凸面44aとなって、分割壁面18との間の下流側絞り流路F2がベルマウス状に形成されている。このため、排気ガスGが流通すると排気ガスGが加速された後に加速度が減少する。従って、排気ガスGの急激な加速によって排気ガスGの流れが乱れ、スクロール流路Cにおける第二流路C2に流入する排気ガスGの流れを乱して損失が生じてしまうことを抑制することができる。
【0074】
〔第四実施形態〕
次に、
図6を参照して、本発明の第四実施形態に係るターボチャージャ51について説明する。
なお、第一実施形態から第三実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、開閉弁装置50の弁本体52が第一実施形態から第三実施形態とは異なっている。
【0075】
弁本体52は、第三実施形態の弁本体42と同様に、第一面53として凸面53a、第一凹面53b、及び第二凹面53cを有し、第二面54として、凸面54aを有している。さらに、弁本体52には、第二実施形態と同様に、上流側開口36、下流側開口37、及び貫通孔部38が形成されていている。
本実施形態では、下流側開口37は、第一面53における第一凹面53bと第二凹面53cとの境界位置近傍に形成されている。
【0076】
本実施形態のターボチャージャ51によると、第二実施形態と同様に弁本体52の下流側で排気ガスGの速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下をさらに抑制することができる。よって、ターボチャージャ51の運転効率をさらに向上することが可能である。
【0077】
また、第一面53が第一凹面53bと第二凹面53cとによって湾曲して形成されているため、第一面53が直線的に形成されている場合に比べ、より第一面53に沿って排気ガスGを加速することができる。
即ち、下流側開口37よりも上流側(前縁部52a側)での第一面53の接線の傾きと、下流側開口37よりも下流側(後縁部52b側)での第一面53の接線の傾きとの角度差αが存在する。このため、下流側開口37から流出した排気ガスGを第二凹面53cに押し付けるようにして流通させ、第一面53での境界層流れの剥離を抑制することができる。
【0078】
〔第五実施形態〕
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、本発明の第五実施形態に係るターボチャージャ61について説明する。
なお、第一実施形態から第四実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、ターボチャージャ61は第一実施形態と同様の構成を備えているが、弁本体62を回動させる開閉弁装置60の回動部63が第一実施形態から第四実施形態とは異なっている。弁本体62は第一実施形態の弁本体10と同様の形状をなしている。
【0079】
回動部63は、弁本体62の回動中心となる軸線O2の方向の一方側(本実施形態では、
図7Aの紙面奥側)で、タービンハウジング4aの入口部14に開口する開口孔65から、スクロール流路C内に挿入されて設けられている。即ち、回動部63は、タービンハウジング4aとは別体で製造され、タービンハウジング4aに取り付けられている。
【0080】
より具体的には、
図7Bに示すように、回動部63は、開口孔65にタービンハウジング4aの外側から接触するフランジ部63aを有し、かつ、フランジ部63aがタービンハウジング4aに接触した状態で、スクロール流路Cの内面と面一となる回動部本体63bを有している。
【0081】
また回動部63は、軸線O2を中心とした円柱状に形成されて回動部本体63bを軸線O2方向に貫通する軸部材63cと、弁本体62と軸部材63cとの間に介在された円盤状をなす取付板63dとを有している。
【0082】
取付板63dは回動部本体63bに埋め込まれるようにして設けられ、スクロール流路C側の表面は、回動部本体63bの表面とともに、スクロール流路Cの内面と面一になっている。
また、第一実施形態から第四実施形態と同様に、弁本体62の回動中心が、弁本体62の外部に位置するように取付板63dに弁本体62が取り付けられている。
【0083】
本実施形態のターボチャージャ61によると、回動部63を別体で備えることで、タービンハウジング4aの製造とは異なる工程で、回動部63を別途加工することができる。このため、タービンハウジング4aに回動部63を直接形成する場合に比べて加工が容易となり、加工精度を向上させることができる。
【0084】
このため、弁本体62と壁面17、及び弁本体62と分割壁面18とのクリアランスを、可能な限り小さくできるような正確な加工が可能となる。よって、クリアランスからの漏れ流れによる運転効率低下を抑制することができる。
【0085】
また、取付板63dの加工精度を向上することが容易となり、取付板63dの剛性を向上することが可能となり、取付板63dと弁本体62との取り付け部分の耐久性を向上することができ、信頼性の向上につながる。
【0086】
ここで、本実施形態での回動部63を、第一実施形態から第四実施形態の回動部11に代えて用いてもよい。
【0087】
〔第六実施形態〕
次に、
図8を参照して、本発明の第六実施形態に係るターボチャージャ71について説明する。
なお、第一実施形態から第五実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、開閉弁装置70の弁本体72が第一実施形態から第四実施形態とは異なっている。
【0088】
弁本体72としては、第一実施形態の弁本体10と同様な形状をなすものが、上流側から下流側に向かって列をなすように複数(本実施形態では二つ)設けられている。各々の弁本体72は、回動部11によって個別に回動される。
ここで、上流側の弁本体72を第一弁本体72A、下流側の弁本体72を第二弁本体72Bとする。
【0089】
第一弁本体72Aは、上流側の端部(径方向外側の端部(前縁部72Aa))でタービンハウジング4aの壁面17との間に上流側絞り流路F1を形成している。
【0090】
第二弁本体72Bは、下流側の端部(径方向内側の端部(後縁部72Bb))でタービンハウジング4aの分割壁面18との間に下流側絞り流路F2を形成している。
【0091】
ここで、複数の弁本体72が列をなす状態とは、上流側の第一弁本体72Aの後縁部72Abに隣接して下流側の第二弁本体72Bの前縁部72Baが配置されている状態をいう。そして、上流側の第一弁本体72Aと、下流側の第二弁本体72Bとが完全に一列になっていない状態、即ち、例えば弁本体72同士が回転軸5の軸線O1の方向に多少ずれた位置に配置されていてもよい。
【0092】
本実施形態のターボチャージャ71によると、第一弁本体72A及び第二弁本体72Bの各々を回動させることで、上流側絞り流路F1及び下流側絞り流路F2の流路幅を任意に変化させることができる。また、これら第一弁本体72A、第二弁本体72Bを各々に回動させることで、第一弁本体72Aと第二弁本体72Bとの間で、上流から下流に向けて排気ガスGを流通させることが可能である。
【0093】
弁本体72同士の間を排気ガスGが流通し、第一弁本体72A及び第二弁本体72Bの第一面73側に流出することで、この流出する位置で静圧が低下する。よって、第一面73を沿って流れる排気ガスGを下流側に向かって加速させることができる。この結果、
図8の破線Eに示すように、下流側に位置する第二弁本体72Bの下流側で、排気ガスGの速度分布が均一化の方向に向かい、圧力損失を抑えることが可能となり全圧低下をさらに抑制することができる。
【0094】
また、各々の弁本体72の回動角を選択することで、列をなす複数の弁本体72の全体で、分割壁面18へ向かって凸状をなす形状としたり、壁面17に向かって凸状をなす形状としたり、弁本体72の全体を任意の形状とすることができる。よって、排気ガスGの流れ場の状況に応じて、各々の弁本体72を回動させることで、剥離等の抑制を効果的に行うことができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、
図9に示すように、開閉弁装置8(30、40、50、60、70)を、スクロール流路C3が軸線O1に交差する方向に二つに分割された構造のターボチャージャ81に適用してもよい。
【0096】
即ち、スクロール流路C3は、軸線O1を中心とした渦巻き状に形成された分割壁84を介して隣接する径方向外側の第一流路C4と、径方向内側の第二流路C5とから構成されている。分割壁84には、第一流路C4から第二流路C5に向かって排気ガスGを流入させる貫通孔86が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0097】
貫通孔86は、第一流路C4側で大きく開口し、第一流路C4側に比べて第二流路C5側で小さく開口しており、径方向外側から内側に向かうに従って、タービン動翼6の回転方向に向かって傾斜して形成されている。
開閉弁装置8(30、40、50、60、70)における弁本体10(32、42、52、62、72)は、第一流路C4内に配されて、第一流路C4を形成するハウジング82の壁面83(軸線O1の径方向内側を向く面(第一壁面))と、分割壁84における分割壁面85(軸線O1の径方向外側を向く面(第二壁面))との間に配されている。
この弁本体10(32、42、52、62、72)は、弁本体10の回動軸となる軸線O2が軸線O1に沿うようにハウジング82に設けられている。
【0098】
また、上述の実施形態では、スクロール流路C(C3)は軸線O1の方向に二つに分割されている例について説明したが、このように複数に分割されてスクロール流路C(C3)が構成されている場合に限定されず、単一の流路としてスクロール流路が構成されていてもよい。
具体的には、
図10に示すように、ターボチャージャ91では、ハウジング92に単一の流路としてのスクロール流路C7が形成されている。
【0099】
図10に示す例では、スクロール流路C7は、軸線O1の径方向外側に向かって延びて開口する入口部93(流入口)と、入口部93に連続して周方向に渦巻き状にタービン動翼6に向かって延びるスクロール部94との内部に形成されている。
また、スクロール流路C7はハウジング92の壁面である第一壁面95と、第一壁面95に軸線O1に交差する方向で対向する第二壁面96との間に形成されている。
【0100】
さらに、入口部93とスクロール部94との接続部分でハウジング92には、スクロール流路C7内で、軸線O1の周方向に沿って延びるように舌部92aが形成されている。舌部92aの内面は第二壁面96の端部を形成している。
【0101】
開閉弁装置8(30、40、50、60、70)における弁本体10(32、42、52、62、72)は、スクロール流路C7内で第一壁面95と第二壁面96との間に配されている。
【0102】
また、弁本体10(32、42、52、62、72)は、弁本体10の回動軸となる軸線O2が軸線O1に沿うようにハウジング92に設けられている。
【0103】
弁本体10が軸線O2を中心として回動すると、弁本体10の後縁部10bが舌部92aに近接、離間するようになっている。
【0104】
ここで、スクロール流路C(C3、C7)の断面形状(排気ガスGの流れに交差する断面)は、矩形、円形、楕円形等、様々な形状であってもよいが、矩形状であることが好ましい。
【0105】
また、上述の各実施形態、の構成を組み合わせてもよい。
さらに、上述の各実施形態では、回転機械としてターボチャージャに開閉弁装置8(30、40、50、60、70)を適用した例について説明を行ったが、ガスタービンやエキスパンダ等の他の回転機械に適用することも可能である。