(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係るターニング装置30について
図1から
図3を参照して説明する。
ターニング装置30は、例えば、蒸気タービン(不図示)のタービンロータ11を低速で回転させるための装置である。
本実施形態において、タービンロータ11の一端には、タービンロータ11の外周に一体的に取り付けられたホイールギア12と、タービンロータ11の回転数を計測する回転数計測器13とを備えている。
【0013】
図1に示すように、ターニング装置30は、ケーシング31と、動力部40と、動力伝達部50とを備えている。ターニング装置30は、タービンロータ11の一端に配置されている。
本実施形態において、
図1の左右方向を幅方向、上下方向を上下方向、タービンロータ11の軸方向を軸方向と称する。
【0014】
動力部40は、電動機41と、電動機41の回転駆動力を伝達する出力軸43と、出力軸43から伝達された回転駆動力を所定の速度比(減速比)で減じる減速機42とを備えている。本実施形態において、動力部40は、ケーシング31の上面に配置されている。
【0015】
動力伝達部50は、出力ギア51と、連結ギア52と、移動ギア53とを備えている。本実施形態において、動力伝達部50は、ケーシング31の内部に配置されている。
【0016】
出力ギア51は、減速機42から不図示のベルトが掛け渡されており、これにより回転駆動力が伝達される。
連結ギア52は、出力ギア51の下方おいて出力ギア51と噛合するように配置されている。出力ギア51が動力部40からの回転駆動力により回転すると、連結ギア52もともに回転する。
【0017】
移動ギア53は、連結ギア52の下方において連結ギア52と噛合するように配置されている。移動ギア53は、連結ギア52の回転に伴って回転する。
また、移動ギア53は、
図2及び
図3に示すように、後述の移動機構60により、第一位置P1と、第二位置P2及び第三位置P3との間で移動可能に構成されている。第一位置P1は、ホイールギア12と噛合する位置である(
図2及び
図3において破線で示す位置)。第二位置P2は、ホイールギア12との噛合が解除され、ホイールギア12から径方向外方に向かって離間した位置である(
図2において実線で示す位置)。第三位置P3は、ホイールギア12との噛合が解除され、ホイールギア12から径方向外方に向かって離間した位置である。本実施形態では、第三位置P3は、第一位置P1と第二位置P2との間に位置する(
図3において実線で示す位置)。
【0018】
移動ギア53は、第一位置P1に位置するときは、タービンロータ11のホイールギア12と噛合し、動力部40から伝達された回転駆動力によりホイールギア12を回転させる。ターニング装置30は、ホイールギア12を回転させることにより、タービンロータ11を回転させる。また、移動ギア53は、第二位置P2及び第三位置P3に位置するときは、タービンロータ11のホイールギア12との噛合が解除されているため、動力部40から伝達された回転駆動力をホイールギア12に伝達しない。
【0019】
移動機構60は、
図1に示すように、制御装置61と、エアシリンダ62と、レバー64と、移動ロッド66と、ブラケット67とを備える。
また、本実施形態において、エアシリンダ62は近接スイッチ69を備える。近接スイッチ69は、移動ギア53が第一位置P1に位置することを検知する第一近接スイッチ69a(第一位置検知)と、移動ギア53が第二位置P2に位置することを検知する第二近接スイッチ69b(第二位置検知)とを有する。
制御装置61は、本実施形態において、移動ギア53を第一位置P1と、第二位置P2及び第三位置P3とに移動させるようにエアシリンダ62の制御を行う。
【0020】
ターニングを行う際には、制御装置61は近接信号を受信し、エアシリンダ62に駆動空気を給排する給排管(不図示)に設けられた電磁弁(不図示)を制御する。これにより、制御装置61は、エアシリンダ62が移動ギア53を第二位置P2(
図2における実線の位置)から第一位置P1(
図2における破線の位置)へ移動させるように制御する。このとき、移動ギア53が第一位置P1に位置していることを第一近接スイッチ69aで検知して、第一近接スイッチ69aをONにする。この第一近接スイッチ69aがONとなると、ターニング装置30は電動機41を動作させる。これにより、ターニング装置30はターニングを開始する。
【0021】
制御装置61は、蒸気タービンの起動の際、タービンロータの駆動力により移動ギア53がタービンロータ11の径方向外方側へ蹴り出されることにより、移動ギア53が第一位置P1に位置していることを検知する第一近接スイッチ69aがOFFになる。第一近接スイッチ69aがOFFになることにより、制御装置61はターニングが完了したと判断しターニングを停止する。ターニングを停止する際には、制御装置61は退避信号を受信し、エアシリンダ62に駆動空気を給排する給排管(不図示)に設けられた電磁弁(不図示)を制御する。これにより、制御装置61は、エアシリンダ62が移動ギア53を第一位置P1(
図2における破線の位置)から第二位置P2(
図2における実線の位置)へ移動させるように制御する。
このとき、移動ギア53が第二位置P2に位置していることを第二近接スイッチ69bで検知して第二近接スイッチ69bがONになる。第二近接スイッチ69bは、第二近接スイッチ69bがONになったことを制御装置61にフィードバックする。
【0022】
また、ターニング停止中において、制御装置61は、固着防止信号を受信し、エアシリンダ62に駆動空気を給排する給排管(不図示)に設けられた電磁弁(不図示)を制御する。これにより、制御装置61は、エアシリンダ62が移動ギア53を第二位置P2(
図3における破線の位置)から第三位置P3(
図3における実線の位置)へ移動させるように制御する。
【0023】
エアシリンダ62は、制御装置61の制御に従い、移動ギア53を第一位置P1と、第二位置P2と、第三位置P3とのいずれかの位置に移動させるための動力源である。本実施形態において、エアシリンダ62はケーシング31の幅方向一方側の外側面に設けられている。
エアシリンダ62は、上下方向にスライド可能に延在するピストンロッド62aと、ピストンロッド62aを格納するエアシリンダケース62bとを有する。エアシリンダ62には、給排管(不図示)より電磁弁(不図示)を介して駆動空気が給排される。エアシリンダ62は、電磁弁によって駆動空気の給排量が変化することにより、ピストンロッド62aの上下方向のストロークが変化するように構成されている。本実施形態において、エアシリンダ62は、移動ギア53を第一位置P1と第二位置P2との間で移動させるためのストロークと、移動ギア53を第二位置P2と第三位置P3との間で移動させるためのストロークとの、二つのストロークで駆動するように構成されている。
【0024】
ピストンロッド62aの上端部はケーシング31の上面よりも上方の位置まで延出しており、幅方向に延在するレバー64の第一端64a側に接続されている。また、エアシリンダケース62bの幅方向における側面には、レバー64が挿通されるスリットが上下方向に形成されている。
【0025】
レバー64の第二端64bは、ケーシング31の上面に設けられた支持部65によって傾動可能に支持されている。このため、エアシリンダ62のピストンロッド62aが上下方向にスライドすることにより、支持部65に支持されたレバー64の第二端64bを支点として、ピストンロッド62aに連結されたレバー64の第一端64aが上下方向に移動する。
【0026】
移動ロッド66は上下方向に延在し、上端66aはケーシング31の上面よりも上方の位置において、レバー64とピストンロッド62aとが連結している位置と、レバー64の第二端64bとの間に傾動可能に連結されている。また、移動ロッド66の下端66b側はケーシング31の内部に挿入されている。移動ロッド66は、レバー64がエアシリンダのピストンロッド62aのスライド移動に伴い傾動することにより、連動して上下方向に移動する。
【0027】
ブラケット67は、略L字状に形成された板状の部材である。ブラケット67の第一端67aは移動ロッド66の下端66bに傾動可能に連結されている。また、ブラケット67の第二端67bは移動ギア53の中心軸に連結されおり、中間部67cは連結ギア52の中心軸に連結されている。このため、ブラケット67は、移動ロッド66の上下方向への移動に伴い、中間部67cを支点として第一端67aは上下方向に、第二端67bはホイールギア12の径方向に移動する。
【0028】
例えば、
図2に示すように、移動ギア53が第一位置P1に位置するときに、制御装置61が、移動ギア53が第一位置P1に位置していることを検知する第一近接スイッチ69aがOFFになり退避信号を受信すると、制御装置61は電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダ62のピストンロッド62aを下方向に移動させるように駆動空気を給排する。ピストンロッド62aは、レバー64とともに、移動ロッド66を下方向に移動させる。移動ロッド66が下方向に移動すると、ブラケット67の中間部67cを支点として、ブラケット67の第一端67aは下方向に移動し、ブラケット67の第二端67bはホイールギア12の径方向外方側に向かって移動する。このとき、ブラケット67の第二端67bは移動ギア53の中心軸に連結されているため、移動ギア53もホイールギア12の径方向外方側(第二位置P2)に向かって移動する。このとき、移動ギア53が第二位置P2に位置していることを第二近接スイッチ69bで検知して第二近接スイッチ69bがONになる。第二近接スイッチ69bは、第二近接スイッチ69bがONになったことを制御装置61にフィードバックする。
【0029】
また、
図2に示すように移動ギア53が第二位置P2に位置するときに、制御装置61が近接信号を受信すると、制御装置61は電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダ62のピストンロッド62aを上方向に移動させるように駆動空気を給排する。ピストンロッド62aは、レバー64とともに、移動ロッド66を上方向に移動させる。移動ロッド66が上方向に移動すると、ブラケット67の中間部67cを支点として、ブラケット67の第一端67aは上方向に移動し、ブラケット67の第二端67bはホイールギア12の径方向内方側に向かって移動する。このとき、ブラケット67の第二端67bは移動ギア53の中心軸に連結されているため、移動ギア53もホイールギア12の径方向内方側(第二位置P2)に向かって移動する。
【0030】
さらに、
図3に示すように移動ギア53が第二位置P2に位置するときに、制御装置61は固着防止信号を受けて電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダ62のピストンロッド62aを上方向に移動させるように駆動空気を給排する。ピストンロッド62aは、レバー64とともに、移動ロッド66を上方向に移動させる。移動ロッド66が上方向に移動すると、ブラケット67の中間部67cを支点として、ブラケット67の第一端67aは上方向に移動し、ブラケット67の第二端67bはホイールギア12の径方向内方側に向かって移動する。このとき、ブラケット67の第二端67bは移動ギア53の中心軸に連結されているため、移動ギア53もホイールギア12の径方向内方側(第三位置P3)に向かって移動する。このとき、移動ギア53が第二位置P2に位置していることを検知する第二近接スイッチ69bがOFFになることにより、第二近接スイッチ69bは、移動ギア53が第二位置P2の位置を離れたことを制御装置61へフィードバックする。
【0031】
次に、ターニング装置30の動作について
図1〜3を参照して説明する。
【0032】
まず、ターニング開始前の状態では、移動ギア53は第二位置P2(
図2における実線の位置)に配置されている。蒸気タービンを稼働させるためにターニングを開始するときには、制御装置61が近接信号を受信して電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダ62に駆動空気を給排する。これにより、エアシリンダ62がレバー64を押し上げて傾動させ、移動ロッド66及びブラケット67を押し下げる。こうしてブラケット67の第二端67bに連結された移動ギア53を第二位置P2(
図2における実線の位置)から第一位置P1(
図2における破線の位置)に移動させる。このとき、移動ギア53が第一位置P1に位置していることを第一近接スイッチ69aで検知し、第一近接スイッチ69aをONにする。この第一近接スイッチ69aがONになると、ターニング装置30は電動機41を駆動する。
【0033】
なお、制御装置61は、ターニングを開始する際に近接信号を生成し、制御装置61自身に当該近接信号を送信するようにしてもよい。また、操作者の操作によって外部から制御装置61に近接信号が送信されるようにしてもよい。
【0034】
ターニング中、制御装置61は、回転数計測器13で計測されたタービンロータ11の回転数を、所定の間隔毎に取得している。電動機41の回転駆動力は、出力軸43を通じて減速機42に伝達され、減速機42において所定の速度比(減速比)で回転数が減じられる。このように、動力部40は、動力伝達部50の出力ギア51へ回転駆動力を出力する。
出力ギア51は、減速機42から伝達された回転駆動力により回転を始め、出力ギア51と噛合する連結ギア52を回転させる。これにより、連結ギア52と噛合する移動ギア53も回転を始める。
このとき、移動ギア53は第一位置P1に位置しており、第一近接スイッチ69aはONになっている。つまり、タービンロータ11のホイールギア12と噛合している。このため、移動ギア53が回転することにより、ホイールギア12とともにタービンロータ11も回転を始める。
【0035】
次に、制御装置61は、蒸気タービンの起動の際に、移動ギア53がタービンロータ11の径方向外方側へ蹴り出され、移動ギア53が第一位置P1に位置していることを検知する第一近接スイッチ69aがOFFになると、退避信号を受信する。退避信号を受信した制御装置61は、電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダに駆動空気を給排する。これにより、
図2に示すように、エアシリンダ62がレバー64と移動ロッド66とを押し下げてブラケット67を傾動させる。こうしてブラケット67の第二端67bに連結された移動ギア53を第一位置P1(
図2における破線の位置)から第二位置P2(
図2における実線の位置)へ移動する。第二近接スイッチ69bが移動ギア53が第二位置P2に位置していることを検知すると、第二近接スイッチ69bがONになる。
【0036】
なお、制御装置61は、移動ギア53が第一位置P1に位置していることを検知している第一近接スイッチ69aの状態、または、回転数計測器13で計測されるタービンロータ11の回転数に基づき、ターニングが完了したかどうかを判断する。例えば、制御装置61は、第一近接スイッチ69aがOFFになったことを検出した場合、ターニングが完了したと判断するようにしてもよい。また、制御装置61は、タービンロータ11の回転数が所定値を超えた場合、ターニングが完了したと判断するようにしてもよい。
また、ターニングが完了したと判断したとき、制御装置61は退避信号を生成し、制御装置61自身に当該退避信号を送信するようにしてもよい。また、操作者の操作によって外部から制御装置61に退避信号が送信されるようにしてもよい。
移動ギア53を第二位置P2へ移動させた後、ターニング装置30は電動機41の回転を停止させ、ターニングを停止する。
【0037】
ターニング停止中において、制御装置61は、固着防止信号を受信して電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダ62に駆動空気を給排する。これにより、
図3に示すように、エアシリンダ62がレバー64と移動ロッド66とを押し上げてブラケット67を傾動させる。こうしてブラケット67の第二端67bに連結された移動ギア53を第二位置P2(
図3における破線の位置)から第三位置P3(
図3における実線の位置)へ移動する。このとき、移動ギア53が第二位置P2に位置していることを検知する第二近接スイッチ69bがOFFになることにより、第二近接スイッチ69bは、移動ギア53が第二位置P2の位置を離れたことを制御装置61へフィードバックする。
なお、制御装置61は、タイマー(不図示)により所定時間を経過したと判断した時に、固着防止信号生成し、制御装置61自身に当該固着防止信号を送信するようにしてもよい。このとき、制御装置61は、第二近接スイッチ69bがONになってから所定時間を経過したかどうかを判断するようにしてもよい。また、制御装置61は、操作者の操作によって外部から制御装置61に固着防止信号が送信されるようにしてもよい。
【0038】
移動ギア53が第三位置P3へ到達した後、制御装置61は、退避信号を受信し、エアシリンダ62が移動ギア53を再び第二位置P2へ移動させるように、電磁弁(不図示)を制御する。このとき、制御装置61が退避信号を生成するように構成している場合は、移動ギア53が第三位置P3に到達後すぐに制御装置61が退避信号を生成するようにしてもよいし、タイマーにより所定時間を経過したと判断したときに退避信号を生成するようにしてもよい。また、操作者の操作によって外部から制御装置61に退避信号が送信されるようにしてもよい。移動ギア53が第二位置P2に到達すると、第二近接スイッチ69bがONになる。
【0039】
蒸気タービンを停止させるために再びターニングを開始する場合は、上記と同様に、制御装置61は近接信号を受信して電磁弁(不図示)を制御し、エアシリンダ62に駆動空気を給排する。これにより、エアシリンダ62がレバー64を押し上げて傾動させ、移動ロッド66及びブラケット67を押し下げる。こうしてブラケット67の第二端67bに連結された移動ギア53が第二位置P2または第三位置P3から、第一位置P1へ移動する。
【0040】
次に、本実施形態におけるターニング装置30の効果を説明する。
上述のターニング装置30によれば、ターニング停止中において、制御装置61は、固着防止信号を受信すると、移動ギア53が第二位置P2と第三位置P3との間で移動するように制御する。つまり、移動ギア53と、移動ギア53を移動させるための移動機構60とを動作させることにより、ターニング停止中に移動ギア53と移動機構60とが停止した状態が長期間継続されないようにすることができる。このため、ターニング停止中に移動ギア53と移動機構60とに付着物が固着することを抑制することができる。
【0041】
上述のターニング装置30によれば、制御装置61は、固着防止信号を受信すると、移動ギア53が第二位置P2と第三位置P3との間で移動するように制御する。このため、ターニング停止中の期間が長く続いたとしても、制御装置61が固着防止信号に基づいて移動ギア53を移動させるため、移動ギア53と移動機構60とが停止した状態が長期間継続されないようにすることができる。これにより、ターニング停止中に移動ギア53と移動機構60とに付着物が固着することを抑制することができる。また、制御装置61がタイマー(不図示)により所定時間経過ごとに固着防止信号を受信するように構成されている場合は、操作者が操作をする手間を低減させることができる。
【0042】
上述のターニング装置30によれば、第三位置P3は、第一位置P1と第二位置P2との間に位置するため、移動ギア53は第一位置P1から第二位置P2までの範囲内において移動する。このため、移動ギア53を第三位置P3に移動させるに当たり、移動ギア53の移動範囲を拡張する必要がない。このため、ターニング装置30の大きさを変更せずに、移動ギア53を第三位置P3に移動する構成を採用することができる。これにより、当該構成を備えたターニング装置30を既存の蒸気タービン等へ適用することが可能であり、ターニング装置30の改造等にかかる費用を抑えることができる。
【0043】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係るターニング装置30について
図4を参照して説明する。
第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。本実施形態では、エアシリンダ62がメカストッパ68を有する点において、第一実施形態とは異なっている。
【0044】
本実施形態においては、
図4に示すように、移動ギア53がホイールギア12やケーシング31の内壁に衝突することを抑制するために、レバー64の上下方向における傾動を規制するメカストッパ68が、エアシリンダケース62bのスリットに設けられている。メカストッパ68は、レバー64の上方向への傾動を規制する第一メカストッパ68aと、下方向への傾動を規制する第二メカストッパ68bとを有する。第一メカストッパ68aは、移動ギア53の第一位置P1に対応する位置に設けられ、第二メカストッパ68bは、移動ギア53の第二位置P2に対応する位置に設けられている。本実施形態において、メカストッパ68は、第一メカストッパ68aと第二メカストッパ68bとの間に設けられた第三メカストッパ68cを更に有する。第三メカストッパ68cは、移動ギア53の第三位置P3に対応する位置に設けられている。
【0045】
第三メカストッパ68cは、軸方向にスライド移動可能な板状の部材で形成されており、移動ギア53が第一位置P1と第二位置P2との間を移動する際は、レバー64の上下方向の移動を規制しないように、エアシリンダケース62bのスリットから軸方向一方側であって、当該スリットを塞がない位置へ退避している。移動ギア53が第二位置P2と第三位置P3との間を移動する際は、レバー64の下方向への移動を規制するように、第三メカストッパ68cを軸方向他方側へスライドし、エアシリンダケース62bのスリットを軸方向に塞ぐ(跨ぐ)ように配置される。
【0046】
ターニングを開始するとき、及び停止するときは、第三メカストッパ68cはエアシリンダケース62bのスリットを塞がないように、軸方向一方側へ退避した状態となっている。
【0047】
ターニング停止中において、制御装置61は固着防止信号を受信すると、第三メカストッパ68cを軸方向他方側へスライド移動させる。これにより、第三メカストッパ68cはエアシリンダケース62bのスリット上を軸方向において塞ぐように配置される。このようにして、レバー64が所定位置、つまり移動ギア53の第三位置P3に対応する位置よりも下方向へ移動しないように規制する。
第三メカストッパ68cがエアシリンダケース62bのスリットを塞いだ後、制御装置61は第一実施形態と同様に、移動ギア53が第二位置P2と第三位置P3との間で移動するようにエアシリンダ62を制御する。
【0048】
制御装置61は、移動ギア53の第二位置P2と第三位置P3との間での移動が完了すると、第三メカストッパ68cを軸方向一方側へスライドさせ、エアシリンダケース62bのスリット上から退避させる。
【0049】
上述のターニング装置30によれば、メカストッパ68(68a、68b、68c)がエアシリンダケース62bのスリットに設けられている。これにより、レバー64の上下方向への移動が規制されるため、移動ギア53が第一位置P1を超えてホイールギア12の径方向内方側へ移動したり、第二位置P2を超えてホイールギア12の径方向外方側へ移動することを抑制することができる。このため、移動ギア53がホイールギア12やケーシング31の内壁に衝突することを抑制することができる。
【0050】
上述のターニング装置30によれば、ターニング停止中において、制御装置61は、固着防止信号を受信すると、第三メカストッパ68cを軸方向他方側へスライド移動させる。これにより、第三メカストッパ68cがエアシリンダケース62bのスリット上を軸方向に塞ぐように配置される。このため、レバー64の下方向への移動を規制して、移動ギア53が第三位置P3よりもホイールギア12の径方向内方側へ移動しないように規制することができる。このように構成することにより、ターニング停止中に移動ギア53が第一位置P1まで移動してしまうことを抑制することが可能となり、ターニング停止中において移動ギア53を安全に移動させることができる。
【0051】
本実施形態において、制御装置61が固着防止信号を受信したときに第三メカストッパ68cを軸方向他方側にスライド移動させる構成としたが、これに限られることはない。制御装置61が退避信号を受信したときに第三メカストッパ68cを軸方向他方側にスライド移動させ、制御装置61が近接信号を受信したときに第三メカストッパ68cを軸方向一方側にスライド移動させるようにしてもよい。また、操作者が手動で第三メカストッパ68cの位置を変更するようにしてもよい。
さらに、第三メカストッパ68cは、レバー64の移動を規制可能であればどのような構成でもよく、例えば、楔状のキーをエアシリンダケース62bのスリットに差し込むようにしてもよい。
このような構成によっても、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0053】
例えば、上述の実施形態においては、エアシリンダ62を一つ設ける構成について説明したが、これに限られることはない。エアシリンダ62を二つ設け、それぞれのピストンロッド62aの上下方向の移動範囲を異なるように設定してもよい。このとき、一方のエアシリンダ62のピストンロッド62aは、移動ギア53の第一位置P1と第二位置P2との移動範囲に対応する範囲で上下移動可能に設定する。また、他方のエアシリンダ62のピストンロッド62aは、移動ギア53の第二位置P2と第三位置P3との移動範囲に対応する範囲で上下移動可能に設定する。このように構成することにより、ターニングの開始と停止においては、一方のエアシリンダ62のみを稼働させ、移動ギア53を第一位置P1と第二位置P2との間のみで移動させるようにすることができる。また、ターニング停止中においては、他方のエアシリンダのみを稼働させ、第二位置P2と第三位置P3との間のみで移動させるようにすることができる。具体的には、退避信号を受信した場合、制御装置61は一方のエアシリンダ62を制御して、移動ギア53を第一位置P1に移動させる。また、近接信号を受信した場合、制御装置61は一方のエアシリンダ62を制御して、移動ギア53を第二位置P2に移動させる。さらに、この例においては、固着防止信号は第一固着防止信号と第二固着防止信号とを有する。第一固着防止信号を受信した場合、制御装置61は他方のエアシリンダ62を制御して、移動ギア53を第三位置P3に移動させる。また、第二固着防止信号を受信した場合、制御装置61は他方のエアシリンダ62を制御して、移動ギア53を第二位置P2に移動させる。
このように構成することにより、制御装置61はそれぞれの信号に対応するエアシリンダ62を制御すればよく、エアシリンダ62のストロークを変化させるよりも制御を単純化することができる。
【0054】
また、上述の実施形態においては、駆動空気により駆動するエアシリンダ62を備える構成について説明したが、これに限られることは無い。例えば、エアシリンダに代えて、油圧シリンダ等を備えてもよい。