特許 6222616 洗浄水量調整装置、この洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6222616

(24)【登録日】2017年10月13日

(45)【発行日】2017年11月1日

(54)【発明の名称】洗浄水量調整装置、この洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器

(51)【国際特許分類】

   E03D 1/01 20060101AFI20171023BHJP

【ＦＩ】

   E03D1/01 Z

【請求項の数】8

【全頁数】17

(21)【出願番号】特願2013-197056(P2013-197056)

(22)【出願日】2013年9月24日

(65)【公開番号】特開2015-63809(P2015-63809A)

(43)【公開日】2015年4月9日

【審査請求日】2016年6月20日

(73)【特許権者】

【識別番号】000010087

【氏名又は名称】ＴＯＴＯ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100092093

【弁理士】

【氏名又は名称】辻居 幸一

(74)【代理人】

【識別番号】100082005

【弁理士】

【氏名又は名称】熊倉 禎男

(74)【代理人】

【識別番号】100088694

【弁理士】

【氏名又は名称】弟子丸 健

(74)【代理人】

【識別番号】100095898

【弁理士】

【氏名又は名称】松下 満

(74)【代理人】

【識別番号】100098475

【弁理士】

【氏名又は名称】倉澤 伊知郎

(74)【代理人】

【識別番号】100159846

【弁理士】

【氏名又は名称】藤木 尚

(72)【発明者】

【氏名】篠原 弘毅

(72)【発明者】

【氏名】谷本 秀樹

【審査官】 七字 ひろみ

(56)【参考文献】

【文献】 米国特許出願公開第２００８／００３４４８８（ＵＳ，Ａ１）

【文献】 実開昭５５−０４００４０（ＪＰ，Ｕ）

【文献】 実開平０５−０１０５６９（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｅ０３Ｄ １／００− ７／００

Ｅ０３Ｄ １１／００−１３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

便器を洗浄するための洗浄水を水源から洗浄水タンク内に給水する給水装置と、洗浄水タンクの底面に配置されて便器と連通する排水流路を開閉する排水装置と、を有する洗浄水タンク装置に簡易に追加して便器へ排水する洗浄水量を調整できる洗浄水量調整装置であって、
この洗浄水タンク内に配置されて所定容量の洗浄水を貯水可能な貯水部であって、この貯水部内の洗浄水と上記貯水部外の洗浄水とが流通可能な開口が形成されている貯水部と、
上記貯水部から延び、上記給水装置が上記洗浄水タンク内に給水を行っている際に、上記洗浄水タンク内の洗浄水が上記貯水部に生じさせる浮力の向きとは逆方向の力を上記貯水部に作用させる浮上防止手段と、を有し、
上記浮上防止手段は、上記貯水部から延びるように設けられ、上記給水装置又は上記排水装置の下向き面と当接可能な上面部を備えることを特徴とする洗浄水量調整装置。

【請求項2】

上記排水装置は、上記洗浄水タンクに貯水される洗浄水が満水水位を超えた場合に、その洗浄水を上記排水流路に排出するオーバーフロー管を備え、
上記浮上防止手段の上面部は、このオーバーフロー管の下向き面と洗浄水タンクの底面との間に、上記オーバーフロー管の下向き面と当接可能に配置されている請求項１記載の洗浄水量調整装置。

【請求項3】

上記浮上防止手段は、その上面部の両側から立ち上がる側壁部を備え、上記上面部及び上記側壁部により形成される断面形状がコの字形状に形成されている請求項２記載の洗浄水量調整装置。

【請求項4】

上記貯水部は、上記貯水部の底面の重心の位置に、上記貯水部の荷重を支える荷重支持部材を備え、上記貯水部は、その側面が上記オーバーフロー管の側面と当接した状態で配置されている請求項３記載の洗浄水量調整装置。

【請求項5】

上記貯水部は、その底面に上記開口を形成している請求項１乃至４の何れか１項に記載の洗浄水量調整装置。

【請求項6】

上記貯水部は、その側面の上縁が、洗浄を開始する前の待機状態における洗浄水タンク内の洗浄水の予定の満水水位よりも所定距離上方に位置し、上記貯水部の側面の下縁が、洗浄完了直後の洗浄水タンク内の洗浄水の予定の死水水位より所定距離下方に位置するように形成されている請求項１乃至５の何れか１項に記載の洗浄水量調整装置。

【請求項7】

上記請求項１乃至６の何れか１項に記載の洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置。

【請求項8】

上記請求項７記載の洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、洗浄水量調整装置、この洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器に係り、特に、洗浄水タンク装置に設けられて便器へ排水する洗浄水量を調整できる洗浄水量調整装置、この洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器に関する。

【背景技術】

【0002】

近年の節水化の要請に伴い、便器を洗浄する洗浄水量が減らされる場合、タンク式の便器においては、洗浄水タンク内に貯水される洗浄水の水位ヘッドが低下して、洗浄水タンクから排出される洗浄水の勢いが弱まるという問題がある。
これに対して、例えば、特許文献１に記載されているように、水位ヘッドを低下させずに１回の便器洗浄に使用する洗浄水量を削減するため、便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク内に、洗浄水を貯水することが可能な節水用タンクを設けることが知られている。この節水用タンクの側面の下方には洗浄水タンク内が空になるときに洗浄水を節水用タンクから洗浄水タンク内に排出するための排水開口と、節水用タンクの側面の上端には洗浄水を節水用タンク内に取り入れるための取入口が設けられており、節水用タンク内の水が腐らないように水を入れ換えできるようになっている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】実開平５−８７０７０号明細書

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、このような特許文献１に記載されている従来の節水用タンクは、洗浄を開始した後、洗浄水タンク内の水位が下降すると共に、節水用タンク内の水が排水開口から排出されるために、排水動作完了後のタンク給水時に、洗浄水タンク内に貯水された水位が節水用タンク内の水の水位より高くなり、水位差が生じ、節水用タンクが浮力を受け、節水用タンクが浮き上がり、取付け位置から外れてしまうといった問題が生じている。
また、このような特許文献１に記載されている従来の節水用タンクは、節水用タンクの洗浄水の取入口が側面の上端に設けられているので、施工時や使用者が操作レバーを長時間保持した時などにおいて節水用タンクが空の状態から初めて給水する時に、洗浄水タンク内に貯水された水位が節水用タンク内の水の水位より高くなる水位差が生じ、節水用タンクが浮力を受けて浮き上がることにより、取付け位置から外れてしまうといった問題が生じている。

【0005】

そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点と課題を解決するためになされたものであり、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水タンク内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄するための洗浄水を水源から洗浄水タンク内に給水する給水装置と、洗浄水タンクの底面に配置されて便器と連通する排水流路を開閉する排水装置と、を有する洗浄水タンク装置に簡易に追加して便器へ排水する洗浄水量を調整できる洗浄水量調整装置であって、この洗浄水タンク内に配置されて所定容量の洗浄水を貯水可能な貯水部であって、この貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水とが流通可能な開口が形成されている貯水部と、貯水部から延び、給水装置が洗浄水タンク内に給水を行っている際に、洗浄水タンク内の洗浄水が貯水部に生じさせる浮力の向きとは逆方向の力を貯水部に作用させる浮上防止手段と、を有し、浮上防止手段は、貯水部から延びるように設けられ、給水装置又は排水装置の下向き面と当接可能な上面部を備えることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、洗浄水タンク装置に簡易に追加して便器へ排水する洗浄水量を調整できる洗浄水量調整装置において、浮上防止手段が、給水装置が洗浄水タンク内に給水を行っている際に、洗浄水タンク内の洗浄水が貯水部に生じさせる浮力の向きとは逆方向の力を貯水部に作用させ、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部が浮力を受けて浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを防ぐことができる。さらに、このように構成された本発明においては、給水装置が洗浄水タンク内に給水を行っている際に、既存の給水装置又は排水装置の下向き面と、貯水部から延びるように設けられた浮上防止手段の上面部とが当接できることにより、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、特別な部材を設けることなく比較的簡単な構成で、貯水部が浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを防ぐことができる。また、本発明は、貯水部に形成されている開口が常時開放されているので、貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水タンク内の洗浄水とを循環させることができる。よって、本発明は、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水タンク内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置を提供することができる。

【0008】

本発明において、好ましくは、排水装置は、洗浄水タンクに貯水される洗浄水が満水水位を超えた場合に、その洗浄水を排水流路に排出するオーバーフロー管を備え、浮上防止手段の上面部は、このオーバーフロー管の下向き面と洗浄水タンクの底面との間に、オーバーフロー管の下向き面と当接可能に配置されている。
このように構成された本発明においては、オーバーフロー管の下向き面とタンク底面との間のデッドスペースを有効に活用して浮上防止手段を洗浄水タンク内の限られた空間内に効率的に配置することができ、給水装置が洗浄水タンク内に給水を行っている際に、オーバーフロー管の下向き面と、貯水部から延びるように設けられた浮上防止手段の上面部とが当接できる。これにより、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部が浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを確実に防ぐことができる。

【0009】

本発明において、好ましくは、浮上防止手段は、その上面部の両側から立ち上がる側壁部を備え、上面部及び側壁部により形成される断面形状がコの字形状に形成されている。
このように構成された本発明においては、浮上防止手段がその上面部の両側で立ち上がる側壁部を備え、上面部及び側壁部により形成される断面形状がコの字形状に形成されているので、浮上防止手段の荷重に対する強度を高めることができ、且つ浮上防止手段のオーバーフロー管に対する横ずれを防止させることができる。

【0010】

本発明において、好ましくは、貯水部は、貯水部の底面の重心の位置に、貯水部の荷重を支える荷重支持部材を備え、貯水部は、その側面がオーバーフロー管の側面と当接した状態で配置されている。
このように構成された本発明においては、荷重支持部材が貯水部の荷重を支え、貯水部を安定して支持することができ、且つ貯水部は、その側面がオーバーフロー管の側面と当接した状態で配置されているので、洗浄水タンク内の洗浄水にうねりが生じた場合でも貯水部を安定して固定することができる。

【0011】

本発明において、好ましくは、貯水部は、その底面に開口を形成している。
このように構成された本発明においては、貯水部は、その底面に開口を形成しているので、底面の表面積を減らすことができ、貯水部に作用する浮力を抑制することができ、貯水部が浮力を受けて浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを防ぐことができる。

【0012】

本発明において、好ましくは、貯水部は、その側面の上縁が、洗浄を開始する前の待機状態における洗浄水タンク内の洗浄水の予定の満水水位よりも所定距離上方に位置し、貯水部の側面の下縁が、洗浄完了直後の洗浄水タンク内の洗浄水の予定の死水水位より所定距離下方に位置するように形成されている。
このように構成された本発明においては、貯水部の側面の上縁が予定の満水水位よりも所定距離上方に位置し、且つ貯水部の側面の下縁が予定の死水水位よりも所定距離下方に位置するので、満水水位が上下に変動した場合にも、満水水位が貯水部の側面の上縁と下縁との間に配置され、且つ死水水位が上下に変動した場合にも、死水水位が貯水部の側面の上縁と下縁との間に配置される。従って、本発明は、予定した容積の洗浄水量を確実に調整することができる。

【0013】

つぎに、本発明は、洗浄水量調整装置を備えたことと特徴とする洗浄水タンク装置である。
このように構成された本発明においては、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水タンク内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を提供することができる。

【0014】

つぎに、本発明は、洗浄水タンク装置を備えたことを特徴とする水洗大便器である。
このように構成された本発明においては、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水タンク内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を有する水洗大便器を提供することができる。

【発明の効果】

【0015】

本発明の洗浄水量調整装置によれば、貯水部に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部内の洗浄水と貯水部外の洗浄水タンク内の洗浄水とを循環させることができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器において、便座及び便蓋及び洗浄水タンク装置の蓋体を取り外した状態を示す斜視図である。

【図2】本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置の内部構造を示す斜視図である。

【図3】本発明の一実施形態による待機状態における洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置の内部構造を示す正面断面図である。

【図4】本発明の一実施形態による洗浄水流量調整装置の内部構造を示す斜視図である。

【図5】本発明の一実施形態による洗浄水流量調整装置を前方斜め下方から見た斜視図である。

【図6】本発明の一実施形態による洗浄水流量調整装置の平面図である。

【図7】本発明の一実施形態による、洗浄動作中において排水弁が開弁状態から閉弁状態になった状態における洗浄水流量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を示す正面断面図である。

【図8】本発明の一実施形態による、排水弁が閉弁状態になった後の給水中の状態における洗浄水流量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を示す正面断面図である。

【図9】本発明の一実施形態による、洗浄水が貯水されていない空の状態から初回に給水される給水途中の状態における洗浄水流量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を示す正面断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

つぎに、添付図面により、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置、この洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器について説明する。
まず、図１により、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器について説明する。
図１は、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器において、便座及び便蓋及び洗浄水タンク装置の蓋体を取り外した状態を示す斜視図である。

【0018】

図１に示すように、符号１は、いわゆる、サイホン式の水洗大便器であり、この水洗大便器１は、陶器製の便器本体２を備え、この便器本体２には、ボウル部４と、このボウル部４の下部と連通する排水トラップ管路６がそれぞれ形成されている。なお、便器本体２は、陶器以外に、樹脂と陶器、又は樹脂のみで形成するようにしても良い。
便器本体２のボウル部４の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム８が形成され、便器本体２のボウル部４の左側上方には、便器本体２の後方側の内部に形成される導水路（図示せず）から供給される洗浄水を吐水する第１吐水口（図示せず）とが形成され、この第１吐水口（図示せず）から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部４を洗浄するようになっている。

【0019】

ボウル部４の下方には、溜水面が鎖線Ｗ０で示された溜水部１０が形成されている。この溜水部１０の下方には、排水トラップ管路６の入口６ａが開口し、この入口６ａから後方の排水トラップ管路６は排水ソケット（図示せず）を介して床下の排出管（図示せず）に接続されている。
また、ボウル部４の溜水面Ｗ０の上方位置には、便器本体２の後方側の内部に形成される導水路（図示せず）から供給される洗浄水を吐水する第２吐水口１２が形成され、この第２吐水口１２から吐水される洗浄水が溜水部１０の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。

【0020】

便器本体２の後方側の上面には、便器本体２に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置１４が設けられている。洗浄水タンク装置１４は、以下洗浄水タンク装置の蓋体を取り外した状態で示されている。
なお、本実施形態では、上述したサイホン式の水洗大便器に洗浄水タンク装置１４を適用した例について説明するが、このようなサイホン式の水洗大便器に限定されず、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器等の他のタイプの水洗便器にも適用可能である。

【0021】

つぎに、図１乃至図３により、洗浄水タンク装置１４の内部構造について説明する。
図２は、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置の内部構造を示す斜視図であり、図３は、本発明の一実施形態による待機状態における洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置の内部構造を示す正面断面図である。
なお、図３においては、貯水タンクの予定の満水水位をＷＬ０で示し、貯水部内の予定の満水水位をｗｌ０で示している（待機状態において貯水部内の満水水位ｗｌ０は、貯水タンクの満水水位ＷＬ０と等しくなっている）。
図１乃至図３に示すように、洗浄水タンク装置１４は、水洗大便器１を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンクである洗浄水タンク１６を備え、この洗浄水タンク１６の底面１６ａには、便器本体２の導水路（図示せず）と連通する排水口１８が形成され、洗浄水タンク１６内の洗浄水が便器本体２の導水路（図示せず）へと供給されるようになっている。また、洗浄水タンク１６は、便器の種類に応じて、貯水する洗浄水の量が異なるように形成されている。

【0022】

図１乃至３に示すように、洗浄水タンク装置１４の洗浄水タンク１６内には、水道等の給水源からこの洗浄水タンク１６内に洗浄水を給水する洗浄水給水装置である洗浄水給水装置２０と、洗浄水タンク１６に貯えられた洗浄水について排水口１８を開放して便器本体２の導水路（図示せず）に流出させる排水弁装置２２とが設けられている。
また、この排水弁装置２２の側方には、上下方向に延びるオーバーフロー管２２ａが設けられ、このオーバーフロー管２２ａ内の下方部分は、排水口１８と連通しており、洗浄水タンク１６内の水位が万一満水水位ＷＬ０よりも上昇してオーバーフロー管２２ａの上端開口部２２ｂに達したときに、このオーバーフロー管２２ａの上端開口部２２ｂから流入した洗浄水は、排水口１８から便器本体２の導水路（図示せず）へ排出されるようになっている。

【0023】

より詳細には、オーバーフロー管２２ａは、洗浄水タンク１６の底面１６ａよりわずかに上方において排水弁装置２２の下部から水平方向に延びた後垂直に立ち上がるＬ字形状に形成されている。
オーバーフロー管２２ａは、ほぼ垂直に立ち上がる円筒の外周により形成されるオーバーフロー管側面２２ｃと、オーバーフロー管２２ａの下端の底部を形成し且つ洗浄水タンク１６の底面１６ａより上方において水平に延び且つ洗浄水タンク１６の底面１６ａと対向している下向き面２２ｄと、を有している。

【0024】

洗浄水給水装置２０は、従来の洗浄水給水装置の構成と同様であるため、具体的な説明は省略するが、外部の給水源に接続され洗浄水タンク１６の底面１６ａから上方に延びる給水管２４と、この給水管２４の上端部に取り付けられ、給水管２４から給水される洗浄水の洗浄水タンク１６内への吐水と止水を切り替える給水バルブ２６と、洗浄水タンク１６内の水位の変動に応じて上下動して給水バルブ２６による吐水と止水を切り替えるフロート部２８とを備えている。

【0025】

給水管２４の外周側下端部には、吐水口（図示せず）が開口し、給水バルブ２６からの洗浄水がこの吐水口から洗浄水タンク１６内に吐水されるようになっている。
洗浄水給水装置２０は、更に、給水バルブ２６に接続されたリフィール管３０を備え、このリフィール管３０の下流端は、排水弁装置２２のオーバーフロー管２２ａの上端開口部２２ｂの上方に位置している。洗浄水給水装置２０からリフィール管３０に供給された補給水は、オーバーフロー管２２ａ内に流れ込み、便器本体２に補給水としてリフィールされるようになっている。

【0026】

洗浄水給水装置２０においては、後述する排水弁装置２２により、洗浄水タンク１６内の洗浄水が便器に排水されると、洗浄水の水位が低下してフロート部２８が下降し、それにより給水バルブ２６が開き、吐水口から吐水が開始され、洗浄水タンク１６内への吐水が開始される。次に、吐水が継続されて水位が上昇すると、フロート部２８も上昇し、それにより給水バルブ２６が閉じ、吐水口が止水される。これにより、洗浄水タンク１６内の洗浄水の水位を所定の満水時の水位に維持するようになっている。

【0027】

排水弁装置２２の構成については、従来の排水弁装置の構成と同様であるため、具体的な説明は省略するが、洗浄水タンク１６の外部に取り付けられた操作レバー３２を大洗浄又は小洗浄の所定の洗浄モードを実行させる方向に回動操作を行うことにより、操作レバー３２に連結された操作ワイヤ３４が連動して排水弁装置２２の排水弁体３６を引き上げると、排水口１８が所定時間開放され、洗浄水タンク１６内の洗浄水が便器本体２の導水路（図示せず）に一定量排出されるようになっている。

【0028】

つぎに、図４乃至図６を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置の詳細について説明する。
図４は本発明の一実施形態による洗浄水流量調整装置の内部構造を前側の一部を切断した状態において示している斜視図であり、図５は本発明の一実施形態による洗浄水流量調整装置を前方斜め下方から見た斜視図であり、図６は本発明の一実施形態による洗浄水流量調整装置の平面図である。

【0029】

洗浄水タンク装置１４の洗浄水タンク１６には、便器へ排水する洗浄水量を意図した量に調整できる洗浄水量調整装置３８が設けられている。洗浄水量の調整には、洗浄水量調整装置を設けることによる洗浄水量を減少させる調整の他、洗浄水量調整装置の大きさを小さく変更することによる洗浄水量を増加させる調整を含む。
洗浄水量調整装置３８は、上方に開口されている直方体の箱型形状を形成し、図３に示すように、洗浄開始前の待機状態において、自身の下側の大部分が満水水位ＷＬ０から下側の水中に沈められるように配置される。従って、洗浄水量調整装置３８は、洗浄水タンク装置１４が洗浄動作を行う場合に、概ね満水水位ＷＬ０から後述する死水水位ＤＷＬまでの高さの部分の洗浄水量調整装置３８の容積分の洗浄水を、洗浄水タンク１６から排水させないようにすることにより、便器本体２へ排水する一回の洗浄水量を調整することができる。

【0030】

このような、洗浄水量調整装置３８は、新しく製造された洗浄水タンク装置１４に設けられることにより、便器本体２へ排水する洗浄水量を減少させるように調整することができ、さらに、既に便器及び壁等に設置されている洗浄水タンク装置１４に追加的に設けられることにより、便器本体２へ排水する洗浄水量を減少させるように後から調整することができる。

【0031】

洗浄水量調整装置３８は、この洗浄水タンク１６内に配置されて所定容量の洗浄水を貯水可能な貯水部４０であって、貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水とが流通できる開口４０ａが形成されている貯水部４０と、貯水部４０から延び、洗浄水給水装置２０が洗浄水タンク１６内に給水を行っている際に、洗浄水タンク１６内の洗浄水が貯水部４０に生じさせる浮力の向きとは逆方向の力を貯水部４０に作用させる浮上防止手段４２とを有する。

【0032】

図４乃至図６に示すように、貯水部４０の開口４０ａは、その底面の後方側の一部において円筒形に開口され、内側底面４０ｂから外側底面４０ｃまで延び、貯水部４０の内側と外側とを常時連通するように形成されている。この開口４０ａは、貯水部４０の底面（内側底面４０ｂ及び外側底面４０ｃ）に形成されているので、貯水部４０の内側底面４０ｂ及び外側底面４０ｃの表面積を開口４０ａの開口面積分だけ減少させ、貯水部４０に作用する浮力を抑制させることができる。
貯水部４０の開口４０ａは、円形形状に限定されず、楕円形状、四角形状、スリット形状等に形成されてもよく、貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができるように常時開口されていればよい。例えば、開口４０ａは、非常に小さい開口面積を有するように形成されていてもよく、或いは、開口４０ａは、貯水部４０の外部において洗浄水給水装置２０が給水した洗浄水の水位の上昇速度と、貯水部４０の内部の洗浄水の水位の上昇速度とがほぼ同じ速度にできるような開口面積を有していてもよい。

【0033】

貯水部４０は、その箱型形状の側面４０ｄの上縁４０ｅが、洗浄を開始する前の待機状態における洗浄水タンク１６内の洗浄水の予定の満水水位ＷＬ０よりも約５ｍｍ上方まで延び、貯水部４０の側面４０ｄの下縁４０ｆが、洗浄完了直後の洗浄水タンク１６内の洗浄水の死水水位（大洗浄モード時の死水水位）ＤＷＬより約５ｍｍ下方まで延びるように形成されている。従って、貯水部４０は、その箱型形状の側面４０ｄ上に満水水位ＷＬ０及び死水水位ＤＷＬが位置するように形成されている。

【0034】

貯水部４０は、貯水部４０の外側底面４０ｃ上の重心の位置において、貯水部４０の荷重を支える荷重支持部材４４と、貯水部４０の側面４０ｄから横向きに延びるスナップフィット４６と、を備えている。この荷重支持部材４４は、水平方向に十字断面を有する支持部材を形成しているが、他の形態として、荷重支持部材４４は、円筒の一部を切り欠いた断面Ｃ字形状の筒状に形成され、その下端において、洗浄水タンク１６から突出する突起を内部に受け入れることにより、固定されていてもよい。スナップフィット４６は、スナップフィット４６と側面４０ｄに形成された凹側面部４０ｇとの間において、オーバーフロー管２２ａの外周を挟み込んで取り付けることができる部材である。この凹側面部４０ｇは、貯水部４０のオーバーフロー管２２ａ側の側面４０ｄにおいて、凹形状の側面を形成している。洗浄水量調整装置３８は、スナップフィット４６の内側にオーバーフロー管２２ａを挟むように、オーバーフロー管２２ａのオーバーフロー管側面２２ｃに横方向から容易に取り付けることができる。

【0035】

浮上防止手段４２は、貯水部４０の側面４０ｄに形成された凹側面部４０ｇから垂直下方に延ばされた側面垂下部４２ａと、側面垂下部４２ａの下端から水平方向に延びて上面を形成する上面形成部４２ｂと、その上面形成部４２ｂの両側で立ち上がり且つそれぞれ側面垂下部４２ａに接続される２つの側壁部４２ｃと、を備えている。浮上防止手段４２は、本実施形態においては貯水部４０と一体に形成されているが、貯水部４０と別部材により形成されて貯水部４０に取付けられていてもよい。

【0036】

浮上防止手段４２の側面垂下部４２ａは、オーバーフロー管側面２２ｃに対向する凹側面部４０ｇから垂直下方に延びる板形状に形成されている。側面垂下部４２ａは、貯水部４０の下縁４０ｆから、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄより下方且つ洗浄水タンク１６の底面１６ａ近傍上方まで形成されている。側面垂下部４２ａと凹側面部４０ｇは連続した面一の側面部を形成し、浮上防止手段４２がオーバーフロー管２２ａに取付けられた状態において、側面垂下部４２ａと凹側面部４０ｇは、オーバーフロー管側面２２ｃに沿うように当接されている。
浮上防止手段４２の上面形成部４２ｂは、水平方向に延びる板状の部材の上面部４２ｄを形成し、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄの少なくとも一部（好ましくは大部分）を下方から覆うようにオーバーフロー管２２ａの管径よりも大きい幅を有するように形成されている。この上面部４２ｄは、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄより下方且つ洗浄水タンク１６の底面１６ａより上方に配置される。上面形成部４２ｂは、上面部４２ｄの裏側において、洗浄水タンク１６の底面１６ａと当接することができる下面部４２ｅを形成している。なお、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄと、洗浄水タンク１６の底面１６ａとの間には、上面形成部４２ｂが取付けでき且つわずかに上下移動できるような隙間空間が形成されている。
浮上防止手段４２の側壁部４２ｃは、上面部４２ｄの両端から立ち上がるように形成されるので、上面部４２ｄ及び側壁部４２ｃにより形成される断面形状がコの字形状に形成されている。したがって、側壁部４２ｃは、上面部４２ｄとともに、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄ及びオーバーフロー管２２ａの下端近傍を下方から包み込むように配置されている。側壁部４２ｃは、それぞれ側面垂下部４２ａに接続され、且つ上面形成部４２ｂに接続されているので、上面形成部４２ｂに作用される荷重に抗する強度を高め、上面形成部４２ｂが浮力を打ち消そうとする荷重を受けて破損することを防ぐことができる。さらに、側壁部４２ｃは、オーバーフロー管２２ａの前後方向の両側に配置されるので、浮上防止手段４２がオーバーフロー管２２ａに対して前後方向に横ずれすることを防止することができる。

【0037】

つぎに、図２及び図９等を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置３８を備えた洗浄水タンク装置１４を製造する工程を説明する。
図９は、本発明の一実施形態による、洗浄水が貯水されていない空の状態から初回に給水される給水途中の状態における洗浄水流量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を示す正面断面図である。
本発明の洗浄水量調整装置３８を備えた洗浄水タンク装置１４を製造する工程は、便器本体２を洗浄するための洗浄水を水源から洗浄水タンク１６内に給水する洗浄水給水装置２０と、洗浄水タンク１６の底面に配置されて便器本体２と連通する導水路を開閉する排水弁装置２２と、を有する洗浄水タンク装置１４を準備する工程と、洗浄水量調整装置３８を洗浄水タンク装置１４に取り付ける工程と、を有する。ここで、洗浄水タンク装置１４を準備する工程は、既に水洗大便器１に設置されて使用されている洗浄水タンク装置１４に洗浄水量調整装置３８を取り付けられるように準備する工程を含む。
更に、いずれかの時点で洗浄水タンク装置１４を水洗大便器１に取り付ける工程を加えることにより洗浄水量調整装置３８を備えた洗浄水タンク装置１４を有する水洗大便器１を製造することもできる。
上記取り付ける工程において、洗浄水量調整装置３８が洗浄水タンク装置１４の蓋を開けた状態でオーバーフロー管２２ａに横方向から簡単に取り付けることができる。より具体的には、洗浄水量調整装置３８の浮上防止手段４２の上面形成部４２ｂを、下向き面２２ｄと底面１６ａとの間に横方向から挿入し、洗浄水量調整装置３８のスナップフィット４６をオーバーフロー管２２ａに横方向から嵌めこむことにより洗浄水量調整装置３８の取付けを行うことができる。
洗浄水量調整装置３８は、貯水部４０に作用する浮力を打ち消す機能を有するので、浮き上がりを防ぐためにオーバーフロー管２２ａ或いはその他の部材と強固に固定する工程を省略し、オーバーフロー管２２ａに簡易に取付けることができる。
このように、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置３８は、洗浄水量を所定量に調整するように、洗浄水タンク装置１４に簡単に取り付けることができる取付性を有しながら、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる。

【0038】

次に、図９を参照して、上述の洗浄水量調整装置３８を洗浄水タンク装置１４に取り付けた後の、初回の給水時における、洗浄水量調整装置３８の動作について説明する。
ここで、洗浄水量調整装置３８を洗浄水タンク装置１４に取り付けた後、最初に洗浄水タンク１６内に給水を行う前には、貯水部４０は洗浄水が貯水されていない空の状態となっている。給水を行う前には、洗浄水量調整装置３８自身の重さにより、浮上防止手段４２の下面部４２ｅが洗浄水タンク１６の底面１６ａと当接され、且つ荷重支持部材４４が底面１６ａと当接されている。
洗浄水給水装置２０からの給水が開始されて水位が上昇すると、洗浄水タンク１６内の水位は水位ＷＬ２に上昇され、貯水部４０内の洗浄水の水位は水位ｗｌ２に上昇される。貯水部４０内の洗浄水の水位は、比較的小さな開口面積を有する開口４０ａを通って流入される洗浄水により上昇されるので、貯水部４０内の洗浄水の水位の上昇速度は、洗浄水タンク１６内の水位の上昇速度よりも遅くなっている。貯水部４０は空の状態から給水されるので、洗浄水タンク１６内の水位ＷＬ２と、貯水部４０内の洗浄水の水位ｗｌ２との間の水位差は、後述する通常の洗浄時における洗浄水タンク１６内の水位ＷＬ１と、貯水部４０内の洗浄水の水位ｗｌ１との間の水位差よりも大きな水位差となり、貯水部４０に作用する浮力Ｆ３の大きさがより大きくなる。ここで、図９において、貯水部４０に作用する浮力を矢印Ｆ３により例示する。

【0039】

このように、洗浄水タンク１６内の水位ＷＬ２が、貯水部４０内の洗浄水の水位ｗｌ２よりも高い位置の水位になるとき、貯水部４０（洗浄水量調整装置３８）に作用する浮力の大きさが洗浄水量調整装置３８自身の重さよりも大きくなり、洗浄水量調整装置３８が浮力により上方に移動しようとする。
このとき、洗浄水量調整装置３８の浮上防止手段４２の上面形成部４２ｂは、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄと、洗浄水タンク１６の底面１６ａとの間の隙間空間をわずかに（例えば約１ｍｍ）上昇し、上面形成部４２ｂの上面部４２ｄが下向き面２２ｄと当接する。このとき、上面部４２ｄは、当接した下向き面２２ｄから、下向きの力Ｆ４を受ける。この下向きの力Ｆ４は、洗浄水タンク１６内の洗浄水が貯水部４０に生じさせる上向きの浮力Ｆ３とは逆向きの力Ｆ４であり、貯水部４０に生じる浮力Ｆ３を打ち消すように作用する力である。従って、上面部４２ｄが下向きの力Ｆ４を受け、上面部４２ｄを含む浮上防止手段４２及び浮上防止手段４２に接続された貯水部４０が下向きの力Ｆ４を受け、貯水部４０に作用する浮力Ｆ３が打ち消されるので、貯水部４０が浮力Ｆ３を受けて浮き上がり、取付け位置から外れることが防がれる。このようにして、貯水部４０に作用する浮力Ｆ３が比較的大きい場合においても、浮上防止手段４２により、浮上防止手段４２に接続されている貯水部４０が浮力を受けて浮き上がり取付け位置から外れることを防ぐことができる。

【0040】

つぎに、図３、図７及び図８を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置、この洗浄水量調整装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器の動作（作用）を説明する。
図７は本発明の一実施形態による、洗浄動作中において排水弁が開弁状態から閉弁状態になった状態における洗浄水流量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を示す正面断面図であり、図８は本発明の一実施形態による、排水弁が閉弁状態になった後の給水中の状態における洗浄水流量調整装置を備えた洗浄水タンク装置を示す正面断面図である。
なお、以下、本発明の一実施形態による排水弁装置２２を備えた洗浄水タンク装置１４により実行される大洗浄モードと小洗浄モードの２種類の洗浄モードのうち、大洗浄モード時の操作ワイヤ３４による排水弁装置２２の排水弁体３６の引き上げ量が小洗浄モード時よりも大きくなり、洗浄水タンク１６の排水口１８を開放している時間が長い点と、大洗浄モード時の死水水位ＤＷＬ（死水水位ｄｗｌ）が小洗浄モード時よりも低くなる点以外については、大洗浄モードと小洗浄モードの基本動作は共通しているため、大洗浄モードについてのみ説明する。

【0041】

図３に示すように、排水弁装置２２の排水開始前（洗浄を開始する前）の待機状態では、排水弁装置２２の排水弁体３６が排水口１８を閉止しており、洗浄水タンク１６内の初期水位が満水水位ＷＬ０、貯水部４０内の初期水位が満水水位ｗｌ０となっている。フロート部２８は上昇した状態であり、洗浄水給水装置２０の給水バルブ２６は閉止された状態となっている。
洗浄水量調整装置３８は、その上縁４０ｅが水面から突出した位置に配置され、貯水部４０内の洗浄水の初期水位の満水水位ｗｌ０は、満水水位ＷＬ０と等しくなっている。洗浄水量調整装置３８にかかる重さ（洗浄水量調整装置３８の重さ＋貯水部４０内の洗浄水の重さ）により、浮上防止手段４２の下面部４２ｅが洗浄水タンク１６の底面１６ａと当接され、且つ荷重支持部材４４が底面１６ａと当接されている。
貯水部４０は、開口４０ａにより、貯水部４０内の洗浄水と、洗浄水タンク１６内の貯水部４０外の洗浄水とが常時循環できる状態となっている。

【0042】

つぎに、図７及び図８に示すように、使用者が操作レバー３２を操作すると、洗浄動作が開始され、排水弁装置２２の排水弁体３６が洗浄水タンク１６の排水口１８を開放し（図７において、排水弁体３６が上昇して排水口１８を開放している状態を想像線Ｃ１により示している）、洗浄水タンク装置１４の排水弁装置２２による水洗大便器１の便器本体２への大洗浄モードの排水が開始され、洗浄水タンク１６内の水位が低下し始める。
図７に示すように、洗浄水タンク１６内の水位が低下し始めるとき、貯水部４０の開口４０ａから、貯水部４０内の洗浄水が徐々に流出する。
洗浄水タンク１６内の水位が低下し、フロート部２８が下降すると、それにより給水バルブ２６が開き、吐水口から吐水が開始される。

【0043】

つぎに、図７に示すように、洗浄水タンク１６内の水位が死水水位ＤＷＬまで低下すると、排水弁装置２２の排水弁体３６が洗浄水タンク１６の排水口１８を閉止する（図７において、排水弁体３６が下降して排水口１８を閉止している状態を実線Ｃ２により示している）。これにより、排水弁装置２２による水洗大便器１の便器本体２への大洗浄モードの排水は完了される。この間、フロート部２８は下降した状態であり、給水バルブ２６が開放されて洗浄水給水装置２０による洗浄水タンク１６への給水が継続して行われているため、洗浄水タンク１６内の水位が死水水位ＤＷＬから上昇する。
洗浄水タンク１６内の水位が死水水位ＤＷＬにあるとき、貯水部４０内の洗浄水の水位は死水水位ｄｗｌまで存在するので、貯水部４０に作用する浮力は比較的小さく、貯水部４０を浮き上がらせるには不十分である。このとき貯水部４０は、死水水位ｄｗｌまでの水位の洗浄水の荷重が下方向に発生し、荷重支持部材４４により支持され、安定した状態で配置されている。
ここまで、洗浄水量調整装置３８の自身にかかる重さ（洗浄水量調整装置３８の重さ＋貯水部４０内の洗浄水の重さ）により、浮上防止手段４２の下面部４２ｅが洗浄水タンク１６の底面１６ａと当接され、且つ荷重支持部材４４が底面１６ａと当接されている。

【0044】

図８に示すように、排水弁装置２２の排水弁体３６が排水口１８を閉止して、便器本体２への排水が完了した後、洗浄水給水装置２０からの給水が継続されて水位が上昇し、洗浄水タンク１６内の水位は水位ＷＬ１に上昇され、貯水部４０内の洗浄水の水位は水位ｗｌ１に上昇される。貯水部４０内の洗浄水の水位は、比較的小さな開口面積を有する開口４０ａを通って流入される洗浄水により上昇されるので、貯水部４０内の洗浄水の水位の上昇速度は、洗浄水タンク１６内の水位の上昇速度よりも遅くなっている。

【0045】

このように、洗浄水タンク１６内の水位ＷＬ１が、貯水部４０内の洗浄水の水位ｗｌ１よりも高い位置の水位になるとき、貯水部４０（洗浄水量調整装置３８）に作用する浮力の大きさが洗浄水量調整装置３８自身の重さよりも大きくなり、洗浄水量調整装置３８が浮力によりオーバーフロー管側面２２ｃに沿って垂直上方に移動しようとする。ここで、図８において、貯水部４０に作用する浮力を矢印Ｆ１により例示する。
このとき、洗浄水量調整装置３８の浮上防止手段４２の上面形成部４２ｂは、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄと、洗浄水タンク１６の底面１６ａとの間の隙間空間をわずかに（例えば約１ｍｍ）上昇し、上面形成部４２ｂの上面部４２ｄが下向き面２２ｄと当接して引掛かる状態となる。このとき、上面部４２ｄは、当接した下向き面２２ｄから、下向きの力Ｆ２を受ける。この下向きの力Ｆ２は、洗浄水タンク１６内の洗浄水が貯水部４０に生じさせる上向きの浮力Ｆ１とは逆向きの力であり、貯水部４０に生じる浮力Ｆ１を打ち消すように作用する力である。従って、上面部４２ｄが下向きの力Ｆ２を受け、上面部４２ｄを含む浮上防止手段４２及び浮上防止手段４２に接続された貯水部４０が下向きの力Ｆ２を受け、貯水部４０に作用する浮力Ｆ１が打ち消されるので、貯水部４０が浮力Ｆ１を受けて浮き上がり取付け位置から外れることが防がれる。このようにして、貯水部４０に作用する浮力Ｆ１の大きさの大小にかかわらず、浮上防止手段４２により、浮上防止手段４２に接続されている貯水部４０が浮力を受けて浮き上がり取付け位置から外れることを防ぐことができる。

【0046】

さらに、洗浄水給水装置２０からの給水が継続されて水位が上昇すると、フロート部２８も上昇し、それにより給水バルブ２６が閉弁し、吐水口が止水される。これにより、洗浄水タンク１６内の洗浄水の水位は、所定の満水水位ＷＬ０に維持される。貯水部４０内の洗浄水と、洗浄水タンク１６内の貯水部４０外の洗浄水とが開口４０ａを通って流通するので、最終的に、貯水部４０内の水位も同じ満水水位ｗｌ０に到達する。

【0047】

洗浄水が開口４０ａから貯水部４０内に流入して貯水部４０内の洗浄水の水位と、洗浄水タンク１６内の貯水部４０外の洗浄水の水位との間の水位差がほとんどなくなるとき、貯水部４０に作用する浮力が比較的小さくなる。従って、洗浄水量調整装置３８の自身の重さ（洗浄水量調整装置３８の重さ＋貯水部４０内の洗浄水の重さ）により、洗浄水量調整装置３８が下方に移動しようとする。洗浄水量調整装置３８の浮上防止手段４２の上面形成部４２ｂは、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄと、洗浄水タンク１６の底面１６ａとの間の隙間空間をわずかに（例えば約１ｍｍ）下降し、上面形成部４２ｂの下面部４２ｅが底面１６ａと当接する。
洗浄水タンク１６内の洗浄水の水位が満水水位になり、給水バルブ２６が閉弁すると、洗浄水タンク装置１４の一連の洗浄動作は完了し、待機状態に戻る。

【0048】

上述した本発明の一実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、浮上防止手段４２が、洗浄水給水装置２０が洗浄水タンク１６内に給水を行っている際に、洗浄水タンク１６内の洗浄水が貯水部４０に生じさせる浮力の向きとは逆方向の力を貯水部４０に作用させ、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部４０が浮力を受けて浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを防ぐことができる。また、本発明は、貯水部４０に形成されている開口４０ａが常時開放されているので、貯水部４０内の洗浄水を腐らせないように貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる。よって、本発明は、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置３８を提供することができる。

【0049】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、洗浄水給水装置２０が洗浄水タンク１６内に給水を行っている際に、既存の洗浄水給水装置２０又は排水弁装置２２の下向き面と、貯水部４０から延びるように設けられた浮上防止手段４２の上面部４２ｄとが当接できることにより、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、特別な部材を設けることなく比較的簡単な構成で、貯水部４０が浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを防ぐことができる。また、本発明は、貯水部４０に形成されている開口４０ａが常時開放されているので、貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる。よって、本発明は、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置３８を提供することができる。

【0050】

さらに、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄと洗浄水タンク１６の底面１６ａとの間のデッドスペースを有効に活用して浮上防止手段４２を洗浄水タンク１６内の限られた空間内に効率的に配置されることができ、洗浄水給水装置２０が洗浄水タンク１６内に給水を行っている際に、オーバーフロー管２２ａの下向き面２２ｄと、貯水部４０から延びるように設けられた浮上防止手段４２の上面部４２ｄとが当接できる。これにより、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、貯水部４０が浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを確実に防ぐことができる。

【0051】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、浮上防止手段４２がその上面部４２ｄの両側から立ち上がる側壁部４２ｃを備え、上面部４２ｄ及び側壁部４２ｃにより形成される断面形状がコの字形状に形成されているので、浮上防止手段４２に作用される荷重に対する強度を高めることができ、且つ浮上防止手段４２のオーバーフロー管２２ａに対する横ずれを防止させることができる。

【0052】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、荷重支持部材４４が貯水部４０の荷重を支え、貯水部４０を安定して支持することができ、且つ貯水部４０は、自身の凹側面部４０ｇがオーバーフロー管２２ａの側面２２ｃと当接した状態で配置されているので、洗浄水タンク１６内の洗浄水にうねりが生じた場合でも貯水部４０を安定して固定することができる。

【0053】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、貯水部４０は、その内側底面４０ｂに開口４０ａを形成しているので、内側底面４０ｂの表面積を減らすことができ、貯水部４０に作用する浮力を抑制することができ、貯水部が浮力を受けて浮き上がり取付け位置から外れるといった問題が生じることを防ぐことができる。

【0054】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、貯水部４０の側面４０ｄの上縁４０ｅが予定の満水水位ＷＬ０よりも所定距離上方に位置し、且つ貯水部４０の側面４０ｄの下縁４０ｆが予定の死水水位ＤＷＬよりも所定距離下方に位置するので、満水水位が上下に変動した場合にも、満水水位が貯水部４０の側面４０ｄの上縁４０ｅと下縁４０ｆとの間に配置され、且つ死水水位が上下に変動した場合にも、死水水位が貯水部４０の側面４０ｄの上縁４０ｅと下縁４０ｆとの間に配置される。従って、本発明は、予定した容積の洗浄水量を確実に調整することができる。

【0055】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置３８を備えた洗浄水タンク装置１４を提供することができる。

【0056】

また、本実施形態による洗浄水量調整装置３８によれば、貯水部４０に作用する浮力を打ち消すことができ、且つ貯水部４０内の洗浄水と貯水部４０外の洗浄水タンク１６内の洗浄水とを循環させることができる洗浄水量調整装置３８を備えた洗浄水タンク装置１４を有する水洗大便器１を提供することができる。

【符号の説明】

【0057】

１ 水洗大便器
２ 便器本体
１４ 洗浄水タンク装置
１６ 洗浄水タンク
２０ 洗浄水給水装置
２２ 排水弁装置
２２ａ オーバーフロー管
２２ｃ オーバーフロー管側面
２２ｄ 下向き面
３８ 洗浄水量調整装置
４０ 貯水部
４０ａ 開口
４０ｂ 内側底面
４０ｄ 側面
４０ｅ 上縁
４０ｆ 下縁
４０ｇ 凹側面部
４２ 浮上防止手段
４２ｂ 上面形成部
４２ｃ 側壁部
４２ｄ 上面部
４４ 荷重支持部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】