【実施例1】
【0037】
図1に示す三軸試験装置1において、キャップ7の変位計測式キャップ機構17は、キャップ7のキャップ本体7aと載荷シャフト9の下端部との間に介装される。
【0038】
図3は、変位計測式キャップ機構17の構造を示す平面図、正面図及び側面図である。
【0039】
変位計測式キャップ機構17は、載荷シャフト9の中心軸線方向(Z軸方向)と直交する側方向(X軸方向)に変位可能な第1キャリッジ20と、Z軸及びX軸と直交する側方向(Y軸方向)に変位可能な第2キャリッジ30と、キャップ本体7aの上面に固定され且つ第1キャリッジ20をX軸方向に変位可能に支承する第1レール21と、第1キャリッジ20の上面に固定され且つ第2キャリッジ30をY軸方向に変位可能に支承する第2レール31とから構成される。第2キャリッジ30の上面中心部には、載荷シャフト9の下端部が固定される。キャリッジ20、30及びレール21、31は夫々、一体的に成形された高剛性の金属製部材、例えば、ステンレススチール製部材からなる。
【0040】
キャリッジ20、30は、レール21、31を部分的に収容可能な下面開放形の凹所20a、30aを有する。キャリッジ20、30とレール21、31との間には、多数の金属ローラ又は金属ボールを配列してなるローラ式又はボール式ベアリング装置23、33が介装される。ベアリング装置23は、キャップ本体7aに対して第1キャリッジ20をX軸方向に相対変位させ、ベアリング装置33は、第1キャリッジ20に対してキャリッジ30をY軸方向に相対変位させる。従って、載荷シャフト9の下端部とキャップ本体7aとは、
図3(A)に示すXY平面上で任意の方向に相対変位することができる。キャリッジ20、30、レール21、31及びベアリング装置23、33として、例えば、日本精工株式会社製のNSKリニアガイド(登録商標)等の機構を好適に使用し得る。
【0041】
図4は、異方性を有する供試体Sの三軸試験において生じる変位計測式キャップ機構17の挙動を例示する平面図及び側面図である。
【0042】
図4に示す如く、載荷シャフト9によって軸荷重Qを供試体Sに載荷すると、キャップ本体7aは、供試体Sの圧密変形に相応して降下するとともに、異方性に起因した供試体Sの変形に相応してX軸方向及びY軸方向に変位する。X軸方向におけるキャップ本体7aの変位は、第1キャリッジ20に対する第1レール21の相対変位により発生する。Y軸方向におけるキャップ本体7aの変位は、第2キャリッジ30に対する第2レール31の相対変位により発生する。即ち、変位計測式キャップ機構17は、供試体Sの剪断変形に追従してキャップ本体7aをXY平面の面内方向に変位させるので、キャップ本体7aの中心軸線Cは、X軸方向及びY軸方向に変位し、位置C'に移動する。
【0043】
キャリッジ20、30とレール21、31との間に発生する摩擦は、ベアリング装置23、33の存在により実質的に無視し得るので、三軸試験装置1は、供試体Sに剪断応力が発生しない条件で供試体Sの端面に載荷し、供試体Sを剪断変形させることができる。なお、キャップ本体7aが供試体Sの剪断変形に確実に追随すべく、好ましくは、相互接触する供試体Sの端面、キャップ本体7aの表面及びペデスタル6の表面が粗の摩擦条件に設定され、或いは、これらの部分が石膏、接着剤等によって互いに固定される。
【0044】
図4に概念的に示す如く、変位計測式キャップ機構17は、キャリッジ20、30の水平変位量ΔX、ΔYを検出する第1変位計22及び第2変位計32を備える。第1変位計22は、第1レール21に対する第1キャリッジ20のY方向変位を検出し、第2変位計32は、第2レール31に対する第2キャリッジ30のX方向変位を検出する。変位計22、32の検出結果は、制御信号線(図示せず)を介して前述の外部制御装置又は外部制御系に入力される。なお、渦電流式又は接触式の変位計等が変位計22、32として用いられ、変位計22、32の検知部は、レール21、31の変位(即ち、供試体Sの異方性に起因する変形)を計測するようにセル三軸セル2の適所に配置される。
【0045】
図5は、歪みゲージGの配置を示す平面図及び展開図である。
【0046】
歪みゲージGは、試験を実施する現場において、地理座標系(E、W、S、N)に対して、供試体Sの外側面に
図5に示す如く配置される。各歪みゲージGは、接着剤等によって供試体Sの外側面に接着される。パラフィン又はシリコンゴム等で各歪みゲージGのプレート表面を止水することが望ましい。
図5に示す番号1〜6の歪みゲージGに関し、i番目の歪みゲージ42によって計測される歪みをx
iとすると、地理座標系の歪みテンソル成分は下記の数式1で計算することができる.
【数1】
【0047】
なお、γ
ijは工学歪みであり、工学歪みγ
ijとテンソル歪みε
ijとの間には、γ
ij=ε
ij (i≠j) (i、j=S、E、V)の関係がある。
【実施例2】
【0048】
次に、荷重計測式キャップ機構18をキャップ7に備えた三軸試験装置1の実施例に関し、
図2及び
図6を参照して説明する。
【0049】
キャップ7の荷重計測式キャップ機構18は、キャップ7のキャップ本体7aと載荷シャフト9の下端部との間に介装される。荷重計測式キャップ機構18は、供試体Sの中心軸線方向(Z軸方向)に直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)の剪断応力を計測する平行平板型の2方向ロードセル50を有する。本例においては、供試体Sの剪断変形を禁止又は拘束すべく、供試体Sとキャップ本体7aとの間の滑りを防止する必要があるので、供試体Sの上端面と相互接触する供試体Sの端面、キャップ本体7aの表面及びペデスタル6の表面が粗の摩擦条件に設定され、或いは、これらの部分が石膏、接着剤等によって互いに固定される。
【0050】
図6は、荷重計測式キャップ機構18の構造を示す平面図、正面図及び側面図である。
【0051】
荷重計測式キャップ機構18は、キャップ本体7aの上面に固定された基板40と、基板40に固定された2方向ロードセル50と、2方向ロードセル50の上面に固定された頂板43とから構成される。頂板43の上面には、載荷シャフト9の下端部が固定される。基板40、2方向ロードセル50及び頂板43は、載荷シャフト9の中心軸線に対して同心状に整列配置される。
【0052】
2方向ロードセル50は、Y軸方向及びX軸方向に延びる方形断面の開口部51、52を有する。開口部51の下側及び上側に位置する平板53、54は、X軸方向の応力を測定するための平行平板を構成し、開口部52の下側及び上側に位置する平板54、55は、Y軸方向の応力を測定するための平行平板を構成する。基板40、2方向ロードセル50及び頂板43は、例えば、弾性が卓越するりん青銅からなり、互いに剛接される。
【0053】
2方向ロードセル50の外側面には、X軸方向に延びる複数の歪みゲージ57と、Y方向に延びる複数の歪みゲージ58とが所定位置に取付けられる。各歪みゲージ57、58は、制御信号線(図示せず)を介して前述の外部制御装置又は外部制御系(図示せず)に接続される。載荷シャフト9によって軸荷重Qを供試体Sに載荷すると、外部制御装置又は外部制御系は、歪みゲージ57、58の電気抵抗の変化に基づいてX軸方向及びY軸方向の剪断荷重を計測することができる。なお、供試体Sの端面に作用する剪断応力の平均値は、計測された剪断荷重を供試体端面の面積で除した値として求められる。
【0054】
載荷試験は、供試体Sの剪断変形が発生しない条件で実施されるので、一般的な三軸試験における載荷条件と同等である。しかしながら、三軸試験装置1は、異方性に起因する剪断応力を荷重計測式キャップ機構18により計測することができるので、供試体Sの変形特性の異方性を特定することが可能となる。なお、軸荷重Qは、荷重計10によって計測される。所望により、セル外に配置した外部荷重計(ロードセル)によって軸荷重Qを計測することも可能であるが、上盤5の軸受部5aにおいて載荷シャフト9が摩擦力を受ける場合があるので、事前のキャリブレーションにより外部荷重計の計測値を補正することが望ましい。また、供試体Sの歪みは、
図5に示す如く供試体Sの外面に取付けた歪みゲージGによって計測される。
【0055】
以上、変位計測式キャップ機構17を備えた三軸試験装置1を実施例1として説明し、荷重計測式キャップ機構18を備えた三軸試験装置1を実施例2として説明したが、いずれかの機構を備えた三軸試験装置1は、不連続面等を含み且つ軸対称条件を満たさないと想定される性状の供試体Sの三軸試験に有効に用いられる。このような機構17、18を備えた三軸試験装置1によれば、これらの機構を備えない三軸試験装置に比べ、以下の効果が得られる。
【0056】
(1)供試体Sの異方性に起因する変形又は剪断応力の計測
変位計測式キャップ機構17を用いた三軸試験においては、供試体Sに剪断応力を発生させない試験条件の下で、異方性に起因する側方向の剪断変形を計測することが可能になる。荷重計測式キャップ機構18を用いた三軸試験においては、通常の三軸試験と同等の条件、即ち、供試体Sに側方向の剪断変形又は供試体端面の側方向の変位を発生させない試験条件の下で、異方性に起因して供試体Sに作用する剪断応力を計測することができる。このような剪断変形又は剪断応力の計測は、等方で均質な供試体を対象としてきた従来の三軸試験においては考慮されていなかった技術的事項である。
【0057】
(2)異方性の方向を特定する力学的根拠
変位計測式キャップ機構17又は荷重計測式キャップ機構18を備えた三軸試験装置1によれば、異方性に起因する剪断変形又は剪断応力を計測し得るので、主歪み又は主応力の方向を特定することができ、これにより、主歪み及び応力の方向と共軸な異方性の方向を力学的な根拠をもって特定することが可能となる。
【0058】
(3)単一回又は少数回の三軸試験による変形異方性の特定
複数の方向の歪み又は応力を計測し、解析することにより、一回又は少数回の三軸試験により供試体Sの変形異方性を知得又は把握することができる。
【0059】
次に、変位計測式キャップ機構17及び荷重計測式キャップ機構18を用いた三軸試験により、面内等方性を仮定した変形特性の異方性を特定する方法について説明する。
【0060】
[変位計測式キャップ機構を用いた異方性の特定方法]
面内等方弾性体とは、剛性が等方な面の弾性定数と、弾性主軸の方向(剛性が等方な面に直交する方向)の弾性パラメータとが異なる弾性体であり、不連続面の弾性的な挙動と等価な等価連続体として用いられた例(Goodman R.E.:Introduction to Rock Mechanics. J. Wiley、 New York、 1989)や、堆積岩の構成関係として用いられた例(Oka F.、 Kimoto S.、 Kobayashi H.、 Adachi T.: Anisotropic behavior of soft sedimentary rock. Soils and Foundations、 Vol.42、 No.5、 pp.59-70、 2002)、或いは、片理をもつ片岩のモデル化に用いられた例(Akai K.、 Yamamoto K.、 Arioka M.:Experimental research on the structural anisotropy of crystalline schist. J. JSCE、 Vol.170、 pp.23-36、 1969)が知られている。
【0061】
図10は、地理座標系に対する剛性が等方な面(不連続面)の傾斜ξ、剛性が等方な面の走行x'、傾斜方位y'および法線方向z'を示す概念図である。本例では、x'方向及びy'方向の弾性パラメータ(ヤング率、ポアソン比、せん断剛性率)は、(E
x', ν
x', G
x'(=E
x'/2(1+ν
x'))で表され,z'方向の弾性パラメータは、(E
z', ν
z', G
z')で表される。
【0062】
図11は、変位計測式キャップ機構17を用いて,面内等方性を仮定した地盤の変形特性の異方性を求める手順を示すフロー図である。なお、
図11に括弧書きで示す手順は、荷重計測式キャップ機構18を用いて地盤の変形特性の異方性を求める際に採用される手順であり、これについては、後述する。
【0063】
供試体Sの目視観察により、剛性が等方と推定される面の傾斜方位y'がE軸となす角度ζ及び傾斜ξの推定が行なわれるとともに(Step 1)、地理座標系と供試体Sとの位置関係が確認され、歪みゲージG等の計測機器類が供試体Sの適所に配設される(Step 2)。歪みゲージGは、
図5に示す如く、地理座標系に対して供試体Sの所定位置に配置される。
【0064】
次いで、等方圧密(Step 3)及び軸圧縮(Step 4)が実施され、供試体Sの応力及び歪みが計測される。好ましくは、歪みレベルを弾性域(10
-5以下)に設定した載荷が実施される。載荷工程において、段階的に載荷する応力を上げ下げして塑性変形の有無の判定を行ったり、塑性変形に伴う剛性の変化を計測することも可能である。
【0065】
次に、等方圧密時の歪みの計測値を用いて、
図10に示す地理座標系における異方性の方向(x'、y'、z')の傾斜角度(ξ、ζ)が特定され、座標軸が設定される(Step 5)。地理座標における等方圧密時の歪み増分テンソルΔε'は、下式2で表される。数式2により得られたΔε'に基づいて、下式3により、主歪みが求められる。
【数2】
【数3】
【0066】
数式3の歪みテンソルの対角化においては、Jacobi法等が用いられ、下式4で表される主歪みの単位方向ベクトルeが求められる.等方圧密時においては、異方性の方向(x'、 y'、z')と主歪み方向(1、 2、 3)が共軸となるので、上記ξ及びζによってベクトルeが構成され、例えば、下式5に基づき、ξ及びζは特定されるが、ベクトルe
12よりζの値を求め、ベクトルe
23よりξの値を求めても良く、また、値のばらつきを評価するために、複数求めたξ、ζの値を平均値化しても良い。
【数4】
【数5】
【0067】
ここで、ζの値を用いて、
図12に示す如く、E軸から時計廻り方向(右ねじの方向)の角度ζの位置にY軸が位置するように、直交座標系(X、Y、Z)が設定される。この操作により、X軸とx'軸とは共軸になる。また、この座標系(X、Y、Z)座標系に適合するように円筒座標系(R、Θ、Z)を設定し、角度ξの計測結果を併せると、
図13に示すような供試体S及び座標軸の関係が得られる。前述の目視観察(
図11のStep 1)で得られた上記ξ及びζの整合がこの時点で確認される。更に、後述する試験結果の整理のため、数式2の地理座標系の等方圧密時の増分テンソルが、下式6によって直交座標系(X、Y、Z)に座標変換される。
【数6】
【0068】
上記のように、理論的には、[x'y'面の剛性<z'面の剛性]の場合には、最大主歪み方向1と、中間主歪み方向2で形成される面x'y'面、最小主歪み3方向=z'方向、最大主歪みε
1=中間主歪みε
2となり、[z'面の剛性<x'y'面の剛性]の場合には、2方向と3方向で形成される面=x'y'面、1方向=z'方向、ε
2=最小主歪みε
3となることが予測されるが、仮に、ε
1≠ε
2≠ε
3となる場合には、
図14に示される如く、異方性の方向が設定される。
【0069】
次に、計測された応力及び歪み(
図11のStep 3及びStep 4)に基づいて、弾性パラメータが定められる(
図11のStep6)。弾性論に基づく等方圧密時の直応力及び剪断応力の理論解は、下式7で表される。歪みテンソルの成分として、上記数式6で得られた値が用いられ、Δσ
cとして、載荷軸方向のロードセル(荷重計10)、或いは、セル圧計で計測された値が用いられる。なお,D
ijkl,(i,j,k,l =1, 2, 3)はコンプライアンス・テンソルであり、面内等方弾性体のコンプライアンス・テンソルの成分は、(D
1111,D
1122,D
1133,D
3333,D
2323)の5つで表現される。コンプライアンス・テンソル成分と弾性パラメータとの関係については、後述する。
【数7】
【0070】
同様に、軸圧縮時の歪みテンソル成分の理論解は、下式8で表される。軸圧縮時の歪みが計測され、前述の数式1により、EWSN系に座標変換され、しかる後、前述の数式6により、これを直交座標系に変換した値が用いられる。Δσ
aとして、載荷軸方向のロードセル(荷重計10)で計測した値が用いられる。
【数8】
【0071】
次に、計測した応力のデータから、下式9で表す最小二乗法(例えば、川崎晴久著「C&FORTRANによる数値解析の基礎」(共立出版、1993))を用いて、弾性定数が特定される。
【数9】
【0072】
k及びAは前述の数式7、8により算出される係数行列であり、計測値行列及びξにより表現される。Cは、コンプライアンス・テンソルの成分で構成されたコンプライアンス・マトリックスである。k、A、Cは、下式10、11で表される。
【数10】
【数11】
【0073】
数式9により求められたCの値に基づき、下式12により、コンプライアンス・テンソルの成分を用いて、以下のとおり面内等方弾性体を仮定した地盤の弾性パラメータが決定される。
【数12】
【0074】
[荷重計測式キャップ機構を用いた異方性の特定方法]
荷重計測式キャップ機構18を用いて、面内等方性を仮定した地盤の変形異方性を求める手順について以下に説明する。
【0075】
荷重計測式キャップ機構18を用いた場合においても、供試体Sの目視観察による上記ξ及びζの推定(Step 1)、地理座標系と供試体Sの位置関係の確認、歪みゲージG等の計測機器類の設置(Step 2)が、変位計測式キャップ機構17を用いた手順と同じく、実施される。但し、歪みゲージGの設置に関しては、載荷軸方向の歪みのみを計測するように供試体Sに設置すれば良い。
【0076】
次いで、変位計測式キャップ機構17を用いた手順と同じく、等方圧密(Step 3)及び軸圧縮(Step 4)が実施される。等方圧密時の応力の計測値を用いて、
図10に示す地理座標系からの異方性の方向の傾斜(ξ、ζ)が特定され、座標軸が設定される(Step 5)。地理座標系における等方圧密時の応力増分テンソルΔσ'は、下式13で表される。Δσ'に基づいて、下式14により主応力が求められる。直応力の増分(Δσ
S,Δσ
E,Δσ
V)としては、軸圧Δσ
aあるいはセル圧Δσ
cが入力され、(Δσ
SV, Δσ
EV)としては、キャップ7の2方向ロードセル50の検出値により、求められる。なお、Δσ
SE=0MPaである.
【数13】
【数14】
【0077】
主応力の単位方向ベクトルe式(数式4)より、数式5を用いて、(ξ、ζ)の値が求められる。座標軸の設定のプロセスは、前述のとおりであるので、説明を省略する。後述する試験結果の整理のため、数式13における地理座標系の応力増分テンソルは、下式15により、直交座標系(X, Y, Z)に座標変換される。
【数15】
【0078】
数式11、12、13の評価に関しても、荷重計測式キャップ機構18を用いた工程に関して説明したものと実質的に同じであるので、説明を省略する。
【0079】
次に、Step3及びStep4で計測された応力及び歪みの値を用いて、弾性パラメータが定められる(Step6)。弾性論により求められた等方圧密時の直応力及び剪断応力の理論解は、下式16で表される。応力テンソルの成分として、前述の数式6で得たられた値が用いられ、Δε
c として、載荷軸方向の歪みゲージ軸変位計で計測した値が用いられる。なお、D
ijkl,(i, j, k, l = 1, 2, 3)は、剛性テンソルであり、面内等方弾性体の剛性テンソルの成分は、(D
1111, D
1122, D
1133, D
3333, D
2323)の5つの値で表現される。剛性テンソル成分と弾性パラメータの関係については、後述する。
【数16】
【0080】
同様に、三軸載荷時の理論解は、下式17で表される。三軸載荷時の応力が計測され、上記数式15で直交座標系に変換され、下式17に代入される。Δε
aについては、載荷軸方向の歪みゲージで計測した値が用いられる。
【数17】
【0081】
なお、数式15により座標変換を行うEWSN系における三軸載荷時の応力テンソルは、次式により得られる。等方圧載荷時と同様、(Δσ
SV, Δσ
EV)は、キャップ7内の2方向ロードセル50の検出値により求められる。
【数18】
【0082】
次に、計測した応力のデータに基づき、以下の数式16で表す最小二乗法により、弾性パラメータが特定される。
【数19】
【0083】
なお、k'とA'は、上記数式16、17により算出される計測値行列と、ξで構成される係数行列とより、また、Dは、剛性テンソルの成分で構成される剛性マトリックスにより、下式20のとおり表される。
【数20】
【0084】
上記数式19により求められたDを用いて、下式21に基づき、剛性テンソルの成分より、面内等方弾性体を仮定した岩盤の弾性パラメータが決定される。
【数21】
【0085】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0086】
例えば、上記実施例においては、供試体上部に配置されたキャップに変位計測式又は荷重計測式キャップ機構を配設した構成について説明したが、変位計測式又は荷重計測式キャップ機構と同等の機構を、
図1及び
図2に一点鎖線で示す如く、変位計測式ペデスタル機構17'又は荷重計測式ペデスタル機構18'としてペデスタル6に配設し又は組込むことができる。これらの機構17'、18'をペデスタル6に配設する場合には、例えば、
図1及び
図2に管路16'として示す如く、管路16をペデスタル本体6'において迂回させ、適当な可撓管又は可撓継手等(図示せず)を管路16'に介装するといった設計変更が適宜採用される。
【0087】
また、変位計測式キャップ機構を備えた三軸試験装置を第1実施例として説明し、荷重計測式キャップ機構を備えた三軸試験装置を第2実施例として説明したが、選択的に使用し得る変位計測式キャップ機構及び荷重計測式キャップ機構の双方を同一の三軸試験装置に配設することも可能である。
【0088】
更に、上記実施例に係る変位計測式キャップ機構は、転動要素(ローラ又はボール)を備えたベアリング装置を可動手段として備えるが、他の構造の可動手段、例えば、滑動要素又は摺動要素を有する支承装置を可動手段として使用しても良い。
【0089】
また、上記実施例においては、円柱状供試体の載荷試験について説明したが、角柱状供試体等の他の断面形態を有する供試体の載荷試験において本発明を適用しても良い。
【0090】
加えて、上記三軸試験装置は、変位測定装置及び体積変化測定装置等の測定装置や、計測データの記録等を行なう外部制御装置又は外部制御系を備えるが、これらの装置系については、従来の装置構成を適宜採用することができる。