特許第6222683号(P6222683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 九州オーテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000002
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000003
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000004
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000005
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000006
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000007
  • 特許6222683-ミシン用針糸送り装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6222683
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ミシン用針糸送り装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 43/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   D05B43/00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-149971(P2017-149971)
(22)【出願日】2017年8月2日
【審査請求日】2017年8月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517271577
【氏名又は名称】九州オーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 茂
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−153825(JP,A)
【文献】 特開2008−272287(JP,A)
【文献】 特開平09−239183(JP,A)
【文献】 特開平05−200181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線が垂直な縦置き状態のボビンから上方へ繰り出された針糸を、前記ボビンの直上に配された糸掛けガイドを経て、縫い針を有するミシンへと送るミシン用針糸送り装置において、
前記ボビンが載置されるボビン台と、
前記ボビンからの前記針糸の繰り出しと同期して、前記ボビン台に載置された前記ボビンを、前記針糸の繰り出し方向と同じ順方向に回転させる順回転モータと、
該順回転モータの回転速度を、前記針糸のうち、前記ボビンと前記糸掛けガイドとの間の部分に発生する撚れを抑制可能な速度に調整するモータコントローラとを備えたミシン用針糸送り装置。
【請求項2】
前記ミシンは、一対の前記ボビンから繰り出された2本の前記針糸が送られる2本の前記縫い針を有した2本縫い用のもので、
前記ミシン用針糸送り装置は、一方の前記針糸を、前記糸掛けガイドを経て、一方の前記縫い針へ送る第1のミシン用針糸送り部と、残りの前記針糸を、前記糸掛けガイドを経て、残りの前記縫い針へ送る第2のミシン用針糸送り部とを有し、
前記第1のミシン用針糸送り部および前記第2のミシン用針糸送り部には、前記ボビン台と、前記順回転モータと、前記モータコントローラとがそれぞれ配設された請求項1に記載のミシン用針糸送り装置。
【請求項3】
前記ミシンの運転中に、前記ボビンの周方向へ変位する前記針糸の繰り出し位置をビデオ撮像するビデオカメラを有し、
前記モータコントローラは、前記ビデオカメラによりビデオ撮像された前記針糸の繰り出し位置の変位角度が、あらかじめ設定された該変位角度の制御目標値内となるように、前記順回転モータの回転速度を自動制御するものである請求項1または請求項2に記載のミシン用針糸送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミシン用針糸送り装置、詳しくはボビンから繰り出した針糸をミシンに送るためのミシン用針糸送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な業務用および工業用のミシンでは、針糸用のボビンが軸線を垂直にして支持台に支持されている。ボビンに巻回された針糸は、直上の糸掛けガイドに掛けられた後、支持台(ボビン台)から離間したミシンに送られる。
このような縦置き式のボビンから引き上げた針糸をミシンに送り出す際には、撚れが針糸に発生しやすい。これは、支持台に支持されたボビンは基本的に回転せず、針糸自体がボビンの頂部から回転しながら繰り出されるためである。特に、針糸の残量が少なくなったときには針糸が撚れる回数が多くなりやすい。この撚れは、ミシン縫製時の糸切れや目飛びの他、糸テンションのバラツキといったトラブルの原因となり、ひいては縫製品の品質の低下を招いてしまう。
【0003】
そこで、従来、撚れが発生しないように、ボビンからの針糸をミシンへと送り出す、例えば特許文献1の"縫製ミシン用針糸送り装置"などが知られている。
特許文献1の装置は、駆動モータの出力軸と連結した水平な取付軸にボビンを取り行け、上下動自在に支持する昇降体に形成された糸道にボビンからの針糸を通し、その後、縫い針に供給するように構成されている。また、ミシンの駆動により針糸が縫い針方向へ引っ張られることで連動する昇降体の上昇を検知器により検知し、その検知時にモータを所定時間だけ回転駆動し、ボビンを針糸の繰り出し方向(順方向)へと回転させる。このとき、モータ回転するボビンから繰り出された針糸に生じた余剰分(余剰糸)は、昇降体に設けたケーシング状の受部材に収納されるように構成されている。
【0004】
また、別の従来技術として、余剰に繰り出された針糸をボビンに巻き戻す特許文献2の"縫製ミシン用の針糸送り装置"なども知られている。
特許文献2の装置は、ミシンの駆動による針糸の繰り出しに伴い、ボビンが回転可能に支持される支持台と、ボビンから針糸が繰り出される方向とは反対方向に支持台を回転させることで、ボビンから余剰に繰り出された針糸を、元のボビンに巻き戻す反対回転モータとを備えたものである。
ミシン運転時、支持台を針糸の繰り出し方向とは反対方向に反対回転モータにより回転させることで、ボビンから余剰に繰り出された針糸をボビンに巻き戻す。これにより、反対回転モータと支持台という簡単な構成で、針糸の撚れの発生を確実に防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6-23181号公報
【特許文献2】特開2013−153825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の縫製ミシン用針糸送り装置は、構成や制御が複雑で、かつ、余剰糸が生じないようにする調整も複雑化するという課題があった。しかも、軸線が水平なボビンから繰り出された針糸は、まずボビンの一側方に配された昇降体の糸道を通ってミシンへと供給される。そのため、ボビンから繰り出された針糸には、上下動する昇降体によって所定のテンションが付与され、特に細い針糸や柔らかい針糸を使用する場合には、このテンションを原因として、糸切れなどが発生するおそれがあった。
【0007】
さらに、特許文献1では、ボビンを回転する駆動モータの出力軸が水平であった。一般的にボビンへの針糸の巻き掛けは、ボビンの長さ方向の一端と他端との間を何回も往復することでなされている。そのため、ボビンから導出された針糸の送り先(昇降体の支持板)は常時一定であるものの、ボビンの外周面上での針糸の繰り出し位置は、針糸の繰り出しに伴い、ボビンの長さ方向へ徐々に移動する。その結果、水平な取付軸に抜き差し自在に挿通されたボビンには、この針糸の繰り出し位置の移動方向と同じ方向へボビンを移動させようとする針糸の力が作用する。これにより、ミシン運転時、仮にボビンの抜け止めを掛け忘れた際には、ボビンが取付軸から抜け落ちるおそれがあった。
【0008】
一方、特許文献2のミシン用針糸送り装置では、特許文献1の構成や制御等の複雑化という課題は解決されるものの、針糸の繰り出し方向とは反対方向に縦置きのボビンを回転させるため、特許文献1の順方向にモータ回転しながら昇降体により針糸にテンションを付与する場合に比べて、このテンションが大きくなりやすい。その結果、細い針糸や柔らかい針糸の使用時には、糸切れなどの頻度が高まっていた。
【0009】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、縦置きのボビンから上方へ針糸が繰り出される際に、順回転モータにより、針糸のうち、ボビンと糸掛けガイドとの間の部分に発生する撚れを抑制可能な速度で、ボビンを針糸の繰り出し方向と同一となる順方向へ回転させるようにすれば、テンションの付与が必要となるボビンからの針糸の横方向(水平方向)への繰り出しを行わずとも、ボビンから縦方向(垂直方向)に引き上げられる途中で、この針糸に生じる撚れを抑制することができ、これにより上述した課題は全て解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0010】
すなわち、この発明は、ボビンから繰り出された針糸に過剰なテンションを付与して糸切れを発生させることなく、針糸のボビンから引き上げられた部分に生じる撚れを抑制することができるミシン用針糸送り装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、軸線が垂直な縦置き状態のボビンから上方へ繰り出された針糸を、前記ボビンの直上に配された糸掛けガイドを経て、縫い針を有するミシンへと送るミシン用針糸送り装置において、前記ボビンが載置されるボビン台と、前記ボビンからの前記針糸の繰り出しと同期して、前記ボビン台に載置された前記ボビンを、前記針糸の繰り出し方向と同じ順方向に回転させる順回転モータと、該順回転モータの回転速度を、前記針糸のうち、前記ボビンと前記糸掛けガイドとの間の部分に発生する撚れを抑制可能な速度に調整するモータコントローラとを備えたミシン用針糸送り装置である。
【0012】
ミシンは、各種の業務用および各種の工業用のミシンである。ミシンに装着される縫い針の使用数は1本でも、2本または3本以上でもよい。
ミシン用針糸送り装置の構成は、ボビン台と、順回転モータと、モータコントローラとを有して、縦置き状態のボビンから上方へ繰り出された針糸を、糸掛けガイドを経てミシンへ送ることができれば任意である。
ボビンの素材、形状などは任意である。ボビンは、軸線が垂直な縦置き状態で使用される。ボビンの使用本数は、縫い針の使用本数などにより適宜変更される。
【0013】
針糸の種類は、ミシン用であれば任意である。例えば、麻糸、綿糸、絹糸、合繊糸、ニット用糸などを採用することができる。
糸掛けガイドの構造は、針糸を引っ掛けることができれば任意である。1本の針糸が掛止されるものでも、複数本の針糸が掛止されるものでもよい。また、糸掛けガイドの支柱部には、高さ調整機能を設けてもよい。
ボビン台の構造は、ボビンを縦置き状態で載置できれば任意である。また、ボビン台に載置されたボビンを回転させる構造としては、例えば、ボビン台自体をモータ回転させる構成を採用することができる。その他、ボビン台に回転自在に突設されて、ボビンが着脱自在に装着されるボビン装着軸のみをモータ回転させる構成でもよい。
【0014】
順回転モータの種類は、ボビン台に載置されたボビンを、針糸の繰り出し方向に対して順方向に回転可能であれば任意である。例えば、電動モータなどを採用することができる。
ここでいう「針糸の撚れの抑制」とは、針糸の撚れが無い状態を含めて、従来装置の場合に比べて、針糸の撚れる回数が少ないことを意味する。
ここでいう「撚れを抑制可能な速度に調整する」とは、コントローラによって順回転モータによるボビンの回転速度を、針糸の撚れが無い状態を含めて、従来装置の場合に比べて、針糸の撚れる回数が少なくなる速度に調整することをいう。
具体的には、ミシン運転に伴うボビンの外周面からの針糸の繰り出しに際して、平面視して、ボビンからの針糸の繰り出し位置がボビンの外周面を1回転する速度を基準とし、この基準の回転速度と、順回転モータによりボビンが1回転する速度とが同一、または、この基準の回転速度よりボビンの回転速度の方が遅くなるように調整することを意味する。ここでいう繰り出し位置とは、平面視して、ボビンから針糸が外れる(離れる)位置をいう。
【0015】
このように、コントローラにより、順回転モータによるボビンの回転速度を、針糸の撚れを抑制可能な速度に調整すれば、常時、ボビンからの釣糸の繰り出し位置は、平面視して円形のボビンの一定の角度位置(例えば、平面視して円形のボビンを時計に見立てたときの"12(0)時"の位置)、または、一定の角度範囲(例えば、このボビンを時計に見立てたときの"12(0)時〜15(3)時"の位置)に維持される。このほか、ボビンが糸出しから終わりまでの間にわずかに回転しても、この"撚れ"防止となる。
また、ここでの「撚れが抑制される針糸の部分」とは、針糸のうち、ボビンの繰り出し位置から糸掛けガイドまでの立ち上がり部分(引き上げ部分)をいう。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記ミシンは、一対の前記ボビンから繰り出された2本の前記針糸が送られる2本の前記縫い針を有した2本縫い用のもので、前記ミシン用針糸送り装置は、一方の前記針糸を、前記糸掛けガイドを経て、一方の前記縫い針へ送る第1のミシン用針糸送り部と、残りの前記針糸を、前記糸掛けガイドを経て、残りの前記縫い針へ送る第2のミシン用針糸送り部とを有し、前記第1のミシン用針糸送り部および前記第2のミシン用針糸送り部には、前記ボビン台と、前記順回転モータと、前記モータコントローラとがそれぞれ配設された請求項1に記載のミシン用針糸送り装置である。
【0017】
2本縫いミシンの種類は限定されない。例えば、本縫い用でも、飾り縫い用でもよい。
第1のミシン用針糸送り部と第2のミシン用針糸送り部とは、ボビンから繰り出された各針糸のミシンへの送りを個別に制御する。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記ミシンの運転中に、前記ボビンの周方向へ変位する前記針糸の繰り出し位置をビデオ撮像するビデオカメラを有し、前記モータコントローラは、前記針糸の繰り出し位置の前記ボビンの周方向への変位角度が、あらかじめ設定された該変位角度の制御目標値内となるように、前記順回転モータの回転速度を自動制御するものである請求項1または請求項2に記載のミシン用針糸送り装置である。
【0019】
ビデオカメラとしては、各種のデジタルカメラを採用することができる。
ここでいう「変位角度の制御目標値」とは、ミシンを運転中(運転中の所定時間内でもよい)に、針糸の繰り出し位置がボビンの周方向へ変動する許容角度を示す値である。理想の制御目標値は0°であるが、例えば5°から350°までの何れかの値でもよい。5°未満では、針糸の繰り出し位置の制御精度が高すぎて、装置コストが高騰するおそれがある。また、350°を超えれば、針糸の繰り出し位置の制御精度が低すぎて、針糸の立ち上がり部分に撚れが生じるおそれがある。好ましい制御目標値は、10°から90°までの値である。なお、前記運転中の所定時間内とは、例えば1秒間、1分間、1時間のうちである。
【0020】
この請求項3の発明は、以下のように構成してもよい。
すなわち、
「前記ミシンの運転中に、前記ボビンの周方向へ変位する前記針糸の繰り出し位置をビデオ撮像するビデオカメラを有し、
前記モータコントローラは、
前記ビデオカメラがビデオ撮像した動画像データから、前記ボビンの周方向における前記針糸の繰り出し位置が所定時間内で変化する変位角度を検出する変位角度検出手段と、
前記変位角度の制御目標値が記憶された記憶部と、
前記変位角度検出手段により得られた前記針糸の繰り出し位置の変位角度と、前記記憶部に記憶された前記制御目標値とを対比し、前記針糸の繰り出し位置の変位角度が前記制御目標値内かを判定する変位角度判定手段と、
該変位角度判定手段が、前記制御目標値を逸脱していると判定した場合のみ、前記針糸の繰り出し位置の変位角度が前記制御目標値内となるように、前記順回転モータの回転速度を制御する回転速度制御手段と、
これらを制御する制御部とを有した請求項1または請求項2に記載のミシン用針糸送り装置」である。
【0021】
このように、ビデオカメラがビデオ撮像した動画像データから、変位角度検出手段によりボビンの周方向における針糸の繰り出し位置が所定時間内で変化する変位角度を検出し、得られた針糸の繰り出し位置の変位角度と、記憶部に記憶された制御目標値とを対比し、針糸の繰り出し位置の変位角度が制御目標値内かを変位角度判定手段により判定し、その判定結果が制御目標値を逸脱していると判定した場合のみ、針糸の繰り出し位置の変位角度が制御目標値内となるように、順回転モータによるボビンの回転速度を回転速度制御手段により制御すれば、ボビンからの針糸の繰り出し開始から終了まで、ボビンからの釣糸の繰り出し位置は、平面視して円形のボビンの一定の角度範囲(例えば、このボビンを時計に見立てたときの"12(0)時〜15(3)時"の位置)に維持される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、ボビンから上方へ繰り出された針糸は、順次、直上に配された糸掛けガイドを経てミシンへと送られる。このとき、順回転モータを駆動し、ボビンからの針糸の繰り出しと同期して、針糸の繰り出し方向と同じ順方向に、ボビン台に載置されたボビンを回転させる。これにより、ボビンと糸掛けガイドとの間の針糸の部分に発生しようとする撚れを抑制することができる。その結果、この撚れを原因とした縫製品の品質低下を防止することができる。
また、モータコントローラにより、順回転モータの回転速度を、ボビンにおける針糸の残量や、ミシンへの糸送り速度などの変化に合わせて、針糸のうち、ボビンと糸掛けガイドとの間の部分に発生する撚れを抑制可能な速度に調整する。これにより、仮に細い針糸を使用した場合でも、針糸のうち、ボビンと糸掛けガイドとの間の部分(立ち上がり部分)には、従来装置における針糸の繰り出し部分に付与されたテンションを原因とする糸切れは発生しない。
【0023】
さらに、ここではボビンの軸線が垂直であるため、ミシン運転時、ボビンの外周面上での針糸の繰り出し位置が、針糸の繰り出しに伴って、ボビンの長さ方向の一端から他端まで徐々に移動しても、ボビンの自重が抜け止めの錘となるため、ボビンの軸線が水平だった従来装置のときのように、ボビン台(の取付軸)からボビンが抜け落ちるおそれはない。
さらにまた、これらの従来装置は、ボビンからの針糸の繰り出し方向が横方向(水平方向)であった。そのため、針糸の繰り出し部分には自重によるたるみが発生しやすく、このたるみを原因とした針糸の撚れや縺れも生じやすかった。そこで、各従来装置では、たるみを解消するために、針糸の繰り出し部分に所定のテンションを付与しており、この付与は従来装置の必須の構成要件となっていた。これに対してこの発明は、針糸をボビンの外周面から上方へ繰り出すために、このような糸切れの原因となるテンションを、針糸の繰り出し部分に付与しなくてもよい。
【0024】
特に、請求項2に記載の発明によれば、各ボビンから繰り出された2本の針糸は、対応する第1のミシン用針糸送り部または第2のミシン用針糸送り部を使用し、各ボビンの直上に配された糸掛けガイドを経て、2本縫いミシンの対応する縫い針へと送られる。その際、各順回転モータを駆動し、各ボビンからの各針糸の繰り出しと同期して、各針糸の繰り出し方向と同じ順方向に各ボビンを回転させる。これにより、各針糸のうち、対応するボビンと糸掛けガイドとの間の部分に発生しようとする撚れを個別に抑制することができる。
そのため、例えば、2本の縫い針によってカーブ(曲線)縫いする場合、内周側より外周側の方が針糸の使用量が大きくなる。その結果、一対のボビンから繰り出される針糸の繰り出し量に変化が生じる。この場合、各順回転モータは、同一の糸送り調整を行うのではなく、各針糸の繰り出し量の違いに応じた回転速度の調整を行うことになる。このことは、各ボビンにおける針糸の残量の違いにおいても同様である。
【0025】
また、請求項3に記載の発明によれば、ミシンの運転中に、ボビンの周方向へ変位する針糸の繰り出し位置を、ビデオカメラによりビデオ撮像する。その後、ビデオカメラにより得られた動画像データに基づき、針糸の繰り出し位置の変位角度が、あらかじめ設定された変位角度の制御目標値内となるように、モータコントローラにより順回転モータの回転速度を自動制御する。これにより、ボビンと糸掛けガイドとの間の針糸の立ち上がり部分に発生する撚れを自動抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置が搭載された業務用ミシンの使用状態を示す要部正面図である。
図2】この発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置の使用状態を示す一部拡大平面図を含む正面図である。
図3】この発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置の使用状態を示す要部正面図である。
図4】この発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置の一部を構成するフットスイッチの拡大縦断面図である。
図5】この発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置が搭載された2本縫い業務用ミシンの使用状態を示す要部正面図である。
図6】この発明の実施例2に係るミシン用針糸送り装置の一部を構成する電気機器のブロック図である。
図7】この発明の実施例2に係るミシン用針糸送り装置の一部を構成するモータコントローラによる順回転モータの自動制御を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。なお、説明の都合上、明細書に記載された方向は、図1中の方向とする。
【実施例】
【0028】
図1において、10はこの発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置で、このミシン用針糸送り装置10は、軸線が垂直な縦置き状態のボビン11から上方へ繰り出された針糸(上糸)12を、ボビン11の直上に配された糸掛けガイド13を経て、縫い針14を有するミシン15へと送るものである。
【0029】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
ミシン15は、自動車に搭載された革製の座席シートを縫製する工業用ミシンで、門形の縫製作業台16の上に設置されている。ミシン15は、ミシン駆動モータ17などが収納された外殻としての横長な本体ケーシング18を有している。本体ケーシング18の左側部の下端には、上下動する1本の縫い針14が配置されている。また、本体ケーシング18の正面側には、針糸12が挿通されて、針糸繰り出しや針糸締め付けの機能を果たす図示しない天秤が上下動可能に設けられている。ミシン用針糸送り装置10によりボビン11から引き出された針糸12は、糸掛けガイド13および本体ケーシング18の正面側の図示しない糸調子部などを経て前記天秤に挿通され、縫い針14へと案内される。ここで、針糸12は縫い針14の針穴に挿通され、ミシン15の内部の縫製機構に供給される。
糸掛けガイド13は、縫製作業台16の右端部上に立設された支柱19と、支柱19の上端部に片持ち支持された水平方向に長いアーム部20とを有している。アーム部20のうち、その左側端部と、長さ方向の中間部とには、ボビン11から繰り出された針糸12が掛止される一対の糸道21が配設されている。2つの糸道21のうち、右側のものがボビン台22の略直上に配置されている。
【0030】
次に、図1図4を参照して、ミシン用針糸送り装置10を詳細に説明する。
図1および図2に示すように、ミシン用針糸送り装置10は、本体スタンド23と、ボビン11が回転自在に載置される前記ボビン台22と、ボビン11からの針糸12の繰り出しと同期して、針糸12の繰り出し方向と同じ順方向にボビン台22を回転させる順回転モータ25と、順回転モータ25の回転速度を、針糸12のうち、ボビン11と糸掛けガイド13との間の部分に発生する撚れを抑制する速度に調整するためのモータコントローラ24とを備えている。
【0031】
本体スタンド23は、何れも角型鋼管製の垂直な支柱部23aと水平なアンカー部23bとを、下向きT字状に連結したものである。
支柱部23aの上端部の右側面には、支柱部23aに接合される垂直板片部40aと、軸孔が中央部に形成された水平板片部40bとが、アングル状に連結された取り付けブラケット40が固定されている。
水平板片部40bの下面には、出力軸25aを軸孔に挿通した順回転モータ25が固定されている。出力軸25aの先端部には、カップリングCを介して、丸皿状のボビン台22の中心部が固定されている。
【0032】
ボビン台22の上面には、ボビン11の滑り止めとなる図示しない円形のスポンジシートが貼着されている。また、ボビン台22の上面の中心部には、ボビン11の円筒状の巻芯11aが挿入される取付軸22aが突設されている。
また、本体スタンド23の上端部付近の右側面には、モータコントローラ24が固定されている。モータコントローラ24は、ケーシング24aの内部に制御盤を有するとともに、ケーシング24aの前面に、順回転モータ25の回転速度を無段階に調整するダイヤルスイッチ(ノブ)Nが回動自在に設けられている。
【0033】
図3および図4に示すように、縫製作業台16の内部空間の床面には、ミシン15とモータコントローラ24とに電気的に接続されて、ミシン駆動モータ17と順回転モータ25とを同期して無段階に出力調整するフットスイッチ26が載置されている。
フットスイッチ26は、縦長な矩形状の基板27を有し、この基板27の先端部には、開口側を下に向けた横長な矩形樋状のセンサーケース28が突設されている。センサーケース28の上板の中央部には、本体部分をセンサーケース28の上部空間に収納した状態で、近接センサ29の基端部(上端部)が固定されている。
【0034】
また、センサーケース28の一方の側板(後述するヒンジ側)の下部には、横長な矩形状の開口28aが形成されている。この開口28aを通して、縦長な矩形状の操作ペダル30の先端部が、センサーケース28の下部空間に上下動可能に収納されている。操作ペダル30の基端部は、操作ペダル30を上方付勢する図示しないコイルばねが組み込まれたヒンジ31を介して、基板27の基端部に垂直回動自在に連結されている。
したがって、操作ペダル30をコイルばねのばね力に抗して踏み込むことにより、操作ペダル30の先端部が、その踏み込んだ分だけ近接センサ29から下方へ離間する。この離間距離に応じた信号(0V〜24Vの出力信号)を、フットスイッチ26からミシン15とモータコントローラ24との各制御部に送信する。これにより、ミシン駆動モータ17と順回転モータ25とが、操作ペダル30の踏み込み量に応じた出力で同期駆動する。
【0035】
なお、ミシン駆動モータ17による針糸12のミシン15への送り速度(送り量)と、順回転モータ25によるボビン11の順方向への回転速度との調整は、実際の縫製の前に、ミシン15を試験運転する際に行えばよい。ここでの具体的な調整方法としては、試験運転時にフットスイッチ26の操作ペダル30を所定量だけ踏み込んだとき、ボビン11からの針糸12の繰り出し位置aが、ボビン11の外周面に沿って周回しないように、順回転モータ25の回転速度を調整する。
【0036】
次に、図1図4を参照して、この発明の実施例1に係るミシン用針糸送り装置10を利用して行う、自動車用の革製の座席シートの縫製作業について説明する。
図1図4に示すように、フットスイッチ26の操作ペダル30を、コイルばねのばね力に抗して踏むことにより、ミシン駆動モータ17と順回転モータ25とが、操作ペダル30の踏み込み量に応じた出力で同期駆動する。
ボビン11から上方へ繰り出された針糸12は、順次、直上に配された糸掛けガイド13の糸道21に引っ掛けられてミシン15へと送られる。このとき、順回転モータ25を駆動し、ボビン11からの針糸12の繰り出しと同期して、針糸12の繰り出し方向と同じ順方向に、ボビン台22と一体的にボビン11を所定速度で回転させる。
【0037】
すなわち、モータコントローラ24により、順回転モータ25の回転速度を、針糸12のうち、ボビン11と糸掛けガイド13との間の部分に発生する撚れを抑制可能な速度に調整して、ボビン11を回転させる。具体的には、ミシン運転に伴うボビン11の外周面からの針糸12の繰り出しに際して、平面視して、ボビン11からの針糸12の繰り出し位置(繰り出し点)aがボビン11の外周面を1回転する速度を基準とし、この基準の回転速度と、順回転モータ25によりボビン12が1回転する速度とが同一(理想的な調整)、または、この基準の回転速度よりボビン12の回転速度の方が遅くなるように調整する(簡易な調整)。
このように、コントローラ24により、順回転モータ25によるボビン11の回転速度を、針糸12の撚れを抑制可能な速度に調整すれば、ボビン11からの釣糸12の繰り出し位置は、常時、平面視して円形のボビン12の一定の角度位置(例えば、平面視して円形のボビン12を時計に見立てたときの"9時"の位置)、または、一定の角度範囲(例えば、ボビン12を時計に見立てたときの"7時30分〜10時30分"の角度範囲90°)に維持される(図2の部分拡大図)。
これにより、ボビン11と糸掛けガイド13との間の針糸12の部分に発生しようとする撚れを抑制することができる。その結果、この撚れを原因とした糸切れ、目飛びや糸テンションのバラツキの発生を防止し、ひいては座席シートの品質低下を防止することができる。
【0038】
また、縫製作業中、例えば、ボビン11における針糸12の残量や、ミシン15への針糸12の送り速度が変化した場合や、ボビン11の交換に伴って針糸12の素材や太さが変更された際には、ボビン11からの針糸12の繰り出しと、順回転モータ25によるボビン11の順方向への回転とのバランスが崩れる。その際には、この良好なバランス状態が回復するように、モータコントローラ24のダイヤルスイッチNを所定方向に所定量だけ回転して、順回転モータ25をより高速回させるか、反対にこれを低速回転させる。これにより、仮に細い針糸12や柔らかい針糸12を使用したときでも、針糸12のうち、ボビン11と糸掛けガイド13との間の部分(立ち上がり部分)には、従来装置における針糸12の繰り出し部分に付与されたテンションを原因とする糸切れは発生しない。
【0039】
さらに、ここではボビン11の軸線が垂直で、針糸12の繰り出し方向が上方向(縦方向)であるため、ミシン15の運転時に、ボビン11から導出された針糸12の送り先が、定位置の糸掛けガイド13であって、かつボビン11の外周面上での針糸12の繰り出し位置aが、針糸12の繰り出しに伴ってボビン11の長さ方向の一端から他端まで徐々に移動する場合でも、このボビン11が錘となるため、ボビン11の軸線が水平であった従来装置のときのように、ボビン台22(の取付軸)からボビン11が抜け落ちることはない。
【0040】
さらにまた、これらの従来装置の場合には、ボビン11からの針糸12の繰り出し方向が横方向(水平方向)であったため、針糸12の繰り出し部分には糸の自重に因るたるみが発生しやすく、このたるみを原因とした針糸12の撚れや縺れも生じやすかった。そこで、これらの従来装置では、たるみ解消のために針糸12の繰り出し部分に所定のテンションを付与している。すなわち、このテンション付与は従来装置の必須の構成要件である。これに対して、実施例1のミシン用針糸送り装置10では、ボビン11の軸線が垂直で、ボビン11の外周面から上方へ針糸12を繰り出すようにしたため、このような糸切れの原因となるテンションを、針糸12の繰り出し部分に付与しなくてもよい。
【0041】
なお、ここでは縫い針14が1本の一般的なミシン15を採用したが、これに限定しなくても、例えば、2本の縫い針14A,14Bが装着された2本縫い用ミシン15Aを採用してもよい(図5)。この場合、各縫い針14A,14Bには、一対のボビン11A,11Bからそれぞれ繰り出された2本の針糸12A,12Bが供給される。
これに対応して、ミシン用針糸送り装置10Aは、一方の針糸12Aを、糸掛けガイド13を経て、一方の縫い針14Aへ送る第1のミシン用針糸送り部60Aと、残りの針糸12Bを、糸掛けガイド13を経て、残りの縫い針14Bへ送る第2のミシン用針糸送り部60Bとを有するものとなる。第1のミシン用針糸送り部60Aおよび第2のミシン用針糸送り部60Bには、ボビン台22と、順回転モータ25A,25Bと、モータコントローラ24とが配設されている。
【0042】
したがって、各ボビン12A,12Bから繰り出された2本の針糸11A,11Bは、対応する第1のミシン用針糸送り部60Aまたは第2のミシン用針糸送り部60Bを使用し、各ボビン12A,12Bの直上に配された糸掛けガイド13を経て、2本縫いミシン15Aの対応する縫い針14A,14Bへと送られる。その際、各順回転モータ25A,25Bを駆動し、各ボビン12A,12Bからの各針糸11A,11Bの繰り出しと同期して、各針糸11A,11Bの繰り出し方向と同じ順方向に各ボビン12A,12Bを回転させる。これにより、各針糸11A,11Bのうち、対応するボビン12A,12Bと糸掛けガイド13との間の部分に発生しようとする撚れを個別に抑制することができる。
そのため、例えば、2本の縫い針14A,14Bによって革製の座席シートをカーブ(曲線)縫いする場合、内周側より外周側の方が針糸11A(11B)の使用量が大きくなる。その結果、一対のボビン12A,12Bから繰り出される針糸11A,11Bの繰り出し量に変化が生じる。この場合、各順回転モータ25A,25Bは、同一の糸送り調整を行うのではなく、各針糸11A,11Bの繰り出し量の違いに応じた回転速度の調整を行うことになる。このことは、各ボビン12A,12Bにおける針糸11A,11Bの残量の違いにおいても同様である。
【0043】
次に、図6および図7を参照して、この発明の実施例2に係るミシン用針糸送り装置を説明する。
図6のブロック図に示すように、この発明の実施例2に係るミシン用針糸送り装置10Bの特徴は、ミシン15の運転中に、ボビン11の周方向へ変位する針糸12の繰り出し位置aをビデオ撮像するビデオカメラ50を有し、モータコントローラ24は、針糸12の繰り出し位置aのボビン11の周方向への変位角度θが、あらかじめ設定された変位角度θの制御目標値内となるように、順回転モータ25の回転速度を自動制御するようにした点である。
【0044】
以下、これらの構成部品について具板的に説明する。
ビデオカメラ50はデジタル式のもので、糸掛けガイド13のうち、ボビン台22の直上部分に固定されている。ビデオカメラ50は、ミシン15の運転中は、常時、ボビン11の周方向における針糸12の繰り出し位置aをビデオ撮像する(図1の部分拡大図参照)。
また、モータコントローラ24は、ビデオカメラ50によりビデオ撮像した動画像データから、ボビン11の周方向における針糸12の繰り出し位置aが所定時間内で変化する変位角度θを検出する変位角度検出手段51と、変位角度θの制御目標値(ここでは90°)が記憶された記憶部52と、変位角度検出手段51により得られた針糸12の繰り出し位置aの変位角度θと、記憶部52に記憶された制御目標値とを対比し、針糸12の繰り出し位置aの変位角度θが制御目標値内かを判定する変位角度判定手段53と、変位角度判定手段53が、制御目標値を逸脱していると判定した場合のみ、針糸12の繰り出し位置aの変位角度θが制御目標値内となるように、順回転モータ25の回転速度を制御する回転速度制御手段54と、これらを制御する制御部55とを有している。
【0045】
変位角度検出手段51は、ビデオカメラ50の動画像データから、ボビン11の周方向における針糸12の繰り出し位置aが所定時間内で変化する変位角度θを検出する変位角度検出回路である。ここでの"所定時間"は10秒間である。もちろん、これには限定されない。例えば1秒間でも、1分間でもよい。
記憶部52は、変位角度θの制御目標値が、読み書き自在に記憶されるRAM(Random access memory)である。ここでの制御目標値は30°である。RAMに代えてROM(Read Only Memory)でもよい。
【0046】
変位角度判定手段53は、針糸12の繰り出し位置aの変位角度θと記憶部52の制御目標値とを対比し、針糸12の繰り出し位置aの変位角度θが制御目標値内かを判定する変位角度判定回路である。
また、回転速度制御手段54は、変位角度判定手段53が、制御目標値内ではないと判定した場合に、針糸12の繰り出し位置aの変位角度θが制御目標値内となるように、順回転モータ25の回転速度を制御する回転速度制御回路である。
さらに、制御部55は、これらの電気機器を総括的に制御する中央演算装置(CPU)を有している。
【0047】
次に、図7のフローシートを参考にして、この発明の実施例2に係るミシン用針糸送り装置10Bを利用して行う、自動車用の革製の座席シートの縫製作業について説明する。
まず、ミシン15の運転中、ビデオカメラ50によってボビン11の周方向へ変位する針糸12の繰り出し位置aをビデオ撮像する。
その後、撮像時間のうち、任意に抽出された10秒間の動画像データに基づき、針糸12の繰り出し位置aがボビン11の周方向へ最も離れたときの角度(変位角度θ)を変位角度検出手段51により検出する。
【0048】
次いで、変位角度判定手段53により、変位角度検出手段51により検出された"針糸12の繰り出し位置aの変位角度θ"と、記憶部52に記憶された"制御目標値"とを対比し、針糸12の繰り出し位置aの変位角度θが制御目標値以内かを判定する(図2の部分拡大図)。
判定の結果、この変位角度θが制御目標値の90°以内であれば、現状のミシン縫製作業が継続される。一方、90°を逸脱している場合には、この変位角度θが制御目標値内となるように、制御部55からの指令に基づき、順回転モータ25の回転速度を、適宜増速または減速して自動制御する。これにより、ボビン11と糸掛けガイド13との間の針糸12の立ち上がり部分に発生する撚れを自動的に抑制することができる。なお、ここでは変位角度θが45°であったため、現状のミシン縫製作業を継続する制御がなされた。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、ボビンから繰り出した針糸をミシンに送り出すミシン用針糸送りの技術として有用である。
【符号の説明】
【0050】
10,10A、10B ミシン用針糸送り装置、
11,11A,11B ボビン、
12、12A,12B 針糸、
13 糸掛けガイド、
14、14A,14B 縫い針、
15 ミシン、
15A 2本縫い用ミシン、
22 ボビン台、
24 モータコントローラ、
25,25A,25B 順回転モータ、
50 ビデオカメラ、
60A 第1のミシン用針糸送り部、
60B 第2のミシン用針糸送り部。
【要約】
【課題】ボビンから繰り出された針糸に過剰なテンションを付与して糸切れを発生させず、針糸のボビンから引き上げられた部分に生じる撚れを抑制可能なミシン用針糸送り装置を提供する。
【解決手段】垂直配置のボビン11から上方へ繰り出された針糸12は、糸掛けガイド13を経てミシン15へと送られる。このとき、順回転モータ25を駆動し、ボビン11からの針糸12の繰り出しと同期して、針糸12の繰り出し方向と順方向にボビン11を回転させる。よって、針糸12の立ち上がり部分の撚れを抑制できる。また順回転モータ25の回転速度を、ボビン12の針糸残量等に応じてモータコントローラ24により調整するため、仮に細糸を使ってもこの立ち上がり部分には、従来装置で問題化したテンションを原因とした糸切れは生じない。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7