(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電源システムの構成を示すブロック図である。電源システム100は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車など、電気モータで駆動される車両に搭載されて使用される。
【0009】
電源システム100は、電源装置1、補機バッテリ9、電装品10および高圧バッテリ11を有する。電源装置1および高圧バッテリ11は、導電性を有する金属製のケース111、121でそれぞれ覆われている。ケース111、121は、シールド線12a、12bを介して互いに接続されている。電源装置1を覆うケース111は、金属製のボルト13a、13bにより車両のシャーシ8に固定されている。高圧バッテリ11を覆うケース121も同様に、金属製のボルト13c、13dによりシャーシ8に固定されている。これにより、電源装置1および高圧バッテリ11がシャーシ8と電気的に接続され、共通の車両アースに接地される。
【0010】
電源装置1は、直流交流変換回路2、トランス3、整流回路4および制御回路5を備える。これらはケース111内に収納されており、ケース111の電位を共通のグランド(GND)電位として接地されている。ケース111には、接地用ケーブル7の一端に接続されている金属製のボルト13eが取り付けられている。接地用ケーブル7の他端は、シャーシ8に取り付けられた金属製のボルト13fと接続されている。このようにしてケース111とシャーシ8が接地用ケーブル7を介して電気的に接続されることで、前述のボルト13a、13bによる接地に加えて、ボルト13fが取り付けられているシャーシ8の部分を接地点として、さらに電源装置1の接地が行われている。
【0011】
直流交流変換回路2は、シールド線12a、12bを介して高圧バッテリ11から入力される高電圧の直流電力を交流電力に変換する。トランス3は、直流交流変換回路2から出力された交流電力を変圧する。整流回路4は、トランス3にて変圧された交流電力を低電圧の直流電力に変換する。制御回路5は、直流交流変換回路2と整流回路4にそれぞれ設けられたスイッチング素子のオン/オフ制御を行うことで、これらの回路を同期して動作させ、上記のような電力変換を行わせる。これにより、電源装置1は、高圧バッテリ11から出力される高電圧の直流電力を低電圧の直流電力に電力変換し、その電圧変換後の直流電力を補機バッテリ9および電装品10へと出力することができる。
【0012】
なお、電源装置1を双方向に電圧変換可能な構成としてもよい。この場合、電源装置1は、補機バッテリ9や電装品10から入力される低電圧の直流電力を整流回路4により交流電力に変換し、その交流電力をトランス3により変圧した後、直流交流変換回路2で高電圧の直流電力に変換して高圧バッテリ11へ供給する。
【0013】
整流回路4の(+)側出力は、ケース111に設けられた出力端子6を介して、補機バッテリ9および電装品10の(+)端子と接続されている。一方、整流回路4の(−)側出力は、ボルト13e、接地用ケーブル7およびボルト13fを介して、補機バッテリ9の(−)端子と接続されている。整流回路4の(−)側出力は更に、ボルト13e、接地用ケーブル7、ボルト13fおよびシャーシ8を介して、電装品10の(−)端子と接続されている。これにより、電源装置1を介して、高圧バッテリ11から補機バッテリ9および電装品10へ直流電力が供給される。
【0014】
図2は、直流交流変換回路2、トランス3および整流回路4の回路構成の一例を示す回路図である。トランス3の一次側、すなわち高電圧(HV)側には直流交流変換回路2が接続されている。また、トランス3の二次側、すなわち低電圧(LV)側には整流回路4が接続されている。制御回路5(
図1)の制御によりこれらの回路が協働して動作することで、高圧バッテリ11からHV(+)端子とHV(−)端子間に入力された高電圧の直流電力が直流交流変換回路2で交流電力へと変換され、トランス3で変圧された後、整流回路4で同期整流されて低電圧の直流電力に変換される。この変換後の低電圧の直流電力は、LV(+)端子とLV(−)端子間に接続された補機バッテリ9や電装品10へと出力される。なお、前述のように電源装置1を双方向に電圧変換可能な構成とした場合は、電力供給の方向に応じて、上記のような直流交流変換回路2と整流回路4の動作が互いに入れ替わる。
【0015】
直流交流変換回路2には、一次側第1スイッチング素子H1、一次側第2スイッチング素子H2、一次側第3スイッチング素子H3および一次側第4スイッチング素子H4により構成されたHブリッジ回路が設けられている。一次側第1スイッチング素子H1および一次側第2スイッチング素子H2は、トランス3の一次側の一端に接続されている。一次側第3スイッチング素子H3および一次側第4スイッチング素子H4は、トランス3の一次側の他端に接続されている。また整流回路4に、二次側第1スイッチング素子S1、二次側第2スイッチング素子S2、二次側第3スイッチング素子S3および二次側第4スイッチング素子S4により構成されている。二次側第4スイッチング素子S4および二次側第2スイッチング素子S2は、トランス3の二次側の一端に接続されている。二次側第3スイッチング素子S3および二次側第1スイッチング素子S1は、トランス3の二次側の他端に接続されている。直流交流変換回路2および整流回路4におけるこれらのスイッチング素子は、
図2に示すように、還流ダイオードを有するスイッチング素子としてのMOSFETによって構成されている。
【0016】
直流交流変換回路2のHブリッジ回路を構成する各スイッチング素子は、制御回路5からの制御信号に応じて、所定のスイッチング周波数(たとえば100kHz)でオンオフを交互に繰り返すスイッチング動作を行う。このHブリッジ回路からの出力は、インダクタLrを経由して、トランス3の一次側に入力される。これにより、HV(+)端子とHV(−)端子間に入力された直流電力が直流交流変換回路2においてゼロ電圧を中心にスイッチングされ、交流電力が生成される。その結果、スイッチング損失を低減して変換効率を向上することができる。
【0017】
図3は、直流交流変換回路2に含まれる一次側の回路構成の一例を示す回路図である。
図3の例では、直流交流変換回路2とその前段の回路を、ドライブ基板41とフィルタ基板42により構成している。ドライブ基板41とフィルタ基板42は、それぞれ4層銅箔構成の絶縁基板である。フィルタ基板42は高圧バッテリからの入力端子、正極側配線31、負極側配線32、入力コンデンサ25などで構成されている。ドライブ基板41はフィルタ基板42からの接続端子、第1配線33、第2配線34、一次側第1スイッチング素子H1から一次側第4スイッチング素子H4、第1出力層35と第2出力層36で構成されている。ドライブ基板41とフィルタ基板42は接続端子P43と接続端子N44によって接続される。
【0018】
図4は、ドライブ基板41の配線パターンおよび部品配置の一例を示す平面図である。ドライブ基板41の中央を紙面の上下に横切るような形で、第1出力層35および第2出力層36が配置されている。第1出力層35および第2出力層36は、ドライブ基板41の厚さ方向において対向するように配置されているため、
図4では互いに重なり合っているように描画されている。本実施形態では、第1出力層35は第3層のパターン配線により形成され、第2出力層36は第1層のパターン配線により形成されている。
【0019】
第1出力層35および第2出力層36の紙面左側には、一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3が配置されている。第1出力層35および第2出力層36の紙面右側には、一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4が配置されている。
【0020】
一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3のドレイン端子は、一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3の下面に設けられた第1配線33に接続される。第1配線33は、一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3のドレイン端子から紙面左下に設けられた接続端子P43に向かって伸びている。
【0021】
一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4のソース端子は、一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4の下面に設けられた第2配線34に接続される。第2配線34は、一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4のドレイン端子から紙面右上に設けられた接続端子N44に向かって伸びている。
【0022】
第1出力層35に対向している一次側第1スイッチング素子H1のソース端子と一次側第2スイッチング素子H2のドレイン端子は、それぞれ第1出力層35に接続されている。第2出力層36に対向している一次側第3スイッチング素子H3のソース端子と一次側第4スイッチング素子H4のドレイン端子は、それぞれ第2出力層36に接続されている。
【0023】
一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3のゲート端子は、第1出力層35および第2出力層36とは逆の方向(すなわち紙面の左方向)に設けられたコネクタ51に接続されている。一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3のゲート端子とコネクタ51とを接続する配線は、一次側第1スイッチング素子H1、一次側第3スイッチング素子H3のゲート端子から、第1出力層35および第2出力層36とは逆の方向に向かって伸びている。コネクタ51には、図示しないハーネスが取り付けられ、ゲート信号生成回路を有する図示しない基板と電気的に接続される。
【0024】
一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4のゲート端子は、第1出力層35および第2出力層36とは逆の方向(すなわち紙面の右方向)に設けられたコネクタ52に接続されている。一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4のゲート端子とコネクタ52とを接続する配線は、一次側第2スイッチング素子H2、一次側第4スイッチング素子H4のゲート端子から、第1出力層35および第2出力層36とは逆の方向に向かって伸びている。コネクタ52には、図示しないハーネスが取り付けられ、ゲート信号生成回路を有する図示しない基板と電気的に接続される。
【0025】
以上のように、ドライブ基板41上において、一次側第1スイッチング素子H1〜一次側第4スイッチング素子H4は、第1出力層35および第2出力層36を中心に向かい合って配置される。一次側第1スイッチング素子H1〜一次側第4スイッチング素子H4が有する各端子に接続される配線(第1配線33や第2配線34など)は、第1出力層35および第2出力層36と重なり合わないように配置されている。換言すれば、一次側第1スイッチング素子H1〜一次側第4スイッチング素子H4の各端子に接続された配線は、第1出力層35および第2出力層36を跨がない。
【0026】
図5は、ドライブ基板41とフィルタ基板42の実装例を示す模式図である。ドライブ基板41とフィルタ基板42は、接続端子P43および接続端子N44を介して電気的に接続されている。フィルタ基板42には、ドライブ基板41上の第1配線33と基板の厚さ方向において対向する位置に、正極側配線31が配置されている。また、ドライブ基板41上の第2配線34と基板の厚さ方向において対向する位置に、負極側配線32が配置されている。
【0027】
一次側第1スイッチング素子H1〜一次側第4スイッチング素子H4のスイッチング動作時、ドライブ基板41とフィルタ基板42との間で、正極側配線31、第1配線33、第2配線34、負極側配線32のそれぞれに電流が流れる。
図5では、この電流の経路を、矢印37により模式的に示している。
【0028】
このとき、
図5に示すように、第1配線33に流れる電流は
図5の紙面左方向に向かって流れ、正極側配線31に流れる電流は
図5の紙面右方向に向かって流れる。従って、第1配線33の電流によって発生する磁界と、正極側配線31の電流によって発生する磁界は、断面38において打ち消し合う。
【0029】
同様に、第2配線34に流れる電流は
図5の紙面右方向に向かって流れ、負極側配線32に流れる電流は
図5の紙面左方向に向かって流れる。従って、第2配線34の電流によって発生する磁界と、負極側配線32の電流によって発生する磁界は、断面39において打ち消し合う。
【0030】
上述した第1の実施の形態による電源システムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)一次側第1スイッチング素子H1〜一次側第4スイッチング素子H4に制御用電圧を伝達する配線の各々は、ドライブ基板41において、第1出力層35および第2出力層36を跨がないように配置される。このようにしたので、ゲート配線等と主回路とのカップリングを防止し、耐ノイズ性を向上させることができる。また、部品配置が最適化され、回路基板を小型化することもできる。
【0031】
(2)一次側第1スイッチング素子H1および一次側第3スイッチング素子H3が備えるゲート、ソース、ドレインの各端子は、第1出力層35および第2出力層36が配置された領域と第1配線33が配置された領域との間において、ドライブ基板41と接続される。同様に、一次側第2スイッチング素子H2および一次側第4スイッチング素子H4が備えるゲート、ソース、ドレインの各端子は、第1出力層35および第2出力層36が配置された領域と第2配線34が配置された領域との間において、ドライブ基板41と接続される。このようにしたので、耐ノイズ性が向上する。
【0032】
(3)第1出力層35を、ドライブ基板41の厚さ方向において、第2出力層36と対向して配置した。このようにしたので、第1出力層35の電流によって発生する磁界と、第2出力層36の電流によって発生する磁界が互いに打ち消し合い、他の電子部品への影響を与える磁気的ノイズを発生しない。
【0033】
(4)フィルタ基板42に、フィルタ基板42の厚さ方向において第1配線33と対向して配置される正極側配線31と、フィルタ基板42の厚さ方向において第2配線34と対向して配置される負極側配線32とを設けた。このようにしたので、配線経路のインダクタンスを減少させることができる。これにより、一次側第1スイッチング素子H1〜一次側第4スイッチング素子H4がスイッチング時に発生するサージ電圧を抑制することができ、耐ノイズ性が向上する。
【0034】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0035】
(変形例1)
上記実施形態では、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載される電源システム100について説明したが、本発明は、これ以外の用途に用いる電源装置に適用することも可能である。例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを駆動源として走行する通常の自動車や、電車等の他の種類の車両に搭載される電源装置に本発明を適用してもよいし、車両以外のものに搭載される電源装置に本発明を適用してもよい。
【0036】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。