(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2電極と前記第6半導体領域との間に設けられ、前記第6半導体領域よりも不純物濃度が高い第2導電形の第8半導体領域をさらに有する請求項1に記載の半導体装置。
前記第2電極と前記第7半導体領域との間に設けられ、前記第7半導体領域よりも不純物濃度が高い第2導電形の第9半導体領域をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。また、実施形態では、特に断らない限り、n
+形、n形、n
−形の順でn形(第1導電形)の不純物濃度が低くなることを表す。また、p
+形、p形の順でp形(第2導電形)の不純物濃度が低くなることを表す。
【0009】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図であり、
図1(b)は、第1実施形態に係る半導体装置を表す模式的平面図である。
【0010】
図1(a)には、
図1(b)のA−A’線断面が表され、
図1(b)には、
図1(a)のB−B’線断面を上面視した状態が表されている。また、以下に表す図には、半導体装置の方向を表すために三次元座標(XYZ座標系)を導入している。
【0011】
第1実施形態に係る半導体装置1は、上下電極構造の半導体装置である。半導体装置1は、電極10(第1電極)と、電極11(第2電極)と、IGBT領域101(第1素子領域)と、FWD(Free Wheeling Diode)領域102(第2素子領域)と、分離領域103と、を備える。半導体装置1においては、トランジスタとしてのIGBT領域101と還流ダイオードとしてのFWD領域102とが直接、接続せず、これら領域の間に分離領域103が設けられている。
【0012】
半導体装置1においては、電極10と電極11との間に、n
−形の半導体領域21とn形の半導体領域22とが設けられている。n形の半導体領域22は、電極10とn
−形の半導体領域21との間に位置している。半導体領域22の不純物濃度は、半導体領域21の不純物濃度よりも高い。
【0013】
半導体領域21は、IGBT領域101とFWD領域102と分離領域103とのそれぞれに共有して配置されている。半導体領域21は、IGBT領域101に設けられた部分21aと、FWD領域102に設けられた部分21bと、分離領域103に設けられた部分21cと、を有している。
【0014】
半導体領域22は、IGBT領域101とFWD領域102と分離領域103とのそれぞれに共有して配置されている。半導体領域22は、IGBT領域101に設けられた部分22aと、FWD領域102に設けられた部分22bと、分離領域103に設けられた部分22cと、を有している。実施形態では、同じ導電形の半導体領域21と半導体領域22とをあわせて半導体領域20(第1半導体領域)としている。
【0015】
従って、半導体領域21の部分21aおよび半導体領域22の部分22aは、半導体領域20の第1部分20aとしている。半導体領域21の部分21bおよび半導体領域22の部分22bは、半導体領域20の第2部分20bとしている。半導体領域21の部分21cおよび半導体領域22の部分22cは、半導体領域20の第3部分20cとしている。
【0016】
まず、IGBT領域101について説明する。
IGBT領域101においては、半導体領域20の第1部分20aと電極10との間にp
+形のコレクタ領域25(第2半導体領域)が設けられている。コレクタ領域25は、電極10に接している。
【0017】
半導体領域20の第1部分20aと電極11との間には、p形のベース領域30(第3半導体領域)が設けられている。ベース領域30と電極11との間には、n
+形のエミッタ領域40(第4半導体領域)が選択的に設けられている。エミッタ領域40は、X方向に延在している。ベース領域30およびエミッタ領域40は、電極11に接している。
【0018】
また、IGBT領域101では、半導体領域21の部分21aをn
−形のベース領域21a、半導体領域22の部分22aをn形のバッファ領域22a、電極10をコレクタ電極10、電極11をエミッタ電極11と読み替えてもよい。
【0019】
また、半導体領域20の第1部分20a、ベース領域30、およびエミッタ領域40には、ゲート絶縁膜51(第1絶縁膜)を介してゲート電極50(第3電極)が接している。ゲート電極50は、電極11の側から電極10の側に延在し、X方向に延在している。複数のゲート電極50のそれぞれは、Y方向に並んでいる。
図1(a)に表すゲート電極50の構造は、所謂トレンチゲート型構造であるが、その構造はプレーナ型であってもよい。
【0020】
このように、IGBT領域101においては、エミッタ電極、n
+形エミッタ領域、p形ベース領域、n形ベース領域、p
+形コレクタ領域、コレクタ電極、およびゲート電極を備えたIGBTが設けられている。
【0021】
次に、FWD領域102について説明する。
FWD領域102においては、電極10と電極11との間に半導体領域20の第2部分20bが設けられている。半導体領域20の第2部分20bと電極10との間には、n
+形のカソード領域26(第5半導体領域)が設けられている。カソード領域26は、電極10に接している。カソード領域26は、電極10にオーミック接触をしている。カソード領域26の不純物濃度は、半導体領域20の不純物濃度よりも高い。
【0022】
半導体領域20の第2部分20bと電極11との間には、p形のアノード領域31(第6半導体領域)が設けられている。アノード領域31は、電極11に接している。アノード領域31は、電極11に、ショットキー接触をしているか、あるいは低抵抗性接触をしている。
【0023】
電極11とアノード領域31との間には、p
+形のアノード領域32(第8半導体領域)が選択的に設けられている。アノード領域32は、X方向に延在している。複数のアノード領域32のそれぞれは、Y方向に並んでいる。アノード領域32は、電極11に接している。アノード領域32は、電極11にオーミック接触をしている。アノード領域32の不純物濃度は、アノード領域31の不純物濃度よりも高い。なお、アノード領域32については、半導体装置1から取り除いてもよい。例えば、
図1(a)、(b)に表す構造からアノード領域32を取り除いた構造も実施形態に含まれる。
【0024】
また、FWD領域102においては、半導体領域22の部分22bをn形カソード領域22b、半導体領域21の部分21bを真性領域(intrinsic領域)21b、電極10をカソード電極10、電極11をアノード電極11と読み替えてもよい。
【0025】
また、FWD領域102においては、電極11に接する接続領域52(第1接続領域)が設けられている。接続領域52は、絶縁膜53(第2絶縁膜)を介して、半導体領域20の第2部分20b、アノード領域31、およびアノード領域32に接している。接続領域52は、電極11の側から電極10の側に延在し、X方向に延在している。複数の接続領域52のそれぞれは、Y方向に並んでいる。
【0026】
このように、FWD領域102においては、アノード電極、アノード領域、真性領域、カソード領域、およびカソード電極を備えたPINダイオードが設けられている。
【0027】
次に、分離領域103について説明する。
分離領域103においては、電極10と電極11との間に半導体領域20の第3部分20cが設けられている。半導体領域20の第3部分20cは、半導体領域20の第1部分20aと半導体領域20の第2部分20bとによって挟まれている。半導体領域20の第3部分20cは、電極10に接している。例えば、半導体領域20中の部分22cは、電極10に、ショットキー接触をしているか、あるいは低抵抗性接触をしている。
【0028】
また、分離領域103においては、半導体領域20の第3部分20cと電極11との間に、p形の半導体領域35(第7半導体領域)が設けられている。半導体領域35は、電極11に接している。半導体領域35は、電極11に、ショットキー接触をしているか、あるいは低抵抗性接触をしている。半導体領域35の不純物濃度は、アノード領域31の不純物濃度より低くてもよく、半導体領域35の不純物濃度は、アノード領域31の不純物濃度と同じであってもよい。また、半導体領域35およびアノード領域31の不純物濃度は、ベース領域30の不純物濃度よりも低い。
【0029】
また、分離領域103においては、電極11に接する接続領域54(第2接続領域)が設けられている。接続領域54は、絶縁膜55(第3絶縁膜)を介して半導体領域20の第3部分20cおよび半導体領域35に接している。接続領域54は、電極11の側から電極10の側に延在し、X方向に延在している。
【0030】
半導体装置1においては、Y方向に並ぶ接続領域54、絶縁膜55、および半導体領域35の組の幅と、コレクタ領域25とカソード領域26とによって挟まれた半導体領域22の部分22cのY方向における幅と、が略同じになっている。
【0031】
電極10と電極11との間に設けられた複数の半導体領域のそれぞれの主成分は、例えば、ケイ素(Si)である。複数の半導体領域のそれぞれの主成分は、シリコン炭化物(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等であってもよい。n
+形、n形、n
−形等の導電形の不純物元素としては、例えば、リン(P)、ヒ素(As)等が適用される。p
+形、p形等の導電形の不純物元素としては、例えば、ホウ素(B)等が適用される。また、半導体装置1において、p形とn形の導電形を入れ替えても同様な効果が得られる。
【0032】
電極10の材料および電極11の材料は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)等の群から選ばれる少なくとも1つを含む金属である。ゲート電極50、接続領域52、54の材料は、例えば、ポリシリコンを含む。また、絶縁膜の材料は、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物等を含む。
【0033】
第1実施形態に係る半導体装置1の作用について説明する。
まず、半導体装置1の中から、IGBT領域101とFWD領域102との作用について説明する。
【0034】
図2(a)および
図2(b)は、第1実施形態に係る半導体装置のオン状態を表す模式的断面図である。
【0035】
図2(a)には、IGBT領域101のオン状態の様子が表され、
図2(b)には、FWD領域102のオン状態の様子が表されている。なお、
図2(a)、(b)では、半導体装置1がインバータ回路等に組み込まれた場合を想定している。
【0036】
まず、IGBT領域101の作用を説明する(
図2(a))。
電極11(エミッタ電極)よりも電極10(コレクタ電極)に高い電位を印加し、ゲート電極50に閾値電位(Vth)以上の電位を供給する。この場合、ゲート絶縁膜51に沿ってベース領域30にチャネル領域が形成され、IGBTがオン状態になる。つまり、エミッタ領域40から、チャネル領域、ベース領域21a、バッファ領域22a、コレクタ領域25の順に電子電流(e)が流れるとともに、コレクタ領域25からバッファ領域22a、ベース領域21a、ベース領域30の順に正孔電流(h)が流れる。
【0037】
なお、電極11よりも電極10に高い電位が印加されているときは、FWD領域102のPINダイオードにとっては逆方向バイアスの電圧が印加されている。これにより、FWD領域102には電流が流れない。
【0038】
FWD領域102の作用を説明する(
図2(b))。
一般にIGBTがオンになる直前には、FWD領域102のPINダイオード内に回生電流が流れる。すなわち、PINダイオードは還流ダイオードとして作用する。還流ダイオードが作用している間は、一時的にカソード・アノード間に順方向バイアス電圧が印加されている。
【0039】
ここで、カソード領域26は、電極10(カソード電極)にオーミック接触をしている。従って、電子電流(e)は、カソード領域26から半導体領域20の第2部分20bを経由してアノード領域31に到達する。
【0040】
例えば、p形のアノード領域31は、アノード電極11に抵抗性接触あるいはショットキー接触をしている。p形のアノード領域31がアノード電極11にショットキー接触をしている場合は、アノード領域31とアノード電極11(アノード電極)との間は、正孔にとってはエネルギー障壁となるが、電子にとってはエネルギー障壁とはなっていない。
【0041】
従って、電子は、カソード領域26から半導体領域20の第2部分20b、およびアノード領域31を経由して電極11(アノード電極)に流れ込む。これにより、カソード・アノード間には、電子電流(e)が形成される。
【0042】
但し、電子にとっては、p形高濃度領域であるアノード領域32と、p形低濃度層であるアノード領域31との間がエネルギー障壁となる。従って、アノード領域32の直下のアノード領域31にまで流れた電子は、アノード領域32には流れ込み難くなる。
【0043】
これにより、電子は、カソード側からアノード側の方向に流れた後、アノード領域32付近にまで到達すると、その後はアノード領域32の下方において横方向、すなわち、Y方向に対して略平行な方向に移動する。
【0044】
この電子の移動により、電極11(アノード電極)に接触したアノード領域32は正極になり、アノード領域32の下方に位置するアノード領域31は、アノード領域32に対して負極になる。
【0045】
この正極と負極とのバイアスによって、アノード領域32の下方においては、アノード領域31とアノード領域32との間の正孔に対するエネルギー障壁が低くなる。これにより、アノード領域32からアノード領域31に正孔が注入される。この注入された正孔により正孔電流(h)が形成される。
【0046】
正孔電流(h)は、アノード領域32のY方向における幅、もしくはアノード領域32と電極11(アノード電極)との接触面積が大きくなるほど増大する。換言すれば、その幅もしくはその接触面積によって、アノード側からの正孔の注入量が調整される。
【0047】
このように、FWD領域102では、オン状態でアノード側からカソード側に正孔が流れ、カソード側からアノード側に電子が流れる。ここで、アノード側では、高濃度のアノード領域32から正孔が注入するものの、低濃度のアノード領域31からは正孔の注入量が少なく、アノード領域31は、電子の排出に主として寄与する。これにより、FWD領域102のPINダイオードにおいては、そのリカバリー速度が高速化する。
【0048】
特に、FWD領域102では、Y方向においてアノード領域32が設けられている領域と、アノード領域32が設けられていない領域とがある。これにより、アノード領域32と電極11(アノード電極)との接触面積が減少する。これにより、FWD領域102では、アノード側からの正孔の注入量が抑制されて、そのリカバリー速度が高速になる。
【0049】
図3(a)および
図3(b)は、第1実施形態に係る半導体装置のFWD領域のリカバリー状態を表す模式的断面図である。
【0050】
FWD領域102がリカバリー状態にあるときは、IGBTはオフ状態である。
【0051】
図3(a)には、アノード・カソード間の電圧が逆方向バイアスとなった状態が表されている。つまり、電極11(アノード電極)が負極、電極10(カソード電極)が正極となるように、カソード・アノード間に電圧が印加されている。
【0052】
アノード・カソード間に順方向バイアスが印加されていた状態から、アノード・カソード間に逆方向バイアスが印加されると、半導体領域20の第2部分20bに存在する正孔は、電極11(アノード電極)の側に移動する。また、半導体領域20の第2部分20bに存在する電子は電極10(カソード電極)の側に移動する。
【0053】
逆方向バイアス印加時には、電子は、カソード領域26を経由して電極10(カソード電極)に流れ込み、正孔は、アノード領域32を経由して電極11(アノード電極)に流れ込む。
【0054】
リカバリー時に、電子電流(e)が電極10(カソード電極)に流れ、正孔電流(h)が電極11(アノード電極)に流れている間は、アノード領域31と半導体領域20の第2部分20bとの接合部を起点にして、空乏層が半導体領域20の第2部分20bおよびアノード領域31に拡がる。これにより、FWD領域102における電極11(アノード電極)と電極10(カソード電極)との間の導通がしだいに遮断される。
【0055】
但し、PINダイオードにおいては、一般的にリカバリー時にpn接合部のいずれかの箇所で電界集中が起こり、アバランシェが引き起こされる場合がある。第1実施形態では、このアバランシェによって引き起こされる弊害を抑制し、リカバリー時の安全動作領域を拡大している。
【0056】
図3(b)に、FWD領域102のリカバリー状態を示す。
例えば、接続領域52と絶縁膜53とを合わせてトレンチ領域とした場合、FWD領域102は、このトレンチ領域の下端において、トレンチ領域と半導体領域20の第2部分20bとの接合部が急峻に曲がる角部13を有している。この角部13にはリカバリー時に電界が集中し易くなる。これにより、角部13の付近でアバランシェが起き易くなる。アバランシェによって発生した正孔の流れをアバランシェ電流(h)とする。
【0057】
ここで、アノード領域32は、絶縁膜53に接している。つまり、アノード領域32は、角部13の直上近傍に位置しているため、アバランシェによって発生した正孔は、アノード領域32を経由して電極11(アノード電極)に排出される。
【0058】
また、角部13は、FWD領域102に複数、設けられている。FWD領域102においては、複数の角部13のそれぞれでアバランシェが起き易くなるため、アバランシェが起きる箇所が分散される。従って、アバランシェ電流も複数の角部13のそれぞれによって分散される。そして、アバランシェ電流は複数のアノード領域32のそれぞれを経由して電極11(アノード電極)に排出される。これにより、リカバリー時の半導体装置1の破壊耐量は増加する。
【0059】
また、FWD領域102では、アバランシェ電流が優先的にアノード領域32を経由して電極11(アノード電極)に排出される。このため、アノード領域31の不純物濃度をさらに下げてアノード側からの正孔の注入をさらに抑制することも可能になる。
【0060】
また、リカバリー時に接続領域52には、電極11(アノード電極)と同じ負の電位が印加されるので、アノード領域31には絶縁膜53に沿って、正孔濃度が増加した誘起領域18が誘起される。この誘起領域18は、正孔にとっては、低抵抗領域である。つまり、正孔にとって低抵抗となる誘起領域18を経由して、正孔が電極11(アノード電極)に排出される効率がさらに上昇する。これにより、リカバリー時の破壊耐量が増大する。
【0061】
以上述べたように、第1実施形態に係る半導体装置1によれば、リカバリー速度の高速化およびリカバリー時の破壊耐量の増加が両立し、安全動作領域が拡大する。
【0062】
分離領域103が設けられた半導体装置1の作用を説明する前に、参考例に係る半導体装置の作用について説明する。
【0063】
図4(a)および
図4(b)は、第1参考例に係る半導体装置の作用を表す模式的断面図である。
【0064】
図4(a)および
図4(b)に表す半導体装置500には、分離領域103が設けられていない。半導体装置500は、IGBT領域101とFWD領域102とを備え、IGBT領域101とFWD領域102とが直接、接している。
【0065】
図4(a)には、FWD領域102におけるPINダイオードがオンになっている様子が表されている。
図4(a)には、FWD領域102のPINダイオードが還流ダイオードとして機能している状態が表されている。この場合、FWD領域102では、カソード側からアノード側に電子電流(e)が流れ、アノード側からカソード側に正孔電流(h)が流れる。
【0066】
この期間においては、電極10の電位よりも電極11の電位の方が高い状態が一時的に続いている。ここで、電極10と電極11とは、IGBT領域101とFWD領域102において共有されている。
【0067】
従って、IGBT領域101の寄生ダイオード(p形ベース領域30/n
−形ベース領域21a)にも順バイアスが印加されて、p形ベース領域30からn
−形ベース領域21aに正孔が注入される。
【0068】
また、コレクタ領域25には、高濃度層のn
+形のカソード領域26が隣接している。そして、IGBT領域101とFWD領域102とは直接、接している。このため、n
+形のカソード領域26から放出された電子(e2)は、IGBT領域101にまで拡散していく。
【0069】
そして、n
+形のカソード領域26からIGBT領域101に拡散した電子が寄生ダイオード(p形ベース領域30/n
−形ベース領域21a)のエネルギー障壁を乗り越えると、p形ベース領域30からn
−形ベース領域21aに正孔が注入される。
【0070】
このように正孔は、FWD領域102にまで拡散する場合がある。
図4(a)では、p形ベース領域30からFWD領域102に拡散してくる正孔を正孔(h2)として表している。これにより、PINダイオードの導通時においては、キャリアがIGBT領域101にまで拡散してしまう。
【0071】
また、
図4(b)には、FWD領域102におけるPINダイオードをオフにしたときの様子が表されている。つまり、FWD領域102のPINダイオードに逆方向バイアスが印加された状態が表されている。
【0072】
この場合、電極11(アノード電極)が負極、電極10(カソード電極)が正極となるように、カソード・アノード間に電圧が印加されている。すなわち、FWD領域102では、半導体領域20の第2部分20bに存在する正孔が電極11(アノード電極)の側に移動し、半導体領域20の第2部分20bに存在する電子が電極10(カソード電極)の側に移動する。
【0073】
また、この期間においては、FWD領域102からIGBT領域101のエミッタ側に拡散された正孔がベース領域30を経由して、電極11(エミッタ電極)に排出される。但し、IGBT領域101のコレクタ側では、IGBT領域101からFWD領域102に電子が拡散する場合がある。
【0074】
例えば、拡散した電子(e3)がp
+形コレクタ領域25とn形バッファ領域22aとの間のエネルギー障壁を超えると、p
+形コレクタ領域25からn形バッファ領域22aに正孔が注入される可能性がある。そして、注入された正孔は、FWD領域102にまで拡散する。
図4(b)では、p
+形コレクタ領域25からFWD領域102に拡散してくる正孔を正孔(h3)として表している。
【0075】
このように、半導体装置500ではリカバリー動作前およびリカバリー動作後においてFWD領域102にキャリアが溜まり易くなる。これにより、PINダイオードのリカバリー速度の高速化に限界が生じてしまう。
【0076】
図5(a)および
図5(b)は、第2参考例に係る半導体装置の作用を表す模式的断面図である。
【0077】
図5(a)に表す半導体装置501には、分離領域103が設けられている。分離領域103には、深いp
+形の半導体領域36が設けられている。半導体領域36は、電極11の側から電極10の側に向かって延在している。半導体領域36と電極11との間には、絶縁層15が設けられている。
【0078】
半導体領域36と電極11とは電気的に絶縁されている。半導体領域36の少なくとも一部(例えば、半導体領域36の下部の一部)は、半導体領域20の第3部分20cに接している。半導体領域36の深さは、ゲート絶縁膜51および絶縁膜53の深さよりも深くなっている。また、コレクタ領域25とカソード領域26とは、分離領域103を隔てて離れている。
【0079】
このような分離領域103を設けることにより、IGBT領域101とFWD領域102との距離が離れる。従って、FWD領域102におけるPINダイオードがオン状態のときには、FWD領域102からIGBT領域101に向かう電子(e)および正孔(h)がその途中で消滅し易くなる。
【0080】
また、IGBT領域101とFWD領域102との距離が離れたことにより、PINダイオードのリカバリー状態では電子(e3)がIGBT領域101にまで拡散し難くなって、正孔(h3)が発生し難くなる。また、IGBT領域101の側に電子(e3)が移動し、正孔(h3)が発生したとしても、IGBT領域101からFWD領域102に向かう正孔(h3)は、その途中で消滅し易くなる。
【0081】
また、分離領域103に、ゲート絶縁膜51および絶縁膜53よりも深い半導体領域36を設けることにより、p形のベース領域30とn
−形のベース領域21aとの接合部に集中する電界、p形のアノード領域31とn
−形の真性領域21bとの接合部に集中する電界、あるいは、ゲート絶縁膜51の下端および絶縁膜53の下端に集中する電界が緩和される。
【0082】
また、半導体領域36と電極11とは電気的に絶縁されているので、半導体領域36からは半導体領域20の第3部分20cに正孔が注入され難くなる。
【0083】
しかし、半導体領域36と電極11とは電気的に絶縁されているので、PINダイオードのリカバリー時には、半導体領域36の下方に溜まった正孔(h)は、電極11の側に排出され難くなる。例えば、
図5(b)には、リカバリー時に半導体領域36の下方に正孔(h)溜まった様子が表されている。このように、半導体装置501においても、PINダイオードのリカバリー速度の高速化に限界が生じてしまう。
【0084】
図6(a)および
図6(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の作用を表す模式的断面図である。
【0085】
これに対し、半導体装置1には、分離領域103が設けられている。半導体装置1の分離領域103には、深いp
+形の半導体領域36が設けられてない。半導体装置1の分離領域103には、p形の半導体領域35が設けられ、半導体領域35は電極11に接している。また、コレクタ領域25とカソード領域26とは、分離領域103を隔てて離れている。
【0086】
このような分離領域103を設けることにより、IGBT領域101とFWD領域102との距離が離れる。従って、
図6(a)に表すように、FWD領域102におけるPINダイオードがオン状態のときには、FWD領域102からIGBT領域101に向かう電子(e)および正孔(h)がその途中で消滅し易くなる。また、PINダイオードのオン状態で、IGBT領域101からFWD領域102に向かう正孔(h2)が発生したとしても、正孔(h2)は、その途中で消滅し易くなる。
【0087】
また、IGBT領域101とFWD領域102との距離が離れたことにより、PINダイオードのリカバリー状態では電子(e3)がFWD領域102からIGBT領域101にまで移動し難くなって、正孔(h3)が発生し難くなる。また、電子(e3)がFWD領域102からIGBT領域101に移動し、正孔(h3)が発生したとしても、IGBT領域101からFWD領域102に向かう正孔(h3)は、その途中で消滅し易くなる。
【0088】
また、p形の半導体領域35の不純物濃度は、p
+形のアノード領域32の不純物濃度に比べて低い。従って、半導体領域35からは半導体領域20の第3部分20cに正孔が注入され難くなる。
【0089】
また、半導体領域35と電極11とは電気的に接続されている。このため、PINダイオードのリカバリー時には、半導体領域35の下方に存在する正孔(h)が半導体領域35を介して電極11の側に排出され易くなる(
図6(b))。
【0090】
また、分離領域103においては、リカバリー時に接続領域54には、電極11(アノード電極)と同じ負の電位が印加されるので、半導体領域35には絶縁膜55に沿って、正孔濃度が増加した誘起領域が誘起される。これにより、分離領域103からも電極11に正孔が効率よく排出され、リカバリー時の破壊耐量が増大する。
【0091】
このように、半導体装置1においては、半導体装置501に比べてPINダイオードのリカバリー速度がさらに高速になる。
【0092】
分離領域103を設けることにより、アノード側のキャリア密度が減少するシミュレーション結果を以下に示す。
図7(a)は、半導体装置内のリカバリー時におけるキャリア密度のシミュレーション結果の一例を表すグラフであり、
図7(b)〜
図7(d)は、
図7(a)に表されたシミュレーションに用いられた半導体装置のモデルである。
【0093】
図7(a)の横軸は、半導体装置のY方向における距離d(μm)であり、縦軸は、キャリア密度n(/cm
3)である。
図7(a)には、各モデルのアノード側とカソード側のキャリア密度が表されている。ここで、
図7(a)〜
図7(d)における「アノード側」とは、各モデルの上面から深さ10μmの位置(ライン(a)、(c)、(e))を意味し、「カソード側」とは、各モデルの下面から深さ10μmの位置(ライン(b)、(d)、(f))を意味している。
【0094】
また、
図7(b)は、半導体装置中のFWD領域102を想定したモデルであり、
図7(c)は、分離領域103がない半導体装置を想定したモデル(半導体装置500に対応)であり、
図7(d)は、第1実施形態に係る半導体装置を想定したモデルである。なお、各モデルではカソード領域26がY方向に分離されている。また、FWD領域102のY方向における幅は90μmであり、
図7(b)のIGBT領域101のY方向における幅は308μmであり、
図7(d)のIGBT領域101のY方向における幅は210μm、分離領域103のY方向における幅は98μmである。
【0095】
図7(a)から分かるように、各モデルのアノード側における正孔密度は、
図7(b)に表すFWD領域102のモデル(ライン(a))が最も高くなっている。次いで、分離領域103がなく、IGBT領域101とFWD領域102とを繋げた
図7(c)に表すモデル(ライン(c))では、アノード側の正孔密度が
図7(b)に表すモデルに比べて相対的に低くなっている。さらに、分離領域103を設けた
図7(d)に表すモデル(ライン(e))では、分離領域103における正孔密度が
図7(c)に表すモデルよりも低くなっている。つまり、分離領域103を設けることにより、アノード側の正孔密度が減少することが示された。
【0096】
なお、半導体装置のカソード側の電子密度は、
図7(b)に表すモデル(ライン(b))が最も高く、
図7(c)に表すモデル(ライン(d))および
図7(d)に表すモデル(ライン(e))の電子密度が
図7(b)に表すモデルに比べて相対的に低くなることを示した。なお、カソード側の電子密度は、横方向に対して一定ではない(波形に変化している)が、これは、カソード領域26を分割しているためであり、平均値として考えればよい。
【0097】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置2においては、分離領域103に複数のp
+形の半導体領域33(第9半導体領域)がさらに設けられている。
【0098】
半導体領域33は、電極11と半導体領域35との間に設けられている。半導体領域33の不純物濃度は、半導体領域35の不純物濃度よりも高い。つまり、正孔にとっては半導体領域33が半導体領域35に比べて低抵抗領域になる。従って、リカバリー時には、分離領域103に存在する正孔は半導体領域33を介して効率よく電極11に排出される。これにより、半導体装置2のリカバリー速度は、半導体装置1のリカバリー速度に比べて速くなる。また、導通時には正孔の注入量を増加させることができるので、オン電圧が低下する。
【0099】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図である。
第3実施形態に係る半導体装置3においては、分離領域103に複数のn
+形の半導体領域27(第10半導体領域)がさらに設けられている。
【0100】
半導体領域27は、半導体領域20の第3部分20cと電極10との間に設けられている。半導体領域27の不純物濃度は、半導体領域20の不純物濃度よりも高い。これにより、n
+形の半導体領域27からのFWD領域102への電子の注入量が増加する。これにより、半導体装置3のFWD領域102のオン電圧は、半導体装置1のオン電圧に比べて減少する。
【0101】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図である。
第4実施形態に係る半導体装置4においては、分離領域103にp形の半導体領域28(第11半導体領域)がさらに設けられている。
【0102】
半導体領域28は、半導体領域20の第3部分20cと電極10との間に設けられている。半導体領域28の不純物濃度は、コレクタ領域25の不純物濃度よりも低い。半導体領域20の第3部分20cと電極10との間にp形の半導体領域28を設けることにより、リカバリー時には分離領域103において電極10の側からの電子の注入がより抑えられる。これにより、半導体装置4のリカバリー速度は、半導体装置1のリカバリー速度に比べて速くなる。
【0103】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図である。
第5実施形態に係る半導体装置5においては、Y方向に並ぶ接続領域54、絶縁膜55、および半導体領域35の組の幅と、コレクタ領域25とカソード領域26とによって挟まれた半導体領域22の部分22cのY方向における幅と、が異なっている。このような構造あっても、IGBT領域101とFWD領域102との間に分離領域103があり、半導体装置1と同じ作用を奏する。
【0104】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図である。
第6実施形態に係る半導体装置6においては、半導体装置1から接続領域52、54が取り除かれている。すなわち、FWD領域102において絶縁膜53が電極11に接している。また、絶縁膜53は、半導体領域20の第2部分20bおよびアノード領域31、32に接している。また、分離領域103においては、絶縁膜55が電極11に接している。絶縁膜55は、半導体領域20の第3部分20cおよび半導体領域35に接している。
【0105】
このような構造であれば、リカバリー時には絶縁膜53、55のそれぞれの下端付近で
アバランシェが起き易くなる。これにより、リカバリー時の半導体装置6の破壊耐量は増加する。
【0106】
(第7実施形態)
図13は、第7実施形態に係る半導体装置を表す模式的断面図である。
第7実施形態に係る半導体装置7においては、FWD領域102において絶縁膜53の中に電極56(第4電極)が設けられている。電極56の電位は浮遊になっている。また、半導体装置7においては、分離領域103において、絶縁膜55の中に電極57(第5電極)が設けられている。電極57の電位は浮遊になっている。
【0107】
このような構造であれば、電極11とは独立に電極56、57のそれぞれの電位を制御することができる。例えば、電極56、57のそれぞれに負の電位が印加することにより、アノード領域31には絶縁膜53に沿って、正孔濃度が増加した誘起領域が誘起され、半導体領域35には絶縁膜55に沿って、正孔濃度が増加した誘起領域が誘起される。これにより、リカバリー時の破壊耐量が増大する。
【0108】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、実施形態の特徴を備えている限り、実施形態の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0109】
また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも実施形態の特徴を含む限り実施形態の範囲に包含される。その他、実施形態の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても実施形態の範囲に属するものと了解される。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。