【文献】
小西 宗生 他,M系列を用いたOFDM用周波数オフセット初期捕捉の一構成法,電子情報通信学会1998年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 1998 IEICE GENERAL CONFERENCE,1998年 3月 6日,p.606,B-5-242
【文献】
渡辺 幸太朗 他,特定小電力無線通信における低演算量同期手法の一検討,2011年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会 講演論文集1 ,2011年 8月30日,p.484,B-5-105
【文献】
佐々木 範雄 他,送電線ディジタル電力線搬送に用いる適応等化器のトレーニング符号,電気学会研究会資料,2014年11月13日,pp.43-48,CMN-14-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通信を開始する際のトレーニング時に通信装置間の周波数オフセットを補償するためのトレーニングパターンを送信する送信側の通信装置と、前記トレーニングパターンを受信して周波数オフセット補償を行う受信側の通信装置とが有線伝送路を介して接続された通信システムであって、
前記送信側の通信装置は、2n−1ビットのPN符号に1ビットを付加した2nビットの符号列を生成する2n符号生成部と、前記2nビットの符号列を4PSK変調してシンボルパターンに変換する変調器と、該変調器から出力されたシンボルパターンを前記トレーニングパターンとして送信する送信部を備え、
前記受信側の通信装置は、前記送信側の通信装置から送信されたシンボルパターンを4PSKで復調する復調器と、該復調器が復調したシンボルパターンを2n/2シンボル間隔でサンプリングして、2シンボル間の複素自己相関値を計算する複素自己相関計算部と、該複素自己相関計算部の計算結果から、平均化位相回転量を計算する位相回転量計算部と、を備えることを特徴とする通信システム。
【背景技術】
【0002】
伝送路としてメタルケーブルを用いたデジタル通信システムにおいては、送信装置および受信装置に実装されている水晶発信器の精度のばらつき等により、送信装置の搬送波と受信装置の復調用搬送波との間に周波数オフセットが生じ、それがビット誤り率等の特性を劣化させる要因となっている。
周波数オフセットは、送信側と受信側の通信装置に実装されている水晶発振器の周波数が、製作精度のばらつき等により生じる誤差であり、送受信で最大約±30ppmほどの誤差が生じる。この誤差により、受信側の通信装置の復調器の出力に位相回転が生じ、適応等化器が正常動作できなくなり、ビット誤り率等の特性を劣化させる。このため、送受信間で生じる周波数オフセットを補正する構成が付与される。
【0003】
図5は、従来の周波数オフセットの補正回路の一例を示す図で、復調用搬送波のPLL回路に周波数オフセット量をフィードバック制御して周波数オフセットを補償するための回路が設けられた構成を示すものである。
周波数オフセットの補正回路100では、受信側の通信装置でA/D変換器でデジタル変換された受信信号は、復調器101で復調され、適応等化器102で伝送路歪が補正され、復号化回路103で復号されて、誤り訂正部に出力される。そして適応等化器102の入力シンボル位相と、復号化回路103で判定したシンボル位相との位相差が位相補正量算出回路104で算出され、その算出量に応じてPLL回路105の発信周波数調整用電圧を制御し、復調器101の搬送周波数の位相を調整する。
【0004】
また、例えば特許文献1には、
図6に示す構成の周波数オフセット補償回路が開示されている。この周波数オフセット補償回路110は、復調器から入力した受信ベースバンド信号を遅延検波回路111にて遅延検波し、遅延検波信号を相関回路112に出力する。トレーニング信号発生器117は、受信側にて予め既知のトレーニング信号を発生させる。差動符号化回路116は、トレーニング信号に基づき差動符号系列を発生し、トランスバーサルフィルタ115で遅延成分を含む差動符号系列を生成する。トランスバーサルフィルタ115には重み付け回路が設けられ、各遅延素子の出力信号の大きさをそれぞれ調整する。この重み付け回路は、LMSアルゴリズムやRLSアルゴリズムを用いて伝送路の状態に応じて適応的に調節される。
【0005】
相関回路112では、遅延検波回路111から出力された遅延検波信号と、トランスバーサルフィルタ115から出力された差動符号系列とを用いて相関検出を行う。周波数オフセット推定回路113は、相関回路112からの出力から周波数オフセット推定値を出力する。複素乗算器114は、受信ベースバンド信号と周波数オフセット推定値とを入力して複素乗算を行い、周波数オフセットを補償して適応等化器へ出力する。
【0006】
また、特許文献2には、上記のような受信装置側に備えられるトレーニング信号発生器を省略した周波数オフセット補償回路が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示す従来の周波数オフセットの補正回路は、受信信号の位相を調整するための回路構成がフィードバック系になっていることから、伝送路が大きな遅延電力を発生させる系統であったり、雑音電力の大きい系統であった場合、位相制御にスリップが生じ、バースト性のビット誤りが発生してしまう。つまり伝送路に送電線を用いるデジタル通信システムにこの補償回路を適用した場合には、送電線で生じる信号強度の強い遅延波の影響により、周波数オフセット補正量の算出に大きな誤差が発生して、正確なオフセット補正量を推定することができない、という課題があった。
【0009】
また、
図6に示す周波数オフセット補正回路は、このような課題を解決するものであるが、この方式の周波数オフセット補償回路の場合、既知信号となるトレーニング信号を発生させるトレーニング信号発生器117を必要とする、つまりこの補償回路では、受信装置にトレーニング信号発生器を設けているために、送信装置のトレーニング信号の符号パターンを同期させるのに時間を要するという問題がある。
また、遅延波を活用するためのトランスバーサルフィルタ115が必要とされ、トランスバーサルフィルタ115を動作させるためのLMSなどのアルゴリズムを実装させる必要がある。
また、この方式は非最小位相系(直接波の電力より遅延波の電力が大きい系統)伝送路には有効な回路方式となるが、最小位相系(直接波の電力が遅延波の電力より必ず大きい)の伝送路には回路構成が大きくなり、適応等化器が2系統必要となることと等しくなってしまう。
【0010】
また、特許文献2には、上記のように受信装置のトレーニング信号発生器を省略した周波数オフセット補償回路が記載されている。しかしながら、この補償回路では送電線で生じる信号強度の強い遅延波成分による位相回転補正が考慮されていないため、送電線に適用した場合、オフセット補正量に誤差が生じ、正しい復調信号が生成されないという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、オフセット補正を行う受信側の回路でトレーニング信号を発生させる必要なく、遅延電力および雑音電力が大きい有線伝送路においても周波数オフセットを高精度に推定して周波数オフセット補償を可能とする通信システムを提供することを目的とする。
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討をおこなったところ、周波数オフセットの推定に用いるトレーニング符号を携帯などの通信方式などで用いている2
n−1個のビットのPN符号に1ビット付加して、2
nの偶数個のビットにより4PSK変調することを見出した。このことにより、4PSK変調は2
n/2の繰返しで同一の4PSKのシンボル点が必ず生成されるため、2
n/2間のシンボルの相関は1にすることが可能になり、受信側にトレーニング信号発生器を設ける必要がなくなる。さらに、2
n/2間隔の4PSKシンボル点はたえず同一になることから、遅延波の畳込み量も同一となり、2
n/2間隔の遅延波の相関も1とすることが可能となる。このことにより、2
n/2間隔のシンボルを用いて周波数オフセットを推定することにより、大きな遅延波が存在する伝送路でも高精度に周波数オフセットの推定と補正が可能とことを知見し、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による通信システムは、通信を開始する際のトレーニング時に通信装置間の周波数オフセットを補償するためのトレーニングパターンを送信する送信側の通信装置と、前記トレーニングパターンを受信して周波数オフセット補償を行う受信側の通信装置とが有線伝送路を介して接続された通信システムであって、前記送信側の通信装置は、2
n−1ビットのPN符号に1ビットを付加した2
nビットの符号列を生成する2
n符号生成部と、前記2
nビットの符号列を4PSK変調してシンボルパターンに変換する変調器と、該変調器から出力されたシンボルパターンを前記トレーニングパターンとして送信する送信部を備え、前記受信側の通信装置は、前記送信側の通信装置から送信されたシンボルパターンを4PSKで復調する復調器と、該復調器が復調したシンボルパターンを2
n/2シンボル間隔でサンプリングして、2シンボル間の複素自己相関値を計算する複素自己相関計算部と、該複素自己相関計算部の計算結果から、平均化位相回転量を計算する位相回転量計算部と、を備える通信システムである。これにより、オフセット補正を行う受信側の回路でトレーニング信号を発生させる必要なく、遅延電力および雑音電力が大きい有線伝送路においても周波数オフセットを高精度に推定して周波数オフセット補償を可能とする通信システムを提供することができる。
【0014】
さらに本発明による通信システムは、前記送信側の通信装置が、2
m−1ビットのPN符号による符号列を生成する2
m−1符号生成部と、前記2
nビットの符号列と前記2
m−1の符号列を切り替えて出力する切替部とを有し、前記復調器は、該切替部により切り替えられた前記2
nビットの符号列または前記2
m−1の符号列を4PSK変調してシンボルパターンに変換し、前記受信側の通信装置が、前記複素自己相関計算部から出力された複素自己相関値を入力し、該入力した複素自己相関値が正相関の時に1、逆相関の時に−1、正相関または逆相関以外の値を0に変換する符号変換部とを備えたオフセット推定用PN符号判定部を有し、該符号変換部が変換したnシンボルを入力させるシフトレジスタと、該シフトレジスタのタップ出力値の合計を計算する加算器と、加算器の出力を監視する閾値判定回路とを備え、該閾値判定回路は、複素自己相関値として常に1が入力されるときの前記加算器の出力値nに対して閾値aを設定し、前記加算器からの出力がn−aを下回った場合に、前記送信装置から送信されるシンボルパターンが前記2
n符号列によるシンボルパターンから前記2
m−1符号列によるシンボルパターンに切り替わったことを判定する判定結果を出力する通信システムである。これにより、受信側でトレーニングパターンを発生させずに、送信側から送信されたトレーニングンパターンに基づいて周波数オフセットを補償する構成であっても、送信されたトレーニングパターンから、そのトレーニングパターンの切り替えを簡単に判定することができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オフセット補正を行う受信側の回路でトレーニング信号を発生させる必要なく、遅延電力および雑音電力が大きい有線伝送路においても周波数オフセットを高精度に推定して周波数オフセット補償を可能とする通信システム提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る実施形態を具体的に説明する。
図1は、本発明に係る通信システムにおける通信装置の送信回路構成を説明するためのブロック図である。通信システムでは、通信を開始する際のトレーニング時に通信装置間の周波数オフセットを補償するためのトレーニングパターンを送信する送信側の通信装置と、トレーニングパターンを受信して周波数オフセット補償を行う受信側の通信装置とが有線伝送路を介して接続される。
図1では、トレーニング時にトレーニングパターンを送信する送信側の通信装置の回路構成を示している。
【0018】
送信側の通信装置には、周波数オフセット推定用トレーニングパターンである2
n−1ビットのPN(Pseudorandom Noise)符号列(2
n−1符号列)を発生させる周波数オフセット推定用PN発生器11と、適応等化器用トレーニングパターンである2
m−1ビットのPN符号列(2
m−1符号列)を発生させる適応等化器トレーニング用PN発生器12とを実装している。
【0019】
周波数オフセット推定用PN発生器11で発生された2
n−1符号列には、ビット発生部14で発生された“0”の1ビットがビット付加部15で付加されて、2
nビットの符号列(2
n符号列)となる。2
n符号列は、受信側の通信装置で周波数オフセットを推定するために使用される。周波数オフセット推定用PN発生器11とビット付加部15とが、本発明の2
n符号生成部に該当し、適応等化器トレーニング用PN発生器12が本発明の2
m−1符号生成部に該当する。
各PN発生器で発生された2
n符号列と2
m−1符号列は、切替部であるスイッチ16にて切り替えられて変調器13に出力される。この場合、2
n符号列のnは6〜8程度、2
m−1符号列のmは11〜13程度となる。
【0020】
送信側の通信装置にて初期トレーニングが開始されると、周波数オフセット推定用PN発生器11で発生され、1ビットが付加された2
n符号列が変調器13に入力される。ここでは変調器13は、4PSK(4Phase-Shift Keying)変調器として動作し、周波数オフセット推定用トレーニングパターンである2
n符号列を4PSK変調してRF回路へ出力する。そして初期トレーニングの開始から所定の設定された時間tが経過すると、適応等化器トレーニング用PN発生器12で発生された2
m−1符号列に切替えられて、その2
m−1符号列が変調器13に入力される。この場合にも変調器13は4PSK変調器として動作し、入力した2
m−1符号列を4PSK変調する。
【0021】
変調器13では、4PSK変調により2ビットの符号が1シンボルに変換され、2
n/2シンボルパターンと、2
m/2シンボルパターンが、それぞれ設定された時間出力される。
トレーニング終了後は、変調器13は、4PSK変調器から2
nQAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調器に切替わり、入力されるデータ信号系列が変調される。
変調器13から出力され符号列の信号は、RF回路にて周波数変換されて受信側の通信装置に送信される。RF回路は本発明の送信部を構成する。
【0022】
図2は、本発明に係る通信システムにおける通信装置の受信回路構成を説明するためのブロック図である。通信システムにおけるトレーニングパターンを受信する受信側の通信装置では、送信側の通信装置から送信された2
n符号列による周波数オフセット推定用トレーニングパターンをRF回路が受信すると、4PSK復調器として動作する復調器21にて2
n符号列によるシンボルパターンを復調する。
【0023】
そして複素自己相関計算回路(複素自己相関計算部)24は、現在のシンボル点r(n)と、(2
n/2)シンボル遅延回路28により2
n/2シンボル遅延されたr(n−2
n/2)とをシンボルパターンからサンプリングし、2シンボル間の自己相関を求める。ここでは送信側からは、PN符号により2
n/2周期で同一の4PSKシンボル点が発生されているので、r(n)とr(n−2
n/2)との自己相関であるr(n)・r
*(n−2
n/2)は、周波数オフセットがない場合、位相回転が0°であるため必ず1の値を示すことになる。なお上記の
*は共役複素数であることを示す。
【0024】
ここでは、r(n)とr(n−2
n/2)との間の伝送路チャンネル時変特性は変動しないとすると、伝送路の遅延波による畳込み量は同一となり、遅延波の相関も1とすることができる。これにより遅延波の影響を除去することが可能となり、さらにランダムな平均化処理により雑音の影響も除去されて、周波数オフセットの要素のみを示す自己相関値が得られる。この理論については、さらに後述して詳細に説明する。
【0025】
45°位相回転回路(位相回転部)25は、複素自己相関計算回路24から出力された複素自己相関値を45°位相回転させる。これにより、複素自己相関値の座標は
図3に示す複素平面のシンボル配置位置に変換される。ここでは、45°位相を回転させることにより、シンボル点は、実部と虚部からなる複素平面の4つの象限([++]、[+−]、[−−]、[−+])のいずれかに必ず配置されることになる。
【0026】
実部・虚部極性検出回路(実部・虚部極性検出部)29では、45°位相回転されたシンボル点が複素平面の4つの象限([++]、[+−]、[−−]、[−+])のいずれにあるかを検出する。
例えば
図3の複素平面において、シンボル点がa(0.707+j0.707)にある場合、[++](実部と虚部が[+])が検出される。同様にシンボル点b(−0.707+j0.707)では、[−+](実部が[−]、虚部が[+])が検出される。またシンボル点c(−0.707−j0.707)では、[−−](実部と虚部が[−])が検出される。またシンボル点d(0.707−j0.707)では、[+−](実部が[+]、虚部が[−])が検出される。
【0027】
送信シンボル偏移推定回路(送信シンボル偏移推定部)30は、実部・虚部極性検出回路29で検出された実部と虚部の極性(符号)に従って位相偏移(位相回転量)を推定する。ここでは実部・虚部極性検出回路29で検出された実部および虚部が[++]の場合、送信された現在のシンボルs(n)と、2
n/2前のシンボルs(n−2
n/2)とでは同一シンボルが送信されたことになり、送信シンボル偏移推定回路30は、位相回転量は0°と推定することができる。
同様に、実部および虚部が[−+]の場合には、位相回転量は90°と推定でき、実部および虚部が[−−]の場合には、位相回転量は180°と推定でき、実部および虚部が[+−]の場合には、位相回転量は270°と推定できる。
【0028】
送信シンボル偏移推定回路30は、推定した位相回転量に応じて1、j、−1、−jのいずれかの値を出力する。ここでは実部・虚部極性検出回路29が検出したシンボル点が[++]の象限にあるとき、すなわち位相回転が0°と推定されたときには1を出力する。
また、シンボル点が[−+]の象限にあるとき、すなわち位相回転が90°と推定されたときには−jを出力し、シンボル点が[−−]の象限にあるとき、すなわち位相回転が180°と推定されたときには−1を出力し、シンボル点が[+−]の象限にあるとき、すなわち位相回転が270°と推定されたときには−jを出力する。
【0029】
送信されたシンボルの自己相関はs(n)・s
*(n−2
n/2)で表わされるので、本方式によって、周波数オフセット推定用トレーニングパターンとして、4PSK変調された2
n/2シンボルが送信される場合には、その45°位相回転させた複素自己相関値は必ず[++]となり、複素自己相関値として1の値が得られることになる。この理論について以下にさらに具体的に説明する。
【0030】
複素自己相関計算回路24で計算された自己相関値は、周波数オフセットが存在した状態で計算されている。周波数オフセットが存在する場合、例えば、64シンボル(2
n/2シンボルにおいてn=7)間隔の自己相関値が常に「++」の象限にあると判断されるためには、45°位相回転させた周波数オフセットが±45°の範囲内に入る必要がある。
【0031】
ここで水晶発振器の誤差は±30ppm以下とする仕様となっているため、これ以上の誤差を示すことはない。そして通信システムの通信に使用する最大周波数は425kHzであるため、±30ppmの誤差があるときの周波数オフセット量は約±13Hzとなり、このときの回転量は、64QAMのシンボルレートを32kbps(31.25μs)とすると、以下のようになる。
回転量≒360×freq.offset×Ts
≒360×13Hz×31.25×10−6
≒±0.146°
【0032】
これにより64シンボル間では、±0.146×64≒±9.36°となり、±45°を越えることはない。従ってトレーニング時の2
n符号列を受信した場合には、自己相関値を45°位相回転させた場合に、常に複素平面の[++]の象限に入ることになり、送信シンボル偏移推定回路30では位相回転が0°と推定されて、必ず1が出力されることになる。つまり、周波数オフセット推定用トレーニングパターンとして4PSK変調された2
n/2シンボルが送信される場合には、送信シンボル偏移推定回路30から必ず1を出力させることができる。
なお、位相回転が±45°を越えることが懸念される場合には、サンプリングするシンボル間隔を32シンボル、もしくは16シンボル等のように短い間隔とすることで、送信シンボル偏移推定回路30から確実に1を出力させることができるようになる。
【0033】
位相回転量計算回路(位相回転量計算部)26は、次の式(1)により周波数オフセットによる位相の回転量を計算する。
【0035】
上記式(1)では、その分母は、送信側で送られたものとして推定されるシンボル間隔(2
n/2)における位相回転量であって、送信シンボル偏移推定回路30から出力された出力値を用いる。また式(1)の分子は、実際に伝送路を経由して受信されたシンボル間の位相回転量となる。
ここで、上記のように周波数オフセット推定用トレーニングパターンとして、2
n/2シンボルパターンが送られてきているため、送信シンボル偏移推定回路30からは1が出力されるため、式(1)の分母は必ず1になり、Δrとして、伝送路を介して受信された2
n/2シンボル間の位相回転量が算出される。この位相回転量は、遅延波および雑音の要因が除去された周波数オフセットによる平均化位相回転量とされる。
【0036】
忘却係数平均化回路27では、Δr(n)をシンボルごとに平均化するため、次の式(2)を用いる。
R(n)=βR(n−1)+(1−β)ΔR(n) ・・・(2)
ここでβは忘却係数で0.998程度の値を用いる。
【0037】
ATAN計算回路32では、忘却係数平均化回路27で得られたR(n)の実部・虚部によりATAN(Arctangent)の計算を行い、2
n/2で割ることにより、1シンボルの回転角Δθ(n)を求める。
【0038】
第2複素乗算器33と1シンボル遅延回路34は、1シンボルの平均の位相回転角Δθ(n)から、4PSK復調器として動作する復調器21のk番目のシンボルの位相補正量Δφ(k)を算出するため、次の式(3)に示す処理を行う。
【0039】
e
-jΔφ
(k)=e
-j(Δφ
(k-1)+Δθ
(n)) ・・・(3)
【0040】
第1複素乗算器22では、4PSK復調器として動作する復調器21から出力されたベースバンド信号のk番目のシンボルの位相e
j(ω
t+φ
(k))から、推定されたk番目のシンボルの位相補正量Δφ
(k)の補正を行うため、次の式(4)に示す処理を行い、最終的に周波数オフセットの補正を実行する。
【0041】
e
jω
t=e
j(ω
t+φ
(k)-Δφ
(k)) ・・・(4)
【0042】
図4は、
図3に示すオフセット推定用PN符号終了判定回路31の構成例を示す図である。オフセット推定用PN符号終了判定回路31では、符号変換回路311により、送信シンボル偏移推定回路30からの出力値(+1、j、−1、−j)が正相関(+1)の時に1に変換し、逆相関(−1)の時に−1に変換し、それ以外の値を0に変換し、nシンボルをシフトレジスタ312に入力する。シフトレジスタ312では、そのタップ出力値を加算器313に入力する。加算器313には、シフトレジスタ312のタップ数T+1に相当する数だけ1、−1、または0の値が入力され、加算器313の出力は、入力された1数が合計されるので、出力値の最大値はT+1個となる。従ってこの場合、周波数オフセット推定用トレーニングパターンが送出されている時間領域では、シフトレジスタに入力されるnシンボルが全て1であるため、加算器313の出力値は、必ずn値を示すことになる。
【0043】
しかし、送信側の通信装置で周波数オフセット推定用トレーニングパターンから適応等化器用トレーニングパターンに移行した場合は、2
m−1符号列は、2
n/2シンボル間隔で相関が常に1にはならず、送信シンボル偏移推定回路30からの出力は、+1、j、−1、−jの値がランダムに出力されることになる。もしくは、PN発生器12のシフトレジスタ(m段)の初期設定値を、PN発生器11で生成される1〜m番目までのビット列と逆符号になる符号を設定することで、送信シンボル偏移推定回路30からの出力は、−1がm/2シンボルが連続で出力される。この場合には、シフトレジスタ312には+1、−1、0がランダムに、もしくは−1が連続で入力され、加算器313からの出力値はn値でなくなる。
閾値判定回路314では、加算器313の出力値に(n−a)の閾値を設定することで、(n−a)以下の値となった場合、適応等化器用トレーニングパターンに切り替えられたことを判定することができる。
これにより、受信側でトレーニングパターンを発生させずに、送信側から送信されたトレーニングンパターンに基づいて周波数オフセットを補償する構成であっても、送信されたトレーニングパターンから、そのトレーニングパターンの切り替えを簡単に判定することができるようになる。
【0044】
閾値判定回路314の判定結果が、
図2に示す信号出力制御回路23に入力されると、信号出力制御回路23は、これまでの適応等化器への信号出力抑制を解除し、適応等化器に信号を出力する。これにより適応等化器に対して適応等化器用トレーニングパターンが出力され、適応等化器におけるトレーニングが開始される。
さらに、オフセット推定用PN符号終了判定回路31における閾値判定回路314の判定結果は、同時にATAN計算回路32へも出力され、時間tシンボル経過後に平均化処理を終了し、1シンボルの回転角をΔθ(t−M+1)に前の値に固定する。なお、Mはシフトレジスタ312のレジスタ数である。
【0045】
上記のトレーニング終了後は、復調器21は、4PSK復調器から2
nQAM復調に切替わり、データ信号系列が復調される。
【0046】
次に上記の構成により、受信側で遅延波や雑音の影響を取り除いた周波数オフセットによる位相回転量の導出が可能となる理論について説明する。
上記のように、周波数オフセット推定用トレーニングパターンは、2
n−1ビットのPN符号列に1ビットが追加された2n符号列が使用される。ここでは、例えばn=7として説明する。
【0047】
この場合、周波数オフセット推定用トレーニングパターンとして、PN7(2
7−1)に1ビット(0)を付加した128ビットの繰り返しパターンを使用して、4PSK変調を行う。このため、シンボルは以下のように64シンボルの繰り返しとなる。
S
0、S
1、S
2・・・・S
64、S
0、S
1、S
2・・・
これに対して、周波数オフセットにより1シンボルの回転量Δφが加わるため、初期位相φとするとシンボルは次のように表すことができる。
S
0e
jφ,S
1e
j(φ
+Δφ
),S
2e
j(φ
+2Δφ
),・・・S
64e
j(φ
+64Δφ
),・・・
【0048】
受信した信号をr(n)とすると、その64シンボル前の受信信号はr
(n-64)となる。よって64シンボル前のシンボルとの自己相関は、雑音をW
(n)とすると次式(5)で与えられる。この場合は遅延波の影響は考慮されていない。
r
(n)r
*(n-64)=(S
(n)mod64・S
*(n-64)mod64)×e
j64Δφ+w
(n) ・・・(5)
【0049】
よって64シンボル間隔のΔr(n)は以下の式(6)で与えられる。
【0051】
遅延波が存在する場合には、上記の式(6)に遅延波a
(n)e
jφ
(n)、a
(n-64)e
jφ
(n-64)が加わり、以下の式(7)となる。
r
(n)r
*(n-64)=(S
(n)mod64・S
*(n-64)mod64)×(e
j64Δφ・a
(n)a
(n-64)e
j(φ
(n)-φ
(n-64))+w
(n)w
*(n-64) ・・・(7)
【0052】
よって遅延波が存在する場合の64シンボル間隔の位相回転量Δr(n)は以下の式(8)で与えられる。
【0054】
このことから、位相回転量には、周波数オフセットによる回転量と遅延波による位相の回転量が付加されることになる。ここで、
【0056】
である。x[k]はk番目のシンボル信号で、h[n−k]は伝送路のインパルス応答で、M個のインパルス応答である。
そこで式(8)において、遅延波による位相回転の影響を除去するには、φi
(a)とφi
(n-64)を同一の回転量とすればよいことがわかる。従って、式(9)および式(10)が示しているように、x[k]とx[k−64]においてk=−1〜Mのシンボル信号が同一となるような系列を用いれば、64シンボル間隔での畳み込み量は絶えず同一となり、φi
(n)とφi
(n-64)は同一振幅、かつ同一回転量に規定することができる。
つまり、前述したようにPN7(27−1)に1ビット(0)を付加した信号系列で4PSK変調を行うことにより、遅延波による位相回転の影響を除去することができる。
よって式(8)は遅延波の回転量の影響が除去され、以下の式(11)となる。
【0058】
さらにオフセット推定用トレーニングパターンは、64シンボル周期であるため、S
(n)とS
(n-64)では同一シンボル点が発生されることから、式(11)の分母は必ず1の値を示すことになる。つまり、位相回転が0°の場合、S
(n)mod64・S
*(n-64)mod64は以下のように常に1になる。
(0.707+j0.707)(0.707−j0.707)=1
(0.707−j0.707)(0.707+j0.707)=1
(−0.707+j0.707)(−0.707−j0.707)=1
(−0.707−j0.707)(−0.707+j0.707)=1
よって式(11)の自己相関r
(n)r
*(n-64)を求めることで、周波数オフセットによる位相回転量を算出することができる。さらに式(12)は、平均化処理により、ランダムな雑音の平均値はゼロとなり式(12)で示される。
【0060】
ここでA
(n)=a
(n)a
(n-64)である。