【実施例1】
【0013】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置200の全体構成を説明するために構成要素に分解した斜視図である。電力変換装置200は、回路基板20、金属製ベース板11、バスバーアッセンブリ800、パワー半導体モジュール300a乃至300c、コンデンサモジュール500を備える。これらの部材は、ケース220に収納される。
【0014】
後述されるパワー半導体モジュール300a乃至300cは、直流電力を交流電力に変換する。後述されるコンデンサモジュール500は、直流電力を平滑化する。後述される回路基板20は、パワー半導体モジュール300a乃至300cを駆動する駆動信号を出力する駆動回路部20a(
図4参照)を搭載する。また、回路基板20は、駆動回路にパワー半導体モジュール300a乃至300cを制御するための制御信号を出力する制御回路部20b(
図4参照)を搭載する。これらの回路システムの一例は、特開2011−217550号公報に記載されている。
【0015】
ケース220は、パワー半導体モジュール300a乃至300bやコンデンサモジュール500を冷却するための冷媒を流す流路形成体を形成する。
【0016】
バスバーアッセンブリ800は、直流側導体板801と、絶縁シート803と、交流側導体板805a乃至805cと、これらを保持する絶縁部材802を備えており、さらに電流センサ808を備えている。直流側導体板801は、コンデンサモジュール500からパワー半導体モジュール300a乃至300cへ直流電力を伝達する。直流側導体板801は、後述するように、正極側導体板801aと、負極側導体板801bと、で構成される。パワー半導体モジュール300a乃至300cで交流に変換された電力は、交流側導体板805a乃至805cから出力される。交流側導体板805a乃至805cは、電流センサ803の貫通孔を通って配置される。
【0017】
図2(a)は、バスバーアッセンブリ800の全体構成を説明する為に構成要素に分解した分解斜視図である。バスバーアッセンブリ800は、大きく分けて第1バスバーアッセンブリ800aと、第2バスバーアッセンブリ800bと、絶縁シート803と、で構成される。第1バスバーアッセンブリ800aは、絶縁シート803を挟んで第2バスバーアッセンブリ800bと対向している。
【0018】
第1バスバーアッセンブリ800aは、正極側導体板801aと、電気絶縁性を有する第1絶縁部材802aと、を含んで構成される。正極側導体板801aは、第2バスバーアッセンブリ800bに面する側の一方の面が露出した状態で、第1絶縁部材802aにより覆われている。
【0019】
第2バスバーアッセンブリ800bは、負極側導体板801bと、電気絶縁性を有する第2絶縁部材802bと、を含んで構成される。負極側導体板801bは、第1バスバーアッセンブリ800aに面する側の一方の面が露出した状態で、第2絶縁部材802bにより覆われている。
【0020】
絶縁シート803は、第1バスバーアッセンブリ800aと第2バスバーアッセンブリ800bの間に配置される。絶縁シート803は、正極側導体板801aおよび負極側導体板801bの露出した面を覆うように、配置されている。
【0021】
第2絶縁部材802bは、電流センサ808が設置されるように、第1バスバーアッセンブリ800aと対向する領域から延設されて形成される。
【0022】
バスバーアッセンブリ800には、パワー半導体モジュール300a〜300cと接続するための接続端子(後述)が形成される。第1絶縁部材802a及び第2絶縁部材802bには、パワー半導体モジュール300a〜300cの端子を挿通させるための貫通孔が前記接続端子と隣接して形成される。
【0023】
図2(b)は、
図2(a)に示すバスバーアッセンブリ800の構成要素を組み立てた状態の、バスバーアッセンブリ800の外観斜視図である。ただし、交流側導体板805及び電流センサ808は図示していない。バスバーアッセンブリ800には、コンデンサモジュール500に設けられた位置決めピン730と嵌合する位置決め用貫通孔809が2箇所形成されている。
【0024】
第1バスバーアッセンブリ800aは、爪型形状の構造部材固定部810により、絶縁シート803を挟んだ状態で第2バスバーアッセンブリ800bに係止される。
【0025】
図3は、電力変換装置200から回路基板20と基板ベース板11を取り除いた上面図である。バスバーアッセンブリ800は、コンデンサ接続部703とパワーモジュール接続部704を有する。コンデンサ接続部703及びパワーモジュール接続部704は、バスバーアッセンブリ800の直流側導体板801と接続されている。
【0026】
コンデンサ接続部703は、コンデンサ500のリード端子701と接続される。パワーモジュール接続部704は、パワー半導体モジュール300の直流端子301と接続される。コンデンサ接続部703及びパワーモジュール接続部704は、同方向に突出して形成される。これにより、コンデンサ接続部703とパワーモジュール接続部704を接続する作業を行う際に、ワークの向きを変えることなく接続する事が可能となり、作業性の向上が可能となる
図4は、
図3の断面Bで切断した断面図である。
【0027】
バスバーアッセンブリ800の直流側導体板801は、コンデンサモジュール500の上方に配置されている。直流側導体板801とコンデンサモジュール500は、
図3に示したように、直流側導体板801に形成されるコンデンサ接続部703がコンデンサモジュール500から上方に延びるリード端子701と溶接等により接合されることで、接続される。バスバーアッセンブリ800を挟んでコンデンサモジュール500の更に上方には、回路基板20の制御回路部20bが配置される。また、バスバーアッセンブリ800と制御回路部20bの間には、金属製ベース板11が配置される。制御回路部20bは、駆動回路部20aに比べて使用される電圧が小さいため、駆動回路部20aに比べてノイズに対する影響を受けやすい。金属製ベース板11がバスバーアッセンブリ800と制御回路部20bの間に配置されることで、制御回路部20bに伝搬するノイズの影響を低減することができる。
【0028】
図5(a)は、
図2(b)の断面Aで切ったときのバスバーアッセンブリ800の断面を示す模式図である。
【0029】
正極側導体板801aを保持する第1絶縁部材802aには、凸形状の構造部材804aが形成される。構造部材804aは、第2絶縁部材802bと面する側の第1絶縁部材802aの一面から、第2絶縁部材802bに向かって突出している。構造部材804aは、当該構造部材804aの先端部に、第2絶縁部材802bに接する当接面13を有する。構造部材804aは、正極側導体板801aの露出面14の法線方向に、当該露出面14よりも突出して形成される。
【0030】
凸形状の構造部材804bには、突出軸方向に貫通する貫通孔が形成される。当該貫通孔には、ネジ等の固定部材が挿入される。
【0031】
構造部材804aは、
図5(a)においては一つのみ図示して説明しているが、本実施例においては、直流側導体板801の周囲に複数個所形成される。正極側導体板801aを保持する第1絶縁部材802aに凸形状の構造部材804aを設けたことにより、正極側導体板801aは、負極導体板801bとの間の距離を構造部材804aにより制御することができる。
【0032】
正極側導体板801aと負極側導体板801bの間の距離は、インダクタンス打ち消し効果をより効率的に得るためにも、可能な限り小さくすることが望まれる。しかしながら、正極側導体板801aと負極側導体板801bの間に絶縁性の樹脂材を充填することで正負極間の絶縁性を確保しようとした場合、正負極間の距離が狭いほど、樹脂材の充填時にスルーホール等の欠陥が発生しやすくなってしまう。その結果、正負極間でショートしてしまい、電気的な絶縁性と、インダクタンス低減を両立することが従来困難であった。
【0033】
そこで本実施形態のバスバーアッセンブリ800は、正極側導体板801aと負極側導体板801bの間には、第1絶縁部材802a及び第2絶縁部材802bとは異なる絶縁シート803を配置している。絶縁シート803は、例えばPET材等を積層したものが用いられる。これらの絶縁材は、シート状に薄く加工することが一般的に容易である。また、絶縁シート803は積層構造とすることにより、各シートに発生するスルーホールが繋がる可能性が低く、絶縁信頼性が高い。
【0034】
また、正極側導体板801aと負極側導体板801bの間に絶縁シート803を配置した場合、正極側導体板801aと負極側導体板801bの間の距離12は、絶縁シート803の厚さ12aと、正極側導体板801aと負極側導体板801bの幾何公差を考慮した必要クリアランス12bと、の和を製造上最低限確保する必要がある。本実施形態のバスバーアッセンブリ800は、第1絶縁部材801aから突出した構造部材804aにより、正極側導体板801aと負極側導体板801bの間の距離12を製造上最低限の距離に制御することが可能となるため、インダクタンスの増大を抑制することができる。
【0035】
以上に説明したように、本実施例に係る電力変換装置は、パワー半導体モジュール300に直流電流を供給する直流側バスバー801を有するバスバーアッセンブリ800に、第1絶縁部材802a及び第2絶縁部材802bとは異なる絶縁シート803が挟持され、第1絶縁部材802aが第2絶縁部材802bに向かって突出する凸形状の構造部材804aを有する。したがって、直流電源からパワー半導体モジュールまでのインダクタンスを低く抑えることができ、かつ電気的絶縁を信頼性高く確保することができる。
【0036】
また、バスバーアッセンブリ800を構成する第1絶縁部材802a及び第2絶縁部材は、絶縁性の樹脂部材により形成される。バスバーアッセンブリ800は、例えばインサートモールド等により、正極側導体板801a及び負極側導体板801bが露出した状態で形成される。正極側導体板801aと負極側導体板801bの間の距離を確保するために設けられる構造部材804aは、第1絶縁部材802aと同材料の樹脂材により一体に形成されても良いが、本実施例においては金属製の部材により形成される。また、第2絶縁部材802bは、第1絶縁部材802aの有する金属製の構造部材804aと当接する部分に、金属製の当接部材804bを有する。
【0037】
当接部材804bは、凸形状の804aとの間に当接面13を形成する。金属材料同士によって当接面13を形成することにより、振動や温度等の負荷による引けを生じにくくすることができる。樹脂材料同士で当接面13を形成した場合は、当接面13において樹脂材料の引けが発生するおそれがあり、正負極の導体板間において距離を信頼性高く保つことが難しい。本実施形態のバスバーアッセンブリ800によれば、信頼性高くインダクタンスを低減することができる。
【0038】
また、バスバーアッセンブリ800を構成する絶縁部材802は、回路基板20の駆動回路部20aを固定する構造を有している。
図4に示すように、駆動回路部20aは、パワー半導体素子300の上方に配置される。駆動回路部20aは、制御回路部20bに比べて大きい電圧が使用されている為、制御回路部20bに比べて他の部品との絶縁距離を十分にとる必要がある。絶縁部材802は、絶縁性の樹脂材料で形成されているため、駆動回路部20aとの間に別の絶縁部材を設ける必要がなく、高密度実装が可能となる。
【0039】
なお、導体板は電気伝導性の良い銅が一般的には用いられ、電流密度により厚み及び幅が決まる。また導体板の間隔はインダクタンス低減の目的から出来るだけ近い事が望ましい。
【0040】
また
図5(a)において正極側導体板と負極側導体板の間の絶縁を確保するためには、導体板801と金属製のボス804aとの間の距離も絶縁が可能な距離まで離す必要がある。
【0041】
なお、正極側導体板と負極側導体板の間の絶縁を確保する為に、絶縁シート803が導体板801と同じ大きさではなく、導体板801の縁辺よりもある一定の距離まではみ出させる必要がある。
【0042】
直流側導体板801を覆う絶縁部材802は、ケース202に例えばボルト締結により固定される。したがって、直流側導体板801の重量は、絶縁部材802を介してケース220にかかる。これにより、コンデンサモジュール500のリード端子703と直流側導体板801との接部にかかる応力の集中を防ぐことができる。そのため、例えば接合部に溶接構造などを取り入れることが可能となり、小型化や部品点数の削減が可能となる。
【0043】
バスバーアッセンブリ800に搭載される絶縁シート803に電流センサ803と交流側導体板805を組み付け、その後組み付けを行ったバスバーアッセンブリ800の組み付けを行う。
【0044】
パワーモジュール300は直流側端子301と交流側端子302を有しており、直流側導体板と、交流側導体板を一体として組み付けたバスバーアッセンブリ800を組み付ける事により、直流側端子301と交流側端子302に同じ組立工程内で接続を実施できるから、組立性の向上が可能となる。
【0045】
本実施形態の電力変換装置200は、直流側導体板をコンデンサモジュール500と一体構造にせず、分離している。このように、直流側導体板とコンデンサモジュール500との間に空気層を設けることで、コンデンサモジュールの受熱の主要因である直流側導体板の発熱を、コンデンサモジュール500へ伝わりにくい構造としている。平滑用のフィルムコンデンサセル700の保証温度は、電力変換装置200に搭載されるその他の部品に比べて低い。フィルムコンデンサセル700の温度が保証温度以上になった場合、フィルムコンデンサセル700の寿命が急激に減少し、平滑用コンデンサとしての機能を満足しない。そのため、直流側導体板をコンデンサモジュール500と分離することにより、上部に配置された直流側導体板からのあおり熱の影響を抑えることができる。
【0046】
また、コンデンサ500はコンデンサセルを収納するケース720を有し、ケース720はバスバーアッセンブリ800の配置方向に向かって突出する位置決めピン730が形成され、
バスバーアッセンブリ800に搭載される絶縁部材802に位置決め用貫通孔805が形成されており、位置決めピン730が位置決め用貫通孔805に挿通されるようになっている。
【0047】
これにより、バスバーアッセンブリ800と、コンデンサ500との相対位置が決まる事により直流側導体板801に形成されるコンデンサ接続部703とコンデンサから出るリード端子701を同じ位置に配置する事が可能となる為、接合信頼性の向上が可能となる。