(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記赤色のサブ画素領域内の前記光透過性電極の上方に配された赤色フィルタと、前記緑色のサブ画素領域内の前記光透過性電極の上方に配された緑色フィルタと、前記青色のサブ画素領域内の前記光透過性電極の上方に配された青色フィルタとを含むカラーフィルタ層を備える、
請求項1に記載の有機EL表示パネル。
前記第1赤色発光ユニットは、さらに、前記光反射性電極と前記赤色発光層との間に第1機能層を含み、前記第1緑色発光ユニットは、前記光反射性電極と前記緑色発光層との間に第1機能層を含み、前記第1青色発光ユニットは、前記光反射性電極と前記第1青色発光層との間に第1機能層を含み、
前記第1赤色発光ユニット、前記第1緑色発光ユニット、及び前記第1青色発光ユニットの各々の前記第1機能層は、互いに前記隔壁により分離され、各々の膜厚が互いに異なる、
請求項1から3の何れかに記載の有機EL表示パネル。
さらに、前記赤色のサブ画素領域内の前記光透過性電極の下方に配された赤色フィルタと前記緑色のサブ画素領域内の前記光透過性電極の下方に配された緑色フィルタと前記青色のサブ画素領域内の前記光透過性電極の下方に配された青色フィルタとを含むカラーフィルタ層を含む、
請求項7に記載の有機EL表示パネル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体例を示し、構成および作用・効果を説明する。
【0020】
なお、以下の説明で用いる実施形態は、本発明の一態様に係る構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例示であって、本発明は、その本質的部分以外に何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0021】
≪実施形態≫
[1.有機EL表示パネルの構成(トップエミッション)]
本発明の第1実施形態に係る有機EL表示パネルの構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL表示パネルの1画素を拡大した断面図である。本実施形態においては、有機EL表示パネル100は、
図1における紙面上側を表示面とする、いわゆるトップエミッション型である。
【0022】
有機EL表示パネル100は、第1基板1、隔壁2、絶縁層3、光反射性電極4、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、赤色発光層7R、緑色発光層7G、第1青色発光層7B、第1電子輸送層8、電荷発生層9、第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、第2電子輸送層12、光透過性電極13、保護層14、カラーフィルタ層15、及び第2基板16を備える。
【0023】
第1基板1は、例えば、電気絶縁性の基材と、基材上に配されたTFT層とを含むTFT基板である。TFT層は、複数のTFT駆動回路と、各TFT駆動回路に外部から電力を供給するための複数の配線とを含む。
【0024】
絶縁層3は、第1基板1上に配されている。絶縁層3の上面は、平坦化されている。
【0025】
隔壁2は、絶縁層3上に互いに離間して複数配されている。隔壁2は、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2Bの各々を規定している。
【0026】
光反射性電極4は、絶縁層3上に互いに離間して複数配されている。絶縁層3は、複数のコンタクトホールを有する(不図示)。各コンタクトホールには配線が埋設されている(不図示)。各光反射性電極4は、各コンタクトホールに埋設された配線を通じて第1基板1内のTFT駆動回路の何れかに電気的に接続されている。本実施形態では、光反射性電極4は、第1正孔注入層5に正孔を供給する陽極として機能する。
【0027】
赤色サブ画素領域2Rの内部には、光反射性電極4上に、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、赤色発光層7Rが順次配されている。緑色サブ画素領域2Gの内部には、光反射性電極4上に、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、緑色発光層7Gが順次配されている。青色サブ画素領域2Bの内部には、光反射性電極4上に、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、第1青色発光層7Bが順次配されている。以後、赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bを区別しない場合には「第1発光層7」と略称する。
【0028】
第1正孔注入層5は、光反射性電極4から第1正孔輸送層6や第1発光層7への正孔の注入を促進する機能を有する。各サブ画素領域内の第1正孔注入層5は、互いに隔壁2により分離されていても良いし、互いに隔壁2を越えて連なっていても良い。隔壁2により分離される場合、各第1正孔注入層5の膜厚は、同一でも良いし異なっても良く、各第1正孔注入層5の材料は、同一でも良いし異なっても良い。隔壁2を越えて連なる場合、各第1正孔注入層5は、隔壁2を形成する前に形成されることにより隔壁2の下面側で連なることとしても良いし、隔壁2を形成した後に形成されることにより隔壁2の上面側で連なることとしても良い。
【0029】
第1正孔輸送層6は、第1正孔注入層5から第1発光層7への正孔の注入を促進させ、かつ、第1発光層7からの電子や励起子エネルギーの抜けをブロックする機能を有する。各サブ画素領域内の第1正孔輸送層6は、互いに隔壁2により分離されていても良いし、互いに隔壁2を越えて連なっていても良い。隔壁2により分離される場合、各第1正孔輸送層6の膜厚は、同一でも良いし異なっても良く、各第1正孔輸送層6の材料は、同一でも良いし異なっても良い。隔壁2を越えて連なる場合、各第1正孔輸送層6は、隔壁2を形成する前に形成されることにより隔壁2の下面側で連なることとしても良いし、隔壁2を形成した後に形成されることにより隔壁2の上面側で連なることとしても良い。第1正孔注入層5と第1正孔輸送層6はどちらか1層のみで形成されても良いし、更に別の層が追加されてもよい。
【0030】
第1発光層7は、正孔と電子との再結合により光を出射する機能を有する。赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bは、互いに隔壁2により分離されている。赤色発光層7Rは、赤色波長域に発光ピークを有する材料からなる。緑色発光層7Gは、緑色波長域に発光ピークを有する材料からなる。第1青色発光層7Bは、青色波長域に発光ピークを有する材料からなる。赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bの各々の膜厚は、同一でも良いし異なっても良い。
【0031】
第1電子輸送層8は、各サブ画素領域2R、2G、2B内において各第1発光層7上に配された部分を含む。各部分は、互いに隔壁2を越えて連なっている。第1電子輸送層8は、電荷発生層9から供給された電子を第1発光層7へ輸送する機能を有する。第1電子輸送層8は複数の層から形成されても良い。
【0032】
電荷発生層9は、各サブ画素領域2R、2G、2B内において第1電子輸送層8上に配された部分を含む。各部分は、互いに隔壁2を越えて連なっている。電荷発生層9は、第1電子輸送層8に電子を供給し、第2正孔輸送層に正孔を供給する機能を有する。電荷発生層9は複数の層から形成されても良い。
【0033】
各サブ画素領域2R、2G、2Bの内部には、電荷発生層9上に、第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、第2電子輸送層12が、順次配されている。第2正孔輸送層10は、電荷発生層9から供給された正孔を第2青色発光層11に輸送し、かつ、第2青色発光層11からの電子や励起子エネルギーの抜けをブロックする機能を有する。第2青色発光層11は、正孔と電子との再結合により光を出射する機能を有する。また、第2青色発光層11は、青色波長域に発光ピークを有する材料からなる。第2電子輸送層12は、光透過性電極13から供給された電子を第2青色発光層11へ輸送する機能を有する。第2正孔輸送層および第2電子輸送層は複数の層から形成されても良い。
【0034】
光透過性電極13は、各サブ画素領域2R、2G、2B内において第2電子輸送層12上に配された部分を含む。各部分は、互いに隔壁2を越えて連なっている。本実施形態では、光透過性電極13は、第2電子輸送層12に電子を供給する陰極として機能する。光透過性電極13は、複数の層から形成されても良い。
【0035】
保護層14は、光透過性電極13上に配されている。保護層14は、光反射性電極4から光透過性電極13までの各層を水分や酸素から保護する機能を有する。
【0036】
カラーフィルタ層15は、保護層14上に配されている。カラーフィルタ層15は、赤色フィルタ15R、緑色フィルタ15G、及び青色フィルタ15Bを含む。赤色フィルタ15Rは、赤色サブ画素領域2Rの上方に位置している。緑色フィルタ15Gは、緑色サブ画素領域2Gの上方に位置している。青色フィルタ15Bは、青色サブ画素領域2Bの上方に位置している。カラーフィルタ層15は、出射光の色度を修正する機能を有する。
【0037】
第2基板16は、カラーフィルタ層15上に配されている。
【0038】
赤色サブ画素領域2Rの内部の第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、赤色発光層7R、及び第1電子輸送層8により、第1赤色発光ユニット17Rが構成される。緑色サブ画素領域2Gの内部の第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、緑色発光層7G、及び第1電子輸送層8により、第1緑色発光ユニット17Gが構成される。青色サブ画素領域2Bの内部の第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、第1青色発光層7B、及び第1電子輸送層8により、第1青色発光ユニット17Bが構成される。
【0039】
各サブ画素領域2R、2G、2Bの内部の第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、及び第2電子輸送層12により、第2青色発光ユニット18Bが構成される。
【0040】
以上の通り、赤色サブ画素領域2Rでは、第1赤色発光ユニット17Rと第2青色発光ユニット18Bとが電荷発生層9を介して積層されている。緑色サブ画素領域2Gでは、第1緑色発光ユニット17Gと第2青色発光ユニット18Bとが電荷発生層9を介して積層されている。青色サブ画素領域2Bでは、第1青色発光ユニット17Bと第2青色発光ユニット18Bとが電荷発生層9を介して積層されている。従って、各サブ画素領域2R、2G、2Bの内部にタンデム型の有機EL素子が設けられていると言える。
【0041】
[2.光学設計(トップエミッション)]
本実施形態においては、電荷発生層9と第2青色発光層11が、各サブ画素領域2R、2G、2Bに配されている。そのため、青色サブ画素領域2B内の有機EL素子だけでなく、赤色サブ画素領域2R及び緑色サブ画素領域2G内の有機EL素子も青色光を発生する。ところが、例えば、赤色サブ画素領域2R内の有機EL素子においては、青色光は不要な光であり、青色光がそのまま外部に出射されると赤色サブ画素の出射光の色度が悪化することになる。そのため、有機EL素子の光が出射される側に、外部に出射される光の色度が赤色になるように赤色フィルタを設けることが望まれる。
【0042】
しかしながら、光取り出し効率(内部で発光する量に対する出力される発光の割合)を高めるためには、赤色サブ画素領域2R内の有機EL素子の出射光のうち、赤色フィルタに吸収される光の量を減らす必要がある。従来から有機EL素子を構成する各層の膜厚や屈折率を適切に設計して有機EL素子の微小共振構造を適切に調整することで、有機EL素子の光取り出し効率を向上させる技術が知られている。通常、赤色、緑色、青色のうちのどれか1色もしくは白色発光を目的とした2色以上の発光に対して光取出し効率を向上させる場合が多い。
【0043】
本実施形態の有機EL素子の構造では、各サブ画素領域2R、2G、2Bの何れの第2青色発光層11も青色光を発生する。そのため、青色サブ画素領域2Bでは、第1青色発光層7Bにより発生された青色光と、第2青色発光層11により発生された青色光の両方の光取り出し効率を高めることが望ましい。これに対して、緑色サブ画素領域2Gでは、緑色発光層7Gにより発生された緑色光の光取り出し効率を高め、一方、第2青色発光層11により発生された青色光の光取り出し効率を下げることが望ましい。赤色サブ画素領域2Rでは、赤色発光層7Rにより発生された赤色光の光取出し効率を高め、一方、第2青色発光層11により発生された青色光の光取出し効率を下げることが望ましい。すなわち、サブ画素毎に要求される出射光の色度が異なるため、サブ画素領域2R、2G、2B内の有機EL素子ごとに適した光の取出し効率を制御する設計が必要となる。特に赤色及び緑色サブ画素領域2R、2G内の有機EL素子においては、光の取出し効率を向上させる設計と光の取出し効率を低下させる設計を同時に実現する設計が必要となる。
【0044】
図2に、各サブ画素領域内に設けられた有機EL素子の出射光の光路を示す。
【0045】
光路C1aは、第1発光層7から光反射性電極4側に進行せずに光透過性電極13側に進行する光の光路である。光路C1bは、第1発光層7から光反射性電極4側に進行し、光反射性電極4で反射されてから光透過性電極13側に進行する光の光路である。光路C2aは、第2青色発光層11から光反射性電極4側に進行せずに光透過性電極13側に進行する光の光路である。光路C2bは、第2青色発光層11から光反射性電極4側に進行し、光反射性電極4で反射されてから光透過性電極13側に進行する光の光路である。
【0046】
上述の通り、第1正孔輸送層6は、第1発光層7からの電子の抜けをブロックする機能を有する。そのため、第1発光層7内の電子は第1発光層7と第1正孔輸送層6との界面(第1発光層7の下面)付近に蓄積されやすい。これは、電子と正孔の再結合が第1発光層7の下面付近で生じやすく、ひいては、発光強度が第1発光層7の下面付近で大きくなることを意味する。従って、本実施形態では、第1発光層7の下面を、第1発光層7の発光面7aとする。また、第2青色発光層11も同様に、第2青色発光層11の下面を、第2青色発光層11の発光面11aとする。有機EL素子の微小共振構造を設計する場合、第1発光層7の発光面7aと光反射性電極4の光反射面4aとの間の光学長L1R、L1G、L1B(以下、「第1の光学長」と称する)と、第2青色発光層11の発光面11aと光反射性電極4の光反射面4aとの間の光学長L2R、L2G、L2B(以下、「第2の光学長」と称する)とを検討すればよい。
【0047】
なお、本実施形態では、第1発光層7の下面が第1発光層の発光面となるが、これに限らない。例えば、第1電子輸送層8が、第1発光層7に電子を注入する機能の他に、第1発光層7からの正孔の抜けをブロックする機能を有していれば、第1発光層7の上面が第1発光層7の発光面となる可能性がある。第2青色発光層11についても同様である。
【0048】
[3.第1の光学長(トップエミッション)]
図3は光学シミュレーションの結果であり、第1の光学長に対する有機EL素子の光取出し効率と有機EL素子の出射光の色度の変化を示す図である。同図(a)は赤色サブ画素、(b)は緑色サブ画素、(c)は青色サブ画素を示す。ここで、y値は、CIE色度座標における値である。本来、光学長とは各層の膜厚と各層の屈折率との積により得られる物理量であるが、本実施形態においては各層の膜厚を光学長として示している。光取出し効率はカラーフィルタ層で光が吸収される前の値を示し、第1発光層からの発光に対する値を示している。各層の膜厚は基準として以下のように設定した。
【0049】
光反射性電極:200nm(銀合金)
第1正孔注入層:20nm(導電性ポリマー材料)
第1正孔輸送層:10nm(アミン化合物)
第1発光層:50nm(ポリフルオレン誘導体)
第1電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
電荷発生層:10nm(HAT−CN6)
第2正孔輸送層:30nm(アミン化合物)
第2青色発光層:25nm(アントラセン化合物)
第2電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
光透過性電極:35nm(ITO)
各材料の屈折率は、分光エリプソメトリーにて評価した。
【0050】
本実施形態においては、第1の光学長は、第1正孔注入層と第1正孔輸送層の膜厚の和で表される。
図3では、第1正孔注入層の膜厚を変化させた場合(破線)と第1正孔輸送層の膜厚を変化させた場合(実線)を示している。どちらの材料も有機材料であるため、ほぼ同じ屈折率を有している。そのため、どちらの膜厚を変化させても同じ挙動を示すことが分かる。すなわち、光反射性電極の光反射面と第1発光層の発光面との間に存在する層であれば、どの層の膜厚を調整しても良く、正孔注入層や正孔輸送層などをさらに追加しても良い。
【0051】
図3(a)に示す赤色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長が30nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が50nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、第1正孔注入層および第1正孔輸送層に正孔を注入もしくは輸送する機能を発現させるには、第1の光学長が20nm以上であることが望ましい。従って、赤色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長は、20nm以上50nm以下であることが望ましい。
【0052】
図3(b)に示す緑色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長が10nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が50nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、赤色サブ画素領域と同様の理由により、第1の光学長は20nm以上であることが望ましい。従って、緑色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長は、20nm以上50nm以下であることが望ましい。
【0053】
図3(c)に示す青色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長が40nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が60nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、赤色サブ画素領域と同様の理由により、第1の光学長は20nm以上であることが望ましい。従って、青色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長は、20nm以上60nm以下であることが望ましい。
【0054】
[4.第2の光学長(トップエミッション)]
図4は光学シミュレーションの結果であり、第2の光学長に対する有機EL素子の光取出し効率と有機EL素子の発光色の色度の変化を示す図である。同図(a)は赤色サブ画素、(b)は緑色サブ画素、(c)は青色サブ画素を示す。光取出し効率は、カラーフィルタ層で光が吸収される前の値を示し、第1発光層からの発光と第2青色発光層からの発光の和に対する値を示している。各層の膜厚は基準として以下のように設定した。
【0055】
光反射性電極:200nm(銀合金)
第1正孔注入層:20nm(導電性ポリマー材料)
第1正孔輸送層:10nm(アミン化合物)
第1発光層:50nm(ポリフルオレン誘導体)
第1電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
電荷発生層:10nm(HAT−CN6)
第2正孔輸送層:30nm(アミン化合物)
第2青色発光層:25nm(アントラセン化合物)
第2電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
光透過性電極:35nm(ITO)
各材料の屈折率は、分光エリプソメトリーにて評価した。
【0056】
本実施形態においては、第2の光学長は、第1正孔注入層、第1正孔輸送層、第1発光層、第1電子輸送層、電荷発生層、第2正孔輸送層の膜厚の和で表される。
図4では、第2正孔輸送層の膜厚を変化させた場合を示している。
【0057】
図4(a)に示す赤色サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長が195nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第2の光学長が160nm以上230nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。なお、160nm付近は
図4(a)には現れていない。一方、第2の光学長が210nm以上265nm以下であれば、y値が赤色サブ画素として適切な範囲(y値が0.30以上)を確保することができる。従って、赤色サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長は、210nm以上230nm以下であることが望ましい。これにより、出射光の色度を適切な範囲に確保しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0058】
図5に、赤色サブ画素に関して、さらに詳細なシミュレーションの結果を示す。
図5上段のグラフは光取り出し効率の変化を示し、
図5下段のグラフは色度の変化を示す。カラーフィルタ層を用いて色度補正を実施した場合(実線)、第2の光学長が220nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第2の光学長が210nm以上230nm以下であれば、カラーフィルタで色度補正を実施した場合に高い光取り出し効率を確保することができる。また、
図4(a)及び
図5の結果から、第2の光学長を195nmとした場合、色度補正を実施しなければ光取り出し効率がピークとなるが、色度補正を実施すれば光取り出し効率がピークではなくなることが分かる。これは、第2の光学長を195nm付近とした場合、不要な青色光の占める割合が比較的大きいからであると推察される。
【0059】
また、赤色サブ画素領域内の有機EL素子は、赤色発光層と第2青色発光層を含む。第2の光学長を最適化する場合、赤色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立して検討することも考えられる。現実のデバイスでは赤色発光層が発光せず第2青色発光層だけが発光する状況はあり得ないが、シミュレーションではそのような状況を再現することができる。従って、第2青色発光層だけが発光する状況をシミュレーションで再現し、出射光の光取り出し効率が極小となる第2の光学長を求めることができる。しかしながら、赤色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立して最適化しても、必ずしも出射光の光取り出し効率と色度を両立できるとは限らないことが判明した。
図5上段のグラフ中の破線は、赤色発光層が発光せず第2青色発光層のみが発光する場合の光取り出し効率を示す。これによると、例えば、第2の光学長が170nm以上180nm以下の範囲で光取り出し効率が低くなる。つまり、第2青色発光層を独立して最適化すると、第2の光学長が170nm以上180nm以下の範囲が選択される可能性が高い。しかしながら、上述の通り、赤色サブ画素領域内の有機EL素子の第2の光学長の望ましい範囲は、170nm以上180nm以下の範囲ではなく、210nm以上230nm以下である。従って、第2の光学長を最適化する場合、赤色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立して検討するのではなく、赤色発光層と第2青色発光層の両方を同時に検討することが重要である。本実施形態では、赤色発光層と第2青色発光層の両方を同時に検討しているので、出射光の光取り出し効率と色度を両立できる第2の光学長の範囲を得ることができる。
【0060】
図4(b)に示す緑色サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長が270nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第2の光学長が240nm以上300nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、第2の光学長が210nm以上295nm以下であれば、y値が緑色サブ画素として適切な範囲(y値が0.50以上)を確保することができる。なお、210nm付近は
図4(b)には現れていない。緑色サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長は、240nm以上295nm以下であることが望ましい。これにより、出射光の色度を適切な範囲に確保しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0061】
図4(c)に示す青色サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長が210nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第2の光学長が195nm以上235nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、第2の光学長が130nm以上205nm以下であれば、y値が青色サブ画素として適切な範囲(y値が0.2以下、さらに望ましくは0.18以下)を確保することができる。なお、130nm付近は
図4(c)には現れていない。青色サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長は、195nm以上205nm以下であることが望ましい。これにより、出射光の色度を適切な範囲に確保しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0062】
図6に、青色サブ画素に関して、さらに詳細なシミュレーションの結果を示す。
図6上段のグラフは光取り出し効率の変化を示し、
図6下段のグラフは色度の変化を示す。上述の通り、第2の光学長を最適化する場合、第1青色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立して検討することが考えられる。
図6上段のグラフ中の実線は、第1青色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合の光取り出し効率を示す。同グラフ中の点線は、第1青色発光層のみが発光し第2青色発光層が発光しない場合の光取り出し効率を示す。同グラフ中の破線は、第1青色発光層が発光せず第2青色発光層のみが発光する場合の光取り出し効率を示す。何れも、カラーフィルタ層を用いて色度補正を実施しているものとする。これによると、第1青色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合、第2の光学長が195nm以上205nm以下の範囲に光取り出し効率のピークが存在する。第2青色発光層のみが発光する場合、第2の光学長が180nm以上195nm以下の範囲に光取り出し効率のピークが存在する。第1青色発光層のみが発光する場合、第2の光学長が215nm以上235nm以下の範囲内に光取り出し効率のピークが存在する。即ち、第1青色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合に光取り出し効率がピークを示す第2の光学長は、第1青色発光層のみが発光する場合や第2青色発光層のみが発光する場合に光取り出し効率がピークを示す第2の光学長と異なる。従って、第1青色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立に最適化しても、必ずしも出射光の光取り出し効率と色度を両立できるとは限らない。本実施形態では、第1青色発光層と第2青色発光層の両方を同時に検討しているので、出射光の光取り出し効率と色度を両立できる第2の光学長の範囲を得ることができる。
【0063】
[5.光学設計のまとめ(トップエミッション)]
赤色サブ画素領域2R内において、第1の光学長が20nm以上50nm以下であることが望ましく、第2の光学長が210nm以上230nm以下であることが望ましい。例えば、第1の光学長を30nmとし、第2の光学長を220nmとする場合、各層の膜厚を以下の通りにしてもよい。
【0064】
第1正孔注入層:20nm
第1正孔輸送層:10nm
赤色発光層:80nm
第1電子輸送層:40nm
電荷発生層:35nm
第2正孔輸送層:35nm
緑色サブ画素領域2G内において、第1の光学長が20nm以上50nm以下であることが望ましく、第2の光学長が240nm以上295nm以下であることが望ましい。例えば、第1の光学長を50nmとし、第2の光学長を240nmとする場合、各層の膜厚を以下の通りにしてもよい。
【0065】
第1正孔注入層:35nm
第1正孔輸送層:15nm
緑色発光層:80nm
第1電子輸送層:40nm
電荷発生層:35nm
第2正孔輸送層:35nm
青色サブ画素領域2B内において、第1の光学長が20nm以上60nm以下であることが望ましく、第2の光学長が195nm以上205nm以下であることが望ましい。例えば、第1の光学長を40nmとし、第2の光学長を200nmとする場合、各層の膜厚を以下の通りにしてもよい。
【0066】
第1正孔注入層:30nm
第1正孔輸送層:10nm
第2青色発光層:50nm
第1電子輸送層:40nm
電荷発生層:35nm
第2正孔輸送層:35nm
本実施形態では、赤色サブ画素領域2R内の各光学長が上記範囲内にあるので、赤色サブ画素領域2R内の赤色発光層7Rから出射された赤色光の光取り出し効率を向上させつつ、第2青色発光層11から出射された青色光の光取り出し効率を抑制することができる。また、緑色サブ画素領域2G内の各光学長が上記範囲内にあるので、緑色サブ画素領域2G内の緑色発光層7Gから出射された緑色光の光取り出し効率を向上させつつ、第2青色発光層11から出射された青色光の光取り出し効率を抑制することができる。また、青色サブ画素領域2B内の各光学長が上記範囲内にあるので、青色サブ画素領域2B内の第1青色発光層7Bと第2青色発光層11の両方から出射された青色光を効率良く外部に取り出すことができる。従って、所望の輝度を得るために必要な電流が小さくなるため、電流駆動型である有機EL素子の寿命を延ばすことができる。
【0067】
本実施形態では、さらに、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2B内の各々に電荷発生層9が存在する。そのため、精密なシャドウマスクを用いなくても電荷発生層9を形成することができる。従って、製造コスト、生産性を更に向上することができる。
【0068】
また、上述の通り、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2Bの各第2の光学長の望ましい範囲が互いに異なる。赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bの膜厚を異ならせることにより、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2Bの各第2の光学長を調整することとしてもよい。例えば、赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bをインクジェット法などの湿式法で形成すれば、これらの膜厚を容易に異ならせることができる。
【0069】
また、光反射性電極4と第1発光層7との間にある1または複数の層(本実施形態では、第1正孔注入層5と第1正孔輸送層6)を第1機能層と称する場合、第1機能層の膜厚を異ならせることにより、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2Bの各第2の光学長を調整することとしてもよい。例えば、第1機能層に含まれる少なくとも1層をインクジェット法などの湿式法で形成すれば、第1機能層の膜厚を各サブ画素領域で容易に異ならせることができる。
【0070】
また、第1発光層7と光透過性電極13との間にある各層(本実施形態では、第1電子輸送層8、電荷発生層9、第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、第2電子輸送層12)の膜厚を、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2Bで同一としてもよい。例えば、各層を抵抗加熱方式などの真空蒸着法で形成すれば、各層の膜厚が各サブ画素領域で同一となる。
【0071】
[6.各層の具体的な材料(トップエミッション)]
以下、各層の具体的な材料を列挙する。
【0072】
<第1基板>
第1基板1の電気絶縁性の基材の材料としては、例えば、ガラスやプラスチックが用いられる。ガラス材料としては、具体的には、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英等のガラスなどが挙げられる。プラスチック材料としては、具体的に例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0073】
<絶縁層>
絶縁層3は、樹脂材料や無機材料からなる。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の材料が挙げられる。絶縁層3は、樹脂材料のみから形成されても良いし、樹脂材料と無機材料から形成されても良い。
【0074】
<光反射性電極>
光反射性電極4は、光反射性を具備する導電材料からなる。光反射性を具備する導電材料としては、例えば、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、AG(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCR(モリブデンとクロムの合金)、NiCR(ニッケルとクロムの合金)、Mo(モリブデン)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)等が挙げられる。光反射性電極4は、光透過性を具備する導電材料と光反射性を具備する導電材料の積層体としても良い。光透過性の導電材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を挙げることができる。
【0075】
<隔壁>
隔壁2は、例えば、電気絶縁性の樹脂材料からなる。隔壁2の材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。
【0076】
<第1正孔注入層>
第1正孔注入層5の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料、あるいは、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などの低分子有機化合物やポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物が挙げられる。なお、正孔注入性を更に向上させる点から、上記低分子有機化合物に後記する電子受容性物質をドーピングしてもよい。
【0077】
<第1正孔輸送層>
第1正孔輸送層6は、第1正孔注入層5から第1発光層7への正孔の注入を促進させ、第1発光層7から電子や励起子エネルギーが抜けるのをブロックする目的で設けられている。第1正孔輸送層6の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、第1正孔注入層5に記載の材料が挙げられる。
【0078】
<第1発光層>
第1発光層7の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アントラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質や、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の公知の燐光物質などの低分子有機化合物やポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物が挙げられる。低分子化合物と低分子化合物の混合体、高分子化合物と低分子化合物の混合体など、いくつかの材料を組み合わせて第1発光層を形成しても良い。
【0079】
<第1電子輸送層>
第1電子輸送層8の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、有機材料、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物等が挙げられる。有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体、シロール誘導体、ジメシチルボロン誘導体、トリアリールボロン誘導体等を挙げることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)が挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物等としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、酸化リチウム(LiOx)、酸化バリウム(BaOx)、炭酸セシウム(Cs2Co3)等を挙げることができる。なお、電子注入性を更に向上させる点から、上記有機材料にアルカリ金属またはアルカリ土類金属やアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物等をドーピングしてもよい。なお、有機層とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の積層や有機層とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物等の積層など、複数の層から第1電子輸送層を形成しても良い。
【0080】
<電荷発生層>
電荷発生層9の材料および構成としては、公知の材料および構成を利用することができる。例えば、電子受容性物質、電子供与性物質、電子受容性物質と電子供与性物質の積層体または混合体、有機材料と電子受容性物質との混合体、有機材料と電子供与性物質との混合体、有機材料と電子受容性物質との混合体と有機材料と電子供与性物質との混合体の積層体、電子受容性物質と金属もしくは透明電極との積層体または混合体、電子供与性物質と金属もしくは透明電極との積層体または混合体、電子受容性物質と電子供与性物質の積層体または混合体と金属もしくは透明電極との積層体、有機材料と電子受容性物質との混合体と金属もしくは透明電極との積層体、有機材料と電子供与性物質との混合体と金属もしくは透明電極との積層体、金属と透明電極との積層体などが挙げられる。
【0081】
電子受容性物質としては、例えば、塩化第2鉄、臭化第2鉄、ヨウ化第2鉄、ヨウ化ガリウム、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物等の無機化合物やDDQ(ジシアノ−ジクロロキノン)、TNF(トリニトロフルオレノン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)、F4TCNQ(テトラフルオロ−テトラシアノキノジメタン)、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(例えばHAT−CN6)等の有機化合物が挙げられる。電子供与性物質としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。有機材料としては、例えば、第1正孔注入層5に記載の材料や第1電子輸送層8に記載の材料が挙げられる。金属としては、例えば、Ag、Au、Al等の金属薄膜が挙げられる。透明電極としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)などが挙げられる。
【0082】
第1電子輸送層8や第2正孔輸送層10が、電子受容性物質や電子供与性物質を含む場合や、電荷発生層9が金属もしくは透明電極の場合、第1電子輸送層8や第2正孔輸送層10を電荷発生層の一部として使用することもできる。
【0083】
本願においては、第1電子輸送層8に電子を供給し、第2正孔輸送層10に正孔を供給できれば、電荷発生層9の構成は限定を受けるものではない。
【0084】
本実施形態においては、電子供与性物質であるヘキサアザトリフェニレン・ヘキサニトリル(HAT−CN6)を用いている。
【0085】
<第2正孔輸送層>
第2正孔輸送層10の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、第1正孔注入層に記載の材料が挙げられる。
【0086】
第2正孔輸送層10は、1層のみで形成されても良いし、更に層を追加して形成しても良い。なお、正孔注入性を更に向上させる点から、第2正孔輸送層10に電子受容性物質をドーピングしてもよい。
【0087】
<第2青色発光層>
第2青色発光層11の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、第1発光層7に記載の材料が挙げられる。低分子化合物と低分子化合物の混合体など、いくつかの材料を組み合わせて第2青色発光層11を形成しても良い。
【0088】
<第2電子輸送層>
第2電子輸送層12の材料としては、公知の材料を利用することができる。例えば、第1電子輸送層8に記載の材料が挙げられる。なお、電子注入性を更に向上させる点から、有機層にアルカリ金属またはアルカリ土類金属やアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物等をドーピングしてもよい。なお、有機層とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の積層や有機層とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物等の積層など、複数の層から第2電子輸送層を形成しても良い。
【0089】
<光透過性電極>
光透過性電極13は、光透過性を具備する導電材料からなる。光透過性の導電材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を挙げることができる。
【0090】
<保護層>
保護層14は、無機材料や樹脂材料からなる。無機材料としては、例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、樹脂接着剤が挙げられる。保護層14は、無機層と樹脂層とが積層された積層体であってもよい。
【0091】
<カラーフィルタ層>
カラーフィルタ層15の材料としては、公知の材料を利用することができる。
【0092】
<第2基板>
第2基板16の材料としては、例えば、ガラスやプラスチックが用いられる。ガラス材料としては、具体的には例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英等のガラスなどが挙げられる。プラスチックとしては、具体的に例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン系樹脂などが挙げられる。プラスチックを用いる場合、第2基板16に、水分や酸素の侵入を抑制するための保護層を含めることとしても良い。
【0093】
[7.有機EL表示パネルの製造方法(トップエミッション)]
本実施形態に係る有機EL表示パネルの製造方法について
図7を用いて説明する。
【0094】
図7(a)に示すように、第1基板1上に絶縁層3を形成する。絶縁層3上に互いに離間した複数の光反射性電極4を形成する。光反射性電極4は、例えば、スパッタ法を用いて光反射性を具備する導電材料からなる導電膜を絶縁層3上に形成し、エッチング法を用いて導電膜をパターニングすることにより形成することができる。
【0095】
図7(b)に示すように、第1基板1上に複数の隔壁2を形成する。隔壁2は、例えば、絶縁層3上に感光性材料からなる感光性膜を形成し、フォトマスクを介して感光性膜を露光し、露光された感光性膜を現像することにより形成することができる。隔壁2は、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、第1発光層7を湿式法で形成する場合に、塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能する。
【0096】
図7(c)に示すように、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bを形成する。これらは、例えば、インクジェット法などの湿式法を用いることにより形成することができる。
【0097】
図7(d)に示すように、第1電子輸送層8、電荷発生層9、第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、第2電子輸送層12を形成する。これらは、例えば、抵抗加熱方式などの真空蒸着法を用いることにより形成することができる。
【0098】
図7(e)に示すように、光透過性電極13を形成する。これは、例えば、抵抗加熱方式などの真空蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式法を用いることにより形成することができる。次に、保護層14を形成し、保護層14上にカラーフィルタ層15が形成された第2基板16を被せる。
【0099】
[8.有機EL表示パネルの構成(ボトムエミッション)]
本発明の第2実施形態に係る有機EL表示パネルの構成について、
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る有機EL表示パネルの1画素を拡大した断面図である。本実施形態においては、有機EL表示パネル200は、
図8における紙面下側を表示面とする、いわゆるボトムエミッション型である。
【0100】
有機EL表示パネル200は、第2基板16、カラーフィルタ層15、隔壁2、絶縁層3、光透過性電極213、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、赤色発光層7R、緑色発光層7G、第1青色発光層7B、第1電子輸送層8、電荷発生層9、第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、第2電子輸送層12、光反射性電極204、保護層14、第2基板1を備える。各層の機能、材料及び製造方法は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0101】
[9.光学設計(ボトムエミッション)]
図9に、各サブ画素領域内に設けられた有機EL素子の出射光の光路を示す。
【0102】
光路C1aは、第1発光層7から光反射性電極204側に進行せずに光透過性電極213側に進行する光の光路である。光路C1bは、第1発光層7から光反射性電極204側に進行し、光反射性電極204で反射されてから光透過性電極213側に進行する光の光路である。光路C2aは、第2青色発光層11から光反射性電極204側に進行せずに光透過性電極213側に進行する光の光路である。光路C2bは、第2青色発光層11から光反射性電極204側に進行し、光反射性電極204で反射されてから光透過性電極213側に進行する光の光路である。
【0103】
本実施形態では、有機EL素子の微小共振構造を設計する場合、第1発光層7の発光面7aと光反射性電極204の光反射面204aとの間の光学長L1R、L1G、L1B(以下、「第1の光学長」と称する)と、第2青色発光層11の発光面11aと光反射性電極204の光反射面204aとの間の光学長L2R、L2G、L2B(以下、「第2の光学長」と称する)とを検討すればよい。
【0104】
[10.第2の光学長(ボトムエミッション)]
本実施形態では、第1正孔注入層5、第1正孔輸送層6、赤色発光層7R、緑色発光層7G、及び第1青色発光層7Bを湿式法で形成するものとして説明する。また、第1電子輸送層8、電荷発生層9、第2正孔輸送層10、第2青色発光層11、及び第2電子輸送層12を真空蒸着法で形成するものとして説明する。また、真空蒸着法では、シャドウマスクを用いないものとする。この場合、第2の光学長は、各サブ画素領域2R、2G、2Bで同一となる。
【0105】
図10は光学シミュレーションの結果であり、第2の光学長に対する有機EL素子の光取出し効率と有機EL素子の発光色の色度の変化を示す図である。光取出し効率はカラーフィルタ層で光が吸収される前の値を示し、第2青色発光層からの発光に対する値を示している。各層の膜厚は基準として以下のように設定した。
【0106】
光透過性電極:50nm(ITO)
第1正孔注入層:25nm(導電性ポリマー材料)
第1正孔輸送層:20nm(アミン化合物)
第1発光層:70nm(ポリフルオレン誘導体)
第1電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
電荷発生層:10nm(HAT−CN6)
第2正孔輸送層:25nm(アミン化合物)
第2青色発光層:25nm(アントラセン化合物)
第2電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
光反射性電極:120nm(アルミニウム)
各材料の屈折率は、分光エリプソメトリーにて評価した。
【0107】
本実施形態においては、第2の光学長は、第2電子輸送層と第2青色発光層の膜厚の和で表される。
図10では、第2電子輸送層の膜厚を変化させた場合(破線)と第2青色発光層の膜厚を変化させた場合(実線)を示している。どちらの材料も有機材料であるため、ほぼ同じ屈折率を有している。そのため、どちらの膜厚を変化させても同じ挙動を示すことが分かる。すなわち、光反射性電極の反射面と第2青色発光層の発光面との間に存在する層であれば、どの層の膜厚を調整しても良く、第2電子注入層などを追加しても良い。
【0108】
図10に示す各サブ画素領域内の有機EL素子では、第2の光学長が70nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第2の光学長が60nm以上80nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、出射光の色度は、第2の光学長が長くなるにつれ、悪化(大きい値になる)していくことが分かる。青色光として光を取り出すには、y値は0.20以下が望ましい。第2の光学長が75nm以下であれば、y値を0.20以下に確保することができる。従って、第2の光学長は、60nm以上75nm以下であることが望ましい。これにより、出射光の色度を青色として取り出しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0109】
[11.第1の光学長(ボトムエミッション)]
図11は光学シミュレーションの結果であり、第1の光学長に対する有機EL素子の光取出し効率と有機EL素子の発光色の色度の変化を示す図である。同図(a)は赤色サブ画素、(b)は緑色サブ画素、(c)は青色サブ画素を示す。光取出し効率は、カラーフィルタ層で光が吸収される前の値を示し、第1発光層からの発光と第2青色発光層からの発光の和に対する値を示している。各層の膜厚は基準として以下のように設定した。
【0110】
光透過性電極:50nm(ITO)
第1正孔注入層:25nm(導電性ポリマー材料)
第1正孔輸送層:20nm(アミン化合物)
第1発光層:70nm(ポリフルオレン誘導体)
第1電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
電荷発生層:10nm(HAT−CN6)
第2正孔輸送層:25nm(アミン化合物)
第2青色発光層:25nm(アントラセン化合物)
第2電子輸送層:35nm(フェナンスロリン誘導体)
光反射性電極:120nm(アルミニウム)
各材料の屈折率は、分光エリプソメトリーにて評価した。
【0111】
本実施形態においては、第1の光学長は、第2電子輸送層、第2青色発光層、第2正孔輸送層、電荷発生層、第1電子輸送層、第1発光層の膜厚の和で表される。ここで、第1発光層以外は、シャドウマスクを用いない乾式法により形成されるため、各サブ画素領域で膜厚を異ならせることができない。第1発光層は、湿式法により形成されるため、各サブ画素領域で異なる膜厚を実現できる。
図11(a)、(b)、(c)は、第1発光層の膜厚を変化させた場合の光取出し効率と色度の変化の光学シミュレーションデータ(実線)と、実際に有機EL素子を作製して特性を評価した実測データ(点)を示している。どれも、光学シミュレーションと実測データが良い一致を示し、光学シミュレーションによる予測が正しいことを示している。
【0112】
図11(a)に示す赤色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長が290nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が255nm以上315nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、第1の光学長を300nm以上にすると、赤色発光層が170nm以上となり、有機EL素子の駆動電圧が非常に高くなってしまう。従って、赤色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長は、255nm以上300nm以下であることが望ましい。なお、
図12(a)に第1の光学長が210nmの場合の発光スペクトルを示し、
図12(b)に第1の光学長が290nmの場合の発光スペクトルを示す。第1の光学長が210nmの場合、非常に青色発光が強く、第1の光学長が290nmの場合、赤色発光が強くなり、青色発光が抑制されていることが分かる。従って、第1の光学長を上記範囲内に収めることにより、不要な青色発光を抑制するとともに赤色発光を強く取り出すことができ、その結果、出射光の色度を適切な範囲に確保しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0113】
図13に、赤色サブ画素に関して、さらに詳細なシミュレーションの結果を示す。
図13上段のグラフは光取り出し効率の変化を示し、
図13下段のグラフは色度の変化を示す。カラーフィルタ層を用いて色度補正を実施した場合(実線)、第1の光学長が270nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が255nm以上300nm以下であれば、カラーフィルタで色度補正を実施した場合に高い光取り出し効率を確保することができる。
【0114】
また、第1実施形態でも説明した通り、第1の光学長を最適化する場合、赤色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立して検討することが考えられる。
図13上段のグラフ中の実線は、赤色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合の光取り出し効率を示す。同グラフ中の破線は、赤色発光層のみが発光し第2青色発光層が発光しない場合の光取り出し効率を示す。何れも、カラーフィルタ層を用いて色度補正を実施している。これによると、赤色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合、第2の光学長が255nm以上300nm以下の範囲に光取り出し効率のピークが存在する。赤色発光層のみが発光する場合、第1の光学長が300nm以上320nm以下の範囲に光取り出し効率のピークが存在する。即ち、赤色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合に光取り出し効率がピークを示す第1の光学長は、赤色発光層のみが発光する場合に光取り出し効率がピークを示す第1の光学長と異なる。従って、赤色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立に最適化しても、必ずしも出射光の光取り出し効率と色度を両立できるとは限らない。本実施形態では、赤色発光層と第2青色発光層の両方を同時に検討しているので、出射光の光取り出し効率と色度を両立できる第1の光学長の範囲を得ることができる。
【0115】
図11(b)に示す緑色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長が270nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が250nm以上300nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。また、この範囲であれば、y値が緑色サブ画素として適切な範囲(y値が概ね0.50以上)を確保することができる。従って、第1の光学長は、250nm以上300nm以下であることが望ましい。これにより、出射光の色度を適切な範囲に確保しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0116】
図11(c)に示す青色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長が230nm付近で光取り出し効率がピークとなる。第1の光学長が210nm以上250nm以下であれば、光取り出し効率がピーク値の90%以上を確保できる。一方、第1の光学長が220nm以下であれば、y値が青色サブ画素として適切な範囲(y値が0.2以下、さらに望ましくは0.18以下)を確保することができる。従って、青色サブ画素領域内の有機EL素子では、第1の光学長は、210nm以上220nm以下であることが望ましい。これにより、出射光の色度を適切な範囲に確保しつつ光取り出し効率を高めることができる。
【0117】
図14に、青色サブ画素に関して、さらに詳細なシミュレーションの結果を示す。
図14上段のグラフは光取り出し効率の変化を示し、
図14下段のグラフは色度の変化を示す。上述の通り、第1の光学長を最適化する場合、第1青色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立して検討することが考えられる。
図14上段のグラフ中の実線は、第1青色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合の光取り出し効率を示す。同グラフ中の点線は、第1青色発光層のみが発光し第2青色発光層が発光しない場合の光取り出し効率を示す。同グラフ中の破線は、第1青色発光層が発光せず第2青色発光層のみが発光する場合の光取り出し効率を示す。何れも、カラーフィルタ層を用いて色度補正を実施しているものとする。これによると、第1青色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合、第1の光学長が210nm以上220nm以下の範囲に光取り出し効率のピークが存在する。第1青色発光層のみが発光する場合、第1の光学長が195nm以上210nm以下の範囲に光取り出し効率のピークが存在する。第2青色発光層のみが発光する場合、第1の光学長が220nm以上240nm以下の範囲内に光取り出し効率のピークが存在する。即ち、第1青色発光層と第2青色発光層の両方が発光する場合に光取り出し効率がピークを示す第1の光学長は、第1青色発光層のみが発光する場合や第2青色発光層のみが発光する場合に光取り出し効率がピークを示す第1の光学長と異なる。従って、第1青色発光層と第2青色発光層をそれぞれ独立に最適化しても、必ずしも出射光の光取り出し効率と色度を両立できるとは限らない。本実施形態では、第1青色発光層と第2青色発光層の両方を同時に検討しているので、出射光の光取り出し効率と色度を両立できる第2の光学長の範囲を得ることができる。
【0118】
[12.光学設計のまとめ(ボトムエミッション)]
赤色サブ画素領域2R内において、第1の光学長が255nm以上300nm以下であることが望ましく、第2の光学長が60nm以上75nm以下であることが望ましい。例えば、第1の光学長を290nmとし、第2の光学長を60nmとする場合、各層の膜厚を以下の通りにしてもよい。
【0119】
赤色発光層:160nm
第1電子輸送層:35nm
電荷発生層:10nm
第2正孔輸送層:25nm
第2青色発光層:25nm
第2電子輸送層:35nm
緑色サブ画素領域2G内において、第1の光学長が250nm以上300nm以下であることが望ましく、第2の光学長が60nm以上75nm以下であることが望ましい。例えば、第1の光学長を290nmとし、第2の光学長を60nmとする場合、各層の膜厚を以下の通りにしてもよい。
【0120】
緑色発光層:160nm
第1電子輸送層:35nm
電荷発生層:10nm
第2正孔輸送層:25nm
第2青色発光層:25nm
第2電子輸送層:35nm
青色サブ画素領域2B内において、第1の光学長が210nm以上220nm以下であることが望ましく、第2の光学長が60nm以上75nm以下であることが望ましい。例えば、第1の光学長を215nmとし、第2の光学長を60nmとする場合、各層の膜厚を以下の通りにしてもよい。
【0121】
第1青色発光層:85nm
第1電子輸送層:35nm
電荷発生層:10nm
第2正孔輸送層:25nm
第2青色発光層:25nm
第2電子輸送層:35nm
本実施形態では、第1実施形態と同様に、赤色サブ画素領域2R及び緑色サブ画素領域では不要な青色光の光取り出し効率を抑制することができ、青色サブ画素領域2Bでは青色光を効率良く外部に取り出すことができる。
【0122】
本実施形態では、さらに、第1実施形態と同様、赤色サブ画素領域2R、緑色サブ画素領域2G、及び青色サブ画素領域2B内の各々に電荷発生層9が存在する。そのため、精密なシャドウマスクを用いなくても電荷発生層9を形成することができる。従って、製造コスト、生産性を更に向上することができる。
【0123】
[13.表示装置]
第1及び第2実施形態に示した有機EL表示パネルは、例えば、
図15に示すような表示装置1000に利用可能である。
図16に示すように、表示装置1000は、有機EL表示パネル100及び駆動制御回路1017を備える。有機EL表示パネル100は、例えば、第1実施形態に示した有機EL表示パネルである。駆動制御回路1017は、駆動回路1018、1019、1020、1021及び制御回路1022を備える。制御回路1022は、外部から映像信号を受け、映像信号に基づいて有機EL表示パネル100内の各TFT駆動回路に適した電圧信号に変換する。駆動回路1018、1019、1020、1021は、制御回路1022から受けた電圧信号を有機EL表示パネル100内の各TFT駆動回路に送信する。