特許第6222725号(P6222725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222725時計用歯車、脱進機構、時計用ムーブメントおよび機械式時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222725
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】時計用歯車、脱進機構、時計用ムーブメントおよび機械式時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/14 20060101AFI20171023BHJP
   G04B 13/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G04B15/14 B
   G04B13/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-154980(P2013-154980)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-25721(P2015-25721A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】幸田 雅行
(72)【発明者】
【氏名】新輪 隆
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 正洋
(72)【発明者】
【氏名】川内谷 卓磨
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−525476(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01914605(EP,A1)
【文献】 特表2012−500386(JP,A)
【文献】 実開平05−075552(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 13/02,15/14
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、
この軸部に外嵌される第1歯車および第2歯車と、
前記軸部の周囲で、かつ前記第1歯車と前記第2歯車との間に設けられ、これら第1歯車および第2歯車の軸方向の位置決めを行う座面部と、
を備え
前記軸部は、段差により縮径形成された縮径部を、少なくとも1つ有し、
前記縮径部の段差面に前記第1歯車の端面を当接させ、前記第1歯車の前記段差面とは反対側の端面に、前記座面部を設け、
前記座面部は、内側面が前記軸部の外周面から径方向に離間するように形成されていることを特徴とする時計用歯車。
【請求項2】
前記第1歯車および前記第2歯車の何れか一方に、前記座面部を一体成形したことを特徴とする請求項1記載の時計用歯車。
【請求項3】
前記座面部は、筒状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項に記載の時計用歯車。
【請求項4】
前記第1歯車および前記第2歯車の何れか一方に、前記座面部を一体成形すると共に、
前記第1歯車および前記第2歯車の何れか他方に、前記座面部に嵌合可能な嵌合部を一体成形したことを特徴とする請求項に記載の時計用歯車。
【請求項5】
前記座面部および前記嵌合部に、これら座面部と嵌合部との相対回転を防止する回り止め部を設けたことを特徴とする請求項に記載の時計用歯車。
【請求項6】
前記座面部および前記嵌合部の少なくとも何れか一方に、これら座面部と嵌合部との周方向の位置合わせを行うための誤組防止部を設けたことを特徴とする請求項または請求項に記載の時計用歯車。
【請求項7】
請求項1に記載の時計用歯車と、
前記第1歯車および前記第2歯車に噛合うアンクルと、
を備えたことを特徴とする脱進機構。
【請求項8】
請求項に記載の脱進機構を備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
【請求項9】
請求項に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする機械式時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計用歯車、脱進機構、時計用ムーブメントおよび機械式時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、機械式時計は、表輪列を構成する香箱車、二番車、三番車および四番車の回転を制御するための脱進・調速機構を備えている。脱進・調速機構は、がんぎ車と、アンクルと、てんぷとにより構成されている。がんぎ車は、軸部と軸部に外嵌固定されるがんぎ歯車部とを有している。軸部には、四番車に噛合うがんぎかな部が形成されている。そして、香箱車から二番車、三番車および四番車を介して軸部に動力が伝達され、この軸部とがんぎ歯車部とが一体となって回転する。
【0003】
一方、アンクルは、入りつめ石と出つめ石を備えており、アンクル真を中心に揺動すると、入りつめ石および出つめ石が順番にがんぎ歯車部の先端に接触する。アンクルは、てんぷによって規則的に揺動するようになっている。
がんぎ歯車部の先端に、アンクルの入りつめ石または出つめ石が接触している際、がんぎ車の回転は一時的に停止する。そして、これらの動作が連続的に繰り返されることにより、機械式時計が時を刻むことができる。
【0004】
ここで、がんぎ歯車部を2層構造とし、2つのがんぎ歯車部のうちの一方の径を、他方の径よりも小さくする技術が開示されている。これにより、がんぎ歯車部の回転トルクに対するアンクルのトルク比を大きくすることができる。また、出つめ石の厚みを、歯車が1層の場合と比較して薄くすることができる。
そして、このようながんぎ車は、軸部の径が段差により縮径形成されて3段に構成されており、2つの段差面(座面)にそれぞれがんぎ歯車部が位置決めされた状態で外嵌固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1914605号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、軸部の径が小さいので、各段差面の面積を十分確保することができない。このため、組立時や作動時の衝撃により、軸部に対してがんぎ歯車部が傾いてしまうおそれがある。このような場合、がんぎ歯車部の噛合不良が生じて伝達トルクが低下したり、がんぎ車等の動作が停止してしまったりするという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、がんぎ車等の歯車の伝達トルクの低下を防止し、歯車の動作が停止してしまうことを防止できる時計用歯車、脱進機構、時計用ムーブメントおよび機械式時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る時計用歯車は、軸部と、この軸部に外嵌される第1歯車および第2歯車と、前記軸部の周囲で、かつ前記第1歯車と前記第2歯車との間に設けられ、これら第1歯車および第2歯車の軸方向の位置決めを行う座面部と、を備え、前記軸部は、段差により縮径形成された縮径部を、少なくとも1つ有し、前記縮径部の段差面に前記第1歯車の端面を当接させ、前記第1歯車の前記段差面とは反対側の端面に、前記座面部を設け、前記座面部は、内側面が前記軸部の外周面から径方向に離間するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、軸部とは別に座面部を設けることができるので、従来よりも広い面積で各歯車の位置決めを行うことができる。また、軸部の軸心から径方向に離れた位置で各歯車の位置決めを行うことができる。このため、軸部に対して各歯車が傾いてしまうことを防止できる。よって、歯車の伝達トルクの低下を防止し、各歯車の動作が停止してしまうことを防止できる。
また、座面部を第1歯車と第2歯車とで挟み込む形になるので、座面部によって第1歯車と第2歯車との平行度を容易に高めることができる。このため、時計用歯車の組み付け精度を高めることができる。
さらに、簡素な構造で第1歯車と第2歯車の位置決めを行うことができる。ここで、軸部の段差を1段とする場合、軸部の段差を2段とする場合と比較して段差面を大きくすることができる。すなわち、第1歯車の位置決めを行う座面の面積を大きく確保することができる。このため、軸部に対する第1歯車の傾きを防止でき、かつ座面部によって第2歯車の傾きも防止できる。
【0012】
本発明に係る時計用歯車は、前記第1歯車および前記第2歯車の何れか一方に、前記座面部を一体成形したことを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、時計用歯車の部品点数を減少させることができ、製造コストを低減することが可能になる。
【0014】
本発明に係る時計用歯車の前記座面部は、筒状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、座面部の面積を十分確保することができ、軸部に対する各歯車の傾きを確実に防止できる。
【0016】
本発明に係る時計用歯車は、前記第1歯車および前記第2歯車の何れか一方に、前記座面部を一体成形すると共に、前記第1歯車および前記第2歯車の何れか他方に、前記座面部に嵌合可能な嵌合部を一体成形したことを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、各歯車の嵌合面積を増大させることができると共に、軸部の軸心から径方向外側の離れた位置で第1歯車と第2歯車とを嵌め合せることができる。このため、各歯車の嵌合箇所の摩擦トルクが増加し、衝撃等によって軸部に対して各歯車が緩んでしまうことを防止できる。
【0018】
本発明に係る時計用歯車は、前記座面部および前記嵌合部に、これら座面部と嵌合部との相対回転を防止する回り止め部を設けたことを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、第1歯車と第2歯車との相対位置がずれてしまうことを確実に防止できる。
【0020】
本発明に係る時計用歯車は、前記座面部および前記嵌合部の少なくとも何れか一方に、これら座面部と嵌合部との周方向の位置合わせを行うための誤組防止部を設けたことを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、第1歯車と第2歯車との相対位置がずれた状態で組み付けてしまう等の誤組を確実に防止できる。
【0022】
本発明に係る脱進機構は、時計用歯車と、前記第1歯車および前記第2歯車に噛合うアンクルと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、歯車の伝達トルクの低下を防止し、歯車の動作が停止してしまうことを防止できる脱進機構を提供することが可能になる。
【0024】
本発明に係る時計用ムーブメントは、脱進機構を備えたことを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、歯車の伝達トルクの低下を防止し、歯車の動作が停止してしまうことを防止できる時計用ムーブメントを提供することが可能になる。
【0026】
本発明に係る機械式時計は、時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする。
【0027】
このように構成することで、歯車の伝達トルクの低下を防止し、歯車の動作が停止してしまうことを防止できる機械式時計を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、軸部とは別に座面部を設けることができるので、従来よりも広い面積で各歯車の位置決めを行うことができる。また、軸部の軸心から径方向に離れた位置で各歯車の位置決めを行うことができる。このため、軸部に対して各歯車が傾いてしまうことを防止できる。よって、歯車の伝達トルクの低下を防止し、各歯車の動作が停止してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態における機械式時計のムーブメントを裏蓋側からみた平面図である。
図2】本発明の第1実施形態における脱進機構の斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるがんぎ車の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるがんぎ車の縦断面図である。
図5】本発明の第1実施形態における第1がんぎ歯車部の平面図である。
図6】本発明の第1実施形態における第2がんぎ歯車部の平面図である。
図7】本発明の第1実施形態におけるアンクルの斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態におけるがんぎ車の縦断面図である。
図9】本発明の第3実施形態における第1がんぎ歯車部の斜視図である。
図10】本発明の第3実施形態における第2がんぎ歯車部の斜視図である。
図11】本発明の第3実施形態における座面部にインロー嵌合部をインロー嵌合させた状態を示す説明図である。
図12】本発明の第4実施形態におけるアンクルの平面図である。
図13図12のA−A線に沿う断面図である。
図14】本発明の第4実施形態における第1アンクル体の一部拡大斜視図である。
図15】本発明の第4実施形態における第2アンクル体の一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
(機械式時計)
次に、この発明の第1実施形態について、図1図7に基づいて説明する。
図1は、機械式時計100のムーブメント101を裏蓋側からみた平面図である。
同図に示すように、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、基板を構成する地板102を有している。地板102には巻真案内孔103が形成されており、ここに巻真104が回転可能に組み込まれている。
【0031】
また、ムーブメント101の裏側(図1における紙面奥側)には、おしどり、かんぬき、およびかんぬき押さえを含む切換装置(不図示)が配置されている。この切換装置により、巻真104の軸方向の位置が決定するようになっている。
一方、ムーブメント101の表側(図1における紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車106、三番車107、二番車108、および香箱車110が配置されていると共に、表輪列105の回転を制御する脱進機構1および調速機構2が配置されている。
【0032】
香箱車110は、ぜんまい111を有しており、巻真104を回転させると不図示のつづみ車が回転し、さらにきち車、丸穴車、および角穴車(何れも不図示)を介してぜんまい111が巻き上げられるようになっている。そして、ぜんまい111が巻き戻される際の回転力により香箱車110が回転し、さらに二番車108が回転するように構成されている。
二番車108は、香箱車110の不図示の香箱歯車に噛合う二番かなと、二番歯車(何れも不図示)とを有している。二番車108が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
【0033】
三番車107は、二番車108の二番歯車に噛合う不図示の三番かなと、三番歯車(何れも不図示)とを有している。三番車107が回転すると、四番車106が回転するように構成されている。
四番車106は、三番車107の三番歯車に噛合う不図示の四番かなと、四番歯車(何れも不図示)とを有している。四番車106が回転することにより脱進機構1および調速機構2が駆動する。
【0034】
脱進機構1は、四番車106と噛み合うがんぎ車11と、このがんぎ車11を脱進させて規則正しく回転させるアンクル12とを備えている。
調速機構2は、脱進機構1を調速する機構であって、てんぷ5を有している。
そして、脱進機構1および調速機構2が駆動することにより、四番車106が1分間に1回転するように制御されると共に、二番車108が1時間に1回転するように制御される。
【0035】
(脱進機構)
(がんぎ車)
次に、図2図4に基づいて、脱進機構1について詳述する。
図2は、脱進機構1の斜視図、図3は、がんぎ車11の斜視図、図4は、がんぎ車11の縦断面図である。
図2図4に示すように、脱進機構1のがんぎ車11は、軸部13と、軸部13に外嵌固定されている第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15とを備えている。
【0036】
軸部13は、軸部本体16を有している。軸部本体16の一端側(図4における上端側)には、段差により縮径された第1縮径部16aが一体成形されており、さらに第1縮径部16aの先端に、第1ほぞ部17aが一体成形されている。また、軸部本体16の他端側(図4における下端側)には、段差により縮径された第2縮径部16bが一体成形されており、さらに第2縮径部16bの先端に、第2ほぞ部17bが一体成形されている。
【0037】
第1縮径部16aの軸径と、第2縮径部16bの軸径は、ほぼ同一に設定されている。また、第1ほぞ部17aの軸径と第2ほぞ部17bの軸径は、ほぼ同一に設定されている。
第1ほぞ部17aは、不図示の輪列受に回転自在に支持されている。一方、第2ほぞ部17bは、上述の地板102に回転自在に支持されている。
【0038】
また、軸部本体16には、軸方向略中央から第1縮径部16aに至る間に、がんぎかな部18が一体成形されている。がんぎかな部18は、四番車106の歯車部に噛合され、四番車106の回転力が軸部本体16に伝達されるようになっている。また、がんぎかな部18の直径は、軸部本体16の軸径よりも十分大きく設定されている。
【0039】
さらに、軸部本体16の軸方向略中央から第2縮径部16bに至る間は、第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15が外嵌される歯車取付部19とされている。歯車取付部19のがんぎかな部18側には、歯車取付部19の軸径よりも僅かに拡径された圧入部19aが形成されている。この圧入部19aに、第1がんぎ歯車部14が圧入されるようになっている。なお、圧入部19a軸径は、第1がんぎ歯車部14の圧入代を考慮しただけであり、ほぼ歯車取付部19と同一径といってもよい。
【0040】
図5は、第1がんぎ歯車部14の平面図である。
図4図5に示すように、第1がんぎ歯車部14は、例えば金属材料や単結晶シリコン等の結晶方位を有する材料等により形成された部材あって、電鋳加工や、フォトリソグラフィ技術のような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセス、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)、MIM(Metal Injection Molding)等により形成されている。
【0041】
第1がんぎ歯車部14は、軸部13の圧入部19aに圧入される略円環状のハブ部20を有している。ハブ部20に形成されている貫通孔20aの直径は、圧入部19aの軸径よりも若干小さくなる程度に設定されている。
ハブ部20の外周部には、径方向に沿って長くなるように略長円形状に形成された複数(この第1実施形態では10個)のスポーク部21が、周方向に等間隔で一体成形されている。そして、隣接するスポーク部21は、径方向略中央よりも根元側が連結された状態になっている。
【0042】
換言すれば、スポーク部21は、ハブ部20から放射状に延びる複数の第1スポーク部21aと、第1スポーク部21aの先端から二又状に延びる第2スポーク部21bとにより構成されている。そして、第2スポーク部21bの先端同士が連結されており、第1スポーク部21aと第2スポーク部21bとにより複数(10個)の開口部22が形成された状態になっている。
また、第2スポーク部21bの先端同士が連結された連結部21cには、歯部23が一体成形されている。歯部23は、径方向に対し、斜め外側に向かって先細りとなるように形成されている。この歯部23の先端に、アンクル12の入りつめ石45が接触するようになっている。
【0043】
ここで、ハブ部20には、略円筒状の座面部24が一体成形されている。座面部24の内径は、歯車取付部19の軸径よりも大きく設定されている。また、座面部24の端面24aは、ハブ部20の座面部24とは反対側の端面20bと略平行となるように形成されている。そして、第1がんぎ歯車部14は、軸部13の圧入部19aにハブ部20を圧入しつつ、ハブ部20の端面20bをがんぎかな部18の端面18aに当接させた状態で固定される。さらに、座面部24の端面24aに、第2がんぎ歯車部15を当接させるようになっている。
【0044】
図6は、第2がんぎ歯車部15の平面図である。
図4図6に示すように、第2がんぎ歯車部15は、例えば金属材料や単結晶シリコン等の結晶方位を有する材料等により形成された部材あって、電鋳加工や、フォトリソグラフィ技術のような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセス、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)、MIM(Metal Injection Molding)等により形成されている。
第2がんぎ歯車部15は、軸部13の歯車取付部19に圧入される略円環状のハブ部25を有している。ハブ部25に形成されている貫通孔25aの直径は、歯車取付部19の軸径よりも若干小さくなる程度に設定されている。
【0045】
ハブ部25の外周部には、径方向に沿って延出する複数(この第1実施形態では10個)のスポーク部26が、放射状に一体成形されている。スポーク部26の先端には、略環状のリム部27が一体成形されている。これにより、第2がんぎ歯車部15には、周方向に沿って複数(10個)の開口部28が形成された状態になる。
また、リム部27の外周部には、特殊な鉤型状に形成された複数(この第1実施形態では10個)の歯部29が一体成形されている。これらの歯部29も、第1がんぎ歯車部14の歯部23と同様に、径方向に対し、斜め外側に向かって突出するように形成されている。そして、各歯部29の先端に、アンクル12の出つめ石38が接触するようになっている。
【0046】
このように構成された第2がんぎ歯車部15は、軸部13の歯車取付部19にハブ部25を圧入させつつ、ハブ部25の端面25bを座面部24の端面24aに当接させる。そして、第1がんぎ歯車部14の隣接する2つの歯部23の間に、第2がんぎ歯車部15の歯部29が位置するように位相を合わせる(図2参照)。
【0047】
(アンクル)
図7は、アンクル12の斜視図である。
図2図7に示すように、アンクル12は、2つのアンクルビーム31a,31bによって平面視略L字状に形成されたアンクル体32と、アンクル体32を軸支するアンクル真33とを備えたものである。
アンクル真33は、軸部34を有している。そして、軸部34の一端(図2における上端)に、段差により縮径された第1ほぞ部35aが一体成形されている。また、軸部34の他端(図2における下端)に、段差により縮径された第2ほぞ部35bが一体成形されている。そして、第1ほぞ部35aは、不図示のアンクル受に回転自在に支持されている。一方、第2ほぞ部35bは、地板102に回転自在に支持されている。
【0048】
また、軸部34の軸方向略中央には、フランジ部36が設けられており、このフランジ部36にアンクル体32が載置された状態になっている。
アンクル体32は、電鋳加工により形成されたものであって、2つのアンクルビーム31a,31bの接続部31cに、アンクル真33の軸部34を挿通可能な挿通孔32aが形成されている。この挿通孔32aに軸部34を挿通させることにより、軸部34のフランジ部36上にアンクル体32が載置される。
なお、アンクル体32を形成する電鋳金属としては、例えば、硬度が高いクロム、ニッケル、鉄、およびこれらを含む合金で構成することができる。
【0049】
また、2つのアンクルビーム31a,31bのうち、一方のアンクルビーム31aの先端には、がんぎ車11側が開口するようにスリット37が形成されている。このスリット37に、出つめ石38が接着剤等により接着固定されている。出つめ石38は、略四角柱状に形成されたルビーであって、アンクルビーム31aの先端から第2がんぎ歯車部15に向かって突出した状態になっている。出つめ石38の先端には、第2がんぎ歯車部15の歯部29と接触する傾斜面38aが形成されている。
【0050】
さらに、2つのアンクルビーム31a,31bのうち、他方のアンクルビーム31bの先端側には、一対のクワガタ47a,47bがアンクルビーム31bの幅方向に並んで一体成形されている。一対のクワガタ47a,47bの先端部には、それぞれアンクルビーム31bの幅方向における外側から内側に向かってクワガタ47a,47bの基端側に漸次傾斜する傾斜面47a1,47b1が形成されている。
一対のクワガタ47a,47bの内側には、振り座53が回動することにより第1振り石54(何れも図2参照、後述する)が係脱するアンクルハコ39が形成される。
【0051】
ここで、アンクルハコ39の根元部39aには、略円柱状の凸部40が一体成形されており、この凸部40に剣先41が取り付けられている。剣先41は、剣先本体42と、剣先本体42の基端に一体成形された円板状の取付部43とにより構成されている。取付部43には、凸部40に圧入可能な略円筒状の嵌合部43aが一体成形されている。なお、凸部40に対して嵌合部43aを挿入嵌合とし、嵌合部43aを接着剤等により接着固定されるように構成してもよい。
【0052】
また、アンクルハコ39が形成されたアンクルビーム31bには、アンクルハコ39の基端側に、石取付孔44が形成されている。この石取付孔44に、入りつめ石45が接着剤等により接着固定されている。入りつめ石45は、略四角柱状に形成されたルビーであって、アンクルビーム31bの先端からアンクルビーム31bの厚さ方向に沿って突出した状態になっている。この突出した入りつめ石45の先端に、第1がんぎ歯車部14の歯部23が接触する。
なお、アンクルビーム31bの石取付孔44と凸部40との間には、僅かな隙間S1が形成されている。この他に、2つのアンクルビーム31a,31bには、それぞれ肉盗み部31dが形成されており、アンクル体32全体の軽量化が図られている。
【0053】
(調速機構、てんぷ)
図1図2に示すように、調速機構2のてんぷ5は、回転軸であるてん真51と、てん真51に外嵌固定されているてん輪52と、略円板状の振り座53と、不図示のひげぜんまいとを有している。てん真51の両端は、不図示のてんぷ受および地板102に回転自在に支持されている。
また、振り座53には、第1振り石54および第2振り石55が設けられている。第1振り石54は、アンクルハコ39と係脱可能になっている。また、第2振り石55は、第1がんぎ歯車部14の歯部23と接触するようになっている。
【0054】
このような構成のもと、てんぷ5は、第2振り石55を介してがんぎ車11の回転力を受け、この回転力と不図示のひげぜんまいのばね力とにより自由振動する。てんぷ5が自由振動することにより、第1振り石54と係脱可能になっているアンクルハコ39を形成する一対のクワガタ47a,47bが、アンクル真33を中心にして左右に揺動する。このとき、アンクル12の揺動範囲は、地板102に設けられている2つのドテピン61a,61bに、それぞれアンクルビーム31a,31bが接触することによって規制される。
【0055】
そして、第1がんぎ歯車部14の歯部23に入りつめ石45が接触する一方、第2がんぎ歯車部15の歯部29に出つめ石38が接触していない状態と、第1がんぎ歯車部14の歯部23に入りつめ石45が接触していない一方、第2がんぎ歯車部15の歯部29に出つめ石38が接触する状態とが、交互に繰り返し行われる。これにより、がんぎ車11が常に一定速度で回転する。
【0056】
ここで、第1がんぎ歯車部14の歯部23に、入りつめ石45や第2振り石55が接触する際、または第2がんぎ歯車部15の歯部29に、出つめ石38が接触する際、第1がんぎ歯車部14や第2がんぎ歯車部15に衝撃が加わる。また、機械式時計100の使用時における落下や振れ等の外乱によって、第1がんぎ歯車部14や第2がんぎ歯車部15に衝撃が加わる。このようなとき、がんぎ車11の軸部13に対して第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15が傾くように力が作用し、第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15が振れてしまう場合がある。
【0057】
しかしながら、第1がんぎ歯車部14のハブ部20には、座面部24が一体成形されており、この座面部24の端面24aに、第2がんぎ歯車部15のハブ部25の端面25bを当接させて第2がんぎ歯車部15の位置決めを行うように構成されている。このため、第2がんぎ歯車部15を位置決めするための座面の面積を十分確保することができる。
これに加え、がんぎ車11の歯車取付部19を、第1がんぎ歯車部14と第2がんぎ歯車部15の両者の位置決めを行うために、従来のように2段に形成する必要がない。このため、第1がんぎ歯車部14の座面となるがんぎかな部18の端面18aの面積も十分確保することができる。
【0058】
したがって、上述の第1実施形態によれば、第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15の軸方向の位置決めを行う座面の面積を十分確保することができるので、がんぎ車11を簡素な構成にしつつ、各歯車部14,15を安定して支持できる。このため、各歯車部14,15に衝撃が加わった場合であっても、これら歯車部14,15の振れを確実に防止できる。
【0059】
また、第1がんぎ歯車部14と第2がんぎ歯車部15とにより座面部24を挟み込む形になるので、座面部24によって第1がんぎ歯車部14と第2がんぎ歯車部15の平行度を容易に高めることができる。このため、がんぎ車11の組み付け精度を高めることができる。
さらに、座面部24を第1がんぎ歯車部14に一体成形することにより、がんぎ車11全体として、部品点数の増加を抑制できる。
【0060】
なお、上述の第1実施形態では、第2がんぎ歯車部15のハブ部25に形成されている貫通孔25aの直径を、軸部13の歯車取付部19の軸径よりも若干小さくなる程度に設定した場合について説明した。そして、軸部13の歯車取付部19に第2がんぎ歯車部15を圧入する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、貫通孔25aの直径を、歯車取付部19の軸径とほぼ同等か、または若干大きくなる程度に設定し、この歯車取付部19にハブ部25を挿入した後、歯車取付部19とハブ部25とを接着剤等により接着固定してもよい。
【0061】
また、上述の第1実施形態では、第1がんぎ歯車部14に座面部24を一体成形した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第2がんぎ歯車部15に座面部24を一体成形してもよいし、また、座面部24を、第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15とは別体に構成してもよい。
なお、座面部24を第1がんぎ歯車部14および第2がんぎ歯車部15とは別体に構成する場合、軸部13の歯車取付部19に、座面部24が外嵌固定されるように構成する必要がある。
【0062】
さらに、上述の第1実施形態では、座面部24を略円筒状に形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、多角形の筒状に形成してもよい。また、図5の2点鎖線で示すように、円柱形状の座面部を周方向に複数配置するようにし、それぞれの座面部を第2がんぎ歯車部15のハブ部25に当接させるように構成してもよい。
そして、上述の第1実施形態では、第1がんぎ歯車部14に、例えば10個の歯部23を設けると共に、第2がんぎ歯車部15に、例えば10個の歯部29を設ける場合について説明した。しかしながら、各がんぎ歯車部14,15の歯部23,29の歯数は、任意に設定することが可能である。
【0063】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、図8に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一の態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
図8は、第2実施形態におけるがんぎ車211の縦断面図であって、上述の第1実施形態の図4に対応している。
【0064】
同図に示すように、この第2実施形態と前述の第1実施形態との相違点は、第2実施形態におけるがんぎ車211の第2がんぎ歯車部215には、ハブ部25に、座面部24にインロー嵌合するインロー嵌合部225が一体成形されているのに対し、第1実施形態における第2がんぎ歯車部15のハブ部25には、インロー嵌合部225が形成されていない点にある。
インロー嵌合部225は、座面部24に対応するように、略円筒状に形成されており、その外径は、座面部24の内径とほぼ同一か、または若干大きくなる程度に設定されている。これにより、座面部24にインロー嵌合部225がインロー嵌合される。なお、インロー嵌合部225の外径を、座面部24の内径よりも若干小さくなる程度に設定することもできる。この場合、ハブ部25の貫通孔25aに、軸部本体16の歯車取付部19を圧入保持することにより、軸部本体16と第2がんぎ歯車部215とを一体化できる。
【0065】
したがって、上述の第2実施形態によれば、第1がんぎ歯車部14と第2がんぎ歯車部215の嵌合面積を増大させることができると共に、軸部13の軸心から径方向外側の離れた位置で第1がんぎ歯車部14と第2がんぎ歯車部215とを嵌め合せることができる。このため、各がんぎ歯車部14,215の嵌合箇所の摩擦トルクが増加し、衝撃等によって軸部13に対して各がんぎ歯車部14,215が緩んでしまうことを防止できる。
【0066】
なお、上述の第2実施形態では、第1がんぎ歯車部14に座面部24を一体成形する一方、第2がんぎ歯車部215にインロー嵌合部225を一体成形する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第2がんぎ歯車部15に座面部24を一体成形する一方、第1がんぎ歯車部14にインロー嵌合部225を一体成形するように構成してもよい。
【0067】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、図9図11に基づいて説明する。
図9は、第3実施形態における第1がんぎ歯車部314の斜視図、図10は、第3実施形態における第2がんぎ歯車部315の斜視図である。
図9図10に示すように、この第3実施形態と前述の第2実施形態との相違点は、第3実施形態の第1がんぎ歯車部314における座面部324の内周面324aの形状、および第2がんぎ歯車部315におけるインロー嵌合部325の外周面325aの形状が、それぞれ第2実施形態の座面部24およびインロー嵌合部225の形状と異なる点にある。
【0068】
より詳しくは、図9に示すように、第1がんぎ歯車部314における座面部324の内周面324aの形状は、軸方向平面視で略四角形状になっている。すなわち、座面部324の内周面324aは、4つの平坦面304aと、隣接する平坦面304aを連結する4つの円弧面304bとにより構成されている。
一方、図10に示すように、第2がんぎ歯車部315におけるインロー嵌合部325の外周面325aの形状は、座面部324の内周面324aの形状に対応するように、軸方向平面視で略四角形状になっている。すなわち、インロー嵌合部325の外周面325aは、4つの平坦面305aと、各角部に形成された平面取り部305bとにより構成されている。
【0069】
図11は、座面部324にインロー嵌合部325をインロー嵌合させた状態を示す説明図である。
図11に示すように、第1がんぎ歯車部314および第2がんぎ歯車部315は、座面部324の平坦面304aとインロー嵌合部325の平坦面305aとが当接するように、座面部324にインロー嵌合部325がインロー嵌合される。これにより、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との相対回転が規制される。
【0070】
ここで、図10図11に示すように、インロー嵌合部325の平面取り部305bには、それぞれ径方向に向かって突出する凸部305cが形成されている。凸部305cを形成することにより、座面部324の平坦面304aとインロー嵌合部325の平面取り部305bとが当接した状態でインロー嵌合されてしまうことを防止できる。つまり、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との位相がずれた状態でインロー嵌合されてしまうことを防止できる。
【0071】
なお、本実施形態では、座面部324の内周面324aおよびインロー嵌合部325の外周面325aがそれぞれ軸方向平面視で略四角形状に形成されているので、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315は、90°ずつ位相をずらした状態でインロー嵌合することが可能である。しかしながら、第1がんぎ歯車部314の歯部23の歯数は10個に設定されていると共に、第2がんぎ歯車部315の歯部29の歯数は10個に設定されている。このため、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との位相を90°ずらした状態で組み付けてしまうと、第1がんぎ歯車部314の歯部23と第2がんぎ歯車部315の歯部29との相対位置が正位置からずれてしまうので、例えば、治具等を用いて第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との位相が90°ずれた状態で組付けないようにする必要がある。
【0072】
ここで、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との位相を180°ずらした状態で組み付ける場合には、第1がんぎ歯車部314の歯部23と第2がんぎ歯車部315の歯部29との相対位置が正位置となる。
また、各がんぎ歯車部314,315の歯部23,29の歯数によっては、位相を180°ずらした場合であっても、第1がんぎ歯車部314の歯部23と第2がんぎ歯車部315の歯部29との相対位置が正位置とならない場合があることはいうまでもない。
【0073】
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第2実施形態と同様の効果に加え、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315の誤組を防止できる。
【0074】
なお、上述の第3実施形態では、第1がんぎ歯車部314における座面部324の内周面324aの形状を、軸方向平面視で略四角形状とする場合について説明した。また、第2がんぎ歯車部315におけるインロー嵌合部325の外周面325aの形状を、軸方向平面視で略四角形状とする場合について説明した。そして、これら座面部324およびインロー嵌合部325によって、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との相対回転を規制する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第1がんぎ歯車部314と第2がんぎ歯車部315との相対回転を規制可能なように、座面部324およびインロー嵌合部325を形成すればよい。例えば、座面部324およびインロー嵌合部325を、軸方向平面視で多角形状となるように形成してもよい。
【0075】
また、上述の第3実施形態では、インロー嵌合部325の平面取り部305b全てに、凸部305cを形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、4つの平面取り部305bのうち、少なくとも1箇所に凸部305cが形成されていればよい。さらに、凸部305cの形状も任意に設定することが可能である。
そして、上述の第3実施形態では、インロー嵌合部325に凸部305cを形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、座面部324の内周面324aにおける円弧面304bに凸部305cを形成してもよい。
【0076】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を、図12図15に基づいて説明する。
図12は、この第4実施形態におけるアンクル412の平面図、図13は、図12のA−A線に沿う断面図である。
図12図13に示すように、第4実施形態と第1実施形態との相違点は、第4実施形態のアンクル412の形状と、第1実施形態のアンクル12の形状とが異なる点にある。
【0077】
より詳しくは、アンクル412は、2つのアンクルビーム421a,421bによって平面視略L字状に形成された第1アンクル体422と、2つのアンクルビーム423a,423bによって平面視略L字状に形成された第2アンクル体424と、これら第1アンクル体422と第2アンクル体424とを軸支するアンクル真433とを備えている。
【0078】
アンクル真433は、軸部434を有している。そして、軸部434の一端(図13における上端)に、段差により縮径された第1ほぞ部435aが一体成形されている。また、軸部434の他端(図13における下端)に、段差により縮径された第2ほぞ部435bが一体成形されている。そして、第1ほぞ部435aは、不図示のアンクル受に回転自在に支持されている。一方、第2ほぞ部435bは、地板102(図1参照)に回転自在に支持されている。
また、軸部434の軸方向略中央にフランジ部436が設けられており、このフランジ部436に第1アンクル体422が載置された状態になっている。
【0079】
図14は、第1アンクル体422の一部拡大斜視図である。
図12図14に示すように、第1アンクル体422には、2つのアンクルビーム421a,421bの接続部421cに、断面略四角形状の嵌合凸部425が、軸部434のフランジ部436とは反対側に向かって突出形成されている。この嵌合凸部425に、第2アンクル体424が嵌合するようになっている。
また、嵌合凸部425の中央の大部分には、アンクル真433の軸部434を挿通可能な挿通孔422aが形成されている。この挿通孔422aに軸部434を挿通させることにより、軸部434のフランジ部436上に第1アンクル体422が載置される。
【0080】
また、図12に詳示するように、2つのアンクルビーム421a,421bのうち、一方のアンクルビーム421aの先端には、アンクルハコ439が一体成形されている。ここで、アンクルハコ439の根元部439aには、貫通孔440が形成されており、この貫通孔440にアンクルハコ439を構成する剣先441が取り付けられている。
剣先441は、剣先本体442と、剣先本体442の基端に一体成形された円柱状の取付凸部443とにより構成されている。この取付凸部443がアンクルハコ439の貫通孔440に挿入または圧入され、接着剤等により接着固定されている。
【0081】
この他に、アンクルハコ439が一体成形されているアンクルビーム421aには、肉盗み部421dが形成されており、第1アンクル体422全体の軽量化が図られている。
なお、2つのアンクルビーム421a,421bのうち、他方のアンクルビーム421bは、不図示のドテピンに接触し、アンクル412の揺動範囲を規制するようになっている。
【0082】
図15は、第2アンクル体424の一部拡大斜視図である。
図12図13図15に示すように、第2アンクル体424には、2つのアンクルビーム423a,423bの接続部423cに、アンクル真433の軸部434を挿通可能な挿通孔424aが形成されている。また、この挿通孔424aの周囲に、第1アンクル体422の嵌合凸部425に対応するように、略四角筒状に形成された嵌合部426が立設されている。
【0083】
そして、アンクル真433の軸部434に、第1アンクル体424の上から第2アンクル体424を挿通し、第1アンクル体422の嵌合凸部425に、第2アンクル体424の嵌合部426を外嵌させるようになっている。第2アンクル体424は、アンクル真433および第1アンクル体422に、接着剤等により接着固定される。
ここで、嵌合凸部425および嵌合部426は、それぞれ略四角形状に形成されているので、第1アンクル体422と第2アンクル体424との相対回転を規制する役割を有している。
【0084】
また、2つのアンクルビーム423a,423bの先端には、がんぎ車11(図1図2参照、図12においては不図示)側が開口するように、それぞれスリット437a,437bが形成されている。そして、アンクルビーム423aのスリット437aには、出つめ石438が接着剤等により接着固定されている一方、アンクルビーム423bのスリット437bには、入りつめ石445が接着剤等により接着固定されている。
【0085】
これら出つめ石438および入りつめ石445は、略四角柱状に形成されたルビーであって、それぞれアンクルビーム423a,423bの先端からがんぎ車11に向かって突出した状態になっている。そして、出つめ石438は、がんぎ車11における第2がんぎ歯車部15の歯部29と接触する一方、入りつめ石445は、がんぎ車11における第1がんぎ歯車部15の歯部23と接触するようになっている(何れも図12においては不図示)。
この他に、2つのアンクルビーム423a,423bには、それぞれ肉盗み部423dが形成されており、第2アンクル体424全体の軽量化が図られている。
【0086】
したがって、上述の第4実施形態によれば、第1アンクル体422に形成されている嵌合凸部425と、第2アンクル体424に形成されている嵌合部426とを嵌合させることにより、第1アンクル体422と第2アンクル体424との相対位置が決定するので、アンクル412の組み付け性を向上できる。
また、嵌合凸部425および嵌合部426は、それぞれ略四角筒状に形成されているので、第1アンクル体422と第2アンクル体424との相対位置がずれてしまうことを防止できる。このため、脱進機構1の精度不良や作動不良を防止することができる。
【0087】
なお、上述の第4実施形態では、嵌合凸部425および嵌合部426を、それぞれ略四角筒状に形成し、第1アンクル体422と第2アンクル体424との相対回転を規制する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、嵌合凸部425および嵌合部426の形状は、第1アンクル体422と第2アンクル体424との相対回転を規制可能なものであればよい。例えば、嵌合凸部425および嵌合部426を、それぞれ多角形状に形成してもよい。
【0088】
また、上述の第4実施形態では、第1アンクル体422に嵌合凸部425を形成する一方、第2アンクル体424に嵌合部426を形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第1アンクル体422に嵌合部426を形成する一方、第2アンクル体424に嵌合凸部425を形成してもよい。
【0089】
さらに、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、脱進機構1のがんぎ車11,211に座面部24,324を設けたり、インロー嵌合部225,325を設けたりする場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな歯車に座面部24,324やインロー嵌合部225,325の構成を適用することが可能である。例えば、表輪列105において、1つの軸部に少なくとも2つの歯車を嵌合固定して構成する場合、各歯車に、座面部24,324やインロー嵌合部225,325を設けることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 脱進機構
11,211 がんぎ車
12,412 アンクル
13 軸部
14,314 第1がんぎ歯車部(第1歯車)
15,215,315 第2がんぎ歯車部(第2歯車)
16 軸部本体
16a 第1縮径部(縮径部)
16b 第2縮径部(縮径部)
18 がんぎかな部
18a 端面(段差面)
24,324 座面部
100 機械式時計
101 ムーブメント(時計用ムーブメント)
225,325 インロー嵌合部(嵌合部)
304a,305a 平坦面(回り止め部)
305c 誤組防止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15