(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、本発明を電気自動車に適用した場合を例に挙げる。
【0021】
まず、本発明の電源制御装置1の構成を、
図1を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、電源制御装置1の構成を示したブロック図である。電源制御装置1は、電気自動車に搭載されている。電源制御装置1には、充電器2、降圧用のDC/DCコンバータ(以下「降圧コンバータ」という。)3、サブ制御部4、メイン制御部5、外部通信部6、および内部電源7などが備わっている。これらの各部は一体化されて、1つのケース内に収納されている(図示省略)。
【0023】
また、電源制御装置1には、電力の入力部8と出力部9、10、ならびに信号の入出力部11が設けられている。これらはコネクタなどから構成されている。
【0024】
入力部8には、ハーネスなどを介して、商用の交流電源21が接続される。交流電源21からの交流電圧の供給と停止は、普通充電装置20で制御される。普通充電装置20は、たとえばEVSE(Electric Vehicle Service Equipment)から成る。
【0025】
出力部9には、ハーネスなどを介して、高電圧バッテリ22が接続される。高電圧バッテリ22は、車両の走行モータ(図示省略)の駆動源であり、リチウムイオン電池などの二次電池から成る。高電圧バッテリ22には、別のハーネスなどを介して、急速充電装置23の給電部が接続される(
図3)。
【0026】
出力部10には、ハーネスなどを介して、低電圧バッテリ24が接続される。低電圧バッテリ24は、補機25の駆動源であり、鉛蓄電池などの二次電池から成る。補機25は、走行モータの駆動電圧より低い電圧で駆動される低電圧負荷である。補機25には、車両に備わるオーディオ、カーナビゲーションシステム、EPS(Electric Power Steering)、ABS(Antilock Brake System)などの電装品が含まれる。
【0027】
入出力部11には、ハーネスなどを介して、普通充電装置20、急速充電装置23、または車両側ECU(電子制御装置)26などの外部装置が接続される。また、入出力部11には、車両のイグニッションスイッチの出力配線と低電圧バッテリ24からの給電配線も接続される(図示省略)。車両側ECU26には、高電圧バッテリ22を管理する装置や、車両の状態を管理する装置などが含まれる。
【0028】
充電器2は、一端が入力部8に接続され、他端が出力部9に接続されている。充電器2は、外部の交流電源21から入力部8を介して供給される交流電圧(たとえばAC85〜264〔V〕)を、高電圧バッテリ22を充電するための直流電圧(たとえばDC180〜450〔V〕)に変換する。そして、充電器2は、その変換後の直流電圧を、出力部9を介して高電圧バッテリ22に出力する。
【0029】
詳しくは、充電器2は、PFC(Power Factor Correction;力率改善)回路2aと、充電用のDC/DCコンバータ(以下「充電コンバータ」という。)2bとから構成されている。PFC回路2aには、MOS−FETなどのスイッチング素子が含まれている。充電コンバータ2bには、MOS−FETなどのスイッチング素子のブリッジ回路、トランス、整流回路、および平滑回路が含まれている。
【0030】
PFC回路2aは、交流電源21から入力部8を介して入力された交流電圧を、スイッチング素子のオン・オフ動作により、たとえばDC390〔V〕に昇圧・整流し、かつ入力された電流の波形を正弦波に近づけて力率改善を行う。充電コンバータ2bは、PFC回路2aから出力された直流電圧を、スイッチング素子のオン・オフ動作により高電圧バッテリ22の充電用の直流電圧に変換する。そして、充電コンバータ2bは、変換後の直流電圧を整流回路により整流してから、出力部9を介して高電圧バッテリ22へ出力する。高電圧バッテリ22は、充電器2から出力部9を介して出力される直流電圧により充電される。このような交流電源21と充電器2による高電圧バッテリ22の充電を、普通充電という。
【0031】
サブ制御部4は、DSP(Digital Signal Processor)などのマイクロコンピュータから成り、充電器2を制御する。詳しくは、サブ制御部4は、PFC回路2aと充電コンバータ2bとに備わるスイッチング素子を、それぞれ駆動回路12a、12bによりPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)信号で駆動して、該スイッチング素子のオン・オフを制御する。サブ制御部4は、本発明の「第1制御部」の一例である。
【0032】
入力部8からPFC回路2aへの入力電圧は、電圧検出回路13aにより検出される。入力部8からPFC回路2aへの入力電流は、電流検出回路13bにより検出される。PFC回路2aから充電コンバータ2bへの出力電圧は、電圧検出回路13cにより検出される。充電コンバータ2bからの出力電流は、電流検出回路13dにより検出され、充電コンバータ2bからの出力電圧は、電圧検出回路13eにより検出される。
【0033】
各検出回路13a〜13eの検出値は、サブ制御部4に出力される。サブ制御部4は、各検出回路13a〜13eの検出値と充電器2の制御状態を示す情報とを、通信線16を介してメイン制御部5に送信する。検出回路13a〜13eは、本発明の「第2検出部」の一例である。
【0034】
高電圧バッテリ22は、充電器2を介さずに、急速充電装置23によっても充電可能である。詳しくは、急速充電装置23と高電圧バッテリ22とを接続した後(
図3)、高電圧バッテリ22は、急速充電装置23の給電部から供給される直流電圧により、上述した普通充電時よりも急速に充電される。このような急速充電装置23による高電圧バッテリ22の充電を、急速充電という。急速充電時に、充電器2およびサブ制御部4は機能しない。
【0035】
降圧コンバータ3は、一端が充電器2および出力部9に接続され、他端が出力部10に接続されている。降圧コンバータ3は、充電器2から出力される直流電圧を、補機25を駆動するための直流電圧(たとえばDC10〜15〔V〕)に変換する。そして、降圧コンバータ3は、その変換後の直流電圧を、出力部10を介して低電圧バッテリ24に出力する。
【0036】
詳しくは、降圧コンバータ3には、MOS−FETなどのスイッチング素子のブリッジ回路、トランス、整流回路、および平滑回路が含まれている。降圧コンバータ3は、充電器2の充電コンバータ2bから出力された直流電圧を、スイッチング素子のオン・オフ動作により補機25の駆動用の直流電圧に変換する。そして、降圧コンバータ3は、変換後の直流電圧を整流回路により整流してから、出力部10を介して低電圧バッテリ24へ出力する。低電圧バッテリ24は、降圧コンバータ3から出力部10を介して出力される直流電圧により充電される。補機25は、低電圧バッテリ24の電力により駆動される。
【0037】
メイン制御部5は、DSPなどのマイクロコンピュータから成り、降圧コンバータ3を制御する。詳しくは、メイン制御部5は、降圧コンバータ3に備わるスイッチング素子を、駆動回路14によりPWM信号で駆動して、該スイッチング素子のオン・オフを制御する。メイン制御部5は、本発明の「第2制御部」の一例である。
【0038】
充電器2の充電コンバータ2bから降圧コンバータ3への入力電流は、電流検出回路15aによっても検出される。降圧コンバータ3から出力部10への出力電圧は、電圧検出回路15bにより検出される。各検出回路15a、15bの検出値は、メイン制御部5に出力される。メイン制御部5は、電流検出回路15aまたは電圧検出回路15bの検出値に基づいて、降圧コンバータ3を制御する。電圧検出回路15bは、本発明の「第1検出部」の一例である。
【0039】
外部通信部6は、一端がメイン制御部5に接続され、他端が入出力部11に接続されている。外部通信部6は、普通充電装置20や急速充電装置23と通信するためのインタフェイスと、車両側ECU26とCAN(Control Area Network)通信するための通信回路とから構成されている。
【0040】
高電圧バッテリ22の普通充電時に、メイン制御部5は、普通充電装置20から送信された交流電圧の給電情報と、車両側ECU26から送信された高電圧バッテリ22の電力情報とを、外部通信部6により受信する。そして、メイン制御部5は、それらの情報に基づいて高電圧バッテリ22を充電するための充電電流指令値を設定し、該充電電流指令値を通信線16によりサブ制御部4へ送信する。サブ制御部4は、メイン制御部5から受信した充電電流指令値に基づいて、充電器2を制御する。
【0041】
内部電源7は、充電器2、降圧コンバータ3、およびサブ制御部4などを駆動するための電源である。
【0042】
メイン制御部5には、低電圧バッテリ24などから常に電力が供給される。電源制御装置1の停止中、メイン制御部5は待機状態にある。イグニションスイッチがオンされたり、普通充電装置20、急速充電装置23が接続されたりすると、電源制御装置1は起動する。電源制御装置1が起動すると、メイン制御部5は起動して、内部電源7の電力を充電器2と降圧コンバータ3とサブ制御部4とに供給する。
【0043】
降圧コンバータ3を構成する部品の数と、充電器2の充電コンバータ2bを構成する部品の数は、同等または近い値になっている。充電コンバータ2bに加えてPFC回路2aを有する充電器2の構成部品は、降圧コンバータ3の構成部品より多くなっている。
【0044】
電源制御装置1は、回路の電位レベルによって、高圧部1次側1Aと高圧部2次側1Bと低圧部1Cとに区分される。高圧部1次側1Aと高圧部2次側1Bと低圧部1Cとは、それぞれ絶縁されている。
【0045】
高圧部1次側1Aには、入力部8、充電器2のPFC回路2a、充電コンバータ2bのトランスの1次側にある回路、サブ制御部4、駆動回路12a、12b、および検出回路13a〜13cが含まれる。高圧部2次側1Bには、充電コンバータ2bのトランスの2次側にある回路、出力部9、および降圧コンバータ3のトランスの1次側にある回路が含まれる。低圧部1Cには、降圧コンバータ3のトランスの2次側にある回路、出力部10、駆動回路14、電圧検出回路15b、メイン制御部5、外部通信部6、および入出力部11が含まれる。
【0046】
電流検出回路13dと電圧検出回路13eは、高圧部1次側1Aと高圧部2次側1Bの境界に設けられていて、高圧部1次側1Aと高圧部2次側1Bを絶縁している。電流検出回路15aは、高圧部2次側1Bと低圧部1Cの境界に設けられていて、高圧部2次側1Bと低圧部1Cを絶縁している。内部電源7は、高圧部1次側1Aと高圧部2次側1Bと低圧部1Cの境界に設けられていて、高圧部1次側1Aと高圧部2次側1Bと低圧部1Cを絶縁している。通信線16は、高圧部1次側1Aと低圧部1Cに跨っていて、高圧部1次側1Aと低圧部1Cを絶縁している。
【0047】
次に、電源制御装置1の動作を、
図2〜
図7を参照しながら説明する。
【0048】
図2は、普通充電時の電源制御装置1の動作を示した図である。
図3は、急速充電時の電源制御装置1の動作を示した図である。
図4は、車両走行時の電源制御装置1の動作を示した図である。
図5は、メイン制御部5の動作を示したフローチャートである。
図6は、サブ制御部4の動作を示したフローチャートである。
図7は、
図5および
図6の制御部間通信管理の詳細を示したフローチャートである。
【0049】
<普通充電時の動作>
電源制御装置1の起動後に、メイン制御部5は、たとえば外部通信部6により普通充電装置20との所定の通信が完了すると、
図2に示すように、入出力部11に普通充電装置20が接続され、入力部8に交流電源21が接続されたと判断する(
図5のステップS1:YES)。そして、メイン制御部5は、普通充電指令値設定処理を実行する(
図5のステップS2)。
【0050】
普通充電指令値設定処理において、メイン制御部5は、普通充電装置20から送信された交流電圧の給電情報を、外部通信部6により受信する。この交流電圧の給電情報には、たとえば電流の上限値が含まれる。また、メイン制御部5は、車両側ECU26から送信された高電圧バッテリ22の電力情報を、外部通信部6により受信する。この高電圧バッテリ22の電力情報には、高電圧バッテリ22の充電量(または高電圧バッテリ22の電圧)などが含まれる。メイン制御部5は、交流電圧の給電情報と高電圧バッテリ22の電力情報とを受信すると、これらの情報に基づいて高電圧バッテリ22を普通充電するための充電電流指令値を設定する。これらの充電指令値設定処理は、所定の周期で実行される。
【0051】
次に、メイン制御部5は、交流電源21からの給電を許可する給電指令を、外部通信部6により普通充電装置20に送信する(
図5のステップS3)。普通充電装置20は、給電指令を受信すると、交流電源21からの交流電圧の供給を開始する。
【0052】
また、メイン制御部5とサブ制御部4とが、制御部間通信管理処理を実行する(
図5のステップS4、
図6のステップS21)。制御部間通信管理処理の詳細につき、
図7を参照しながら説明する。まずメイン制御部5が、サブ制御部4に対して、PFC回路2aと充電コンバータ2bのオフ(停止)を指示するとともに、充電電流指令値を送信する(
図7のステップS31)。すると、サブ制御部4が、メイン制御部5に対して、検出回路13a〜13eにより検出した充電器2の入出力検出値(入出力電流値・電圧値)を送信するとともに、PFC回路2aと充電コンバータ2bがアイドル(準備)状態であることを示す情報を送信する(
図7のステップS32)。
【0053】
そして、メイン制御部5は、普通充電装置20と交流電源21の接続状態が継続していることを確認すると、サブ制御部4に対して、PFC回路2aのオン(駆動)を指示するとともに、充電電流指令値を送信する(
図7のステップS33)。すると、サブ制御部4が、駆動回路12aによりPFC回路2aを駆動して、検出回路13a〜13eの検出値に基づいて、PFC回路2aを制御する(
図6のステップS22)。そして、サブ制御部4は、メイン制御部5に対して、充電器2の入出力検出値を送信するとともに、PFC回路2aが制御中でかつ充電コンバータ2bがアイドル状態であることを示す情報を送信する(
図7のステップS34)。
【0054】
次に、メイン制御部5は、サブ制御部4に対して、充電コンバータ2bのオンを指示するとともに、充電電流指令値を送信する(
図7のステップS35)。すると、サブ制御部4が、駆動回路12bにより充電コンバータ2bを駆動して、検出回路13a〜13eの検出値と充電電流指令値とに基づいて、充電コンバータ2bを制御する(
図6のステップS23)。そして、サブ制御部4が、メイン制御部5に対して、充電器2の入出力検出値を送信するとともに、PFC回路2aと充電コンバータ2bが制御中であることを示す情報を送信する(
図7のステップS36)。
【0055】
上記のように、サブ制御部4がPFC回路2aと充電コンバータ2bを制御することにより、交流電源21から供給される交流電圧が、充電器2で高電圧バッテリ22の充電用の直流電圧に変換されて、高電圧バッテリ22が普通充電されて行く(
図2)。
【0056】
そして、普通充電が終了したり、電源制御装置1で異常が発生したりするまで、メイン制御部5がサブ制御部4に対して、充電電流指令値を送信し(
図7のステップS37)、サブ制御部4がメイン制御部5に対して、充電器2の入出力検出値を送信する(
図7のステップS38)。また、サブ制御部4が、PFC回路2aと充電コンバータ2bの制御を継続する。
【0057】
また、サブ制御部4がPFC回路2aと充電コンバータ2bの制御を開始すると、メイン制御部5は、降圧コンバータ3を駆動して、検出回路15a、15bの検出値に基づいて降圧コンバータ3を制御する(
図5のステップS5)。これにより、充電器2の充電コンバータ2bから出力される直流電圧が、降圧コンバータ3で補機25の駆動用の直流電圧に変換されて、低電圧バッテリ24が充電されて行く。また、補機25が、低電圧バッテリ24の電力により適宜駆動される。
【0058】
この後、メイン制御部5は、たとえば、車両側ECU26から高電圧バッテリ22が満充電状態であることを示す情報を受信したり、普通充電装置20から給電停止を示す情報を受信したりすると、普通充電が終了したと判断する(
図5のステップS6:YES)。そして、メイン制御部5は、停止処理を実行する(
図5のステップS7)。このとき、メイン制御部5は、降圧コンバータ3の制御を停止するとともに、サブ制御部4に対して、PFC回路2aと充電コンバータ2bのオフを指示する停止指令を送信する(
図7のステップS39)。
【0059】
サブ制御部4は、メイン制御部5から停止指令を受信すると(
図6のステップS24:YES)、停止処理を実行する(
図6のステップS25)。このとき、サブ制御部4は、PFC回路2aと充電コンバータ2bの制御を停止して、メイン制御部5に対して、PFC回路2aと充電コンバータ2bがアイドル状態になったことを示す情報を送信する(
図7のステップS40)。
【0060】
普通充電中に、メイン制御部5は、検出回路15a、15bの検出値などに基づいて、降圧コンバータ3の異常の有無を検出する。また、メイン制御部5は、サブ制御部4から受信した検出回路13a〜13eの検出値などに基づいて、充電器2の異常の有無を検出する。サブ制御部4も、検出回路13a〜13eの検出値などに基づいて、充電器2の異常の有無を検出する。
【0061】
普通充電が終了する前に、メイン制御部5は、降圧コンバータ3または充電器2で異常が生じたことを検出すると(
図5のステップS8:YES)、異常停止処理を実行する(
図5のステップS9)。このときも、メイン制御部5は、降圧コンバータ3を停止するとともに、サブ制御部4に対して、PFC回路2aと充電コンバータ2bのオフを指示する停止指令を送信する(
図7のステップS39)。そして、サブ制御部4が、上述したように停止処理を実行する(
図6のステップS25、
図7のステップS40)。
【0062】
また、普通充電中に、サブ制御部5が、充電器2で異常が生じたことを検出したときも(
図6のステップS26:YES)、上述したように異常停止処理または停止処理が実行される。このとき、メイン制御部4でも、充電器2で異常が生じたことが検出され、降圧コンバータ3の制御が停止される。
【0063】
<急速充電時の動作>
電源制御装置1の起動後に、メイン制御部5は、たとえば外部通信部6により急速充電装置23との所定の通信が完了すると、
図3に示すように、入出力部11と高電圧バッテリ22とに、急速充電装置23が接続されたと判断する(
図5のステップS10:YES)。そして、メイン制御部5は、急速充電指令値設定処理を実行する(
図5のステップS11)。
【0064】
急速充電指令値設定処理において、メイン制御部5は、急速充電装置23から送信された給電情報を、外部通信部6により受信する。この給電情報には、たとえば電流の上限値が含まれる。また、メイン制御部5は、車両側ECU26から送信された高電圧バッテリ22の電力情報を、外部通信部6により受信する。メイン制御部5は、急速充電装置23からの給電情報と高電圧バッテリ22の電力情報とを受信すると、これらの情報に基づいて高電圧バッテリ22を急速充電するための充電電流指令値を設定する。そして、メイン制御部5は、その充電電流指令値を外部通信部6により、急速充電装置23に送信する。これらの充電指令値設定処理は、所定の周期で実行される。
【0065】
次に、メイン制御部5は、急速充電装置23に対して給電を許可する給電指令を外部通信部6により送信する(
図5のステップS12)。急速充電装置23は、給電指令を受信すると、高電圧バッテリ22に対して直流電圧の供給を開始して、高電圧バッテリ22を急速充電して行く。このとき、メイン制御部5は、降圧コンバータ3を駆動して、検出回路15a、15bの検出値に基づいて降圧コンバータ3を制御する(
図5のステップS13)。これにより、高電圧バッテリ22から出力される直流電圧が、降圧コンバータ3で補機25の駆動用の直流電圧に変換されて、低電圧バッテリ24が充電されて行く。また、補機25が、低電圧バッテリ24の電力により適宜駆動される。そして、メイン制御部5は、急速充電が終了したり、電源制御装置1で異常が発生したりするまで、
図5のステップS11〜S14およびS16の処理を繰り返し実行する。
【0066】
その後、メイン制御部5は、たとえば、車両側ECU26から高電圧バッテリ22が満充電状態であることを示す情報を受信したり、急速充電装置23から給電停止を示す情報を受信したりすると、急速充電が終了したと判断する(
図5のステップS14:YES)。そして、メイン制御部5は、停止処理を実行する(
図5のステップS15)。このとき、メイン制御部5は、降圧コンバータ3を停止するとともに、急速充電装置23に対して給電停止を指示する停止指令を送信する。急速充電装置23は、停止指令を受信すると、高電圧バッテリ22に対する直流電圧の供給を停止して、高電圧バッテリ22の急速充電を終了する。
【0067】
急速充電中に、メイン制御部5は、検出回路15a、15bの検出値などに基づいて、降圧コンバータ3の異常の有無を検出する。また、急速充電装置23で異常が生じた場合は、異常を示す情報が急速充電装置23から外部通信部6を介してメイン制御部5に送信される。
【0068】
急速充電が終了する前に、メイン制御部5は、降圧コンバータ3または急速充電装置23で異常が生じたことを検出すると(
図5のステップS16:YES)、異常停止処理を実行する(
図5のステップS17)。このときも、メイン制御部5は、降圧コンバータ3を停止するとともに、急速充電装置23に対して給電停止を指示する停止指令を送信する。
【0069】
<車両走行時の動作>
電源制御装置1の起動後に、メイン制御部5は、たとえば車両側ECU26から車速が0以外であることを示す情報を外部通信部6により受信すると、車両が走行中であると判断する(
図5のステップS18:YES)。そして、メイン制御部5は、降圧コンバータ3を駆動して、検出回路15a、15bの検出値に基づいて降圧コンバータ3を制御する(
図5のステップS19)。これにより、
図4に示すように、高電圧バッテリ22から出力される直流電圧が、降圧コンバータ3で補機25の駆動用の直流電圧に変換されて、低電圧バッテリ24が充電されて行く。また、補機25が、低電圧バッテリ24の電力により適宜駆動される。このとき、メイン制御部5は、車両側ECU26から送信された高電圧バッテリ22の電力情報を、外部通信部6により受信する。
【0070】
上記実施形態によると、降圧コンバータ3を制御するメイン制御部5が、外部の普通充電装置20から受信した交流電流の給電情報と、車両側ECU26から受信した高電圧バッテリ22の電力情報とに基づいて、高電圧バッテリ22を充電するための充電電流指令値を設定している。そして、メイン制御部5は、その充電電流指令値を、充電器2を制御するサブ制御部4へ送信する。つまり、充電器2の制御に必要な処理の一部をメイン制御部5が担うので、メイン制御部5とサブ制御部4の負荷の差を減少させることができる。その結果、サブ制御部4において処理を高速に行うことが可能となる。
【0071】
また、上記実施形態では、電源制御装置1の起動後に、メイン制御部5が内部電源7の電力を、充電器2とサブ制御部4と降圧コンバータ3とに供給している。つまり、サブ制御部4より負荷が少ないメイン制御部5が、電源制御装置1の各部への給電動作を担うので、サブ制御部4とメイン制御部5との負荷の差をより減少させることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、高電圧バッテリ22の普通充電時に、メイン制御部5が、普通充電装置20への給電指令の送信と充電電流指令値の設定とを担っている。そして、高電圧バッテリ22の急速充電時に、メイン制御部5が、急速充電装置23への給電指令の送信と充電電流指令値の設定とを担っている。このため、メイン制御部5の役割を増やして、サブ制御部4の負荷を軽減し、サブ制御部4とメイン制御部5との負荷の差をより減少させることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、充電器2に対して入出力される電流または電圧を検出回路13a〜13eにより検出し、サブ制御部4がその検出値と充電器2の制御状態とをメイン制御部5に送信している。このため、メイン制御部5は、サブ制御部4から受信したそれらの情報に基づいて、充電器2の異常の有無を判断することができる。なお、上記実施形態では、メイン制御部5が外部から受信した交流電流の給電情報と高電圧バッテリ22の電力情報とに基づいて普通充電用の充電電流指令値を設定しているが、他の例として、検出回路13a〜13eの検出値も利用して、充電電流指令値を設定することもできる。
【0074】
また、上記実施形態では、メイン制御部5が、降圧コンバータ3や充電器2などの異常を検出したときに、降圧コンバータ3を停止するとともに、サブ制御部4に停止指令を送信している。そして、サブ制御部4は、充電器2の異常を検出したとき、またはメイン制御部5から停止指令を受信したときに、充電器2を停止している。このため、異常検出に伴うメイン制御部5の役割を増やして、サブ制御部4の負荷をより軽減することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、電源制御装置1の高圧部1次側1Aに、入力部8、充電器2の一部(トランスの1次側にある回路)、サブ制御部4、駆動回路12a、12b、および検出回路13a〜13cが設けられている。このため、充電器2のPFC回路2aや充電コンバータ2bに備わるスイッチング素子、駆動回路12a、12b、および検出回路13a〜13cを、サブ制御部4に接続するための配線長を短くすることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、高圧部2次側1Bに、充電器2の残部(トランスの2次側にある回路)、出力部9、および降圧コンバータ3の一部(トランスの1次側にある回路)が設けられている。さらに、低圧部1Cに、降圧コンバータ3の残部(トランスの2次側にある回路)、出力部10、駆動回路14、電圧検出回路15b、メイン制御部5、外部通信部6、および入出力部11が設けられている。このため、降圧コンバータ3のトランスの2次側にある回路とメイン制御部5とを接続するための配線長を短くすることができる。さらに、メイン制御部5と外部通信部6が低圧部1Cにあるため、高電圧によりノイズが生じて、車両側ECU26や普通充電装置20、急速充電装置23との通信に支障が生じるのを防止することができる。
【0077】
さらに、上記実施形態では、メイン制御部5が、検出回路15a、15bの検出値に基づいて、降圧コンバータ3を制御している。このため、降圧コンバータ3の動作をフィードバック制御して、補機25を駆動するための直流電圧を精度良く生成し、補機25を安定に駆動することができる。
【0078】
本発明では、以上述べた以外にも、種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、検出回路13a〜13eの検出値などに基づいて、サブ制御部4とメイン制御部5が充電器2の異常を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえばメイン制御部5が充電器2の異常を検出し、サブ制御部4では充電器2の異常を検出しないようにして、サブ制御部4の負荷を一層軽減してもよい。
【0079】
また、以上の実施形態では、普通充電と急速充電が可能な高電圧バッテリ22を例に示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば、普通充電だけが可能な高電圧バッテリを用いてもよい。また、低電圧バッテリ24を介さず、降圧コンバータ3から出力される直流電圧を補機25に供給してもよい。
【0080】
さらに、以上の実施形態では、電気自動車などに搭載される電源制御装置1に本発明を適用した例を挙げたが、本発明は、たとえばハイブリッドカーなどの他の車両や、各種機器に搭載される電源制御装置にも適用することができる。