(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多層基板の側面に形成された前記接地導体と前記層間接続導体との間隔は、前記多層基板に形成される中間接地導体面と表面接地導体面との間隔の1/2よりも少ない間隔を有する、請求項1ないし3の何れか一項に記載の回路構造体。
【背景技術】
【0002】
トリプレート構造は、高周波回路で多く用いられている。また、多層基板の各層を用いてトリプレート構造のトリプレートラインを形成する構造が多く検討されている。
【0003】
トリプレート構造は、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
特許文献1は、トリプレート構造相互を接合するトリプレートストリップライン形基板間接続素子を記載している。このトリプレートストリップライン形基板間接続素子は、4層で構成される多層基板の1層−2層間と3層−4層間にそれぞれ形成されるストリップ導体相互をスルーホールメッキ(ビア)で接合している。
【0005】
また、特許文献2は、第1のトリプレート線路と、第2のトリプレート線路とのトリプレート線路層間接続器(構造)を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多層基板を用いたトリプレート構造は、様々な高周波回路で用いられている。
【0008】
また、高周波回路に求められる要求も多岐にわたる。その中でも、例えば、マイクロストリップアンテナの広帯域化や高機能化のために、素子間隔を狭くする要求がより強まりつつある。昨今の要求では、従前のマイクロストリップアンテナに対する直列給電に加えて、並列給電にも対応する要求が高まりつつある。このことも、素子間隔を狭くする要求に繋がっている。また、例えば多層基板内で更なる多層化を図れば、異なる層のライン相互を接続するために、多くの接続用スペースが必要となる。結果、基板の多層化に伴い、設計や製造上の様々な制約がトリプレート構造周囲にも強く影響する。
【0009】
例えば、特許文献1に記載されたトリプレートストリップライン形基板間接続素子では、2層以上のトリプレート構造を均一に接合することが困難である。
【0010】
また、特許文献2に記載されたトリプレート構造は、2層以上のトリプレート構造を有して、トリプレートライン相互を導体で接続する構造及び手法を開示していない。
【0011】
また、トリプレート構造に関する構成要素として、エネルギー損失を抑える構造要素を適切に配置する必要がある場合がある。発明者は、複数のトリプレート構造を有する多層基板構造において 異なる層のトリプレートライン相互を導体で接続した回路構造にも、今後この構造要素が求められるものと想定する。
【0012】
特許文献1には、複数層のトリプレートラインを接続するスルーホール部分でのこの構造要素について想定されていない。また、特許文献2には、トリプレートライン相互を導体で接続する構造部分を開示しておらず、この構造要素について想定されていない。
【0013】
本発明は、上記想定に基づいて成されたものであり、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造において、専有面積を少なく良好な回路特性を維持する回路構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に係る回路構造体は、第1乃至第N(Nは2以上の整数)の平面導体をそれぞれ含む第1乃至第Nのトリプレート構造体を多層化してなる多層基板と、前記第1乃至第Nの平面導体相互を接続する層間接続導体と、前記層間接続導体に対して略平行でかつ近傍にある前記多層基板の側面に形成された側面接地導体と、を含み、
第n(1≦n≦N)のトリプレート構造体は、第nの平面導体と、該第nの平面導体を挟む第n及び第(n+1)の平面接地導体と、を含む第nのトリプレートラインから成り、前記第1乃至第Nの平面導体間にある、第m(2≦m≦N)の平面接地導体は、前記層間接続導体が通過する切欠きを持ち、該切欠きの一辺は前記側面接地導体に接触した構造を有して、前記層間接続導体と前記側面接地導体とを高周波回路として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造において、専有面積を少なく良好な回路特性を維持する回路構造体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一実施形態の回路構造体を示した説明図である。
図1(a)は、2層トリプレート構造を有する4層基板を示した斜視図である。
図1(b)から
図1(d)は、3方向の断面図である。
【0019】
本実施形態では、2層トリプレート4層基板に平行平板伝送モードの広帯域線路を形成している。この線路は、アンテナへの給電回路や高周波回路として用いることができる。
【0020】
2層のトリプレート構造体となる多層基板1には、各層にトリプレートライン(線路)を構成する平面導体と接地導体面とがそれぞれ形成されている。また、多層基板1には、側面(
図1(a)の奥側面)に側面接地導体2が形成されている。
【0021】
この多層基板1に設けられる側面接地導体2は、後述する層間接続導体3と略並行な関係に維持される。側面接地導体2は、側面全体を覆うように設けられても良いし、層間接続導体3の周囲に限定して設けてもよい。少なくとも側面接地導体2は、層間接続導体3を側面に投影した際にその部分を覆う大きさの面積の大きさを有することが望ましい。
【0022】
多層基板1の内層には、トリプレートラインとなる複数の平面導体4が設けられている。各層の平面導体4は、層間接続導体3を介して接続されている。
【0023】
説明上、図面上方の平面導体4を上方トリプレートライン導体、図面下方の平面導体4を下方トリプレートライン導体、層間接続導体3を層間接続ラインと呼ぶ。
【0024】
層間接続導体3は、多層基板1の異なる層に形成される平面導体4相互(上方トリプレートライン導体と下方トリプレートライン導体)を高周波特性を維持しつつ接続する役割を果たしている。
【0025】
本実施形態では、多層基板1の2層目と3層目の間の層に(トリプレートライン導体となる複数の平面導体4に挟まれた層に)、層間接続導体3部分を抜いた1つの接地導体層が設けられている。この接地導体層は、上方のトリプレート構造と、下方のトリプレート構造で接地導体面として共用されている。説明上、この共用される接地導体面を中間接地導体面と呼ぶ。なお、中間接地導体面を用いずに、各々のトリプレート構造がそれぞれ上方と下方の接地導体面を別々に有して回路構造部分を形成してもよい。
【0026】
本実地形態では、層間接続導体3は、平面状導体として形成されている。層間接続導体3は、トリプレートラインとなる平面導体4とインピーダンスマッチングが成された形状で形成される。層間接続導体3は、導電性材料の取り付けで該当部分を形成してもよいし、ビアなどのように導電性材料を充填して形成してもよい。
【0027】
多層基板1の側面に形成された接地導体2と層間接続導体3との間隔は、多層基板1に形成される中間接地導体面と表面接地導体面(上方面接地導体と下方面接地導体)との間隔の1/2よりも少ない間隔を有することが望ましい。好ましくは、1層の3/4程度の間隔が望ましい。換言すれば、トリプレート構造を形成するトリプレートラインと両接地導体面との間隔よりも同等か狭いことが望ましい。
【0028】
このように、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造を形成する。
この際に、回路構造体の各要素の関係を、基板側面に側面接地導体を形成し且つ層間接続導体との位置関係を高周波回路として最適化した位置関係にこの側面接地導体を配置する。このことで、回路機能を維持しつつ省スペースで異なるトリプレート構造の経路を確保できる。また、中間接地導体面に設ける切欠きの寸法を最適化設計することが可能になり、より省スペース化を図ることが可能となる。
【0029】
すなわち、本実施形態によれば、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造において、専有面積を少なく良好な回路特性を維持する回路構造体を提供できる。
【0030】
次に、本発明の別の一態様を示す。本実施形態の説明では、先に説明した実施形態と同様の部分については記載を簡略化または省略する。
【0031】
図2は、別の一実施形態の回路構造体を示した説明図である。
図2(a)は、2層トリプレート構造を有する4層基板を示した斜視図である。
図2(b)から
図2(d)は、3方向の断面図である。
図2に示した回路構造体は、
図1に示した回路構造体との違いとして、層間接続導体3をスルーホールで構成している点が異なっている。
【0032】
層間接続導体3は、図示したように円形(円柱)のスルーホールである。また、多層基板の内層に円形(円柱)のビアとして形成してもよい。
【0033】
多層基板1’には、先の実施形態と同様に、各層に平行平板モードとなるトリプレートラインと接地導体面とが形成され、側面(
図2(a)の奥側面)に接地導体2が形成されている。この接地導体2は、層間接続導体3と略並行な関係になる。
【0034】
このように、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造を形成する。この際に、基板側面に接地導体を形成し且つトリプレートライン相互を接続する導体との位置関係を高周波回路として最適化した位置関係を回路構造に持たせる。このことで、回路機能を維持しつつ省スペースで異なるトリプレート構造の経路を確保できる。また、中間接地導体面に設ける切欠きの寸法を最適化設計することが可能になり、より省スペース化を図ることが可能となる。
【0035】
すなわち、本実施形態によれば、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造において、専有面積を少なく良好な回路特性を維持する回路構造体を提供できる。
【0036】
ここで、トリプレートライン相互をスルーホールで接合した2層トリプレート4層基板の一例を示し、本発明の優位点を説明する。
【0037】
図3は、本発明と対比する一回路構造体を示した説明図である。この層間接続回路は、スルーホールを多用して基板中央付近でトリプレートライン相互を層間接続している。
【0038】
図3に示したように、トリプレ-ト構造を多層化する際に、トリプレートライン相互を接続し、その周りを別のスルーホールで囲むことにより層間の接続及びエネルギー損失を抑える構造要素を回路構造に組み込むことが可能である。
【0039】
この回路構造では、スルーホールで囲む領域及び他の回路要素との適度な間隔も必要である上、多層化すればするほど、スルーホールの形成が困難になる問題を指摘できる。また、更なる多層化を実行した場合には、上下層に対して配線を這わせることが不可能となる制約が大きく設計に影響を与え得る。換言すれば、例え層数を増やしても、高周波特性を維持しつつ、狭い領域に各回路要素を配置することに対する効率上の問題を指摘できる。
【0040】
一方で、本願発明による回路構造では、多層基板の壁面に設けた接地導体を 層間接続導体との関係で略並行面となる位置関係を維持する構造で形成することで、高周波特性を維持しつつ省スペース化が図れる。換言すれば、
図1や
図2に示した回路構造と、
図3に示した回路構造を同等の高周波特性を維持しつつ多層基板内に形成するとした場合に、
図1や
図2に示した回路構造の方が省スペースに設計できる。また、スルーホール数の低減にも寄与できる。
【0041】
以下は、同等特性を奏するであろうで
図1及び
図2に示した回路構造と
図3に示した回路構造が必要とする寸法及びスルーホール数を対比して示した一例である。
・寸法:
図3回路構造:φ4.2mmスルーホール中心(最外径φ5mm)
図1回路構造:3mm(
図1(b)の縦方向)×1.5mm(
図1(b)の横方向)
図2回路構造:3mm×3mm
・スルーホール数:
図3回路構造: 7本(スルーホール直径φ0.8mm)
図1回路構造: 0本
図2回路構造: 1本
【0042】
図4は、
図1に示した回路構造体の特性をシミュレートしたリタ−ロス特性(a)ならびに挿入損失特性(b)である。シミュレート条件は、回路寸法を15mm×20mm、ΔS=0.02をに設定してある。
【0043】
この特性図は、各層の厚さを0.762mmに設定し、多層基板内に設ける層間接続導体3と側面の接地導体4との間隔を0.765mmに設定したシミュレート結果である。このように、良好な特性を維持できている。
【0044】
次に本発明の幾つかの取りえる態様を例示する。
【0045】
図5は、本発明の回路構造の変形例1である。
図5(a)の回路構造は、更なる多層化を実施して、3層トリプレート構造を形成した態様である。
図5(b)の回路構造は、4層トリプレート構造を形成した態様である。
各々ストリップラインとなる複数の平面導体は、多層基板の異なる3層又は4層に設けられている。また、層間接続ラインとなる層間接続導体は、3層又は4層の平面導体を相互に接続する。各要素は、所望する高周波信号の分岐方向や合流方向に合わせてインピーダンスマッチングされた形状に形成される。
このように更なる多層トリプレート構造を実現する際にも、本発明はサイズ低減に有効に働く。なお、本構造は、例えば、フェーズドアレーアンテナなどで使用可能な高周波伝送経路の分岐や合流に採用できる。
【0046】
図6は、本発明の回路構造の変形例2である。
本回路構造は、層間接続導体3の側面側に各々2つずつ接地されたスルーホールを形成している。このように、層間接続導体3の周囲に、側面接地導体2と接地された所望数のスルーホールを配設する回路構造を採用してもよい。
また、スルーホールに変えて接地されたビアを側面接地導体2と共に周囲に配設する形状を採用してもよい。
【0047】
図7は、本発明の回路構造の変形例3である。
本回路構造は、トリプレートラインとなる平面導体が層ごとに異なる方向を向いている。このように回路構造を形成してもよい。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、多層基板の異なる層に複数のトリプレート構造の平面導体を有して且つ導体で接続した回路構造において、専有面積を少なく良好な回路特性を維持する回路構造体を提供できる。
【0049】
なお、本発明の具体的な構成は前述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。例えば、各々説明した変形例は適宜組み合わせて回路構造に組み入れることが可能である。
【0050】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
多層トリプレート構造体となる接地導体面とストリップ導体とを各層に有する多層基板と、
異なる層の前記ストリップ導体相互を接続する層間接続ラインとなる層間接続導体と、
前記層間接続導体に略並行面にあたる位置関係にある前記多層基板の近傍側面に形成された接地導体と、
を含む回路構造体。
【0051】
[付記2]
前記多層基板の前記複数のストリップ導体に挟まれた一層に、前記層間接続導体部分を抜いた接地導体面を有する、上記付記記載の回路構造体。
【0052】
[付記3]
前記多層基板の前記複数のストリップ導体に挟まれた一層に、前記層間接続導体部分を抜いた接地導体面を有する、上記付記記載の回路構造体。
【0053】
[付記4]
前記層間接続導体と前記多層基板の近傍側面に形成された前記接地導体との間が前記多層基板の基材と異なる誘電体で形成された、上記付記記載の回路構造体。
【0054】
[付記5]
前記層間接続導体と前記多層基板の近傍側面に形成された前記接地導体との間が前記多層基板の基材の誘電率よりもより高い誘電率を有する誘電体で形成された、上記付記記載の回路構造体。
【0055】
[付記6]
前記層間接続導体と前記多層基板の近傍側面に形成された前記接地導体との間が前記多層基板の基材の誘電率よりもより低い誘電率を有する誘電体で形成された、上記付記記載の回路構造体。
【0056】
[付記7]
前記層間接続導体と前記多層基板の近傍側面に形成された前記接地導体との間が前記多層基板の基材と異なる誘電体で形成されており、
前記多層基板の側面に形成された前記接地導体と前記層間接続導体との間隔を、前記異なる誘電体の誘電率を係数として、前記多層基板に形成されるトリプレート構造のストリップ導体と接地導体との間隔とその間の誘電率に略一致する間隔に形成された、
上記付記記載の回路構造体。