特許第6222748号(P6222748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222748円周溶接方法及びこれに用いる円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222748
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】円周溶接方法及びこれに用いる円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/028 20060101AFI20171023BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20171023BHJP
   B23K 9/035 20060101ALI20171023BHJP
   B23K 9/29 20060101ALI20171023BHJP
   B23K 37/053 20060101ALN20171023BHJP
   B23K 37/06 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   B23K9/028 N
   B23K9/028 G
   B23K9/00 501L
   B23K9/035 A
   B23K9/29 B
   !B23K37/053 D
   !B23K37/06 L
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-196365(P2015-196365)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-64774(P2017-64774A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年4月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591286823
【氏名又は名称】村田 彰久
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 彰久
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−254024(JP,A)
【文献】 特開2009−082929(JP,A)
【文献】 特開2009−195969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00− 9/32
B23K 37/00−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部材(Wa)の一端に皿状の鏡部材(Wb)を、また、胴部材(Wa)の他端に環状部材(Wc)をそれぞれ突き合せ、前記胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部及び前記胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する円周溶接方法であって、前記鏡部材(Wb)を外治具ユニット(1C)により外方から保持するステップと、前記胴部材(Wa)及び環状部材(Wc)を外治具ユニット(1C)により保持された鏡部材(Wb)側へ押圧して胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)と環状部材(Wc)とを加圧密着させるステップと、前記胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部を縮拡径自在な環状の第1裏当て治具(20)を備えた第1内治具ユニット(1A)により、また、前記胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を縮拡径自在な環状の第2裏当て治具(32)を備えた第2内治具ユニット(1B)により、それぞれ内方から保持するステップと、前記胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)と環状部材(Wc)を前記各治具ユニット(1A),(1B),(1C)により保持した状態で前記各治具ユニット(1A),(1B),(1C)と一緒にその軸線回りに回転させるステップと、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部の内周面側及び胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部の内周面側に第1内治具ユニット(1A)及び第2内治具ユニット(1B)からシールドガス(G)を供給しつつ、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部を第1TIG溶接用トーチ(7a)により、また、胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を第2TIG溶接用トーチ(8a)により、それぞれ外方から円周方向に同時に溶接してハウジングを作製するステップと、作製されたハウジングの各治具ユニット(1A),(1B),(1C)による保持状態を解除し、搬出リフターユニット(9)によりハウジングを自動的に搬出するステップとを含むことを特徴とする円周溶接方法。
【請求項2】
第1TIG溶接用トーチ(7a)及び第2TIG溶接用トーチ(8a)に、シールドガス(G)を外側と内側に分流し且つ内側のシールドガス(G)を外側のシールドガス(G)より高速で噴出させるようにシールドノズルの内側に狭窄ノズルを備えたTIG溶接用トーチをそれぞれ使用したことを特徴とする請求項1に記載の円周溶接方法。
【請求項3】
円筒状の胴部材(Wa)の一端に皿状の鏡部材(Wb)を、また、胴部材(Wa)の他端に環状部材(Wc)をそれぞれ突き合せ、前記胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部及び前記胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する際に、前記胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部を内方から保持する第1内治具ユニット(1A)と、前記胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を内方から保持する第2内治具ユニット(1B)と、前記鏡部材(Wb)を外方から保持する外治具ユニット(1C)と、前記第1内治具ユニット(1A)と第2内治具ユニット(1B)とを着脱自在に連結する連結用アダプタ(1D)とを備えた円周溶接用治具ユニット(1)であって、前記第1内治具ユニット(1A)は、胴部材(Wa)の内方に挿入される円盤状の第1ベース(19)と、第1ベース(19)に環状に配置され、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部の内周面に面接触状態で圧接する複数の第1裏当て治具片(20′)から成る縮拡径自在な環状の第1裏当て治具(20)と、第1ベース(19)と第1裏当て治具(20)との間に設けられ、第1裏当て治具(20)を縮拡径させる第1縮拡径機構(21)とを備え、また、前記第2内治具ユニット(1B)は、環状部材(Wc)の端面に間接的又は直接的に当接して環状部材(Wc)を胴部材(Wa)及び鏡部材(Wb)側へ押圧し得る円盤状の第2ベース(31)と、第2ベース(31)に環状に配置され、胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部の内周面に面接触状態で圧接する複数の第2裏当て治具片(32′)から成る縮拡径自在な環状の第2裏当て治具(32)と、第2ベース(31)と第2裏当て治具(32)との間に設けられ、第2裏当て治具(32)を縮拡径させる第2縮拡径機構(33)とを備え、更に、前記外治具ユニット(1C)は、鏡部材(Wb)が嵌合されて鏡部材(Wb)を外方から保持する皿状の凹部(45a)を形成した外治具(45)を備えていることを特徴とする円周溶接用治具ユニット。
【請求項4】
前記第1内治具ユニット(1A)、第2内治具ユニット(1B)及び連結用アダプタ(1D)に、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部の内周面側及び胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部の内周面側にシールドガス(G)を供給し得るシールドガス供給路を形成したことを特徴とする請求項3に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項5】
前記第1内治具ユニット(1A)の第1裏当て治具(20)は、第1ベース(19)の一方の側面に円周方向に等間隔ごとに配置されて第1ベース(19)の径方向へ移動自在な複数の扇形状の第1裏当て治具片(20′)から成り、各第1裏当て治具片(20′)の外周面で且つ胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ面に対向する箇所に、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部の内周面側へシールドガス(G)を流すガス溝(20a)を形成したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項6】
前記第2内治具ユニット(1B)の第2裏当て治具(32)は、第2ベース(31)の一方の側面に円周方向に等間隔ごとに配置されて第2ベース(31)の径方向へ移動自在な複数の扇形状の第2裏当て治具片(32′)から成り、各第2裏当て治具片(32′)の外周面で且つ胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ面に対向する箇所に、胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部の内周面側へシールドガス(G)を流すガス溝(32a)を形成したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項7】
前記第1内治具ユニット(1A)の第1縮拡径機構(21)は、第1ベース(19)の中心部に第1ベース(19)の軸線に沿って進退移動自在に挿通支持され、先端に鏡部材(Wb)の内面に当接するストッパー部材(26)を設けた第1シャフト(27)と、第1シャフト(27)と第1裏当て治具(20)の各第1裏当て治具片(20′)とを連動連結し、第1シャフト(27)の前進時に第1裏当て治具(20)を縮径させ、第1シャフト(27)の後退時に第1裏当て治具(20)を拡径させる複数の第1リンク部材(28)と、第1シャフト(27)を前進方向へ付勢して第1裏当て治具(20)を縮径状態に保持する第1弾性体(29)とを備えており、ストッパー部材(26)が押圧されて第1シャフト(27)が後退したときに各第1リンク部材(28)を介して第1裏当て治具(20)を拡径させ、また、ストッパー部材(26)の押圧状態が解除されたときに第1シャフト(27)が第1弾性体(29)の弾性力により前進して各第1リンク部材(28)を介して第1裏当て治具(20)を縮径させる構成としたことを特徴とする請求項3に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項8】
前記第2内治具ユニット(1B)の第2縮拡径機構(33)は、第2ベース(31)の中心部に第2ベース(31)の軸線に沿って進退移動自在に挿通支持された第2シャフト(37)と、第2シャフト(37)と第2裏当て治具(32)の各第2裏当て治具片(32′)とを連動連結し、第2シャフト(37)の前進時に第2裏当て治具(32)を拡径させ、第2シャフト(37)の後退時に第2裏当て治具(32)を縮径させる複数の第2リンク部材(38)と、第2シャフト(37)を後退方向へ付勢して第2裏当て治具(32)を縮径状態に保持する第2弾性体(39)とを備えており、第2シャフト(37)が第2弾性体(39)の弾性力に抗して前進したときに各第2リンク部材(38)を介して第2裏当て治具(32)を拡径させ、また、第2シャフト(37)が第2弾性体(39)の弾性力により後退したときに各第2リンク部材(38)を介して第2裏当て治具(32)を縮径させる構成としたことを特徴とする請求項3に記載の円周溶接用治具ユニット。
【請求項9】
円筒状の胴部材(Wa)の一端に皿状の鏡部材(Wb)を、また、胴部材(Wa)の他端に環状部材(Wc)をそれぞれ突き合せ、前記胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部及び前記胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する円周溶接装置(A)であって、前記円周溶接装置(A)は、基台(3)上に設けられ、鉛直回転自在な左回転テーブル(14b)を有する左回転ユニット(4)と、基台(3)上に左回転ユニット(4)と対向状に設けられ、鉛直回転自在な右回転テーブル(18b)を有する右回転ユニット(5)と、基台(3)に設けられ、左回転ユニット(4)又は右回転ユニット(5)の何れか一方の回転ユニットを他方の回転ユニット側へ進退移動させる走行ユニット(6)と、左回転ユニット(4)の左回転テーブル(14b)及び右回転ユニット(5)の右回転テーブル(18b)に取り付けられ、突き合された胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)と環状部材(Wc)とを保持する請求項3〜請求項8の何れかに記載の円周溶接用治具ユニット(1)と、基台(3)上に設けられ、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)の突合せ部を外方から円周溶接する上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在な第1TIG溶接用トーチ(7a)を備えた第1溶接装置(7)と、基台(3)上に設けられ、胴部材(Wa)と環状部材(Wc)の突合せ部を外方から円周溶接する上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在な第2TIG溶接用トーチ(8a)を備えた第2溶接装置(8)と、基台(3)上に設けられ、胴部材(Wa)を水平姿勢で保持すると共に、胴部材(Wa)と鏡部材(Wb)と環状部材(Wc)部材とを円周溶接して作製されたハウジングを自動的に搬出する搬出リフターユニット(9)とを備えていることを特徴とする円周溶接装置。
【請求項10】
第1TIG溶接用トーチ(7a)及び第2TIG溶接用トーチ(8a)は、何れもシールドガス(G)を外側と内側に分流し且つ内側のシールドガス(G)を外側のシールドガス(G)より高速で噴出させるようにシールドノズルの内側に狭窄ノズルを備えていることを特徴とする請求項9に記載の円周溶接装置。
【請求項11】
前記左回転ユニット(4)及び右回転ユニット(5)の何れか一方又は両方は、円周溶接用治具ユニット(1)の第2縮拡径機構(33)を作動させる駆動機構(15)を備えていることを特徴とする請求項9に記載の円周溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ステンレス鋼板等の金属材から成る円筒状の胴部材の両端に胴部材と同材質の皿状の鏡部材及び環状部材をそれぞれ突き合せ、前記胴部材と鏡部材の突合せ部及び前記胴部材と環状部材の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する円周溶接方法及びこれに用いる円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状の胴部材の一端に皿状の鏡部材を突き合せ、胴部材と鏡部材の突合せ部を外方から円周方向に溶接してハウジング等の製品を作製する円周溶接装置しては、特開平8-224693号公報(特許文献1参照)に開示された円周溶接装置が知られている。
【0003】
前記円周溶接装置は、胴部材と鏡部材とを外方から溶接しているため、作業性や操作性等は良くなるものの、胴部材と鏡部材の突合せ部を内方から保持していないので、加熱中の膨張及び冷却中の収縮によって溶接後に収縮や変形を生じ、製品の仕上り精度が著しく低下すると云う問題があった。
【0004】
一方、本件出願人は、上述した問題を解決するため、胴部材と鏡部材との突合せ部を内方から保持して円周溶接するようにした円周溶接用内治具装置及びこれを用いた円周溶接装置を開発している(特許文献2参照)。
【0005】
即ち、前記円周溶接用内治具装置及びこれを用いた円周溶接装置は、図示していないが、胴部材と鏡部材の突合せ部の内周面に面接触状態で圧接し得る縮拡径自在な環状の裏当て治具を備え、胴部材と鏡部材の突合せ部を外方から円周溶接する際に、胴部材と鏡部材の突合せ部を前記裏当て治具により内方から保持し、この状態で胴部材と鏡部材の突合せ部を外方から円周溶接するようにしているため、裏当て治具により溶接部が冷却され、溶接部の熱歪が大幅に抑制されて製品の仕上がり精度を向上させることができる。
【0006】
しかし、前記円周溶接用内治具装置及びこれを用いた円周溶接装置は、胴部材と鏡部材の二つの部材だけを突き合せて円周溶接する場合には、精度良く溶接することができるが、ハウジング等の製品が三つの部材から形成されている場合、例えば、油冷式空気圧縮機のオイルセパレータ(圧縮空気と潤滑油を分離するもの)のハウジングのように、ハウジングが円筒状の胴部材、皿状の鏡部材及び環状部材の三つの部材から形成されている場合には、三つの部材を保持することができず、その結果、三つの部材を同時に円周溶接できないと言う問題があった。
【0007】
また、三つの部材を二回に分けて円周溶接した場合には、作業工程が増えて作業性及び生産性が極めて悪くなると共に、別構造の円周溶接用内治具装置や円周溶接装置が必要になり、コスト高になると言う問題があった。しかも、三つの部材が位置ズレを起こした状態で円周溶接されることがあり、製品の仕上がり精度を著しく低下させると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−224693号公報
【特許文献2】特許第4851980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、胴部材と鏡部材と環状部材の三つの部材を加圧密着した状態で且つ同芯度を高めた状態で突き合せ保持することができると共に、この状態で三つの部材の突合せ部の内面側にシールドガスを供給しつつ、狭窄ノズルを備えた二つのTIG溶接用トーチにより三つの部材の突合せ部を外方から円周方向に同時に溶接することができ、しかも、円周溶接により作製されたハウジングを自動的に搬出することができ、作業性の向上、省力化、生産性の向上を図れると共に、高品質の安定した溶接を行えるようにした円周溶接方法及びこれに用いる円周溶接用治具ユニット及びこれを用いた円周溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る円周溶接方法は、円筒状の胴部材の一端に皿状の鏡部材を、また、胴部材の他端に環状部材をそれぞれ突き合せ、前記胴部材と鏡部材の突合せ部及び前記胴部材と環状部材の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する円周溶接方法であって、前記鏡部材を外治具ユニットにより外方から保持するステップと、前記胴部材及び環状部材を外治具ユニットにより保持された鏡部材側へ押圧して胴部材と鏡部材と環状部材とを加圧密着させるステップと、前記胴部材と鏡部材の突合せ部を縮拡径自在な環状の第1裏当て治具を備えた第1内治具ユニットにより、また、前記胴部材と環状部材の突合せ部を縮拡径自在な環状の第2裏当て治具を備えた第2内治具ユニットにより、それぞれ内方から保持するステップと、前記胴部材と鏡部材と環状部材を前記各治具ユニットにより保持した状態で前記各治具ユニットと一緒にその軸線回りに回転させるステップと、胴部材と鏡部材の突合せ部の内周面側及び胴部材と環状部材の突合せ部の内周面側に第1内治具ユニット及び第2内治具ユニットからシールドガスを供給しつつ、胴部材と鏡部材の突合せ部を第1TIG溶接用トーチにより、また、胴部材と環状部材の突合せ部を第2TIG溶接用トーチにより、それぞれ外方から円周方向に同時に溶接してハウジングを作製するステップと、作製されたハウジングの各治具ユニットによる保持状態を解除し、搬出リフターユニットによりハウジングを自動的に搬出するステップとを含むことに特徴がある。
【0011】
前記第1TIG溶接用トーチ及び第2TIG溶接用トーチに、シールドガスを外側と内側に分流し且つ内側のシールドガスを外側のシールドガスより高速で噴出させるようにシールドノズルの内側に狭窄ノズルを備えたTIG溶接用トーチをそれぞれ使用することが好ましい。
【0012】
本発明に係る円周溶接用治具ユニットは、円筒状の胴部材の一端に皿状の鏡部材を、また、胴部材の他端に環状部材をそれぞれ突き合せ、前記胴部材と鏡部材の突合せ部及び前記胴部材と環状部材の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する際に、前記胴部材と鏡部材の突合せ部を内方から保持する第1内治具ユニットと、前記胴部材と環状部材の突合せ部を内方から保持する第2内治具ユニットと、前記鏡部材を外方から保持する外治具ユニットと、前記第1内治具ユニットと第2内治具ユニットとを着脱自在に連結する連結用アダプタとを備えた円周溶接用治具ユニットであって、前記第1内治具ユニットは、胴部材の内方に挿入される円盤状の第1ベースと、第1ベースに環状に配置され、胴部材と鏡部材の突合せ部の内周面に面接触状態で圧接する複数の第1裏当て治具片から成る縮拡径自在な環状の第1裏当て治具と、第1ベースと第1裏当て治具との間に設けられ、第1裏当て治具を縮拡径させる第1縮拡径機構とを備え、また、前記第2内治具ユニットは、環状部材の端面に間接的又は直接的に当接して環状部材を胴部材及び鏡部材側へ押圧し得る円盤状の第2ベースと、第2ベースに環状に配置され、胴部材と環状部材の突合せ部の内周面に面接触状態で圧接する複数の第2裏当て治具片から成る縮拡径自在な環状の第2裏当て治具と、第2ベースと第2裏当て治具との間に設けられ、第2裏当て治具を縮拡径させる第2縮拡径機構とを備え、更に、前記外治具ユニットは、鏡部材が嵌合されて鏡部材を外方から保持する皿状の凹部を形成した外治具を備えていることに特徴がある。
【0013】
前記第1内治具ユニット、第2内治具ユニット及び連結用アダプタに、胴部材と鏡部材の突合せ部の内周面側及び胴部材と環状部材の突合せ部の内周面側にシールドガスを供給し得るシールドガス供給路を形成することが好ましい。
【0014】
前記第1内治具ユニットの第1裏当て治具は、第1ベースの一方の側面に円周方向に等間隔ごとに配置されて第1ベースの径方向へ移動自在な複数の扇形状の第1裏当て治具片から成り、各第1裏当て治具片の外周面で且つ胴部材と鏡部材の突合せ面に対向する箇所に、胴部材と鏡部材の突合せ部の内周面側へシールドガスを流すガス溝を形成することが好ましい。
【0015】
前記第2内治具ユニットの第2裏当て治具は、第2ベースの一方の側面に円周方向に等間隔ごとに配置されて第2ベースの径方向へ移動自在な複数の扇形状の第2裏当て治具片から成り、各第2裏当て治具片の外周面で且つ胴部材と環状部材の突合せ面に対向する箇所に、胴部材と環状部材の突合せ部の内周面側へシールドガスを流すガス溝を形成することが好ましい。
【0016】
前記第1内治具ユニットの第1縮拡径機構は、第1ベースの中心部に第1ベースの軸線に沿って進退移動自在に挿通支持され、先端に鏡部材の内面に当接するストッパー部材を設けた第1シャフトと、第1シャフトと第1裏当て治具の各第1裏当て治具片とを連動連結し、第1シャフトの前進時に第1裏当て治具を縮径させ、第1シャフトの後退時に第1裏当て治具を拡径させる複数の第1リンク部材と、第1シャフトを前進方向へ付勢して第1裏当て治具を縮径状態に保持する第1弾性体とを備えており、ストッパー部材が押圧されて第1シャフトが後退したときに各第1リンク部材を介して第1裏当て治具を拡径させ、また、ストッパー部材の押圧状態が解除されたときに第1シャフトが第1弾性体の弾性力により前進して各第1リンク部材を介して第1裏当て治具を縮径させる構成とすることが好ましい。
【0017】
前記第2内治具ユニットの第2縮拡径機構は、第2ベースの中心部に第2ベースの軸線に沿って進退移動自在に挿通支持された第2シャフトと、第2シャフトと第2裏当て治具の各第2裏当て治具片とを連動連結し、第2シャフトの前進時に第2裏当て治具を拡径させ、第1シャフトの後退時に第2裏当て治具を縮径させる複数の第2リンク部材と、第2シャフトを後退方向へ付勢して第2裏当て治具を縮径状態に保持する第2弾性体とを備えており、第2シャフトが第2弾性体の弾性力に抗して前進したときに各第2リンク部材を介して第2裏当て治具を拡径させ、また、第2シャフトが第2弾性体の弾性力により後退したときに各第2リンク部材を介して第2裏当て治具を縮径させる構成とすることが好ましい。
【0018】
本発明に係る円周溶接装置は、円筒状の胴部材の一端に皿状の鏡部材を、また、胴部材の他端に環状部材をそれぞれ突き合せ、前記胴部材と鏡部材の突合せ部及び前記胴部材と環状部材の突合せ部を外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製する円周溶接装置であって、前記円周溶接装置は、基台上に設けられ、鉛直回転自在な左回転テーブルを有する左回転ユニットと、基台上に左回転ユニットと対向状に設けられ、鉛直回転自在な右回転テーブルを有する右回転ユニットと、基台に設けられ、左回転ユニット又は右回転ユニットの何れか一方の回転ユニットを他方の回転ユニット側へ進退移動させる走行ユニットと、左回転ユニットの左回転テーブル及び右回転ユニットの右回転テーブルに取り付けられ、突き合された胴部材と鏡部材と環状部材とを保持する請求項3〜請求項8の何れかに記載の円周溶接用治具ユニットと、基台上に設けられ、胴部材と鏡部材の突合せ部を外方から円周溶接する上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在な第1TIG溶接用トーチを備えた第1溶接装置と、基台上に設けられ、胴部材と環状部材の突合せ部を外方から円周溶接する上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在な第2TIG溶接用トーチを備えた第2溶接装置と、基台上に設けられ、胴部材を水平姿勢で保持すると共に、胴部材と鏡部材と環状部材部材とを円周溶接して作製されたハウジングを自動的に搬出する搬出リフターユニットとを備えていることに特徴がある。
【0019】
第1TIG溶接用トーチ及び第2TIG溶接用トーチは、何れもシールドガスを外側と内側に分流し且つ内側のシールドガスを外側のシールドガスより高速で噴出させるようにシールドノズルの内側に狭窄ノズルを備えていることが好ましい。
【0020】
前記左回転ユニット及び右回転ユニットの何れか一方又は両方は、円周溶接用治具ユニットの第2縮拡径機構を作動させる駆動機構を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の円周溶接方法は、胴部材と鏡部材と環状部材を加圧密着させた状態で且つ外治具ユニット、第1内治具ユニット及び第2内治具ユニットにより同芯度を高めた状態で突き合せ保持し、この状態で胴部材と鏡部材の突合せ部の内面側及び胴部材と環状部材の突合せ部の内面側にシールドガスを供給しつつ、狭窄ノズルを備えた二つのTIG溶接用トーチにより胴部材と鏡部材の突合せ部及び胴部材と環状部材の突合せ部を外方から円周方向に同時に溶接し、円周溶接により作製されたハウジングを搬出リフターユニットにより自動的に搬出するようにしているため、溶接作業を短時間で行えて作業性の大幅な向上を図れると共に、省力化及び生産性の向上を図れ、しかも、シールドガスの供給及び狭窄ノズルを備えたTIG溶接用トーチの使用により高品質の安定した溶接を行える。
【0022】
本発明の円周溶接用治具ユニットは、胴部材と鏡部材と環状部材を一直線状に突き合せ、その突合せ部を外方から円周方向に溶接する際に、前記胴部材と鏡部材の突合せ部を内方から保持する第1内治具ユニットと、前記胴部材と環状部材の突合せ部を内方から保持する第2内治具ユニットと、前記鏡部材を外方から保持する外治具ユニットとを備えているため、三つの部材を突き合せる際に、三つの部材を内方及び外方から保持できるので、三つの部材のズレを矯正して突き合せることができると共に、三つの部材を同芯度を高めた状態で突き合せ保持することができ、三つの部材の突き合せを精度良く行うことができる。
また、本発明の円周溶接用治具ユニットは、外治具ユニットにより鏡部材を外方から保持した状態で第2内治具ユニットにより環状部材を胴部材及び鏡部材側へ押圧し得るため、三つの部材を加圧密着させることができる。
その結果、本発明の円周溶接用治具ユニットを用いれば、胴部材と鏡部材と環状部材の三つの部材を精度良く突き合せて加圧密着させた状態で円周溶接することができ、ズレや穴あき、へこみ等の溶接欠陥のない高品質のハウジングを作製することができる。
【0023】
本発明の円周溶接用治具ユニットは、胴部材と鏡部材の突合せ部及び胴部材と環状部材の突合せ部の内周面にそれぞれ面接触状態で圧接し得ると共に、それぞれシールドガスを流す第1裏当て治具及び第2裏当て治具を備えているため、円周溶接するときに裏当て治具により溶接部が冷却され、溶接部の熱歪が大幅に抑制されると共に、ビードの溶け落ちや穴あきが防止され、しかも、溶接部の酸化を防止することができる。
【0024】
本発明の円周溶接用治具ユニットは、第1内治具ユニットと第2内治具ユニットとを連結用アダプタにより着脱自在に連結しているため、胴部材の長さが変わった場合には、連結用アダプタを長さの異なるものに取り替え、これを用いて第1内治具ユニットと第2内治具ユニットとを連結すれば、胴部材の長さが変わっても、対応することができ、至極便利である。
【0025】
本発明の円周溶接装置は、上述した円周溶接用治具ユニットを備えているため、胴部材と鏡部材と環状部材の三つの部材のズレを矯正し、三つの部材を同芯度を高めた状態で精度良く突き合せ保持することができると共に、三つの部材を加圧密着させた状態で円周溶接することができ、ズレや穴あき、へこみ等の溶接欠陥のない高品質のハウジングを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る円周溶接用治具ユニットを用いた円周接装置を示し、(a)は円周溶接装置の正面図、(b)は円周溶接装置の側面図である。
図2】円周溶接装置の要部の斜視図である。
図3】円周溶接装置の要部の正面図である。
図4】左回転ユニットの斜視図である。
図5】左回転ユニットの縦断正面図である。
図6】右回転ユニットの斜視図である。
図7】走行ユニットの斜視図である。
図8】左回転ユニット及び右回転ユニットに取り付けた円周溶接用治具ユニットの縦断正面図である。
図9】同じく円周溶接用治具ユニットの平面図である。
図10】第1内治具ユニットの斜視図である。
図11】第1内治具ユニットの縦断正面図である。
図12】第1Tナットを取り付けた第1ベースの側面図である。
図13】第1裏当て治具片の斜視図である。
図14】基端側第1シャフト部及び先端側第1シャフト部の側面図である。
図15】第2内治具ユニットの斜視図である。
図16】第2内治具ユニットの縦断正面図である。
図17】第2Tナットを取り付けた第1ベースの側面図である。
図18】第2裏当て治具片の斜視図である。
図19】取り付け板の斜視図である。
図20】外治具ユニットの縦断正面図である。
図21】狭窄ノズルを備えたTIG溶接用トーチ(第1TIG溶接用トーチ及び第2TIG溶接用トーチ)の縦断正面図である。
図22】搬出リフターユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1図3は本発明の実施形態に係る円周溶接用治具ユニット1を用いた円周溶接装置Aを示し、当該円周溶接装置Aは、円筒状の胴部材Waの一端に皿状の鏡部材Wbを、また、胴部材Waの他端に環状部材Wcをそれぞれ突き合せ、前記胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部及び前記胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部をそれぞれ外方から円周方向に溶接して一端が閉塞されたハウジングを作製するものである。尚、ハウジングは、例えば、油冷式空気圧縮機の圧縮空気と潤滑油を分離するオイルセパレータのハウジングとして使用されるものである。
【0028】
前記円周溶接装置Aは、図1図3図8及び図9に示す如く、前面に昇降自在な開閉扉2aを設けたボックス状のキャビネット本体2と、キャビネット本体2内に水平姿勢で配設された平板状の基台3と、基台3上に設けられ、鉛直回転自在な左回転テーブル14bを有する左回転ユニット4と、基台3上に左回転ユニット4と対向状に設けられ、鉛直回転自在な右回転テーブル18bを有する右回転ユニット5と、基台3に設けられ、左回転ユニット4を右回転ユニット5側へ進退移動させる走行ユニット6と、左回転ユニット4の左回転テーブル14b及び右回転ユニット5の右回転テーブル18bに取り付けられ、一直線状に突き合された胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcを内方から保持すると共に、鏡部材Wbを外方から保持する円周溶接用治具ユニット1と、基台3上に設けられ、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部を外方から円周溶接する上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在な第1TIG溶接用トーチ7aを備えた第1溶接装置7と、基台3上に設けられ、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を外方から円周溶接する上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在な第2TIG溶接用トーチ8aを備えた第2溶接装置8と、基台3上に設けられ、胴部材Waを水平姿勢で保持すると共に、胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wc部材を円周溶接して作製されたハウジングを自動的に搬出する搬出リフターユニット9とを備えている。
【0029】
尚、図1及び図2において、10は操作パネル、11は圧力流量パネル、12は電装箱である。
【0030】
前記左回転ユニット4は、図4及び図5に示す如く、底板、左右の側板及び背板から成る上面が開放されたボックス状の移動台13と、移動台13に取り付けられ、ステッピングモータ14a、減速機構(図示省略)及び鉛直回転自在な環状の左回転テーブル14b14bから成る従来公知の中空ロータリーアクチュエータ14と、円周溶接用治具ユニット1を作動させる複動式のシリンダ構造に構成された駆動機構15と、円周溶接用治具ユニット1にアルゴンガス等のシールドガスGを供給するシールドガス供給管16とを備えており、左回転テーブル14bが右側(図1及び図3の右側)を向く姿勢で基台3上の左側位置に配設されている。
【0031】
前記駆動機構15は、図5に示す如く、移動台13の背板に水平姿勢で支持された筒状の外シリンダ15aと、外シリンダ15a内に外シリンダ15aの軸線回りに回転自在に支持され、左回転テーブル14bにシリンダカラー15bを介して接続されて左回転テーブル14bと一緒に回転する両面が閉塞された筒状の内シリンダ15cと、内シリンダ15c内に軸線方向へ摺動自在に挿入されたピストン15dと、ピストン15dに連設され、内シリンダ15cの一端面から外方向へ突出するロッド15eとを備えており、二つの継手15fから内シリンダ15c内に作動流体を交互に供給することによって、ピストン15d及びロッド15eが往復動し、押し金具49を介して円周溶接用治具ユニット1を作動させるようになっている。
【0032】
前記シールドガス供給管16は、図5に示す如く、移動台13の背板、内シリンダ15c、ピストン15d及びロッド15eに相対回転自在に挿通支持されており、継手15fからシールドガスGを供給するようになっている。
【0033】
前記右回転ユニット5は、図6に示す如く、底板、左右の側板及び背板から成る上面が開放されたボックス状の固定台17と、固定台17に取り付けられ、ステッピングモータ18a、減速機構(図示省略)及び鉛直回転自在な環状の右回転テーブル18bから成る従来公知の中空ロータリーアクチュエータ18とを備えており、右回転テーブル18bが左側(図1及び図3の左側)を向く姿勢で且つ左回転ユニット4の左回転テーブル14bと対向するように基台3上の右側位置に配設固定されている。尚、右回転ユニット5にも、左回転ユニット4の駆動機構15及びシールドガス供給管16と同じ構造の駆動機構15及びシールドガス供給管16を設けても良いことは勿論である。
【0034】
前記走行ユニット6は、図2図3及び図7に示す如く、左回転ユニット4を右回転ユニット5側へ進退移動させるものであり、基台3上に左右方向に沿って敷設した一対のガイドレール6aと、ガイドレール6aに走行自在に支持され、左回転ユニット4の移動台13が固定される走行台6bと、基台3上にガイドレール6aに沿って配設され、走行台6bに挿通支持されたボールネジ軸6cと、基台3の下面に設けたサーボモータ6dと、サーボモータ6dの出力軸とボールネジ軸6cとを連動連結するベルト伝動機構6eとを備えており、サーボモータ6d及びベルト伝動機構6eによりボールネジ軸6cを正逆回転させると、走行台6bがガイドレール6aに沿って往復移動し、走行台6aに固定した左回転ユニット4が右回転ユニット5側へ進退移動するようになっている。
【0035】
尚、上記の実施形態においては、走行ユニット6により左回転ユニット4を右回転ユニット5側へ進退移動させるようにしたが、他の実施形態においては、走行ユニット6により右回転ユニット5を左回転ユニット4側へ進退移動させるようにしても良く、或いは、走行ユニット6により左回転ユニット4及び右回転ユニット5の両方を進退移動させるようにしても良い。
【0036】
前記円周溶接用治具ユニット1は、図8及び図9に示す如く、胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcを一直線状に突き合せ、その突合せ部を外方から円周方向に溶接する際に用いるものであり、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部を内方から保持する第1内治具ユニット1Aと、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を内方から保持する第2内治具ユニット1Bと、鏡部材Wbを外方から保持する外治具ユニット1Cと、第1内治具ユニット1Aと第2内治具ユニット1Bとを着脱自在に連結する連結用アダプタ1Dとを備えている。
【0037】
即ち、前記第1内治具ユニット1Aは、図10及び図11に示す如く、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内方に挿入される円盤状の第1ベース19と、第1ベース19の外周縁部に環状に配置され、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で圧接する複数の第1裏当て治具片20′から成る縮拡径自在な環状の第1裏当て治具20と、第1ベース19と第1裏当て治具20との間に設けられ、第1裏当て治具20を縮拡径させる第1縮拡径機構21とを備えており、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部を外方から円周溶接する際に、環状の第1裏当て治具20を第1縮拡径機構21により真円状に拡径させて胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で圧接させ、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部を内方から保持するものである。
【0038】
具体的には、前記第1ベース19は、図12に示す如く、アルミ合金等の金属材により中心部に貫通穴19aを有する円盤状に形成されており、第1ベース19の一方の側面(第1裏当て治具20に対向する側面)には、第1Tナット22が同一円周上で且つ円周方向に等角度ごとに配置されてボルト23により固定されている。この実施形態においては、第1Tナット22は、第1ベース19の一方の側面に60度ごとに六つ配置されている。
【0039】
また、第1ベース19の他方の側面には、図11に示す如く、アルミ合金等の金属材により円盤状に形成されたベース部材24がボルトにより固定されている。このベース部材24の中心部には、中空筒状の連結軸25が螺着固定されている。尚、第1ベース19とベース部材24とは、一体的に形成しても良いことは勿論である。
【0040】
前記第1裏当て治具20は、図11に示す如く、第1ベース19の一方の側面(第1Tナット22を固定した方の側面)に円周方向に等間隔ごとに配置されて第1ベース19の径方向へ移動自在な複数の扇形状の第1裏当て治具片20′から成り、胴部材Waと鏡部材Wbを溶接する際に、各第1裏当て治具片20′の外周面が胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面に面接触状態で当接し、溶接部を冷却して溶接部の熱歪を抑制すると共に、ビードの溶け落ちや穴あきを防止し、また、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面側にシールドガスGを流して溶接部の酸化を防止するものである。
【0041】
各第1裏当て治具片20′は、図13に示す如く、熱伝導性に優れた銅材により扇形状に形成されており、各第1裏当て治具片20′の外周面には、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面側へシールドガスGを流すガス溝20aが形成されている。
【0042】
また、各第1裏当て治具片20′の第1ベース19に対向する側面には、第1ベース19に固定した各第1Tナット22がそれぞれ摺動自在に係合する断面形状がT字形のガイド溝20bが形成されている。このT字形のガイド溝20bは、第1ベース19の半径方向に沿って形成されている。これにより、各第1裏当て治具片20′は、第1ベース19の径方向へ移動自在となる。
【0043】
更に、各第1裏当て治具片20′の中心部には、第1縮拡径機構21の第1リンク部材28が回動自在に取り付けられる二股部20cが形成されている。
【0044】
そして、前記第1裏当て治具20は、上述した複数の第1裏当て治具片20′を第1ベース19の一方の側面に円周方向へ等間隔毎に配置し、各第1裏当て治具片20′のガイド溝20bを各第1Tナット22にそれぞれ摺動自在に係合することによって、環状に形成されると共に、縮拡径自在となる。この実施形態では、第1裏当て治具20は、六つの第1裏当て治具片20′から成り、各第1裏当て治具片20′が第1ベース19の一方の側面に60度ごとに配置されている。
【0045】
前記第1縮拡径機構21は、図11に示す如く、第1ベース19及びベース部材24の中心部に第1ベース19の軸線に沿って進退移動自在に挿通支持され、先端に鏡部材Wbの内面に当接するストッパー部材26を設けた第1シャフト27と、第1シャフト27と第1裏当て治具20の各第1裏当て治具片20′とを連動連結し、第1シャフト27の前進時(図11の右方向)に第1裏当て治具20を縮径させ、第1シャフト27の後退時(図11の左方向)に第1裏当て治具20を拡径させる複数の第1リンク部材28と、第1シャフト27を前進方向へ付勢して第1裏当て治具20を縮径状態に保持する第1弾性体29とを備えており、ストッパー部材26が押圧されて第1シャフト27が後退したときに各第1リンク部材28を介して第1裏当て治具20を拡径させ、また、ストッパー部材26の押圧状態が解除されたときに第1シャフト27が第1弾性体29の弾性力により前進して各第1リンク部材28を介して第1裏当て治具20を縮径させるように構成されている。
【0046】
前記第1シャフト27は、アルミ合金等の金属材により形成されており、図11及び図14に示す如く、シールドガス供給通路27a及びシールドガス噴出口27bを形成した基端側第1シャフト部27′と、基端側第1シャフト部27′の先端にボルト23により取り付けられ、外周縁部に第1縮拡径機構21の複数の第1リンク部材28が回動自在に取り付けられる二股部27cを等角度ごとに設けた円盤状の先端側第1シャフト部27″とから成る。この第1シャフト27は、第1ベース19の貫通穴19aに挿通されており、第1ベース19に固定したベース部材24に第1ベース19の軸線に沿って進退移動自在に支持されている。尚、基端側第1シャフト部27′と先端側第1シャフト部27″は、一体的に形成しても良いことは勿論である。
【0047】
また、ストッパー部材26は、アルミ合金等の金属材により鏡部材Wbの内面に面接触状態で当接する皿状に形成されており、第1シャフト27の先端に第1シャフト27に対して直交する姿勢でボルト23により固定されている。
【0048】
更に、複数の第1リンク部材28は、黄銅等の金属材により形成されており、一端部が第1裏当て治具片20′の二股部20cに第1連結ピン30を介して回動自在に連結されていると共に、他端部が第1シャフト27の二股部27cに第1連結ピン30を介して回動自在に連結されている。これにより、第1シャフト27と各第1裏当て治具片20′が第1リンク部材28を介して連動連結されることになる。
【0049】
そして、第1弾性体29は、コイルスプリングにより形成されており、ベース部材24に螺着固定した中空状の連結軸25内に収容されて第1シャフト27の基端面に弾性的に当接している。これにより、第1弾性体29は、第1裏当て治具20が縮径状態に保持されるように第1シャフト27を前進方向へ付勢保持することになる。
【0050】
前記第2内治具ユニット1Bは、図15及び図16に示す如く、環状部材Wcの一端面に間接的又は直接的に当接して環状部材Wcを胴部材Wa及び鏡部材Wb側へ押圧し得る円盤状の第2ベース31と、第2ベース31の外周縁部に環状に配置され、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面に面接触状態で圧接する複数の第2裏当て治具片32′から成る縮拡径自在な環状の第2裏当て治具32と、第2ベース31と第2裏当て治具32との間に設けられ、第2裏当て治具32を縮拡径させる第2縮拡径機構33とを備えており、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を外方から円周溶接する際に、環状の第2裏当て治具32を第2縮拡径機構33により真円状に拡径させて胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面に面接触状態で圧接させ、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を内方から保持するものである。
【0051】
具体的には、前記第2ベース31は、図17に示す如く、アルミ合金等の金属材により中心部に貫通穴31aを有する円盤状に形成されており、第2ベース31の第2裏当て治具32に対向する側面には、第2Tナット34が同一の円周上で且つ円周方向に等角度ごとに配置されてボルト23により固定されている。この実施形態においては、第2Tナット34は、第2ベース31の一方の側面に60度ごとに六つ配置されている。
【0052】
前記第2裏当て治具32は、図16に示す如く、第2ベース31の一方の側面(第2Tナット34を固定した方の側面)に円周方向に等間隔ごとに配置されて第2ベース31の径方向へ移動自在な複数の扇形状の第2裏当て治具片32′から成り、胴部材Waと環状部材Wcを溶接する際に、各第2裏当て治具片32′の外周面が胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面に面接触状態で当接し、溶接部を冷却して溶接部の熱歪を抑制すると共に、ビードの溶け落ちや穴あきを防止し、また、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面側にシールドガスGを流して溶接部の酸化を防止するものである。
【0053】
各第2裏当て治具片32′は、図18に示す如く、熱伝導性に優れた銅材により扇形状に形成されており、各第2裏当て治具片32′の外周面には、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面側へシールドガスGを流すガス溝32aが形成されていると共に、各第2裏当て治具片32′の一方の側面には、前記ガス溝32aに連通するガス供給孔32cが形成されている。
【0054】
また、各第2裏当て治具片32′の第2ベース31に対向する側面には、図16及び図19に示す如く、アルミ合金等の金属材により扇形状に形成された取り付け板35がボルト及びキー部材36を介して固定さていると共に、当該取り付け板35の第2ベース31に対向する側面には、第2ベース31に固定した各第2Tナット34がそれぞれ摺動自在に係合する断面形状がT字形のガイド溝35aが形成されている。このT字形のガイド溝35aは、第2ベース31の半径方向に沿って形成されている。これにより、各第2裏当て治具片32′は、各取り付け板35を介して第2ベース31の径方向へ移動自在となる。
【0055】
更に、各第2裏当て治具片32′の中心部には、第2縮拡径機構33の第2リンク部材38が回動自在に取り付けられる凹部32bが形成されている。尚、第2裏当て治具片32′と取り付け板35とは、一体的に形成しても良いことは勿論である。
【0056】
そして、第2裏当て治具32は、上述した複数の第2裏当て治具片32′を第2ベース31の一方の側面に円周方向へ等間隔毎に配置し、各第2裏当て治具片32′に取り付けた取り付け板35のガイド溝35aを各第2Tナット34にそれぞれ摺動自在に係合することによって、環状に形成されると共に、縮拡径自在となる。この実施形態では、第2裏当て治具32は、六つの第2裏当て治具片32′から成り、各第2裏当て治具片32′が第2ベース31の一方の側面に60度ごとに配置されている。
【0057】
前記第2縮拡径機構33は、図16に示す如く、第2ベース31の中心部に第2ベース31の軸線に沿って進退移動自在に挿通支持された第2シャフト37と、第2シャフト37と第2裏当て治具32の各第2裏当て治具片32′とを連動連結し、第2シャフト37の前進時(図16の右方向)に第2裏当て治具32を拡径させ、第2シャフト37の後退時(図16の左方向)に第2裏当て治具32を縮径させる複数の第2リンク部材38と、第2シャフト37を後退方向へ付勢して第2裏当て治具32を縮径状態に保持する第2弾性体39とを備えており、第2シャフト37が第2弾性体39の弾力に抗して前進したときに各第2リンク部材38を介して第2裏当て治具32を拡径させ、また、第2シャフト37が第2弾性体39の弾性力により後退したときに各第2リンク部材38を介して第2裏当て治具32を縮径させるように構成されている。
【0058】
前記第2シャフト37は、アルミ合金等の金属材により形成されており、第2ベース31の貫通穴31aに挿通支持されている。この第2シャフト37には、シールドガス供給通路37a及びシールドガス噴出口37bが形成されていると共に、第2シャフト37の外周面には、第2縮拡径機構33の第2リンク部材38が回動自在に取り付けられる凹部37cが等角度ごとに設けられている。この各凹部37cは、第2シャフト37の軸線方向へ交互に偏倚した状態で第2シャフト37の外周面に配置されている。
【0059】
また、複数の第2リンク部材38は、黄銅等の金属材により形成されており、一端部が第2裏当て治具片32′の凹部32bに第2連結ピン40を介して回動自在に連結されていると共に、他端部が第2シャフト37の凹部37cに第2連結ピン40を介して回動自在に連結されている。これにより、第2シャフト37と各第2裏当て治具片32′が第2リンク部材38を介して連動連結されることになる。
【0060】
更に、第2弾性体39は、コイルスプリングにより形成されており、第2シャフト37の基端面に螺着した筒状のスプリング受け41と第2ベース31の他方の側面との間に介設されている。これにより、第2弾性体39は、第2裏当て治具32が縮径状態に保持されるように第2シャフト37を後退方向へ付勢保持することになる。
【0061】
前記外治具ユニット1Cは、図20に示す如く、鏡部材Wbを外方から保持するものであり、右回転ユニット5の右回転テーブル18bにボルトにより固定された外治具用ベース42と、外治具用ベース42に嵌合支持された外治具用ベースアダプタ43と、外治具用ベースアダプタ43に嵌合支持された外治具用フランジ44と、外治具用フランジ44にボルト23により固定され、鏡部材Wbが嵌合されて鏡部材Wbを外方から保持する皿状の凹部45aを形成した外治具45とを備えている。
【0062】
具体的には、前記外治具用ベース42は、アルミ合金等の金属材により円盤状に形成されており、右回転ユニット5の右回転テーブル18bの中心部に嵌合されてボルトにより固定されている。この外治具用ベース42の前面中心部には、嵌合用凸部42aが突出形成されていると共に、外治具用ベース42の前面には、複数のホルダ付マグネット46が埋設固定されている。
【0063】
前記外治具用ベースアダプタ43は、アルミ合金等の金属材により両端部にフランジ部43aを有する軸状に形成されており、一端面に嵌合用凸部43bが形成されていると共に、他端面に外治具用ベース42の嵌合用凸部42aに着脱自在に嵌合される嵌合用凹部43cが形成されている。この外治具用ベースアダプタ43の嵌合用凸部43b側のフランジ部43aの側面には、複数のホルダ付マグネット46が埋設固定されている。
【0064】
前記外治具用フランジ44は、アルミ合金等の金属材により環状に形成されており、外治具用アダプタ43の嵌合用凸部43bに着脱自在に嵌合支持されている。この外治具用フランジ44には、外治具用ベースアダプタ43のホルダ付マグネット46又は外治具用ベース42のホルダ付マグネット46に対向する複数のストップピン47が埋設固定されている。
【0065】
前記外治具45は、熱伝導性に優れた銅材により鏡部材Wbの長さよりも厚い円盤状に形成されており、一方の側面には、鏡部材Wbが密着状態で嵌合される皿状の凹部45aが形成されている。この外治具45は、外治具用フランジ44の前面にボルト23により固定されている。尚、外治具45と外治具用フランジ44とは、一体的に形成しても良いことは勿論である。
【0066】
そして、前記外治具ユニット1Cは、右回転ユニット5の右回転テーブル18bの中心部に水平姿勢で取り付けられており、外治具45の凹部45aに鏡部材Wbを保持した状態で右回転テーブル18bと一緒に軸線回りに回転するようになっている。
【0067】
尚、外治具用ベースアダプタ43は、胴部材Waの長さに応じて長さの異なる外治具用ベースアダプタ43が複数用意されており、長さの異なるハウジングを作製する場合に、外治具用ベースアダプタ43を胴部材Waの長さに対応するもの取り替え、胴部材Wa、鏡部材Wb及び環状部材Wcを円周溶接する際に胴部材Waの位置が常に一定位置になるようにしている。また、胴部材Waがかなり長い場合には、外治具用ベースアダプタ43を省略し、外治具用ベース42の嵌合用凸部42aを直接外治具用フランジ44に嵌合し、外治具用ベースアダプタ43を省略した外治具ユニット1Cを右回転テーブル18bにより水平姿勢で支持するようにしても良い。
【0068】
前記連結用アダプタ1Dは、アルミ合金等の金属材により軸状に形成されており、一端部が第1内治具ユニット1Aのベース部材24に螺着固定した中空筒状の連結軸25に着脱自在に螺着されていると共に、他端部が第2内治具ユニット1Bの第2シャフト37の先端部に着脱自在に螺着されている(図8図11図16参照)。
【0069】
また、連結用アダプタ1Dには、シールドガス供給通路1dが形成されており、連結用アダプタ1Dにより第1内治具ユニット1Aと第2内治具ユニット1Bを連結したときに連結用アダプタ1Dのシールドガス供給通路1dと第1シャフト27のシールドガス供給通路27aと第2シャフト37のシールドガス供給通路37aとがそれぞれ連通状態になるようになっている。
【0070】
更に、連結用アダプタ1Dは、胴部材Waの長さに応じて長さの異なる連結用アダプタ1Dが複数用意されており、長さの異なるハウジングを作製する場合に、連結用アダプタ1Dを胴部材Waの長さに対応するもの取り替え、第1内治具ユニット1Aと第2内治具ユニット1Bとを取り替えた連結用アダプタ1Dにより連結すれば、第1内治具ユニット1Aが胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内方に、また、第2内治具ユニット1Bが胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内方にそれぞれ位置することになり、長さの異なるハウジングを作製することができる。
【0071】
そして、連結用アダプタ1Dにより連結した第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bは、図8に示す如く、左回転ユニット4の左回転テーブル14bに内治具用ベースアダプタ48を介して水平姿勢で取り付けられている。
【0072】
前記内治具用ベースアダプタ48は、両端部にフランジ部48aを有する筒状に形成されており、一方のフランジ部48aが左回転テーブル14bの前面にボルトにより固定され、他方のフランジ部48aが第2内治具ユニット1Bの第2ベース31にボルトにより固定されている。これにより、連結用アダプタ1Dにより連結された第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bは、左回転テーブル14bに水平姿勢で取り付けられることになる。このとき、第1内治具ユニット1Aの軸線と第2内治具ユニット1Bの軸線と外治具ユニット1Cの軸線とが合致するようになっている。
【0073】
また、連結用アダプタ1Dにより連結した第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bを左回転ユニット4の左回転テーブル14bに取り付けたときには、左回転ユニット4の駆動機構15と第2内治具ユニット1Bの第2縮拡径機構33とを押し金具49により連動連結し、駆動機構15により第2縮拡径機構33を作動させることができるようにする。
【0074】
前記押し金具49は、パイプ状に形成されており、一端部がシールドガス供給管16に外嵌されて駆動機構15のロッド15e先端に当接し、他端部がスプリング受け41に嵌合されている(図5図8図16参照)。従って、駆動機構15のピストン15d及びロッド15eが前進すると、押し金具49が軸線方向へ押され、第2内治具ユニット1Bの第2縮拡径機構33の第2シャフト37を前進させ、これに伴って第2裏当て治具32が拡径するようになっている。
【0075】
尚、前記内治具用ベースアダプタ48及び押し金具49は、胴部材Waの長さに応じて長さの異なる内治具用ベースアダプタ48及び押し金具49が複数用意されており、長さの異なるハウジングを作製する場合に、内治具用ベースアダプタ48及び押し金具49を胴部材Waの長さに対応するもの取り替え、胴部材Wa、鏡部材Wb及び環状部材Wcに対して第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bの移動ストロークが一定になるようにしている。また、胴部材Waがかなり長い場合には、内治具用ベースアダプタ48を省略し、第2治具ユニットの第2ベース31を左回転テーブル14bの前面にボルトにより直接固定し、左回転テーブル14bにより第1内治具ユニット1Aと第2内治具ユニット1Bを直接水平姿勢で支持するようにしても良い。
【0076】
そして、前記円周溶接用治具ユニット1を構成する第1内治具ユニット1A、第2内治具ユニット1B及び連結用アダプタ1Dには、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面側及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面側にシールドガスGを供給し得るシールドガス供給路が形成されている。
【0077】
前記シールドガス供給路は、第2シャフト37に形成したシールドガス供給通路37a及びシールドガス噴出口37b、隣接する第2裏当て治具片32′間に形成された隙間、各第2裏当て治具片32′に形成したガス溝32a及びガス供給孔32c、連結用アダプタ1Dに形成したシールドガス供給通路1d、第1シャフト27に形成したシールドガス供給通路27a及びシールドガス噴出口27b、隣接する第1裏当て治具片20′間に形成された隙間、各第1裏当て治具片20′に形成したガス溝20a等から成る。
【0078】
前記シールドガス供給路によれば、シールドガス供給管16から供給されたシールドガスGは、パイプ状の押し金具49を通って第2シャフト37のシールドガス供給通路37aに流入し、第2シャフト37のシールドガス噴出口37bから胴部材Waの内部空間に噴出される。また、第2シャフト37のシールドガス供給通路37aに流入した一部のシールドガスGは、連結用アダプタ1Dのシールドガス供給通路1dを通って第1シャフト27のシールドガス供給通路27aに流入し、第1シャフト27のシールドガス噴出口27bから胴部材Waの内部空間に噴出される。これにより胴部材Wa内がシールドガスGで充満される。胴部材Wa内に噴出されたシールドガスGは、隣接する第2裏当て治具片32′間に形成された隙間及び各第2裏当て治具片32′に形成したガス供給孔32cから各第2裏当て治具片32′に形成したガス溝32aに流れ、また、隣接する第1裏当て治具片20′間に形成された隙間から各第1裏当て治具片20′に形成したガス溝20aに流れる。その結果、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面側及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面側にシールドガスGが供給されることになる。
【0079】
前記第1溶接装置7は、図2及び図3に示す如く、先端部からアルゴンガス等のシールドガスGを流すと共に、タングステン電極棒を挿着した第1TIG溶接用トーチ7aと、第1TIG溶接用トーチ7aを上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在に支持する第1トーチ支持ユニット7bと、溶接用電源装置(図示省略)と、溶接用ガスボンベ(図示省略)等から構成されており、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部を外方から円周溶接する際に、第1TIG溶接用トーチ7aが胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の近傍位置まで移動し、この位置で第1TIG溶接用トーチ7aが先端部からシールドガスGを流しながら、軸線を中心にして回転する胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部をシールドガスGの雰囲気中でアークにより円周溶接するようになっている。
【0080】
前記第2溶接装置8は、図2及び図3に示す如く、先端部からアルゴンガス等のシールドガスGを流すと共に、タングステン電極棒を挿着した第2TIG溶接用トーチ8aと、第2TIG溶接用トーチ8aを上下方向、左右方向及び前後方向へ移動調整自在に支持する第2トーチ支持ユニット8bと、溶接用電源装置(図示省略)と、溶接用ガスボンベ(図示省略)等から構成されており、胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を外方から円周溶接する際に、台2溶接用トーチが胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の近傍位置まで移動し、この位置で第2TIG溶接用トーチ8aが先端部からシールドガスGを流しながら、軸線を中心にして回転する胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部をシールドガスGの雰囲気中でアークにより円周溶接するようになっている。
【0081】
前記第1TIG溶接用トーチ7a及び第2TIG溶接用トーチ8aには、何れもシールドガスGを外側と内側に分流し且つ内側のシールドガスGを外側のシールドガスGより高速で噴出させるようにシールドノズル62の内側に狭窄ノズル34を備えたTIG溶接用トーチがそれぞれ使用されている。
【0082】
即ち、前記狭窄ノズル64を備えたTIG溶接用トーチ(第1TIG溶接用トーチ7a及び第2TIG溶接用トーチ8a)は、図21に示す如く、シールドノズル62と、シールドノズル62の内側に設けられ、タングステン電極棒63が同芯状に挿入される狭窄ノズル64と、シールドガスGを層流化するガスレンズ65と、タングステン電極棒63を把持するコレットチャック66と、コレットチャック66の締め付け部材67と、シールドガス供給口68とを備えており、シールドガス供給口68から供給されたシールドガスGがガスレンズ65を通って狭窄ノズル64とシールドノズル62の間を流れるシールドガスGと、ガスレンズ65を通らずに狭窄ノズル64の内側を流れるシールドガスGとに分流され、狭窄ノズル64の内側を流れるシールドガスGが狭窄ノズル64とシールドノズル62の間を流れるシールドガスGより高速となって吐出されるようになっている。
【0083】
尚、前記第1TIG溶接用トーチ7a及び第2TIG溶接用トーチ8aには、図示していないが、特願2015−084549に記載された狭窄ノズルを備えるTIG溶接トーチを使用しても良い。このTIG溶接トーチは、狭窄ノズルから吐出される狭窄ガスとガスノズルから吐出されるシールドガスを、別々の経路で供給するので、狭窄ガスとシールドガスの種類を異ならせたり、狭窄ガスとシールドガスを個別に流量制御することができ、溶狭窄ノズルの性能を更に引き上げることが可能となる。
【0084】
前記搬出リフターユニット9は、図8図9及び図22に示す如く、基台3上に固定したベース50と、ベース50の下面に鉛直姿勢で固定した左右の昇降用シリンダ51と、左右の昇降用シリンダ51に支持され、ベース50に対して昇降自在な水平姿勢の搬出上下プレート52と、搬出上下プレート52の上面に着脱自在に取り付けられ、胴部材Waを水平姿勢で支持する左右のワークガイド53と、ベース50の上面に起立姿勢で固定され、左右のワークガイド53の中間に位置するガイド筒54と、ガイド筒54に昇降自在に支持された昇降用シャフト55と、ベース50の下面に鉛直姿勢で固定され、昇降用シャフト55を昇降させるシャフト用シリンダ56と、昇降用シャフト55の上端部に取り付けた水平姿勢の取付金具57と、取付金具57の先端部に昇降自在に支持され、スプリング58により下方へ付勢されたプッシャ軸59と、プッシャ軸59の下端に取り付けられ、左右のワークガイド53に水平姿勢で支持された胴部材Waの中間部上面に当接する樹脂製のプッシャ60と、ベース50の上面に着脱自在に取り付けられ、手前方向へ下り傾斜となる傾斜面61aを有する左右の板状の搬出ガイド61とを備えている。
【0085】
前記左右のワークガイド53は、搬出上下プレート52の上面に搬出上下プレート52の長手方向に沿って一定の間隔で埋設固定された複数のホルダ付マグネット46に着脱自在に磁着保持されており、胴部材Waの長さに応じて左右のワークガイド53の間隔を変えられるようになっている。この左右のワークガイド53の上面は、胴部材Waを安定した状態で水平保持できるようにV字状に形成されている。
【0086】
また、左右のワークガイド53は、左右の昇降用シリンダ51により胴部材Waを支持する上面が左右の搬出ガイド61の傾斜面61aより上方に位置する上昇位置と、同じく胴部材Waを支持する上面が左右の搬出ガイド61の傾斜面61aより下方に位置する下降位置とに亘って昇降自在となっている。
【0087】
尚、左右のワークガイド53は、胴部材Waの直径に応じて高さの異なるものが数種類用意されており、胴部材Waの直径に応じて取り替え、胴部材Waを常に同じ高さ位置で且つ水平姿勢で保持できるようになっている。
【0088】
前記左右の搬出ガイド61は、搬出上下プレート52の上面に搬出上下プレート52の長手方向に沿って一定の間隔で埋設固定された複数のホルダ付マグネット46に着脱自在に吸着保持されており、胴部材Waの長さに応じて左右の搬出ガイドの間隔を変えられるようになっている。
【0089】
前記搬出リフターユニット9によれば、下降位置にある左右のワークガイド53を上昇位置に上昇させて左右のワークガイド53上に胴部材Waを水平姿勢で載せ、昇降用シャフト55及び取付金具57をシャフト用シリンダ56により下降させてプッシャ60を左右のワークガイド53上の胴部材Waの中間部上面に軽く当接させることによって、胴部材Waを水平姿勢で保持することができる。尚、プッシャ60は、胴部材Waの一端を鏡部材Wb側へ押圧したときに胴部材Waが軸線方向へ移動できる程度に胴部材Waの上面に軽く当接している。
【0090】
また、搬出上下プレート52及び左右のワークガイド53を左右の昇降用シリンダ51により上昇位置から下降位置へ下降させると共に、昇降用シャフト55、取付金具57及びプッシャ60をシャフト用シリンダ56により上昇させると、胴部材Waの保持状態が解除されることになる。このとき、胴部材Waは、左右の搬出ガイド61に引き渡され、左右の搬出ガイド61の傾斜面61aに載ることになる。その結果、胴部材Waは、左右の搬出ガイド61の傾斜面61a上を転動して自動的に搬出されることになる。
【0091】
次に、上述した円周溶接用治具ユニット1を用いた円周溶接装置Aにより胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcとを一直線状に突き合せ、その突合せ部を外方から円周溶接して一端が閉塞されたハウジング(例えば、油冷式空気圧縮機のオイルセパレータのハウジング)を作製する場合について説明する。
【0092】
尚、胴部材Wa、鏡部材Wb及び環状部材Wcは、ステンレス材により形成されている。また、溶接電流、アーク長さ、胴部材Wa、鏡部材Wb及び環状部材Wcの回転速度、シールドガスGの供給量、タングステン電極棒の先端形状等の溶接条件は、胴部材Wa、鏡部材Wb及び環状部材Wcの材質、厚み等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0093】
先ず、キャビネット本体2の開閉扉2aを開け、第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bを取り付けた左回転ユニット4を走行ユニット6により外治具ユニット1Cを取り付けた右回転ユニット5側へ前進させ、第1内治具ユニット1Aが搬出リフターユニット9に近づいた時点で右回転ユニット5の移動を停止させる。
【0094】
次に、環状部材Wcを第2内治具ユニット1Bの縮径状態になっている第2裏当て治具32の外周面に嵌め、環状部材Wcの一端を取り付け板35を介して第2ベース31の側面に間接的に当接させる。また、鏡部材Wbを外治具ユニット1Cの外治具45に形成した凹部45aに嵌合すると共に、胴部材Waを搬出リフターユニット9にセットして水平姿勢で保持する。このとき、胴部材Waは、その一端を鏡部材Wbの端面に突き合せた状態で搬出リフターユニット9にセットされている。
【0095】
その後、キャビネット本体2の開閉扉2aを閉じ、円周溶接装置Aの運転スイッチをONにすると、左回転ユニット4が右回転ユニット5側へ更に前進し、第1内治具ユニット1Aが搬出リフターユニット9に水平姿勢で保持された胴部材Wa内に挿入されて行くと共に、環状部材Wcの他端が胴部材Waの他端に突き合わされ、胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcとが加圧密着される。
【0096】
胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcとが加圧密着されると同時に左回転ユニット4に設けた駆動機構15が作動し、押し金具49を前進させて第2内治具ユニット1Bの第2縮拡径機構33を作動させる。これにより、第2内治具ユニット1Bの環状の第2裏当て治具32が真円状に拡径し、第2裏当て治具32の外周面を胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面近傍へ面接触状態で圧接させる。
【0097】
また、左回転ユニット4に設けた駆動機構15の作動により、押し金具49、第2縮拡径機構33の第2シャフト37及び連結用アダプタ1Dが前進する。これにより、連結用アダプタ1Dの先端部に設けた第1内治具ユニット1Aが前進し、第1内治具ユニット1Aのストッパー部材26が外治具ユニット1Cの外治具45に保持された鏡部材Wbの内面に当接し、ストッパー部材26が押圧される。その結果、第1内治具ユニット1Aの第1縮拡径機構21が作動して環状の第1裏当て治具20を真円状に拡径させ、第1裏当て治具20の外周面を胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面近傍へ面接触状態で圧接させる。尚、第1内治具ユニット1Aによる胴部材Waと鏡部材Wbの内方からの保持と第2内治具ユニット1Bによる胴部材Waと環状部材Wcの内方からの保持は、略同時又は同時に行われる。
【0098】
胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcが加圧密着されて胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部が第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bによりそれぞれ内方から保持され、また、鏡部材Wbが外治具ユニット1Cにより外方から保持されると、搬出リフターユニット9が作動して胴部材Waの保持状態が解除される。
【0099】
搬出リフターユニット9による胴部材Waの保持状態が解除されると、左回転ユニット4の左回転テーブル14b及び右回転ユニット5の右回転テーブル18bが作動して一直線状に突き合された胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcをその軸線回りに回転させると共に、第1溶接装置7及び第2溶接装置8が同時に作動し、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部が第1溶接装置7及び第2溶接装置8により外方から円周溶接される。
【0100】
即ち、左回転テーブル14b及び右回転テーブル18bにより胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcが一定の速度で同期的に同じ方向へ回転すると共に、第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1B等に形成したシールドガス供給路により胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面側及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面側にそれぞれシールドガスGが供給され、この状態で第1溶接装置7及び第2溶接装置8の第1TIG溶接用トーチ7a及び第2TIG溶接用トーチ8aがそれぞれ前進・下降してアークを発生させ、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を外方から円周溶接する。その結果、一端が閉塞されたハウジングが作製される。
【0101】
このとき、第1裏当て治具20及び第2裏当て治具32をそれぞれ真円状に拡径させて胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部の内周面及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面に面接触状態で圧接させているため、円周溶接するときに第1裏当て治具20及び第2裏当て治具32により溶接部が冷却され、溶接部の熱歪が大幅に抑制されると共に、ビードの溶け落ちや穴あきが防止されることになる。然も、胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部を内方から保持するようにしているため、溶接部の熱歪による収縮をより確実に抑制することができる。更に、第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bからそれぞれ胴部材Waと鏡部材Wbの突合せ部及び胴部材Waと環状部材Wcの突合せ部の内周面側へシールドガスGを流しているため、溶接部の酸化を防止することができる。
【0102】
そして、胴部材Waと鏡部材Wbと環状部材Wcの円周溶接が終了すれば、左回転ユニット4の左回転テーブル14b及び右回転ユニット5の右回転テーブル18bの回転が停止されると共に、アーク及びシールドガスGがストップされて第1溶接装置7及び第2溶接装置8の第1TIG溶接用トーチ7a及び第2TIG溶接用トーチ8aが上昇・後退して元の位置へ復帰する。
【0103】
その後、第1内治具ユニット1A及び第2内治具ユニット1Bによりハウジングを内方から保持した状態で左回転ユニット4が走行ユニット6により少しだけ後退し、ハウジングの鏡部材Wbを外治具ユニット1Cから取り外すと共に、搬出リフターユニット9が作動してハウジングの胴部材Waを水平姿勢で保持する。
【0104】
引き続き、左回転ユニット4に設けた駆動機構15が作動してピストン15d及びロッド15eを後退させる。これに伴い、第2内治具ユニット1Bの第1弾性体29の弾性力により押し金具49、第2縮拡径機構33の第2シャフト37及び連結用アダプタ1Dが後退し、第2内治具ユニット1Bの環状の第2裏当て治具32を縮径させる。また、連結用アダプタ1Dの後退により第1内治具ユニット1Aが後退し、これにより第1内治具ユニット1Aのストッパー部材26の押圧状態が解除されて第1内治具ユニット1Aの第1シャフト27が前進し、第1内治具ユニット1Aの環状の第1裏当て治具20を縮径させる。この状態で左回転ユニット4が後退して第1内治具ユニット1A、連結用アダプタ1D及び第2内治具ユニット1Bをハウジング内(胴部材Wa、鏡部材Wb及び環状部材Wc内)から引き抜く。
【0105】
最後、キャビネット本体2の開閉扉2aが開放され、搬出リフターユニット9に保持されているハウジングの保持状態が解除され、搬出リフターユニット9によりハウジングがキャビネット本体2外へ自動的に搬出される。
【0106】
尚、円周溶接用治具ユニット1には、直径の異なるハウジングを作製することができるように大きさの異なる円周溶接用治具ユニット1が用意されている。
【符号の説明】
【0107】
1は円周溶接用治具ユニット、1Aは第1内治具ユニット、1Bは第2内治具ユニット、1Cは外治具ユニット、1Dは連結用アダプタ、1dはシールドガス供給通路、2はキャビネット本体、2aは開閉扉、3は基台、4は左回転ユニット、5は右回転ユニット、6は走行ユニット、6aはガイドレール、6bは走行台、6cはボールネジ軸、6dはサーボモータ、6eはベルト伝動機構、7は第1溶接装置、7aは第1TIG溶接用トーチ、7bは第1トーチ支持ユニット、8は第2溶接装置、8aは第2TIG溶接用トーチ、8bは第2トーチ支持ユニット、9は搬出リフターユニット、10は操作パネル、11は圧力流量パネル、12は電装箱、13は移動台、14は中空ロータリーアクチュエータ、14aはステッピングモータ、14bは左回転テーブル、15は駆動機構、15aは外シリンダ、15bはシリンダカラー、15cは内シリンダ、15dはピストン、15eはロッド、15fは継手、16はシールドガス供給管、17は固定台、18は中空ロータリーアクチュエータ、18aはステッピングモータ、18bは右回転テーブル、19は第1ベース、19aは貫通穴、20は第1裏当て治具、20′は第1裏当て治具片、20aはガス溝、20bはガイド溝、20cは二股部、21は第1縮拡径機構、22は第1Tナット、23はボルト、24はベース部材、25は連結軸、26はストッパー部材、27は第1シャフト、27′は基端側第1シャフト部、27″は先端側第1シャフト部、27aはシールドガス供給通路、27bはシールドガス噴出口、27cは二股部、28は第1リンク部材、29は第1弾性体、30は第1連結ピン、31は第2ベース、31aは貫通穴、32は第2裏当て治具、32′は第2裏当て治具片、32aはガス溝、32bは凹部、32cはガス供給孔、33は第2縮拡径機構、34は第2Tナット、35は取り付け板、35aはガイド溝、36はキー部材、37は第2シャフト、37aはシールドガス供給通路、37bはシールドガス噴出口、37cは凹部、38は第2リンク部材、39は第2弾性体、40は第2連結ピン、41はスプリング受け、42は外治具用ベース、42aは嵌合用凸部、43は外治具用ベースアダプタ、43aはフランジ部、43bは嵌合用凸部、43cは嵌合用凹部、44は外治具用フランジ、45は外治具、45aは凹部、46はホルダ付マグネット、47はストップピン、48は内治具用ベースアダプタ、48aはフランジ部、49は押し金具、50はベース、51は昇降用シリンダ、52は搬出上下プレート、53はワークガイド、54はガイド筒、55は昇降用シャフト、56はシャフト用シリンダ、57は取付金具、58はスプリング、59はプッシャ軸、60はプッシャ、61は搬出ガイド、61aは傾斜面、62はシールドノズル、63はタングステン電極棒、64は狭窄ノズル、65はガスレンズ、66コレットチャック、67は締め付け部材、68はシールドガス供給口、Aは円周溶接装置、Gはシールドガス、Waは胴部材、Wbは鏡部材、Wcは環状部材。
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