特許第6222754号(P6222754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222754
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電池システム監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20171023BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20171023BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20171023BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20171023BHJP
   G01R 31/36 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H02J7/00 YZHV
   H02J7/02 H
   H01M10/48 P
   H01M10/44 P
   G01R31/36 A
【請求項の数】2
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2016-123767(P2016-123767)
(22)【出願日】2016年6月22日
(62)【分割の表示】特願2014-246958(P2014-246958)の分割
【原出願日】2011年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-5989(P2017-5989A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-122730(P2011-122730)
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-122731(P2011-122731)
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 辰美
(72)【発明者】
【氏名】町田 明広
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】江守 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 睦
【審査官】 稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−348457(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119682(WO,A1)
【文献】 特開2005−318750(JP,A)
【文献】 特開2011−019329(JP,A)
【文献】 特開2004−266992(JP,A)
【文献】 特開2010−193589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
G01R31/36
H01M10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池セルが直列接続されたセルグループを有する電池システム監視装置であって、
前記セルグループに対応して設けられ、前記複数の単電池セルの各単電池セルの端子間電圧を測定する第1の制御装置と、
前記セルグループに対応して設けられ、前記複数の単電池セル間の充電状態をバランシングさせる時に、前記複数の単電池セルの放電を制御する第2の制御装置と、
前記各単電池セルの正極及び負極のそれぞれと前記第1の制御装置とを接続し、前記各単電池セルの端子間電圧を前記第1の制御装置に入力するために設けられた複数の電圧検出線と、
前記複数の電圧検出線の各電圧検出線に直列に設けられた第1の抵抗と、
前記各単電池セルの正極及び負極のそれぞれに接続された電圧検出線間に接続された第1のコンデンサと、
前記各電圧検出線から分岐し、前記第2の制御装置に接続された複数のバランシング線と、
前記複数のバランシング線の各バランシング線に直列に設けられた第2の抵抗と、
前記各単電池セルの正極及び負極のそれぞれに接続された電圧検出線から分岐したバランシング線間に接続された第2のコンデンサと、
前記各単電池セルに対応して設けられると共に、当該単電池セルの正極及び負極のそれぞれに接続された電圧検出線から分岐したバランシング線間に接続され、当該単電池セルの放電時にオンオフされるバランシングスイッチと、を有し、
前記第1のコンデンサは、前記第1の抵抗と前記第1の制御装置との間の位置において当該電圧検出線に接続されており、
前記第2のコンデンサは、前記第2の抵抗と前記第2の制御装置との間において当該バランシング線間に接続されており、
前記第1の抵抗と前記第1のコンデンサによって構成された第1のフィルタ回路の時定数は、前記第2の抵抗と前記第2のコンデンサによって構成された第2のフィルタ回路の時定数よりも大きい、
電池システム監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前記セルグループがN個(N≧1)直列に接続された電池システム監視装置であって、
前記N個のセルグループに対して前記第1の制御装置及び前記第2の制御装置が設けられるように、前記第1の制御装置及び第2の制御装置をM個(M≧1)備え、前記M個の第1の制御装置を通信ラインによって直列に接続し、かつ前記M個の第2の制御装置を通信ラインによって直列に接続していると共に、
前記M個の第1の制御装置及び前記M個の第2の制御装置に対して第3の制御装置を設け、前記M個の第1の制御装置のうち、最上位の第1の制御装置及び最下位の第1の制御装置のそれぞれと、前記第3の制御装置との間を、絶縁素子が設けられた通信ラインによって接続し、かつ前記M個の第2の制御装置のうち、最上位の第2の制御装置及び最下位の第2の制御装置のそれぞれと、前記第3の制御装置との間を、絶縁素子が設けられた通信ラインによって接続しており、
前記M個の第1の制御装置は、前記絶縁素子が設けられた通信ラインを介して前記第3の制御装置から伝送された信号を直列に伝送し、前記絶縁素子が設けられた通信ラインを介して前記第3の制御装置に伝送しており、
前記M個の第2の制御装置は、前記絶縁素子が設けられた通信ラインを介して前記第3の制御装置から伝送された信号を直列に伝送し、前記絶縁素子が設けられた通信ラインを介して前記第3の制御装置に伝送している、
電池システム監視装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池システム監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)などでは、所望の高電圧を確保するため、二次電池の単電池セルを多数直列接続して構成される組電池(電池システム)が用いられている。このような組電池においては、各単電池セルの容量計算や保護管理のため、単電池セルの状態を監視する監視ICと単電池セルの充放電状態を制御する制御ICとを用いて単電池セルの管理を行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特に、リチウムイオン電池を用いた電池システムでは、リチウムイオン電池が高エネルギー密度で過充電されると、リチウムイオン電池の損傷を招く可能性がある。そのため、特許文献2に示されるように、制御ICと監視ICの各々で単電池セルの電圧を測定して過充電状態を検出し、どちらかのICが過充電を検出すれば電池の充放電を中止するように構成して、信頼性と安全性を高めている。
監視ICは、単電池セルの電圧を個別に検出し、例えば過充電状態の単電池セルがあった場合には、過充電情報を通信を介して制御ICに送信するようにしている。そして、過充電情報が確実に制御ICに伝送されるように、制御ICからテスト信号を送信して通信ラインに断線等の異常がないかを診断している。
【0004】
単電池セルの電圧を検出する際には、マルチプレクサで所定の単電池セルを選択し、電圧検出部で電圧を検出するようにしている。マルチプレクサの接続を切り換えることにより、全ての単電池セルの電圧を検出することができる。各単電池セルの正しいセル電圧を取得するためには、マルチプレクサを含むセル電圧測定系が正しく動作する必要がある。そのため、特許文献3に記載の発明では、各単電池セルのセル電圧測定値の和と総電圧計測系で測定された全セル電圧測定値とを比較し、著しく異なっていればマルチプレクサを含むセル電圧測定系に故障があると判断している。
【0005】
単電池セルの電圧検出線が正常に接続されていないと、単電池セルの電圧を正常に検出できない。特許文献4に記載の発明では、単電池セルの充電状態を均一化する目的のバランシング回路を動作させながら単電池セルのセル電圧を測定し、このセル電圧に基づいて断線検出を行う動作を集積回路内で自動的に行っている。
【0006】
近年、電圧検出線の断線を含む電圧測定系の診断の高速化の要求が高まっている。例えば上記のようにマルチプレクサの診断を行う場合、従来は、測定された各単電池セルの端子間電圧に基づいて診断を行っている。
単電池セルの端子間電圧の測定は、もともと各単電池セルの過充電や過放電の状態を判断するために行われているので、この端子間電圧の測定は正確に行われる必要がある。このため、端子間電圧の測定はノイズに強い電圧測定回路が用いられている。例えば特許文献1のように二重積分型のADコンバータを用いたものや、特許文献4のように電圧検出線の間に入力コンデンサを設けてRCフィルターを構成し、ノイズを除去してから電圧測定回路に電圧入力するものがある。
【0007】
このようなノイズに強い電圧測定回路は、いずれもノイズ成分を除去するために測定時間が長くなり、従ってこのような電圧測定を用いて行われる電圧検出線の断線やマルチプレクサなどの電圧測定系の診断も同様に時間がかかるものとなっていた。
【0008】
また、特許文献3に記載の発明のように、マルチプレクサで選択された単電池セルのセル電圧測定値とバッテリの総電圧との比較からセル電圧測定系の故障を判断する場合、次のような問題がある。例えば、マルチプレクサが故障して常に特定の単電池セルだけを選択する状態になっていると、各々の単電池セルの充電状態がほぼ均等になっていた場合には合計電圧と総電圧との差がほとんど無く、選択された単電池セル以外の電圧検出線が断線していても異常は検出されず、マルチプレクサを含む電圧検出系は正常と判断される恐れがあった。また、マルチプレクサで選択する場合にはセル電圧測定の同時性の関係で、マルチプレクサが正しく動作していても、電圧変動が急な場合にはセル電圧の合計値と総電圧とが異なることがあり、誤判定のおそれがあった。従って、過充電を確実に検出するためには、前述のように、監視ICと制御ICを別々として信頼性を高める必要があった。
【0009】
また、特許文献4では、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)などでは、所望の高電圧を確保するため、二次電池の単電池セルを多数直列接続して構成される組電池(電池システム)が用いられている。このような組電池においては、各単電池セルの容量計算や保護管理のため、セル電圧の計測と均等化を行う集積回路を組電池の監視装置内に用いて単電池セルの管理を行っている。この集積回路は信頼性を上げるためにセル電圧測定と均等化だけでなく、セル電圧検出線の断線検出を含む各種診断を行って信頼性を上げている。
【0010】
この組電池の監視装置は、組電池の総電圧と充放電電流を常時監視し、組電池としての充電状態(SOC: State of Charge)と内部抵抗(DCR)を算出し、その値から組電池としての最大入出力電力あるいは電流を上位コントローラに転送し、上位コントローラはその値から充放電電力(電流)を制御している。そのため、組電池の総電圧検出は不可欠のものであり色々な総電圧検出回路が提案されてきた(例えば特許文献5参照)。
【0011】
多数の単電池セルから構成される組電池の出力は高電圧であるため、このような総電圧測定回路では高電圧の組電池は車両のシャーシ(GND)から絶縁されている。また、高抵抗の分圧回路を用いた専用の電圧測定回路が用いられている。
【0012】
また、電池監視用の集積回路と上位コントローラの通信も絶縁されており、このような絶縁用に、一般的にはフォトカプラが絶縁素子として用いられている。フォトカプラを介して高速に通信を行うためには発光ダイオード側の通電電流を大きくする必要があり、その電源は組電池から供給するのであまり大きくすることはできない。そのため、フォトカプラを用いる場合は通信系等を分割し、やや低い速度で通信を行って対応してきた。
【0013】
近年、リチウム電池等の二次電池からなる組電池は、電気自動車(EV)あるいはプラグインハイブリッド自動車(PHV)での用途が大幅に増加している。二次電池がEVあるいはPHVで使用される場合は、ハイブリッド自動車(HEV)で使用される場合と比較して、これら二次電池のSOCの使用範囲が更に広いため、また、大電流出力によるSOCの変動が早いために、全セルの電圧監視と診断を高速に行うことが要求されている。
【0014】
通常電池システムは、複数の単電池セルが直列に接続されたセルグループを複数個備えており、電池監視用の集積回路は各セルグループ毎に設けられている。従って、全セルの電圧監視と診断を高速に行うためには、電池監視用の集積回路と上位コントローラの間の高速な通信手段が必要である。
【0015】
また、組電池で直列接続される単電池セルの個数は増加しており、電池監視用の集積回路が監視する2次電池の単位である、複数の単電池セルが直列接続されたセルグループにおいては、例えば10個以上の単電池セルが接続され、セルグループの端子間電圧は数十ボルト以上となっている。セルグループの端子間電圧が高電圧となるため、車両動作停止時の電池監視用の集積回路での暗電流の問題が顕在化するようになってきた。
【0016】
さらに、単電池セルの容量は増加しているので、これに対応した電池システムの監視・制御が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−318750号公報
【特許文献2】特許4092580号公報
【特許文献3】特開2008−92656号公報
【特許文献4】特開2009−89488号公報
【特許文献5】特開2009−236711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明で解決すべき第1の課題は、従来のリチウム電池等からなる電池システム状態を監視する制御ICを備えた蓄電装置では、二次電池の端子間電圧測定回路の診断を高速に行うことができなかったことである。
例えば、特許文献4に記載の発明に開示されているように、各単電池セルの端子間電圧を測定して断線検出を行う方法では、単電池セルの端子間電圧(セル電圧)を測定するために、セル電圧検出入力側にノイズ除去用のフィルタが挿入されている。このフィルタの時定数の影響のため、バランシング回路のバランシングスイッチをオン・オフして、通常の端子間電圧の測定状態から断線検出のための電圧検出状態に切り替えると、この単電池セルのセル電圧が断線と判定できる電圧に落ち着くまでに時間がかかるという課題を有している。
さらに、例えば特許文献4に記載の集積回路(セルコントローラ)で自動的に断線検出を行う方法では、断線検出結果の信頼性は充分でない。例えば、断線検出を行って集積回路がレジスタにフラグをセットした場合、断線を本当に検出したのか、レジスタが故障したのか判断できない。あるいは、レジスタが正常側に故障した場合には、断線していていることが検出できないことになる。
【0019】
本発明で解決すべき第2の課題は、従来のリチウム電池等からなる電池システム状態を監視する監視装置では、電池システムの総電圧を測定するための専用の電圧測定回路が必要であり、監視装置が大型化する原因となっていた。また、セルグループの端子間電圧の増大に伴い、監視装置での暗電流が増加していたことである。
【0020】
本発明で解決すべき第3の課題は、従来のリチウム電池等からなる電池システム状態を監視する監視装置では、単電池セルの端子間電圧を測定する電圧測定回路と、この単電池セルのバランシング回路が共通の端子に接続されていた。このため、電圧測定を精度よく行うためのノイズ除去用に大きなRCフィルターを電圧測定回路の入力側に設けると、バランシング回路に大きな電流を流すことができず、単電池セルの充電状態を均一化するまでに時間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一の態様によると、複数の単電池セルが直列接続されたセルグループを有する電池システム監視装置は、セルグループに対応して設けられ、複数の単電池セルの各単電池セルの端子間電圧を測定する第1の制御装置とセルグループに対応して設けられ、複数の単電池セル間の充電状態をバランシングさせる時に、複数の単電池セルの放電を制御する第2の制御装置と、各単電池セルの正極及び負極のそれぞれと第1の制御装置とを接続し、各単電池セルの端子間電圧を第1の制御装置に入力するために設けられた複数の電圧検出線と、複数の電圧検出線の各電圧検出線に直列に設けられた第1の抵抗と、各単電池セルの正極及び負極のそれぞれに接続された電圧検出線間に接続された第1のコンデンサと、各電圧検出線から分岐し、第2の制御装置に接続された複数のバランシング線と、複数のバランシング線の各バランシング線に直列に設けられた第2の抵抗と、各単電池セルの正極及び負極のそれぞれに接続された電圧検出線から分岐したバランシング線間に接続された第2のコンデンサと、各単電池セルに対応して設けられると共に、当該単電池セルの正極及び負極のそれぞれに接続された電圧検出線から分岐したバランシング線間に接続され、当該単電池セルの放電時にオンオフされるバランシングスイッチと、を有し、第1のコンデンサは、第1の抵抗と第1の制御装置との間の位置において当該電圧検出線に接続されており、第2のコンデンサは、第2の抵抗と第2の制御装置との間において当該バランシング線間に接続されており、第1の抵抗と第1のコンデンサによって構成された第1のフィルタ回路の時定数は、第2の抵抗と第2のコンデンサによって構成された第2のフィルタ回路の時定数よりも大きい
【発明の効果】
【0022】
本発明による電池システム監視装置を用いることにより、単電池セルの端子間電圧測定の際に電圧検出対象セルを選択するマルチプレクサが正常に動作しているかどうか確実に判定できる。また、断線検出時に単電池セルの端子間電圧(セル電圧)を検出することなく、自動的に断線検出を連続的に行うことができるので、断線検出の時間を短縮することができ、システムの安全性と信頼性を高める事ができる。さらに、監視ICと制御ICを別々とすることなく1つのセルコントローラICを用いて電池システム監視装置を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による電池システム監視装置の第1の実施形態を組み込んだ蓄電装置を備えたハイブリッド自動車用の駆動システムの構成例である。
図2図1に示す蓄電装置のバッテリーコントローラに総電圧検出回路を組み込んだ、ハイブリッド自動車用の駆動システムの構成例である。
図3図1あるいは図2に示すセルコントローラ200内の、セルコントローラIC300とバッテリーコントローラ500内のマイクロコンピュータ504の間の通信線の接続例を示す図である。
図4図1あるいは図2に示すセルコントローラ200内の、セルコントローラIC300とバッテリーコントローラ500内のマイクロコンピュータ504の間の通信線のもう1つの接続例を示す図である。
図5】セルコントローラIC300の内部構成例を示す図である。
図6】セルコントローラIC300のロジック部の構成例を示す。
図7】セルコントローラIC300が最上位設定の場合の、起動検出部、通信受信部、FF入力部の外部回路との接続を示す図である。
図8】セルコントローラIC300が最下位設定の場合のマイクロコンピュータ504への接続の詳細を示す説明図である。
図9】バランシングスイッチ222の診断を行うための、バランシングスイッチ状態を検出するバランシングスイッチ状態検出回路223の概略図である。(a)は図5に示すバランシング回路とバランシングスイッチ状態検出回路223の1セル分を示す。(b)は(a)に示すスイッチ回路を切り替えてコンパレータ出力を反転する動作を示す。
図10】ブロック電圧の測定を行うために、ブロック電圧をマルチプレクサに入力する回路の概略図である
図11図10に示すブロック電圧入力部225のRCフィルターや分圧抵抗をセルコントローラIC300の外部に設置する場合の回路の概略図である。(a)はフィルターコンデンサのみを外部に設置する場合の例であり、(b)は分圧抵抗とフィルターコンデンサー共に外部に設置する場合の例である。
図12】(a)はセル電圧入力が正常に切り替わっているかどうか診断するための電圧測定での、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224の制御状態を示し、(b)は(a)で示す各測定でのマルチプレクサ入力短絡スイッチの制御状態で測定されたセル電圧の検出結果を示す。
図13】本発明による電池システム監視装置を用いて、セル電圧検出値から、最上位の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)、(b)はそれぞれ異なるスイッチ状態での検出電圧を示す。
図14】本発明による電池システム監視装置を用いて、セル電圧検出値から、最上位の電圧検出線の次の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)〜(d)はそれぞれ異なるスイッチ状態での検出電圧を示す。
図15】本発明による電池システム監視装置を用いて、セル電圧検出値から、最下位の電圧検出線の1つ前の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)〜(d)はそれぞれ異なるスイッチ状態での検出電圧を示す。
図16】本発明による電池システム監視装置を用いて、セル電圧検出値から、最下位の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)、(b)はそれぞれ異なるスイッチ状態での検出電圧を示す。
図17図12または図16で、仮想的なセルとバランシングスイッチ回路を想定することで、最上位および最下位の電圧検出の断線に対しても、最上位および最下位の電圧検出線での断線の検出方法を同様に適用することができることを説明する図である。(a)は最上位の電圧検出線の上位に更に仮想的なセルとバランシングスイッチ回路を想定した図であり。(b)は最下位の電圧検出線の下位に更に仮想的なセルとバランシングスイッチ回路を想定した図である。
図18】2つの隣り合ったバランシングスイッチをオン・オフした場合に検出されるセル電圧を説明する図である。(a)は各セル電圧の測定でのバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示すバランシングスイッチの制御状態で検出されるセル電圧を説明する図である。
図19】セル1からセル12まで連続的に端子間電圧を測定し、0Vの端子間電圧を検出することで断線診断を行う方法の説明図である。(a)は各セル電圧の測定での2つの隣り合うバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セル電圧測定での電圧検出結果とこの電圧検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図20】セル1からセル12まで連続的に端子間電圧を測定し、最上位および最下位の電圧検出線を除く電圧検出線で、単電池セル2個分の端子間電圧を検出することで断線診断を行う、もう1つの方法の説明図である。(a)は各セル電圧の測定での2つの隣り合うバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セル電圧測定での電圧検出結果とこの電圧検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。セル電圧検出値を用いた断線診断方法での断線診断の判定真理値表である。
図21】セル1からセル12まで連続的に端子間電圧を測定し、0Vの端子間電圧を検出することで断線診断を行う、更にもう1つの方法の説明図である。(a)は各セル電圧の測定での3つの隣り合うバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セル電圧測定での電圧検出結果とこの電圧検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図22】セル1からセル12まで連続的に端子間電圧を測定し、最上位および最下位の電圧検出線を除く電圧検出線で、単電池セル2個分の端子間電圧を検出することで断線診断を行う、更にもう1つの方法でのバランシングスイッチの制御設定動作を示す説明図である。(a)は各セル電圧の測定での3つの隣り合うバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セル電圧測定での電圧検出結果とこの電圧検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図23】マルチプレクサ入力短絡スイッチをオン・オフして0Vの端子間電圧を発生し、セル1からセル12まで連続的に端子間電圧を測定し、0Vの端子間電圧を検出することで断線検出の回路及びロジックの診断を行う方法でのマルチプレクサ入力短絡スイッチの制御設定動作を示す説明図である。(a)は各セル電圧の測定でのマルチプレクサ入力短絡スイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セル電圧測定での電圧検出結果とこの電圧検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図24】本発明による電池システム監視装置を用いて、バランシング電流検出の有無から、最上位の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)、(b)はそれぞれ異なるスイッチ状態でのバランシング電流検出の有無を示す。
図25】本発明による電池システム監視装置を用いて、バランシング電流検出の有無から、最上位の電圧検出線の次の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)〜(d)はそれぞれ異なるスイッチ状態でのバランシング電流検出の有無を説明する図である。
図26】本発明による電池システム監視装置を用いて、バランシング電流検出の有無から、最下位の電圧検出線の1つ前の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)〜(d)はそれぞれ異なるスイッチ状態でのバランシング電流検出の有無を説明する図である。
図27】本発明による電池システム監視装置を用いて、バランシング電流検出の有無から、最下位の電圧検出線の断線を検出する方法の説明図である。(a)、(b)はそれぞれ異なるスイッチ状態でのバランシング電流検出の有無を説明する図である。
図28図24または図27で、仮想的なセルとバランシングスイッチ回路を想定することで、最上位および最下位の電圧検出の断線に対しても、最上位および最下位の電圧検出線での断線の検出方法を同様に適用することができることを説明する図である。(a)は最上位の電圧検出線の上位に更に仮想的なセルとバランシングスイッチ回路を想定した図であり。(b)は最下位の電圧検出線の下位に更に仮想的なセルとバランシングスイッチ回路を想定した図である。
図29】バランシングスイッチをオン・オフして、セル1からセル12までバランシング電流検出を連続的に行い、バランシング電流が流れないこと((b)の図で0)を検出することで断線検出の回路及びロジックの診断を行う方法でのバランシングスイッチの制御設定動作を示す説明図である。(a)は各セル電圧の測定でのバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セルのバランシング電流の検出結果とこの検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図30】バランシングスイッチ状態検出回路223のスイッチ回路228を切り替えて、バランシング電流が流れない状態のコンパレータ229の出力を疑似的に発生し、バランシング電流検出の有無で断線検出を行う回路及びロジックの診断を行う方法でのバランシングスイッチの制御設定動作を示す説明図である。(a)は各セルのバランシングスイッチの制御状態を示す。(b)は(a)に基づいて発生された疑似的な断線状態を示すコンパレータ229の出力が検出結果レジスタに書き込まれた状態を示す。(c)は(a)に示す各セルのバランシング電流の疑似的検出結果とこの疑似的検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図31】セルコントローラIC300の通信受信部の内部構成を示す説明図である。
図32】FSK方式の通信波形例を示す説明図である。
図33】2つのセルグループを直列に接続した場合に、図21と同様の断線診断を2つのセルグループの単電池セル(セル1からセル24)端子間電圧を連続的に測定して行う場合の説明図である。(a)は各セル電圧の測定での3つの隣り合うバランシングスイッチの制御状態を示し、(b)は(a)に示す各セル電圧測定での電圧検出結果とこの電圧検出結果に基づいた電圧検出線の断線判定を説明する図である。
図34】本発明による電池システム監視装置の第2の実施形態を組み込んだ、ハイブリッド自動車用の蓄電装置の構成例である。
図35図34に示す、メインセルコントローラICとサブセルコントローラICの組を複数備える電池制御装置での、各メインセルコントローラ間、各サブセルコントローラ間、およびメインセルコントローラとサブセルコントローラとマイクロコンピュータ間の通信経路を説明する図である。
図36図35に示す1つのセルグループを制御する1組のメインセルコントローラICとサブセルコントローラICの機能分担を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1図33を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明による電池システム監視装置を備えた蓄電装置を、ハイブリッド自動車(HEV)などに用いられる電池システムを備えた蓄電装置に対して適用した場合の例である。なお、本発明はHEVに限らず、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)、鉄道車両などに搭載される各種蓄電装置に対して幅広く適用可能である。以下の実施例では、制御の最小単位となる蓄電・放電デバイスとして3.0〜4.2V(平均出力電圧:3.6V)の範囲に電圧を持つリチウムイオン電池を想定しているが、それ以外でもSOC(State of Charge)の高すぎる場合(過充電)や低すぎる場合(過放電)に使用を制限するような、電気を蓄え放電可能なデバイスであれば何でもよく、ここでは、それらを総称して単電池あるいは単電池セルと呼ぶ。以下に説明する実施形態では、単電池セルを複数個(概ね数個から十数個)直列に接続したものをセルグループと呼び、このセルグループを複数個直列に接続したものを電池モジュールと呼ぶ。更にこのセルグループあるいは電池モジュールを複数個直列または直並列に接続したものを電池システムと呼称する。セルグループ、電池モジュールおよび電池システムを総称して組電池と呼んでいる。各単電池セルのセル電圧を検出し、バランシング動作等を行いながら電池状態を監視するセルコントローラICはセルグループ毎に設けられる。
【0025】
<第1の実施形態>
まず、図1を用いて、本発明による蓄電装置をハイブリッド自動車用駆動システムに適用した例について説明する。
【0026】
蓄電装置100は、リレー600、610を介してインバータ700に接続され、インバータ700はモータ800に接続されている。車両の発進・加速時には蓄電装置100から放電電力がインバータ700を通じてモータ800に供給されて図示されないエンジンをアシストする。車両停止・減速時には、モータ800からの回生電力がインバータ700を通じて蓄電装置100に充電される。なお、ここではインバータ700は複数の半導体スイッチング素子を備えたインバータ回路と、半導体スイッチング素子のゲート駆動回路と、ゲート駆動回路をPWM制御するパルス信号を発生するモーターコントローラとを備えているが、図1では省略されている。
【0027】
蓄電装置100は、主に、複数のリチウムイオン単電池セル101から構成されるセルグループ102と、複数のセルグループ102が直列接続された電池システム104と、各単電池セル101の電圧を検出し、バランシング動作を行うセルコントローラIC300を複数備えたセルコントローラ200と、セルコントローラ200の動作を制御し、各単電池セルの状態判定を行うバッテリーコントローラ500で構成される。本実施形態に示す蓄電装置の例では、定格容量5.5Ahのリチウムイオン単電池を96個直列に接続したものを使用している。バッテリーコントローラ500は絶縁素子群400を介して複数のセルコントローラIC300と通信を行って、これらのセルコンローラICの制御を行う。セルコントローラIC300は、前述のように、セルグループ102毎に設けられている。なお、電池システム104とセルコントローラ200の間の電圧検出線は、不図示のコネクタでセルコントローラ200に接続されている。
【0028】
バッテリーコントローラ500は、電池システム104に流れる充放電電流を検出する電流センサ503に接続される電流検出回路502と、セルコントローラ200とインバータ700及び図示されない上位の車両コントローラとの通信を含む、バッテリーコントローラ500の全体の制御を行うマイクロコンピュータ504とを備えている。また、インバータ700の内部には電池システム104の総電圧を測定する総電圧測定回路701が設けられている。また、図示はされていないがバッテリーコントローラ500は単電池セル101の温度を測定し、電池状態のパラメータの温度補正を行っている。
【0029】
図2は総電圧検出回路501がバッテリーコントローラ500にも設置された例である。後述するように、電池システム104の総電圧を測定できれば、総電圧検出回路501は、図1のようにバッテリーコントローラ500の内部に設けられていなくともよい。
【0030】
この蓄電装置100の起動後に以下の動作が行われる。バッテリーコントローラ500は、セルコントローラ200が全単電池セルのOCV(開路電圧)測定を行う指令を絶縁素子群400を介して送信する。測定された各単電池セルのOCVのデータは、セルコントローラ200からセルグループ単位で絶縁素子群400を介して、バッテリコントローラ500に送信される。バッテリーコントローラ500は受信した各単電池セルのOCVをSOCに変換し、全単電池セルのSOCの偏差を算出する。SOCの偏差が所定の値、例えば全単電池セルのSOCの平均よりも大きい単電池セルがバランシング放電を行う対象となる。バランシング放電の対象となった単電池セルのSOCの偏差が0となるまでの時間が計算され、この時間だけセルコントローラIC300内のバランシングスイッチをオンとする制御動作を行う指令が、バッテリーコントローラ500からセルコントローラ200に送られ、バランシング対象の単電池セルのバランシング放電が行われる。
【0031】
上記で測定された各単電池セルのOCVから、電池システム104のSOCが算出(算出方法は省略)された後、インバータ700あるいは上位コントローラである車両コントローラ(不図示)がリレー600とリレー610とをオンとして、蓄電装置100がインバータ700とモータ800に接続され、車両コントローラからの充放電指令をインバータ700が受けて、インバータ700が動作してモータ800を駆動するとともに、蓄電装置100の充放電動作が行われる。
【0032】
リレー600及びリレー610をオンとして蓄電装置100が充放電を開始する時から、バッテリーコントローラ500は、一定時間毎に充放電電流と総電圧を測定する。得られた総電圧と充放電電流の値から、バッテリーコントローラ500は組電池の充電状態(SOC)と電池の内部抵抗(DCR)をリアルタイムに算出(算出方法は省略)する。さらに、これらの値から電池システム104が充放電可能な電流あるいは電力をリアルタイムに算出して、インバータ700に送信し、インバータ700はその範囲内で充放電電流あるいは電力を制御する。尚、図1では総電圧をバッテリーコントローラ500が測定していないが、後述する方法でセルコントローラ200から総電圧値を得ている。
【0033】
図3は、セルコントローラ200内のセルコントローラIC300a〜300dとバッテリーコントローラ500内のマイクロコンピュータ504の間の通信接続例を示す図である。マイクロコンピュータ504はセルコントローラ200内のセルコントローラIC300a〜300dを起動させるための起動信号を出力する起動信号出力ポートと、コマンド及びデータを送信するための送信ポートTXDと、過充電状態を検出するためのデータパケット(FF信号)を出力するためのFF信号出力ポートを有している。
【0034】
図3の例では、複数の単電池セルを直列接続したセルグループ102を2個直列接続した電池モジュール103を、サービスディスコネクトスイッチ(SD−SW)105の上下に配した構成となっている。電池モジュール103を構成するセルグループの数は2個に限定されず、3個以上であってもよい。またこれらのセルグループ102a〜102dに対応して、それぞれセルコントローラIC300a〜300dが設けられている。
なお、ここでは図3で一番下のセルコントローラIC300aを、マイクロコンピュータ504からの信号を最初に受信する最上位セルコントローラICとしている。図3の一番上側のセルコントローラIC300dを最上位セルコントローラICとする構成でもよい。
【0035】
以下単にセルコントローラICあるいはセルコントローラIC300と呼ぶ場合は、セルコントローラIC300a〜300dを特に限定しない場合とする。また、同様にセルグループ102a〜102dに対しても、これらを特に限定しない場合は、セルグループあるいはセルグループ102と呼ぶ。
【0036】
サービスディスコネクトスイッチ(以下SD−SWと呼ぶ)105は、高電圧の組電池でよく用いられるスイッチであり、保守点検時にこのSD−SW105を開放することによって、組電池の電流経路を遮断し、作業者の感電を防止することを目的としている。このSD−SW105を開放しておけば、電池の直列接続が絶たれるため組電池の最上位端子と最下位端子を人間が触っても高電圧が人体に印加されることはないので、感電が防止できる。
【0037】
コマンドおよびデータ信号の通信ラインでは、コマンドおよびデータ信号がマイクロコンピュータ504の送信ポートTXDから高速絶縁素子401とコンデンサ403を通じて最上位のセルコントローラIC300aの通信受信端子RXDに送信される。起動信号出力ポートは低速絶縁素子402を通じてセルコントローラIC300aの起動信号入力端子WU_Rxに接続される。また、FF信号の通信ラインでは、FF信号がFF信号出力ポートから低速絶縁素子402とコンデンサ403を通じてセルコントローラIC300aのFF入力端子FFINに送信される。最上位のセルコントローラIC300aは、その通信出力端子TXDが一つ下位のセルコントローラIC300bの通信受信端子RXDにコンデンサ結合で接続され、またFF出力端子FFOUTがセルコントローラIC300bのFF入力端子FFINにコンデンサ結合で接続される。また、セルコントローラIC300aの起動信号出力端子WU_Txは、この一つ下位のセルコントローラIC300bの起動信号入力端子WU_Rxに接続される。
これらの高速絶縁素子401、低速絶縁素子402、および、コンデンサ403で、マイクロコンピュータ504と最上位のセルコントローラIC300aとの間の通信経路で用いられている絶縁素子をまとめて絶縁素子群400(図1)としている。
【0038】
サービスディスコネクトスイッチ(SD−SW)105の上側の電池モジュール103に接続されているセルコントローラICの最上位セルコントローラIC300cと、下側の電池モジュール103に接続されているセルコントローラICの最下位セルコントローラIC300bとの間の通信は、絶縁して行う必要がある。これは、上側および下側の電池モジュール103それぞれに直列接続されている単電池セルの数が多いために、電池モジュール103の端子間電圧が高くなるためである。このため、コマンドおよびデータ信号の通信ラインに高速の絶縁素子401が挿入され、FF信号の通信ラインに低速の絶縁素子402が挿入される。もしもこれらの通信ラインを直結するとその接続を通じて組電池が直列接続されることになり、SD−SW105の切り離しを行っても組電池の直列接続が維持されるため、組電池の通電を遮断できなくなり、作業者が感電する可能性を生じることになる。なお、図3のSD−SW105の上側(下位側)のセルコントローラIC300cにも、マイクロコンピュータ504の起動信号出力ポートから、低速絶縁素子402を通じて、起動信号が出力される。
【0039】
最下位のセルコントローラIC300dでは、通信出力端子TXDが高速絶縁素子401を介してマイクロコンピュータ504の通信受信ポートRXDに接続される。同様に、セルコントローラIC300dのFF出力端子FFOUTがマイクロコンピュータ504のFF信号入力ポートに低速の絶縁素子402を介して接続される。
【0040】
セルコントローラ200を起動する場合は、マイクロコンピュータ504は起動信号を出力し、セルコントローラIC300aとセルコントローラIC300cは低速絶縁素子402を通じて起動信号を受信して起動される。起動されたセルコントローラICは次のセルコントローラICに起動信号を出力する。このようにして全部のセルコントローラIC300は順番に起動される。
【0041】
なお、低速絶縁素子402にはフォトカプラのような直流信号も伝送できる絶縁素子を用いており、マイクロコンピュータ504からのセルコントローラIC300aとセルコントローラIC300cへの起動信号は直流信号または比較的時間幅の広いパルス信号で行われる。これは、蓄電装置100の起動時はノイズや電圧変動が発生し易いので、この影響を除去するためである。最初に起動されたセルコントローラIC300aまたは300cから次のセルコントローラICを起動するための信号は短パルスあるいは交流パルス信号により行われる。
【0042】
セルコントローラ200の起動後は、マイクロコンピュータ504は高速絶縁素子401を通じてセルコントローラIC300aの受信端子RXDにコマンド信号及びデータ(データパケット)を送信する。セルコントローラIC300aはコマンド信号とデータパケットを受信し、さらにこれらを出力端子TXDから次のセルコントローラIC300bに送信する。このようにして全部のセルコントローラIC300a〜300dはコマンド信号とデータを受信し、このコマンド信号とデータに従って動作を行う。セルコントローラIC300a〜300dがそれぞれ制御するセルグループ102a〜102dの単電池セルの端子間電圧(セル電圧と呼ぶ)等のデータを得る場合には、ぞれぞれのセルコントローラIC300a〜300dがデータパケットにデータを付加して、送信端子TXDから次のセルコントローラICのRXD端子に送信し、最終的にマイクロコンピュータ504のRXD端子で受信される。マイクロコンピュータ504は自分が送信したコマンド信号を含めたデータパケットを受信し、正常にコマンド信号転送が行われ、かつセルコントローラIC300a〜300dが付加したデータがある場合にはそのデータが受信される。
【0043】
なお、FF信号のセルコントローラIC300a〜300dのFF入力端子FFINおよびFF出力端子FFOUTを経由するループは、単電池セルの過充電あるいは過放電の状態を検出するループであり、リチウムイオン単電池セルの安全性確保のために重要な過充電の検出の信頼性を、TXD端子とRXD端子を経由する通信ラインとは別の系統で検出するためのものである。FF信号は一定周期の矩形波信号を想定しており、例えば、正常状態は1kHzの矩形波で、過充電状態は2KHzの矩形波とする。セルコントローラIC300はFF入力端子FFIN入力に1KHzの矩形波が入力された場合、上位のセルコントローラIC300は正常な状態である(過充電でない)と認識し、当該セルコントローラIC300のセル電圧検出値が過充電電圧を検出した場合には、FF入力端子FFINの入力信号の周波数が1kHzか2kHzのどちらの場合でも、FF出力端子FFOUT出力に2kHzの矩形波を出力し、過充電状態を下位のセルコントローラIC300に出力する。また、FFIN端子の入力信号の周波数が1kHzあるいは2kHz以外の信号の場合は、FF出力端子FFOUTに矩形波を出力しないものとする。
【0044】
あるセルコントローラIC300がその制御するセルグループの単電池セルの過充電電圧を検出していなくても、FF入力端子FFINに他のセルコントローラIC300から2kHzの矩形波が入力されると、当該セルコントローラICはFF出力端子FFOUTに2kHzの矩形波を出力する。このようにしてFF信号ループはいずれかのセルコントローラIC300が過充電を検出したことを出力し、マイクロコンピュータ504は高速の通信信号ループとは別の経路で過充電を検出できる。
【0045】
尚、マイクロコンピュータ504は、通常、最上位のセルコントローラIC300aに1kHzの正常状態を示す矩形波を出力するものとする。マイクロコンピュータ504が2kHzの過充電を示す矩形波を出力すれば、マイクロコンピュータ504は、全部のセルコントローラIC300a〜300dが過充電電圧を検出していなくても、戻ってきたFF信号の矩形波が2kHzであれば、FFループが正常に動作していることを確認することができる。また、FFループに障害が発生した場合、例えば断線した場合は、矩形波が伝送されないのでその状態を識別できる。
【0046】
図4はセルコントローラ200内のセルコントローラIC300a〜300dとバッテリーコントローラ500内のマイクロコンピュータ504の間を別の方法で接続する例を示す図である。図3との違いは、各ラインの接続で、組電池の中間点のスイッチ105の間の通信接続ラインにコンデンサ403を用いた点である。コマンド信号、FF信号は短パルスの矩形波信号であり、コンデンサ結合を用いてもデータ通信は可能であるので、このような回路を採用することで、フォトカプラのような電源を必要とする絶縁素子を削減することができ、このような絶縁素子による消費電流を削減することができる。
【0047】
図5は、1つのセルコントローラIC300の内部構成を示す説明図である。また、ロジック部213の構成概略を図6に示す。
ここでは、セルグループ102は12個の単電池セル101(セル1〜12とする)から構成されている。セルグループ102とこれを制御するセルコントローラIC300とは、各々の単電池セルの電圧検出を行う電圧検出線SL1〜SL13とを介して、それぞれの電圧検出用のCV端子(CV1〜13端子)とバランシング動作を行うBS端子(BS01H〜BS12H端子およびBS01L〜BS12L端子)とに接続されている。各単電池セルの両端すなわち正極端子と負極端子はそれぞれ、セル入力抵抗Rcv202を経由してCV端子に接続され、それぞれのCV端子には最下位のGND端子との間にセル入力コンデンサCin203が接続されている。
【0048】
このセル入力抵抗Rcv202とセル入力コンデンサCin203でRCフィルタを構成し、インバータ700の動作に起因してセル電圧に重畳するリップル電圧を主とするノイズを抑制する。単電池セルの両端の電圧端子はバランシング抵抗(Rb)201を通じてバランシングスイッチ端子(BS端子)に接続される。IC内部にはバランシング電流を通電するバランシングスイッチ(BS)222が接続されている。BS222をオンとするとバランシング抵抗201を通じて当該セルのバランシング電流が流れる。尚、BS端子間にはバランシング端子コンデンサ(Cb)204が接続されている。これは、後述するバランシングスイッチ診断時の誤動作防止のためのもので、インバータ700の動作に起因するリップル電圧等のノイズで誤検出しないようにしている。なお、図5ではバランシング抵抗201は、バランシングスイッチ毎にこのバランシングスイッチを挟むように2個設けられているが、1個だけ設けるようにしてもよい。
【0049】
なお、各単電池セルのバランシング放電用のBS端子と、端子間電圧測定用のCV端子とはそれぞれ専用の端子として設けられている。また、バランシング抵抗Rb201と、バランシングスイッチBS222とで構成されるバランシング放電回路は、セル入力抵抗Rcv202より単電池セル側で電圧検出線に接続されている。これによって、バランシング電流がセル入力抵抗Rcv202を流れないため、正確な端子間電圧測定が可能となっている。電圧検出線に断線の無い正常な状態では、バランシング放電回路のバランシング抵抗Rb201とバランシング端子コンデンサCb204、およびバランシングスイッチ222のオン・オフは、端子間電圧測定に影響を与えない。従来は、特開2010−249793号公報に記載されているように、バランシング放電用の回路の一部が端子間電圧測定用の回路(電圧検出線とセル入力抵抗)と共通となっている場合が多く、バランシング放電を行うと端子間電圧が低下するようになっていた。従って、正確な端子間電圧測定は、バランシング放電を停止して実施していた。
また、セル入力コンデンサCin203は、従来は各単電池セルの正負極に接続された電圧検出線の間に接続されていたが、本発明による構成では、このセル入力コンデンサCin203の負極側が、GNDに接続されている。この回路構成を採用することにより、断線の無い正常な状態においては、バランシングスイッチのオン・オフによって、コンデンサCin203が放電されることがなく、従って、バランシング放電中に各単電池セルの端子間電圧測定を正確に行うことができる。
【0050】
CV端子はセルコントローラIC300の内部でマルチプレクサ210の入力端子(Min端子、Min1〜Min13)に接続されている。マルチプレクサ210は各々のセルを選択して、その正極電位と負極電位を出力するもので、ロジック部213のマルチプレクサ入力選択レジスタ245からの出力で制御される。マルチプレクサ210の出力は差動増幅器211を通じて各単電池セルの端子間電圧に変換され、その電圧はADコンバータ212でデジタル値に変換される。ADコンバータ212の動作はロジック部213で制御され、ADコンバータ212の出力はロジック部213で処理される。すなわち、差動増幅器211とADコンバータ212とで電圧測定を行っている。
【0051】
このADコンバータ212には例えば逐次比較型等の高速なADコンバータを採用している。このような高速なADコンバータを用いることで、後述のマルチプレクサの診断などを高速に行うことができるようになっている。
高速なADコンバータは信号にノイズ成分があると、これをそのまま検出してAD変換してしまう。このため、端子間電圧測定用のCV端子に接続されている電圧検出線の各々にセル入力抵抗Rcv202とセル入力コンデンサCin203を設けてRCフィルタを構成し、ノイズを除去してからマルチプレクサ210、差動増幅器211を経由してADコンバータ212に入力されるようになっている。
【0052】
例えば、このCV端子のRCフィルタのカットオフ周波数は50Hz程度となるようにしている。これにより、インバータ700の半導体スイッチング素子のスイッチングによるノイズ(p−pで約20%、20kHz程度)は1/100以下にすることができる。
バランシング端子(BS端子)に接続されたコンデンサCb204はバランシングスイッチのノイズ対策用に設けられているバイパスコンデンサである。バランシング抵抗Rb201とバランシング端子コンデンサCb204で構成されるRCフィルタのバランシング放電回路の時定数は小さいので、後述するように、バランシング電流検出での断線判定を高速に行うことができる。また、この方法での断線判定はバランシング電流が流れたかどうかを判定して行われるので、判定の閾値はインバータからのノイズが問題とならないように設定することができる。なお、まとめて後述するようにこのバランシング放電回路のRCフィルターのカットオフ周波数は、上記の端子間電圧測定用のCV端子のRCフィルターのカットオフ周波数の10倍程度に設定されている。
【0053】
なお、CV端子のRCフィルタのカットオフ周波数を上記より高めに設定し、これにより取り切れないノイズ成分を除去するために、ADコンバータでサンプリングを複数回行い、この複数のサンプリング結果を平均化してノイズ成分を取り除くことも可能である。
【0054】
図5においては、単電池セル(セル1〜セル12)の正極あるいは負極からマルチプレクサ210の入力端子Min1〜Min13までの間を電圧検出線としている。ただし、後述する電圧検出線の断線検出においては、単電池セル(セル1〜セル12)の正極あるいは負極からセルコントローラ200の入力までの間(図1または図2参照)での断線検出を目的としている。
【0055】
マルチプレクサ210の入力端子Min1〜Min13に接続される電圧入力ライン(すなわち電圧検出線)で、2つの隣り合う電圧入力ライン、すなわち各単電池セルの正極に接続された電圧検出線と負極に接続された電圧検出線の間にはマルチプレクサ入力短絡スイッチ224が設けられている。各単電池セルに対応したマルチプレクサ入力短絡スイッチ224をそれぞれSWX1〜SWX12とする。また各電圧入力ラインにはマルチプレクサ入力保護用の抵抗Rmpxが設けられている。
なお、マルチプレクサ210の入力端子Min14〜Min17は後述するブロック電圧入力部225からの出力電圧の入力のために設けられており、これらの入力ラインの間にもマルチプレクサ入力短絡スイッチSWX14〜SWX16が設けられている。
【0056】
図6はロジック部213の構成の概略を示したものである。このロジック部の動作と機能については、後述する断線検出方法およびその診断方法で説明する。ここでは構成について簡単に説明する。
ロジック部213にはADコンバータ212からの検出電圧信号が入力され、これが電圧比較部240で所定の閾値と比較される。例えば、検出電圧信号が所定の閾値より大きければ、正常な電圧が検出されたとして検出結果「1」を検出結果レジスタ241に、マルチプレクサ210で選択された入力の測定順に格納する。
【0057】
なお、バランシングスイッチ状態検出回路223を動作させて、バランシング電流の有無の検出あるいは、バランシングスイッチ222の診断を行った場合は、これらの結果が検出結果レジスタ241に直接格納される(図5の2参照)。
【0058】
検出結果レジスタ241に格納された検出結果に基づいて、後述する断線検出方法に従い、断線判定部242は電圧検出線の断線判定を行う。この断線判定は、連続した測定(単電池セルの端子間電圧、バランシング電流の有無)の結果を2つ以上参照して行われる。電圧検出線の断線判定の結果は診断結果レジスタ243に格納される。
なお、後述するが、断線検出に関与する回路およびロジックの診断のための測定を行った場合にも、検出結果レジスタ243にこれらの測定結果が格納される。これらの診断における測定結果に基づく断線検出に関与する回路およびロジックの診断では、1回の連続した測定で、この測定に対応した部分の診断が断線判定部242で行われ、同様に診断結果レジスタに格納される。
【0059】
ADコンバータ212の出力は、上述のように、マルチプレクサ210で選択された単電池セルの端子間電圧、あるいは入力端子Min1〜Min13に接続された2つの電圧検出線の間の電圧である。断線検出や診断以外の通常の蓄電装置100の動作では、各単電池セルの端子間電圧は電圧測定結果レジスタ244に格納される。また後述するように、断線検出を単電池セルの端子間電圧の測定値を用いて行う場合にも、各単電池セルの端子間電圧は電圧測定結果レジスタ244に格納される。
【0060】
診断結果レジスタ243に格納された断線検出結果または診断結果と、電圧測定結果レジスタ244に格納された各単電池セルの端子間電圧は、上述のように、セルコントローラIC300から通信ラインを介して上位コントローラ(バッテリコントローラ500)に送信される。
【0061】
ロジック部213は、セルコントローラIC300に設けられた各種のスイッチを制御するレジスタを備えている。
マルチプレクサ入力選択レジスタ245には、マルチプレクサ210を切り替えて入力を選択するためのデータが格納されている。マルチプレクサ診断レジスタ246には、後述するマルチプレクサの診断を行うための、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224を制御するデータが格納されている。バランシングスイッチ制御レジスタ247には、各セル毎に設けられたバランシングスイッチ222のオン・オフを制御するためのデータが格納されている。バランシングスイッチ状態診断レジスタ248には、バランシングスイッチ222の診断を行うための、バランシングスイッチ状態検出回路223のスイッチ回路を制御するデータが格納されている。S/H制御レジスタ249には図10に示すブロック電圧入力部225のサンプルホールド回路236内のスイッチ(不図示)を制御するためのデータが格納されている。
【0062】
後述する電圧検出線の断線検出機能やこの断線検出機能の診断のために、セルコントローラIC300に備えられた各種のスイッチを動作させるためのデータが、断線検出の命令や断線検出機能診断の命令と共に上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)から送信される。上記のレジスタには、これらの各種のスイッチを動作させるためのデータが格納される。
セルコントローラIC300は、上位コントローラから断線検出の命令や断線検出機能診断の命令を受信すると、これらのレジスタに格納されたデータを用いて各種のスイッチを動作させて、断線検出や断線検出機能の診断を行う。
【0063】
セルコントローラIC300の動作電源はVcc端子から供給される(図5、7、8、10参照)。Vcc端子に接続されたVccコンデンサ(Cvcc)206はノイズを抑えるコンデンサである。Vcc端子には、電源供給線VL1を介して、セルグループ102の端子間電圧Vccが入力される。この電源供給線VL1は、図5、7、8、10に示すように、最上位の電圧検出線SL1において抵抗Rcv202よりセルグループ側に接続されているか、あるいはセルグループ102の最上位セルであるセル1の正極側に接続されている。Vcc端子は更に、セルコントローラIC300内で電源部226に接続され、その内部のレギュレータはロジック部を含むVDD電源で動作する回路に3.3V動作電源VDDを供給する。電源VDDはまた、セルコントローラIC300のVDD端子に接続されている。VDD端子には動作安定用のVDDコンデンサ(Cvdd)205が接続され、外部のVddで動作する回路へも電源供給を行う。
【0064】
電源部226は起動信号検出部215の出力で起動する起動信号検出回路を有しており、上位セルコントローラICあるいはマイクロコンピュータ504から絶縁素子402を介して起動信号を受信すると、レギュレータへの電源供給が行われると共に、起動とPOR(パワーオンリセット)動作を行う。セルコントローラIC300が起動するとロジック部213からの出力で起動信号出力部216が動作し、下位のセルコントローラIC300に起動信号を出力する。尚、起動信号出力部216にはセルコントローラIC300の外側にコンデンサが接続されるようになっている。このコンデンサはチャージポンプ動作をおこなうもので、このセルコントローラIC300の電源Vccよりも設定電圧だけ高い電圧を発生させるためのものである。
【0065】
Vcc端子は起動信号検出部215へ常時接続され、セルコントローラIC300の全体の動作が停止している状態でも、起動信号検出部215にのみ電源が供給されている。ただし、セルコントローラICが動作停止状態では電源は電池(セルグループ102)から供給されるため、起動信号検出部215は、その消費電流をできるだけ少なくする回路構成となっている。
【0066】
図7は、図3の最上位セルコントローラIC300aについて、その起動信号検出部215、コマンド信号受信部217、およびFF信号入力部218と外部回路との接続例を示す図である。セルコントローラIC300が最上位設定の場合、起動信号入力端子はWU_RX端子が使用される。この端子にはフォトカプラである起動用低速絶縁素子402が接続され、マイクロコンピュータ504が駆動用トランジスタ404を通じて起動用の低速絶縁素子402のダイオードに電流を通電することで、絶縁されたトランジスタ側がオンとなる。低速絶縁素子402のトランジスタ側はコレクタ側がセルコントローラIC300のVccに抵抗を介して接続されており、トランジスタ側がオンとなると、セルコントローラIC300のWU_RX端子にはVccが印加される。起動信号検出部215は設定された閾値を有するコンパレータであり、絶縁素子402のトランジスタのオン状態を検出すると電源部226へ起動検出信号を出力する。このようにすれば、上述したように、動作停止状態の消費電流を下げることが可能となる。
【0067】
また、コマンド信号受信部217には端子RXDが使用される。この端子にはコンデンサ403を介してトランスを用いた小型の通信用の高速絶縁素子401が接続され、マイクロコンピュータ504から通信信号が送信される。この高速通信用絶縁素子には、例えばデジタルアイソレータを使用するが、これはフォトカプラと異なり、送信側にも動作電源が必要である。この動作電源はセルコントローラIC300の動作電源VDDがVDD端子を用いて供給される。このVDDは動作停止時に出力されないため、動作停止中に暗電流が流れることはない。尚、コマンド信号受信部217はパルス信号を検出するもので、検出されたパルス信号はデジタル通信信号としてロジック部213で利用される。
【0068】
また、FF信号入力部218には端子FFINが使用され、コマンド信号受信部217の場合と同様に、フォトカプラである低速絶縁素子402とコンデンサ403を通じて、マイクロコンピュータ504が駆動用トランジスタ405を駆動して、FF信号が伝達される。尚、FF信号入力部218はパルス信号を検出するもので、検出されたパルス信号はロジック部213で過充電あるいは過放電信号として検出される。
【0069】
図8は、図3の最下位セルコントローラIC300dについて、そのコマンド信号出力部220、FF信号出力部221と外部回路との接続例を示す図である。コマンド信号出力部220のコマンド出力信号は、出力端子TXDから出力され、コマンド信号通信用の高速絶縁素子401を経由してマイクロコンピュータ504のデータ受信ポートRXDで受信される。トランスを用いた通信用の高速絶縁素子401は送信側の供給電源としてセルコントローラIC300のVDDが使用される。FF信号出力部221の出力信号端子FFOは、駆動用トランジスタ410を通じてフォトカプラである起動用の低速絶縁素子402を駆動し、フォトカプラからの出力信号はマイクロコンピュータ504のFF信号入力ポートに入力される。なお、マイクロコンピュータ504から出力された起動信号がすべてのセルコントローラICで受信されたことは、最下位セルコントローラIC300dが起動された後のFF信号出力がマイクロコンピュータ504で受信されたことによって確認される。低速、高速絶縁素子401、402を介した信号の授受は図7で説明した場合と同様であるので、説明は省略する。
【0070】
図3図4図7に示したように、セルコントローラIC300間の通信およびFF信号の伝達はコンデンサ403を用いて行うようにしている。具体的な受信部の回路構成を図31に示す。コンデンサ結合された入力端子RXには、Vdd/2の電圧が印加された負荷抵抗が接続され、その正極側端子は、Vdd/2を閾値とするヒステリシス特性を有するコンパレータに接続され、入力端子RXに印加されたパルス信号がコマンド信号として再生される。
【0071】
なお、コンデンサ結合ではコマンド信号のDUTY比によって直流成分が変動するため、DUTY比が50%であることが、ノイズ耐性の点から好ましい。したがって、FF信号は、DUTY比が50%の矩形波としているが、高速の通信信号もDUTY比が50%の信号であることが好ましい。その通信信号方式として、論理“0”と“1”で矩形波の周波数を変えるFSK方式(Frequency Shift Keying)、あるいは、論理“0”と“1”で矩形波のパルス幅を変えるPWM方式(Pulse Width Modulation)があり、この方式を使用することでノイズ耐性をあげて、信頼性を確保することが可能となる。図32にFSK方式の通信波形例を示す。図に示されるようにデータ“1”送信時のパルス信号周期がデータ“0”送信時のパルス信号周期の半分となっているので、データ送信時のデューティ比は50%であり、直流成分の変動はなく、図31のような回路構成で信頼性の高い通信が可能である。
【0072】
図5図7図8では、図で上側に示すセルコントローラIC300を下位セルコントローラIC300とし、下側に示すセルコントローラIC300を上位セルコントローラIC300としている。これは、図3図4に示すように、本発明による蓄電装置の例では、マイクロコンピュータ504からの指令は、図で下側に示すセルコントローラICに最初に送信されており、通信経路での順番に基づいてセルコントローラの上位・下位としているためである。マイクロコンピュータ504からの指令を図で上側に示すセルコントローラICが最初に受信するような回路構成でもよいので、セルコントローラICの上位・下位については図示されている状態に限定されるものではない。
また図3図4の各セルグループの参照番号102a〜102dも、ここで示すセルコントローラICの上位・下位の関係に合わせて設定しており、図で一番下側のセルグループが102aとなっている。
ただし、各セルグループの中での単電池セルに関しては、図の上側の単電池セルの電位が高いので、図で上側に示す単電池セルを上位の単電池セルとしている。
【0073】
図9はバランシングスイッチ(BS)222の診断を行う、バランシングスイッチ状態検出回路223の説明図である。バランシングスイッチBS222はロジック部213のバランシングスイッチ制御レジスタ247の出力で制御される。バランシングスイッチBS222の診断は、BS222の端子間電圧をコンパレータ229で電圧源227と比較することによって行われる。すなわちバランシングスイッチBS222がオン状態の場合には、BS222の端子間電圧vBSは、バランシング電流iBS×バランシングスイッチのオン抵抗rBSとなり、BS222がオフ状態の場合には、vBSは単電池セル101の端子間電圧となる。従って、コンパレータ229の閾値は単電池セル101の電圧の使用範囲の最低値と、iBS×rBSの想定最大値の間の電圧にすればよい。例えば、単電池セル101の最低使用電圧を2V、最大バランシング電流を100mA、オン抵抗最大値を10Ωとすれば、バランシング動作中のBS222の端子間電圧は最大1Vとなるので、コンパレータ229の閾値を1.5Vとすればよい。すなわちコンパレータ229の閾値電圧として入力される電圧源227の電圧を1.5Vとする。
【0074】
このバランシングスイッチBS222の診断は、BS222がオフ状態のときと、オン状態のときに、ロジック部213が、コンパレータ229の出力を検出して行う。スイッチ回路(SW)228は通常、コンパレータ229の+入力側にBS222の正極側電圧が入力され、−入力側に電圧源227の閾値電圧が入力されるように操作される。バランシングスイッチBS222がオフの場合、BS222の正極側電圧は単電池セル101の端子間電圧となるので、コンパレータ229の出力は1(またはHigh)となる。また、バランシングスイッチBS222がオンの場合、BS222にバランシング電流が流れるので、BS222の正極側電圧は上記のようにiBS×rBSとなり、コンパレータ229の出力は0(またはLow)となる。
【0075】
このように、コンパレータ229の出力はバランシング電流が通電されているかどうかを示すので、ロジック部213がバランシングスイッチ(BS)222をオンと制御した時にコンパレータ229の出力がHighとなり、バランシング電流が流れていないと判断されれば、BS222が開放故障したか、バランシング電流通電回路が開放になったと判断できる。また、ロジック部213がBS222をオフと制御した時にコンパレータ229の出力がLowとなり、バランシング電流が流れていると判断された場合には、BS222が短絡故障したか、BS222の端子間が短絡したか、バランシング端子コンデンサ(Cb)204が短絡故障したと判断できる。
【0076】
尚、この例ではコンパレータの閾値を1個としたが、2個のコンパレータを用いて2種類の閾値で判断してもよい。例えば、この2種類の閾値をそれぞれ、バランシングスイッチオン時に想定される最大のBS222の端子間電圧と、想定される最小の端子間電圧に設定しておけば、流れたバランシング電流が想定される範囲内であるかどうかを判断できる。なお、コンパレータ出力の検出タイミングは、上位コントローラ(バッテリコントローラ500)からの指令でバランシングスイッチBS222をオンとしたときに、コンパレータの出力を読み込むことで行なわれる。
【0077】
(BS診断回路の入力切り替えによるBS診断回路の診断)
コンパレータ229の入力にはスイッチ回路(SW)228が挿入され、図9(a)と(b)に示すように、ロジック部213の信号でコンパレータの+側入力電圧と−側入力電圧とを切り替えるようになっている。これは、このバランシングスイッチ状態検出回路223の診断を行うためのものである。このSW228を切り替えると、コンパレータ229の出力が反転するのでコンパレータ229が正常に動作しているかどうか、上位コントローラ(バッテリコントローラ500)からの制御で、ロジック部213を通じて確認することができ、信頼性をあげることができる(図9(b)参照)。また、後述する断線診断コマンドでの断線診断時に、擬似断線状態を作成して断線診断動作の診断を行うことも可能となる。なお、このスイッチ回路228は、ロジック部213のバランシングスイッチ状態診断レジスタ248の出力で制御される。
【0078】
(ブロック電圧測定)
図10は、ブロック電圧の測定を行う回路の説明図である。図2で示されるように、バッテリーコントローラ500は総電圧測定回路を有していない。その代わりとして、バッテリーコントローラ500は、上位コントローラ(インバータまたは車両コントローラ)から電池システム104の総電圧を測定する指令をCAN(Controller Area Network)通信で受信すると、電池システム104の複数のセルグループのそれぞれのセルグループ全体の電圧(ブロック電圧と呼ぶ)をほぼ同時に測定する指令を、図3図4で説明したように、複数のセルコントローラIC300に送信する。セルコントローラIC300の各々は、制御対象である12個の単電池セルからなるセルグループ全体の電圧(ブロック電圧)を測定し、バッテリーコントローラ500はそのデータを通信で受信して各ブロック電圧を積算し、電池システム104の総電圧とする。
【0079】
(ブロードキャストコマンドによるブロック電圧測定)
この際、バッテリーコントローラ500は一回のコマンドで全部のセルコントローラIC300に対してそれぞれが制御するセルグループのブロック電圧の測定を行う指令を出す。このコマンドは特定のアドレスのセルコントローラIC300を指定するものではなく、全部のセルコントローラIC300に対して一度のコマンド送信で行われる。各セルコントローラIC300がこのブロック電圧測定の指令を受信するタイミングは、信号の伝送経路長による遅延のため、μsecオーダーの差が生じ、従って、各セルコントローラICがブロック電圧測定を行うタイミングもμsecオーダーでずれることになる。しかしながら、ブロック電圧入力部225には、以下で説明するようにカットオフ周波数の低いフィルタが入っており、μsecオーダーのタイミング差では、ブロック電圧の測定値には殆ど差が生じないため、各ブロック電圧の測定はほぼ同時に行われると見なすことができ、電池システム104の総電圧の測定には影響しない。
【0080】
このように、ブロードキャストコマンドによるブロック電圧測定を行うことで、全セルコントローラICが、それらに対応する各セルグループの端子間電圧を、ほぼ同時に測定する。上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)は、その各セルグループの端子間電圧を通信ラインを介して読み込み、それらの総和をとることにより組電池の総電圧とすることが可能となる。
【0081】
図10に示すように、1つのセルグループ全体の電圧、すなわち1つのセルグループの端子間電圧(=ブロック電圧)は、Vcc端子を通じて電源部226に印加される。電源部226にはブロック電圧通電スイッチ230が内蔵され、このスイッチはセルコントローラIC300が起動するとオンとなる。ブロック電圧通電スイッチ230の出力電圧は高精度の高抵抗を用いた分圧抵抗231と232で分圧され、ノイズ除去用RCフィルタであるフィルタ抵抗233とフィルタコンデンサ234を介してサンプルホールド回路236に入力される。このRCフィルタのカットオフ周波数は、前述のCV端子のRCフィルタのカットオフ周波数と同程度に設定されている。
【0082】
サンプルホールド回路236はロジック部213で制御され、サンプルホールドコンデンサ236に上記の分圧されたブロック電圧を保持する。サンプルホールド回路236の出力は、後述するマルチプレクサ入力短絡スイッチ224を経由してマルチプレクサ210に入力される。ブロック電圧測定時はマルチプレクサ210の入力切り替えがロジック部213から指定されて、入力15と入力17に分圧されたブロック電圧が入力される。マルチプレクサに入力された分圧されたブロック電圧は、さらに差動増幅器211を経由してADコンバータ212でデジタル値に変換される(図5参照)。なお、このサンプルホールド回路236内のスイッチ(不図示)は、ロジック部213のS/H制御レジスタ249の出力により、サンプルホールドを行う場合にオンとするように制御される。
【0083】
ブロック電圧測定による各セルグループの端子間電圧の測定は、セルグループの各単電池セルの端子間電圧の測定とは別に、上記のようにブロードキャストコマンドによって一斉に行われる。また、電池システム104の総電圧は、常時監視されている必要があるため、このブロック電圧測定は、ほぼ一定間隔(例えば100ms毎)で頻繁に行われる。
サンプルホールド回路236は、後述する断線診断において各単電池セルの端子間電圧測定等を実施する場合は、その測定が終了してから、セルグループの端子間電圧とこのセルグループの各単電池セルの端子間電圧とを一緒に上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)に送信するので、この断線診断での単電池セルの端子間電圧測定が終了するまで、ブロック電圧の測定結果を保持する必要がある。従って、断線診断を行わない場合にはサンプルホールド回路236を設ける必要はない。
なお、上記の各セルグループの端子間電圧(ブロック電圧)を分圧した電圧から、上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)で、分圧抵抗231と232の抵抗値を用いて、各セルグループの端子間電圧値が算出される。全てのセルグループの端子間電圧の総和が組電池の総電圧として求められる。
【0084】
(ブロック電圧入力部225の暗電流遮断)
また、ブロック電圧通電スイッチ230を設けている理由は、セルコントローラIC300の動作停止時に分圧抵抗231と232に流れる電流を遮断して、暗電流を小さくするためである。
【0085】
(フィルタコンデンサの外部接続によるRCフィルタの周波数特性設定)
なお、上記のRCフィルタを構成するフィルタ抵抗233は、その機能を分圧抵抗231に代替させることにより省略することができる。更に、フィルタコンデンサ234をセルコントローラIC300の外部に設置し、このフィルタコンデンサ234の容量を適宜選択することにより、RCフィルタを所望の周波数特性を持つようにすることができる。
図11(a)はこの場合の回路の例を示すものであり、特に図10のブロック電圧入力部225の部分を抜き出して示したものである。ここでは、フィルタコンデンサ234をセルコントローラIC300の外部に設置するため、外部接続端子VblkFが設けられている。
【0086】
また、セルコントローラIC300内に高精度の分圧抵抗を内蔵できない場合には、例えば、図11(b)に示すように、更に外部接続端子Vvdを設けて、セルコントローラIC300の外部に分圧抵抗231と232を設置しても良い。ここでは、分圧抵抗231と232をセルコントローラIC300の外部に設置するため、更に外部接続端子Vvdが設けられている。
【0087】
(MPX診断)
図5に示したように、マルチプレクサ210の各入力端子にマルチプレクサ入力短絡スイッチ224が接続され、ロジック部213の出力で各入力端子間を短絡することができるようになっている(図6参照)。これは、マルチプレクサ210が正常に動作しているかどうか診断するためのものである。マルチプレクサ210はその入力指定をロジック部213内にあるマルチプレクサ診断レジスタ246で行うようになっている。このレジスタ246が故障した場合、正常な入力端子の指定ができなくなり、セル電圧を含めた全ての電圧検出が正常に行えないことになる。そこで、ロジック部213内にマルチプレクサ入力短絡スイッチ224を制御するマルチプレクサ診断レジスタ246を設け、その出力で診断を行う。
【0088】
図12を用いて具体的な動作を説明する。図12は、セル電圧入力が正常に切り替わっているかどうか診断するためマルチプレクサ入力短絡スイッチ224(SWX1〜12)の切り替え状態を示したものである。
【0089】
このマルチプレクサ210の診断は、入力短絡スイッチSWX1〜12の内1つをオンとし、これ以外をオフとした状態で、全ての単電池セル(セル1〜セル12)の端子間電圧を測定するように、マルチプレクサを切り替えて端子間電圧の測定を行う。この測定結果から、ある単電池セルを選択するためのマルチプレクサの状態で他の単電池セルが選択されないことを確認するため、全ての組み合わせでの測定を行う。
なお、単電池セルの端子間電圧の測定を行う場合は、この単電池セルの正極に接続された電圧検出線と負極に接続された電圧検出線を選択するようにマルチプレクサを切り替える。すなわち、例えば、セル1を選択する場合は、図5で入力端子Min1とMin2を選択するようにマルチプレクサ210を制御する。このマルチプレクサ210の制御は、ロジック部213のマルチプレクサ入力選択レジスタ245の出力で行われる。
【0090】
図12(a)に示す1つの行は、マルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1〜12の内いずれか1つのみをオン(ON)とし他のスイッチをオフ(OFF)として、全ての単電池セル(セル1〜セル12)の端子間電圧を測定することを示している。例えば測定番号「M1X1〜12」の行では、マルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1のみがオンとされた状態で、セル1〜セル12の端子間電圧が測定されることを示している。この時の測定番号をM1X1〜M1X12としている。
【0091】
例えば測定番号M1X1の測定では、入力端子Min1とMin2が選択され、セル1の端子間電圧がマルチプレクサ210から差動増幅器211に出力される。差動増幅器211の出力はADコンバータ212でデジタル値に変換され、ロジック部213の電圧比較部240に入力されると共に、電圧測定結果レジスタ244に格納される。
電圧比較部240では、セル1の端子間電圧に対応したADコンバータ212の出力が所定の閾値より小さければ、検出結果レジスタ241に例えば「0」を書き込み、所定の閾値より大きければ「1」を書き込む。「1」は正常な電圧(単電池セル1個分)が検出されたことを意味する。「0」はマルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1がオンとされ、マルチプレクサ入力端子Min1とMin2が短絡されたために、0Vが検出されたことを意味する。なお、「所定の閾値電圧」は、単電池セル1個分の電圧に対応するデジタル値と0Vに対応するデジタル値の間に設定される。
【0092】
このようにして、測定番号M1X1〜M1X12の測定結果が検出結果レジスタ241に書き込まれる。マルチプレクサ210が正常に動作して切り替えられていれば、測定番号M1X1〜M1X12の測定の内、M1X1の結果のみが「0」となり、これ以外の測定は「1」となる。
【0093】
図12(b)は、マルチプレクサ210の切り替え動作が正常であるとして、図12(a)に示す全ての測定(M1X1〜M12X12)を実行した場合の予想検出結果をまとめたものである。
もしM1X1〜M12X12のいずれかの測定で、図12(b)に示す値と異なる値が検出された場合は、これに対応したマルチプレクサ210内の切り替えスイッチに異常があることを示す。
【0094】
マルチプレクサ210が正常な場合の予想検出結果と異なる値が検出された場合は、マルチプレクサ210に異常があることを診断結果レジスタ243に書き込む。
また、異常な値が検出された測定番号が複数検出された場合、これによってマルチプレクサ210内のどの切り替えスイッチに異常があるか判定できるので、この判定結果も診断結果レジスタ243に格納してもよい。この際には、マルチプレクサ210内の回路に対応した断線判定方法を断線判定部242に組み込むことにより、マルチプレクサ内のどのスイッチに異常があるか判定できるようにすることも可能である。しかしこの場合の断線判定方法は、マルチプレクサ210内の回路構成により異なるので、ここでの説明は行わない。
【0095】
マルチプレクサ210の動作診断を断線判定部242で行わない場合は、電圧比較部240での電圧検出の結果を一旦検出結果レジスタ241に格納せず、診断結果レジスタ243に直接格納してもよい。またこの診断結果レジスタ243への格納では、すべての検出結果を格納してもよく、また異常の起こった場合のみ格納するようにしてもよい。
これは上記で説明したマルチプレクサ210の診断は、図12に示す各測定番号M1X1〜M12X12の各々の測定での結果毎に断線判定部242が異常かどうかの判定を行ってもよく、図12(b)に示す1行毎の12個の測定結果が検出結果レジスタ241に格納された状態で、まとめておこなってもよく、また12個の測定結果が検出結果レジスタ241に格納された状態で断線判定部242が判定を行わず、検出結果レジスタ241のデータをまとめて上位コントローラに読み出し、上位コントローラに設けた診断部で診断を行うようにしてもよいからである。また更にM1X1〜M12X12のすべての測定結果を一旦診断結果レジスタ243にまとめて格納し、これを同様に上位コントローラに読み出して上位コントローラが診断を行うようにしてもよいからである。
【0096】
なお、マルチプレクサ入力短絡スイッチが故障した場合も、図12(b)の予想検出結果と異なる検出値となるが、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224が故障しているか、マルチプレクサ210が故障しているか判定できない。従って、このMPX診断では、マルチプレクサ210の異常検出は、マルチプレクサ入力短絡スイッチを含むことになる。
【0097】
上記のMPX診断の説明では、マルチプレクサ210の入力端子1〜13(Min1〜13)で連続した2つの入力を選択して診断する方法を説明した。マルチプレクサ210には入力端子14〜17(Min14〜17)にブロック電圧入力部225の出力およびGND電位が接続されている。これら入力端子14〜17の診断も上記のMPX診断の中で行うことが可能であるが詳細は省略する。なお、入力端子13と入力端子14の組み合わせを選択することはない。入力端子1〜13は単電池セルの端子間電圧測定用であり、入力端子14〜17はブロック電圧入力部225の出力電圧測定用である。
【0098】
上記で説明したMPX診断はマルチプレクサ210の入力を短絡するので、入力側に入っているRmpx、Rcv、とCinなどで構成されるRCフィルタの過度特性の影響を受ける場合がある。
しかし、図5に示すマルチプレクサ210の入力抵抗Rmpxは、セル入力抵抗Rcvと同程度に設定されており、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224のオン抵抗より充分大きく設定されている。従って、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224をオンにした場合でも、セル入力コンデンサ(Cin)203の正極側電位の低下は単電池セル1個分の端子間電圧より充分小さくでき、また、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224やマルチプレクサ210を動作させて行う上記の各々の電圧測定は、このCinの電位の低下時間に比べ充分短い時間で行うことができる。これを利用して、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224をオン・オフすることにより、マルチプレクサ210を介して単電池セル1個分の電圧もしくは0Vを切り替えてマルチプレクサ210の入力に供給することができる。
【0099】
ただし、図12(a)で示す測定の回数は、全部で12×12=144回と多数回となり、図12(b)で示すように、各マルチプレクサ入力短絡スイッチを切り替える毎に、12個の単電池セルの端子間電圧測定結果が格納されるレジスタの内容に基づいてマルチプレクサの動作診断を行うので、全部の測定と診断を完了するにはある程度の時間がかかる。従ってこの診断は車両の動作中ではなく、車両停止している状態、すなわちシステムの起動時あるいはシャットダウン動作中に行うのが好ましい。インバータ700が動作していなければノイズの発生がないので、マルチプレクサを高速に動作させ、高速なADコンバータの特性を利用して、高速にかつ正確な診断を行うことができるという利点もある。
【0100】
また、マルチプレクサ入力に、単電池セルの電圧以外の別の電源からの電圧を供給する回路を追加することは容易である。どのような方法であっても正常な電圧をマルチプレクサに入力できればここで説明するマルチプレクサの診断が実行可能である。例えば、マルチプレクサ210の診断のために、電圧検出線の断線の無い別の電池システムを接続して診断を行うことも当然可能であるが、説明は省略する。
【0101】
仮に、車両の起動時に電圧検出線の断線が検出された場合には、正常な単電池セル1個分の電圧が入力されないので、マルチプレクサの診断では異常が発見されることになる。異常な端子間電圧が測定される場合は、電圧検出を行う経路のどこかで故障が生じていることを示すので、結果的に異常あるいは故障が検出され、この情報が上位コントローラに送信される。
【0102】
(セル電圧測定による断線診断)
次に断線の診断方法について説明する。断線の診断方法はセル電圧測定値を用いる方法と、バランシング電流を検出する方法がある。セル電圧測定値を用いる断線診断では、バランシングスイッチ(BS)222を用いる方法とマルチプレクサ入力短絡スイッチ(MS)224を用いる方法がある。バランシング電流を検出する方法では、バランシングスイッチ(BS)222を用いる。まずBS222を用いたセル電圧の検出によって断線診断を行う方法について説明する。
【0103】
なお、バランシングスイッチ222をオン・オフ制御して断線診断を行う場合は、以下で説明するように、1つの単電池セル101の端子間電圧の測定を行う時に、電圧測定が行われる単電池セルに設けられたバランシングスイッチだけでなく、端子間電圧測定が行われる単電池セルの上下の隣り合う単電池セルのバランシングスイッチのオン・オフ状態が電圧測定に影響を与える。
従って、図1図4で示すように、複数のセルグループおよびこれらのセルグループを制御する複数のセルコントローラIC300が直列に接続されているような場合には、直接接続されている2つのセルグループにおいて、直接接続されているが別々のセルグループに属する2つの単電池セルにおけるそれぞれの単電池セルの端子間電圧の測定で、これら2つの単電池セルのそれぞれのバランシングスイッチのオン・オフの状態が互いの端子間電圧の測定に影響を与える。
例えば、図3あるいは図4に示すように、サービスディスコネクトスイッチ(SD−SW)105の上下のそれぞれ2つのセルグループが直列に接続されている場合、各々の直列に接続された2つのセルグループ間で直接接続されている2つの単電池セルに設けられたバランシングスイッチのオン・オフ状態がこれら2つの単電池セルの電圧測定に互いに影響する。例えばセルグループ102dの最下位の単電池セルとセルグループ102cの最上位の単電池セルが直接接続されているが、これらの単電池セルにそれぞれに設けられたバランシングスイッチのオン・オフ状態がそれぞれの電圧測定に互いに影響し合う。
【0104】
従ってセルグループが複数直列に接続されている場合は、隣り合うセルグループの単電池セルのバランシングスイッチのオン・オフ状態も考慮する必要があるが、以下に記載する各単電池セルの端子間電圧の測定に関する説明ではまず、簡単のためセルグループ1つとこれを制御するセルコントローラICが1つの場合について説明を行う。すなわち、図3図4においてセルグループがSD−SW105の上下にそれぞれ1個のみあるような例で説明する。セルグループが複数直列に接続されている場合は、以下の説明を簡単に拡張できるので、本明細書の最後にセルグループが複数直列に接続されている場合について簡単に説明する。
【0105】
(バランシングスイッチをオン・オフした場合のセル電圧測定による断線診断)
図13図16は、電圧検出線が断線した時に、バランシングスイッチをオン・オフすると、どのようなセル電圧が検出されるかを示したものである。ここでは更に分かり易く説明するため、3つの単電池セル、セル1〜セル3が直列に接続されたセルグループを例に示している。
なお、電圧検出線SL1〜SL4は、それぞれ、各単電池セルの正負極からセルコントローラICの検出電圧入力端子CVを経由してマルチプレクサの入力端子Minまでの配線を意味する。この電圧検出線の配線区間で最も長いのは各単電池セルの正負極からセルコントローラ200までの間の配線であり、この区間の配線はセルグループあるいは電池モジュール毎に束ねられた状態となっており、ハーネスとも呼ばれている。電池モジュールからの電圧検出線は、セルコントローラ200にコネクタ(不図示)で接続されている。電圧検出線の断線の殆どは、各単電池セルの正負極での接続部からセルコントローラ200のコネクタ部分までの間で発生する。以下の説明でも断線はセルコントローラへの入力までで発生するとし、この部分の電圧検出線の断線を検出する方法について説明する。また、マルチプレクサ210以降の電圧検出系は正常に動作しているとする。
【0106】
(電圧検出線SL1が断線した場合)
図13は、最上位(最高電位)の電圧検出線、すなわちセル1の正極側に接続された電圧検出線SL1が断線した場合に、セル1〜セル3のバランシングスイッチBS1〜BS3をオン・オフした時のセル1〜セル3の検出電圧を示したものである。
セル1の端子間電圧V1、すなわち電圧検出線SL1とSL2の間の電圧は、バランシングスイッチBS1がオンの場合は0Vとなる(図13(a))。この際、セル1のセル入力コンデンサCinの電荷は、セル2のセル入力コンデンサと同程度となるまで放電される。セル入力コンデンサCinの印加電圧に対応した電荷の充放電については明白であるので、以下の説明では省略する。
また、バランシングスイッチBS1がオフの場合は電圧検出線SL1がフローティングとなるため、電圧は不定となる。バランシングスイッチBS2とBS3のオン・オフはセル1の電圧測定には影響しない(図13(a)、(b))。
【0107】
(電圧検出線SL2が断線した場合)
図14は、セル1の負極側、すなわちセル2の正極側に接続された電圧検出線SL2が断線した場合に、セル1〜セル3のバランシングスイッチBS1〜BS3をオン・オフした時のセル1〜セル3の検出電圧を示したものである。
バランシングスイッチBS1とBS2のいずれか片方がオンでもう片方がオフの場合、バランシングスイッチBSがオンとなっている単電池セルの検出電圧(セル電圧)が0Vとなり、バランシングスイッチBSがオフとなっている単電池セルの検出電圧はセル1の電圧V1とセル2の電圧V2の和となる(図14の(a)と(b))。なお、BS3のオン・オフはセル1、セル2の電圧測定には影響しない。また、セル3の検出電圧はBS1、BS2の状態に関係無く、セル3の端子間電圧V3となる。
【0108】
BS1とBS2が共にオンの場合は、セル1およびセル2の検出電圧は、電圧検出線SL1とSL2の間に接続された抵抗Rb(バランシング抵抗)により分割された電圧が検出される。ここではRbはすべて同じ抵抗値を想定しているので、セル1およびセル2の検出電圧は共に(V1+V2)/2となる(図14(c))。
V1〜V3は通常ほぼ同程度の電圧であるので、セル1およびセル2の検出電圧は通常の単電池セル1個分の電圧が検出されることになる。
【0109】
BS1とBS2が共にオフの場合は、電圧検出線SL2がフローティング状態となるため、セル1およびセル2の検出電圧はともに不定となる(図14(d))。
【0110】
(電圧検出線SL3が断線した場合)
図15は、セル2の負極側、すなわちセル3の正極側に接続された電圧検出線SL3が断線した場合に、セル1〜セル3のバランシングスイッチBS1〜BS3をオン・オフした時のセル1〜セル3検出電圧を示したものである。
バランシングスイッチBS2とBS3のいずれか片方がオンでもう片方がオフの場合、バランシングスイッチBSがオンとなっている単電池セルの検出電圧が0Vとなり、バランシングスイッチBSがオフとなっている単電池セルの検出電圧はセル2の電圧V2とセル3の電圧V3の和となる(図15の(a)と(b))。なお、バランシングスイッチBS1のオン・オフはセル2、セル3の電圧測定には影響しない。また、セル1の検出電圧はバランシングスイッチBS2、BS3の状態に関係無く、セル1の端子間電圧V1となる。
【0111】
バランシングスイッチBS2とBS3が共にオンの場合は、セル2およびセル3の検出電圧は、電圧検出線SL1とSL2の間に接続された抵抗Rb(バランシング抵抗)により分割された電圧が検出される。ここではRbはすべて同じ抵抗値を想定しているので、セル2およびセル3の検出電圧は共に(V1+V2)/2となる(図15(c))。
V1〜V3は通常ほぼ同程度の電圧であるので、セル2およびセル3の検出電圧は通常の単電池セル1個分の電圧が検出されることになる。
【0112】
バランシングスイッチBS2とBS3が共にオフの場合は、電圧検出線SL3がフローティング状態となるため、セル2およびセル3の検出電圧はともに不定となる(図15(d))。
【0113】
(電圧検出線SL4が断線した場合)
図16は、最下位(最低電位)の電圧検出線、すなわちセル3の負極側に接続された電圧検出線SL4が断線した場合に、セル1〜セル3のバランシングスイッチBS1〜BS3をオン・オフした時のセル1〜セル3の検出電圧を示したものである。
セル3の端子間電圧V3、すなわち電圧検出線SL3とSL4の間の電圧は、バランシングスイッチBS3がオンの場合は0Vとなり(図16(a))、BS3がオフの場合は電圧検出線SL4がフローティングとなるため、電圧は不定となる(図16(b))。なお、バランシングスイッチBS1とBS2のオン・オフはセル3の電圧測定には影響しない。
【0114】
以上、図13図16で示した各セル電圧の検出値と、電圧検出線の断線およびバランシングスイッチのオン・オフ状態との関係は、m個(m≧4)の単電池セルを直列に接続したセルグループの場合に拡張できる。この場合は、セル2〜セルm−1までの単電池セルの検出電圧(セル電圧)とそのバランシングスイッチおよび電圧検出線の断線状況の関係が同様な関係となる。なお、以下の説明で、nは2≦n≦m−1の場合を意味する。
【0115】
(検出電圧と電圧検出線の断線状態およびバランシングスイッチのオン・オフ状態の関係)
図13図16で示した電圧検出線の断線状態およびバランシングスイッチのオン・オフ状態と各セル電圧の検出値から、2つの隣り合うバランシングスイッチのオン・オフ状態と検出電圧の関係で以下の規則があることが分かる。なお、ここでは図13図16で、あるバランシングスイッチの上側に記載してあるものは上側のバランシングスイッチと呼び、下側に記載してあるものは下側のバランシングスイッチと呼ぶ。従って、例えば2つの隣り合うバランシングスイッチBSn−1とBSnは、それぞれ電圧検出線SLn−1とSLnの間および電圧検出線SLnとSLn+1の間に接続されている。
(条件)バランシングスイッチBSn−1とBSnの間の電圧検出線SLnが断線している。
(規則1)バランシングスイッチBSn−1がオン、BSnがオフの時、
セルn−1の検出電圧は0V、セルnの検出電圧は単電池セル2個分の電圧である。
(規則2)バランシングスイッチBSn−1がオフ、BSnがオンの時、
セルn−1の検出電圧は単電池セル2個分の電圧、セルnの検出電圧は0Vである。
(規則3)バランシングスイッチBSn−1とBSnが共にオンの時、
セルn−1の検出電圧とセルnの電圧は共に単電池セル1個分の電圧である。
(規則4)バランシングスイッチBSn−1とBSnが共にオフの時、
セルn−1の検出電圧とセルnの電圧は共に不定である。
なお、断線が全くない場合は正常状態であり、バランシングスイッチのオン・オフに関わらず各単電池セルの検出電圧は各々の端子間電圧、すなわち単電池セル1個分の電圧となる。
【0116】
また、電圧検出線SLn−1は断線していないが、SLn−2が断線している場合、上記規則1と同様の電圧検出を行うとセルn−1の検出電圧は、バランシングスイッチBSn−2のオンとオフとでは異なる電圧が検出される。これは、以下に図18で説明するように、このバランシング動作ではバランシングスイッチがオンになる場合とオフになる場合があるからである。後述する断線検出方法では、このような場合も考慮する必要があるので、補助規則として以下に示す。
(補助規則1)電圧検出線SLn−2が断線しており、バランシングスイッチBSn−1がオン、バランシングスイッチBSnがオフの時、
バランシングスイッチBSn−2がオフの場合、セルn−1の検出電圧は0Vとなり、
バランシングスイッチBSn−2がオンの場合、セルn−1の検出電圧は単電池セル1個分の電圧となる。
【0117】
また、同様に電圧検出線SLn−1は断線していないが、電圧検出線SLnが断線している場合、上記規則2と同様の電圧検出を行うとセルnの検出電圧は、バランシングスイッチBSn+1のオンとオフとでは異なる電圧が検出される。
(補助規則2)電圧検出線SLnが断線しており、バランシングスイッチBSn−1がオフ、バランシングスイッチBSnがオンの時、
バランシングスイッチBSn+1がオフの場合、セルnの検出電圧は0Vとなり、
バランシングスイッチBSn+1がオンの場合、セルnの検出電圧は単電池セル1個分の電圧となる。
なお、これらの補助規則1、2で単電池セル1個分の電圧が検出されるのは、抵抗によって電圧が分割されるためである(図14(c)、図15(c)参照)。
【0118】
以上の説明から、規則1または規則2を利用して2つの隣り合うバランシングスイッチを同期してオン・オフしながら全ての単電池セルの端子間電圧(セル電圧)を測定すると、正常の検出電圧である単電池セル1個分の電圧とは異なる異常な電圧(0Vまたは単電池セル2個分)が検出されるので、どの電圧検出線が断線しているか判断できることが分かる。
【0119】
ただし、バランシングスイッチが故障して、バランシングスイッチBSn−1とBSnが共にオフ状態となった場合、上記規則4と等価な状態となるために、検出電圧が不定となり、偶然、セルn−1とセルnの検出電圧が正常な電圧が検出される可能性がある。
このような場合でも、2つのバランシングスイッチが共に故障する確率は低いので、片方だけ故障した場合を考えると、例えば規則1あるいは規則2に従って、2回測定を行うとどちらかで必ず異常な電圧測定結果が得られるので、電圧検出線の断線とバランシングスイッチの故障の可能性を判断することができる。しかしながら、異常な電圧測定結果が得られた場合は、例えば後述するマルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線検出や、バランシング回路の断線診断を行って総合的に判断することにより、電圧検出線の断線かあるいはバランシングスイッチの故障か判断することが望ましい。
【0120】
また、同様にバランシングスイッチが故障して、バランシングスイッチBSn−1とBSnが共にオフ状態となり、偶然、セルn−1とセルnの検出電圧が異常な電圧となる可能性がある。
このような場合には、上記規則3に従った電圧検出で、正常(と思われる)電圧が検出されなければ、バランシングスイッチの故障の可能性が高いと判断できる。
しかしながら、異常な電圧が検出された場合は、例えば後述するマルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線検出や、バランシング回路の断線診断を行うことにより、電圧検出線の断線かあるいはバランシングスイッチの故障か判断することができるので、複数の異なる断線診断を実行することにより確実に電圧検出線の断線検出を行うことができる。
【0121】
(最上位の電圧検出線が断線した場合の電圧検出)
最上位の電圧検出線SL1は、2つの隣り合うバランシングスイッチの間に挟まれることがないので、上記の規則は適用できない。
しかしながら、この場合図13(a)に示すようにバランシングスイッチBS1のみをオンとすることで、もし異常な電圧0Vが検出された場合は電圧検出線SL1が断線していると判断できる。
また、この場合は、例えば図17(a)に示すような仮想的状態を考えると、上記規則(2)を準用することができる。
【0122】
ただし、バランシングスイッチBS1が故障して、オフ状態となり、電圧検出線SL1がフローティング状態となり、偶然異常な電圧値(0Vあるいは単電池セル2個分)が検出される可能性がある。この場合は、電圧検出線SL1が断線していると判断される。ただし、バランシングスイッチが故障しているかどうかに関しては、上記と同様に、後述するマルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線検出や、バランシング回路の断線診断を行って総合的に判断することにより、電圧検出線の断線かあるいはバランシングスイッチの故障か確実に判断することができる。
また、バランシングスイッチBS1が故障して、オフ状態となり、電圧検出線SL1がフローティング状態となり、偶然、正常な電圧値が検出される可能性もある。この場合は、検出電圧が正常であるので、電圧検出線が断線しているかどうかは検出できない。しかし、上記と同様に、後述するマルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線検出や、バランシング回路の断線診断を行って総合的に判断することにより、電圧検出線の断線およびバランシングスイッチの故障を判断することができる。
【0123】
(最下位の電圧検出線が断線した場合の電圧検出)
最下位の電圧検出線SLm+1も、2つの隣り合うバランシングスイッチの間に挟まれることがないので、上記の規則は適用できない。
しかしながら、この場合図16(a)に示すようにバランシングスイッチBS3のみをオンとすることで、もし異常な電圧0Vが検出された場合は電圧検出線SL1が断線していると判断できる。
また、この場合は、例えば図17(b)に示すような仮想的状態を考えると、上記規則(1)を準用することができる。
【0124】
最上位の電圧検出線が断線した場合と同様に、もし、バランシングスイッチBS4が故障して、オフ状態となり、偶然、異常な電圧値が検出された場合は、上記と同様に、電圧検出線は断線していると判断されるが、バランシングスイッチの故障の可能性については、後述するマルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線検出や、バランシング回路の断線診断を行って総合的に判断する必要がある。
【0125】
なお、以上で説明した、バランシングスイッチをオン・オフした場合のセル電圧測定による断線診断では、異常電圧は0Vまたは単電池セル2個分の電圧としたが、電圧検出線の断線とバランシングスイッチの故障により電圧検出線がフローティング状態となった場合は、0Vまたは単電池セル2個分の電圧以外の電圧値が検出される可能性がある。
検出された電圧値が異常かどうかは、ロジック部213において適宜閾値を設定することにより判断される。単電池セルの端子間電圧は、各単電池セルの充電状態によって変化するので、検出された電圧値によっては断線あるいは故障が正確に判断されない場合も考えられる。このような場合、上記のように、複数の診断方法による結果を総合して断線あるいは故障の判断を行うことが望ましい。
【0126】
図13図17で説明した、電圧検出線の断線状態とバランシングスイッチのオン・オフの組み合わせで、異常な電圧(0Vまたは単電池セル2個分)が測定される場合のみを抜き出してまとめたものが図18である。図18(a)は、各単電池セルで異常な電圧が検出される可能性のある場合、すなわち各単電池セルおよびバランシングスイッチを挟む2本の電圧検出線のいずれかに断線があった場合に異常な電圧を検出可能なバランシングスイッチのオン・オフ状態の組み合わせを示している。
記号「B」が記載されている欄は、バランシングスイッチがバランシング放電を行っている状態を示している。これは、断線検出に影響が無い場合は、できるかぎり各単電池セルのバランシング放電を行うことを目的としているためである。
または、図14(c)や図15(c)のように断線があるにも関わらず正常の電圧(単電池セル1個分)の電圧が検出され、見掛け上正常である場合も電圧測定に関係しないので、バランシング放電を行うこととしている。なお、この場合のバランシング放電は2個の単電池セルで行っていることになる。このような状態が長時間続くと、単電池セル毎の残存容量の調整が正常に行われないため、実際の残存容量の不均衡が生ずる可能性がある。しかし、以下に説明するような断線検出を適宜実行することで電圧検出線の断線が検出され、長時間断線状態のまま、蓄電装置100が動作状態に置かれることはない。
【0127】
以上で説明した、バランシングスイッチをオン・オフした場合のセル電圧測定による断線診断を、図5に示すような12個の単電池セルを備えたセルグループに適用した場合について説明する。
図18(b)は、電圧検出線SL1〜SL13のいずれかが断線した時の、図18(a)に示すバランシングスイッチのオン・オフ状態での検出電圧値である。0は電圧比較部240で0Vが検出され、2は単電池セル2個分の電圧が検出されることを示す。
また、記号「1」が記載されている欄は、正常な電圧(単電池セル1個分の電圧)が検出されることを意味する。Nは電圧検出線がフローティング状態になり、検出電圧も不定となる場合を示す(図13(b)および図16(d)参照)。従って、Nとなる可能性のある電圧測定は行わない。
【0128】
なお、上記の図13図18の説明は、ある電圧検出線の断線状態を仮定した場合にどのような電圧が検出されるかを示すものである。
以上で説明した、電圧検出線が断線した場合の単電池セルの端子間電圧の検出値とバランシングスイッチのオン・オフの関係を利用し、隣り合うバランシングスイッチを同期してオン・オフしながら、全ての電圧検出線を走査し、隣り合う電圧検出線間の電圧を検出することにより、どの電圧検出線が断線しているか判定できる。
【0129】
(断線検出方法A:2個の連続したバランシングスイッチのオン・オフを用いた断線検出)
図19は、上記の(規則1)と(規則2)を利用したものである。すなわち、ある電圧検出線が断線している場合に、この電圧検出を挟んで隣り合う2つのバランシングスイッチの一方をオンとし、もう一方をオフとしたときに、オンとしたバランシングスイッチが接続された2つの電圧検出線間の電圧、すなわちオンとしたバランシングスイッチを挟んで隣り合う2つの電圧検出線間で0Vが検出されることを利用している。
図19(a)は、測定番号M1AからM13Aで、端子間電圧が測定される単電池セルと、この測定の際のバランシングスイッチの状態を示したものである。また図19(b)は測定番号M1AからM14Aまでの、各単電池セルの端子間電圧(セル電圧)の検出結果と、この検出結果によりどの電圧検出線が断線判定部242によって断線と判断されるかを示している。「0」は0Vが検出されることを示し、「1」は正常の電圧(単電池セル1個分の電圧)が測定されることを示している。なお、上記で説明したように、0Vの検出には、ロジック部213の電圧比較部240での判定に閾値を設けることで行う。
【0130】
電圧検出線SL1が断線している場合は、バランシングスイッチBS1のみをオンとする(測定番号M1A)と、セル1の検出電圧は「0」となる。
また電圧検出線SL1の断線は、測定番号M2A〜M14Aでの電圧測定には影響が無い(図13(a)、(b)参照)ので、図19(b)の測定番号M2A〜M14Aでは正常の電圧値(単電池セル1個分)が検出される。
なお、電圧検出線SL2が断線している場合には、上記補助規則2で説明したように、バランシングスイッチBS2がバランシング放電動作の中でオフとなる(図14(a)参照)場合は検出電圧は「0」となり、オンとなる(図14(c)参照)場合は検出電圧は「1」となる。従って、電圧検出線SL1が断線しているか判断できない可能性がある。この場合は次の測定番号M2Aの結果を参照して断線状態を判断する。
【0131】
従って、電圧検出線SL1の断線の判定は、図19(b)で、「SL1断線」の行の太枠で囲まれた2つの測定番号M1AとM2Aでの検出結果を用いて行うことになる。このような断線判定を断線判定部242が実行する。また、ここで電圧検出線SL1が断線していると判定された場合は、診断結果レジスタ243に、電圧検出線SL1が断線していることを示す断線フラグFL1の値を1として書き込む。
【0132】
測定番号M2Aでは、電圧検出線SL2が断線していなければ、「1」が検出される(図13(b)参照)ので、測定番号M1AとM2Aの測定結果から、電圧検出線SL1の断線と判断される。
また、電圧検出線SL2が断線している場合は「0」が検出されるが、上述の電圧検出線SL1の断線の場合と同様に、上記補助規則2で説明したように、バランシングスイッチBS3のオン・オフ状態によっては、電圧検出線SL2が断線しているかSL3が断線しているか判定できないので、次の測定番号M3Aの検出結果と合わせて判断する。
なお、測定番号M2Aで、BS1をオフにし、BS2をオンとする理由は、上記の説明から明らかなように、このバランシングスイッチの状態では電圧検出線SL1またはSL2のいずれの断線においても検出電圧が「0」となるため、SL1の断線かSL2の断線か判断ができなくなるからである(図13(a)、図14(a)参照)。
【0133】
従って、電圧検出線SL2の断線の判定は、図19(b)で、「SL2断線」の行の太枠で囲まれた2つの測定番号M2AとM3Aでの検出結果を用いて行うことになる。断線していると判定された場合は上記と同様に、断線フラグFL2の値を1として診断結果レジスタに書き込む。
【0134】
電圧検出線SL13が断線している場合は、電圧検出線SL1の断線の場合と対称的な関係となる。すなわち、バランシングスイッチBS12のみをオンとする(測定番号M14A)と、セル12の検出電圧は「0」となる。
また電圧検出線SL13の断線は、測定番号M1A〜M13Aでの電圧測定には影響が無い(図16(a)、(b)参照)ので、図19(b)に示すように、測定番号M1A〜M13Aでは正常の電圧値(単電池セル1個分)が検出される。
なお、電圧検出線SL12が断線している場合には、上記補助規則1で説明したように、バランシングスイッチBS11がバランシング放電動作の中でオフとなる(図15(b)参照)場合は検出電圧は「0」となり、オンとなる(図15(c)参照)場合は検出電圧は「1」となる。従って、電圧検出線SL1が断線しているか判断できない可能性がある。この場合は1つ前の測定番号M13Aの結果を参照して断線状態を判断する。
【0135】
従って、電圧検出線SL12の断線の判定は、図19(b)で、「SL12断線」の行の太枠で囲まれた2つの測定番号M12AとM13Aでの検出結果を用いて行い、電圧検出線SL13の断線の判定は、「SL13断線」の行の太枠で囲まれた2つの測定番号M13AとM14Aでの検出結果を用いて行うことになる。断線していると判定されれば、断線フラグFL12の値として1が診断結果レジスタ243に書き込まれる。
【0136】
電圧検出線SL3からSL12の断線検出も同様に、測定番号M2AからM13Aの測定で連続した2つの測定結果から断線が検出される。例えば、電圧検出線SL4の断線は、測定番号M4Aでの検出電圧が「0」および測定番号M5Aでの検出電圧が「1」であることによって断線していると判定され、それぞれの断線に対応して断線フラグの値に1が書き込まれる。
【0137】
ただし、上記のとおり、電圧検出線SL1の断線とSL13の断線の検出では、これを検出するためのセル電圧測定でのバランシングスイッチのオン・オフ状態が逆になるので、上記の説明から、測定番号M1A、M2Aおよび測定番号M13A、M14Aの、バランシングスイッチのオン・オフ状態は、「0」により異常を検出しようとする場合は、この組み合わせで測定しなければならない。
従って、測定番号M2AからM13Aのどこかで、測定番号M2Aでの電圧検出のバランシングスイッチ状態と測定番号M13Aでの電圧検出のバランシングスイッチ状態での検出結果がうまく繋がるように、2つ連続したバランシングスイッチのオン・オフの組み合わせを逆転する必要がある。
【0138】
図19に示す例では、測定番号M8Aでこのバランシングスイッチのオン・オフの組み合わせを逆転し、セル6とセル7での電圧検出をそれぞれ2回行っている。また、電圧検出線SL7の断線の判定は、測定番号M7AとM8Aで共に「0」が検出されることによって判断している。
電圧検出線SL1〜SL11までの断線判定を、2つの連続した電圧測定での検出結果が0−1となるようにすることも可能である。しかし、電圧検出線SL12とSL13での断線判定では、2つの連続した電圧測定での検出結果が1−0の組み合わせで判定しなければならないので、このようにするにはもう1回測定回数が増やす必要がある。
【0139】
なお、前述のMPX診断で説明したように、図19(b)の各電圧検出線SL1〜SL13の断線の場合に対応した行のセル1〜セル12の電圧検出(測定番号M1A〜M14A)の結果は電圧比較部240から検出結果レジスタ241に書き込まれ、この書き込まれた1行分のデータに基づいて、断線判定部242が断線判定を行い、どの電圧検出線が断線しているかの判定を行う。
【0140】
いずれかの電圧検出線の断線が検出された場合は、図19(b)に示すように、断線状態の電圧検出線に対応した断線フラグ(FL1〜FL13)を例えば1とする。断線していない電圧検出線に対応した断線フラグは0とする。この断線フラグのデータはロジック部213に設けられた、診断結果レジスタ243に格納される(図5参照)。なお、図19(b)で右側の断線フラグは、断線している電圧検出線に対応するフラグのみが1に設定される。従って、ここでは1本のみ断線していることを想定しているので、1個の断線フラグが1になっている以外は全て0が設定される。
【0141】
(断線検出方法B:2個の連続したバランシングスイッチのオン・オフを用いた断線検出)
図20も同様に、上記の(規則1)と(規則2)を利用したものである。すなわち、ある電圧検出線が断線している場合に、この電圧検出を挟んで隣り合う2つのバランシングスイッチの一方をオンとし、もう一方をオフとしたときに、オフとしたバランシングスイッチが接続された2つの電圧検出線間の電圧、すなわちオフとしたバランシングスイッチを挟んで隣り合う2つの電圧検出線間(=オフとしたバランシングスイッチに対応した単電池セルの端子間電圧)で単電池セル2個分の電圧が検出されることを利用している。
【0142】
この断線検出方法Bでは、上記の断線検出方法Aと比べて電圧測定が1回少なくて済む。また電圧検出線SL2〜SL12の断線検出では、連続した2回の測定結果でなく、ただ1回の測定で断線かどうかの判定が可能である。これは、連続した2つのバランシングスイッチのオン・オフにより、オフの状態のバランシングスイッチに対応した単電池セルの端子間電圧の測定に、その隣のバランシングスイッチのオン・オフが影響しないからである(図14(b)、図15(a)参照)。
【0143】
図20(a)は、測定番号M1BからM13Bで、端子間電圧が測定される単電池セルと、この測定の際のバランシングスイッチの状態を示したものである。また図20(b)は測定番号M1BからM13Bまででの、各単電池セルの端子間電圧の測定結果であり、2は単電池2個分の電圧が検出されることを示している。なお、断線検出方法1と同様に、単電池2個分の電圧が検出されたことは、ロジック部213での判定で適宜閾値を設けることで行う。
【0144】
電圧検出線SL1とSL13の断線を検出するための測定番号M1BとM13Bとでは、上記の断線検出方法Aの場合と同様である。これは、電圧検出線SL1あるいはSL13が断線している場合に、それぞれバランシングスイッチBS1またはBS12をオフにすると、電圧検出線SL1あるいはSL13がフローティングとなってしまい、電圧が確定しなくなるためである(図13(b)および図16(b)参照)。
なお断線検出方法Aと同様に、電圧検出線SL2が断線している場合にも、バランシングスイッチBS2がバランシング放電動作の中で偶然オフとなると、この測定番号M1Bでは同様に「0」が検出される。従って、電圧検出線SL1が断線しているか判断できない可能性がある。この場合は次の測定番号(M2B)の結果を参照して断線状態を判断する。
【0145】
電圧検出線SL2が断線している場合は、バランシングスイッチBS2をオフとし、バランシングスイッチBS1をオンとすると、バランシングスイッチBS2を挟んで隣り合う2つの電圧検出線SL2とSL3の間の電圧、すなわちセル2の検出電圧が単電池セル2個分となる(測定番号M2B)ので、電圧検出線SL2の断線であると判断される。
ここで、測定番号M2Bのバランシングスイッチの状態では、電圧検出線SL1が断線している場合は単電池セル2個分の電圧でなく、正常な電圧(単電池セル1個分)が検出される(図13(a)参照)ので、測定番号M1BとM2Bの測定結果から、電圧検出線SL1の断線と判断される。
【0146】
測定番号M2B〜M12Bでは、オンとオフになっている2つの隣り合うバランシングスイッチの間の電圧検出線が断線していると、測定する単電池セルの端子間電圧が単電池セル2個分の電圧となることで断線が判断される。2つの隣り合うバランシングスイッチの一方がオンで、もう一方がオフであればよい。
測定番号M3B〜M11Bではバランシングスイッチのオンとオフは、図20(b)に示したものと逆になっていてもよい。ただし、測定番号M3B〜M11Bの中の連続したいずれか2つでは、1つのセル(セルnとする)の電圧測定で、バランシングスイッチBSn−1がオフでバランシングスイッチBSnがオンの測定と、バランシングスイッチBSnがオフでバランシングスイッチBSn+1がオンの測定をおこなう(図20の例では測定番号M7BとM8B)。
【0147】
なお、この断線検出方法Bでは上記の断線検出方法Aと同様に、断線フラグ(FL1〜FL13)の状態データは、診断結果レジスタ243に格納される。
【0148】
(断線検出方法C:3個の隣り合うバランシングスイッチのオン・オフを用いた断線検出)
この断線検出方法も上記の(規則1)と(規則2)を利用したものである。
3個の隣り合うバランシングスイッチを同期してそれぞれオフ、オン、オフとすることにより、この3つのバランシングスイッチに挟まれる2つの電圧検出線のいずれかが断線した場合に、中央のバランシングスイッチに対応した単電池セルの端子間電圧、すなわち中央のバランシングスイッチを挟む2つの電圧検出線間の検出電圧が0Vになることを利用している。
図21(a)は、測定番号M1CからM12Cで、端子間電圧が測定される単電池セルと、この測定の際のバランシングスイッチの状態を示したものである。また図21(b)は測定番号M1CからM12Cまででの、各単電池セルの端子間電圧の測定結果であり、「0」は0Vが検出されることを示している。なお、上記で説明したように、「0」の検出には、ロジック部213の電圧比較部240での判定に閾値を設けることで行う。
この断線検出方法では、上記の断線検出方法Bでの測定回数13より更に1回少ないが、これは3つの隣り合うバランシングスイッチによる図21(a)のような電圧検出で、3つのバランシングスイッチに挟まれる2本の電圧検出線のいずれかの断線が各測定で検出されるためである。
【0149】
この断線検出方法Cでは、2つの連続した測定に基づいて断線診断を行う。すなわち図21(a)に示したような状態で行った単電池セルでの端子間電圧の測定結果を、2つの隣り合う単電池セルで共に「0」であれば、これらの2つの単電池セルの間の電圧検出線が断線していると判断される。
【0150】
図21(b)に示すように、測定番号M1Cでは、断線検出方法Aで説明したように、電圧検出線SL1あるいはSL2のいずれが断線している場合でも0Vが検出される(図13(a)および図14(a)参照)。従って、電圧検出線SL1が断線しているか、電圧検出線SL2が断線しているかは、次の測定(測定番号M2C)の結果を参照して判断する。
なお、電圧検出線SL1の断線は、測定番号M2C〜M12Cでの電圧測定には影響が無い(図13(a)、(b)参照)ので、図21(b)の測定番号M2C〜M12Cでは、正常の電圧値(単電池セル1個分)が検出される。
【0151】
もし、測定番号M1Cで正常電圧が測定された場合は、電圧検出線SL1およびSL2共に断線していないと判断されるので、電圧検出線の断線だけを判断するのであれば、次の測定番号M2Cの測定を飛ばして、測定番号M3Cの測定を行ってもよい。測定番号M3CとM4Cの測定で電圧検出線SL3とSL4の断線が判断されるからである。
ただし、この場合はセル2の電圧測定が行われないことになる。ここでは全ての単電池セルの端子間電圧(セル電圧)も測定することを想定して、図21(a)の全ての測定番号M1C〜M12Cを実行することを前提に説明する。
【0152】
測定番号M2Cでは、電圧検出線SL2あるいはSL3のいずれかが断線している場合に、検出電圧が「0」となる(図14(c)、図15(a)、図21(b)参照)。
従って、上記で説明したように、電圧検出線SL2が断線している場合は、測定番号M1CとM2Cの双方で検出電圧が「0」となる。すなわち、測定番号M1CとM2Cでの測定結果が共に「0」の場合は、電圧検出線SL2が断線していると判断される(図14(a)および図14(b)参照)。
もし、測定番号M2Cで正常な電圧(単電池セル1個分)が検出された場合、すなわち「1」が検出された場合は、電圧検出線SL2およびSL3は断線していないと判断されるので、断線診断のみを行う場合は、次の測定番号M3Cを飛ばして定番号M4Cの測定を行ってもよい。
【0153】
以上のように測定番号M11Cまで各セル電圧を測定し、電圧検出線SL1〜SL12の断線の判断を行う。
測定番号M12Cでは、測定番号M1Cの場合と同様に、検出電圧が0Vの場合は、電圧検出線SL12の断線かSL13の断線か判断できないので、測定番号M11Cの測定も合わせて判断する。
【0154】
(断線検出方法D:3個の隣り合うバランシングスイッチのオン・オフを用いた断線検出)
この断線検出方法も断線検出方法Aと同様に上記の(規則1)と(規則2)を利用したものである。
3個の隣り合うバランシングスイッチを同期してそれぞれオン、オフ、オンとすることにより、この3つのバランシングスイッチに挟まれる2つの電圧検出線のいずれかが断線した場合に、中央のバランシングスイッチに対応した単電池セルの端子間電圧、すなわち中央のバランシングスイッチを挟む2つの電圧検出線間の検出電圧が単電池セル2個分の電圧になることを利用している。ただし、測定番号M1DとM12Dでは、断線検出方法Aと同じバランシングスイッチの設定で電圧測定を行う。これは、断線検出方法Bで説明したように、SL1あるいはSL13が断線している場合に、それぞれバランシングスイッチBS1またはBS12をオフにすると、電圧検出線SL1あるいはSL13がフローティングとなってしまい、電圧が確定しなくなるためである(図13(b)および図16(b)参照)。
図22(a)は、測定番号M1DからM12Dで、端子間電圧が測定される単電池セルと、この測定の際のバランシングスイッチの状態を示したものである。また図22(b)は測定番号M1DからM12Dまででの、各単電池セルの端子間電圧の測定結果であり、2は単電池セル2個分の電圧が検出されることを示している。なお、上記で説明したと同様に、この電圧の検出には、ロジック部213の電圧比較部240での判定に閾値を設けることで行う。
【0155】
図22(b)に示すように、断線検出方法Cと同様に、測定番号M1Dでは、電圧検出線SL1あるいはSL2のいずれが断線している場合でも「0」が検出される(図13(a)および図14(a)参照)。従って、電圧検出線SL1が断線しているか、電圧検出線SL2が断線しているかは、次の測定(M2D)の結果を参照して判断する。
なお、電圧検出線SL1の断線は、測定番号M2D〜M12Dでの電圧測定には影響が無い(図13(a)、(b)参照)ので、図22(b)の測定番号M2D〜M12Dでは、正常の電圧値(単電池セル1個分)、すなわち「1」が検出される。
【0156】
もし、測定番号M1Dで正常電圧が測定された場合は、電圧検出線SL1およびSL2共に断線していないと判断されるので、電圧検出線の断線だけを判断するのであれば、次の測定番号M2Dの測定を飛ばして、測定番号M3Dの測定を行ってもよい。測定番号M3DとM4Dの測定で電圧検出線SL3とSL4の断線が判断されるからである。
ただし、この場合はセル2の電圧測定が行われないことになる。ここでも、断線検出方法Cと同様に、全ての単電池セルの端子間電圧(セル電圧)も測定することを想定して、図22(a)の全ての測定番号M1D〜M12Dを実行することを前提に説明する。
【0157】
測定番号M2Dでは、電圧検出線SL2あるいはSL3のいずれかが断線している場合に、検出電圧が単電池セル2個分となる(図14(a)、図15(b)、図22(b)参照)。
従って、上記で説明したように、電圧検出線SL2が断線している場合は、測定番号M1Dでの検出電圧は0Vとなり、測定番号M2Dでは単電池セル2個分となる。すなわち、測定番号M1DとM2Dでの測定結果が異なり、電圧検出線SL2が断線していると判断される。
もし、測定番号M2Dで正常な電圧(単電池セル1個分)が検出された場合は、電圧検出線SL2およびSL3は断線していないと判断されるので、断線診断のみを行う場合は、次の測定番号M3Dを飛ばして測定番号M4Dの測定を行ってもよい。
【0158】
以上のように測定番号M11Dまで各セル電圧を測定し、電圧検出線SL1〜SL12の断線の判断を行う。
測定番号M12Dでは、測定番号M1Dの場合と同様に、検出電圧が0Vの場合は、電圧検出線SL12の断線かSL13の断線か判断できないので、測定番号M11Dの測定も合わせて判断する。
【0159】
以上で説明した4つの断線検出方法では、電圧検出線が1本だけ断線していることを想定して説明した。
説明が複雑になるので詳しい説明は省略するが、断線している電圧検出線が複数あった場合でも、上記の4つの断線検出方法は適用できる。断線した電圧検出線に対応して異常な電圧が検出できるのでどの電圧検出線が断線しているか判断できる。
ただし、2つの隣り合う電圧検出線が共に断線している場合は、上記で説明したような、断線状態の電圧検出線が1本だけの場合の検出電圧と異なる電圧が検出される場合がある。しかしながら、このような場合でも、予想される検出電圧と、他のセル電圧での測定結果を参照して断線を判断することが可能であるが、更に複雑になるので説明は省略する。
【0160】
以上の断線検出方法の測定動作をn=1からn=12の単電池セルに対して行えば、各単電池セルのセル電圧を測定する時にセルの電圧検出線の断線診断を行うことができる。また、単電池セルのバランシングスイッチをオン、当該セルの上および/または下のセルのバランシングスイッチをオフとするので、それ以外のバランシングスイッチは本来のバランシング動作を行うことが可能である。
【0161】
(断線検出方法Cの変形実施例)
上記で説明した断線検出方法Cを利用して、以下のように、断線検出のみを約半分の回数の電圧測定で行うことができる。
図21に示すように、測定番号M1Cで測定したセル1の電圧が正常であれば、電圧検出線SL1とSL2は断線していないと判断できる。つぎの測定番号M2Cは実行せず、測定番号M3Cを実行する。
測定番号M3Cでの測定電圧が正常であれば電圧検出線SL3とSL4は断線していないと判断される。
このように図21の測定番号M1C〜M12Cを1つ置きに実行する。ただし電圧検出線SL1とSL13はそれぞれ測定番号M1CとM12Cでのみ断線が検出されるので、測定番号M1CとM12Cは必ず実行するようにする。
このようにして電圧測定を実行すると、全ての電圧検出線を2本毎の単位で断線があるかないかの判断を行うことができる。更に断線している電圧検出線を特定する場合は、断線が検出された測定番号での電圧測定に関与する電圧検出線の断線を検出するように、上記で説明した断線検出方法A〜Dを適宜用いて判断するが、詳細な説明は省略する。
【0162】
(セル電圧測定による断線診断の自動化)
上記で説明した断線検出方法A〜Dのような断線診断を、上位コントローラ(バッテリコントローラ500)からの1つの断線診断コマンドの指令を受けて、セルコントローラIC300はこのセルコントローラICが制御しているセルグループの全単電池セルに対して連続的に行うことが可能である。
各断線検出方法で説明した、全てのバランシングスイッチのオン・オフ状態での電圧検出を連続的に行い、電圧検出結果を検出結果レジスタ241に格納する。断線判定部242は、検出結果レジスタ241に格納された全測定での検出結果に基づいて、全電圧検出線の断線判定を連続して行い、その判定結果をロジック部213の診断結果レジスタ243に格納する。
【0163】
この断線の判定結果はフラグ(断線フラグ)として診断結果レジスタ243に保存されるので、上位コントローラは通信でセルコントローラIC300に断線診断コマンドを送信し、断線診断が終了後に、その判定結果のフラグをロジック部213のレジスタから読み込めば良い。図19(b)、図20(b)、図21(b)、図22(b)の一番右の欄はその断線判定結果のフラグ(断線フラグ)を示すものである。
【0164】
なお、以上で説明した、バランシングスイッチのオン・オフを用いた断線検出方法では、検出電圧が単電池セル1個分の電圧から0Vあるいは単電池セル2個分の電圧に切り替わるまで、更にまた元の通常の単電池セル1個分の電圧に戻るまでの時間は、前述のように、CV端子に設けられたセル入力抵抗(Rcv)202とセル入力コンデンサ(Cin)203によって構成されるRCフィルタの時定数の影響を受ける。
従って、全ての電圧検出線の断線診断を行うには、ある程度の時間がかかるので、車両の停止時で、例えばキーオフ後に行うことが好ましい。
【0165】
(マルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線診断機能の診断;断線診断機能の診断方法E)
しかしながら、診断をセルコントローラ300が行う場合、判定結果を格納するロジック部のレジスタ(診断結果レジスタ)が故障すると、診断結果レジスタ243の断線フラグの値が、電圧検出線が断線していないにも拘わらず断線したと認識されるか、あるいは断線しているのに断線していないと判断されたことを示す断線フラグの値になっている可能性が生じることになる。また、更に電圧検出線の断線状態と診断結果レジスタの故障が、偶然、一致している可能性もある。
単にレジスタ機能のみが正常かどうかは、診断結果レジスタに保存されている断線フラグの値と異なる値をレジスタに入力し、これによって断線フラグの値が切り替わることを確認すればよいので、レジスタに直接0か1を書き込むことによってレジスタ単体の動作の確認が可能である。しかし、ここでは、診断結果レジスタにフラグを書き込むまでの回路動作とロジック部213の電圧比較部240、検出結果レジスタ241、断線判定部242(図6参照)の動作の確認も合わせて行う。このため、マルチプレクサ入力短絡スイッチを用いて疑似断線状態を作り出して、マルチプレクサ210からロジック部213の診断結果レジスタ243までの動作(断線診断機能)の動作確認を行う。この診断方法を断線診断機能の診断方法Eとする。
【0166】
疑似断線状態はマルチプレクサ210の入力に設けられたマルチプレクサ入力短絡スイッチ224を用いて発生する。この疑似断線状態の発生方法を図23(a)に示す。なお、マルチプレクサ入力短絡スイッチ224は単電池セルの個数だけ設けられているが、説明を簡単にするためにセル1〜セルnに対応して、それぞれのマルチプレクサ入力短絡スイッチ224をSWX1〜SWXnとする。または、上記に説明した実施形態の説明に対応して、セル1〜セル12に対応して設けられたマルチプレクサ入力短絡スイッチ224をSWX1〜SWX12とする。
【0167】
測定番号M1Eでは、マルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1のみをオンにして電圧検出線SL1とSL2とを短絡し、マルチプレクサ210は電圧検出線SL1およびSL2の入力のみを選択することにより、0Vを差動増幅器211に出力する。
測定番号M2Eでは全てのマルチプレクサ入力短絡スイッチ224SWX1〜SWX12をオフにし、マルチプレクサ210は電圧検出線SL1およびSL2の入力のみを選択することにより、セル1の端子間電圧(正常の電圧)を差動増幅器211に出力する。
測定番号M2Eの測定で、正常の電圧を差動増幅器211に出力するのは、断線検出方法A〜Dで説明したように、測定番号M1Eでの測定電圧が0Vの場合には、電圧検出線SL1とSL2のどちらが断線しているか判断できないので、これを判断するために測定番号M2Eで正常の電圧(単電池セル1個分の電圧)を差動増幅器211に出力するためである。
【0168】
測定番号M3E〜M14Eまでは、それぞれマルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1〜SWX12をオンとし、このオンされたマルチプレクサ入力短絡スイッチの上下の電圧検出線をマルチプレクサ210が選択して、0Vを差動増幅器211に出力する。
【0169】
測定番号M13Eでは、測定番号M2Eの場合と同様に、0Vでなく、セル12から供給される正常の電圧(単電池セル1個分の電圧)を差動増幅器211に出力する。これも断線検出方法A〜Dで説明したように、M14Eでの測定電圧が0Vの場合には、電圧検出線SL12とSL13のどちらが断線しているか判断できないので、これを判断するために測定番号M13Eで正常の電圧(単電池セル1個分の電圧)を差動増幅器211に出力するためである。
【0170】
図23(b)は、以上のようにマルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1〜SWX12を操作して、0Vまたは正常の電圧を差動増幅器211に出力して電圧を検出結果をまとめて示したものである。図23(b)に示す電圧検出結果(測定番号M1E〜M16E)が検出結果レジスタ241に書き込まれる。なお、説明のため、ここでは各測定番号に対応した検出結果レジスタ241をそれぞれRG1〜RG16としている。
【0171】
図23(b)に示す16個の電圧検出結果が検出結果レジスタ241に書き込まれると、断線判定部242はこの検出結果レジスタ241の値を参照して、電圧検出線の断線判定を行う。
診断結果レジスタ243にフラグを書き込むまでの回路動作とロジック(図5には不図示)の動作が正常であれば、図23(c)に示すように、各電圧検出線の断線が判定され、それぞれの断線フラグの値が診断結果レジスタ243に書き込まれる。
【0172】
上記の断線診断機能の診断方法Eは、まとめると以下のような手順で行われる。
(ステップ1)診断結果レジスタ243単体の動作確認
(ステップ2)断線フラグFL1〜FL13を全て0にセットする。
(ステップ3)図23(a)に示すように、マルチプレクサ入力短絡スイッチSWX1〜12を1個ずつオンし、測定番号M1E〜M16Eの測定を行う。
(ステップ4)図23(b)の右側の欄に示す診断結果レジスタ243の断線フラグの値が1になっているかどうか確認する。
【0173】
上記ステップ1は、診断結果レジスタ243に直接1または0の書き込み/読出しを行うものである。ここで不具合があれば、これ以降の測定は行わず、バッテリーコントローラ500は、更に上位のコントローラ(車両コントローラ、不図示)に断線診断機能に不具合があることを送信する。
ステップ1〜3は上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)の指令により、セルコントローラIC300が実行する。
ステップ4では、セルコントローラIC300から送信された診断結果レジスタ243の断線フラグの値に基づいて、バッテリーコントローラ500が断線診断機能が正常かどうか判断し、判断結果を上位のコントローラに送信する。
【0174】
以上のように断線診断を実行することによって、断線結果レジスタ機能が正常かどうかを診断することができる。この断線診断機能の診断はマルチプレクサ210の診断と同様に時間を要するので、車両が停止した状態で、システムの起動時またはシャットダウン時に行えばよい。
【0175】
なお、ここでは正常の電圧をマルチプレクサ210に入力するために、単電池セルの端子間電圧を利用しているが、電圧検出線が断線していれば当然ながらこの単電池セルの端子間電圧を用いることはできない。しかしながら、本発明による蓄電装置ではまず、電圧検出線の断線診断をバランシングスイッチのオン・オフを用いて行うことを特徴としており、この断線診断機能を診断する機能の診断はあくまで補助的なものである。バランシング診断による断線診断とこの断線診断機能の診断を組み合わせることで、いずれかの診断を行った時に、電圧検出線の断線を含む電圧検出の経路で故障があることが検出されるので、この検出された故障に基づいてバッテリコントローラ500は更に上位のコントローラ(車両コントローラ)に故障情報を送信する。
また、詳細な説明は省略するが、別の電源から正常の電圧をマルチプレクサ210に入力するような回路を設けることも可能であり、このようにすれば、単電池セルからの電圧供給無しで、電圧検出線断線に対応した疑似電圧の発生を行い、マルチプレクサ210以降の断線診断機能の診断を行うことができる。
【0176】
上記のマルチプレクサ入力短絡スイッチを用いた断線診断機能の診断は、前述のマルチプレクサの診断と同様にある程度の時間を要するので、車両が停止した状態でシステムの起動時またはシャットダウン時に行えばよい。
ただし、上記のように、マルチプレクサ入力に別の電源から正常の電圧を入力するような回路を更に設ける構成にすると、保護用に設けた入力抵抗や入力コンデンサ(図5のRmpx、Rcv、とCin)を介して単電池セルの電圧をマルチプレクサ210に入力する必要がないので、短時間に行うことも可能である。
【0177】
(バランシング回路診断による断線診断;断線検出方法F)
また、電圧検出線の断線診断をセル電圧測定値ではなく、バランシング回路の断線診断を行うことによって電圧検出線の断線診断を行うことも可能である。前述したようにバランシングスイッチ状態検出回路223は、正常なバランシング電流が流れたかどうかを検出することができるので、上述の単電池セルの電圧測定による断線診断の場合と同様なバランシングスイッチの制御を行い、セル電圧測定の代わりにバランシング電流が流れていないことをバランシングスイッチ状態検出回路223の出力で判断して電圧検出線の断線診断を行うことができる。
なお、バランシングスイッチ状態検出回路223の出力はコンパレータ229の出力であるので、HighかLowである。ここではバランシング電流が検出された場合はHigh(=1)、されなかった場合はLow(=0)として、検出結果を検出結果レジスタ241に格納する(図6参照)。
【0178】
図24から図28にその場合の説明図を示す。図24図28では上記の断線検出方法A〜Dの場合と比較し易いように、図13図17をほぼそのまま利用し、各々の場合でバランシング電流が流れるかどうかを示している。
なお、これらの場合も電圧検出線は1本のみ断線しているとしている。しかしながら、これらの例示は容易に複数の電圧検出線が断線している場合に拡張できる。
【0179】
図24図27で明らかなように、この断線検出方法Fの場合は、上記の断線検出方法A〜Dと異なり、以下に示す2つの規則を考慮すればよい。なお、ここでは説明のために、図13〜16での説明と同様に、単電池セルの番号、電圧検出線の番号、バランシングスイッチの番号、をそれぞれセル1〜セルm、SL1〜SLm+1、BS1〜BSmとする。また、番号nは2≦n≦mで用いるものとする。
(規則5)バランシングスイッチBSn−1がオフ、バランシングスイッチBSnがオンの時、電圧検出線SLnが断線していれば、バランシングスイッチBSnにバランシング電流は流れない。
(規則6)バランシングスイッチBSnがオン、バランシングスイッチBSn+1がオフの時、電圧検出線SLn+1が断線していれば、バランシングスイッチBSnにバランシング電流は流れない。
【0180】
電圧検出線が断線していることを、バランシング電流が流れないことで検出するには、上記の規則5と規則6を共に利用し、3つの隣り合うバランシングスイッチをそれぞれオフ・オン・オフとする必要がある。
これは、例えばバランシングスイッチBSnがオンで電圧検出線SLn+1が断線している場合、バランシングスイッチBSn+1がバランシング動作を行ってオンとなると、共にオンとなったバランシングスイッチBSnとBSn+1を経由して、セルnとセルn+1の電流が流れるからである(図25(c)、図26(c)参照)。
【0181】
なお、最上位の電圧検出線SL1と最下位の電圧検出線SL13では、3つの連続したバランシングスイッチの動作はできないが、図27に示すように、仮想セルXと仮想バランシングスイッチBSXを考えることによって、上記の規則5と6を準用することができる。
【0182】
以上よりこの断線検出方法Fでは、上記で説明した断線検出方法Cと同様にバランシングスイッチを動作させて電圧検出を行うことができる。また、2つの連続した測定での結果から電圧検出線の断線判定を行う手法も断線検出方法Cと同様である。n番目の単電池セルの両端の電圧検出線SLnとSLn+1の断線診断には、n番目の単電池セル(セルnとする)のバランシングスイッチ222(BSnとする)をオンとし、その上下のバランシングスイッチ222(それぞれBSn−1とBSn+1とする)をオフにする。この状態でバランシングスイッチBSn−1、BSn、BSn+1に電流が流れたかどうかを、バランシングスイッチ状態検出回路223の出力で検出する。図25(b)と図26(a)に示すように、セルnの+側の電圧検出線SLnか−側の電圧検出線SLn+1が断線した場合には、セルnのバランシング電流が流れなくなるのでその状態を検出できる。セル電圧検出を用いた方法と同様に、2つの隣り合う単電池セルでのバランシング電流の測定で、共にバランシング電流が検出できなければ、その2つの単電池セル間の電圧検出線が断線したと判断できる。
【0183】
(最上位の電圧検出線SL1の断線検出)
図24(a)および図25(a)から明らかなように、バランシングスイッチBS1をオンにしてバランシング電流が流れないことだけでは、電圧検出線SL1が断線しているか電圧検出線SL2が断線しているか判断できない。
そこで、次のタイミングでバランシングスイッチBS2をオンにした時に、バランシング電流が検出された場合は、電圧検出線SL2が断線していないと判断されることと合わせて、電圧検出線SL1が断線していると判断する。
【0184】
(最下位の電圧検出線SLm+1の断線検出)
図26(b)および図27(a)から明らかなように、バランシングスイッチBSmをオンにしてバランシング電流が流れないことだけでは、電圧検出線SLmが断線しているか電圧検出線SLm+1が断線しているか判断できない。
そこで、この前のタイミングでバランシングスイッチBSm−1をオンにした時に、バランシング電流が検出された場合は、電圧検出線SLmが断線していないと判断されることと合わせて、電圧検出線SLm+1が断線していると判断する。
【0185】
(バランシング診断による断線診断の自動化)
前述の断線検出方法A〜Eのように、上記の断線検出方法Fを、図5に示すような、12個の単電池セルを備えたセルグループに適用した場合について説明する。
図21に示す断線検出方法Cのようなセル電圧検出による断線診断の場合と同様なバランシングスイッチの制御と、バランシング電流が流れたかどうかの検出を、上位コントローラからの1つの指令により、セルコントローラ300が接続されているセルグループ102の全単電池セル101に対して連続的に行う。セル電圧検出の代わりにバランシング電流の検出によって連続的に診断が可能である。図29(a)に、バランシングスイッチBS1〜12をそれぞれオンにしてバランシング電流を検出する場合の、バランシングスイッチのオン・オフ状態を示す。これは図20に示す、断線検出方法Cと全く同じものとなる。
なお、図29(a)に示すように、測定番号M1Fと測定番号M12Fでは2つのバランシングスイッチをオン・オフとしてバランシング電流の測定を行うが、これらの状態も、図28に示すように仮想的なバランシングスイッチを考えることで、測定番号M2F〜M11Fと同様に考えることができる。
【0186】
測定番号M1F〜M12Fの測定は、上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)からの1つの指令によって連続的に実行され、すべての測定のバランシングスイッチ状態検出回路223の出力は検出結果レジスタ241に格納される。断線判定部242は、検出結果レジスタ241に格納された測定番号M1F〜M12Fでのバランシング電流検出結果に基づき、電圧検出線の断線判定を行う。
【0187】
図29(b)は各電圧検出線が断線していると判断される場合の、図29(a)に示す測定番号(M1F〜M12F)を実行した結果をまとめて示したものである。「0」はバランシング電流が流れなかったことを示し、「1」は正常のバランシング電流が流れたことを示す。
なお、電圧検出線SL1〜SL12のいずれかが断線した場合、図29(b)に示す各電圧検出線の断線(SL1断線〜SL13断線)のデータの内で、断線している電圧線の行のデータ(測定番号M1F〜M12Fでの検出結果)が検出結果レジスタ241に格納されている。
【0188】
断線判定部242(図6参照)での電圧検出線SL2〜SL12の断線判断は、前述の断線検出方法Cの場合と全く同様である。2つの連続した測定番号Mn−1FとMnFでの測定で共にバランシング電流が検出されなければ、すなわち結果が共に「0」となれば、2つのバランシングスイッチBSn−1とBSnの間の電圧検出線SLnが断線していると判断される。
【0189】
(最上位の電圧検出線が断線している場合)
上記のように、測定番号M1Fで、バランシング電流が流れなかったことが検出されただけでは、最上位の電圧検出線SL1が断線しているか、または電圧検出線SL2が断線しているかは判断できない。この場合は、次の測定番号M2Fでバランシング電流が検出されるかどうかで判断される。
【0190】
測定番号M2Fで正常のバランシング電流が検出された場合、電圧検出線SL1およびSL2共に断線は無いと判断される。従って、測定番号M1Fでバランシング電流が検出されなかった場合は、電圧検出線SL1が断線であると判断される。
【0191】
(最下位の電圧検出線が断線した場合の電圧検出)
最下位の電圧検出線SL13も、測定番号M12Fで、バランシング電流が流れなかったことが検出されただけでは、最上位の電圧検出線SL13が断線しているか、または電圧検出線SL12が断線しているかは判断できない。この場合は、一つ前のタイミングでの測定番号M11Fでバランシング電流が検出されるかどうかで判断される。
【0192】
測定番号M11Fで正常のバランシング電流が検出された場合、電圧検出線SL11およびSL12共に断線は無いと判断される。従って、測定番号M12Fでバランシング電流が検出されなかった場合は、電圧検出線SL13が断線であると判断される。
【0193】
なお、前述のように、バランシング端子コンデンサ(Cb)204はバイパスコンデンサとして設けられており、これとバランシング抵抗とで構成されるRCフィルタの時定数は、セル入力コンデンサCvとセル入力抵抗Rcvとで構成されるRCフィルタより遙かに小さい。従って、バランシング電流検出による断線検出も高速に行える。
更に、上記で説明したように、バランシング放電回路のオン・オフは、通常のバランシング放電動作の中で行うことが可能であり、またこの動作は各単電池セルの端子間電圧の測定に影響を与えない。従って、上記の断線検出方法Fは車両が動作中にも実施することができる。
【0194】
(バランシング回路診断による断線診断の、断線診断機能の診断;断線判定機能の診断方法G)
セル電圧検出を用いた断線検出の場合と同様に、断線検出結果を保存するロジック部213内のレジスタが機能しているかどうか診断が必要である。なお、この断線判定機能の診断方法Gは、前述の断線診断機能の診断方法Eとよく似ているので、共通な部分は簡単に説明する。
このレジスタの機能診断では、電圧検出線の断線に対応して、バランシングスイッチをオン・オフしてバランシング電流が流れる状態と流れない状態のコンパレータ229の出力を擬似的に生成する。この擬似的なコンパレータ出力の発生には3つの方法がある。
【0195】
第1の発生方法は、バランシングスイッチをオン・オフして、コンパレータ229の出力を切り替える方法である。
第2の方法は、バランシングスイッチをオンにした状態で、バランシング状態検出回路223のスイッチ回路228を切り替えて、コンパレータ229の出力を切り替える方法である。
第3の方法は、検出結果レジスタ241の内容を直接書き換えて、断線判定部242の動作と診断結果レジスタ243の動作のみを診断する方法である。
なお、第1と第2の発生方法では、上述の各診断の場合と同様に、各電圧検出線は断線しておらず、従って、各バランシングスイッチをオンとすると正常のバランシング電流が流れることを想定している。あるいは既に説明したように、確実に電圧検出線の断線の無い電池モジュール103を接続するか、別の電源から単電池セルの端子間電圧に相当する電圧を入力して、コンパレータ229の出力を擬似的に生成することも可能である。
なお、ここで説明する断線判定機能の診断方法Gを実行する場合は、断線判定結果、すなわち診断結果レジスタ243に格納される断線フラグFL1〜FL13の値を予めすべて0にしておく。この段階で既に0が設定されない断線フラグが存在すれば、診断結果レジスタ243には故障していることになる。
【0196】
上記第1の方法を用いたバランシングスイッチのオン・オフ状態を図30(a)に示す。これは、図23(a)で示した、マルチプレクサ入力短絡スイッチのオン・オフ状態とちょうど逆になる。ここでは疑似的に生成されたコンパレータ出力に対応した測定番号M1G〜M16Gとしている。
バランシングスイッチがオフの時には、バランシング電流が流れないので、コンパレータ出力は「0」となる。また、バランシングスイッチがオンの時には、バランシング電流が流れるので、コンパレータ出力は「1」となる。従って、検出結果レジスタ241には、図30(b)に示すような疑似的検出結果が書き込まれることになる。なお、図30(b)ではこのバランシング診断を行うために必要な16個の疑似検出データ(測定番号M1G〜M16Gに対応)を示す。また、このデータが格納される検出結果レジスタ241をそれぞれRG1〜RG16としている。
【0197】
上記第2の方法を用いた場合も、コンパレータ229の出力は図30(b)と同じになるようにする。
バランシングスイッチをオンにすると、通常はコンパレータ229の出力は「1」となる。そこで、バランシング状態検出回路223のスイッチ回路228を切り替えて、コンパレータ229の出力を反転させて「0」を出力させる。すなわち、図30(a)の「OFF」で示す時には、このスイッチ回路228を切り替えて、通常とは逆の出力をコンパレータ229から出力させる。
この第2の方法の場合も生成される疑似的なデータは図30(b)に示すものと同じである。
【0198】
第3の方法では、図30(b)に示す疑似的なコンパレータ229の出力を直接、検出結果レジスタ241に書き込むものである。この書き込み用のデータは、セルコントローラIC300に設けられたROM(不図示)に予め格納しておき、これを読み出して書き込んでよく、また通信を介して上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)から供給されてもよい。
【0199】
図30(c)は、電圧検出線の断線状態に対応した疑似的なコンパレータ出力を用いて、断線検出を行う方法を示したものである。
図29を参照して説明した断線検出方法Fでの断線検出を、検出結果レジスタ241に書き込まれた図30(b)に示す疑似的なコンパレータ出力データと、図30(c)に示す各電圧検出線SL1〜SL13の断線判定パターンとを連続的に比較して行う。
【0200】
(断線判定機能の診断)
電圧検出線SL1の断線の判定には、セル1とセル2のコンパレータ出力結果がそれぞれ0と1になる(測定番号M1GとM2G)ことで判定する。これは図29で説明した場合と同じである。
電圧検出線SL13の断線の判定には、セル11とセル12のコンパレータ出力結果がそれぞれ1と0になる(測定番号M15GとM16G)ことで判定する。
電圧検出線SL2〜SL12の断線の判定は、それぞれ連続した2つのセルでのコンパレータ出力がそれぞれ0と0になることで判定される。
【0201】
上記のように各電圧検出線の断線判定が行われると、断線判定部242および診断結果レジスタ243の機能が正常であれば、断線フラグFL1〜FL13は全て1に書き換わる。この断線フラグFL1〜FL13が通信を介して上位コントローラ(バッテリーコントローラ500)に送信され、断線フラグが全て1に書き換わっていることが確認されれば、バランシング回路診断による断線診断での、断線診断機能は正常に動作していると判断される。
【0202】
上述のように、このバランシング電流検出回路を用いた断線検出方式では、バランシング電流が流れたかどうかを検出するだけなので、セル電圧を用いた場合に比べて応答を早くできるという利点がある。セル電圧検出の場合は、正確なセル電圧検出値が必要なため、入力RCフィルタの時定数が大きく設定されており、従って、電圧検出にはこの時定数に比べて十分長い時間をとる必要がある。このバランシング電流検出回路を用いた方法ではバランシング電流が流れたかどうかを判断するだけなので時間を長くする必要はない。
【0203】
セルコントローラIC300内のマルチプレクサ210には電源電圧VDDを測定する入力14が設置されている。この電源電圧VDD電圧はADコンバータ212の基準電圧源とは独立しており、この電圧を測定することによって電圧測定系が正常に動作しているかどうか診断することができる。図5の例では電源電圧VDDを用いているが、ADコンバータ212の基準電圧源と独立していれば、別の基準電圧源であっても良い。その場合、その基準電圧源の精度を上げれば、電圧測定系の精密な診断が可能となる。また、その診断動作を断線診断コマンドの中に含めても良い。その場合は電圧測定系の診断結果を格納するレジスタ(図6参照)を診断するために、マルチプレクサ入力に設置されたマルチプレクサ入力短絡スイッチ224を短絡すればよい。このマルチプレクサ入力短絡スイッチ224は、VDD電圧測定入力のほか、ブロック電圧測定入力、温度測定入力にも設置されており、マルチプレクサ210の切替動作判断と、診断時の診断結果判定に用いることができる。
【0204】
ロジック部213には過充電の判定結果を記憶するレジスタ(図5図6には不図示)も含まれている。ロジック部213内部の電圧比較部240を用いて、ADコンバータ212からの端子間電圧のデジタル出力と過充電を示す所定の閾値とを比較して過充電を検出した結果をこのレジスタからFF信号として出力される。またロジック部213は、この電圧比較部240の動作を診断するために、ADコンバータ212の出力であるセル電圧測定結果を、過充電閾値以上の電圧測定値に変更して電圧比較部240に入力できる機能(図5図6には不図示)も備えている。この機能を、上位コントローラ(バッテリコントローラ500)からの通信指令で動作させてセル電圧検出値を過充電閾値以上の値に書き換え、この電圧比較部240からの過充電検出結果を記憶したレジスタのFF出力が過充電の値を示せば、電圧比較部240の動作が正常であることを診断できる。
【0205】
断線診断を行うコマンドは、断線診断、バランシングスイッチの診断、電圧測定系の診断等の各種診断と、セル電圧、ブロック電圧、温度等の測定を、定常的に行う動作を含んでもよい。その場合は、このコマンドを上位コントローラから定期的にセルコントローラIC300に送信するだけで各動作が行われ、各動作終了後にその診断結果あるいは測定値を読み込むだけで必要な情報が得られるため、上位コントローラ(バッテリコントローラ500)の通信負荷が減るという利点がある。
【0206】
(複数のセルグループが直列に接続されている場合の断線検出方法)
以上での断線検出方法は、簡単のため、1つのセルグループとこれを制御する1つのセルコントローラICの場合を例にして説明した。
前述のように、セルグループが複数直列に接続される場合には、2つの隣り合うセルグループで、直接接続されている別々のセルグループに属する単電池セルのバランシングスイッチのオン・オフ状態が、それぞれの単電池セルの端子間電圧の測定またはバランシング電流の測定に互いに影響する。従って、このような場合、あるセルグループの単電池セルの端子間電圧あるいはバランシング電流を検出している場合であっても、隣のセルグループのバランシングスイッチも同時に制御する必要がある。
【0207】
上記で説明した断線検出方法は、セルグループが複数直列に接続される場合にも容易に拡張できる。
図21を参照して上記で説明した断線検出方法Cを、2つのセルグループを直列に接続した場合に拡張した例を説明する。他の断線検出方法も同様に拡張して実行できる。
【0208】
図33は、断線検出方法Cを、例えば図3図4に示すような、サービスディスコネクトスイッチ(SD−SW)105の上側あるいは下側に設けられた2つの直列接続されたセルグループに適用した場合の例である。
ここでは例えば、セルグループ102bの12個の単電池セルをセル1〜セル12、セルグループ102aの12個の単電池セルをセル13〜セル24とし、それぞれのセル毎に設けられたバランシングスイッチをBS1〜BS24とする。また、セルグループ102bの12個の単電池セルとセルコントローラIC300bとを接続する13本の電圧検出線をSL1〜SL13とし、セルグループ102aの12個の単電池セルとセルコントローラIC300aとを接続する13本の電圧検出線をSL13〜SL25とする。この場合電圧検出線SL13は、これら2つのセルグループで共用されている。
セル1〜セル24までの端子間電圧の測定番号をそれぞれM1CC〜M24CCとし、電圧検出線SL1〜SL25の断線検出フラグをFL1〜FL25としている。
【0209】
図21(a)と図33(a)から分かるように、2つのセルグループを直列に接続した場合は、図21(a)の測定番号M12Cでのバランシングスイッチのオン・オフが図33(a)の測定番号M24CCに移動しただけである。
また図21(b)と図33(b)から分かるように、図21(b)のSL13の断線判定が図33(b)のSL25の断線判定に移動しているだけである。
2つのセルグループのバランシングスイッチは、全て上位のバッテリコントローラ500からの指令によって制御され、同時に制御されるバランシングスイッチが2つのセルグループに別々に属する場合であっても問題無く制御できる。
【0210】
従って、これから明らかなように、更に3個以上のセルグループを直列に接続した場合でも同様に断線判定を行うことができる。
なお、2つのセルグループを直列に接続した場合、ここで説明したような、全部で24個の単電池セルでの端子間電圧を連続して行わず、例えば1つのセルグループに属するセル1〜セル12のみともう1つのセルグループに属するセル13〜セル24の端子間電圧測定を別々に行うことも可能である。ただし、セル12での測定(M12CC)では、セル13のバランシングスイッチBS13をオフにしておく必要がある。セル12での測定でBS13がバランシング動作を行っていると、BS13はオンとオフの状態があるため、前述のように、セル12での端子間電圧の測定値が確定しなくなる。
【0211】
2つのセルグループの全ての単電池セルの端子間電圧の測定を上記のように行う方が効率がよいが、測定時間は長くなるので、断線判定の方法によっては、全ての測定を連続して行う場合は車両が停止状態で行う方が好ましい。
断線検出方法Cを例にして以上のように説明したが、他の断線検出方法も同様に2つ以上のセルグループを直列に接続した場合に拡張できることが容易に理解されるであろう。
【0212】
<第2の実施形態>
図34は、本発明による電池システム監視装置の第2の実施形態を組み込んだ、ハイブリッド自動車用の蓄電装置の構成例を示す。これは、第1の実施形態を説明する図2に対応するものであり、総電圧検出回路501がバッテリコントローラ500にも組み込まれている例である。第1の実施形態で説明したように、他の方法で電池システム104の総電圧を測定できれば、総電圧検出回路501は、図1のようにバッテリーコントローラ500の内部に設けられていなくともよい。
【0213】
蓄電装置100は、主に、複数のリチウムイオン単電池セル101から構成されるセルグループ102と、複数のセルグループ102が直列接続された電池システム104と、主として各単電池セル101の端子間電圧を検出するメインセルコントローラIC301と、主として各単電池セル101のバランシング放電動作を行うサブセルコントローラIC302の組を複数備えたセルコントローラ(電池監視装置)200と、セルコントローラ200の動作を制御し、各単電池セルの状態判定を行うバッテリーコントローラ500で構成される。
図1および図2図34と比較して明らかなように、第1の実施形態の1つのセルコントローラIC300が、第2の実施形態における1組のメインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302に対応している。
【0214】
バッテリーコントローラ500は絶縁素子群400を介して複数のメインセルコントローラIC301およびサブセルコントローラIC302と通信を行って、これらのメイン/サブセルコンローラICの制御を行う。1組のメインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302は、第1の実施形態と同様に、セルグループ102毎に設けられている。なお、電池システム104とセルコントローラ200の間の電圧検出線は、不図示のコネクタでセルコントローラ200に接続されている。
【0215】
この第2の実施形態は、第1の実施形態で説明したセルコントローラIC300での、各単電池セルの、端子間電圧測定の機能とバランシング放電の機能とをそれぞれ別々のセルコントローラICで行う構成の電池システム監視装置である。メインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302はそれぞれ、セルコントローラIC300と同等の構成と機能を有している。
ただし、第2の実施形態の構成の電池システム監視装置では、図5で説明した第1の実施形態のバランシングスイッチ状態検出回路223が不要となる。このバランシングスイッチ状態検出回路223の機能すなわちバランシングスイッチ222の診断機能は、第2の実施形態では、サブセルコントローラIC302を用いて、バランシングスイッチ222の端子間電圧を測定し、これを所定の閾値電圧と比較することで実現できる。
【0216】
図35は、セルコントローラ200内のメインセルコントローラIC301a〜301dおよびサブセルコントローラIC302a〜302dとバッテリーコントローラ500内のマイクロコンピュータ504の間の通信接続例を示す。マイクロコンピュータ504はセルコントローラ200内のメインセルコントローラIC301a〜301dあるいはサブセルコントローラIC302a〜302dを起動させるための起動信号を出力する起動信号出力ポートと、コマンド及びデータを送信するための送信ポートTXDと、過充電状態を検出するためのデータパケット(FF信号)を出力するためのFF信号出力ポートを有している。図35に示すように、起動信号出力ポート、データ出力ポートTXD、FF信号出力ポートは、メインセルコントローラ301用とサブセルコントローラ用にそれぞれ別々に設けられている。これらの出力ポートは、メインセルコントローラ301用とサブセルコントローラ用で全く同様に構成されている。
【0217】
なお、図35に示す構成は、第1の実施形態で説明した図3に対応するものである。セルグループ102a〜102dに対応して、それぞれメインセルコントローラIC301a〜301d、およびサブセルコントローラIC302a〜302dが設けられている。第1の実施形態の図4に対応するような、メインセルコントローラIC301間の通信経路の高速絶縁素子あるいは低速絶縁素子をコンデンサで置き換えた構成としてもよい。コンデンサを用いることにより消費電力を低減することができる。
以下の説明では、単にメインセルコントローラICあるいはサブセルコントローラICと呼ぶ場合は、それぞれメインセルコントローラIC301a〜301dおよびサブセルコントローラIC302a〜302dを特に限定しない場合とする。更に単にセルコントローラICと呼ぶ場合は、メインセルコントローラICとサブセルコントローラICを総称するものとする。
【0218】
メインセルコントローラIC301の通信経路とサブセルコントローラIC302の通信経路は別々に構成されているが、それぞれ全く同様の構成となっており、それぞれ第1の実施形態で説明した通信経路および通信方法と全く同様である。第1の実施形態の場合と同様に、図35で一番下のメインセルコントローラIC301aとサブセルコントトーラIC302aを、それぞれマイクロコンピュータ504からの信号を最初に受信する最上位メインセルコントローラICおよびサブセルセルコントローラICとしている。第1の実施形態で説明したように、図35の一番上側のセルコントローラICを最上位セルコントローラICとする構成でもよい。なお、図示の都合上、図35では、メインセルコントローラIC301およびその通信経路をサブセルコントローラIC302より大きく示してある。
【0219】
なお、図35に示すように、メインセルコントローラIC301間の通信経路と、サブセルコントローラIC間の通信経路を別経路としたのは、バッテリーコントローラ500からのメインセルコントローラICおよびサブセルコントローラICへの通信を高速に行うためである。
全てのメインセルコントローラIC301と全てのサブセルコントローラIC302を同じ通信経路で接続することも可能であるが、その分通信経路が長くなるので、最後のメインセルコントローラIC301あるいは最後のサブセルコントローラIC302までバッテリーコントローラ500からの指令やデータが届くまでに時間がかかることになる。
また、ここでは説明を省略するが、メインセルコントローラICとサブセルコントローラICを同期して動作させる場合があり、メインセルコントローラIC301間の通信経路と、サブセルコントローラIC間の通信経路を別経路とする方が同期をとりやすいからである。
【0221】
図36は、図35に示す1つのセルグループを制御する1組のメインセルコントローラICとサブセルコントローラICの機能分担を説明するための概略図である。ここではメインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302は同一仕様のセルコントローラICである。
図36のメインセルコントローラIC301およびサブセルコントローラICと、図5に示すセルコントローラIC300との構成および機能の違いは以下の点であり、それ以外は同等の構成および機能を有している。したがって、以下の点以外で図5に記載されていて、図36に記載されていないものは、単にこれらが図5図36で共通であるので省略されているだけである。これらの記載を省略されているものは機能および動作も第1の実施形態で説明しているので、その説明も以下では省略する。
【0222】
<実施形態1と実施形態2のセルコントローラ200の構成の比較>
図5のセルコントローラIC300のバランシング端子(BS01H〜12H、BS01L〜12L)の機能はサブセルコントローラIC302のバランシング端子CBS1〜13に置き換えられている。
図36では、バランシングスイッチ222は、2つの隣り合う電圧検出線(SL1〜13)あるいは2つの隣り合うバランシング接続線(BL1〜13)の間に直接接続されている。
図5のセルコントローラIC300のセル入力抵抗202は、図36のメインセルコントローラIC301のセル入力抵抗202aに対応し、図5のセルコントローラIC300のバランシング抵抗201は、図36のバランシング抵抗201aに対応する。
・ただし、図36のバランシング抵抗201aは、バランシング接続線BL1〜BL13にそれぞれ1個ずつ設けられている。すなわち、バランシング接続線BL2〜12のバランシング抵抗201aはバランシング放電の際に、2つの隣り合うバランシングスイッチで共通に使用される。
図5のセルコントローラIC300のセル入力コンデンサ203は、図36のメインセルコントローラIC301のセル入力コンデンサ203aに対応し、図5のセルコントローラIC300のバランシング端子コンデンサ204は、図36のサブセルコントローラIC302のバランシング端子コンデンサCbに対応する。ただし、メインセルコントローラIC301のセル入力コンデンサ203aは、2つの隣り合う電圧検出線の間に接続されている。
【0223】
<実施形態1と実施形態2のセルコントローラ200の機能の比較>
図5のセルコントローラIC300(第1の実施形態)は、1つのセルコントローラIC300が、各単電池セルの端子間電圧測定とバランシング放電を行っているが、図36(第2の実施形態)では各単電池セルの端子間電圧測定はメインセルコントローラIC301が行い、バランシング放電は通常サブセルコントローラIC302が行う。
・ただし、バランシング放電の際、第2の実施形態では、サブセルコントローラIC302で隣り合う2つのバランシングスイッチ222を同時にオンとした場合、1個のバランシングスイッチをオンとした場合の2倍の電流が流れるので、これを考慮してバランシングを行う。発熱の問題がある場合は、2つの隣り合うバランシングスイッチが同時にオンとならないように制御する。
・断線診断は通常メインセルコントローラIC301が行うが、第2の実施形態ではセル入力コンデンサ203aが2つの隣り合う電圧検出線の間に接続されているので、断線している電圧検出線に接続されているバランシングスイッチ222をオン・オフすると、このセル入力コンデンサ203aの電荷が変化し、電圧が落ち着くまで時間がかかる場合がある。
【0224】
以上の点以外では、第1の実施形態と第2の実施形態で動作の違いはなく、またセルコントローラIC300、メインセルコントローラIC301、サブセルコントローラIC302の内部の構成や動作も共通である。図36に、セルコントローラ200側の電圧検出線SL1〜SL13でセルグループ102に近い部分に、隣り合う2つの電圧検出線の間に保護用のコンデンサCtermが設けられている。これはセルグループ側、あるいは電池システム104に接続されたインバータ700側からセルコントローラ200に侵入するノイズを除去するためのものであり、いわゆるESD対策用のコンデンサである。実際は第1の実施形態でもCtermが用いられているが、図5では省略されている。
【0225】
第2の実施形態においては、各単電池セルのバランシング放電用のBS端子と、端子間電圧測定用のCV端子とはそれぞれ専用の端子として別々のセルコントローラICに設けられている。また、バランシング抵抗(Rb)201aと、サブセルコントローラIC302のバランシングスイッチBS222とで構成されるバランシング放電回路は、セル入力抵抗(Rcv)202aより単電池セル側でバランシング接続線BL1〜13を介して電圧検出線SL1〜13に接続されている。
これによって、第1の実施形態の場合と同様に、バランシング電流がセル入力抵抗(Rcv)202aを流れないため、メインセルコントローラIC301での正確な端子間電圧測定が可能となっている。電圧検出線に断線の無い正常な状態では、バランシング放電回路のバランシング抵抗(Rb)201aとバランシング端子コンデンサ(Cb)204a、およびサブセルコントローラIC302のバランシングスイッチ222のオン・オフは、メインセルコントローラIC301での、各単電池セルの端子間電圧測定に影響を与えない。従来は、たとえば特開2010−228523号公報に記載されているように、各単電池セルの端子間電圧測定とバランシング放電を1つのセルコントローラICで行っており、またバランシング放電用の回路の一部が端子間電圧測定用の回路(電圧検出線とセル入力抵抗)と共通となっていたので、バランシング放電を行うと端子間電圧が低下するようになっていた。従って、正確な端子間電圧測定は、バランシング放電を停止して実施していた。
【0226】
(単電池セル端子間電圧測定回路のRCフィルタとバランシング放電回路のRCフィルタ)
第1の実施形態でも説明したように、第2の実施形態においてもセル入力抵抗(Rcv)202aとセル入力コンデンサ(Cin)203aとからなる単電池セル端子間電圧測定回路のRCフィルタの時定数は、バランシング抵抗(Rb)201aとバランシング端子コンデンサ(Cb)204aで構成されるバランシング放電回路のRCフィルタの時定数より大きく設定されている。
【0227】
第1の実施形態および第2の実施形態で、バランシング放電回路のRCフィルタの時定数を単電池セル端子間電圧測定回路のRCフィルタの時定数より小さくするのは以下の理由による。
・バランシング抵抗201あるいは201aの抵抗値を小さくして、速やかにバランシング放電を行う。
・バランシング放電回路のバランシングスイッチのオン・オフを利用して断線診断する場合に、高速に診断できる。
・第1の実施形態のセルコントローラIC300のバランシングスイッチ状態検出回路223(図5参照)の機能は、第2の実施形態においては、サブセルコントローラIC302でバランシングスイッチ222の端子間電圧の測定機能で置き換えられているが、サブセルコントローラIC302でバランシングスイッチ222の診断を高速に行うことができる。
【0228】
第1の実施形態で説明したように、第2の実施形態においても、単電池セル端子間電圧測定回路のRCフィルターのカットオフ周波数は50Hz程度に設定されている。ただし、第2の実施形態では、セル入力コンデンサ203aは2つの隣り合う電圧検出線の間に接続されており、このセル入力コンデンサ203aと、2つの電圧検出線にそれぞれ設けられた2つのセル入力抵抗202aとからなるコモンモードフィルターとして構成されている。セル入力抵抗202aの抵抗値とセル入力コンデンサの容量値を適宜選択して、第1の実施形態と同様にインバータ700の半導体スイッチング素子のスイッチングによるノイズ(p−pで約20%、20kHz程度)は1/100以下にするようにしている。
【0229】
また第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態でも、バランシング放電回路のRCフィルターもバランシング端子コンデンサ204aと、2つの隣り合うバランシング接続線にそれぞれ設けられた2つのバランシング抵抗201aとからなるコモンモードフィルターとして構成されている。バランシング端子コンデンサ204aの容量値とバランシング抵抗201aの抵抗値を適宜選択することにより、このRCフィルターのカットオフ周波数は単電池セル端子間電圧測定回路のRCフィルターの10倍程度に設定されている。この時、バランシング端子コンデンサ204aは、サブセルコントローラIC302の端子間寄生容量で代用することが可能であり、バランシング端子コンデンサ204aを備えない構成も考えられる。
バランシングスイッチ222のオン・オフを用いた断線診断や、バランシングスイッチ222の診断では、バランシングスイッチ222の端子間電圧はバランシングスイッチ222のオン・オフで大きく異なるので、判定の閾値バランシングスイッチ222の端子間電圧をそれほど精度よく求める必要はない。
【0230】
バランシング放電を速やかに行うため、バランシング抵抗は10Ωから数十Ω程度で行われており、MOSFETスイッチ等で構成されるバランシングスイッチ222のオン抵抗は通常10Ω前後である。したがって、リチウムイオン単電池セルの端子間電圧が4V程度であるから、バランシングスイッチをオンとした時のバランシングスイッチの端子間電圧は、1V程度となる。バランシング放電回路のRCフィルタにより、インバータ700の半導体スイッチング素子のスイッチングによるノイズは1/10以下になるから、ノイズは40mV程度以下であり、たとえばバランシングスイッチのオン・オフの判定の閾値を500mVとすれば、問題なくバランシングスイッチのオン・オフが判定できる。
【0231】
なお、サブセルコントローラIC302による、単電池セルの端子間電圧の測定を精度良く行うことも可能である。必要に応じ、サブセルコントローラIC302のサンプリング回数を増やしたり、あるいは多数回測定を行って平均化することにより、ノイズを低減することができるからである。
また、既に述べたように、時間はかかるが、メインセルコントローラIC301を用いてバランシング放電を行うことも可能である。
【0232】
また、第2の実施形態では、メインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302は同一仕様のセルコントローラであるとして説明したが、メインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302は、それぞれ上記で説明した動作を実行できるものであればよく、同一の仕様でなくともよい。
特に、上記で説明した本発明による電池制御装置ではメインセルコントローラIC301のバランシングスイッチは、診断動作に用いる以外はオフ状態で使用している。また、この診断動作もサブセルコントローラIC302のバランシングスイッチで実施可能である。したがって、上記で説明した電池制御装置の動作を行うことにおいては、メインセルコントローラIC301のバランシングスイッチはなくともよい。
ただし、診断動作等を確実に行うことは車両の安全確認で重要な意義を持つので、メインセルコントローラIC301とサブセルコントローラIC302の双方で同様の機能を維持することで車両の安全性を向上することができる。
【0233】
上記の実施形態の説明で示した例では、電池システム104はセルグループ102を直列接続して構成したものとして説明した。電池システム104は複数のセルグループを直並列または並列に接続して構成したものであってよい。
また、上記では、セルコントローラIC300はセルグループ102と1対1で設けるように説明したが、1つのセルコントローラで複数のセルグループを制御することも可能であり、また1つのセルグループを複数のセルコントローラで制御することも可能である。セルグループを構成する単電池セルの数は、セルグループを複数含む電池モジュール、あるいは電池システムの仕様により様々に変形実施が可能である。したがって、たとえばm個のセルコントローラでn個のセルグループを制御することも可能である。またこのような様々の電池システムの仕様は、この電池システムを搭載するHEVやEVなどの電動車両に必要な電力仕様に合わせて設定される。
【0234】
従って、例えば、1つのセルコントローラIC300が、直列に接続された複数のセルグループ102を制御するように設けられている場合は、これら複数のセルグループ全体の端子間電圧がブロック電圧入力部225に入力され、このブロック電圧入力部225の出力がマルチプレクサ210で選択されて差動増幅器211に入力されて、電圧測定が行われる。また、複数のセルコントローラIC300が1個のセルグループを制御する場合は、各々のセルコントローラIC300が制御するセルグループの部分の端子間電圧がそれぞれのセルコントローラIC300のブロック電圧入力部225に入力されて電圧測定が行われる。
【0235】
本発明による電池システム監視装置は、例えば上記で説明したセルコントローラの構成および機能は、このような様々の構成の電池システムにおいても適用可能である。このように、本発明による電池システム監視装置は様々な構成の電池システムに対して、また様々な仕様の電動車両に対して適用が可能である。
【0236】
なお、上記の実施形態の説明で示した例では、図5図6で説明したように、電圧検出線の断線判定や断線検出機能の診断を、セルコントローラIC300のロジック部213の断線判定部242で行うように説明したが、この断線判定部の機能を上位コントローラであるバッテリコントローラ500に設けてもよい。例えば、検出結果レジスタ241に格納されたデータをFF信号としてバッテリコントローラ500に読み出して、バッテリコントローラ500に設けた断線判定部で断線判定や断線検出機能の診断を行ってもよい。この場合は、断線判定や断線検出機能の診断に必要な各種のテーブル(図19(b)、図20(b)、図21(b)、図22(b)、図23(c)、図29(b)、図30(b)、図33(b))は、バッテリーコントローラ500にも保持しておけばよい。
【0237】
以上の説明は本発明の実施形態の例であり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の特徴を損なわずに様々な変形実施が可能である。とりわけ、電圧検出線の断線検出では、上述の断線検出方法A〜D、Fを適宜組み合わせて実施することが可能である。例えば、複数の電圧検出線の一部の断線検出を断線検出方法A〜DとFのどれか1つで行い、残りの電圧検出線の断線検出を断線検出方法A〜D、Fの別の1つで行うことも可能である。
したがって、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0238】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2011年第122730号(2011年5月31日出願)。
日本国特許出願2011年第122731号(2011年5月31日出願)。
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