(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222761
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0456 20170101AFI20171023BHJP
【FI】
H04B7/0456 400
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-568071(P2016-568071)
(86)(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公表番号】特表2017-527136(P2017-527136A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2014064555
(87)【国際公開番号】WO2015177936
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アウスト シュテファン
【審査官】
岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103944687(CN,A)
【文献】
米国特許第8953707(US,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0274230(US,A1)
【文献】
Takao Inoue et al.,Kerdock Codes for Limited Feedback Precoded MIMO Systems,IEEE Transactions on Signal Processing,2009年 9月,Vol. 57, No. 9,pp.3711-3716
【文献】
Vinay Uday Prabhu et al.,Performance Comparison of Limited Feedback Codebook-Based Downlink Beamforming Schemes for Distributed Antenna Systems,Wireless VITAE 2009. 1st International Conference on,2009年,pp.171-176
【文献】
Mouncef Benmimoune et al.,Multi-User MIMO Precoding with Kerdock Codebook,ISWCS 2010, 2010 7th International Symposium on,2010年,pp.71-75
【文献】
Renesas Electronics Europe et al.,Initial System Level Simulation Results on Closed Loop Transmit Diversity with LMMSE receiver and ISD of 2800 m, 3GPP TSG-RAN WG1#63bis R1-110183,2011年 1月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0456
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の符号語から成るあらかじめ用意されたコードブックを記憶するコードブックメモリと、
送信される信号と選択された符号語とのマトリクス乗算を実行することにより信号をプリコードするプリコーダと、
複数のアンテナを有する送信回路とを備え、
前記符号語は、下記式、
【数1】
で定められる、変更されたカードック多様体で表される無線通信装置。
【請求項2】
前記コードブックメモリが、グラスマンコードブック及びカードックコードブックの少なくとも一方を更に記憶する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
送信機と受信機とを有する無線通信システムであって、
前記送信機が、
複数の符号語から成るあらかじめ用意されたコードブックを記憶するコードブックメモリと、
送信される信号と選択された符号語とのマトリクス乗算を実行することにより信号をプリコードするプリコーダと、
複数のアンテナを有する送信回路とを備え、
前記符号語は、下記式、
【数2】
で定められる、変更されたカードック多様体で表される無線通信システム。
【請求項4】
送信される信号と選択された符号語とのマトリクス乗算を実行することにより信号をプリコーディングし、
プリコードされた信号を複数アンテナから送信し、
前記符号語は、下記式、
【数3】
で定められる、変更されたカードック多様体で表される無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。特に、本発明は“プリコーディング”を使用するMIMO(multiple-input-multiple-output)通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリコーディング方式は、複数入力・複数出力(MIMO)無線システムにおいて幅広く使用されている。プリコーディングされたデータは、無線チャネルを介して送信されたとき、信号間のコーディング距離のために高い伝送信頼性を達成する。受信機は、プリコーディングが適用された場合、伝送誤りを訂正することができる。さらに、マルチアンテナシステムにおけるプリコーディングは、データストリームを複数のアンテナに同時に送信することを可能とする。
【0003】
いくつかのコードブックデザインが報告されており、コードブックは、例えばグラスマン多様体、ベクトル量子化、フーリエ変換、及びカードック多様体に基づいてデザインされる。
【0004】
単純な方法で捕えたとき、グラスマン多様体に基づくグラスマンコードブックデザインは、符号語の間の距離が広いため、実質上優れていると言える。グラスマンコードブックW
g(k)は、最長の符号語距離d
wを持つ符号語w
g(i)の選択に対して最適である。ここで、送信側に2つのアンテナを有し、受信側に2つのアンテナを有する2×2無線通信システムに適したグラスマンコードブックの一例を示す。
【0005】
【数1】
【0006】
現在、MIMO無線通信システム、例えば、Wi−Fiと称されるIEEE802.11は、屋内の使用に最適化されている。屋内環境は、例えば壁、家具、窓、鏡などの様々な障害物による反射及び減衰のため、典型的に、送信機と受信機との間の著しいマルチパス伝搬に特徴がある。グラスマンコードブックW
g(k)は、最長の符号語距離d
wを持つ符号語w
g(i)の選択に対して最適であるため、最良のデザインの選択の1つであると言える。
【0007】
しかしながら、グラスマン多様体の符号語は多数の桁を有しているため、グラスマンコードブックの問題は、莫大な計算オーバヘッドにある。より具体的には、多数の桁は多数の乗算を生み出し、多数の乗算は信号処理において大きなオーバヘッドを要求し、また、追加の処理時間をもたらし、従って通信システム全体における遅延を増加させる。現在では、高速でかつ大容量の通信が要求されていることから、長い処理時間を要求するグラスマンコードブックは、代替のプリコーディング方式を必要とする。
【0008】
カードック多様体に基づくカードックコードブックデザインは、その複雑性低減のため、従って1つの有望な解決策を提供する。ここで、2×2無線通信システムに適したカードックコードブックの一例を示す。
【0009】
【数2】
【0010】
確かに、カードックコードブックを採用すると、各符号語の各要素はきわめて単純であり、それはストレージ及びサーチの要求を削減する。加えて、非特許文献1及び特許文献1に従えば、グラスマンコードブックデザインとカードックコードブックデザインとの間で、システムパフォーマンスはほぼ同じである。これは、カードックコードブックではより少ないチャネル状態情報(CSI:channel state information)フィードバックが要求され、そうでなければデータトラヒックに干渉するフィードバックオーバヘッドが削減されるためである。したがって、カードックコードブックは、これまでに既知のコードブックと同等であるか、又はそれよりも高いパフォーマンスをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許8306146号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T. Inoue and R. W. Heath Jr., “Kerdock codes for limited feedback precoded MIMO systems,” IEEE Transactions on Signal Processing, vol. 57, no. 9, pp. 3711−3716, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、精力的かつ徹底的な研究を通じて、下記に述べる重要な問題を発見した。本発明者らは、チャネルモデリングに基づくシミュレーション実験を繰り返し実施し、その結果を詳細に検査した。
図10は、2×2無線通信システムにおいて採用される、チャネルマトリクスHを有するシミュレーションモデルを示す。
【0014】
図11及び
図12に、実験の結果を示す。
図11は、グラスマンコードブックをプリコーダとして使用したときに観測されるCSI(チャネル状態情報)パラメータを示し、
図12は、カードックコードブックを使用するときに観測されるCSIパラメータを示す。
【0015】
まず、我々は、
図11に示されるように、グラスマンコードブックは、全てのチャネル状態情報(CSI)を利用することを示す。つまり、グラスマンコードブックデザインを使用するとき、実験結果は、相互に異なる4つのチャネル状態パラメータh11、h12、h21、及びh22を持つ2×2マトリクスを示す。
【0016】
次いで、カードックコードブックの観測されたCSIパラメータが
図12に示される。
図12に示される結果から、我々は、カードックコードブックがプリコーダとして適用されたとき、利用されるCSIパラメータが因数2に削減されることに気づいた。つまり、他の2つのCSIパラメータは同じチャネル状態を報告し、従って追加の情報を含んでおらず、冗長である。
【0017】
実験結果は、カードックコードブックをプリコーダとして適用するとき、チャネル状態情報の著しい減少が結果であることを明らかにする。MIMOシステムにおける著しいCSI情報データは、効果的に利用されることなく、失われる。
【0018】
先に述べたように、現行のプリコード方式は、屋内環境においてデータレートの増加が達成できるようにMIMOシステムを改善するめに最適化される。現在の選択されたプリコーディングコードブックは、データレート及びネットワークスループットについて最適化を考慮するのみである。しかしながら、近い将来、無線カバレッジは、広範なアクセスを可能とするために改善される必要がある。広範なアクセスとは、数百メートルから数キロメートルまでを意味する。したがって、コードブック方式は、例えば、数キロメートルのカバレッジ範囲を有する長距離MIMOシステムにおいて、長距離にわたって信号停止を改善すべきである。
【0019】
本発明の目的は、プリコーダとして、屋内及び屋外環境における広範囲MIMOシステムを可能とする新規なコードブックデザインを使用するMIMO(多入力・多出力)通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、無線システムの送信ビットエラーレート(BER)を改善する。本発明は、例えば、屋外MIMOシステムにおいてより長い範囲を可能とする。より少ない信号停止は、無線信号が数キロメートルを超えて送信できることを可能にする結果である。解決手法は、MIMOシステムにおける複数のアンテナの最適な使用を可能にするプリコーディングである。プリコーディングは、長距離無線送信に対して最適化されたコードブックを使用する。変更されたカードックコードブック{w
kmi}は、プリコーディングゲインの更なる改善を可能とする。変更されたカードックコードブック{w
kmi}は、送信ビットエラーレート(BER)を更に改善するために変更された新規な符号語w
kmiを含む。変更されたコードブック{w
kmi}は、2−3dBの間のプリコードゲインを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、変更されたカードックコードブックがプリコーダとして適用されたときに観測されるCSIパラメータを示す。
【
図2】
図2は、無線通信システムの第1実施形態を図示する。
【
図3】
図3は、送信機としての無線基地局と、受信機としての移動局とを示す。
【
図4】
図4は、グラスマンコードブック及び(変更されていない)カードックコードブックのビットエラー性能(BER)を示す。
【
図5】
図5は、グラスマンコードブック及び変更されたカードックコードブックのビットエラー性能(BER)を示す。
【
図6】
図6は、異なるコーディングゲイン(0,3,6dB)について送信出力に対する距離(Tx−Rx)のシミュレーション結果を示す。
【
図7】
図7は、異なるコーディングゲイン(0,3,6dB)について送信出力に対する距離(Tx−Rx)のシミュレーション結果を示す。
【
図8】
図8は、異なるプリコーディングコードブック(グラスマンコードブック、(変更されていない)カードックコードブック、及び変更されたカードックコードブック)が適用されたときに測定されたノイズ分散を示す。
【
図10】
図10は、チャネルマトリクスHを有するシミュレーションモデルを示す。
【
図11】
図11は、グラスマンコードブックがプリコーダとして使用されるときに観測されるCSI(channel state information)パラメータを示す。
【
図12】
図12は、カードックコードブックが使用されるときに観測されるCSIパラメータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(コードアイデア)
本発明は、コードブックベースの無線通信システムのパフォーマンスを改善し、結果として長距離MIMOシステムをもたらす。本発明の核となるアイデアは、新規な符号語のセットをプリコーダとして提供することであり、新規な符号語のセットでは、グラスマンコードブック及びカードックコードブックの有益な特徴が十分に利用される。本発明者らは、ここでは全てのCSIパラメータを効果的に使用するカードック符号語の変更を提案する。本発明は、下記の変更された符号語w
km(i)を使用する。
【0024】
上記符号語のセットは、精力的かつ徹底的な研究を通じて見出された。従って、反復実験は有益な効果を明確に証明するものの、なぜ変更が効果的に働くかは正確には知られていない。しかしながら、本発明者らは1つの可能性を指摘したい。(変更されていない)カードック符号語w
k1と変更されたカードック符号w
km1ごとを比較したとき、w
k1の第1列の要素は同一(共に“1”)であるものの、w
k1の対応する要素は互いに異なる。これは、BERの改善と関連しうる。
【0025】
本発明者らはもう一言加えたい。本発明者らは、送信側に2つのアンテナを有し受信側に2つのアンテナを有する2×2無線通信システムに適用可能な2×2マトリクス符号語を、変更されたカードックコードブックの要素として提案した。3×3、4×4、又は他のパターン(例えば4×2)へ適用可能な変更に関しては、まだ達成されていないものの、それらは調査中であり、近い将来に公表される。
【0026】
図1は、変更されたカードックコードブックがプリコーダとして適用されたときに観測されるCSIパラメータを示す。変更されたカードックコードブックが使用される場合、4つの全てのCSIパラメータは利用され、かつチャネル状態情報を含む。4つのCSIパラメータの摂動は変更されたカードックにおいて検出可能であり、それは、送信機と受信機との間のMIMO通信の最適化に非常に有益である。
【0027】
(第1実施形態)
図2は、送信機200と受信機300とを有する無線通信システム100の第1実施形態を図示する。この実施形態において、この無線通信システム100は屋外で使用されるものとする。ここで、ダウンリンクは
図3に示されるものと仮定し、送信機200は、例えば、無線アクセスポイント又は無線基地局であり、受信機300は、例えば無線移動局である。BERの改善に起因して、後述するように、送信機200と受信機300との間の距離は、数百メートル又は数キロメートル(例えば500m、800m、1km、又はそれ以上)とすることができ、それは、基地局(200)に1ホップで到達する無線移動局(300)の数の増加をもたらす。
【0028】
送信機200は、コードブックメモリ210、プリコーダ220、及び送信回路230を有する。コードブックメモリ210は、あらかじめ用意されたコードブック211を記憶する。この実施形態において、コードブックメモリ210は、変更されたカードックコードブック211の符号語(w
km0,w
km1)を記憶する。
【0029】
プリコーダ220は、送信される信号と選択された符号語とのマトリクス乗算を実行する。符号語は、(後述するように)受信機からフィードバックされたCSIに基づいて選択される。送信される信号[s
k]は、信号[s
k]が、選択されたw
kmiとのマトリクス乗算によりプリコードされるプリコーダ220に入力される。
【0030】
プリコードされた信号x
k(=w
kmi×s
k)は、2つのアンテナt1、t2を有する送信回路230に出力され、送信回路230は、プリコードされた信号x
kをアンテナt1、t2から送信する。
【0031】
受信機300は、受信回路310、チャネル状態推定ユニット320、及びデコンポーザ330を有する。受信回路310は、1つのアンテナr1、r2を有志、送信機200から送信されたデータ受信する。受信回路310により受信されたデータは、チャネル状態推定ユニット320及びデコンポーザ330に送られる。
【0032】
チャネル状態推定ユニット320は、受信されたデータに基づいてチャネル状態を計算及び推定し、かつ、どの符号語が現在の(推定された)チャネル状態に最もふさわしいかを調べる。チャネル状態情報(CSI)の計算及び推定方法はよく知られており、ここではその詳細は説明しない。最も適した符号語の特定後、チャネル状態推定ユニット320は、そのインデックス番号をCSIフィードバック信号として送信機200にフィードバックする。
【0033】
デコンポーザ330は、受信されたデータを処理する。デコンポーザ330は、例えば、使用された符号語に基づいて信号を分解し、デコードとエラー訂正を行う。そのようにして処理された信号s
kは、シグナルプロセッサに送られる。
【0034】
次いで、変更されたカードックコードブックを採用した実施形態の効果を説明する。
図4及び
図5は、グラスマンコードブック、(変更されていない)カードックコードブック、及び変更されたカードックコードブックのビットエラー性能(BER)を示す。これら結果は、シミュレーション検討により得られた。
下記リストは、プリコーディング評価に使用されたシミュレーションパラメータ(Matlab)である。
【0035】
パケットサイズ N_packet=10
フレームサイズ N_frame=100000
変調オーダー mod_order=5
SNR値 SNRdBs=[0:2:30]
ノイズ分散 Noise_val=0.5
送信アンテナ数 TT_TX=2
受信アンテナ数 TT_NR=2
【0036】
図5に示されるように、例えば、BER=10
−5において、変更されたカードックコードブックが適用されたとき、グラスマンコードブックに比べて2dBを超える著しいゲイン改善が結果である。また、(変更されていない)カードックコードブックに比べて、変更されたカードックコードブックは、
図4に示されるように、1dBを超える性能改善を示す。したがって、これら検討は、本実施形態を使用したときに2−3dBの性能改善が期待できることを示す。参考のために、2−3dBはおよそ50%のBER性能改善に対応する。
【0037】
ビットエラー性能(BER)の改善は、カバレッジエリアの拡大を導く。
図6及び
図7は、異なるコーディングゲイン(0,3,6dB)に対する送信出力対距離(Tx−Rx)のシミュレーション結果を示す。
下記リストは、シミュレーションパラメータ(Matlab)である。
【0038】
tx_power=30[dBm]
antenna_gain=3[db] tx&rx
coding_gain=0、3又は6[dB]
shadowing_std=8[dB]
N0=−174[dBm/Hz]
Noise_figure=7[dB]
Bit_rate=20又は2000[kbps]
EbNo=4.5(BER=10
−5における畳み込み符号化を用いて)
i_loss=3[dB] (実行損失)
f_loss =3[dB] (マルチパスフェーディング損失)
a_height=15[m] (アンテナ高さ)
frequency=900[MHz] (キャリア周波数)
Link budget(LB):
LB[dB]=Txパワー+アンテナゲイン+コーディングゲイン−(ノイズ分散+noise_figure+Eb/No+実行損失+フェーディング損失+10×log
10(Bit rate×1000))
【0039】
図6ではBit rate=20バイト、
図7ではBit rate=2000バイト。
図6及び
図7から、3dBの性能改善はカバレッジエリアをおよそ1.5倍に広げることができることが示される。
【0040】
さらに、計測されたノイズ分散について説明を加える。グラスマンコードブック、(変更されていない)カードックコードブック、及び変更されたカードックコードブックの間には、観測されるノイズ分散において違いが存在する。
図8は、異なるプリコーディングコードブック(グラスマンコードブック、(変更されていない)カードックコードブック、及び変更されたカードックコードブック)が適用されたときに計測されたノイズ分散を示す。(変更されていない)カードックコードブックを使用するプリコーディングは、グラスマンコードブックに比べて、観測されたノイズ分散を低減する。この結果は、(変更されていない)カードック多様体はしばしばエラー訂正に使用されるため、期待できた。本発明者らは、我々が提案したカードックコードブック対してした変更は、観測されたノイズ分散にネガティブな効果を有していないことを強調したい。
【0041】
上記したように、我々が提案したカードック多様体に対する変更は、価値のある結果を提供し、それをプリコーダとして適用したとき、実用的な利益、例えばBER性能の改善及びカバレッジエリアの拡大が達成される。
【0042】
(第2実施形態)
上記した第1実施形態は、変更されたカードックコードブックであるコードブックを1つ使用した。第2実施形態では、コードブックメモリは変更されたカードックコードブックに加えて種々のコードブックを記憶し、最適なコードブックが動的に選択される。
図9は、コードブックメモリがグラスマンコードブック、カードックコードブック、及び変更されたコードブックを含む第2実施形態を示す。第1実施形態と同様に、チャネル状態推定ユニットは、受信されたデータに基づいてチャネル状態を計算して推定し、最適なコードブックを、より具体的には現在の(推定された)チャネル状態に最も適した符号語を検索する。
【0043】
各コードブックデザインはそれぞれ独自の利点を有しているため、最適なコードブックは、周辺環境又は要求される特性に基づいて変化し得る。例えば、高いデータレート及び/又は屋内無線環境が要求されるとき、グラスマンコードブックは最適なコードブックであろう。広いカバレッジエリアが要求されるとき、(変更されていない)カードックコードブックが適しており、更に、より広いカバレッジが要求される、ベストなコードブックは変更されたカードックコードブックであろう。コードブックの動的な選択に加えて、コードブックの選択は、MIMO無線通信システムのインストールを担当する人によるインストールの段階において提供されてもよい。
【0044】
本発明は、その例示的な実施形態を参照して特に説明され、かつ記述されたが、本発明は、それら実施形態に限定されない。クレームによって定義される本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、形式上の及び詳細の種々の変更がなされ得ることは、当該技術分野における当業者によって理解される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、MIMO無線通信システムのための方法及び装置に適用できる。本発明は、無線ネットワークにおいて、長距離にわたる信頼できる送信を可能とする。特に、IEEE802.11ahWLANプロトコルは、屋外の長距離カバレッジに有用な新たなコードブックを要求する。我々が提案したプリコーディングは、WiMAX、IEEE802.16m、3GPP LTE、WLAN、WPAN(wireless personal area networks)、WBAN(wireless body area networks)を含むがそれらには限定されない実施形態の潜在的な候補である。IEEE802.15.4 WPANなどの無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)では、プロトコルは、センサーノードにおいて使用され、かつ実装される。IEEE802.15.4 WPANセンサーは、無線カバレッジを広げるために本発明を使用できる。新しいIEEE802.15.4 WPAN標準はマルチアンテナシステムもサポートし、従って本発明はそのようなシステムに簡易に適用可能である。加えて、シングルユーザMIMO(SU−MIMO)及びマルチユーザMIMO(MU−MIMO)は、実施形態の潜在的な候補である。
【符号の説明】
【0046】
100 無線通信システム
200 送信機
300 受信機
210 コードブックメモリ
220 プリコーダ
230 送信回路
310 受信回路
320 チャネル状態推定ユニット
330 デコンポーザ