特許第6222766号(P6222766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222766
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】屋外用二重床
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   E04F15/024 603F
   E04F15/024 601K
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-107777(P2013-107777)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-227720(P2014-227720A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103404
【氏名又は名称】オーエム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 誠二
(72)【発明者】
【氏名】赤木 孝明
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−081636(JP,A)
【文献】 特開2002−242384(JP,A)
【文献】 特開2011−032778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎面の上に並べられた支柱に支持させた多数の床パネルを並べて構築される屋外用二重床であって、
床パネルは、係合凸面を角部の側面に設けてあり、
複数の床パネルは、目地の幅の隙間を残して側面を対向させ、突き合わせる角部を基礎面に立設した支柱上端の支持面に載せ、同一直線上に並ぶ係合凸面を跨いで目地に固定部材を挿入し、前記固定部材の両端に設けた掛止爪を支持面に掛止することにより、支柱に位置固定してなり、
固定部材は、同一直線上に並ぶ係合凸面を縦断する長さの水平バーと、前記水平バーそれぞれから下ろされた垂直バーと、各垂直バーの下端に設けた掛止爪とからなり、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方が弾性変形自在で、垂直バーに上方から棒体を差し込むスリットを設けてなる屋外用二重床。
【請求項2】
基礎面の上に並べられた支柱に支持させた多数の床パネルを並べて構築される屋外用二重床であって、
床パネルは、係合凸面を角部の側面に設けてあり、
複数の床パネルは、目地の幅の隙間を残して側面を対向させ、突き合わせる角部を基礎面に立設した支柱上端の支持面に載せ、同一直線上に並ぶ係合凸面を跨いで目地に固定部材を挿入し、前記固定部材の両端に設けた掛止爪を支持面に掛止することにより、支柱に位置固定してなり、
固定部材は、角部を突き合わせる床パネルの数で周方向等間隔に交差し、同一直線上に並ぶ係合凸面を縦断する長さの水平バーと、前記水平バーそれぞれから下ろされた垂直バーと、各垂直バーの下端に設けた掛止爪とからなり、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方が弾性変形自在で、垂直バーに上方から棒体を差し込むスリットを設けてなる屋外用二重床。
【請求項3】
床パネルは、石パネルの側面に係合凸面を設けて構成してなる請求項1又は2いずれか記載の屋外用二重床。
【請求項4】
床パネルは、カバー部材を角部に取り付け、前記カバー部材の側面に係合凸面を設けて構成してなる請求項1〜3いずれか記載の屋外用二重床。
【請求項5】
床パネルは、カバー部材を角部に取り付け、前記カバー部材の底面を高さ調整自在な嵩上げ部としてなる請求項1〜いずれか記載の屋外用二重床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の玄関口、周囲の路面や遊歩道等に利用できる屋外用二重床に関する。
【背景技術】
【0002】
二重床は、建物内の床下に配線や空調に利用される空間を形成するために多用されているが、屋外でも利用されている(例えば特許文献1)。特許文献1が開示する屋外用二重床(屋外設置二重床)は、透水性を有すると共に内部に配線や空調に利用される空間(配線・配管用空間)を備えた床パネル(床パネル本体)を複数隣合うように配置し、高さ調整自在な支持脚を地面と各床パネル本体との間に設けて構築される(特許文献1・[請求項1])。
【0003】
特許文献1が開示する屋外用二重床を構築する床パネルは、スペーサを介して表面板及び裏面板を離すことにより、配線や空調に利用される空間を形成している。また、特許文献1が開示する屋外用二重床を構築する床パネルは、表面板を透水性アスファルト、裏面板をパンチングメタルで構成することにより、全体として透水性を備えている。これにより、屋外用二重床を構築する際、床パネルを密に並べても、表面板に降った雨水は溜まることなく、地表に流れ落ちるようにしている(特許文献1・[0008])。
【0004】
また、二重床を構築する床パネルは、例えば特許文献1が開示する屋外用二重床のように、耐候性を考慮してアスファルトと金属とを組み合わせた構成も見られるが、一般的には、表面板及び裏面板がいずれも金属板からなる中空構造として構成されるものが多い。こうした床パネルは、屋内用二重床に用いられる場合、金属板からなる表面板にカーペットが貼り付けられることが多いが、近年では、審美性を高めるため、板状に成形した石タイル等が貼り付けられることもある(特許文献2又は特許文献3)。
【0005】
特許文献2が開示する二重床は、既設の二重床(フリーアクセスフロア)の表面に、石又は粘土を焼成して成形される床タイルを着脱自在に接着固定して構築される(特許文献2・[請求項1])。床タイル間の目地は、各床タイルの側面に貼り付けた目地テープにより埋められる(特許文献2・[請求項4]〜[請求項6])。特許文献2は、既設の二重床に床タイルを貼り付ける構成により、床タイルの張り替えができたり、目地施工が簡略化されたりする利点を挙げている(特許文献2・[0006])。
【0006】
特許文献3が開示する二重床は、既設の二重床の上面に十字コーナー部材を配置し、前記上面に粘着性弾性シート及び非粘着性弾性シートを配置して、前記粘着性シートに密着させながら、十字コーナー部材に合わせて床石材を敷き詰め、隣り合う床石材の目地に目地部材を充填して構築される(特許文献3・[請求項1])。特許文献3は、既設の二重床に石部材を貼り付ける構成により、施工が容易で、石部材の張り替えができる利点があったり、既設の二重床と石部材との間に粘着性弾性シート及び非粘着性弾性シートを介装したりすることにより、歩行時の衝撃や反響音が小さくなる利点のあることを挙げている(特許文献2・[0008])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07-109812号公報
【特許文献2】特開2009-250019号公報
【特許文献3】特開平05-311856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二重床は、比較的簡易に施工できる上、交換が容易で、床下に配線や空調に利用される空間が形成できる利点のあることから、利用対象が広がっており、特許文献1に見られるように、屋外用二重床も提案されるに至っている。しかし、特許文献2又は特許文献3に見られるように、審美性に優れた屋外用二重床、具体的には表面に石タイルが並ぶ屋外用二重床は、未だ見られない。それは、屋外用二重床には、屋内用二重床に見られない問題があり、単純に特許文献1〜特許文献3それぞれが開示する二重床を組み合わせて、屋外用二重床を構築することができないためと考えられる。
【0009】
特許文献1が開示するように、屋外用二重床では、雨水の排水を考慮して、並べる床パネルに透水性又は排水性が求められる。このため、屋外用二重床に用いられる床パネルに石タイルを貼り付けると、透水性又は排水性が失われてしまうことから、単純に床パネルの表面に石タイルを貼り付けることができない。これは、床パネルをそのまま石パネルから構成した場合でも同じである。これから、石タイルを貼り付ける床パネル、又は石パネルから構成される床パネルに、透水性又は排水性を付与する必要が出てくる。
【0010】
床パネルに透水性又は排水性を付与するには、特許文献2又は特許文献3に見られる二重床において、塞がれていた目地を開放し、隣り合う床パネル間に隙間を設けて、排水溝を形成することが考えられる。しかし、屋外用二重床の場合、雨だけでなく、風の影響も考慮しなければならない。具体的には、屋外用二重床を構成する床パネルの目地を開放して排水溝を形成した場合、目地を塞ぐことによる床パネルの押さえ込みがなくなるので、床パネルの表面に吹き付ける風が発生させる負圧により前記床パネルを浮き上がらせて位置ズレを招いたり、最悪床パネルをひっくり返させたりする問題が出てくる。
【0011】
こうした屋外用二重床の風による問題に対し、床パネル自体を重量物として浮き上がりを防止することが考えられるが、施工が容易である利点が損なわれる問題が出てくる。また、屋内用二重床に見られるように、4枚の床パネルの突き合わせる角部を一体に載せる支柱に対して、前記角部を押さえ付ける固定構造を利用することが検討されるが、前記固定構造を石パネルから構成される床パネルに採用すると、固定構造が外部から視認され、審美性が損なわれたり、固定構造のために目地幅が広くなってハイヒールの踵が落ちる可能性が出て来たりするため、好ましくない。また、固定構造に合わせて、石パネルの角部に細かな細工が必要になり、床パネルの製造コストを高める虞も出てくる。
【0012】
このように、屋外用二重床は、雨水の排水や、床パネルの表面に吹き付ける風により床パネルが浮き上がる問題を考慮する必要があり、屋内用二重床のように、石タイルを床パネルに貼り付けたり、石パネルを床パネルとしたりするだけでは、審美性に優れた屋外用二重床を構築できない。そこで、石パネルから構成される床パネルを用いて審美性に優れた屋外用二重床を構築できるようにするため、雨水の排水ができ、床パネルに吹き付ける風による床パネルの浮き上がりも抑制又は防止され、施工も容易で、必要に応じて床パネル(石パネル)の交換もできる構成又は構造について、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
検討の結果開発したものが、基礎面の上に並べられた支柱に支持させた多数の床パネルを並べて構築される屋外用二重床であって、床パネルは、係合凸面を角部の側面に設けてあり、複数の床パネルは、目地の幅の隙間を残して側面を対向させ、突き合わせる角部を基礎面に立設した支柱上端の支持面に載せ、同一直線上に並ぶ係合凸面を跨いで目地に固定部材を挿入し、前記固定部材の両端に設けた掛止爪を支持面に掛止することにより、支柱に位置固定してなり、固定部材は、同一直線上に並ぶ係合凸面を縦断する長さの水平バーと、前記水平バーそれぞれから下ろされた垂直バーと、各垂直バーの下端に設けた掛止爪とからなり、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方が弾性変形自在で、垂直バーに上方から棒体を差し込むスリットを設けてなる屋外用二重床である。また、固定部材は、角部を突き合わせる床パネルの数で周方向等間隔に交差し、同一直線上に並ぶ係合凸面を縦断する長さの水平バーと、前記水平バーそれぞれから下ろされた垂直バーと、各垂直バーの下端に設けた掛止爪とからなり、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方が弾性変形自在で、垂直バーに上方から棒体を差し込むスリットを設けてもよい
【0014】
床パネルは、平面視方形を基本として4枚ずつ角部を突き合わせるが、それぞれの側面に設けた係合凸面が同一直線上に並べば、例えば方形を半割した平面視二等辺三角形として8枚ずつ角部を突き合わせてもよい。「固定部材の両端に設けた掛止爪を支持面に掛止する」とは、支柱上端の支持面に直接掛止するほか、前記支持面と一体になった部材(例えば支持面カバー)に掛止する場合を含む。
【0015】
本発明の屋外用二重床は、目地の幅の隙間を残して側面を対向させた床パネルを、固定部材により支柱に位置固定する。これにより、隣り合う床パネルの対向する側面の間に形成される隙間が排水溝として利用できる。また、複数の床パネルは、固定部材を介して連結された状態となり、かつ前記固定部材により支柱に位置固定されるため、床パネルの表面に吹き付ける風により発生する負圧が、前記床パネルを浮き上がらせて位置ズレを招いたり、最悪床パネルをひっくり返させることがない。
【0016】
本発明の屋外用二重床を構成する床パネルは、石パネルの角部の側面に係合凸面を設けて構成すれば、石パネルが並ぶ屋外用二重床が構築できる。石パネルの角部の側面に設ける係合凸面は、石パネル自体に直接加工を施して形成してもよい。しかし、床パネルは、カバー部材を角部に取り付け、前記カバー部材の側面に係合凸面を設けて構成する方が簡便である。この場合、カバー部材を変更するだけで、必要な係合凸面の厚みや外形状を容易に変更できる利点がある。
【0017】
また、床パネルは、カバー部材を角部に取り付け、前記カバー部材の底面を高さ調整自在な嵩上げ部とすれば、前記嵩上げ部の高さ調整により、支柱の高さの僅かな違いによる床パネルの不陸を容易に解消できるようになる。また、床パネルを石パネル(特に天然石の石パネル)で構成した場合、石パネルの厚みのバラツキを、嵩上げ部の高さ調整により吸収できるようになる。嵩上げ部は、例えばボルト及びナットの組み合わせにより機械的に高さを調整する構成や、切削容易な樹脂部材で構成し、必要により削って全高を調整する構成を例示できる。
【0018】
具体的な固定部材は、同一直線上に並ぶ係合凸面を縦断する長さの水平バーと、前記水平バーそれぞれから下ろされた垂直バーと、各垂直バーの下端に設けた掛止爪とからなる構成、つまり平面視直線状の水平バーが1つの固定部材を例示できる。水平バー及び垂直バーは、いずれも主として水平方向(水平バー)又は垂直方向(垂直バー)に延びる意味での呼称であり、例えば水平バーが湾曲していたり、垂直バーが掛止爪の対向内向き又は外向きに傾斜していたりしても構わない。
【0019】
また、固定部材は、角部を突き合わせる床パネルの数で周方向等間隔に交差し、同一直線上に並ぶ係合凸面を縦断する長さの水平バーと、前記水平バーそれぞれから下ろされた垂直バーと、各垂直バーの下端に設けた掛止爪とからなる構成、つまり平面視直線状の水平バーが水平面内で複数交差した固定部材にすると、角部を突き合わせる複数の床パネルをより安定して支柱に位置固定できる。
【0020】
例えば平面視方形の床パネル4枚の角部を突き合わせる場合、直線状の水平バーが1つの固定部材であっても、側面を対向させる床パネルの係合凸面をまとめて水平バーが縦断するため、4枚の床パネルは1つの固定部材で支柱に位置固定できる。しかし、直線状の水平バーが交差する固定部材であれば、各床パネルの角部を挟む2枚の側面それぞれに設けられた係合凸面が固定部材で押さえ込まれ、より安定して支柱に位置固定される。
【0021】
固定部材は、支柱の支持面に掛止させた掛止爪を外して取り除くことができ、床パネルを交換可能にする。この場合、固定部材は、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方が弾性変形自在であり、垂直バーに上方から棒体を差し込むスリットを設けた構成にするとよい。固定部材は、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方を樹脂製又は薄い金属製としたり、全体を樹脂製としたりして、前記水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方に弾性を付与する。支柱の支持面に掛止爪を掛合させた固定部材は、上方からスリットに差し込んだ棒体を掛止爪の係合方向に倒すと、相対的に垂直バーが前記掛止爪の係合方向と反対側に跳ね上げられ、掛止爪を支持面から外すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の屋外用二重床は、石パネルを用いた床パネルを重量物にすることなく、床パネルの表面に吹き付ける風が発生させる負圧による床パネルの浮き上がりを抑制又は防止しつつも簡単に位置固定できるため、施工が容易で、必要に応じて床パネルの交換もできる。屋外用二重床が設置される屋外(近傍に建物がある場所)又は野外(近傍に建物が少ない場所)は、局地的に風が間断なく吹き、また風の強い場所(例えば高所)があり、とりわけ床パネルの浮き上がりが抑制又は防止される効果は、屋外用二重床に要求される性能として好ましい。また、本発明の屋外用二重床は、目地を排水溝として雨水を排水するために開放しながら、固定部材を薄く作ることにより、開放された目地をハイヒールの踵が落ち込まない幅以下に抑えることができる。
【0023】
石パネルを用いた床パネルを簡単に位置固定できる利点は、床パネルの角部の側面に設けた係合凸面を跨いで目地の隙間に挿入され、掛止爪を支柱の支持面に掛止する固定部材の固定構造による効果である。こうした係合凸面を固定部材で押さえる固定構造は、本発明の屋外用二重床の施工を容易にしている。また、雨水の排水は、並べた床パネルの側面を対向させ、目地の隙間を残したことの効果である。そして、床パネルの交換は、水平バー又は垂直バーのいずれか一方又は双方が弾性変形して支柱の支持面から掛止爪を外せる固定部材による効果である。
【0024】
こうして、本発明の屋外用二重床は、基礎面と床パネルとの間に配線や空調のほか、配管や排水に利用される空間を形成し、街灯やイルミネーションのための電気配線やドライミストのための水道配管等の設置を、大掛かりな土木工事を要することなく可能にする。また、本発明の屋外用二重床は、特に石パネルを床パネルとして用いながら、しっかりと雨水を排水できるため、特に審美性が求められる商業ビルやマンション等の玄関口として利用できる。これは、屋外用二重床が利用されていなかった場面での利用ができることを意味する。そして、本発明の屋外用二重床は、石パネルを用いた二重床として屋内でも利用可能であり、利用可能な範囲が屋内外双方であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用して構築される屋外用二重床の一例を表す斜視図である。
図2】本例の屋外用二重床の構成を表す部分分解斜視図である。
図3】支柱の支持面に対して床パネルの角部を載せる手順を表す部分斜視図である。
図4】支柱の支持面に角部を載せた床パネル相互の目地の隙間に固定部材を挿入する手順を表す部分斜視図である。
図5】床パネル相互の目地の隙間に固定部材を挿入し終えた手順を表す部分斜視図である。
図6】床パネル相互の目地の隙間に固定部材を挿入し終えた状態を表す部分平面図である。
図7】床パネル相互の目地の隙間に固定部材を挿入し終えた状態を表す部分側面図である。
図8】床パネル相互の目地の隙間に固定部材を挿入し終えた状態を裏面から見た部分斜視図である。
図9】カバー部材の嵩上げ部の高さを調整した状態を表す部分断面図である。
図10】固定部材のスリットに取り外し治具を挿入する手順を表す部分側面図である。
図11】固定部材のスリットに挿入した取り外し治具を固定部材の平面視中心に向けて傾ける手順を表す部分側面図である。
図12】固定部材の平面視中心に向けて傾けた取り外し治具をそのままに固定部材を取り外す手順を表す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の屋外用二重床は、図1に見られるように、例えば平坦に均された基礎面の上に等間隔で並べられた支柱4に、平面視正方形の床パネル1の角部を突き合わせて4枚ずつ支持させ、隣り合う床パネル1の目地を開放して排水溝13を構成する。開放された目地を排水溝13とする以外、本発明の屋外用二重床は、屋内用二重床と変わらない。これは、本発明の屋外用二重床を屋内用二重床に代えて、屋内で構築、利用できることを意味する。
【0027】
床パネル1は、図2に見られるように、天然石から加工した平面視方形の石パネル11の裏面に、四辺毎に折り曲げて正面視長方形の補強フランジ121を形成した平面視方形である金属製の底面当板12を接着して一体化した構成である。本発明の屋外用二重床は、石パネル11の側面に係合凸面22を設け、固定部材3を用いて前記係合凸面22を支柱4の支持面41に対して掛合、固定するため、底面当板12がなくても構築できる。本例の床パネル1は、石パネル11が万が一破損して割れた場合に、石パネル11が落下することを防止するため、底面当板12を設けている。
【0028】
本例の石パネル11は、上面周縁を小さく面取りしているほか、下縁周縁を大きく斜めに切除して控え面111を形成し、底面当板12の補強フランジ121が前記控え面111の範囲に収まり、石パネル11の側面と補強フランジ121の外面とが面一になる、又は補強フランジ121の外面が石パネル11の側面より控えるようにしている。これにより、底面当板12の補強フランジ121が石パネル11の平面視外周縁からはみ出すことがなくなり、側面相互を当接させて石パネル11を密に積層し、保管及び運搬に供することができる。
【0029】
控え面111は、補強フランジ121の外面が石パネル11の側面より控えればよく、例えば前記補強フランジ121の転写構造である凹面を形成することも考えられる。しかし、石パネル11に段差を設けて凹面の加工を施すことが難しいため、本例の石パネル11は斜めに切除して傾斜した控え面111を形成している。このため、前記控え面111に収まるように底面当板12の補強フランジ121が控えると、控え面111及び補強フランジ121の上端面に挟まれた断面三角形の切欠溝112が形成される。
【0030】
こうして形成される控え面111及び補強フランジ121の上端面に挟まれた切欠溝112は、カバー部材2の係合突起221を係合させ、前記カバー部材2を床パネル1の角部に装着させる係合溝として機能する(後掲図9参照)。また、控え面111及び補強フランジ121の上端面に挟まれた切欠溝112は、床面当板12を石パネル11に接着する接着剤(ウレタン樹脂系接着剤)の余剰がはみ出して溜まるはみ出し代としても機能する。
【0031】
本例の床パネル1は、石パネル11又は床面当板12の補強フランジ121を加工するのではなく、係合凸面22を有する樹脂製のカバー部材2を角部に装着して、側面に係合凸面22を設ける。床パネル1は、製造工場においてカバー部材2を装着した状態で出荷されるが、例えば床パネル1単体で保管又は運搬し、屋外用二重床の施工現場で適宜床パネル1に装着してもよい。本例のカバー部材2は、全体を樹脂製の一体成形品として、製造に際する組み付けを省くほか、石パネル11の角部を外部から保護する保護部材としたり、樹脂製の嵩上げ部23を削って高さ調整させたりしている。
【0032】
本例のカバー部材2は、床パネル1の裏面当板12の裏面に接面させる平面視略正方形(図8中、支持面カバー5の円弧外周縁に切り取られて略三角形の底面側が覗いている)のベース21を基準に、前記ベース21の上面側に係合凸面22、前記ベース21の裏面側に嵩上げ部23を設けて交際される。係合凸面22は、床パネル1の角部に一致する直交関係の2辺にわたって屈曲する縦フランジを床パネル1の側面(石パネル11の側面)に接面させ、縦フランジの厚みだけ前記床パネル1の側面から突出させて構成する。本例の係合凸面22は、屈曲する縦フランジで連続しているが、石パネル11の側面それぞれに合わせて独立した2枚の係合凸面22としてもよい。
【0033】
嵩上げ部23は、後述する支持面カバー5の周縁ストッパ511及び仕切板53に囲まれた範囲に収まる平面視四分の一扇状の樹脂製ブロックで、床パネル1の角部に一致する直交関係の2辺が前記係合凸面22の厚みだけ控えた位置から、ベース21の裏面に突出して設けられている。本例の嵩上げ部23は、樹脂製であり、一様にならない天然石から加工される石パネル11の厚みの差を吸収するべき、適宜削って、カバー部材2を含めた床パネル1の厚みを調整させる。
【0034】
本例のカバー部材2は、既述したように、係合凸面22の内側に形成した係合突起221を、床パネル1の側面に形成された切欠溝112(=控え面111及び補強フランジ121の上端面に挟まれた切欠溝112)に係合させるほか、ベース21に設けた嵌合突起221を、床パネル1の裏面当板12に設けた嵌合孔122を通じて、石パネル11に設けた嵌合穴(図示略)に嵌合させて、床パネル1の角部に装着する。このように、床パネル1に対する本例のカバー部材2の装着は、機械的な係合及び嵌合のみであるが、床パネル1に対する装着を共居にしたい場合、例えばベース21を裏面当板12に接着してもよい。
【0035】
固定部材3は、直線状(図2中左上側)又は十字状(図2中右下側)の水平バー31の端部それぞれから垂直バー32を下ろし、前記垂直バー32の下端それぞれに対向内向きに突出する掛止爪33を設けて構成される樹脂製一体成形品である。水平バー31が直線状又は十字状を問わず、同一線上に並ぶ水平バー31及び垂直バー32は、同一線上に並ぶ係合凸面22の上端面が描く輪郭形状に合わせて、水平バー31の直線状底面(係合凸面22に向かう側の面)を垂直バー32の円弧状底面で挟んで、前記直線状底面と円弧状底面とが連続するように形成している。
【0036】
支柱4を中心に角部を突き合わせる4枚の床パネル1は、同一直線上の目地に4枚の係合凸面22を並べる。これから、前記目地に収まる直線状の水平バー31からなる固定部材3(図2中左上側)であれば、支柱4を中心に角部を突き合わせる4枚の床パネル1を押さえ込むことができる。しかし、本例の床パネル1は、角部を挟む2枚の側面それぞれに係合凸面22が設けられ、交差する目地それぞれに並ぶ係合凸面22が4枚ずつ、合計8枚あるから、十字状の水平バー31からなる固定部材3により、交差する目地それぞれに並ぶ4枚の係合凸面22をすべて押さえ込める方が好ましい。本例の屋外用二重床は、基本的に十字状の水平バー31からなる固定部材3を用いる例として、説明する。
【0037】
十字状の水平バー31からなる本例の固定部材3は、水平バー31、垂直バー32及び掛止爪33がいずれも目地に収まる幅に形成され、前記幅の断面方形の棒体となる水平バー31が弾性変形しやすくなっている。これにより、垂直バー32に設けたスリット321に挿入した取り外し治具6を傾けると、水平バー31が撓んで弾性変形し、掛止爪33を支持面カバー5の掛止凹部521から外すことができる。本例の固定部材3は、水平バー31及び垂直バー32の境界を挟む一対の変形抑制凹面311を設け、前記水平バー31の撓みが垂直バー32に及ばないようにしている。変形抑制凹面311は、掛止爪33を形成する型を通過させる型抜き用の凹面としても利用される。
【0038】
支柱4は、屋内用二重床に用いられる構成と同様で、全長が調整自在な支柱本体43の下端に平面視正方形の接地面42、前記支柱本体43の上端に平面視円形の支持面41を設けた構成である。支柱本体43は、螺合する金属製の上筒及び下筒から構成され、両者の螺合量により高さを調節し、固定ネジにより両者を締め付けて前記高さを維持する。接地面42は、傾き調整用のネジを四隅に着脱自在な金属板で、傾き調整後、接着剤(エポキシシリコーン樹脂系接着剤)により基礎面に対して接着、固定される。
【0039】
支持面41は、突き合わせる4枚の床パネル1それぞれの角部に装着したカバー部材2の嵩上げ部23を載せる大きさの金属製の円板である。本例の支持面41は、直接床パネル1の角部に装着したカバー部材2の嵩上げ部23を載せるのではなく、後述する支持面カバー5の平面板51に載せる。これから、支持面41は、支持面カバー5の平面板51の裏面から突出させた位置決め突起54を嵌合させる位置決め孔411を平面視正方形角部に4個設けている。
【0040】
支持面カバー5は、支持面41に設けられた位置決め孔411に位置決め突起54を差し込んで、支持面41に対して特定向きに固定される。また、床パネル1の角部に装着したカバー部材2は、支持面カバー5に設けられる仕切板53に従って、支持面カバー5に対して特定向きで載せられる。これから、支柱4の高さ調整によって床パネル1の水平面内での姿勢が左右されないように、本例の支持面41は、支柱本体43の上端(上筒の上端)に対して空回りし、支持面41に固定される支持面カバー5の向きが支柱本体43によって左右されないようにしている。
【0041】
支持面カバー5は、底面が開放された扁平な円柱外形の樹脂製部材で、平面視円形の平面板51の外周縁から下方に向けて周面を下ろしてスカート部52を構成し、前記平面板51の上面に平面視十字状の仕切板53を設け、前記平面板51の外周縁に倣った円弧状壁面から構成される断面コ字状の周縁ストッパ511を半径方向内向きに開いた姿勢で周方向30度間隔に12個設けると共に、前記仕切板53に沿って延びる排水路512や、周縁ストッパ511の間を半径方向に延びる排水路512を形成している。各排水路512は、互いに繋がっている。
【0042】
支持面カバー5は、支柱4上端の支持面41に被せ、平面板51の裏面から突出させた位置決め突起54を前記支持面41の位置決め孔411に嵌合して、位置固定する。スカート部52は、支持面カバー5を支柱4上端の支持面41に位置固定する際、前記支持面41を覆い隠すように外嵌される。このため、固定部材3の掛止爪33は、支持面カバー5のスカート部52に周方向等間隔で設けられた正面視台形状の掛止凹部521を通して、支柱4上端の支持面41の周縁に下方から掛止させる。
【0043】
仕切板53は、平面板51を四分の一円に区画し、床パネル1の角部に装着したカバー部材2を載せる領域を形成する。本例の仕切板53は、全体がカバー部材2の嵩上げ部23の側面に接面するのではなく、ほぼ中間位置に設けた当接リブ531を前記嵩上げ部23の側面に線接触させる。これにより、仕切板53自体の加工精度を高めずに済み、嵩上げ部23の側面に当接リブ531を確実に線接触させて、床パネル1の敷設間隔(敷設ピッチ)がずれることを抑制又は防止する。
【0044】
周縁ストッパ511は、仕切板53と対になって、床パネル1の角部に装着したカバー部材2の嵩上げ部23を載せる区画を構成し、前記嵩上げ部23が支持面カバー5の平面板51から外れることを防止する。本例の周縁ストッパ511は、平面板51に侵入する雨水等を外部に排水するため、半径方向に延びる排水路512を形成するため、周方向に断続して設けられている。こうした排水路512を支持面カバー5に設ける点が、屋外用二重床特有の構造である。
【0045】
本例の屋外用二重床は、まず予め基礎面に並べた支柱4上端の支持面41に被せた支持面カバー5に対し、互いの角部を突き合わせるように、各床パネル1の角部に装着したカバー部材2を載せ(図3参照)、次いで前記角部を突き合わせる中心に十字状の水平バー31の交点を一致させ、床パネル1が形成する目地の隙間に固定部材3を差し込み(図4参照、説明の便宜上、図中手前の床パネルの図示略)、支持面カバー5の掛止凹部521を通して支持面41に固定部材3の掛止爪33を掛止すれば(図5参照)、床パネル1の設置が完了する。
【0046】
既述したように、基礎面に対する支柱4の設置は、設置面42の傾き調整や支柱本体43の高さ調整が必要になるが、こうして設置を終えた支柱4に対する床パネル1の設置は、前記支柱4上端の支持面41に被せた支持面カバー5に、各床パネル1の角部に装着したカバー部材2の嵩上げ部23を載せ、目地の隙間に固定部材3を挿入して、前記固定部材3の掛止爪33を、支持面カバー5の掛止凹部521を通して支持面41に掛止するだけの簡単な手順で済む。こうした簡単な施工は、屋外用二重床の施工を容易にする利点や、接着剤等を使わないことにより、床パネル1を容易に交換できる利点をもたらす。
【0047】
固定部材3は、図6図8に見られるように、側面を対向させる床パネル1が形成する目地の隙間にすっぽりと収まり、カバー部材2の係合凸面22の上端面に倣った形状の水平バー31及び垂直バー32の底面を前記係合凸面22の上端面に当接させた状態で、垂直バー32下端の掛止爪33を、支持面カバー5のスカート部52に設けた掛止凹部521を通して支持面41に掛止して、上方へ抜け止めされる。床パネル1は、角部に装着したカバー部材2の係合凸面22が固定部材3の水平バー31に押さえ込まれることにより、位置固定される。
【0048】
固定部材3は、係合凸面22と僅かに隙間を残していても構わない(図7参照)。床パネル1の表面に吹き付ける風が発生させる負圧により前記床パネル1が浮き上がろうとすると、係合凸面22が固定部材3の水平バー31を持ち上げて上向きに凸に撓ませ、垂直バー32を半径方向内向きに傾ける。これにより、垂直バー32下端に設けられた掛止爪33は、支持面カバー5の掛止凹部521を通して支持面41に、よりしっかりと掛止される。このように、固定部材3は、係合凸面22から離れていても、床パネル1の浮き上がりを抑制又は防止できる。
【0049】
本例の床パネル1は、天然石を加工した石パネル11と金属製の底面当板12とを重ね合わせて構成される。ここで、底面当板12の厚みは一定であるが、天然石を加工して形成される石パネル11の厚みは、必ずしも一定しない。床パネル1は、厚みが一定でなくても構わないが、屋外用二重床の歩行面として床パネル1の表面が面一に揃う必要がある。そこで、床パネル1の表面が面一に揃うように、図9に見られるように、カバー部材2の嵩上げ部23を削り、床パネル1の表面から前記嵩上げ部23の底面までの厚みが一定になるように、高さ調整する(図中、左右の嵩上げ部23の高さが異なる)。
【0050】
本発明の屋外用二重床は、床パネル1の設置の手順が簡便であるが、前記床パネル1を取り外す手順も簡便である。具体的には、まず図10(図示の便宜上、手前側の垂直バーを図示略)に見られるように、金属棒体である取り外し治具6を、固定部材3の垂直バー32に設けられたスリット321に差し込む。本例の固定部材3は、平面視十字上の水平バー31の各端部から合計4本の垂直バー32を下ろしているから、スリット321も4条ある。取り外し治具6は、各スリット321宛に4本の金属棒体を割り当ててもよいし、4本の金属棒体が半径方向へ傾倒自在に組み付けられた構成でもよい。
【0051】
スリット321に差し込んだ取り外し治具6は、上半分を掛止爪33の係合方向(半径内向き)に倒すと、水平バー31を下向きに凸に弾性変形させ、相対的に下半分を掛止爪33の解除方向(半径外向き)に傾け、スリット321を設けた垂直バー32を取り外し治具6の下半分に従わせて跳ね上げさせる。これにより、図11(図示の便宜上、手前側の垂直バーを図示略)に見られるように、掛止爪33は、掛止していた支持面カバー5の掛止凹部521から外すことができる。
【0052】
水平バー31を撓ませて垂直バー32を半径外向きに開いた固定部材3は、図12(図示の便宜上、手前側の垂直バーを図示略)に見られるように、スリット321に差し込んだままの取り外し治具6を上方に持ち上げ、一緒に上方へ引き抜くことができる。これにより、床パネル1は支持面カバー5から取り外せ、配置の置き換えや新旧の入れ替え等が自由にできる。固定部材3は、スリット321から取り外し治具6を引き抜き、撓んだ水平バー31を復元させれば、再利用できる。このように、床パネル1の交換や固定部材3の再利用が可能な点も、本発明の特徴である。
【符号の説明】
【0053】
1 床パネル
11 石パネル
12 底面当板
13 排水溝
2 カバー部材
21 ベース
22 係合凸面
23 嵩上げ部
3 固定部材
31 水平バー
32 垂直バー
33 掛止爪
4 支柱
41 支持面
42 接地面
43 支柱本体
5 支持面カバー
51 平面板
52 スカート部
53 仕切板
54 位置決め突起
6 取り外し治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12