特許第6222768号(P6222768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222768
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車線逸脱警報制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20171023BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/00 624F
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-130793(P2013-130793)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-5192(P2015-5192A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】関口 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】鷹左右 康
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−185562(JP,A)
【文献】 特開2001−176000(JP,A)
【文献】 特開2011−003075(JP,A)
【文献】 特開2005−249586(JP,A)
【文献】 特開2006−030116(JP,A)
【文献】 特開2006−331304(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0216404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路の白線を検出する白線検出手段と、
上記走行路における自車進行路を推定する自車進行路推定手段と、
上記白線に基づいて自車両の上記白線からの逸脱判定の基準とする第1の判定位置を設定する第1の判定位置設定手段と、
上記自車進行路に基づいて上記自車両の上記白線からの逸脱判定の基準とする第2の判定位置を設定する第2の判定位置設定手段と、
上記第1の判定位置と上記第2の判定位置とを比較して上記自車両の上記白線からの逸脱判定を実行する逸脱判定手段とを備えた車線逸脱警報制御装置において、
上記自車両が走行する道路形状により自車両に生じるパラメータに基づいて自車両がワインディングロードを走行していることを検出するワインディングロード走行検出手段と、
上記自車両がワインディングロードを走行している場合は、上記走行路のカーブ半径と操舵角と上記白線の傾きに応じて補正量を設定して旋回方向内側の白線における上記第1の判定位置と上記第2の判定位置の少なくとも一方を車線を逸脱すると判定され難い方向に補正する補正手段を備えたことを特徴とする車線逸脱警報制御装置。
【請求項2】
上記ワインディングロード走行検出手段は、少なくとも上記走行路の曲率のピーク値が予め設定する閾値を超えた回数が単位時間あたりに設定回数以上となった場合にワインディングロードを走行していると判断することを特徴とする請求項1記載の車線逸脱警報制御装置。
【請求項3】
上記逸脱判定手段は、上記第1の判定位置が上記第2の判定位置よりも上記自車進行路に近い場合に上記自車両が上記白線から逸脱すると判定するものであって、
上記補正手段は、上記第1の判定位置の上記自車進行路から離間する方向への補正と、上記第2の判定位置の上記白線から離間する方向への補正の少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車線逸脱警報制御装置。
【請求項4】
上記ワインディングロード走行検出手段によって、ワインディングロードを走行していると判断し、且つワインディングロード内側に逸脱した場合、上記逸脱判定手段は車線逸脱警報を抑制することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の車線逸脱警報制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の走行路の白線からの逸脱を判定して警報する車線逸脱警報制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドライバの運転を支援する機能として、自車両の走行路の白線からの逸脱を判定して警報する車線逸脱警報制御装置が提案され、実用化されている。このような車線逸脱警報制御装置では、ドライバの運転傾向(白線寄りを走行する傾向)や運転の集中度合い等によっては、警報が過剰となり、ドライバに違和感や煩わしさを感じさせてしまう虞がある。そこで、例えば、特開2005−343306号公報(以下、特許文献1)では、逸脱判定を行う際、ドライバがステアリングに所定の大きさの操作トルクを与えたときに電動モータによる操舵トルクの付与を禁止した作動禁止状態とする車線逸脱防止装置において、作動禁止状態にあるとき、自車における操舵トルクが所定値以下であり、カーブ半径が所定値以上であるときには、作動禁止状態から作動可能状態への復帰を禁止しない。逆に操舵トルクが所定値を以下でなく、またはカーブ半径が所定値以上でない場合には、作動禁止状態から作動可能状態への復帰を禁止する車線逸脱防止装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−343306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直前の道路をどのように通過するかのみならず、走行路全体の形状によってもドライバの運転の仕方が異なる。このため、上述の特許文献1に開示されるような直前の道路形状のみで警報の作動禁止状態と作動禁止状態からの復帰とを判定する技術では、警報の必要性を的確に判定することができず、違和感の無い自然な車線逸脱警報を実現することができない虞がある。また、走行路には左右の白線があり、ドライバの走行形態によってはこのような左右の白線も考慮して違和感無く警報を精度良く行わなければならないという課題もある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、単に直前の道路形状のみでなく走行路全体の形状によって走行路の左右の白線も考慮して違和感の無い自然な警報を精度良く行うことができる車線逸脱警報制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車線逸脱警報制御装置の一態様は、走行路の白線を検出する白線検出手段と、
上記走行路における自車進行路を推定する自車進行路推定手段と、上記白線に基づいて自車両の上記白線からの逸脱判定の基準とする第1の判定位置を設定する第1の判定位置設定手段と、上記自車進行路に基づいて上記自車両の上記白線からの逸脱判定の基準とする第2の判定位置を設定する第2の判定位置設定手段と、上記第1の判定位置と上記第2の判定位置とを比較して上記自車両の上記白線からの逸脱判定を実行する逸脱判定手段とを備えた車線逸脱警報制御装置において、上記自車両が走行する道路形状により自車両に生じるパラメータに基づいて自車両がワインディングロードを走行していることを検出するワインディングロード走行検出手段と、上記自車両がワインディングロードを走行している場合は、上記走行路のカーブ半径と操舵角と上記白線の傾きに応じて補正量を設定して旋回方向内側の白線における上記第1の判定位置と上記第2の判定位置の少なくとも一方を車線を逸脱すると判定され難い方向に補正する補正手段を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車線逸脱警報制御装置によれば、単に直前の道路形状のみでなく走行路全体の形状によって走行路の左右の白線も考慮して違和感の無い自然な警報を精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る、車線逸脱警報制御装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施の一形態に係る、警報制御ユニットの機能ブロックである。
図3】本発明の実施の一形態に係る、車線逸脱警報制御のフローチャートである。
図4】本発明の実施の一形態に係る、閾値補正量算出ルーチンのフローチャートである。
図5】本発明の実施の一形態に係る、自車両に対して設定する各点の説明図である。
図6】本発明の実施の一形態に係る、ワインディングロード判定の説明図で、図6(a)は走行路の曲率条件の説明図で、図6(b)は車速条件の説明図で、図6(c)はブレーキ条件の説明図である。
図7】本発明の実施の一形態に係る、補正量算出マップの説明図で、図7(a)は閾値補正量の最大値設定の説明図で、図7(b)は閾値補正量のx切片設定の説明図で、図7(c)は最終的に設定される閾値補正量算出マップの説明図である。
図8】本発明の実施の一形態に係る、左側に屈曲したカーブにおける逸脱判定の例の説明図で、図8(a)は逸脱しないと判定される場合の一例を示し、図8(b)はカーブ外側(右白線)から逸脱すると判定される場合の一例を示し、図8(c)はカーブ内側(左白線)から逸脱すると判定される場合の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)を示し、この自車両1には、自車両1の走行路の白線からの逸脱を判定し、自車両1が走行路の白線から逸脱すると推定される場合に警報を発する車線逸脱警報制御装置2が搭載されている。
【0010】
この車線逸脱警報制御装置2は、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、警報制御ユニット5等を有して主要部が構成されている。
【0011】
ステレオカメラ3は、例えば、電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた左右1組のCCDカメラで構成されている。これら1組のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外前方の対象を異なる視点からステレオ撮像し、撮像した画像情報をステレオ画像認識装置4に出力する。
【0012】
ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3で撮像した自車進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成し、例えば、以下のようにして白線データの取得を行う。
【0013】
白線は道路面と比較して高輝度であるという知得に基づき、ステレオ画像認識装置4は、道路の幅方向の輝度変化を評価して、画像平面における左右の白線の位置を画像平面上で特定する。この白線の実空間上の位置(x,y,z)は、画像平面上の位置(i,j)とこの位置に関して算出された視差とに基づいて、すなわち、距離情報に基づいて、周知の座標変換式より算出される。自車両1の位置を基準に設定された実空間の座標系は、ステレオカメラ3の中央真下の道路面を原点として、車幅方向をX軸(左方向を+符号)、車高方向をY軸(上方向を+符号)、車長方向(距離方向)をZ軸(前方向を+符号)とする。このとき、X−Z平面(Y=0)は、道路が平坦な場合、道路面と一致する。道路モデルは、道路上の自車線を距離方向に複数区間に分割し、各区間における左右の白線を所定に近似し、これらを連結することによって表現される。尚、白線データの取得方法は、上述のものに限るものではなく、また、ステレオカメラ3ではなく単眼カメラやカラーカメラ等を用いて検出する方法であっても良い。こうして検出された白線データ(座標データ)は、警報制御ユニット5に出力される。このように、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4は、白線検出手段として設けられている。
【0014】
警報制御ユニット5には、ステレオ画像認識装置4で検出された白線データが入力され、車速センサ6から車速Vが入力され、操舵角センサ7から操舵角δが入力され、ブレーキ液圧センサ8からブレーキ液圧Pbが入力される。
【0015】
そして、警報制御ユニット5は、これらの入力信号を基に、走行路における自車進行路を推定し、白線に基づいて自車両1の白線からの逸脱判定の基準とする第1の判定位置としての第1の左右警報点Pf0l、Pf0rと第1の左右警報点Pf0l、Pf0rより後方の第2の左右警報点Pr0l、Pr0rを設定し、自車進行路に基づいて自車両1の白線からの逸脱判定の基準とする第2の判定位置としての第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと第1の左右閾点Pfcl、Pfcrより後方の第2の左右閾点Prcl、Prcrを設定し、少なくとも走行路の曲率のピーク値が予め設定する閾値を超えた回数が単位時間あたりに設定回数以上となった場合に自車両1がワインディングロードを走行していると判断し、ワインディングロードを走行している場合に上述の各点の旋回方向内側の白線における判定点を車線を逸脱すると判定され難い方向に補正(本実施の形態では旋回内側の第1、第2の閾点を自車進行路からの長さが減少する方向に補正)し、これら第1の左右警報点Pf0l、Pf0r、第2の左右警報点Pr0l、Pr0rと第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと第2の左右警報点Prcl、Prcrとを比較して自車両1の白線からの逸脱判定を実行し、逸脱すると判定された場合には、警報装置10に信号出力して、音声、チャイム音、又は、LEDランプの点灯によりドライバに警報を発するように構成されている。尚、本実施の形態では、この逸脱警報は、左側への逸脱と右側の逸脱のどちら側への逸脱であるかドライバに認識されるようになっている。
【0016】
このため、警報制御ユニット5は、図2に示すように、前方注視点算出部5a、逸脱警報点算出部5b、逸脱閾点算出部5c、ワインディング判定部5d、閾値補正量算出部5e、逸脱閾値補正部5f、逸脱判定部5gから主要に構成されている。
【0017】
前方注視点算出部5aは、車速センサ6から車速Vが入力され、操舵角センサ7から操舵角δが入力される。そして、自車両1から予め設定しておいた前方距離の自車進行路上の第1の前方注視点Pfの座標(xf,zf)を、例えば、以下の(1)式により算出し、この第1の前方注視点Pfより予め設定しておいた距離だけ短い(自車両1に近い)自車進行路上の第2の前方注視点Prの座標(xr,zr)を、例えば、以下の(2)式により算出する。第1の前方注視点Pfと、第2の前方注視点Prの座標の一例を、図5に示す。尚、第1の前方注視点Pf、第2の前方注視点Prまでの距離は、車速V等により可変に設定するようにしても良い。
xf=(1/2)・(1/(1+A・V))・(δ/lw)・zf …(1)
xr=(1/2)・(1/(1+A・V))・(δ/lw)・zr …(2)
ここで、Aはスタビリティファクタ、lwはホイールベースである。こうして算出された第1の前方注視点Pfの座標(xf,zf)と第2の前方注視点Prの座標(xr,zr)は、逸脱警報点算出部5b、逸脱閾点算出部5cに出力される。このように、前方注視点算出部5aは自車進行路推定手段の機能を有して設けられている。
【0018】
逸脱警報点算出部5bは、ステレオ画像認識装置4から白線データが入力され、前方注視点算出部5aから第1の前方注視点Pfの座標(xf,zf)と第2の前方注視点Prの座標(xr,zr)が入力される。そして、図5に示すように、第1の前方注視点Pfに対する左白線における第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)と右白線における第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)を設定し、第2の前方注視点Prに対する左白線における第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)と右白線における第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)を設定する。ここで、これら第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)、第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)、第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)、第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)は、例えば、白線の道路内側境界から、およそタイヤ1つ幅分、道路外側に離れた位置に設定される。こうして設定された第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)、第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)、第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)、第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)は逸脱判定部5gに出力される。このように逸脱警報点算出部5bは第1の判定位置設定手段として設けられている。
【0019】
逸脱閾点算出部5cは、前方注視点算出部5aから第1の前方注視点Pfの座標(xf,zf)と第2の前方注視点Prの座標(xr,zr)が入力される。そして、図5に示すように、第1の前方注視点Pfから左方向に予め設定した長さの第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)と右方向に予め設定した長さの第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)を設定し、第2の前方注視点Prから左方向に予め設定した長さの第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)と右方向に予め設定した長さの第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)を設定する。こうして設定された第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)、第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)、第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)、第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)は逸脱判定部5gに出力される。このように逸脱閾点算出部5cは第2の判定位置設定手段として設けられている。
【0020】
ワインディング判定部5dは、車速センサ6から車速Vが入力され、操舵角センサ7から操舵角δが入力され、ブレーキ液圧センサ8からブレーキ液圧Pbが入力される。そして、以下の3つの条件を全て満足する場合にワインディングロードを走行中と判定する。
【0021】
・条件1・・・走行路の曲率κ(=δ/lw)のピーク値が予め設定する閾値|κc|を超えた回数が単位時間tiあたりに設定回数以上となった場合(図6(a)において斜線の曲率走行の状態が単位時間tiあたりに設定回数以上となった場合)に条件1を満足する。尚、曲率κに換えて、カーブ半径ρ、横加速度Gy、ヨーレートγ等のパラメータでこの条件1を満足するか判定するようにしても良い。
【0022】
・条件2・・・図6(b)に示すように、単位時間tiあたりの平均車速Vhが、予め設定した閾値Vcを超えている場合に条件2を満足する。
【0023】
・条件3・・・図6(c)に示すように、中ブレーキ液圧閾値Pblと高ブレーキ液圧閾値Pbh(Pbl<Pbh)を設定し、単位時間tiあたりに、中ブレーキ液圧閾値Pblを超えてブレーキが作動された時間ΣTblと高ブレーキ液圧閾値Pbhを超えてブレーキが作動された時間ΣTbhとを計測し、これら時間を所定に加算処理した値が所定以上となった場合に条件3を満足する。ここで、所定に加算処理した値とは、例えば、Gbl・(ΣTbl−ΣTbh)+Gbh・ΣTbhで算出する。この式で、Gblと、Gbhは、予め設定する重み付け係数である。また、このブレーキ条件として、中ブレーキ液圧閾値Pblを超えてブレーキが作動された回数と高ブレーキ液圧閾値Pbhを超えてブレーキが作動された回数も条件3の満足の判定条件としても良い。
【0024】
こうして、ワインディング判定部5dは、上述の3の条件を全て満足する場合にワインディングロードを走行中と判定し、何れか一つでも満足できない場合にはワインディングロードを走行中では無いと判定して、結果を閾値補正量算出部5eに出力する。このように、ワインディング判定部5dはワインディングロード走行検出手段として設けられている。
【0025】
閾値補正量算出部5eは、ステレオ画像認識装置4から白線データが入力され、操舵角センサ7から操舵角δが入力され、ワインディング判定部5dからワインディングロードの走行判定結果が入力される。そして、例えば、図7(a)に示すように、予め設定しておいたマップを参照して、カーブ半径ρ(=lw/δ)に応じて閾値補正量の最大値ymaxを、カーブ半径ρ大きいほど減少し、小さいほど増加する傾向に設定する。
【0026】
また、例えば、図7(b)に示すように、予め設定しておいたマップを参照して、操舵角δに応じてx切片xc1を、舵角δが大きいほど増加し、小さいほど減少する傾向に設定する。
【0027】
こうして、設定した閾値補正量の最大値ymaxとx切片xc1を用いて、例えば、図7(c)に示すような、x−y座標系に、設定した閾値補正量の最大値ymaxとx切片xc1をプロットし、x切片xc1から予め設定しておいた間隔離れたx軸上に第2のx切片xc2をプロットして、以下の(3)〜(5)式の特性となるマップを作成する。
・0≦x<xc1の領域・・・y=0 …(3)
・xc1≦x<xc2の領域・・y=(ymax/(xc2−xc1))・(x−xc1) …(4)
・x≧xc2の領域・・・y=ymax …(5)
こうして作成したマップのx軸を旋回内側白線の傾き(x軸との軸直方向を0とし、この軸直方向からの傾き:図5参照)θとし、y軸を閾値補正量(旋回内側の第1、第2の閾点のx軸方向長さから減算する補正量)Δxとするマップとする。すなわち、閾値補正量の最大値ymaxは、カーブ半径ρが大きいほど減少し、小さいほど増加する。また、2つのx切片xc1、xc2は舵角によって定まり、舵角δが大きいほど増加し、小さいほど減少する。つまり、急なカーブほど(xc2,ymax)の点は斜め右上方向に移動する。この図7(c)を採用することによって、急なカーブで白線傾きθが大きいときは意図的に逸脱しようとしているとみなし、閾値補正量Δxを大きくする(換言すれば、逸脱閾値を小さくする)ことで吹鳴タイミングを遅くする(或いは、逸脱すると判定され難い方向に補正する)ことができる。一方、緩いカーブで白線傾きθが小さいときは通常の逸脱とみなし、閾値補正量Δxを小さくして(換言すれば、逸脱閾値を大きくして)吹鳴タイミングをあまり変化させないことが可能となる。そして、ワインディング判定部5dからワインディングロードの走行判定結果がワインディングロード走行中との判定結果が入力された場合に、上述の図7(c)の閾値補正量算出マップを参照して閾値補正量Δxを設定して逸脱閾値補正部5fに出力する。
【0028】
逸脱閾値補正部5fは、操舵角センサ7から操舵角δが入力され、逸脱閾点算出部5cから第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)、第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)、第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)、第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)が入力され、閾値補正量算出部5eから閾値補正量Δxが入力される。そして、ワインディングロード走行中には、例えば、左カーブの場合には、旋回内側となる第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)と第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)のx軸方向長さからΔx減算補正し(xfcl=xfcl−Δx、及び、xrcl=xrcl−Δx)、逸脱判定部5gに出力する。また、右カーブの場合には、旋回内側となる第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)と第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)のx軸方向長さからΔx減算補正し(xfcr=xfcr−Δx、及び、xrcr=xrcr−Δx)、逸脱判定部5gに出力する。このように、閾値補正量算出部5e、逸脱閾値補正部5fは補正手段として設けられている。こうして、逸脱閾値補正部5fで補正された第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)、第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)、第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)、第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)は、逸脱判定部5gに出力される。
【0029】
逸脱判定部5gは、逸脱警報点算出部5bから第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)、第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)、第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)、第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)が入力され、逸脱閾値補正部5fから補正された第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)、第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)、第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)、第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)が入力される。そして、それぞれ2つのx軸((0,zf)を通るx軸,(0,zr)を通るx軸)上の各点位置を比較して逸脱の判定を行う。
【0030】
具体的には、第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)が第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)より路外側で、且つ、第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)が第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)より路外側にあるとき左に逸脱と判定する。換言すれば、xfcl<xf0l、且つ、xrcl<xr0lの時に左に逸脱と判定する(図8(c)の場合)。
【0031】
また、第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)が第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)より路外側で、且つ、第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)が第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)より路外側にあるとき右に逸脱と判定する。換言すれば、xfcr>xr0r、且つ、xrcr>xr0rの時に左に逸脱と判定する(図8(b)の場合)。
【0032】
また、図8(a)に示すような上述以外の場合は、逸脱しないと判定する。そして、逸脱判定部5gで逸脱すると判定した場合には、警報装置10に信号出力して、音声、チャイム音、又は、LEDランプの点灯によりドライバに警報を発生させる。このように、逸脱判定部5gは逸脱判定手段として設けられている。
【0033】
次に、上述の警報制御ユニット5で実行される車線逸脱警報制御を、図3のフローチャートで説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、必要パラメータ、すなわち、白線データ、車速V、操舵角δ、ブレーキ液圧Pbを読み込む。
【0034】
次に、S102に進み、前方注視点算出部5aで、第1の前方注視点Pfの座標(xf,zf)を、例えば、前述の(1)式により算出し、この第1の前方注視点Pfより予め設定しておいた距離だけ短い(自車両1に近い)自車進行路上の第2の前方注視点Prの座標(xr,zr)を、例えば、前述の(2)式により算出する。
【0035】
次いで、S103に進み、逸脱警報点算出部5bで、第1の前方注視点Pfに対する左白線における第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)と右白線における第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)を設定し、第2の前方注視点Prに対する左白線における第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)と右白線における第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)を設定する。
【0036】
次に、S104に進み、逸脱閾点算出部5cで、第1の前方注視点Pfから左方向に予め設定した長さの第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)と右方向に予め設定した長さの第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)を設定し、第2の前方注視点Prから左方向に予め設定した長さの第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)と右方向に予め設定した長さの第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)を設定する。
【0037】
次いで、S105に進み、ワインディング判定部5dで、前述の3つの条件が成立しているか否か判定し、3つの条件が成立している場合は、ワインディングロードを走行中と判定する。
【0038】
次に、S106に進み、ワインディング判定部5dでワインディングロードを走行中と判定されている場合は、S107に進み、閾値補正量算出部5eで、後述の図4に示す閾値補正量算出ルーチンに従って、閾値補正量Δxを算出してS108に進む。
【0039】
この閾値補正量算出ルーチンでは、まず、S201で、例えば、図7(a)に示すように、予め設定しておいたマップを参照して、カーブ半径ρに応じて閾値補正量の最大値ymaxを、カーブ半径ρ大きいほど減少し、小さいほど増加する傾向に設定する。
【0040】
次いで、S202で、例えば、図7(b)に示すように、予め設定しておいたマップを参照して、操舵角δに応じてx切片xc1を、舵角δが大きいほど増加し、小さいほど減少する傾向に設定する。また、x切片xc1から予め設定しておいた高い値の第2のx切片xc2を設定する。
【0041】
次いで、S203に進み、設定した閾値補正量の最大値ymaxとx切片xc1、xc2を用いて、例えば、図7(c)に示すような、x−y座標系に、設定した閾値補正量の最大値ymaxとx切片xc1をプロットし、x切片xc1から予め設定しておいた間隔離れたx軸上に第2のx切片xc2をプロットして、前述の(3)〜(5)式の特性となるマップを作成する。
【0042】
こうして作成したマップのx軸を旋回内側白線の傾き(x軸との軸直方向を0とし、この軸直方向からの傾き:図5参照)θとし、y軸を閾値補正量(旋回内側の第1、第2の閾点のx軸方向長さから減算する補正量)Δxとするマップを設定する。
【0043】
そして、S204に進み、上述のS203で設定したマップを参照し、旋回内側白線の傾きθに基づき閾値補正量Δxを設定してルーチンを抜ける。
【0044】
S107で閾値補正量Δxを算出してS108に進むと、逸脱閾値補正部5fで、カーブ内側閾値補正を実行する。例えば、左カーブの場合には、旋回内側となる第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)と第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)のx軸方向長さからΔx減算補正し(xfcl=xfcl−Δx、及び、xrcl=xrcl−Δx)、また、右カーブの場合には、旋回内側となる第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)と第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)のx軸方向長さからΔx減算補正する(xfcr=xfcr−Δx、及び、xrcr=xrcr−Δx)。
【0045】
一方、S106で、ワインディングロード走行中と判定されなかった場合は、S107、S108の処理を行うこと無く、S109に進み、ワインディング時補正を終了する。
【0046】
S108でカーブ内側閾値補正を実行した後、或いは、S109でワインディング時補正を終了した後は、S110に進む。
【0047】
S110に進むと、逸脱判定部5gで、xf0l−xfcl>0か否か(第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)が第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)より路外側か否か)の判定が行われる。
【0048】
このS110の判定の結果、xf0l−xfcl>0であり、第1の左閾点Pfcl(xfcl,zf)が第1の左警報点Pf0l(xf0l,zf)より路外側の場合は、S111に進み、xr0l−xrcl>0か否か(第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)が第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)より路外側か否か)の判定が行われる。
【0049】
このS111の判定の結果、xr0l−xrcl>0であり、第2の左閾点Prcl(xrcl,zr)が第2の左警報点Pr0l(xr0l,zr)より路外側の場合は、S112に進み、警報装置10に信号出力して、音声、チャイム音、又は、LEDランプの点灯によりドライバに左逸脱警報を実行させる。
【0050】
また、S110とS111のどちらか一方でも成立しない(NOの)場合は、S113に進み、警報装置10に信号出力して左逸脱警報を停止させる。
【0051】
S112、或いは、S113の処理の後は、S114に進み、xf0r−xfcr<0か否か(第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)が第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)より路外側か否か)の判定が行われる。
【0052】
このS114の判定の結果、xf0r−xfcr<0であり、第1の右閾点Pfcr(xfcr,zf)が第1の右警報点Pf0r(xf0r,zf)より路外側の場合は、S115に進み、xr0r−xrcr<0か否か(第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)が第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)より路外側か否か)の判定が行われる。
【0053】
このS115の判定の結果、xr0r−xrcr<0であり、第2の右閾点Prcr(xrcr,zr)が第2の右警報点Pr0r(xr0r,zr)より路外側の場合は、S116に進み、警報装置10に信号出力して、音声、チャイム音、又は、LEDランプの点灯によりドライバに右逸脱警報を実行させる。
【0054】
また、S114とS115のどちらか一方でも成立しない(NOの)場合は、S117に進み、警報装置10に信号出力して右逸脱警報を停止させる。
【0055】
尚、S110〜S113の左警報判定の一連の処理と、S114〜S117の右警報判定の一連の処理は、逆に行うものであっても良い。
【0056】
このように本発明の実施の形態によれば、走行路における自車進行路を推定し、白線に基づいて自車両1の白線からの逸脱判定の基準とする第1の判定位置としての第1の左右警報点Pf0l、Pf0rと第1の左右警報点Pf0l、Pf0rより後方の第2の左右警報点Pr0l、Pr0rを設定し、自車進行路に基づいて自車両1の白線からの逸脱判定の基準とする第2の判定位置としての第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと第1の左右閾点Pfcl、Pfcrより後方の第2の左右閾点Prcl、Prcrを設定し、少なくとも走行路の曲率のピーク値が予め設定する閾値を超えた回数が単位時間あたりに設定回数以上となった場合に自車両1がワインディングロードを走行していると判断し、ワインディングロードを走行している場合に上述の各点の旋回方向内側の白線における判定点を車線を逸脱すると判定され難い方向に補正し、これら第1の左右警報点Pf0l、Pf0r、第2の左右警報点Pr0l、Pr0rと第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと第2の左右警報点Prcl、Prcrとを比較して自車両1の白線からの逸脱判定を実行するようになっている。このため、単に直前の道路形状のみでなく走行路全体の形状によって走行路の左右の白線も考慮して違和感の無い自然な警報を精度良く行うことが可能となる。
【0057】
尚、本発明の実施の形態では、遠方の第1の前方注視点Pfにおける判定と、近くの第2の前方注視点Prにおける判定とを行うようにし、両方の判定が共に逸脱すると判定された場合に最終的に逸脱警報するようにしているが、このような2重の判定に限定されるものではない。例えば、判定のための前方注視点が一つしかない車線逸脱警報制御装置や、3つ以上の判定のための前方注視点を用いる車線逸脱警報制御装置に対しても適用可能である。
【0058】
また、本発明の実施の形態では、遠方の第1の前方注視点Pfにおける判定と、近くの第2の前方注視点Prにおける判定とを行うようにし、両方の判定が共に逸脱すると判定された場合に最終的に逸脱警報するようにしているが、どちらか一方が逸脱すると判定された場合に最終的に逸脱警報する車線逸脱警報制御装置に対しても適用可能である。
【0059】
更に、本発明の実施の形態では、第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと、第2の左右閾点Prcl、Prcrの長さを共に閾値補正量Δxを減算して逸脱判定がされ難くしているが、第1の左右閾点Pfcl、Pfcrから減算する閾値補正量Δxと第2の左右閾点Prcl、Prcrから減算する閾値補正量Δxは、異なる補正量であっても良い。例えば、第2の左右閾点Prcl、Prcrから減算する閾値補正量Δxは、第1の左右閾点Pfcl、Pfcrから減算する閾値補正量Δxの80%等。
【0060】
また、本発明の実施の形態では、第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと、第2の左右閾点Prcl、Prcrの長さを減算補正するようにしているが、逆に、第1の左右警報点Pf0l、Pf0rと、第2の左右警報点Pr0l、Pr0rの位置を路外側に移動補正するようにしても良い。或いは、第1の左右閾点Pfcl、Pfcrと、第2の左右閾点Prcl、Prcrの長さを減算補正すると共に、第1の左右警報点Pf0l、Pf0rと、第2の左右警報点Pr0l、Pr0rの位置を路外側に移動補正する構成としても良い。
【0061】
また、本発明の実施の形態の閾値補正量Δxは、例えば、本出願人が特開2012−185562号公報等で提案するドライバの過去の運転傾向に応じて更に補正するようにしても良い。
【0062】
また、本発明の車線逸脱警報制御装置は、警報だけではなく車線逸脱しない方向に操舵トルクを付加する、車線逸脱しない方向にブレーキによりヨーモーメントを発生させる車線逸脱制御装置と連動するものであっても良い。
【0063】
また、本発明の車線逸脱警報制御装置は、前述のワインディングロード走行判定法によってワインディングロード走行中と判定され、且つカーブ内側に逸脱した場合、警報を抑制しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 自車両
2 車線逸脱警報制御装置
3 ステレオカメラ(白線検出手段)
4 ステレオ画像認識装置(白線検出手段)
5 警報制御ユニット
5a 前方注視点算出部(自車進行路推定手段)
5b 逸脱警報点算出部(第1の判定位置設定手段)
5c 逸脱閾点算出部(第2の判定位置設定手段)
5d ワインディング判定部(ワインディングロード走行検出手段)
5e 閾値補正量算出部(補正手段)
5f 逸脱閾値補正部(補正手段)
5g 逸脱判定部(逸脱判定手段)
6 車速センサ
7 操舵角センサ
8 ブレーキ液圧センサ
10 警報装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8