特許第6222779号(P6222779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222779
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】心血管治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20060101AFI20171023BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20171023BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20171023BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20171023BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61K38/08ZNA
   A61K9/00
   A61P9/04
   A61P9/10
   C07K7/06
【請求項の数】9
【全頁数】73
(21)【出願番号】特願2014-525515(P2014-525515)
(86)(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公表番号】特表2014-524435(P2014-524435A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】IB2012002117
(87)【国際公開番号】WO2013024362
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】61/525,140
(32)【優先日】2011年8月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510244891
【氏名又は名称】オタゴ イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ペムバートン, クリストファー, ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ, アーサー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ, クリストファー, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シリワーデナ, メイスリ
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−505084(JP,A)
【文献】 特表2010−506145(JP,A)
【文献】 Chem. Eur. J.,2008年,vol.14,p.2536-2541
【文献】 J. Agric. Food Chem.,2003年,vol.51,p.3668-3674
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
C07K 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、薬学的に許容される担体とを含む、心血管障害の予防及び/又は処置における使用のための医薬品組成物であって、前記B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、医薬品組成物。
【請求項2】
治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、薬学的に許容される担体とを含む、心血管障害である又はその発症リスクがある対象におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片活性を増加させるための医薬品組成物であって、前記B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、医薬品組成物。
【請求項3】
非経口投与に適した、或いは、緩徐、遅延又は制御放出投与に適した、請求項1または2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
前記心血管障害が、急性冠症候群、心不全又は虚血性心疾患である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記心血管障害が、ST部分上昇型心筋梗塞、非ST部分上昇型心筋梗塞及び不安定狭心症からなる群から選択される急性冠症候群である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
配列番号2又は3に記載のアミノ酸配列のみからなる、実質的に純粋なペプチド。
【請求項7】
心血管障害を予防及び/又は処置するための、対象内又は対象の表面における使用のための説明書と共に請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬品組成物を含有するパッケージ材料を含む製造品。
【請求項8】
治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、薬学的に許容される担体とを一体にまとめるステップを含む、心血管障害又は急性冠症候群を予防又は処置するための医薬を調製する方法であって、前記B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が配列番号1〜3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項9】
前記医薬が、非経口投与用に製剤化され、或いは、緩徐、遅延又は制御放出投与用に製剤化される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、心血管疾患、障害及び状態の影響の処置、予防及び寛解に有用な医薬品組成物及び方法並びに係る化合物及び組成物を含む物品及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]次に、本発明の理解に有用となり得る情報を示す。この記述は、本明細書において明確に又は暗に参照されている情報、刊行物又は文書のいずれかが、本明細書において記載又は特許請求されている発明に対する先行技術である又は不可欠であることを承認するものではない。本明細書において言及されているあらゆる刊行物及び特許は、これによりここに本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する。
【0003】
[0003]虚血性心疾患、心筋梗塞及び他の急性冠症候群を包含する心疾患並びに心不全は、世界中の主要な健康問題である。
【0004】
[0004]例えば、心筋梗塞は、心疾患患者における死亡率の重大な原因であることが理解される。心発作として一般に知られる心筋梗塞(MI)又は急性心筋梗塞(AMI)は、心臓細胞に死をもたらす、心臓部分への血液供給の中断である。これは通常、動脈壁における脂質及び白血球細胞(特に、マクロファージ)の不安定な堆積物である脆弱な動脈硬化性プラークの破裂に続く冠動脈の閉塞(封鎖)に起因する。その結果生じる虚血及び酸素欠乏は、十分な期間未処置のまま放置すると、心臓の筋肉組織、即ち、心筋の損傷又は死(梗塞)をもたらし得る。急性心筋梗塞の古典的症状は、突発性胸痛(通常、左腕又は首の左側へと放散する)、息切れ、悪心、嘔吐、動悸、発汗及び不安症を包含する。しかし、全心筋梗塞のおよそ4分の1は、「無症候性(silent)」である、即ち、胸痛又は他の症状がない。急性心筋梗塞が疑われる患者に対する即座の処置は、酸素、アスピリン及び舌下ニトログリセリンを包含する。ST上昇型MI(STEMI、貫壁性心筋梗塞又はQ波心筋梗塞と称されることもある)の大部分の症例は、血栓溶解又は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)により処置される。NSTEMI(非ST上昇型MI、非貫壁性心筋梗塞又は非Q波心筋梗塞と称されることもある)は、薬物療法により管理されるが、PCIは多くの場合、入院中に実施される。心発作は、世界中で男女共に主な死因である。
【0005】
[0005]多くの場合うっ血性心不全(CHF)と呼ばれる心不全(HF)は、心臓のポンプ機能損傷の結果、身体の代謝要求を満たすには適切でない全身灌流により特徴付けられる臨床症候群である、即ち、心不全は一般に、心臓が身体の必要を満たすのに十分な血流を供給できないこととして定義される。心不全は、よく見られる、費用のかかる、障害をもたらす、命にかかわる可能性のある状態である。McMurray JJ、Pfeffer MA(2005)「Heart failure」.Lancet 365(9474):1877〜89。先進国において、成人の2%前後が心不全を患うが、成人の中でも65歳超では、心不全は6〜10%に増加する。同上。現在、人口のおよそ2%である5百万人を超えるアメリカ人が、心不全に苦しんでいることが推定される。米国心臓協会(American Heart Association)。心疾患及び脳卒中の統計学(Heart Disease and Stroke Statistics) − 2008年アップデート。Dallas:米国心臓協会、2008。http://circ.ahajournals.org。HF患者とHFに関連する経済的負担は、両者共に相当に大きい。心不全患者は、年間約百万の入院を占め、更に2百万人の患者が、二次診断で心不全とされる。これらの患者の3分の1は、再発性代償不全のため90日以内に再入院する。心不全の一般的な原因として、心筋梗塞及び他の形態の虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症並びに心筋症が挙げられる。McMurray JJ、Pfeffer MA(2005)「Heart failure」.Lancet 365(9474):1877〜89。
【0006】
[0006]心不全は、収縮期又は拡張期心不全へと更に細分することができる。収縮期心不全において、心収縮力の低下が見られ、一方、拡張期心不全においては、心臓弛緩の損傷と異常心室充満が見られる。心不全の最大の原因は、左心室(LV)収縮期機能不全(患者の約60%)である。このカテゴリーにおいて、大部分の症例は、心筋梗塞の病歴又は心筋の慢性的な灌流不良(underperfuse)(生存可能ではある)のいずれかによる末期冠動脈疾患の結果である。多くの患者において、両方の過程が同時に存在する。LV収縮期機能不全の他の一般的な原因として、特発性拡張型心筋症、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、毒素誘導性心筋症(例えば、ドキソルビシン、ハーセプチン、アルコール)及び先天性心疾患が挙げられる。心不全は、右心室梗塞、肺高血圧、慢性重症三尖弁逆流又は不整脈源性右心室異形成の結果として発症することもある。心不全のより一般性の低い原因は、甲状腺中毒症、動静脈瘻、パジェット病、妊娠又は重症慢性貧血症に起因する高拍出性不全である。拡張期LV機能不全(弛緩障害)は通常、慢性高血圧又は虚血性心疾患に関係する。他の原因として、拘束性、浸潤性及び肥大性心筋症が挙げられる。右心室の不適切な充満は、心膜(pericardial)収縮又は心タンポナーデに起因し得る。心不全発症高リスク患者は、高血圧、冠動脈疾患、真性糖尿病、心筋症の家族歴、心臓毒の使用及び肥満の患者である。心不全は、特に、高齢者に一般的な症候群である。より多くの患者は、再灌流療法により急性心筋梗塞を生き延びるが、大部分は、心不全をもたらし得るLV収縮期機能不全が少なくともある程度残存する。現在、心不全は治癒できない。医薬及びライフスタイル変化等の処置は、患者がより長生きし、より活動的な生活を送るよう助けることができるが、研究者らは、心不全及びその合併症を処置するための新たな仕方を探求し続けている。
【0007】
[0007]胸痛は、心臓が原因となり得る非特異的症状であり、用語、狭心症は通常、推定心筋虚血により生じる疼痛症候群を表すためのものである。用語、不安定狭心症は当初、心筋梗塞と、より慢性状態の安定狭心症との間の中間状態を示すよう用いられた。古い用語、梗塞前狭心症は、心筋梗塞又は死亡のリスクを減らすための介入の臨床目的を伝える。この状態の患者は、患者の症状、診断テスト結果又は時間経過に従ってカテゴリー分けされた。これらのカテゴリーは、初発狭心症、加速化狭心症、安静狭心症、初期梗塞後狭心症及び初期血行再建後(postrevascularization)狭心症を包含する。不安定狭心症は、心筋壊死の酵素及びバイオマーカーが放出されない急性冠症候群であると考えられる。不安定狭心症の病因及び定義は、広範なものとなり得るが、不安定狭心症の多くの症例において、崩壊した動脈硬化性プラーク及び重層した血栓の間に相互交流が存在し、その結果、血行動態が欠損又は微小塞栓が形成される。不安定狭心症は安定狭心症とは異なっており、安定狭心症の根底にある典型的な原因は、側副血流の偶発的な発達をもたらし得る血流不全及び遅い進行性のプラーク成長による、固定された冠動脈狭窄である。
【0008】
[0008]「急性冠症候群(ACS)」は、心臓の虚血性傷害に起因する冠障害のグループに適用されてきた。ACSは、MI患者又はMI発症リスクが高い患者を包含する。不安定狭心症、STEMI、NSTEMI及び貫壁性(Q波)MIを包含する一連の状態により、ACS患者は内科医の元を訪れる。ACSは、心虚血も包含し、大部分は1本又は複数本の冠動脈内における血栓沈着及び成長に起因し、動脈の部分的な又は完全な閉塞を生じ、プラークの破裂に高頻度で関与し、虚血性傷害をもたらすと考えられる。ACSは、冠攣縮又は心筋要求の増加によっても誘発され得る。概説のため、例えば、Davies、Clin.Cardiol.20(増補I):12 17(1997)を参照されたい。ACSの重大性は、虚血性傷害後の罹患率及び死亡率により強調される。例えば、医療従事者らは、ACSによる症状の4〜6週間以内に、死亡又はその後のMIのリスクが、8〜14%であり、死亡、MI又は難治性虚血の率が、15〜25%であると推定した。Theroux及びFuster、Circulation 97:1195 1206(1998)。米国における急性MIによる総死亡数が、約600,000人であることを考慮すると、ACSの治療的管理に関する情報の本技術分野における探索は、当然のことながら広範なものとなった。
【0009】
[0009]B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP又はBNP−32)は、心室心筋において合成され、心室拡張及び圧負荷に応答して循環へと放出される32アミノ酸の神経ホルモンである。BNPの血漿中濃度は、CHR患者において上昇し、左心室機能不全の程度及びCHF症状の重症度に比例して増加する。概説のため、例えば、Wieseら、Circulation 102:3074 9(2000);Yasueら、Circulation 90:195 203(1994);Yoshimuraら、Circulation 87:464 9(1993);Stein及びLevin、Am.Heart J.135:914 23(1998);並びにOmlandら、Heart 76:232 7(1996)を参照されたい。BNPの前駆体は、「プレプロBNP」と称される134アミノ酸前駆体分子として合成され、プレプロBNPが切断されて、アミノ酸1〜26を含むシグナルペプチドと、「プロBNP」と称されるアミノ酸27〜134からなる108アミノ酸分子とを生じる。プロBNPは、タンパク分解によりプロセシングされて、「NTプロBNP」と称される76アミノ酸N末端ペプチド(アミノ酸1〜76)と、BNP又はBNP32(アミノ酸77〜108)と称される32アミノ酸成熟ホルモンとを生じる。NTプロBNP、BNP−32及びプレプロBNPは、ヒト血漿において循環し得ることが報告された。例えば、Tateyamaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.185:760 7(1992);Huntら、Biochem.Biophys.Res.Commun.214:1175 83(1995)を参照されたい。
【0010】
[0010]2001年8月、hBNP(天然ペプチド)が、商品名ナトレコール(Natrecor)(ネシリチド)において、急性うっ血性心不全の処置のためにFDAにより認可された。ナトレコールは、CHFの処置のために12年超ぶりに認可された薬物であった。この薬は、安静時又は最小の活動で呼吸困難となる急性非代償性又は進行性CHF患者において、静脈内持続注入により48時間かけて投与される。この薬物は高価で入院加療を要するため、ナトレコールは、最も急性の症例に対してのみ用いられる。その上、BNPの治療上の有用性は、エンドペプチダーゼ分解及びナトリウム利尿ペプチドクリアランス受容体(NPR−C)媒介性内部移行により限定され、このような原因により、このタンパク質はin vivoで極めて短い半減期を有する。例えば、BNPの血漿中半減期は、およそ20分間であると推定され(Potterら、Endocrine Reviews 27(1):42〜72(2006))、このペプチドの以前の治療的投与は、通常病院又は他の医療施設における時間のかかる静脈内注入に限定されていた。
【0011】
[0011]本技術分野において依然として、虚血性心疾患、急性冠症候群及び心不全等、心血管疾患、障害及び状態である又はこれらを発症するリスクがある患者の処置において有用な新たな治療法の必要がある。虚血及び/又は酸化ストレスに関連する心血管疾患、障害及び状態の全範囲に及ぶ新たな治療法の必要が特にある。係る治療法は、例えば、BNPのシグナルペプチド断片が、新規心保護剤及び治療剤であることを示す驚くべき発見に基づき、本明細書において記載及び特許請求されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]本明細書において記載及び特許請求されている発明は、本概要において説明又は記載又は参照されている属性及び実施形態等が挙げられるがこれらに限定されない、多くの属性及び実施形態を有する。これは、包括的となることは目的とせず、本明細書において記載及び特許請求されている本発明は、本概要において特定されている特色又は実施形態に又はこれらにより限定されず、この特色又は実施形態は、制限目的ではなく例証目的のためだけに包含されている。
【0013】
[0013]一態様において、本明細書に提供されている本発明は、化合物を包含する。当該化合物は、心血管障害の処置に有用である。別の一態様において、本発明は、このような化合物のうち1種又は複数種を含む又はこれのみから実質的になる組成物を包含する。
【0014】
[0014]非限定的な好ましい実施形態において単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次のペプチドを包含する。LHLAFLGGRS(配列番号1)、LHLAFLGGR(配列番号2)、LHLAFLGG(配列番号3)、LHLAFLG(配列番号4)、LHLAFL(配列番号5)及びLHLAF(配列番号6)、LHLA(配列番号7)、LHL(配列番号8)、LH(配列番号9)。配列番号1〜9として示す上述のペプチドにおいて、ロイシン(L)のいずれか1個又は複数個は、イソロイシン(I)、D−ロイシン又はD−イソロイシン、tert−ロイシン、ノルロイシン、L−allo−イソロイシン、D−allo−イソロイシン、D−tert−ロイシン及びD−ノルロイシンで置換することができる、及び/又はヒスチジンは、イミダゾール環で終結する側鎖を有する又はこれを有するよう調製されたいずれかの非天然存在のアミノ酸で置換することができ、これらの全てが、配列番号1〜9のアナログである。
【0015】
[0015]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式I:
LHX(配列番号10)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Arg、Gln、Asn又はGlyであり、Xは、Thr又はGlyである)
に従ったペプチドも包含する。
【0016】
[0016]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式II:
LHX(配列番号11)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Arg、Gln、Asn又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Lys、Gln、Asn又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0017】
[0017]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式III:
LHX(配列番号12)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0018】
[0018]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式IV:
LHX(配列番号13)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0019】
[0019]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式V:
LHX(配列番号14)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0020】
[0020]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式VI:
LHX(配列番号15)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0021】
[0021]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式VII:
LHX(配列番号16)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0022】
[0022]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式VIII:
LHX(配列番号17)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである)
に従ったペプチドも包含する。
【0023】
[0023]これらの切断型、好ましくはC末端切断型等、このような化合物の活性アナログ及び保存的変種は、本発明の範囲に包含される。その上、例えば、式I〜VIIIに示すペプチドにおいて、ロイシン(L)のいずれか1個又は複数個は、イソロイシン(I)、D−ロイシン又はD−イソロイシン、tert−ロイシン、ノルロイシン、L−allo−イソロイシン、D−allo−イソロイシン、D−tert−ロイシン及びD−ノルロイシンで置換することができる、及び/又はヒスチジンは、イミダゾール環で終結する側鎖を有する又はこれを有するよう調製されたいずれかの非天然存在のアミノ酸で置換することができ、これら全てが、その更に別のアナログである。
【0024】
[0024]非限定的な一実施形態において、配列番号1〜9及び式I〜VIII内の配列を包含する本発明の範囲内のペプチドのアミノ酸のうち1個又は複数個は、L又はD立体配置となることができる。他の実施形態において、本発明の範囲内のペプチドのアミノ酸のうち1個又は複数個は、天然存在の、遺伝的にコードされていないアミノ酸である。更に他の実施形態において、本発明の範囲内のペプチドのアミノ酸のうち1個又は複数個は、アミノ酸アナログ又は合成アミノ酸である。
【0025】
[0025]別の非限定的な一実施形態において、配列番号1〜9及び式I〜VIII内の配列を包含する本発明の範囲内のペプチドのN末端ロイシン(又はイソロイシン、D−ロイシン、D−イソロイシン、tert−ロイシン、ノルロイシン、L−allo−イソロイシン、D−allo−イソロイシン、D−tert−ロイシン若しくはD−ノルロイシン)は、ホルミル基、ホルミル基を含む化学基、カルボン酸のエステル(アルデヒドエステル、例えば、カルボキシエチル基、カルボキシメチル基等が好ましい)又はカルボン酸のエステルを含む化学基を含有するよう修飾することができる。ホルミル、カルボキシエチル及びカルボキシメチル基による修飾が、現在好ましい。
【0026】
[0026]別の一実施形態において、配列番号1〜9及び式I〜VIII内の配列を包含する本発明の範囲内の化合物における1個又は複数個のアミノ酸は、主としてアミノ酸側鎖の化学的及び物理学的特性に基づく類似のアミノ酸クラス又はサブクラスの別のアミノ酸に置換される。例えば、1個又は複数個の親水性又は極性アミノ酸は、別の親水性又は極性アミノ酸に置換することができる。同様に、1個又は複数個の疎水性又は非極性アミノ酸は、別の疎水性又は非極性アミノ酸に置換することができる。このような置換を行うにあたって、極性アミノ酸は、酸性、塩基性又は親水性側鎖を有するアミノ酸へと更に細分することができ、非極性アミノ酸は、芳香族又は疎水性側鎖を有するアミノ酸へと更に細分することができる。非極性アミノ酸は、とりわけ脂肪族アミノ酸包含するよう更に細分してもよい。
【0027】
[0027]そのバイオ医薬品特性を改善するように修飾された本発明の化合物もまた、本発明の範囲内に収まる。特定の実施形態において、本発明の化合物は、例えば、安定性の増加、タンパク分解による不活性化に対する抵抗性の増加、免疫原性が存在しなくなるまでの減少、修飾された血清中半減期及び修飾された治療半減期を包含する循環寿命(circulatory life)の増加並びに低い毒性をもたらすように修飾される。本発明の化合物の修飾された形態は、プロドラッグ形態を包含し、その代表例は、本明細書の他の箇所に記載されている。本発明の化合物を修飾することのできる方法は、例えば、PEG化、化学誘導体化及びペプチド又は脂質との融合又はコンジュゲーションも包含する。修飾された化合物は、例えば、修飾されたBNPsp(17〜26)(配列番号1)並びに修飾されたこれらのアナログ、変種(例えば、保存的変種)及び切断型等、修飾されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を包含する。他の実施形態は、修飾された配列番号2〜9、修飾された式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び/又は式VIIIに従ったペプチド並びに修飾されたこれらの活性アナログ、変種(例えば、保存的変種)及び切断型から選択されるペプチドを包含する。
【0028】
[0028]他の実施形態は、本発明の化合物のペプチド模倣薬(peptidiomimetics)を包含する。
【0029】
[0029]本発明は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、薬学的に許容される担体とを含む又はこれらのみから実質的になる医薬品組成物も包含する。一実施形態において、医薬品組成物は、BNPsp(17〜26)(配列番号1)を含む又はこれのみから実質的になる。別の一実施形態において、医薬品組成物は、配列番号2〜9から選択される配列を含む又はこれのみから実質的になる。別の一実施形態において、医薬品組成物は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び/又は式VIIIから選択される配列を含む又はこれのみから実質的になる。これらの切断型、好ましくは、C末端切断型等、これらの化合物の1種又は複数種の活性アナログ及び保存的変種を包含する医薬品組成物は、本発明の範囲に包含される。一実施形態において、本発明は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又はこれらの治療活性アナログ若しくは変種若しくは切断型を含む又はこれのみから実質的になる医薬品組成物を包含する。
【0030】
[0030]別の一実施形態において、本発明は、そのバイオ医薬品特性を改善するように修飾されたアナログ、変種、切断型等を包含する本発明の化合物を含む又はこれのみから実質的になる医薬品組成物を包含する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、例えば、安定性の増加、タンパク分解による不活性化に対する抵抗性の増加、免疫原性が存在しなくなるまでの減少、半減期又は循環寿命の増加及び低い毒性をもたらすように修飾される。本発明の化合物を修飾することのできる方法は、例えば、PEG化、化学誘導体化及びペプチド又は脂質との融合又はコンジュゲーションを包含する。
【0031】
[0031]本発明は、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等並びに虚血及び/又は酸化ストレスにより少なくとも部分的に(in party)特徴付けられる関連心血管疾患、障害及び状態並びに関連障害及び状態の処置のための、1種又は複数種の薬学的に許容されるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤を含む医薬品組成物を包含する。特定の好ましいB型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤は、本明細書において配列番号1〜9として特定される。BNPsp(17〜26)(配列番号1)が最も好ましい。他のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIの内に存在する。他の実施形態は、前述の活性アナログ、変種(例えば、保存的変種)及び切断型並びに薬学的に許容される担体を包含する。よって、本発明は、心血管疾患、障害又は状態である対象の処置に適した又は処置をするように構成された形態の医薬品組成物を包含する。一実施形態において、心血管(cardioiovascular)疾患、障害又は状態は、虚血及び/又は酸化ストレスに関連する。特定の実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、急性冠症候群である。急性冠症候群は、例えば、ST部分上昇型心筋梗塞、非ST部分上昇型心筋梗塞及び不安定狭心症からなる群から選択され得る。他の実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、虚血性心疾患である。他の実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、心不全(いずれかの形態の)である。例えば、心不全は、収縮期又は拡張期心不全となり得る。心不全は、左心室収縮期機能不全に起因し得る。心不全は、右心室梗塞、肺高血圧、慢性重症三尖弁逆流又は不整脈源性右心室異形成の結果となることもできる。心不全は、拡張期LV機能不全の結果となることもできる。別の一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、虚血性心疾患である。
【0032】
[0032]一態様において、本発明は、単独の又は別の心血管治療剤(複数可)と組み合わせた治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、薬学的に許容される担体とを含む又はこれらのみから実質的になる、非経口送達形態及び製剤並びに注入、注射及び点滴による送達等の他の形態の送達を包含する、対象における心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態並びに関連障害及び状態の予防及び/又は処置に有用な医薬品組成物、並びに遅延、緩徐、持続(extend)又は制御放出組成物、機器及びマトリックスを包含する。特定の好ましい実施形態において、医薬品組成物は、注入又はボーラスを包含する静脈内投与用に製剤化される。例えば、経鼻、経肺、頬側、直腸内、経皮及び経口送達のための製剤を包含する、他の投与経路のための他の製剤も本発明の範囲内に収まる。
【0033】
[0033]別の一態様において、本発明の組成物は、約0.01〜約100ミリグラム、約100〜約500ミリグラム又は約500〜約1000ミリグラム以上の本発明の化合物、例えば、配列番号1〜9及び式I〜VIIIのいずれかに従ったペプチドのうち1種又は複数種を包含するB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又はB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片アナログを含む。他の用量は、本明細書に記載されており、例えば少なくとも約200ナノグラム、600ナノグラム、2000ナノグラム、6000ナノグラム及び少なくとも約10,000ナノグラム以上等、少なくとも約100ナノグラムからに及ぶ用量を包含する。用量濃度は、例えば、少なくとも約0.3、1.0、3.0及び10.0nモル/L等、1リットル当たり少なくとも約0.1モルの濃度を包含する。用量濃度は、0.1nモル/L、0.3nモル/L、1.0nモル/L、3.0nモル/L及び10.0nモル/Lの濃度も包含する。これらの用量濃度は、0.1、0.3、1、3、11μg/Lに相当し、0.4、1.0、4.0、10及び39マイクログラム/kg(μg/kg)の投与できる体重用量(administrable weight dose)に相当する。0.1〜5.0μg/kg及び0.1〜10.0μg/kgに及ぶ他の用量もまた、本発明の内に収まる。その上、約0.4、1.0、4.0、10及び39μg/kgの用量は、本発明の内に収まる。少なくとも約0.4、1.0、4.0、10及び39μg/kgの用量もまた、本発明の内に収まる。これらの組成物及び量は、単一又は複数(muliple)用量として提示することができる。
【0034】
[0034]本発明は、治療上有効量の本明細書に記載されている化合物又は医薬品組成物の1種又は複数種を対象に投与するステップを含む、心血管疾患、障害又は状態である又はその発症リスクのある対象の処置方法も包含する。非限定的な一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、虚血及び/又は酸化ストレスに関連する。一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、急性冠症候群、例えば、ST部分上昇型心筋梗塞、非ST部分上昇型心筋梗塞又は不安定狭心症である。別の一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、心不全である。他の実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、虚血性心疾患である。別の一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、安定狭心症である。
【0035】
[0035]本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、薬学的に許容される担体とを含む、心血管疾患、障害又は状態である又はその発症リスクのある対象を処置する方法を包含する。一実施形態において、医薬品組成物におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、BNPsp(17〜26)(配列番号1)である。別の一実施形態において、医薬品組成物におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片は、配列番号2〜9から選択される配列を含む又はこれのみから実質的になる。別の一実施形態において、医薬品組成物におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII又は式VIIIから選択される配列を含む又はこれのみから実質的になる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、本明細書に記載されているB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の活性アナログ、変種、切断型及び修飾型も包含する。
【0036】
[0036]別の一態様において、本発明は、対象におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片活性を増加させることによる、対象における虚血及び/又は酸化ストレスに関連する心血管疾患、障害又は状態を処置及び/又は予防する方法を包含する。この方法は、例えば、配列番号1〜9から選択される配列又は式I〜VIIIのいずれかに従ったペプチドを含む若しくはこれのみから実質的になるペプチド、又はこれらのアナログ、変種、切断型又は修飾を含む又はこれのみから実質的になる、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又はBNPsp断片を包含するB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片を含む組成物を対象に投与することにより達成することができる。特定の実施形態において、単一又は分割用量で1日当たり約0.01〜約100、500又は1000ナノグラム又はミリグラム以上(例えば、少なくとも約100ナノグラム又はミリグラム、少なくとも約500ナノグラム又はミリグラム、或いは少なくとも約1000ナノグラム又はミリグラム)のBNPsp断片又はB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片アナログ、例えば、配列番号1〜9から選択される配列又は式I〜VIIIのいずれかに従ったペプチド含む若しくはこれのみから実質的になるペプチドを含む又はこれのみから実質的になるBNPsp断片が、例えば持続注入により投与される。
【0037】
[0037]別の一態様において、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を患者に投与するステップを含む、急性冠症候群を包含するいずれかの原因の胸痛を患う患者を処置する方法であって、患者がQ波MI又はSTEMIを患っていない方法を包含する。本方法の特定の実施形態において、患者は、不安定狭心症を患っている。本方法の別の一実施形態において、患者は、非Q波心臓壊死を患っている。本方法の更に別の一実施形態において、患者は、0.4ng/ml以下の血中トロポニンIレベルを有する。本方法の更にまた別の一実施形態において、患者は、0.1ng/ml以下の血中トロポニンTレベルを有する。本方法の更にまた別の一実施形態において、患者は、上昇した血中クレアチンキナーゼを示さない。本方法の更に別の一実施形態において、患者は、ST部分上昇を示さない。本方法の更にまた別の一実施形態において、患者は、病的Q波を提示しない。本方法の別の一実施形態において、患者は、次の症状;15分間を超える持続時間の胸痛、安静時胸痛又は舌下ナイトレート(nitrate)に対する応答性が乏しい最小労作後の胸痛のうち1種又は複数種を提示する。
【0038】
[0038]一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、単一用量で投与される。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、2用量以上で投与される。更にまた別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、ある期間、例えば所定の期間に亘り継続的に投与される。更に別の一実施形態において、グルコース若しくはカリウム塩又はこれらの組合せは、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と同時投与される。
【0039】
[0039]別の一態様において、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を個体に投与するステップを含む、患者の処置のための方法であって、投与が、次の症状:15分間よりも長く持続する胸痛、安静時胸痛、最小労作後の胸痛、悪心、息切れ、動悸又は眩暈のうち1種又は複数種の発症後に行われる方法を包含する。他の実施形態において、患者は、症状(単数又は複数)の発症前にQ波MI又はSTEMIを患っていない;患者は、不安定狭心症を患っている;患者は、非Q波心臓壊死を患っている;患者は、0.4ng/ml以下の血中トロポニンIレベルを有する;患者は、0.1ng/ml以下の血中トロポニンTレベルを有する;患者は、上昇した血中クレアチンキナーゼ心筋アイソエンザイムを示さない;患者は、ST部分上昇を示さない;患者は、病的Q波を提示しない;投与は、1種又は複数種の症状の発症時と、患者がQ波MI又はSTEMIを患う時点との間に行われる。別の一実施形態において、方法は、患者がQ波MI又はSTEMIを患っている間に、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を継続するステップを更に含む。更にまた別の一実施形態において、方法は、患者がQ波MI又はSTEMIを患った後に、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を継続するステップを更に含む。本方法の他の実施形態において、患者は、虚血性心疾患である、或いは虚血性心疾患を発症するリスクがある。本方法の更に別の一実施形態において、患者は、次の心臓異常、即ち、うっ血性心不全、僧帽弁逆流により悪化する心雑音又は心伝導撹乱のエビデンスのうち1つ又は複数を有する。他の実施形態において、患者は、正常ECGを有する。本方法の別の一実施形態において、患者は、安定狭心症を有する。本方法の他の実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、単一用量で投与される、又は2用量以上で投与される、又は継続的に投与される。本方法の追加的な実施形態において、グルコース若しくはカリウム塩又はこれらの組合せが、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と同時投与される。
【0040】
[0040]本発明は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を含む、安定狭心症を患う患者を処置するための方法も包含する。更に別の実施形態において、投与は、所定の期間等、ある期間に亘り継続的である。
【0041】
[0041]本発明は、血管形成手技の間に患者にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む、それを必要とする患者に血管形成術を行うための方法も提供する。更に別の実施形態において、方法は、血管形成手技前に患者にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む又は更に含む。更に別の実施形態において、方法は、血管形成手技後に患者にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む又は更に含む。他の実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、血管形成手技の前、間及び/又は後に、いずれかの組合せで患者に投与される。
【0042】
[0042]本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を患者に投与するステップを含む、次の症状:悪心、息切れ、動悸又は眩暈のうち1種又は複数種を提示するが、更には胸痛を提示しない患者を包含する、虚血性心疾患である又は虚血性心疾患を発症するリスクがある患者の処置のための方法であって、患者が、Q波MI又はSTEMIを患っていない方法も包含する。本方法の別の一実施形態において、患者は、正常ECGを有する。
【0043】
[0043]次の症状:15分間より長く持続する胸痛、安静時胸痛、最小労作後の胸痛、悪心、息切れ、動悸又は眩暈のうち1種又は複数種の発症後に治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む、心臓窮迫の最初の症状の後に血栓溶解療法が有効となる時間を増加させるための方法も提供される。
【0044】
[0044]別の一態様において、処置される対象は、哺乳類、好ましくはヒトである。他の哺乳類は、イヌ、ウマ及びネコ等、飼育動物及び家畜並びに動物園の動物、スポーツ用動物又は愛玩動物を包含する。
【0045】
[0045]本発明は、本明細書に記載されている化合物又は医薬品組成物のうち1種又は複数種を含有するパッケージ材料を含む製造品も包含する。次に、発明は、心血管疾患、障害又は状態を予防及び/又は処置するために、対象内又は表面における使用のための説明書と共に、本明細書に記載されている化合物又は医薬品組成物のうち1種又は複数種を含有するパッケージ材料を含む製造品も包含する。一実施形態において、説明書において言及されている心血管疾患、障害又は状態は、虚血及び/又は酸化ストレスに関連する。別の一実施形態において、説明書において言及されている心血管疾患、障害又は状態は、虚血性心疾患である。一実施形態において、説明書において言及されている心血管疾患、障害又は状態は、急性冠症候群、例えば、不安定狭心症、STEMI及び/又はNSTEMIである。別の一実施形態において、説明書において言及されている心血管疾患、障害又は状態は、心不全(いずれかの形態の)である。説明書は、電子説明書となり得る及び/又はウェブサイトに関連し得る。
【0046】
[0046]本発明は、本明細書に参照されている治療上有効量の化合物、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又はB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片アナログ若しくは変種と、薬学的に許容される担体とを一体にまとめるステップを含む、例えば、急性冠症候群、心不全等を包含する、本明細書に参照されている心血管疾患、障害又は状態のうち1種又は複数種を予防又は処置するための医薬を調製する方法も包含する。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片は、配列番号1〜9から選択される配列を含む。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片アナログは、式I〜VIIIのうち1種又は複数種から選択される化合物である。一実施形態において、医薬は、非経口投与用に製剤化される。
【0047】
[0047]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の組成物及び方法は、1種又は複数種の他の心血管処置薬と順次の又はそれと組み合わせた(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与も含む。係る他の心血管処置薬は、ナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬(特に、安定又は不安定狭心症のため、但し同様に、β遮断薬の場合は心不全のため)、利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤及びアルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトン(特に、心不全のため)、抗凝血療法(例えば、アスピリン、ヘパリン、ワルファリン)並びにニトログリセリン(特に、MIのため)を包含する。
【0048】
[0048]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の組成物及び方法は、1種又は複数種の抗血栓溶解療法(例えば、ストレプトキナーゼ阻害剤、例えば、クロピドグレル等の抗血小板療法(thereapetuics))と順次の又はそれと組み合わせた(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を含むこともできる。
【0049】
[0049]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の組成物及び方法は、例えば、ネシリチド、組換え型のB型ナトリウム利尿ペプチドを包含するB型ナトリウム利尿ペプチドと順次の又はそれと組み合わせた(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を含むこともできる。
【0050】
[0050]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の特定の方法及び組成物(医薬品組成物、製剤、製造品及びキットを包含)において、治療上有効量を下回るB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び1種又は複数種の他の心血管処置薬が、組み合わせた投与のために(別々に又は組み合わせた調製物として一体に)用いられる又は提供されて、治療上有効な組合せ作用を提供する。
【0051】
[0051]よって、その活性アナログを包含するB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤を用いる、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の処置のための本発明の組成物及び方法が開示されていることが理解されよう。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、例えば、BNPsp(17〜26)(配列番号1)、BNPsp(17〜25)(配列番号2)、BNPsp(17〜24)(配列番号3)、BNPsp(17〜23)(配列番号4)、BNPsp(17〜22)(配列番号5)、BNPsp(17〜21)(配列番号6)、BNPsp(17〜20)(配列番号7)、BNPsp(17〜19)(配列番号8)及びBNPsp(17〜18)(配列番号9)並びにこれらの活性アナログからなる群から選択され得る。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIII並びにこれらの活性アナログのうちいずれか一式に従った配列からなる群から選択され得る。必要に応じて、心血管剤は、例えば、ナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、ニトログリセリン、抗凝血剤、抗血栓溶解剤及びB型ナトリウム利尿ペプチドを含む又はこれらのみから実質的になる群から選択される。
【0052】
[0052]本明細書に記載されている1種又は複数種の化合物又は医薬品組成物による、本明細書に提供されている対象の処置は、それらの同時、別個、逐次的又は持続性投与を含むことができる。
【0053】
[0053]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置に有用な医薬品組成物は、組み合わせた調製物の形態において、例えば、2種以上のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の混合物としても提供される。
【0054】
[0054]用語「組み合わせた調製物」は、化合物の物理的組合せを包含するのみならず、上に定義されている組合せパートナーを、独立的に、又は区別された量の組合せパートナー(a)及び(b)による異なる固定された組合せの使用により、即ち、同時に、別々に又は逐次的に投薬できるという意味において「パーツのキット」として提供される化合物も包含する。続いて、キットのパーツは、例えば、同時に又は時間をずらして投与、即ち、パーツのキットのいずれかのパーツを異なる時点において、等しい又は異なる時間間隔で投与することができる。
【0055】
[0055]一実施形態において、本発明は、1又は複数用量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含むキットであって、シリンジ、一定量を送達する「ペン型」注射器、無針注射器、液体製剤、凍結乾燥した粉末及び再構成用の無菌液体、ドライパウダー吸入器、頬側錠剤並びに舌下錠剤のうち1種又は複数種を含むキットを包含する。
【0056】
[0056]一実施形態において、第1の組成物が、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含み、第2の組成物が、治療上有効量の別の心血管治療剤を含む、2種以上の別個の組成物が対象に投与される、組み合わせた調製物が投与される。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤又は別の心血管治療剤を含む第3の組成物が投与される。
【0057】
[0057]よって、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置に有用な医薬品組成物が、組合せ、同時、別個、逐次的又は持続性投与のために提供される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含む又はこれのみから実質的になる組成物が、別の心血管治療剤(複数可)と同時に又はほぼ同時に投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含む組成物は、別の心血管治療剤(複数可)の少なくとも約30分間以内に投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含む組成物は、別の心血管治療剤(複数可)の少なくとも約1時間以内に投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含む組成物は、別の心血管治療剤(複数可)の少なくとも約2〜12又は12〜24時間以内に投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含む組成物は、別の心血管治療剤(複数可)の少なくとも約24〜48時間以内に投与される。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤(複数可)は、互いに約1〜8時間以内に、互いに約1日間以内に又は互いに約1週間以内に投与される。
【0058】
[0058]別の一態様において、本発明は、遅延放出調製物、緩徐放出調製物、持続放出調製物、制御放出調製物及び/又は復効(repeat action)調製物に製剤化された、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は別の心血管治療剤と組み合わせて、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態、又は関連障害若しくは状態である、或いはこれらを発症するリスクがある対象に投与するための方法を包含する。
【0059】
[0059]特定の他の態様において、本発明はまた、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態、並びに関連障害及び状態を患う又はこれらのリスクがある対象を処置するために、係る組成物を使用する方法に関する。
【0060】
[0060]他の態様において、本発明は、全体に又は一部に狭心症により特徴付けられるいずれかの疾患、障害及び/又は状態である又はそうであると疑われる又はその素因がある又はそのリスクがある対象を予防及び/又は処置するための方法及び組成物を包含する。
【0061】
[0061]本発明は、その一態様において、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の症状を停止又は減少又は軽減する方法を対象にする。
【0062】
[0062]別の一態様において、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は別の心血管治療剤と一体に若しくはそれと組み合わせて含む組成物であって、前記第1の薬剤が、BNPsp(17〜26)(配列番号1)、BNPsp(17〜25)(配列番号2)、BNPsp(17〜24)(配列番号3)、BNPsp(17〜23)(配列番号4)、BNPsp(17〜22)(配列番号5)、BNPsp(17〜21)(配列番号6)、BNPsp(17〜20)(配列番号7)、BNPsp(17〜19)(配列番号8)及びBNPsp(17〜18)(配列番号9)並びに式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIのうちいずれか一式に従った配列、並びにこれらの活性アナログからなる群から選択され、第2の心血管剤が、ナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、ニトログリセリン、抗凝血剤、抗血栓溶解剤及びB型ナトリウム利尿ペプチドを含む又はこれらのみから実質的になる群から選択される組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態を予防及び/又は処置する方法を提供する。
【0063】
[0063]本発明の方法は、本明細書に記載されている第1及び第2の薬剤の逐次的又は同時投与を包含し、薬剤のいずれか一方又は両方は、薬剤(単数又は複数)が単独で投与される場合に、即ち、組み合わせて投与されない場合に用いられる量又は用量よりも少ない量又は用量で提供される。係るより少量の投与される薬剤は、通常、単独で投与される場合の約20分の1から約10分の1の量(単数又は複数)の薬剤であり、単独で投与される場合の約8分の1の量、約6分の1の量、約5分の1の量、約4分の1の量、約3分の1の量及び約2分の1の量であってもよい。
【0064】
[0064]別の一態様において、本発明は、1種又は複数種のナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、ニトログリセリン、抗凝血剤、抗血栓溶解剤及び/又はB型ナトリウム利尿ペプチド等、第2の心血管剤と一体の又はこれと物理的に組み合わせた、例えば、BNPsp(17〜26)(配列番号1)、BNPsp(17〜25)(配列番号2)、BNPsp(17〜24)(配列番号3)、BNPsp(17〜23)(配列番号4)、BNPsp(17〜22)(配列番号5)、BNPsp(17〜21)(配列番号6)、BNPsp(17〜20)(配列番号7)、BNPsp(17〜19)(配列番号8)及びBNPsp(17〜18)(配列番号9)並びに式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIのうちいずれか一式から選択される化合物、並びにこれらの活性アナログ等、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(複数可)を収容する容器と、本明細書に記載されている対象の処置のための使用を包含する使用説明書とを含む製造品を包含する。
【0065】
[0065]本発明は、本明細書に記載されている1種又は複数種の剤形を含有するパッケージ材料であって、急性冠症候群(coronary sydrome)、虚血性心疾患、狭心症及び心不全を包含する本明細書に記載又は参照されている疾患、障害及び/又は状態のいずれかである又はそうであると疑われる又はその素因がある対象にこの剤形を用いることができることを表示するラベルを有するパッケージ材料を含む製造品を包含する。
【0066】
[0066]本発明は、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置に有用な1種又は複数種の他の心血管剤と共に、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の量及び薬学的に許容される担体を一体にまとめるステップを含む、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態を予防及び/又は処置するための医薬を調製する方法を包含する。
【0067】
[0067]本発明は、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態、並びに関連障害及び状態の予防及び/又は処置に有用な剤形の製造における治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(複数可)の使用のための方法を包含する。係る剤形は、例えば、経口送達形態及び製剤と共に、注入、注射及び点滴による送達のための形態を包含する他の送達形態、並びに例えば緩徐放出、持続放出及び遅延放出組成物、デポー(depot)及びマトリックスを包含する組成物及び機器を包含する。係る剤形は、本明細書に開示されている対象の処置のための剤形を包含する。
【0068】
[0068]特定の他の態様において、本発明は、単独で、或いは心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態、並びに関連障害及び状態の予防及び/又は処置のための1種又は複数種の他の心血管治療剤と組み合わせて、使用説明書と共にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(複数可)を含むパッケージを提供する。
【0069】
[0069]他の態様において、本発明は、医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物及び組成物の1種又は複数種の使用を提供する。他の態様において、本発明は、本明細書に記載されている疾患、障害及び状態のうち1種又は複数種の処置において用いるための医薬の製造における、本明細書に記載されている化合物及び組成物のうち1種又は複数種の使用を提供する。他の態様において、本発明は、本明細書に記載されている疾患、障害及び状態のうち1種又は複数種に関する対象の処置における、本明細書において記載及び特許請求されている化合物、組成物及び医薬のうち1種又は複数種の使用を提供する。
【0070】
[0070]本概要における情報に又はこれにより限定されない本発明の上述及び他の態様について後述する。
【0071】
[0071]本願は、カラーで作成された少なくとも一図を含有する。カラー図面(複数可)を有する本願のコピーは、要請及び必要料金の支払により入手できる。各図の概要を下に記す。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】[0072]虚血再灌流傷害の単離されたラット心臓モデルにおけるヒトBNPsp(17〜26)投与の有益な影響を立証する図である。図1(A)は、40分間期間の虚血の前(pre)又は後(IDR)のいずれかにおける0.3nMol及び1nMolヒトBNPsp(17〜26)の投与が、最大圧により評価される左心室の収縮機能を改善することを示す。これらの影響は、0.3nMol pre及び1nMol IDRにおいて最も明確であった。図1(B)は、図1(A)と同一の心臓における灌流圧により評価される血管反応性を実証する。虚血後の再灌流期における灌流圧は、BNPsp(17〜26)によるpre又はIDR処置により有益に低下される。図1(C)は、ヒトBNPsp(17〜26)のIDR投与に起因する、再灌流におけるトロポニンI放出(心臓細胞壊死のバイオマーカー)の有意な低下を示す。図1(D)は、図1(C)に記載されているものと同一試料における再灌流ミオグロビンレベルにおける付随的な改善を示す。
図2】[0073]正常で健康なヒツジにおけるヒトBNPsp(17〜26)投与に対するin vivo耐性及び血行動態への影響の欠如を立証する図である。図2(A)は、対照注入(生理食塩水)と比較した、10ng/kg/min及び100kg/ng/minのヒトBNPsp(17〜26)の一定の注入を与えたときのヒツジ1における心拍出量における応答の欠如を示す。このような応答は、十分に耐容性を示した薬剤を示す。図2(B)は、図2(A)と同一の用量のBNPsp(17〜26)が投与されたときのヒツジ2における同じ心拍出量応答の欠如を示す。
図3】[0074]合成ヒトBNPsp(17〜26)及び対照バッファーによりプレコンディショニングされた単離心臓における正規化された収縮機能(最大圧)を示す図である。用量及び群の規模を示す。
図4】[0075]合成ヒトBNPsp(17〜26)及び対照バッファーによりプレコンディショニングされた単離心臓における正規化された血管機能(灌流圧)を示す図である。用量及び群の規模を示す。
図5】[0076]合成ヒトBNPsp(17〜26)及び対照バッファーによりプレコンディショニングされた心臓におけるトロポニンIの累積放出(AUC)を示す図である。用量及び群の規模は、図3及び4のものである。*=P<0.01 vs.対照。
図6】[0077]虚血後の再灌流においてBNPsp(17〜26)を与えた単離心臓における最大圧を示す図である。用量及び試料の規模を示す。
図7】[0078]虚血後の再灌流においてBNPsp(17〜26)を与えた単離心臓における灌流圧(上パネル)及び累積トロポニン放出(下パネル)を示す図である。
図8】[0079]BNPsp(17〜26)処置した心臓と比較した、対照心臓におけるより大きな程度の筋細胞肥大化及び筋原線維混乱を立証するヘマトキシリン・エオシン(HE)染色を示す図である。
図9】[0080]左心室自由壁心筋細胞スライドのカスパーゼ(capsase)−3染色を示す図である。カスパーゼ−3活性は、褐色の呈色(colouration)により示される。呈色は、再灌流において1nmol/L BNPsp(17〜26)を注入した心臓には実質的に存在せず、0.3nmol/L BNPsp(17〜26)によりプレコンディショニングした心臓においては対照と比較して顕著に低下した。
図10】[0081]BNPsp(17〜26)を注入した心臓におけるTUNEL陽性細胞の著しい低下を示す図である。TUNEL陽性核(赤褐色に呈色)は、BNPsp(17〜26)を注入した全心臓において顕著に低下した。
図11】[0082]4頭の正常なヒツジへの100及び1000ug/kg.minにおけるヒトBNPsp(17〜26)の注入が、静脈圧、心拍数、平均動脈圧又は心拍出量に影響がなかったことを示す図である。ホルモン及び腎臓指数に同様の結果が見られた。
図12】[0083]心虚血を起こし、ヒトBNPsp(17〜26)を与えているヒツジにおける累積トロポニンI放出を示す図である。処置したヒツジは、対照と比較して有意により低い累積トロポニンI放出(P<0.01)を有していた。
図13】[0084]虚血の単離ラット心臓又は心臓冠血管を結紮したin vivoヒツジのいずれかを通過した、タンパク質分解により切断したヒトBNPsp(18〜26)の溶出プロファイルを示す図である。溶出位置(画分34)は、合成ヒトBNPsp(17〜26)よりも4画分早く、これを下向きの矢印で示す。
図14】[0085]0.3nmol/Lの変化したBNPsp配列を与えた、単離灌流ラット心臓(各群n=3)における最大圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
[0086]本発明の実施は、当業者の技能範囲内における分子生物学(組換え技法を包含)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学及び免疫学の様々な従来技法を包含する又はこれらを用いることができる。係る技法は、文献において十分に説明されており、そのような文献として、本明細書において「Sambrook」として一緒に及び個々に言及されるMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)及びMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrook及びRussel、2001);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir&C.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller&M.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987、2001年までの補足を包含);PCR:The Plymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);The Immunoassay Handbook(D.Wild編、Stockton Press NY、1994);Bioconjugate Techniques(Greg T.Hermanson編、Academic Press、1996);Methods of Immunological Analysis(R.Masseyeff、W.H.Albert及びN.A.Staines編、Weinheim:VCH Verlags gesellschaft mbH、1993)、Harlow及びLane(1988)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、New York並びにHarlow及びLane(1999)Using Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(本明細書においてHarlow及びLaneとして一緒に及び個々に言及される)、Beaucageら編、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley&Sons、Inc.、New York、2000);並びにAgrawal編、Protocols for Oligonucleotides and Analogs、Synthesis and Properties Humana Press Inc.、New Jersey、1993)が単なる例として挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
[0087]本発明が、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコール、構築物及び試薬に限定されず、これらが変動し得ることを理解されたい。本明細書において用いられる用語法は、単に特定の実施形態について記載するためのものであって、本発明の範囲の限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられている通り、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、文脈がそれ以外のことを明らかに示さない限り複数形の参照を包含する。よって、例えば、「B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片」の参照は、1種又は複数種の係るペプチドの参照であり、現在公知の又は後に開発されるその均等物を包含する。他に定義されていなければ、本明細書に用いられているあらゆる専門及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者に通常理解されている意義と同一の意義を有する。本発明の実施又は検査において、本明細書に記載されているものと同様の又は同等のいずれかの方法、機器及び材料を用いることができるが、好ましい方法、機器及び材料が本明細書において記載されている。本明細書に開示されている数の範囲(例えば1〜12)の参照が、その範囲内の関係するあらゆる数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9.5、10、11及び12)の参照と共に、その範囲内のいかなる範囲の有理数(例えば2〜8、1.5〜5.5及び3.1〜4.7)を取り込むことも企図されており、従って、本明細書において明示的に開示されているあらゆる範囲のあらゆる部分的範囲(sub−range)が、明示的に開示されている。上述は、特に企図されているものの単なる具体例であり、列挙されている最低値と最高値との間の数値のあらゆる可能な組合せが、本願において同様の様式で明示的に述べられていると考慮されたい。次の用語は、本明細書に用いられている場合、次の意義を有する。
【0075】
[0088]本明細書に提示されている化合物(例えば、ペプチド及びタンパク質)において用いられるアミノ酸は、遺伝的にコードされたアミノ酸、天然存在の遺伝的にコードされないアミノ酸又は合成アミノ酸となることができる。上述のいずれかのL−及びD−エナンチオマーの両方は、化合物において利用することができる。次の遺伝的にコードされたアミノ酸(及びその残基)に対して、次の略号を本明細書において用いることができる。アラニン(Ala、A);アルギニン(Arg、R);アスパラギン(Asn、N);アスパラギン酸(Asp、D);システイン(cyteine)(Cys、C);グリシン(Gly、G);グルタミン酸(Glu、E);グルタミン(Gln、Q);ヒスチジン(His、H);イソロイシン(Ile、I);ロイシン(Leu、L);リシン(Lys、K);メチオニン(Met、M);フェニルアラニン(Phe、F);プロリン(Pro、P);セリン(Ser、S);スレオニン(Thr、T);トリプトファン(Trp、W);チロシン(Tyr、Y);及びバリン(Val、V)。
【0076】
[0089]遺伝的にコードされておらず、本発明の活性化合物に存在し得る特定の一般的に遭遇するアミノ酸として、β−アラニン(b−Ala)並びに3−アミノプロピオン酸(Dap)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr、Z)、4−アミノ酪酸その他諸々;α−アミノイソ酪酸(Aib);ε−アミノヘキサン酸(Aha);δ−アミノ吉草酸(Ava);メチルグリシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t−ブチルアラニン(t−BuA);t−ブチルグリシン(t−BuG);N−メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle、J);2−ナフチルアラニン(2−Nal);4−クロロフェニルアラニン(Phe(4−Cl));2−フルオロフェニルアラニン(Phe(2−F));3−フルオロフェニルアラニン(Phe(3−F));4−フルオロフェニルアラニン(Phe(4−F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);ベータ−2−チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N−アセチルリシン(AcLys);2,3−ジアミノ酪酸(Dab);2,3−ジアミノ酪酸(Dbu);p−アミノフェニルアラニン(Phe(pNH));N−メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys);3−ベンゾチアゾール−2−イル−アラニン(BztAla、B);及びホモセリン(hSer)等の他のオメガ−アミノ酸が挙げられるがこれらに限定されない。考慮される追加的なアミノ酸アナログとして、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸塩、馬尿酸、オクタヒドロインドール(octahydroindole)−2−カルボン酸、スタチン(statine)、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイル−フェニルアラニン、プロパルギルグリシン及びサルコシンが挙げられる。本発明の範囲内に網羅されるペプチドは、生物活性を保持しつつ、L−若しくはD−立体配置の前述のアミノ酸又は本明細書に記載されている若しくは現在であれ将来的にであれ本技術分野において公知のその他のアミノ酸のうちいずれかを有することができる。
【0077】
[0090]互いに置換できるアミノ酸は、一般に、同様のクラス又はサブクラスに属す。当業者に知られた通り、アミノ酸は、主としてアミノ酸側鎖の化学的及び物理学的特性に応じて異なるクラスに入れることができる。例えば、あるアミノ酸は、一般に、親水性又は極性アミノ酸であると考えられ、他のアミノ酸は、疎水性又は非極性アミノ酸であると考えられる。極性アミノ酸は、酸性、塩基性又は親水性側鎖を有するアミノ酸を包含し、非極性アミノ酸は、芳香族又は疎水性側鎖を有するアミノ酸を包含する。非極性アミノ酸は、とりわけ脂肪族アミノ酸を包含するよう更に細分することができる。本明細書におけるアミノ酸クラスの定義を次に記す。
【0078】
[0091]「非極性アミノ酸」は、生理的pHで無電荷の、極性がない、一般に水溶液により反発される側鎖を有するアミノ酸を指す。遺伝的にコードされた疎水性アミノ酸の例として、Ala、Ile、Leu、Met、Trp、Tyr及びValが挙げられる。遺伝的にコードされない非極性アミノ酸の例として、t−BuA、Cha及びNleが挙げられる。
【0079】
[0092]「芳香族アミノ酸」は、コンジュゲートしたπ−電子系を有する少なくとも1個の環(芳香族基)を含有する側鎖を有する非極性アミノ酸を指す。芳香族基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、スルホニル、ニトロ及びアミノ基並びにその他等の置換基で更に置換することができる。遺伝的にコードされた芳香族アミノ酸の例として、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンが挙げられる。一般的に遭遇する遺伝的にコードされない芳香族アミノ酸として、フェニルグリシン、2−ナフチルアラニン、β−2−チエニルアラニン、3−ベンゾチアゾール−2−イル−アラニン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニン及び4−フルオロフェニルアラニンが挙げられる。
【0080】
[0093]「脂肪族アミノ酸」は、飽和又は不飽和直鎖、分枝又は環状炭化水素側鎖を有する非極性アミノ酸を指す。遺伝的にコードされた脂肪族アミノ酸の例として、Ala、Leu、Val及びIleが挙げられる。コードされない脂肪族アミノ酸の例として、Nleが挙げられる。
【0081】
[0094]「極性アミノ酸」は、生理的pHで荷電又は無荷電の、2原子により共有される電子対が原子の一方側により接近して保持されている結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を指す。極性アミノ酸は一般に、親水性であり、これは、水溶液により引きつけられる側鎖を有するアミノ酸を有することを意味する。遺伝的にコードされた極性アミノ酸の例として、アスパラギン、システイン、グルタミン、リシン及びセリンが挙げられる。遺伝的にコードされない極性アミノ酸の例として、シトルリン、ホモシステイン、N−アセチルリシン及びメチオニンスルホキシドが挙げられる。
【0082】
[0095]「酸性アミノ酸」は、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を指す。酸性アミノ酸は通常、水素イオンの減少により生理的pHで負の電荷を持つ側鎖を有する。遺伝的にコードされた酸性アミノ酸の例として、アスパラギン酸(アスパラギン酸塩)及びグルタミン酸(グルタミン酸塩)が挙げられる。
【0083】
[0096]「塩基性アミノ酸」は、7より高い側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を指す。塩基性アミノ酸は通常、ヒドロニウムイオンとの会合により生理的pHで正の電荷を持つ側鎖を有する。遺伝的にコードされた塩基性アミノ酸の例として、アルギニン、リシン及びヒスチジンが挙げられる。遺伝的にコードされない塩基性アミノ酸の例として、オルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸及びホモアルギニンが挙げられる。
【0084】
[0097]「イオン化できる(Ionizable)アミノ酸」は、生理的pHで荷電し得るアミノ酸を指す。係るイオン化できるアミノ酸は、酸性及び塩基性アミノ酸、例えば、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−アルギニン、D−リシン、D−ヒドロキシリシン、D−オルニチン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−アルギニン、L−リシン、L−ヒドロキシリシン又はL−オルニチンを包含する。
【0085】
[0098]当業者であれば認められようが、上述の分類は、絶対的なものではない。いくつかのアミノ酸は、2種以上の特徴的な特性を提示し、従って、2種以上のカテゴリーに包含され得る。例えば、チロシンは、非極性芳香環及び極性ヒドロキシル基の両方を有する。よって、チロシンは、非極性、芳香族及び極性として描写することのできる数種の特徴を有する。しかし、非極性環が優勢であるため、チロシンは一般に、非極性であると考えられる。同様に、システインは、ジスルフィド結合を形成する能力があることに加えて、非極性の性状も有する。よって、システインは、疎水性又は非極性アミノ酸として厳密に分類されないが、多くの事例において、ペプチドに疎水性又は非極性を付与するよう用いることができる。
【0086】
[0099]一部の実施形態において、本発明により考慮される極性アミノ酸として、例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リシン、ヒドロキシリシン、オルニチン、セリン、スレオニン及び構造的に関係するアミノ酸が挙げられる。一実施形態において、極性アミノは、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシリシン、リシン又はオルニチン等、イオン化できるアミノ酸である。
【0087】
[00100]利用することができる極性又は非極性アミノ酸残基の例として、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンその他が挙げられる。
【0088】
[00101]本明細書において、「心血管障害」は、少なくとも一部には、酸化ストレス及び/又は虚血に関与する又はこれらに特徴付けることのできるいずれかの心血管疾患、障害又は状態である。
【0089】
[00102]生理的過程において、分子は、還元及び酸化反応に関与する化学的変化を経る。不対電子を有する分子は、電子を供与することができる分子と組み合わせることができる。電子の供与は、酸化と命名され、一方、電子の獲得は、還元と呼ばれる。還元及び酸化は、還元した分子を不安定にし、自由に他の分子と反応させて、細胞並びに膜、タンパク質及びDNA等の細胞内構成要素に損傷を生じることができる。本明細書において、「酸化ストレス」は、細胞損傷の重要なメディエータである過程の、酸化ストレス/ニトロソ化ストレスをもたらす活性酸素種(reactive oxidant species)(ROS)の過剰な生成を指す。転写因子活性を包含する多くのシグナル伝達経路の活性を誘発する酸化還元不均衡の重要な側面は、例えば虚血/再灌流傷害に関連する心血管疾患において遍在的な過程である。活性酸素種は、一酸化窒素(NO)シンターゼ(NOS)、キサンチンオキシダーゼ(XO)、シクロオキシゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)H)オキシダーゼアイソフォーム及び金属触媒性反応等、種々の供給源から生じ得る。このような例として、スーパーオキシドアニオン(O・−)、ヒドロキシルラジカル(HO・)、脂質ラジカル(ROO)及び一酸化窒素(NO)等、フリーラジカルが挙げられる。他の反応性酸素種、例えば、過酸化水素(H)、ペルオキシナイトライト(ONOO)及び次亜塩素酸(HOCl)は、フリーラジカルではないが、酸化ストレスに寄与する酸化効果を有する。
【0090】
[00103]「虚血」は、身体の特定の部位における血流及び酸素が減少したときに生じる状態である。心虚血は、心臓が標的身体部位である場合のこの状態の名称である。虚血性心疾患は、動脈が狭まることに起因する心臓の問題点を網羅する用語である。動脈が狭まることにより、心臓の筋肉に到達できる血液及び酸素が少なくなる。この状態は、冠動脈疾患及び冠動脈心疾患とも称され、最終的に心発作を生じ得る。虚血は多くの場合、狭心症として知られた胸痛又は不快感を引き起こす。狭心症患者は、無症候性虚血の診断未確定エピソードも有し得る。
【0091】
[00104]心血管障害として、例えば、心不全(本明細書の他の部分に記されているうっ血性心不全及び他の形態の心不全を包含)及び急性冠症候群(Q波MI、STEMI、非Q波MI、NSTEMI及び不安定狭心症を包含)及び虚血性心疾患が挙げられる。心血管障害は、臨床的に関連する時間枠内でB型ナトリウム利尿ペプチドが上昇する、心臓又は血管に関与する疾患、障害及び状態も包含する。心血管障害は、心臓性トロポニンI、心臓性トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、A型及び/又はB型ナトリウム利尿ペプチドシグナルペプチド又はシグナルペプチド断片、尿酸、C反応性タンパク質、及び/又はオステオプロテジェリンのうち1種又は複数種が、臨床的に関連する時間枠において増加したレベルで存在する、心臓又は血管に関与する疾患、障害及び状態も包含する。他の心血管障害として、非Q波心臓壊死が挙げられる。
【0092】
[00105]本明細書において、「不安定狭心症」を患う患者とは、次の症状及び徴候のうち1種又は複数種を有する患者を意味する。(1)ECGにより測定されるST部分下降、(2)0.1ng/ml以下の僅かに上昇したトロポニンTレベル又は(3)0.4ng/ml以下の僅かに上昇したトロポニンIレベル。Q波MIとは対照的に、CK−MB及びLDHレベルは通常、不安定狭心症において上昇しない。また、Q波MIとは対照的に、不安定狭心症患者は通常、ST部分上昇も病的Q波も示さない。最後に、不安定狭心症は専ら、胸痛、15分間よりも長く持続する典型的な胸痛、安静時胸痛又は最小の労作後の舌下ナイトレートに対し応答性が乏しい胸痛に基づいて診断され得る。或いは、胸痛がなくても、以前に虚血性心疾患と診断され、或いは虚血性心疾患発症の強いリスクがあると考えられ、悪心、息切れ、動悸又は眩暈を呈する場合、患者は、不安定狭心症と診断され得る。更に、当業者は、不安定狭心症の診断が、医学的判断の1つであることを理解できよう。
【0093】
[00106]本明細書において、「虚血性心疾患」とは、冠動脈血流低下による、心臓組織への酸素供給減少に起因する心臓組織の疾患を意味する。通常、このような血流低下は、心臓に血液を供給する血管の部分的な又は完全な閉塞に起因する。虚血性心疾患の診断は、舌下ナイトレートにより軽減される、運動により誘発される慢性安定狭心症(「労作性狭心症」としても知られる)の存在に基づくことができる。虚血性心疾患の診断は、ST部分逸脱及び/又はT波逆転を提示する値等、虚血性心疾患と一致するECG読み取り値に基づくことができる。
【0094】
[00107]本明細書において、「B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤」は、一態様において、天然の配列における、或いは遺伝子操作された形態における、天然であれ、合成であれ、組換えによる産生であれいずれかの供給源由来の、本明細書に記載されている生物学的又は治療的活性のうち1種又は複数種を有する、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、トリ、好ましくはヒトを包含するいずれかの生物種に由来するB型ナトリウム利尿シグナルペプチドの断片を指す。用語「B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤」は、いずれかの天然存在のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片の薬学的に許容される塩及びプロドラッグ並びに塩のプロドラッグ、多形、水和物、溶媒和化合物、生物活性断片、生物活性変種並びに立体異性体と共に、いずれかの天然存在のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片及び活性アナログ(例えば、生物活性を維持する例えば特異的欠失又は他の修飾を含有するペプチド)のアゴニスト及びミメティック変種並びにこれらのポリペプチド融合体も包含する。アミノ末端、カルボキシル末端又はその両方に追加的なアミノ酸を含む融合体は、用語「B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤」に網羅される。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又は他のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片の変種及びアナログを包含)のカルボキシル末端に追加的なアミノ酸を含む融合体が好ましい。例示的なB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、BNPsp(17〜26)(配列番号1)、BNPsp(17〜25)(配列番号2)、BNPsp(17〜24)(配列番号3)、BNPsp(17〜23)(配列番号4)、BNPsp(17〜22)(配列番号5)、BNPsp(17〜21)(配列番号6)、BNPsp(17〜20)(配列番号7)、BNPsp(17〜19)(配列番号8)及びBNPsp(17〜18)(配列番号9)を包含する。他のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIのうちいずれかに従ったペプチドを包含する。
【0095】
[00108]本技術分野は、例えば、ポリマーコンジュゲーション又はグリコシル化によるペプチドの修飾に精通している。用語「B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤」は、PEG等のポリマーにコンジュゲートされたペプチドを包含する修飾されたペプチドを包含し、システイン、リシン又は他の残基の1種又は複数種の追加的な誘導体化で構成され得る。加えて、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、リンカー又はポリマーを含むことができ、当該リンカー又はポリマーがコンジュゲートされるアミノ酸は、本発明に係る非天然のアミノ酸となり得る、或いはリシン又はシステインへのカップリング等、本技術分野において公知の技法を利用して、天然にコードされたアミノ酸にコンジュゲートされ得る。
【0096】
[00109]本発明の化合物に関連して本明細書に記載されているアミノ酸、例えば、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIにおいて定義される例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9又は他のペプチドのアミノ酸の置換、欠失、修飾又は付加は、融合体、変種、断片、コンジュゲーションにおける対応する位置における置換、欠失、修飾又は付加等も指すよう企図される。
【0097】
[00110]用語「B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤」は、連結したホモ二量体、ヘテロ二量体、ホモ多量体及びヘテロ多量体も網羅し、その例として、天然にコードされないアミノ酸側鎖を介して、同一若しくは異なる天然にコードされないアミノ酸側鎖又は天然にコードされたアミノ酸側鎖のいずれかと直接的に、或いはリンカーを介して間接的に連結した化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。例示的なリンカーとして、小分子有機化合物、ポリ(エチレングリコール)若しくはポリデキストラン等の種々の長さの水溶性ポリマー又は様々な長さのポリペプチドが挙げられる。
【0098】
[00111]用語「リンカー」は、普通は化学反応の結果として形成される、通常は共有結合である化学基又は結合を指すよう本明細書において用いられる。加水分解的に安定的な結合は、結合が、水において実質的に安定的であり、恐らくは不確定的であっても生理的条件下で延長された期間(これに限定されない)、有用なPh値で水と反応しないことを意味する。加水分解的に不安定又は分解可能な結合は、結合が、水又は例えば血液等の水溶液において分解可能であることを意味する。酵素的に不安定又は分解可能な結合は、結合が、1種又は複数種の酵素により分解され得ることを意味する。本技術分野において理解される通り、PEG及び関連するポリマーは、ポリマー骨格における又はポリマー骨格とポリマー分子の末端官能基のうち1又は複数との間のリンカー基における分解可能な結合を包含し得る。例えば、PEGカルボン酸又は活性化PEGカルボン酸と、生物活性剤におけるアルコール基との反応により形成されるエステル結合は、一般に生理的条件下で加水分解して、薬剤を遊離させる。他の加水分解により分解可能な結合として、炭酸塩結合;アミン及びアルデヒドの反応に起因するイミン結合;アルコールとリン酸基との反応により形成されるリン酸エステル結合;ヒドラジド及びアルデヒドの反応産物であるヒドロゾン(hydrozone)結合;アルデヒド及びアルコールの反応産物であるアセタール結合;ギ酸塩及びアルコールの反応産物であるオルトエステル結合;PEG等のポリマー端及びペプチドのカルボキシル基等が挙げられるがこれらに限定されない、アミン基により形成されるペプチド結合;並びにポリマー端及びオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基等が挙げられるがこれらに限定されない、ホスホラミダイト基により形成されるオリゴヌクレオチド結合が挙げられるがこれらに限定されない。
【0099】
[00112]用語「活性」、「生物活性」又は「生物活性剤」は、本明細書に用いられている場合、ウイルス、細菌、バクテリオファージ、トランスポゾン、プリオン、昆虫、真菌、植物、動物及びヒト等が挙げられるがこれらに限定されない生物に関連する生物システム、経路、分子又は相互作用のいずれかの物理学的又は生化学的特性に影響を及ぼし得るいずれかの物質を意味する。特に、本明細書において、生物活性分子として、ヒト又は他の動物における心血管障害の治癒、緩和、処置又は予防に企図されるいずれかの物質、或いはヒト又は動物の身体的又は精神的福祉を増強するそれ以外の物質が挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
[00113]本明細書において、用語「水溶性ポリマー」は、水性溶媒において可溶性であるいずれかのポリマーを指す。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片への水溶性ポリマーの結合は、血清中半減期の増加若しくはモジュレート又は未修飾型と比べた治療半減期の増加若しくはモジュレート、免疫原性のモジュレート、凝集及び多量体形成等の物理的会合特徴のモジュレート、受容体結合の変化並びに受容体二量体化又は多量体化の変化等が挙げられるがこれらに限定されない変化を生じ得る。水溶性ポリマーは、それ自体生物活性を有しても有さなくてもよく、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片を、1種若しくは複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又は1種若しくは複数種の生物活性分子等が挙げられるがこれらに限定されない他の物質に付着させるためのリンカーとして利用することができる。適したポリマーとして、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC1〜C10アルコキシ若しくはそのアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号に記載)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン硫酸を包含するデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖、オリゴ糖、グリカン、セルロース並びにメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等が挙げられるがこれらに限定されないセルロース誘導体、澱粉及び澱粉誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコール及びその誘導体、ポリアルキレングリコール及びその誘導体のコポリマー、ポリビニルエチルエーテル及びアルファ−ベータ−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド(aspartamide)その他又はこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。係る水溶性ポリマーの例として、ポリエチレングリコール及び血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
[00114]本明細書において、用語「ポリアルキレングリコール」又は「ポリ(アルケングリコール)」は、ポリエチレングリコール(ポリ(エチレングリコール))、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール及びこれらの誘導体を指す。用語「ポリアルキレングリコール」及び/又は「ポリエチレングリコール」は、直鎖及び分枝ポリマーの両方並びに0.1kDa〜100kDa以上の間の平均分子量を網羅する。他の例示的な実施形態は、例えば、Shearwater Corporation社のカタログ「Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Applications」(2001年)等、商業的サプライヤーカタログに収載されている。
【0102】
[00115]本明細書において、用語「修飾された血清中半減期」は、その非修飾型と比べた、修飾されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片の循環半減期の増加を意味する。血清中半減期は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片の投与後の様々な時点において血液試料を採取し、各試料における当該分子の濃度を決定することにより測定される。血清中濃度と時間との相関により、血清中半減期の計算が可能である。血清中半減期の増加は、望ましくは、少なくとも約2倍であるが、例えば、良好な投薬レジメンを可能にする、或いは毒性な影響を回避するより少ない増加も有用となり得る。一部の実施形態において、増加は、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍又は少なくとも約10倍以上である。
【0103】
[00116]本明細書における用語「修飾された治療半減期」は、その非修飾型と比べた、治療上有効量の修飾されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片の半減期の増加を意味する。治療半減期は、投与後の様々な時点において当該分子の薬物動態及び/又は薬力学的特性を測定することにより測定される。治療半減期の増加は、望ましくは、特定の有益な投薬レジメン、特定の有益な総用量を可能にする、或いは望ましくない影響を回避する。一部の実施形態において、治療半減期の増加は、効力の増加、修飾された分子とその標的との結合の増加若しくは減少、プロテアーゼ等の酵素による当該分子の崩壊の増加若しくは減少又は非修飾分子の別のパラメータ若しくは作用機序の増加若しくは減少に起因する。
【0104】
[00117]用語「単離された」は、ペプチドに適用される場合、そのペプチドが、天然の状態では会合している細胞又は他の生物学的構成要素を少なくともある程度含まないこと、或いはそのペプチドが、そのin vivo又はin vitro産生の濃度よりも高いレベルまで濃縮されたことを意味する。この状態は、均質又は実質的に均質な状態となり得る。単離された物質は、乾燥又は半乾燥状態であっても、水溶液等が挙げられるがこれらに限定されない溶液中に存在していてもよい。この物質は、追加的な薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬品組成物の構成要素となり得る。純度及び均質性は通常、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィー等、分析化学的技法を用いて決定される。
【0105】
[00118]「実質的に純粋」とは、少なくとも70%のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、95%又は99%まで増加した、総タンパク質に対する総B型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤、例えば、BNPsp(17〜26)(配列番号1)の純度の程度を意味する。特に好ましい純度は、少なくとも95%である。「基本的に純粋」とは、組成物が、所望のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド剤に関して少なくとも90%以上純粋であることを意味する。調製物中に存在する優占的な化学種であるペプチドも実質的に精製される。
【0106】
[00119]本明細書における用語「有効量」は、処置されている疾患、状態又は障害の症状のうち1種又は複数種をある程度まで軽減するであろう、投与されるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の量を指す。本明細書に記載されているB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含有する組成物は、予防的、増強的及び/又は治療的処置のために投与することができる。
【0107】
[00120]本明細書において、「対象」は、ヒトや、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシ等の飼育動物及び家畜並びに動物園の動物、スポーツ用動物又は愛玩動物を包含するいずれかの哺乳類を指す。本明細書における好ましい哺乳類は、成人、小児及び高齢者を包含するヒトである。好ましいスポーツ用動物は、ウマ及びイヌである。好ましい愛玩動物は、イヌ及びネコである。
【0108】
[00121]本明細書において、「予防」は、全体若しくは一部の予防、寛解若しくは管理、低下、縮小若しくは減少又は遅延若しくは停止を意味する。
【0109】
[00122]本明細書において、本発明の化合物又は組成物に関連する「治療上有効量」は、所望の生物学的、薬学的又は治療的結果の誘導に十分な量を指す。係る結果は、徴候、症状又は疾患若しくは障害若しくは状態の原因又は生物システムのその他の所望の変化のうち1種又は複数種の緩和となり得る。本発明において、この結果は、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患及び狭心症を包含する心血管障害並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与するいずれかの心血管障害、疾患又は状態の症状のうち1種又は複数種の処置、予防及び/又は低下に関与するであろう。
【0110】
[00123]本明細書において、用語「処置する」及び「処置」は、治療的処置及び予防的又は予防用測定の両方を指す。
【0111】
[00124]「アナログ」又は「ペプチドアナログ」は、鋳型ペプチドの特性と類似の特性を有する化合物を指し、非ペプチド薬物となり得る。ペプチドベースの化合物を包含する「ペプチド模倣薬(「ミメティックペプチド」としても公知)」も、ペプチドアナログ等、係る非ペプチドベースの化合物を包含する。治療上有用なペプチドと構造的に類似したペプチド模倣薬を用いて、同等の又は増強された治療的又は予防的効果を生むことができる。一般に、ペプチド模倣薬は、パラダイムポリペプチド(即ち、生物学的又は薬理学的機能又は活性を有するポリペプチド)と構造的に同一又は同様のものであるが、1種又は複数種のペプチド結合が、例えば、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−及び−CH2SO−からなる群から選択される結合に必要に応じて置き換えられていてもよい。ミメティックは、天然のアミノ酸又は非天然のアミノ酸アナログのいずれかで完全に構成されていてもよく、部分的に天然のペプチドアミノ酸及び部分的に非天然のアミノ酸アナログのキメラ分子である。ミメティックは、置換がミメティック活性を実質的に変化させなければ、いずれかの量の天然のアミノ酸の保存的置換を含むこともできる。
【0112】
[00125]一般に、用語「ペプチド」は、あるアミノ酸(又はアミノ酸残基)のアルファ−炭素と結合しているカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接するアミノ酸のアルファ−炭素と結合しているアミノ基のアミノ態窒素原子と共有結合すると生じるペプチド結合を介して連結した、2個以上の個々のアミノ酸(天然存在であれ非天然存在であれ)のいずれかのポリマーを指す。このようなペプチド結合及びこれを構成する原子(即ち、アルファ−炭素原子、カルボキシル炭素原子(及びその置換基酸素原子)及びアミノ態窒素原子(及びその置換基水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。更に、本明細書において、用語「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、互換的に用いることができる。同様に、タンパク質断片、アナログ、誘導体及び変種は、本明細書において「ペプチド」又は「ペプチド剤」と言及することができる。用語、ペプチドの「断片」は、ペプチドの全アミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基を含むポリペプチドを指す。
【0113】
[00126]本明細書において、「同時に」は、本発明の1種又は複数種の薬剤が、同時発生的に投与されることを意味するように用いられ、一方、用語「組み合わせて」は、薬剤が、同時又は物理的な組合せではないにしても、両方の薬剤が治療的に作用するのに役立つ時間枠内で「逐次的に」投与されることを意味するように用いられる。よって、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び例えば別の心血管治療剤の両方が、有効量で同時発生的に存在するのであれば、「逐次的な」投与は、ある薬剤が、他の薬剤の投与後の数分間(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30)分間又はほんの数時間、数日間、数週間若しくは数ヶ月間以内に投与されることを可能にする。構成要素の投与間の時間の遅れは、構成要素の正確な性質、構成要素間の相互作用及び構成要素それぞれの半減期に応じて変動するであろう。
B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤
【0114】
[00127]本明細書に記載されている本発明のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、心血管障害の症状(symtom)のうち1種又は複数種をモジュレートすることができる。心血管障害は、急性冠症候群であることが好ましいが、本明細書に記載されている通りそれ以外も企図されている。
【0115】
[00128]非限定的な好ましい実施形態においては単離されている又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次のペプチドを包含する。
【表1】
【0116】
[00129]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式I:
LHX(配列番号10)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Arg、Gln、Asn又はGlyであり、Xは、Thr又はGlyである)
に従ったペプチドも包含する。
【0117】
[00130]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式II:
LHX(配列番号11)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Arg、Gln、Asn又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Lys、Gln、Asn又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0118】
[00131]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式III:
LHX(配列番号12)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0119】
[00132]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式IV:
LHX(配列番号13)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Pro、Ala、Arg又はSerである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Pro、Ala、Arg又はSerである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0120】
[00133]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式V:
LHX(配列番号14)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyであり、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもでき、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Glyとなることもでき、Xは、Argとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0121】
[00134]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式VI:
LHX(配列番号15)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyであり、Xは、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Pheとなることもでき、
が、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもでき、Xは、Alaとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0122】
[00135]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式VII:
LHX(配列番号16)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyであり、Xは、Val、Leu、Ile又はGlyである、
但し、
が、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである場合、Xは、Alaとなることもでき、
が、Val、Leu又はIle又はGlyである場合、Xは、Leuとなることもできる)
に従ったペプチドも包含する。
【0123】
[00136]非限定的な好ましい実施形態においては単離された又は実質的に純粋である本発明の化合物は、次式VIII:
LHX(配列番号17)
(式中、Xは、ノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、Phe又はGlyである)
に従ったペプチドも包含する。
【0124】
[00137]このような化合物の生物及び/又は治療活性アナログ並びに保存的変種(これらの切断型、好ましくはC末端切断型を包含)が、本発明の範囲に包含されている。例えば、配列番号1〜9として及び式I〜VIIIにおいて示す上述のペプチドにおいて、ロイシン(L)のいずれか1個又は複数個は、イソロイシン(I)、D−ロイシン又はD−イソロイシン又はtert−ロイシン、ノルロイシン、L−allo−イソロイシン、D−allo−イソロイシン、D−tert−ロイシン及びD−ノルロイシンに置換することができる、及び/又はヒスチジンは、イミダゾール環で終結する側鎖を有する又はそれを有するように調製されたいずれかの非天然存在のアミノ酸に置換することができる。
【0125】
[00138]非限定的な一実施形態において、配列番号1〜9及び式I〜VIII内の配列を包含する本発明の範囲内のペプチドのアミノ酸のうち1個又は複数個は、L又はD立体配置となることができる。他の実施形態において、本発明の範囲内のペプチドのアミノ酸のうち1個又は複数個は、天然存在の、遺伝的にコードされていないアミノ酸である。更に他の実施形態において、本発明の範囲内のペプチドのアミノ酸のうち1個又は複数個は、アミノ酸アナログ又は合成アミノ酸である。
【0126】
[00139]別の非限定的な一実施形態において、配列番号1〜9及び式I〜VIII内の配列を包含する本発明の範囲内のペプチドのN末端ロイシン(又はイソロイシン、D−ロイシン、D−イソロイシン、tert−ロイシン、ノルロイシン、L−allo−イソロイシン、D−allo−イソロイシン、D−tert−ロイシン若しくはD−ノルロイシン)は、ホルミル基、ホルミル基を含む化学基、カルボン酸のエステル(アルデヒドエステル、例えば、カルボキシエチル基、カルボキシメチル基等が好ましい)又はカルボン酸のエステルを含む化学基を含有するよう修飾することができる。ホルミル、カルボキシエチル及びカルボキシメチル基による修飾が、現在好ましい。
【0127】
[00140]別の一実施形態において、配列番号1〜9及び式I〜VIII内の配列を包含する本発明の範囲内の化合物における1個又は複数個のアミノ酸は、主としてアミノ酸側鎖の化学的及び物理学的特性に基づく類似のアミノ酸クラス又はサブクラスの別のアミノ酸に置換される。例えば、1個又は複数個の親水性又は極性アミノ酸は、別の親水性又は極性アミノ酸に置換することができる。同様に、1個又は複数個の疎水性又は非極性アミノ酸は、別の疎水性又は非極性アミノ酸に置換することができる。このような置換を行うにあたって、極性アミノ酸は、酸性、塩基性又は親水性側鎖を有するアミノ酸へと更に細分することができ、非極性アミノ酸は、芳香族又は疎水性側鎖を有するアミノ酸へと更に細分することができる。非極性アミノ酸は、とりわけ脂肪族アミノ酸を包含するよう更に細分してもよい。
【0128】
[00141]そのバイオ医薬品特性を改善するように修飾された本発明の化合物もまた、本発明の範囲内に収まる。特定の実施形態において、本発明の化合物は、例えば、安定性の増加、タンパク分解による不活性化に対する抵抗性の増加、免疫原性が存在しなくなるまでの減少、修飾された血清中半減期及び修飾された治療半減期を包含する循環寿命の増加並びに低い毒性をもたらすように修飾される。本発明の化合物を修飾することのできる方法は、例えば、PEG化、化学誘導体化及びペプチド又は脂質との融合又はコンジュゲーションを包含する。修飾された化合物は、例えば、修飾されたBNPsp(17〜26)(配列番号1)並びに修飾されたこれらのアナログ、変種(例えば、保存的変種)及び切断型等、修飾されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を包含する。他の実施形態は、修飾された配列番号2〜9、修飾された式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び/又は式VIIIに従ったペプチド並びに修飾されたこれらの活性アナログ、変種(例えば、保存的変種)及び切断型から選択されるペプチドを包含する。
【0129】
[00142]本発明は、本発明の治療ペプチドのプロドラッグ形態を想定する。「プロドラッグ」は、患者に送達した後に生理的条件下の酵素的又は非酵素的触媒反応により、プロドラッグを親ペプチドへと転換するために確実に除去できる可逆的化学修飾を包含する治療ペプチドの修飾型である。係る修飾は、例えば、親治療ペプチドの薬理学的特性を保存しつつ、化学的安定性を増強し、水溶性を変化させ、生物学的半減期を延長し、治療指数を広げ、薬力学を改善し、及び/又はバイオアベイラビリティを改善することができる。係る修飾は、親ペプチドが、所望の効果を発揮することができる生物学的区画に到達した後に放出されることを可能にし得る。「プロドラッグ」は、親ペプチドにおける特定の制限的な特性を変化又は排除するよう一過性様式で用いられる、1種又は複数種の特定化された非毒性保護基を包含し得る化合物であり、この保護基(複数可)は、酵素的又は化学的切断により除去することができる。いずれかの適した保護基(複数可)を用いて、本発明のペプチドプロドラッグを作製することができる。係る特定化された修飾として、親ペプチドのアミノ及び/又はカルボキシ末端のいずれか一方又は両方における1個又は複数個のアミノ酸残基の包含が挙げられる。付加的なN又はC末端アミノ酸又はアミノ酸配列の効率的なin vivo除去を可能にする切断部位は、係るプロドラッグ分子に包含されることが好ましい。1個又は複数個のN及び/又はC末端アミノ酸残基の付加以外の修飾も想定される。例えば、プロドラッグ転換のためのジケトピペラジン及びジケトモルフォリン(diketomorpholine)(DKP及びDMP)戦略を用いることができ(例えば、Application of Peptide−Badsed Prodrug Chemistry in Drug Development、Springer、Ed.De、Arnab(2012)を参照)、この戦略では、プロドラッグが、いかなる酵素的切断も必要とせずに化合物の固有の化学的不安定性により、生理的条件で親薬物へと徐々に転換させられる。安定性を改善するために、本発明の親ペプチドは、生物可逆的(bioreversibly)マスキングN及び/又はC末端アミノ酸により、エキソペプチダーゼ媒介性加水分解から保護することができる。
【0130】
[00143]本発明のプロドラッグの例は、親ペプチドが、親ペプチドのN及び/又はC末端に付属した1個又は複数個の追加的なアミノ酸残基を包含するプロドラッグである。本発明の化合物は、本発明の薬剤のプロドラッグ形態も包含する。例えば、プロドラッグ形態は、例えば、ペプチドBNPsp(17〜26)(配列番号1)のN末端に付属した1〜16個のアミノ酸残基を有するプロドラッグ形態を包含する。係るプロドラッグ形態の例として、適した結合を介して親ペプチドに連結した、表1に収載されているアミノ酸の1個又は複数個を有するプロドラッグ形態が挙げられる。代表的なプロドラッグ実施形態は、例えば、BNPsp(17〜26)又は配列番号2〜9由来の他のペプチド並びに式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び/又は式VIIIに従ったペプチド、並びに前述の活性アナログ及び変種(例えば、保存的変種)のいずれかのN末端に連結した残基1〜16、2〜16、3〜16、4〜16、5〜16、6〜16、7〜16、8〜16、9〜16、10〜16、11〜16、12〜16、13〜16、14〜16及び15〜16を包含する。
【表2】
【0131】
[00144]本発明に係るプロドラッグの更に別の例として、親ペプチドのアミノ基が、アシル化、アルキル化、リン酸化、エイコサノイル化(eicosanoylate)、アラニル化(alanylate)、ペンチルアミノカルボニル化(pentylaminocarbonylate)、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化又はtert−ブチル化等されているプロドラッグ;親ペプチドのヒドロキシ基が、アシル化、アルキル化、リン酸化、アセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化又はジメチルアミノメチルカルボニル化等されている化合物;及び親ペプチドのカルボキシ基が、エステル化又はアミド化(例えば、エチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−エキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化又はメチルアミド化等)等をなされている化合物が挙げられる。
【0132】
[00145]親ペプチドのN又はC末端に位置しない1個又は複数個のアミノ酸残基に対する化学修飾を含有するプロドラッグ形態等、他のプロドラッグ形態も想定されている。当業者であれば認められようが、生理的条件下で除去されて本発明の化合物の薬学的活性型を生じ得るいかなる適した化学修飾を利用してもよい。
【0133】
[00146]他の実施形態は、本発明の化合物のペプチド模倣薬(peptidiomimetics)を包含する。
【0134】
[00147]現在好ましいB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、BNPsp(17〜26)(配列番号1)である。
【0135】
[00148]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の心保護的活性の例証を、後述する実施形態において提示する。実施例1は、単離されたラット心臓調製物における45分間の全虚血の前及び後におけるBNPsp(17〜26)(配列番号1)の投与により心収縮力を改善する、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の能力を示す。実施例2のin vivoヒツジ実験において、心臓の収縮機能及びトロポニン放出、心筋損傷の診断マーカーが、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、BNPsp(17〜26)(配列番号1)の投与により改善されたことが示されている。実施例3は、実施例1において観察され、実施例2において言及されている様々な長さのBNPsp断片ペプチド及びその生理活性を評価するための実験について記載する。
【0136】
[00149]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び修飾されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の合成は、本技術分野において公知の方法を用いて行われる。配列番号1〜9等のペプチドである本発明の化合物(Compund)は、固体化学的ペプチド合成により作製することができる。融合ペプチド等、他の化合物は、例えば、Sambrook&Maniaitisに記載されている標準手順を用いた従来の組換え技法によって作製することもできる。本発明のペプチド及び他の化合物は、化学修飾されていてよい。化学修飾は、ペプチダーゼ及び他の酵素に対する抵抗性を増強し、腎臓によるクリアランスを制限等することができる。係る修飾された化合物を調製する方法は、本技術分野において公知のものである。
【0137】
[00150]用いられるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の正確な配列は、心血管障害の症状(symtom)又は影響のうち1種又は複数種の寛解させるその能力に依存するであろう。係る影響を決定するための手段が、実施例1及び2に提示されている。心血管障害の処置又は予防のためのB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の有用性を評価するための他の手段は、心臓の筋細胞及び非筋細胞の細胞株を用いたin vitro細胞培養実験並びに心臓の先天性疾患及び毒性のモデルによるin vivo及びex vivo実験を包含する。
【0138】
[00151]本発明の医薬品組成物の調製に適したB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、LHLAFLGGRS(配列番号1)、LHLAFLGGR(配列番号2)、LHLAFLGG(配列番号3)、LHLAFLG(配列番号4)、LHLAFL(配列番号5)、LHLAF(配列番号6)、LHLA(配列番号7)、LHL(配列番号8)及びLH(配列番号9)を包含する。本発明の医薬品組成物の調製に適した他のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、式I〜VIII内のペプチドを包含する。医薬品組成物の調製に適した他のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、本明細書に記載されており、例えば、前述の化合物のアナログ、変種、切断型及び修飾(融合を包含)を包含する。
【0139】
[00152]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤活性は、例えば、後述の実施例に記載されているアプローチを包含するいずれかの簡便な従来のアプローチにより、その配列及び所望の活性の観点から選択することができる。
【0140】
[00153]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片の相同性及びホモログは、本明細書に記されている。係るB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片は通常、関連する配列と少なくとも約70%相同性、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%又は少なくとも約99%相同性を有する。
【0141】
[00154]相同性は、本技術分野におけるいずれかの方法に基づき計算することができる。例えば、UWGCGパッケージは、相同性の計算に用いることのできるBESTFITプログラム(例えば、そのデフォルト設定で用いる)を提供する。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290〜300;Altschul,S,Fら(1990)J Mol Biol 215:403〜10に記載されている通り、相同性の計算又は配列の整列に用いることができる(通常、そのデフォルト設定で)。
【0142】
[00155]BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により公開されている。このアルゴリズムは、データベース配列における同一の長さのワードと整列した場合にある正の値の閾値スコアTとマッチする又はこれを満足させる、問い合わせ配列における長さWの短いワード(word)を同定することにより、高スコア配列対(HSP)を先ず同定することに関与する。Tは、近隣ワードスコア閾値(Altschulら、上記参照)と称される。このような初期の近隣ワードヒットは、これを含有するHSPを発見するための検索を開始するためのシーズ(seed)として作用する。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り各配列に沿って両方向に延長される。累積アライメントスコアが、その最大達成値から含量Xまで下落する;累積スコアが、1又は複数の負のスコアの残基アライメントの蓄積によりゼロ以下になる;或いはいずれかの配列の終端に到達する場合、各方向におけるワードヒットの延長は停止される。
【0143】
[00156]BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、アライメントの感度及びスピードを決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff及びHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915〜10919を参照)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4及び両鎖の比較を用いる。
【0144】
[00157]BLASTアルゴリズムは、2配列間の類似性の統計解析を実行する。例えば、Karlin及びAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873〜5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによりもたらされる類似性測定の一法は、2種のアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じる確率の指標をもたらす最小合計確率(P(N))である。例えば、第1の配列を第2の配列と比較した最小合計確率が、約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、配列は、もう一方の配列と類似であると考慮される。
【0145】
[00158]相同配列は通常、関連する配列と少なくとも約2、5、10、15、20個(又はそれ以下)の更なる突然変異(置換、欠失又は挿入となり得る)が異なる。これらの突然変異は、相同性の計算に関する上述の領域のいずれに亘り測定することもできる。
心血管治療剤
【0146】
[00159]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の組成物及び方法は、1種又は複数種の他の心血管治療薬と順次の又はそれと組み合わせた(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与も含む。心血管治療剤は、ナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬(特に、安定又は不安定狭心症のため、また、β遮断薬の場合は心不全のため)、利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤及びアルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトン(特に、心不全のため)、抗凝血療法(例えば、アスピリン、ヘパリン、ワルファリン)並びにニトログリセリン(特に、MIのため)を包含する。
【0147】
[00160]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の組成物及び方法は、1種又は複数種の抗血栓溶解療法(例えば、ストレプトキナーゼ阻害剤、例えば、クロピドグレル等の抗血小板療法)と順次の又はそれと組み合わせた(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与も含むことができる。
【0148】
[00161]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の組成物及び方法は、例えば、ネシリチド、組換え型のB型ナトリウム利尿ペプチドを包含するB型ナトリウム利尿ペプチドと順次の又はそれと組み合わせた(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与も含むことができる。
【0149】
[00162]心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の予防及び/又は処置のための本発明の特定の方法及び組成物(医薬品組成物、製剤、製造品及びキットを包含)において、治療上有効量を下回るB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び1種又は複数種の他の心血管治療薬が、治療上有効の組み合わせた作用をもたらすための組み合わせた投与(組み合わせた調製物として別々に又は一体に)のために用いられる又は提供される。
【0150】
[00163]よって、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤を用いた、心血管障害、例えば、急性冠症候群、心不全、虚血性心疾患等、並びに虚血及び/又は酸化ストレスに関与する関連心血管疾患、障害及び状態の処置のための本発明の組成物及び方法が開示されていることが理解されよう。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、例えば、BNPsp(17〜26)(配列番号1)、BNPsp(17〜25)(配列番号2)、BNPsp(17〜24)(配列番号3)、BNPsp(17〜23)(配列番号4)、BNPsp(17〜22)(配列番号5)、BNPsp(17〜21)(配列番号6)、BNPsp(17〜20)(配列番号7)、BNPsp(17〜19)(配列番号8)及びBNPsp(17〜18)(配列番号9)からなる群から選択され得る。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIのうちいずれか一式に従った配列からなる群から選択され得る。必要に応じて、心血管剤は、例えば、ナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、ニトログリセリン、抗凝血剤、抗血栓溶解剤及びB型ナトリウム利尿ペプチドを含む又はこれのみから実質的になる群から選択される。
【0151】
[00164]本明細書に更に記載されている通り、本明細書に記載されている1種又は複数種の化合物又は医薬品組成物による、本明細書に提示されている対象の処置は、その急性又は持続性の投与を含むことができ、組合せの場合、それらの同時の、別個の又は逐次的な投与を含むことができる。
【0152】
[00165]本発明の薬剤は、本明細書に言及されている疾患、障害又は状態のうちいずれかである対象等、処置を必要とする対象に投与することができる。これにより、対象の状態が改善され得る。薬剤は、本明細書に言及されている疾患、障害又は状態(condtion)のうちいずれかを処置するための医薬の製造において用いることができる。よって、本発明において、心血管障害を処置することのできる製剤が提供される。
【0153】
[00166]組合せパートナー(例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤)それぞれの治療上有効量は、同時に、別々に又は逐次的に、いずれかの順序で投与することができる。薬剤は、別々に、或いは固定された組合せとして投与することができる。固定された組合せとして投与されない場合、好ましい方法は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤の逐次的な投与を包含し、そのいずれか一方又は両方は、薬剤(単数又は複数)が単独で投与される場合に、即ち、物理的に又は処置の過程において組み合わせて投与されない場合に用いられる量又は用量よりも少ない量又は用量で提供される。投与されるより少量の薬剤は通常、単独で投与される場合の約20分の1〜約10分の1の量(単数又は複数)の薬剤であり、単独で投与される場合の約8分の1の量、約6分の1の量、約5分の1の量、約4分の1の量、約3分の1の量及び約2分の1の量となり得る。薬剤は、互いに少なくとも約30分以内に逐次的に投与されることが好ましい。薬剤は、互いに約1時間以内に、互いに約1日〜約1週間以内に、或いは適切と考えられるそれ以外の期間で投与することができる。
【0154】
[00167]本発明の薬剤は、急性冠症候群又は本明細書に言及されている疾患若しくは状態のうちいずれかである対象等、処置を必要とする対象に投与することができる。これにより、対象の状態は改善され得る。よって、化合物は、治療法による対象の身体の処置において用いることができる。化合物は、本明細書に言及されている状態のうちいずれかを処置するための医薬の製造において用いることができる。よって、本発明において、心臓治療及び心臓保護を特に誘起する製剤が提供される。
剤形及び製剤及び投与
【0155】
[00168]本発明の化合物は、単離された又は実質的に若しくは基本的に純粋な形態で存在し得る。生成物は、生成物に企図された目的に干渉しない担体又は希釈剤と混合することができ、その場合も依然として、単離された又は実質的に純粋であると考慮されることが理解されよう。本発明の生成物は、実質的に又は基本的に(essentialy)精製された形態となることができ、好ましくは、化合物又は調製物の乾燥質量の約80%、85%又は90%、例えば、少なくとも約95%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%を構成又はこれのみから実質的になることができる。
【0156】
[00169]企図された投与経路に応じて、本発明の医薬品生成物、医薬品組成物、組み合わせた調製物及び医薬は、例えば、溶液、懸濁液、点滴、持続性放出製剤又は粉末の形態を取ることができ、通常、活性原材料(複数可)の約0.1%〜95%、好ましくは約0.2%〜70%を含有する。他の適した製剤は、注射及び注入に基づく製剤を包含する。他の有用な製剤は、例えば、制御、緩徐又は遅延放出調製物等、持続性放出調製物を包含する。
【0157】
[00170]本発明の態様は、例えば1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片である1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含有する、制御された又は他の用量、剤形、製剤、組成物及び/又は機器を包含する。本発明は、例えば、少なくとも経口投与、経皮送達、局所適用、坐薬送達、経粘膜送達、注射(ボーラスによる送達、緩徐静脈内注射及び静脈内点滴等、皮下投与、真皮下投与、筋肉内投与、デポー投与及び静脈内投与を包含)、注入機器(能動的及び受動的両方の植え込み型注入機器を包含)、吸入又はガス注入による投与、頬側投与及び舌下投与のための用量及び剤形を包含する。本明細書に記載されている特に静脈内投与のための剤形、組成物、製剤又は機器のいずれかは、適用可能である又は望ましい場合、本明細書において考慮されている又は一般に用いられている他の経路のうちいずれかによる投与のための剤形、組成物、製剤又は機器において利用してもよいことが認められよう。例えば、用量(単数又は複数)は、経口投与に適した剤形に関して記載されている特色又は組成物を取り込み得る非経口投与に適した剤形を用いて非経口投与することができる、或いは修飾された放出、持続放出、遅延放出、緩徐放出又は復効剤形等、持続性の剤形で送達することができる。
【0158】
[00171]本発明のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて医薬品組成物を生成することが好ましい。適した担体及び希釈剤は、等張性生理食塩水溶液、例えばリン酸緩衝食塩水を包含する。適した希釈剤及び賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールその他及びこれらの組合せも包含する。その上、必要であれば、湿潤剤又は乳化剤、安定化剤又はpH緩衝剤等の物質が存在してもよい。
【0159】
[00172]用語「薬学的に許容される担体」は、用いられている投薬及び濃度においてそれに曝露されている細胞又は哺乳類に対し非毒性であり、組成物を与えている個体に有害な抗体の産生を誘導しない医薬品担体を包含する、有用な担体、賦形剤又は安定剤を指す。適した担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸及びアミノ酸コポリマー等、大型の徐々に代謝される巨大分子となり得る。多くの場合、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の他の例として、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸を包含する抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等、タンパク質;ポリビニルピロリドン等、親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン等、アミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを包含する、単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTA等、キレート剤;マンニトール又はソルビトール等、糖アルコール;ナトリウム等、塩生成(salt−formimg)対イオン;及び/又は、Tween、ポリエチレングリコール(PEG)及びプルロニック(Pluronic)等、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0160】
[00173]薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩その他等、鉱酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩その他等、有機酸の塩が存在することもできる。
【0161】
[00174]適した担体材料は、局所投与のためのクリーム、ローション、ジェル、エマルジョン又は塗料の基剤として一般に用いられるいずれかの担体又は媒剤を包含する。例として、乳化剤、炭化水素基剤、乳化基剤、非毒性溶媒又は水溶性基剤等の不活性担体が挙げられる。特に適した例として、プルロニック、HPMC、CMC及び他のセルロースに基づく原材料、ラノリン、固形パラフィン、液体パラフィン、黄色軟パラフィン又は白色軟パラフィン、白色蜜ろう、黄色蜜ろう、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ジメチコン、乳化ワックス、ミリスチン酸イソプロピル、微結晶性ワックス、オレイルアルコール並びにステアリルアルコールが挙げられる。
【0162】
[00175]カゼイン、ゼラチン、アルブミン、接着剤、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はポリビニルアルコール等、補助剤を、本発明の製剤において包含することもできる。
【0163】
[00176]本発明の剤形、製剤、機器及び/又は組成物は、延長された期間における等、バイオアベイラビリティを最適化し、治療域内の血漿中濃度を維持するよう製剤化することができる。持続性送達調製物、例えば、制御送達調製物も、例えば、作用部位における薬物濃度を最適化し、薬物療法下の及び薬物療法における期間を最小化する。
【0164】
[00177]本発明において有用な剤形、機器及び/又は組成物は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の1日1回の投与を包含する定期的な投与のために、低用量制御及び/又は低用量持続性in vivo放出のために与えることができる。
【0165】
[00178]経口投与に適した剤形の例として、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を与えることのできる錠剤、カプセル、薬用キャンディーその他の形態又はシロップ、水溶液、エマルジョンその他等のいずれかの液状が挙げられるがこれらに限定されない。
【0166】
[00179]経皮投与に適した剤形の例として、経皮パッチ、経皮包帯その他が挙げられるがこれらに限定されない。本発明における有用な化合物及び製剤の局所投与に適した剤形の例は、皮膚に直接的に適用するのであれ、媒介物(intermed)を介するのであれ、いずれかのローション、スティック(stick)、スプレー、軟膏、ペースト剤、クリーム、ジェル等である。
【0167】
[00180]本発明における有用な化合物及び製剤の坐薬投与に適した剤形の例として、体の穴に挿入されるいずれかの固体剤形、特に、直腸、腟及び尿道に挿入される剤形が挙げられる。
【0168】
[00181]本発明における有用な化合物及び製剤の経粘膜送達に適した剤形の例として、活性原材料に加えて本技術分野において適切であることが知られた担体を含有する、浣腸のための保管(depository)溶液、ペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト剤、泡、噴霧溶液、粉末及び同様の製剤が挙げられる。
【0169】
[00182]本発明における有用な化合物及び製剤の注射に適した投薬形態の例として、静脈内注射、皮下、真皮下及び筋肉内投与又は経口投与による単一若しくは複数投与等、ボーラスによる送達が挙げられる。
【0170】
[00183]本発明における有用な化合物及び製剤のデポー投与に適した剤形の例として、ペレット若しくは小型の円柱の活性薬剤又は固形が挙げられ、活性薬剤は、生分解性ポリマーのマトリックス、マイクロエマルジョン、リポソームに封入される、或いはマイクロカプセル化される。
【0171】
[00184]本発明における有用な化合物及び製剤のための注入機器の例として、所望の量の、所望の用量数又は定常状態投与のための1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び/又は複合前(pre−complex)B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含有する注入ポンプや、植え込み型薬物ポンプが挙げられる。
【0172】
[00185]本発明における有用な化合物及び製剤のための植え込み型注入機器の例として、シリコーン、シリコンゴム、サイラスティック(silastic)又は同様のポリマー等、生分解性ポリマー又は合成ポリマー内における又はそれに分散した活性薬剤がカプセルに包まれたいずれかの固形が挙げられる。
【0173】
[00186]本発明における有用な化合物及び製剤の吸入又はガス注入に適した剤形の例として、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒又はこれらの混合物における溶液及び/又は懸濁液、及び/又は粉末を含む組成物が挙げられる。
【0174】
[00187]本発明における有用な化合物及び製剤の頬側投与に適した剤形の例として、薬用キャンディー、錠剤その他、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒又はこれらの混合物における溶液及び/又は懸濁液、及び/又は粉末を含む組成物が挙げられる。
【0175】
[00188]本発明における有用な化合物及び製剤の舌下投与に適した剤形の例として、薬用キャンディー、錠剤その他、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒又はこれらの混合物における溶液及び/又は懸濁液、及び/又は粉末を含む組成物が挙げられる。
【0176】
[00189]本発明における有用な化合物及び製剤の送達のための制御された薬物製剤の例は、例えば、Sweetman,S.C.(編).Martindale.The Complete Drug Reference、第33版、Pharmaceutical Press、Chicago、2002、2483頁;Aulton,M.E.(編)Pharmaceutics.The Science of Dosage Form Design.Churchill Livingstone、Edinburgh、2000、734頁;及びAnsel,H.C.、Allen,L.V.及びPopovich,N.G.Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott 1999、676頁に見出される。薬物送達系の製造において用いられる賦形剤は、例えば、Kibbe,E.H.Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、American Pharmaceutical Association、Washington、2000、665頁等、当業者に知られた様々な刊行物に記載されている。USPも、錠剤又はカプセルとして製剤化される剤形等、調節放出経口剤形の例を提供する。例えば、持続放出及び遅延放出錠剤及びカプセルの薬物放出能力を決定するための特異的検査についても記載する、米国薬局方(The United States Pharmacopeia)23/国民医薬品集(National Formulary)18、米国薬局方協会(The United States Pharmacopeial Convention、Inc.)、メリーランド州ロックビル、1995(以下「USP」)を参照されたい。持続放出剤形の解析に関する更なる指導が、FDAより提供されている。Guidance for Industry.Extended release oral dosage forms:development,evaluation,and application of in vitro/in vivo correlations.メリーランド州ロックビル:Center for Drug Evaluation and Research、食品医薬品局(Food and Drug Administration)(1997)を参照されたい。
【0177】
[00190]本発明の方法における有用な剤形の更に別の例として、遅延放出(DR)形態;持効性(PA)形態;制御放出(CR)形態;持続放出(ER)形態;徐放(TR)形態;長時間作用性(LA)形態等、調節放出(MR)剤形が挙げられるがこれらに限定されない。大部分において、これらの用語は、経口投与される剤形を説明するために用いられるが、これらの用語は、本明細書に記載されている剤形、製剤、組成物及び/又は機器のうちいずれに適用してもよい。これらの製剤は、薬物投与後の暫時の総薬物放出の遅延、及び/又は投与後の間欠的な少量のアリコートにおける薬物放出、及び/又は送達系により管理された制御された速度での緩徐的な薬物放出、及び/又は変動しない定速における薬物放出、及び/又は通常の製剤よりも有意に長い期間の薬物放出をもたらす。
【0178】
[00191]本発明の調節放出剤形は、従来の又は即時の放出形態によっては達成されない治療又は簡便性の目的を達成するよう設計された時間、経過及び/又は位置に基づく薬物放出特色を有する剤形を包含する。例えば、Bogner、R.H.U.S.Pharmacist 22(増補):3〜12(1997);Scale−up of oral extended−release drug delivery systems:第I部、概説、Pharmaceutical Manufacturing 2:23〜27(1985)を参照されたい。本発明の持続放出剤形は、例えば、従来の剤形、例えば、溶液又は即時放出剤形により提示される頻度に対し投薬頻度の低下をもたらす剤形である、米国食品医薬品局(FDA)に定義される剤形を包含する。例えば、Bogner、R.H.(1997)上記参照、を参照されたい。本発明の復効剤形は、例えば、1種は即時放出、2種目は遅延放出のための2種の単一用量の薬物を含有する形態を包含する。例えば、1層は即時放出のための薬物で、2層目は第2の用量として又は持続放出様式で遅れて薬物を放出するよう設計された、二重層の錠剤を調製することができる。本発明の標的化放出剤形は、例えば、薬物放出を促進し、吸収又は薬物作用のための身体領域、組織又は部位における薬物の単離又は濃縮を対象とする製剤を包含する。
【0179】
[00192]本発明において、コーティングされたビーズ、顆粒又はマイクロスフェアへの薬物の取り込みにより1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び/又は複合前B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の調節放出を達成するために用いることのできる、1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び/又は複合前B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を含有するコーティングされたビーズ、顆粒又はマイクロスフェアも有用である。係る系において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び/又は複合前B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、ビーズ、ペレット、顆粒又は他の粒状系の上に分布する。Ansel,H.C.、Allen,L.V.及びPopovich,N.G.、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott 1999、232頁を参照されたい。
【0180】
[00193]薬物送達に適したマイクロスフェアの製造のための方法が記載されている。例えば、Arshady,R.Polymer Eng Sci 30:1746〜1758(1989)を参照;Arshady,R.、Polymer Eng Sci 30:905〜914(1990)も参照;Arshady R.、Polymer Eng Sci 30:915〜924(1990)も参照されたい。様々なコーティング系が市販されている。例えば、アクアコート(Aquacoat)(商標)[FMC Corporation、Philadelphia]及びシュアリリース(Surerelease)(商標)[Colorcon];アクアコート水性ポリマー分散。Philadelphia:FMC Corporation、1991;シュアリリース水性制御放出コーティング系。West Point、PA:Colorcon、1990;Butler,J.ら、Pharm Tech 22:122〜138(1998);Yazici,E.ら、Pharmaceut Dev Technol 1:175〜183(1996)。
【0181】
[00194]用いるコーティングの厚さ及びコーティング材料の種類の変動は、体液がコーティング中に浸透して、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を溶解することのできる速度に影響を及ぼす。一般に、コーティングが厚い程、浸透に対する抵抗性が高くなり、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の放出及び溶解がより遅くなる。Madan,P.L.U.S.Pharmacist 15:39〜50(1990)を参照されたい。この文献は、異なる所望の持続性又は持続放出速度と、胃腸管の所望の区域へのコーティングされたビーズの標的化とを提供する。水不溶性放出緩徐化中間層(複数可)において用いることのできる(ペレット、球状又は錠剤コアに適用される)膜形成ポリマーの例として、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ユードラジット(Eudragit)(登録商標)RS、ユードラジット(登録商標)RL等が挙げられる(ユードラジット(登録商標)RS及びユードラジット(登録商標)RLはそれぞれ、メタクリル酸アンモニウム(ammonio)コポリマーである)。放出速度は、ラクトース、マンニトール、ソルビトール等、適した水溶性ポア形成体(former)をそこに取り込むことだけではなく、適用されるコーティング層の厚さにより、制御することができる。3〜4mmの間の直径を有し得るミニ錠剤であって、所望のパターンのB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤放出が得られるようゼラチンカプセル殻に置くことのできる小球形の圧縮されたミニ錠剤を包含するマルチ錠剤に製剤化することができる。各カプセルは、一部は即時放出のためにコーティングされておらず、それ以外はB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の持続放出のためにコーティングされた8〜10個のミニ錠剤を含有し得る。
【0182】
[00195]多くの方法を用いて、ヒト及び他の哺乳類への経口投与に適した1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の調節放出剤形を作製することができる。調節放出薬物送達の達成に利用できる2種の基本的な機構は、薬物及び賦形剤の溶解又は拡散の変化を包含する。この文脈において、例えば、次に示す4種のプロセスを同時に、或いは連続的に用いることができる。(i)機器の水分補給(例えば、マトリックスの膨潤);(ii)機器中への水の拡散;(iii)薬物の制御された又は遅延した溶解;及び(iv)機器外への溶解した又は可溶化された薬物の制御された又は遅延した拡散。
【0183】
[00196]投薬値の範囲を策定するために、細胞培養アッセイ及び動物実験を用いることができる。係る化合物の投薬は、集団の少なくとも50%に対し治療上有効な用量であって、このレベルにおける毒性が殆どない又は全くないことを提示する用量内に収まることが好ましい。
【0184】
[00197]本発明の方法及び組成物において用いられるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤それぞれの有効投薬は、用いられる特定のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤又は薬剤、あるとすれば心血管療法組合せパートナー、投与様式、投与頻度、処置されている状態、処置されている状態の重症度、投与経路、処置される患者亜集団の必要又は個々の患者の必要であって、年齢、性別、体重、患者特異的な関連する医学的状態によって異なる可能性のある必要を包含する多くの要因に応じて変動し得る。
【0185】
[00198]適した用量は、約0.01〜約0.5mg/kg体重等、約0.001〜約1又は約10mg/kg体重となり得る。しかし、適した用量は、約0.01〜約0.05mg/kg体重等、約0.001〜約0.1mg/kg体重となり得る。約500〜750マイクログラム及び約750〜1000マイクログラムの用量と同様に、約1〜100、100〜200、200〜300、300〜400及び400〜500ミリグラム(miligram)の用量が適切である。他の有用な用量は、1用量当たり約300〜約1000ピコモル及び1用量当たり約0.05〜約0.2ナノモルを包含する。更に他の用量は、次の請求範囲内に収まる。
【0186】
[00199]例えば、特定の実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤組成物は、約0.01ナノモル濃度(mM)又は0.05nM〜約200nM終濃度で投与することができる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤組成物が、約0.1nM〜約150nM終濃度で投与されることが好ましく、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤組成物が、約1nM〜約100nM終濃度で適用されることがより好ましく、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤組成物が、約10〜20nMから約100〜150nM終濃度で投与されることがより好ましい。その上、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤用量は、例えば、約0.1〜1、1〜2、2〜3、3〜4又は4〜5ミリグラム(mg)、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約30mg、約30〜約40mg、約40〜約50mg、約50〜約75mg、約75〜約100mg、約100mg〜約250mg及び250mg〜約500mgを包含する。上述の通り、500〜約1000ミリグラム以上の用量も提供される。他の用量は、例えば、少なくとも約200ナノグラム、600ナノグラム、2000ナノグラム、6000ナノグラム及び少なくとも約10,000ナノグラム以上等、少なくとも約100ナノグラムからに及ぶ用量を包含する。用量濃度は、例えば、少なくとも約0.3、1.0、3.0及び10.0nモル/L等、1リットル当たり少なくとも約0.1モルの濃度を包含する。用量濃度は、0.1nモル/L、0.3nモル/L、1.0nモル/L、3.0nモル/L及び10.0nモル/Lの濃度も包含する。これらの用量濃度は、0.1、0.3、1、3、11μg/Lに相当し、0.4、1.0、4.0、10及び39マイクログラム/kg(μg/kg)の投与できる体重用量に相当する。0.1〜5.0μg/kg及び0.1〜10.0μg/kgに及ぶ他の用量も本発明の範囲内である。その上、約0.4、1.0、4.0、10及び39μg/kgの用量も本発明の範囲内である。少なくとも約0.4、1.0、4.0、10及び39μg/kgの用量も本発明の範囲内である。
【0187】
[00200]本明細書に記載されている薬剤それぞれの1日当たり約1ナノグラム(ng)/kg〜約1mg/kg体重の間の更に他の投薬レベルが提供される。特定の実施形態において、対象化合物それぞれの投薬は一般に、体重1kg当たり約1ng〜約1マイクログラム、体重1kg当たり約1ng〜約0.1マイクログラム、体重1kg当たり約1ng〜約10ng、体重1kg当たり約10ng〜約0.1マイクログラム、体重1kg当たり約0.1マイクログラム〜約1マイクログラム、体重1kg当たり約20ng〜約100ng、体重1kg当たり約0.001mg〜約0.01mg、体重1kg当たり約0.01mg〜約0.1mg又は体重1kg当たり約0.1mg〜約1mgの範囲内に収まるであろう。特定の実施形態において、対象化合物それぞれの投薬は一般に、約0.001mg〜約0.01mg/kg体重、約0.01mg〜約0.1mg/kg体重、約0.1mg〜約1mg/kg体重の範囲内に収まるであろう。2種以上のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が用いられる場合、各B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投薬は、他方の薬剤と同一範囲である必要はない。
【0188】
[00201]簡便には、注入される場合、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、少なくとも約0.5〜1時間、少なくとも約1〜2時間、少なくとも約2〜4時間、少なくとも約4〜6時間、少なくとも約6〜8時間、少なくとも約8〜10時間、少なくとも約12時間又は少なくとも約24時間投与される。
【0189】
[00202]本明細書に記されている通り、例えば、組み合わせて投与されるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片、ペプチド又はペプチド模倣薬、或いはいずれか一方又は両方と組み合わせて投与される他の心血管治療剤の用量は、単独で投与される場合の用量から下方調整することができる。
【0190】
[00203]発症及び異なる薬剤の効果の持続時間は補完的となり得るため、数種類の薬剤の組み合わせた使用は、いずれかの個々の薬剤に必要とされる投薬を低下させ得る。好ましい実施形態において、2種以上のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片及び/又は心血管治療剤の組み合わせた使用は、相加的、相乗的又は超相加的効果を有する。
【0191】
[00204]一部の事例において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び心血管治療剤又はいずれか一方若しくは両方と組み合わせて投与される他の薬剤の組合せは、相加的効果を有する。他の事例において、組合せは、相加的効果を超える効果を有し得る。係る効果は、本明細書において、「超(supra)相加的」効果として言及されており、この効果は、相乗的又は強化された相互作用によるものとなり得る。
【0192】
[00205]別の好ましい一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤の組み合わせた使用は、前記薬剤が単独で投与される場合の頻度と比較して、前記薬剤が投与される頻度を低下させる。よって、これらの組合せは、所望の治療目標を達成するために以前に必要とされた用量よりも低い及び/又はより少ない用量の各薬剤の使用を可能にする。
【0193】
[00206]用量は、単一又は分割適用で投与することができる。用量は、1回で投与することができる、或いは適用は、反復することができる。通常、投与は、複数の単一投与(adminstration)に加えた又はその代わりの注入により行うことができる。
【0194】
[00207]1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び別の心血管治療剤は、必要であれば、同一又は異なる経路により投与することができる。本発明の様々な薬剤は、治療経過における異なる時点で別々に、或いは分割した又は単一の組合せ形態において同時発生的に投与することができる。
【0195】
[00208]本発明の一態様において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、ある一組成物において投与され、別の心血管治療剤は、第2の組成物において投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片ペプチド剤を含む第1の組成物は、別の心血管治療剤を含む第2の組成物の前に投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片ペプチド剤を含む第1の組成物は、別の心血管治療剤を含む第2の組成物の後に投与される。好ましい一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片ペプチド剤を含む第1の組成物は、別の心血管治療剤を含む第2の組成物の前及び後に投与される。一実施形態において、別の心血管治療剤を含む第2の組成物は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片ペプチド剤を含む第1の組成物の前及び後に投与される。一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片ペプチド剤を含む第1の組成物は、別の心血管治療剤を含む第2の組成物とほぼ同時に投与される。
【0196】
[00209]一部の例においては約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8又は約24時間以上の期間に亘る、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は別の心血管治療剤と共に含む製剤の送達は、例えば経皮製剤及び機器と共に、緩徐放出又はデポー製剤を用いて達成することもできる。
【0197】
[00210]タンパク質の経口バイオアベイラビリティを改善するための戦略は、その親油性及び酵素感受性の修飾によるその物理化学的特性の変化から、胃腸管における内在性輸送担体系により認識される輸送担体分子を用いた新規官能性の追加へと、及び/又は特別に適応した薬物担体系におけるその包含へと及んだ。販売されているポリマーベースの系は、特定の器官/組織の標的化における制御放出において、また、タンパク質及びペプチドを送達するためのその能力において相当な注目を集めた。この系は、標的部位へとタンパク質を有効に送達することができ、よって、副作用を最小化しつつ治療利益を増加させることができる。ポリマー性マイクロ粒子、ナノ粒子、ハイドロゲル又はパッチ等、ポリマーベースの担体とタンパク質の会合は、経口タンパク質バイオアベイラビリティを改善するための有用なアプローチである。ポリマーベースの担体は、胃腸環境からタンパク質を保護することができ、物理化学的及びタンパク質放出特性と、結果的に生物学的挙動のモジュレーションを可能にする。また、経口吸収の改善の展望から、担体の主な効果は、上皮膜透過性を増加して、これにより、より高度なバイオアベイラビリティをもたらすことである。
【0198】
[00211]本発明の化合物及び製剤の剤形において、延長されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤作用は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が剤形から放出される速度に影響を及ぼすことにより、及び/又は胃腸管を通る剤形の移行時間を遅くすることにより達成することができる(Bogner、R.H.、US Pharmacist 22(増補):3〜12(1997)を参照)。固体剤形からの薬物放出の速度は、後述の技術により修飾することができ、この技術は一般に、次の事項に基づく:1)障壁コーティングの使用による、薬物への生体液のアクセスを制御することによる薬物溶解の修飾;2)剤形からの薬物拡散速度の制御;及び3)薬物物質又はその医薬品障壁と部位特異的生体液との間の化学的な反応又は相互作用。このような目的を達成する系も本明細書に提供されている。一アプローチにおいて、放出機構としての消化を用いて、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、腸管へと徐々に消化又は分散される物質でコーティング又はそれに封入される。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の利用能の速度は、分散性材料の消化の速度の関数である。従って、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の放出速度と、従って有効性は、材料を消化する対象の能力に応じて対象毎に変動する。
【0199】
[00212]本発明の化合物及び製剤の緩徐放出剤形の更に別の形態は、例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースの半透膜が、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の放出の制御に用いられる、いずれかの適した浸透圧系である。これらは、放出速度を変化させずに腸内ラッカーの水性分散系でコーティングすることができる。係る浸透圧系の例は、Alza Inc.(米国)により開発されたオロス(Oros)(商標)機器等、浸透圧ポンプ機器である。
【0200】
[00213]本発明の方法において有用な他の機器は、例えば、1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が圧縮又は包埋された、徐々に侵食する又は親水性ポリマーマトリックスを包含する一体型マトリックスを利用する。
【0201】
[00214]本発明における有用な化合物及び製剤を含む一体型マトリックス機器は、例えば、可溶性マトリックスに分散し、マトリックスが溶解又は膨潤するにつれて次第に利用できるようになるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を用いて形成された機器を包含する。その例として、ヒドロキシプロピルセルロース(BP)若しくはヒドロキシプロピルセルロース(USP);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;BP、USP);メチルセルロース(MC;BP、USP);カルシウムカルボキシメチルセルロース(カルシウムCMC;BP、USP);アクリル酸ポリマー若しくはカルボキシポリメチレン(Carbopol)若しくはCarbomer(BP、USP);又は例えば、アルギン酸(アルギン酸塩)−ゼラチンハイドロコロイドコアセルベート系からマイクロ粒子に処方された機器若しくはリポソームがポリ−L−リシン膜によるアルギン酸のコーティングによりカプセルに包まれた機器のような、アルギン酸(BP、USP)等の直鎖状グリクロナン(glycuronan)ポリマー等、親水性コロイドマトリックスが挙げられる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤放出は、ポリマーが膨潤するにつれて行われ、コアへの水性流体(aqueous fluid)の拡散と、従ってこの系からのB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の拡散速度を制御するマトリックス層を形成する。
【0202】
[00215]係る系において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤放出の速度は、例えば、拍動性放出とゼロ次又は一次組合せで異なる放出動態が達成できるような、ゲル内のチャネルの蛇行状の性質と、封入された流体の粘性に依存する。係るゲルが架橋されていない場合、二次結合に依存する、より弱い非永続的な会合がポリマー鎖間に存在する。係る機器により、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の高度な充填が達成でき、有効なブレンドが高頻度となる。機器は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤拡散を増強し得るゲル修飾因子と共に、20〜80%のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(w/w)を含有し得る。係る修飾因子の例として、水分補給の速度を増強し得る糖、架橋の内容に影響し得るイオン及びポリマーイオン化のレベルに影響を及ぼすpHバッファーが挙げられる。親水性マトリックス機器は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び親水性マトリックスに加えて、1種又は複数種のpHバッファー、界面活性剤、対イオン、ステアリン酸マグネシウム(BP、USP)等の潤滑剤及びコロイド性二酸化ケイ素(USP;コロイド性無水シリカ、BP)等の流動促進剤も含有することができる。
【0203】
[00216]本発明における有用な化合物及び製剤を含む一体型マトリックス機器は、例えば、不溶性マトリックスに溶解したB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤粒子を用いて形成された機器も包含し、係る不溶性マトリックスから、多くの場合チャネルを通して、溶媒がマトリックスに侵入するにつれてB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が利用できるようになり、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤粒子を溶解する。例として、カルナウバワックス(BP;USP);分画したヤシ油(BP)若しくはトリグリセリド(triglycerida)飽和媒体(PhEur)等の中鎖脂肪酸トリグリセリド;又はセルロースエチルエーテル若しくはエチルセルロース(BP、USP)から形成された調製物等、脂質マトリックス又は不溶性ポリマーマトリックスにより形成された系が挙げられる。脂質マトリックスは、製造が単純且つ容易であり、次の粉末化構成要素のブレンドを取り込む。放出過程において無傷のままの脂質(20〜40%疎水性固体w/w);B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、製剤から浸出し、そこから溶媒が侵入し、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が放出される水性マイクロチャネル(キャピラリー)を形成する塩化ナトリウム又は糖等のチャネリング剤。この系において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、不活性不溶性ポリマーに包埋され、粒子間に形成されたキャピラリーを通して機器のコアへと拡散する水性流体の浸出により放出され、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤がキャピラリーから機器外に拡散する。放出速度は、圧縮の程度、粒子径並びに賦形剤の性質及び相対含量(w/w)により制御される。係る機器の例は、Ferrous Gradumetの機器である(Martindale第33版、1360.3)。適した不溶性マトリックスの更に別の例は、不活性プラスチックマトリックスである。本方法により、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル又はポリメタクリル酸塩等、不活性プラスチック材料により顆粒化され、次に顆粒化された混合物は、圧縮されて錠剤となる。経口摂取されると、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、不活性プラスチックマトリックスから拡散により徐々に放出される。例えば、Bodmeier,R.&Paeratakul,O.、J Pharm Sci 79:32〜26(1990);Laghoueg,N.ら、Int J Pharm 50:133〜139(1989);Buckton,G.ら、Int J Pharm 74:153〜158(1991)を参照されたい。錠剤の圧縮は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の浸出及び胃腸管の通過においてその形状を保持するマトリックス又はプラスチック形態を生成する。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の即時放出部分は、錠剤の表面に圧縮することができる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤に費やした不活性錠剤マトリックスは、糞便と共に排泄される。この種類の成功した剤形の例は、Gradumet(Abbott;例えば、Ferro−Gradumet、Martindale第33版、1860.4頁を参照)である。
【0204】
[00217]本発明の方法において有用な一体型マトリックス機器の更に別の例として、懸垂(pendent)付着してポリマーマトリックスに取り込まれた本発明の組成物及び製剤が挙げられる。例えば、Scholsky,K.M.及びFitch,R.M.、J Controlled Release 3:87〜108(1986)を参照されたい。これらの機器において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、水性エマルジョン重合により調製されたポリ(アクリル酸)エステルラテックス粒子へとエステル結合により付着させることができる。本発明の一体型マトリックス機器の更にまた別の例は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が、易動性化学的結合により生体適合性ポリマーに結合している剤形を取り込み、例えば、置換された酸無水物(これ自体、酸塩化物を薬物(塩化メタクリロイル及びメトキシ安息香酸のナトリウム塩)と反応させることにより調製される)から調製されたポリ酸無水物を用いて、胃液における加水分解により薬物を放出する第2のポリマー(ユードラジットRL)を有するマトリックスを形成した。Chafi,N.ら、Int J Pharm 67:265〜274(1992)を参照されたい。
【0205】
[00218]1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の調節放出形態は、マイクロカプセル化により調製することもできる。マイクロカプセル化とは、米国特許第3,488,418号、第3,391,416号及び第3,155,590号における開示等、カプセルに包む物質の周りに「壁」材料の薄いコーティングを形成することにより、固体、液体、或いは気体であっても顕微鏡サイズの粒子になるようカプセルに包むことのできるプロセスである。ゼラチン(BP、USP)が、マイクロカプセル化調製物における壁形成材料として通常用いられるが、ポリビニルアルコール(USP)、エチルセルロース(BP、USP)、ポリ塩化ビニル及び他の材料等、合成ポリマーを用いることもできる。例えば、Zentner,G.M.ら、J Controlled Release 2:217〜229(1985);Fites,A.L.ら、J Pharm Sci 59:610〜613(1970);Samuelov,Y.ら、J Pharm Sci 68:325〜329(1979)を参照されたい。異なる速度のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤放出は、コア対壁の比、コーティングに用いるポリマー又はマイクロカプセル化の方法を変化させることにより得ることができる。例えば、Yazici,E.、Onerら、Pharmaceut Dev Technol;1:175〜183(1996)を参照されたい。
【0206】
[00219]他の有用なアプローチは、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤が、貯蔵所及びマトリックス機器の形態でポリマー性コロイド粒子に取り込まれる、或いはマイクロカプセル化される(マイクロ粒子、マイクロスフェア又はナノ粒子)アプローチを包含する。Douglas,S.J.ら、C.R.C.Crit Rev Therap Drug Carrier Syst 3:233〜261(1987);Oppenheim,R.C.、Int J Pharm 8:217〜234(1981);Higuchi,T.、J Pharm Sci 52:1145〜1149(1963)を参照されたい。
【0207】
[00220]経皮送達に適した薬物の製剤は、当業者に知られており、Anselら(上記参照)等の参考文献に記載されている。経皮経路による薬物の送達を増強することが知られた方法は、可逆的損傷により、或いは角質層の物理化学的性質を変化させて、薬物拡散に対するその抵抗性を減少させることにより皮膚透過性を増加させる化学的皮膚浸透賦活薬を包含する。Shah,V.、Peck,C.C.及びWilliams,R.L.、Skin penetration enhancement:clinical pharmacological and regulatory considerations、In:Walters,K.A.及びHadgraft,J.(編)Pharmaceutical skin penetration enhancement.New York:Dekker、(1993)を参照されたい。経皮薬物送達系におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を有する製剤に適した皮膚浸透賦活薬は、次のリストから選ぶことができる。アセトン、ラウロカプラム(laurocapram)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、オレイン酸、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウム。更に別の皮膚浸透賦活薬は、当業者に知られた刊行物に見出すことができる。例えば、Osborne,D.W.&Henke,J.J.、Pharm Tech 21:50〜66(1997);Rolf,D.、Pharm Tech 12:130〜139(1988)を参照されたい。化学的手段に加えて、本発明の化合物及び製剤の経皮薬物送達及び浸透を増強させる物理的方法も存在する。物理的方法は、イオン泳動及びソノフォレーシスを包含する。イオン泳動又はソノフォレーシスによる投与に適した製剤は、ジェル、クリーム又はローションの形態となり得る。
【0208】
[00221]本発明の経皮送達、方法又は製剤は、とりわけ、一体型送達系、薬物含浸接着性送達系(例えば、ラティチュード(Latitude)(商標)drug−in adhesive system from 3M)、能動輸送機器及び膜制御系を利用することができる。本発明の経皮送達剤形は、例として、米国特許第6,193,996号及び第6,262,121号に開示されている経皮送達系において言及されるジクロフェニク(diclofenic)又はその他の薬学的に許容される塩の代わりにB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を用いた剤形を包含する。
【0209】
[00222]他の剤形は、坐薬又は他の非経口用途に適応した経口剤形の変種を包含する。坐薬の形態で直腸投与する場合、例えば、このような組成物は、本発明の1種又は複数種の化合物及び製剤を、常温では固体であるが直腸腔において液化及び/又は溶解してB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を放出するカカオバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコール等の適した非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。坐薬は一般に、直腸、腟、時には尿道等の体の穴への挿入に企図された固体剤形であり、長時間作用性又は緩徐放出となり得る。坐薬は、数時間(5〜7)に亘り薬学的に許容される活性原材料の放出を延ばすアルギン酸等の材料を挙げることができるがこれに限定されない基剤を包含する。
【0210】
[00223]本発明における有用な化合物及び製剤の経粘膜投与は、いかなる粘膜を利用することもできるが、通常、鼻、頬側、腟及び直腸組織を利用する。本発明の化合物及び製剤の経鼻投与に適した製剤は、B型シグナルペプチド断片剤の水性又は油性溶液を包含する液状、例えば、経鼻スプレー、点鼻薬において又は噴霧器によるエアロゾル投与により投与することができる。担体が固体である経鼻投与のための製剤は、例えば、約100ミクロン未満の、好ましくはより少なく、最も好ましくは、1日1又は2回で約50ミクロン未満の粒子径を有する粗い粉末を包含し、これは、鼻からの吸い込み(snuff)が為される様式で、即ち、鼻に寄せて保持した粉末の容器から鼻道を通した急速な吸入により投与される。溶液中の組成物は、不活性ガスの使用により噴霧することができ、係る噴霧溶液は、噴霧機器から直接的に吸い込むことができる、或いは噴霧機器は、フェイス・マスク、テントに取り付けることができる、或いは断続的なB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、適切な様式で製剤を送達する機器から経口又は経鼻投与することができる。製剤は、例えば、生理食塩水における水溶液、ベンジルアルコール又は他の適した保存料、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン及び/又は本技術分野において公知の他の可溶化若しくは分散剤を用いる溶液として調製することができる。
【0211】
[00224]組成物は、希釈剤にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(複数可)原材料の量を溶解又は懸濁することにより、従来の方法に従って調製することができる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の量は、希釈剤1ml当たり0.1mg〜1000mgである。一部の実施形態において、100mg及び200mgのB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の剤形が提供される。単なる例として、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の量は、約1mg〜約750mg以上(例えば、約1mg、約10mg、約25mg、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約400mg、約500mg、約600mg、約750mg、約800mg、約1000mg及び約1200mg)に及び得る。他の用量は、例えば少なくとも約200ナノグラム、600ナノグラム、2000ナノグラム、6000ナノグラム及び少なくとも約10,000ナノグラム以上等、少なくとも約100ナノグラムからに及ぶ用量を包含する。用量濃度は、例えば、少なくとも約0.3、1.0、3.0及び10.0nモル/L等、1リットル当たり少なくとも約0.1モルの濃度を包含する。用量濃度は、0.1nモル/L、0.3nモル/L、1.0nモル/L、3.0nモル/L及び10.0nモル/Lの濃度も包含する。これらの用量濃度は、0.1、0.3、1、3、11μg/Lに相当し、0.4、1.0、4.0、10及び39マイクログラム/kg(μg/kg)の投与できる体重用量に相当する。0.1〜5.0μg/kg及び0.1〜10.0μg/kgに及ぶ他の用量もまた、本発明の範囲内である。その上、約0.4、1.0、4.0、10及び39μg/kgの用量は、本発明の範囲内である。少なくとも約0.4、1.0、4.0、10及び39μg/kgの用量もまた本発明の範囲内である。これらの範囲内の他の量を用いることもでき、その間の各数値が明示的に設定されていなくても特に考慮される。
【0212】
[00225]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、1日に1回の投薬に適した形態で提供及び投与することができる。酢酸、リン酸、クエン酸又はグルタミン酸バッファーを添加して、最終組成物のpHを約5.0〜約9.5とすることができる。必要に応じて、炭水化物又は多価アルコール等張化因子(tonicifier)と、m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチル、エチル、プロピル及びブチルパラベン並びにフェノールからなる群から選択される保存料を添加することもできる。必要であれば、注射のための水、塩化ナトリウム等の等張化剤と共に他の賦形剤が存在してもよい。非経口投与のため、製剤は、投与部位における刺激及び疼痛を回避するために等張性又は実質的に等張性である。
【0213】
[00226]用語、バッファー、バッファー溶液及び緩衝溶液は、水素イオン濃度又はpHに関して用いられる場合、酸若しくはアルカリ添加又は溶媒による希釈によるpHの変化に抵抗する系、特に水溶液の能力を指す。酸又は塩基の添加により生じるpHの変化が小さい緩衝溶液の特徴は、弱酸及び弱酸の塩か、弱塩基及び弱塩基の塩のいずれかの存在である。前者の系の例は、酢酸及び酢酸ナトリウムである。pHの変化は、添加されるヒドロキシルイオンの量が、バッファー系がこれを中和する能力を超えない間は僅かである。
【0214】
[00227]およそ5.0〜約9.5の範囲内における製剤のpHの維持は、本発明の非経口製剤の安定性を増強することができる。他のpH範囲は、例えば、約5.5〜約9.0又は約6.0〜約8.5又は約6.5〜約8.0、或いは好ましくは、約7.0〜約7.5を包含する。
【0215】
[00228]用いられるバッファーは、次に挙げる、例えば酢酸バッファー、リン酸バッファー又はグルタミン酸バッファーのうちいずれかから選択することができ、最も好ましいバッファーは、リン酸バッファーである。担体又は賦形剤を用いて、本発明の組成物及び製剤の投与を容易にすることもできる。担体及び賦形剤の例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース若しくはスクロース等の様々な糖又は種々の澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコール及び生理的に適合性の溶媒が挙げられる。安定剤が包含されていてもよいが、一般にその必要はない。しかし、包含される場合、本発明の実施において有用な安定剤の例は、炭水化物又は多価アルコールである。多価アルコールは、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、キシリトール及びポリプロピレン/エチレングリコールコポリマー並びに分子量200、400、1450、3350、4000、6000及び8000)の様々なポリエチレングリコール(PEG)といった化合物を包含する。炭水化物は、例えば、マンノース、リボース、トレハロース、マルトース、イノシトール、ラクトース、ガラクトース、アラビノース又はラクトースを包含する。
【0216】
[00229]等張性薬剤又は等張性を維持するための薬剤を用いる又は包含することもできる。
【0217】
[00230]米国薬局方(USP)は、静細菌的又は静真菌的濃度の抗菌剤を、複数用量容器に収容された調製物に添加しなければならないと記述する。抗菌剤は、皮下針及びシリンジにより、或いはペン型注射器等、送達のための他の侵入的手段を用いて内容物の一部を引き抜く際に、調製物中に不注意により導入された微生物の増殖を防ぐため、使用時に適切な濃度で存在する必要がある。抗菌剤は、処方物中の他のあらゆる構成要素との適合性を確実にするよう評価するべきであり、その活性は、ある製剤において有効である特定の薬剤が、別の製剤において無効ではないことを確実にするよう処方全体において評価するべきである。特定の薬剤が、ある製剤において有効であるが、別の製剤において有効ではないことが見出されるのは珍しいことではない。本発明の実施における使用のための保存料は、0.005〜1.0%(w/v)に及び得るが、単独の又は他の保存料と組み合わせた各保存料の好ましい範囲は、ベンジルアルコール(0.1〜1.0%)又はm−クレゾール(0.1〜0.6%)又はフェノール(0.1〜0.8%)又はメチル(0.05〜0.25%)及びエチル若しくはプロピル若しくはブチル(0.005%〜0.03%)パラベンの組合せである。パラベンは、パラ−ヒドロキシ安息香酸の低級アルキルエステルである。各保存料の詳細な説明は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」と共にPharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、1巻、1992、Avisら、に説明されている。このような目的のため、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及び媒剤を含有する投薬単位製剤において、非経口的に(皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内注射又は注入技法を包含)又は吸入スプレーにより投与することができる。
【0218】
[00231]必要であれば、非経口製剤は、メチルセルロース等、濃厚化剤により濃厚化(thicken)することができる。製剤は、油中水又は水中油いずれかの乳化形態で調製することができる。例えば、アカシア(acacia)粉末、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤等、多種多様な薬学的に許容されるいかなる乳化剤が用いられてもよい。適した分散又は懸濁剤を医薬品製剤へと添加することも望ましくなり得る。このような薬剤は、例えば、合成及び天然のガム、例えば、トラガント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン又はゼラチン等の水性懸濁液を包含し得る。
【0219】
[00232]他の原材料が、本発明において有用な非経口医薬品製剤において存在することも可能である。係る追加的な原材料は、湿潤剤、油(例えば、ゴマ、ピーナッツ又はオリーブ等、植物油)、鎮痛剤、乳化剤、抗酸化剤、増量剤(bulking agent)、浸透圧修飾因子、金属イオン、油性媒剤、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リシン及びヒスチジン等、アミノ酸)を包含し得る。係る追加的な原材料は、当然ながら、本発明の医薬品製剤の全体的な安定性に有害に作用してはならない。医薬品製剤に関しては、Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、1巻、第2版、Avisら、編、Mercel Dekker、ニューヨーク州ニューヨーク 1992も参照されたい。
【0220】
[00233]非経口投与の適した経路は、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、真皮下、皮内、関節内、くも膜下腔内その他を包含する。粘膜送達も許容できる。用量及び投薬レジメンは、対象の体重及び健康に依存するであろう。
【0221】
[00234]延長された薬物作用を達成する上述の手段に加えて、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤送達の速度及び持続時間は、例えば、機械的に制御された薬物注入ポンプを用いることにより制御することができる。
【0222】
[00235]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤(複数可)は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の持続性放出を可能にするような様式で製剤化され得るデポー注射の形態で投与することができる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、ペレット又は小型の円柱へと圧縮し、皮下又は筋肉内に植え込むことができる。ペレット又は円柱は、その上、所望の放出プロファイルを達成するよう選ばれた適した生分解性ポリマーでコーティングすることができる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、或いは、マイクロペレット化することができる。生体許容できる(bioacceptable)ポリマーを用いたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤マイクロペレットを設計し、放出速度を操作して、所望の放出プロファイルを達成することができる。或いは、ポリラクチド−ポリグリコリド等、生分解性ポリマーにおけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤のマイクロカプセル化したマトリックスを形成することにより、注射用デポー形態を作製することができる。ポリマーに対するB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の比率と、用いる特定のポリマーの性質に依存して、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤放出の速度を制御することができる。デポー注射用製剤は、リポソームにB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を封入することにより調製することもでき、リポソームの例として、単層膜小胞、大型の単層膜小胞及び多重膜小胞が挙げられる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等、種々のリン脂質から生成することができる。デポー注射用製剤は、身体組織と適合性のマイクロエマルジョンにB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を封入することにより調製することもできる。例として、米国特許第6,410,041号及び第6,362,190号について参照する。
【0223】
[00236]植え込み型注入機器は、上に収載されている生分解性ポリマー又は合成シリコーン、例えば、cylastic、シリコンゴム若しくはDow−Corning Corporationにより製造される他のポリマー等、不活性材料を用いることができる。ポリマーは、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及びいずれかの賦形剤を負荷することができる。植え込み型注入機器は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及びいずれかの賦形剤を負荷したポリマーを含むコーティングであって、医療機器のコーティング又はその一部を含むこともできる。係る植え込み型注入機器は、所望の投薬量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及びいずれかの賦形剤を含む溶液と共にポリマーを含有するin vivo生体適合性及び生分解性又は生体吸収性又は生体腐食性(bioerodibleerodible)の液体又はゲル溶液で機器をコーティングすることにより、米国特許第6,309,380号に開示されている通りに調製することができる。溶液は、医療機器に接着するフィルムへと転換され、これにより植え込み型B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を送達できる医療機器を形成する。植え込み型注入機器は、米国特許第6,120,789号に開示されている固体マトリックスを含有するB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤のin situ形成により調製することもできる。植え込み型注入機器は、本技術分野において公知の通り、受動的であっても能動的であってもよい。
【0224】
[00237]マイクロエマルジョン、即ち、親水相、親油相、少なくとも1種の界面活性剤(SA)及び少なくとも1種の補助界面活性剤(CoSA)で構成された流体及び安定的均質溶液等もまた、本発明の方法において有用である。適した界面活性剤の例として、モノ、ジ及びトリグリセリド並びにポリエチレングリコール(PEG)モノ及びジエステルが挙げられる。場合により「共表面活性薬」としても知られる補助界面活性剤は、マイクロエマルジョンにおける水性及び油性相の相互可溶化をもたらすよう企図された、疎水性の性状を有する化合物である。適した補助界面活性剤の例として、エチルジグリコール、プロピレングリコールのラウリン酸エステル、ポリグリセロールのオレイン酸エステル及び関連する化合物が挙げられる。
【0225】
[00238]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、粘膜表面への接着を増加させ、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の加水分解又は酵素による分解による分解速度を減少させ、粒子のサイズに対するB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の表面積を増加させることによりバイオアベイラビリティを増強するための様々なポリマーを用いて送達することもできる。適したポリマーは、天然であっても合成であってもよく、生分解性であっても非生分解性であってもよい。例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤等、低分子量活性薬剤の送達は、ポリマー系の拡散又は分解(degredation)のいずれかにより行われ得る。代表的な天然のポリマーとして、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン及びコラーゲン等のタンパク質や、セルロース、デキストラン及びポリヒアルロン酸等の多糖が挙げられる。分解及び放出プロファイルのより優れた特徴付けのため、合成ポリマーが一般に好ましい。代表的な合成ポリマーとして、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリル酸塩、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びこれらのコポリマーが挙げられる。適したポリアクリル酸塩の例として、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)及びポリ(アクリル酸オクタデシル)が挙げられる。合成により修飾された天然のポリマーは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル及びニトロセルロース等、セルロース誘導体を包含する。適したセルロース誘導体の例として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース及びセルロース硫酸ナトリウム塩が挙げられる。上述のポリマーのそれぞれは、Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス、Polysciences、ペンシルベニア州ウォレントン、Aldrich Chemical Co.、ウィスコンシン州ミルウォーキー、Fluka、ニューヨーク州ロンコンコマ及びBioRad、カリフォルニア州リッチモンド等、商業的供給源から得ることができる、或いは上述のサプライヤーから得られるモノマーから標準技法を用いて合成することができる。
【0226】
[00239]上述のポリマーは、生分解性、非生分解性及び生体接着性ポリマーとして別々に特徴付けることができる。代表的な合成の分解性ポリマーとして、ポリラクチド、ポリグリコリド及びこれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル並びにこれらのブレンド及びコポリマー等、ポリヒドロキシ酸が挙げられる。代表的な天然の生分解性ポリマーとして、単独の又は合成ポリマーと組み合わせた、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース等の多糖、コラーゲン及びこれらの化学的誘導体(化学基、例えば、アルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化及び当業者によりルーチンに行われる他の修飾)並びにアルブミン、ゼイン等のタンパク質、並びにこれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。非生分解性ポリマーの例として、エチレン酢酸ビニル、ポリ(meth)アクリル酸、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフェノール並びにこれらのコポリマー及び混合物が挙げられる。親水性ポリマー及びハイドロゲルは、生体接着特性を有する傾向がある。カルボキシル基を含有する親水性ポリマー(例えば、ポリ[アクリル酸])は、最良の生体接着特性を提示する傾向がある。軟組織における生体接着性が望ましい場合、最高濃度のカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びメチルセルロース等、様々なセルロース誘導体も生体接着特性を有する。これらの生体接着材料の一部は水溶性であるが、他の材料はハイドロゲルである。ヒドロキシプロピルメチル酢酸コハク酸セルロース(HPMCAS)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピル酢酸フタル酸セルロース(HPCAP)、ヒドロキシプロピルメチル酢酸フタル酸セルロース(HPMCAP)及びメチル酢酸フタル酸セルロース(MCAP)等、ポリマーを利用して、それと複合体形成することのできるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤のバイオアベイラビリティを増強することができる。滑面が侵食されるにつれてそのカルボキシル基が外表面に露出する、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ酸無水物及びポリオルトエステル等、急速な生体腐食性ポリマーは、生体接着性B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤送達系に用いることもできる。加えて、ポリ酸無水物及びポリエステル等、易動性結合を含有するポリマーは、その加水分解反応性に関してよく知られている。その加水分解速度は、一般に、ポリマー骨格の単純な変化により変化し得る。分解により、これらの材料も、カルボキシル基をその外表面に露出し、Bナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤送達系として用いることもできる。
【0227】
[00240]1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤のバイオアベイラビリティ又は吸収を増強し得る他の薬剤は、腸管粘膜を通した輸送を促進又は阻害することにより作用することができる。例えば、血管拡張薬等、血流を増加させる薬剤は、胃腸管への血流を増加させることにより、経口投与されたB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の吸収速度を増加させることができる。血管拡張薬は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤のバイオアベイラビリティを増強し得る薬剤の別のクラスを構成する。
【0228】
[00241]本発明において有用な組成物及び製剤のバイオアベイラビリティを増強させる他の機構は、逆向き能動輸送機構の阻害を包含する。例えば、現在、腸管上皮細胞に存在する能動輸送機構の1種は、上皮細胞の内側に拡散された又は輸送した物質を腸管の管腔内に戻す逆向き輸送を促進するp−糖タンパク質輸送機構であると考えられている。このp−糖タンパク質による能動輸送系を阻害することにより、管腔へと戻し輸送される薬物が少なくなり、よって、腸上皮に亘る正味の薬物輸送を増加させ、血液において最終的に利用できる薬物の量を増加させるであろう。様々なp−糖タンパク質阻害剤がよく知られており、本技術分野において認められている。阻害剤は、水溶性ビタミンE;ポリエチレングリコール;プルロニックF−68等、ポロクサマー;ポリエチレンオキシド;クレモフォア(Cremophor)EL及びクレモフォアRH40等、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;クリシン、(+)−タキシフォリン;ナリンゲニン;ジオスミン;ケルセチン;その他を包含する。
【0229】
[00242]よって、送達期間は、状態及び薬剤及び望ましい治療効果の両方に依存するであろうが、約0.5〜1時間、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8又は約24時間以上の継続的又は緩徐放出送達が提供される。本発明に従って、薬学的に許容される担体又は媒剤と共に、特に、継続的又は緩徐放出投与のための製剤の形態の製剤におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤単独の又は別の心血管治療剤と一体の包含により、この送達が達成される。
【0230】
[00243]記載されている通り、本発明の1種又は複数種の薬剤は、対象内又は表面における手技、例えば、血管形成手技又はステント留置等の他の物理的介入の前、間、直後に投与することができる。薬剤は、例えば、手技の前及び/又は間に、或いは、例えば手技後約24、約12、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2時間以内又は約60、約45、約30、約15、約10、約5、約4、約3、約2、約1分間以内に投与されることが好ましい。
【0231】
[00244]熟練の内科医であれば、いずれかの特定の患者及び状態に対する投与及び投薬の最適の経路を検討するであろうことから、本明細書に記載されている投与及び投薬の経路は、単なる指針として企図されている。
【0232】
[00245]心血管障害である又はそのリスクがある対象を処置する方法のいずれかは、本明細書に記載されている用量、剤形、製剤及び/又は組成物いずれかの投与を利用することができる。
医薬品組成物
【0233】
[00246]本発明は、心血管障害を予防及び/又は処置するための医薬品組成物及びその使用方法を対象にし、係る組成物は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は別の心血管治療剤と共に含む。
【0234】
[00247]従って、一態様において、本発明は、少なくとも1種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は別の心血管治療剤と共に含む又はこれのみから実質的になる、心血管障害の予防及び/又は処置における使用のための組成物を提供する。好ましい実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体又は媒剤を更に含む。
【0235】
[00248]好ましい一形態において、組成物は、1種又は複数種のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片ペプチド剤を含有する。薬剤は、BNPsp(17〜26)(配列番号1)であることが最も好ましい。
キット、医薬及び製造品
【0236】
[00249]B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、心血管障害並びに関連障害及び状態を予防及び/又は処置するための医薬の製造において用いることもできる。
【0237】
[00250]一態様において、本発明は、記載されている1種又は複数種の組成物又は製剤を含む、心血管障害を予防及び/又は処置するためのキットを提供する。例えば、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は1種若しくは複数種の心血管治療剤と組み合わせて含む組成物を含むキットを包含する。例えば、キットは、有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び次のうち1種又は複数種を含む組成物を包含し得る:ナイトレート、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬(特に、安定又は不安定狭心症のため、但しβ遮断薬の場合は心不全のため);利尿剤、血管拡張剤、正の変力物質、ACE阻害剤及びアルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトン(特に、心不全のため);抗凝血療法(例えば、アスピリン、ヘパリン、ワルファリン)及びニトログリセリン(特に、MIのため)。キットは、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は1種若しくは複数種の抗血栓溶解療法(例えば、ストレプトキナーゼ阻害剤、例えばクロピドグレル等の抗血小板療法)と組み合わせて(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)含む又はこれのみから実質的になる組成物を包含することもできる。キットは、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で、或いは例えばネシリチド及び/又は組換え型のB型ナトリウム利尿ペプチド等、B型ナトリウム利尿ペプチドと組み合わせて(例えば、組み合わせた調製物として提供される物理的組合せ)包含することもできる。
【0238】
[00251]本明細書に記載されている本発明の組成物又は製剤(いずれかの用量又は用量形態又は機器における)を収容する容器と、対象の処置のための使用説明書とを含む製造品も提供される。例えば、別の一態様において、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を単独で又は1種若しくは複数種の他の心血管治療剤と組み合わせて収容する容器を含む製造品を包含する。
処置
【0239】
[00252]本発明の組成物及び製剤は、心血管障害並びに関連障害及び状態を予防及び/又は処置するために用いることができる。
【0240】
[00253]本発明は、本明細書に記載されている化合物又は医薬品組成物のうち1種又は複数種の治療上有効量を対象に投与するステップを含む、心血管疾患、障害又は状態である又はその発症リスクのある対象の処置方法も包含する。非限定的な一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、虚血及び/又は酸化ストレスに関連する。一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、急性冠症候群、例えば、ST部分上昇型心筋梗塞、非ST部分上昇型心筋梗塞又は不安定狭心症である。別の一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、心不全である。他の実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、虚血性心疾患である。別の一実施形態において、心血管疾患、障害又は状態は、安定狭心症である。
【0241】
[00254]本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤及び薬学的に許容される担体を含む、心血管疾患、障害又は状態である又はその発症リスクのある対象を処置する方法を包含する。一実施形態において、医薬品組成物におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、BNPsp(17〜26)(配列番号1)である。別の一実施形態において、医薬品組成物におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片は、配列番号2〜9から選択される配列を含む又はこれのみから実質的になる。別の一実施形態において、医薬品組成物におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII及び/又は式VIIIから選択される配列を含む又はこれのみから実質的になる。B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、本明細書に記載されているB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の活性アナログ、変種、切断型及び修飾型も包含する。
【0242】
[00255]別の一態様において、本発明は、対象におけるB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片活性を増加させることにより、対象における虚血及び/又は酸化ストレスに関連する心血管疾患、障害又は状態を処置及び/又は予防する方法を包含する。この方法は、例えば、配列番号1〜9から選択される配列を含む若しくはこれのみから実質的になるBNPsp断片又は式I〜VIIIのいずれかに従ったペプチドを含む若しくはこれのみから実質的になるペプチド、或いはこれらのアナログ、変種、切断型若しくは修飾等、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤、例えば、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片又はB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片を含む組成物を対象に投与することにより達成することができる。特定の実施形態において、上述の用量が利用される。他の実施形態において、約0.01〜約100、500又は1000ミリグラム以上(例えば、少なくとも約100ミリグラム、少なくとも約500ミリグラム又は少なくとも約1000ミリグラム)のBNPsp断片又はB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片アナログ、例えば、配列番号1〜9から選択される配列を含む若しくはこれのみから実質的になるBNPsp断片又は式I〜VIIIのいずれかに従ったペプチドを含む若しくはこれのみから実質的になるペプチドが、1日当たりの単一又は分割用量で、或いは例えば持続注入により投与される。
【0243】
[00256]別の一態様において、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を患者に投与するステップを含む、急性冠症候群を患う患者を処置する方法であって、患者が、Q波MI又はSTEMIを患っていない方法を包含する。本方法の特定の実施形態において、患者は、不安定狭心症を患っている。本方法の別の一実施形態において、患者は、非Q波心臓壊死を患っている。本方法の更に別の一実施形態において、患者は、0.4ng/ml以下の血中トロポニンIレベルを有する。本方法の更にまた別の一実施形態において、患者は、0.1ng/ml以下の血中トロポニンTレベルを有する。本方法の更にまた別の一実施形態において、患者は、上昇した血中クレアチンキナーゼを示さない。本方法の更に別の一実施形態において、患者は、ST部分上昇を示さない。本方法の更にまた別の一実施形態において、患者は、病的Q波を提示しない。本方法の別の一実施形態において、患者は、次の症状のうち1種又は複数種を提示する:15分間を超える持続時間の胸痛(chest rain)、安静時胸痛又は舌下ナイトレートに対する応答性が乏しい最小労作後の胸痛。
【0244】
[00257]一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、単一用量で投与される。別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、2以上の用量で投与される。更にまた別の一実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、期間、例えば所定の期間に亘り継続的に投与される。更に別の一実施形態において、グルコース若しくはカリウム塩又はこれらの組合せは、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と同時投与される。
【0245】
[00258]別の一態様において、本発明は、治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を個体に投与するステップを含む、患者の処置のための方法であって、投与が、次の症状のうち1種又は複数種の発症後に行われる方法を包含する:15分間より長く持続する胸痛、安静時胸痛、最小労作後の胸痛、悪心、息切れ、動悸又は眩暈。他の実施形態において、患者は、症状(単数又は複数)の発症前にQ波MI又はSTEMIを患っていなかった;患者は、不安定狭心症を患っている;患者は、非Q波心臓壊死を患っている;患者は、0.4ng/ml以下の血中トロポニンIレベルを有する;患者は、0.1ng/ml以下の血中トロポニンTレベルを有する;患者は、上昇した血中クレアチンキナーゼ心筋アイソエンザイムを示さない;患者は、ST部分上昇を示さない;患者は、病的Q波を提示しない;投与は、1種又は複数種の症状の発症時と、患者がQ波MI又はSTEMIを患っているときとの間に行われる。別の一実施形態において、方法は、患者がQ波MI又はSTEMIを患っているときにB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を継続するステップを更に含む。更にまた別の一実施形態において、方法は、患者がQ波MI又はSTEMIを患っているときの後にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を継続するステップを更に含む。本方法の他の実施形態において、患者は、虚血性心疾患である、或いは虚血性心疾患の発症リスクがある。本方法の更に別の一実施形態において、患者は、次の心臓異常、即ち、うっ血性心不全、僧帽弁逆流による心雑音の悪化又は心伝導撹乱のエビデンスのうち1種又は複数種を有する。他の実施形態において、患者は、正常ECGを有する。本方法の別の一実施形態において、患者は、安定狭心症を有する。方法の他の実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、単一用量で投与される、或いは2以上の用量で投与される、或いは継続的に投与される。本方法の追加的な実施形態において、グルコース若しくはカリウム塩又はこれらの組合せが、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と同時投与される。
【0246】
[00259]本発明は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤の投与を含む、安定狭心症を患う患者を処置するための方法も包含する。更に別の実施形態において、投与は、所定の期間等の期間に亘り継続的である。
【0247】
[00260]本発明は、血管形成手技の間に患者にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む、それを必要とする患者において血管形成術を行うための方法も提供する。更に別の実施形態において、方法は、血管形成手技の前に患者にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む又は更に含む。更に別の実施形態において、方法は、血管形成手技の後に患者にB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む又は更に含む。他の実施形態において、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤は、血管形成手技の前、間及び/又は後に、いずれかの組合せで患者に投与される。
【0248】
[00261]本発明は、Q波MI又はSTEMIを患っていない患者に治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む、次の症状:悪心、息切れ、動悸又は眩暈のうち1種又は複数種を提示する患者であって、更には胸痛を提示しない患者等、虚血性心疾患である又は虚血性心疾患発症のリスクがある患者の処置のための方法も包含する。本方法の別の一実施形態において、患者は、正常ECGを有する。
【0249】
[00262]次の症状:15分間より長く持続する胸痛、安静時胸痛、最小労作後の胸痛、悪心、息切れ、動悸又は眩暈のうち1種又は複数種の発症後に治療上有効量のB型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤を投与するステップを含む、心臓窮迫の最初の症状の後に血栓溶解療法が有効となる時間を増加させるための方法も提供される。
【0250】
[00263]別の一態様において、処置される対象は、哺乳類、好ましくはヒトである。他の哺乳類は、イヌ、ウマ及びネコ等、飼育動物及び家畜並びに動物園の動物、スポーツ用動物又は愛玩動物を包含する。
【0251】
[00264]一態様において、本発明は、B型ナトリウム利尿シグナルペプチド断片剤と、必要に応じて別の心血管治療剤の持続性の投与を対象にする。一実施形態において、薬剤(複数可)は、少なくとも約0.5時間、約1〜24時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間又は少なくとも約24時間投与される。
【0252】
[00265]本明細書に参照又は記載されている疾患、障害及び/又は状態である又はそうであると疑われる又はその素因がある対象を処置する方法のいずれかは、本明細書に記載されている用量、剤形、製剤、組成物及び/又は機器いずれかの投与を利用することができる。
【0253】
[00266]例証目的であって、決して本発明又は特許請求の範囲の限定を企図しない次の非限定的な実験の節を参照することにより、本発明のより良い理解が得られるであろう。データは、記載されている通り、心血管疾患、障害及び状態の処置のために本明細書に記載されている化合物及び組成物の使用を支持する。
【実施例】
【0254】
[00267]データは、BNPsp(17〜26)が、循環から急速に排除されることを示す。しかし、予想外且つ驚くべきことに、BNPsp(17〜26)等、化合物が、例えば、例として実験的な心虚血及び梗塞において保護/治療剤として作用し得ることが発見された。
【0255】
[00268]不安定狭心症、例えば、その時点で実際の梗塞を患っているにしろ、患っていないにしろACSスペクトル内の障害等、心血管障害である個体に対する本発明の化合物の投与の効力を検査するために、動物モデルを用いることができる。ラットモデル及びヒツジモデルは、この目的に特に十分に適していることが判明した。ラットにおいて、40分間の虚血期間の最後の3分間に、続いて2時間の再灌流期間の間中に投与されたBNPsp(17〜26)は、梗塞サイズを有意に低下させ(−30%)、ラットはまた、有意に改善された血行動態を有した。ヒツジにおいて、BNPsp(17〜26)の投与は、重篤とまではいかない(subcritical)虚血期間後の再灌流におけるスタンニング期間を有意に低下させた。
【0256】
[00269]例えば、BNPsp(17〜26)及び他のBNPsp断片等、本発明の化合物の心保護的特性を示す方法が提供される。例として、in vitro単離されたラット心臓虚血モデル及び心筋梗塞のin vivoヒツジモデルにおいて心臓保護を示す実験が挙げられる。
実施例1
ラット心臓虚血モデル
【0257】
[00270]単離されたラット心臓。250g〜350gの重さの雄スプラーグドーリー(Sprague−Dawley)ラットをペントバルビタール・ナトリウム(50mg/kg i.p.)により麻酔し、断頭により屠殺した。以前に記載された通りに、単離されたランゲンドルフ灌流されたラット心臓セットアップを調製した。Pembertonら、Ghrelin induces vasoconstriction in the rat coronary vasculature without altering cardiac peptide production.Am J.Physiol(Heart and Circ.Physiology)2004 287:H1522−H1529;Piuholaら、Direct Cardiac actions of erythropoietin(EPO):effects on cardiac contractility,BNP secretion and ischemia−reperfusion injury.Clinical Science 2008 114:293〜304。
【0258】
[00271]左心室拡張終期圧(LVEDP)、最大圧(DP)並びに左心室圧の最大及び最小微分値(derivative)(それぞれ+dP/dtmax及び−dP/dtmin)を、左心室における液体を充填したバルーンにより測定した。大動脈根の上のサイドアーム(side arm)カニューレにより灌流圧をモニターした。蠕動ポンプ(Gilson Minipuls、モデルMP−2)により12mL/minの一定の流速を維持した。オタゴ大学医学部クライストチャーチ校(Christchurch School of Medicine,University of Otago)の動物倫理委員会は、実験プロトコールを認可した。試験は、米国国立衛生研究所(US National Institutes of Health)により発表された実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従う(NIH publication no.85−23、1996年改訂)。
【0259】
[00272]虚血−再灌流プロトコール。虚血−再灌流実験の調製物を、右心房に置いた双極電極を用いた刺激装置(Digitimer Ltd.、イギリス)によりペーシングした(15V、1ms、300bpm)。心臓が配置された加湿チャンバーにおける温度をモニターして、実験を通じて35〜37℃の間に維持した。この実験セットにおいて、増加用量のBNPsp(17〜26)の心保護的効果を評価した(0.1、0.3、1.0、3.0及び10.0nモル/L)。これらの用量は、約0.1、0.3、1.0、3.0及び10〜11μg/Lに相当し、約400、1000、4000、10,000及び39,000ng/kg又は約0.4、1.0、4.0、10及び39マイクログラム/kgの投与できる体重用量に相当する。2通りの戦略下で用量を比較した。(1)45分間の全虚血の前のプレコンディショニング効果(「PRE」)及び(2)120分間再灌流の開始時に与えた直接的な「リアルタイム」効果(「IDR」)。虚血前に又は再灌流の開始時にそれぞれ30分間の処置を与えた。再灌流において、冠血流再開の35分後に、比較できる拡張終期圧を有する収縮性パラメータを得るよう心室内バルーン容積を調整することにより、LVEDPを一時的に5mmHgに設定した。
【0260】
[00273]灌流液cTnI及びミオグロビンの測定。後期生成(late generation)cTnIアッセイを用いた病院検査室のハイスループット分析計(Abbott Architect、Canterbury Health Laboratories、クライストチャーチ病院(Christchurch Hospital)、ニュージーランド)により、単離された心臓灌流液における心臓性トロポニンI(「cTnI」)レベルを測定した。Abbot Architect i2000分析計におけるChemiluminescent Microparticle Immunoassay(Canterbury Health Labs、ニュージーランド、クライストチャーチ)を用いてミオグロビンを測定した。
【0261】
[00274]アポトーシスのマーカーに関して組織も解析した、即ち、TUNEL染色及びカスパーゼ3決定も行った。トリパンブルー除外(0.4%トリパン(trypan)をPBSに溶解)を行って、壊死細胞の見積もりを行う。梗塞テリトリー内の3領域を解析した。数値は、250個の細胞における壊死細胞のパーセンテージとして表す。
【0262】
[00275]TUNEL染色。LV自由壁のホルマリン固定した切片から、以前に報告された通りにChemicon International製のキットを用いてメーカーのプロトコールに従って、DNA断片化[末端デオキシヌクレオチド転移酵素によるUTP末端標識(terminal deoxynucleotidyltransferase−mediated UTP end−labeling)(TUNEL)アッセイ]を検出した。Piuholaら、Direct Cardiac actions of erythropoietin(EPO):effects on cardiac contractility,BNP secretion and ischemia−reperfusion injury.Clinical Science 2008 114:293〜304。各心臓の中央心室水準における横断面を染色に用い、全TUNEL陽性細胞を計数した。切片をDAPIで対比染色して、細胞総数を決定した。
【0263】
[00276]切断したカスパーゼ−3の免疫組織化学的検出。カスパーゼ−3は、アポトーシスカスケードの末端エフェクターの1種である。カスパーゼ−3は、不活性32kDaタンパク質として細胞に存在し、アポトーシス細胞において切断して20/17kDa活性型となる。切断したカスパーゼ−3の検出のための免疫組織化学的技法を用いた。簡潔に説明すると、ホルマリン固定した切片を脱パラフィンし、再水分補給し、1%Hにおいて30分間インキュベートして内在性ペルオキシダーゼをクエンチした。熱により抗原を回復させた後、切片を切断型のヒトカスパーゼ−3を認識するポリクローナルウサギ抗体(Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州ベバリー)と共に一晩4℃でインキュベートした。一次抗体の結合を、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンとコンジュゲートしたペルオキシダーゼ標識ポリマー(DAKO Corporation、カリフォルニア州カーピンテリア)及び基質としてのジアミノベンジジン溶液(DAKO)により検出した。組織をヘマトキシリンで弱めに(lightly)対比染色した。これらの実験のため、一次抗体に代えて陰性対照としてPBSを用いた。各試料において、7個の無作為に選択した40×対物視野当たりのカスパーゼ−3陽性細胞の平均数を計数した。
【0264】
[00277]ミトコンドリア及びサイトゾルタンパク質の単離。250mMスクロース、10mM Tris、1mM EDTA、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤を含有するバッファーにおいて、心臓LV自由壁をホモジナイズした。ライセートを5分間1000gで遠心分離して、壊れていない細胞及び核をペレット化した。上清を20分間13,000gで更に遠心分離して、ミトコンドリアをペレット化した。ホモジナイゼーションバッファーにおいてペレットを再懸濁して、同バッファーで更に2回洗浄した。最後に、150mM NaCl、20mM Tris、10mM EDTA、1%NP−40、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤からなる可溶化バッファーにおいてミトコンドリアペレットを再懸濁した。氷上における30分間インキュベーション後に、ライセートを10分間13,000gで遠心分離して、不溶性材料をペレット化した。上清を60分間100,000gで更に遠心分離して、サイトゾル画分(上清)を分離した。
【0265】
[00278]単離された灌流されたラット心臓におけるBNPsp(17〜26)活性の評価。質量分析を用いて、単離されたラット心臓灌流液試料における未修飾BNPsp(17〜26)への酸化ストレス反応産物の添加を実証した。2種の試料を解析した。第1の試料は、虚血性心臓を通過しなかった単離心臓灌流液における10nmol/Lの未修飾BNPsp(17〜26)であり、第2の試料は、45分間流動虚血を行わなかったラット心臓を通過した10nmol/L BNPsp(17〜26)である。再灌流時にBNPsp(17〜26)を添加し、流動開始後3分間試料を収集した。
【0266】
[00279]固相カートリッジにおいて灌流液試料を抽出し(Pembertonら、Ghrelin induces vasoconstriction in the rat coronary vasculature without altering cardiac peptide production.Am J.Physiol(Heart and Circ.Physiology)2004 287:H1522−H1529)、60%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ(triflouro)酢酸(TFA)のアイソクラチック勾配を用いた分子ふるい高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)により更に精製した。イムノアッセイにより免疫反応性BNPsp(17〜26)を定量化し(Piuholaら、Direct Cardiac actions of erythropoietin(EPO):Effects on cardiac contractility,BNP secretion and ischemia−reperfusion injury.Clinical Science 2008 114:293〜304)、次にマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)により構造的に評価した。試料スポット当たり800〜1000レーザーパルスによる陽イオンモードで全MSスペクトルを取得した。MS/MS衝突誘導性断片化(CID)解析のために各試料スポットの最大6個の前駆イオンを選択した。LC−MSLTQ−OrbitrapXL質量分析(Thermo Scientific、カリフォルニア州サンノゼ)により、BNPsp(17〜26)に対する構造的修飾を解析した。m/z400〜1400質量範囲における線形イオントラップを用いた完全質量走査により、溶出ペプチドをモニターした。その後の走査事象を誘発する排他的前駆体質量として、二重荷電ペプチドの予測されるm/z値を選択した。
【0267】
[00280]統計解析。結果を、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として提示する。必要に応じて一元配置又は反復測定ANOVA、続いて最小の有意差のための事後(post hoc)検定により、複数群の比較を行った。2群間の比較のため、スチューデントt検定を用いた。P<0.05において有意性を仮定した。SPSSにより全統計解析を行った(バージョン17)。
結果
【0268】
[00281]単離されたラット心臓調製物。45分間の虚血の前の30分間(pre)又はその直後の30分間(IDR)いずれかのBNPsp(17〜26)の注入は、媒剤バッファー単独を利用した対照注入と比較して、心収縮力(最大圧、図1、パネルA)及び血管緊張度(灌流圧、図1、パネルB)における有意な改善を生じた。よって、対照最大圧は、虚血前値の僅かほぼ75%へと回復した、一方、0.3nmol/Lによる虚血前注入又は1nmol/L BNPsp(17〜26)の虚血後注入は、最大圧を110〜120%の間の虚血前値へと回復させた(P<0.01)。用量応答の要素を観察したところ、0.3nmol/L BNPsp(17〜26)の前注入には、虚血前に正の変力作用を有する傾向があった。同様に、虚血後再灌流期における血管緊張度は、0.3nmol/L BNPsp(17〜26)の虚血前注入(P<0.01)並びに0.3及び1nmol/L BNPsp(17〜26)の虚血後使用(P<0.05、図1、パネルB)により十分に保存された。
【0269】
[00282]血行動態データと一致して、心臓性バイオマーカー解析は、虚血前又は後にBNPsp(17〜26)を与えた場合の、虚血後の再灌流期におけるTnI及びミオグロビン放出両方の著しい有意な低下を明らかにした。虚血後再灌流(IDR)からの模範結果を図1、パネルC及びDに示す。よって、0.3及び1nmol/L BNPsp(17〜26)の両方が、対照注入(パネルC、P<0.01)のほぼ20%TnI放出及び対照ミオグロビン放出のほぼ60%(パネルD、P<0.05)をもたらした。TnI及びミオグロビン放出が、心臓梗塞のサイズ及びその後の予後(死亡率、有害事象)の両方と相関付けられてきたことを考慮すると、このような実質的BNPsp(17〜26)の呼び起こした低下は、有意義な臨床有用性を有する。
【0270】
[00283]BNPspの低下した配列変種を用いた更なる解析は、心臓治療及び心保護的効果を明らかにする。
【0271】
[00284]総合すると、これらの結果は、心臓治療及び心臓保護(いずれかの原因の虚血性エピソードの前及び後)の分野におけるBNPspシグナルペプチド断片剤の有利な臨床有用性を支持する。
【0272】
[00285]これらのデータは、ヒトBNPsp(17〜26)及びより短いカルボキシル末端切断型バージョン並びにそれらのN末端付加ペプチド変種が、強力で臨床的に有用な心臓治療及び心保護剤であるという概念を支持する。従って、これらのペプチド配列の使用の臨床潜在力は、急性心臓冠血管症候群並びに本明細書に記されている他の疾患、障害及び状態において強力である。他の哺乳類及び下等脊椎動物型のBNPsp配列、変種、誘導体及びアナログもまた、係る治療及び保護特性を有するであろう。
実施例2
ヒツジモデル
【0273】
[00286]データは、BNPsp(17〜26)が、循環から急速に排除されることを示す。しかし、予想外且つ驚くべきことに、未修飾BNPsp(17〜26)が、本明細書に示す通り、実験的心虚血及び梗塞における新規保護/治療剤として作用し得ることが発見された。本実施例は、化合物が安全であることを立証する。
【0274】
[00287]正常で健康なヒツジへのBNPsp(17〜26)の注入(単離されたラット心臓において有利に生理活性があることが判明する循環レベルを達成)は、血行動態、腎臓機能又は循環バイオマーカー(心拍出量は、図2に示す模範である)に検出可能な変化を生じなかった。これは、正常な健康状態における有利なプロファイルである。
実施例3
ラット心臓虚血モデル
【0275】
[00288]Ex vivo単離された灌流された心虚血性傷害心臓のラット心臓モデル。本実施例において、全頭雄である100匹を超える雄スプラーグドーリーラットを用いた。全体(global)麻酔下で心臓を取り出し、実施例1に記載されている本出願人らの実験装備(rig)セットアップに置いた。エネルギーを与えるためのグルコースと、心臓の固有の拍動活性を確実にするためのカルシウムとを含有する標準的なよく用いられるバッファー系で灌流した心臓を保存する。平衡化した後、本出願人らは、2通りの実験を行った。第一に、本出願人らは、40分間の全虚血前に媒剤対照(バッファー自体)又はヒトBNPsp(17〜26)のいずれかを30分間心臓に注入した(参照:これはプレコンディショニングとして知られる)。第二に、本出願人らは、虚血後に媒剤又はヒトBNPsp(17〜26)を心臓に注入し(参照:これは再灌流処置として知られる)、これは実際の臨床状況をより密接に模倣する(即ち、医師が、心発作が起きた後にTx AFTER療法を専ら行使し得ることを考慮する)。対象とするエンドポイントは、虚血後の心収縮力における改善、心臓性トロポニン放出の低下、虚血後冠血管の血圧における改善、梗塞サイズの低下である。実験の終わりに、アポトーシスのマーカー(TUNEL染色、カスパーゼ3)並びにERK1/2、PI3K、Akt及びGSK−3β.4のウエスタンブロットのその後の決定のため、左心室自由壁領域を生検に付した。
【0276】
[00289]10%ホルムアルデヒド(fomaldehyde)において一晩固定し、次にパラフィンに貯蔵した左心室自由壁の試料においてTUNEL染色を行った。染色に先立ち、切片を生理食塩水バッファーにより再水分補給させ、0.3%H2O2とのインキュベーションにより内在性ペルオキシダーゼ活性をブロッキングした。メーカーのプロトコール(Chemicon International)通りにTUNEL染色を行った。TUNEL陽性細胞の平均数を計数し、各試料における10個の無作為に選択された400×対物視野当たりの全細胞数の比率として報告した。
【0277】
[00290]TUNEL染色用として調製したスライドとは別個のスライドにおいてカスパーゼ3染色を行った。染色に先立ち、スライドを再水分補給させ、1%(v/v)H2O2と共にインキュベートした。活性化型のカスパーゼ3に対して作製されたポリクローナルウサギ抗体(Cell Signalling Technology)と共に、心臓を数時間4℃でインキュベートした。一次抗体の結合は、ヤギ抗ウサギIgGとコンジュゲートしたペルオキシダーゼ(perxidase)標識ポリマー(DAKO)により検出した。次に、スライドをヘマトキシリンで弱く対比染色した。スライドを×400拡大率にて写真撮影した。
単離されたラット心臓データ
【0278】
[00291]ヒトBNPsp(17〜26)は、虚血期間により心臓組織に生じた損傷を低下させた。媒剤を与えた心臓は、40分間の全虚血を経た場合、その虚血前収縮機能(最大圧)の約70%に回復した。これは、プレコンディショニング及び再灌流処置心臓に当てはまる。対照的に、プレコンディショニングした又は再灌流においてBNPsp(17〜26)で処置した心臓は、その虚血前収縮機能の僅かに100%を超えて回復する(図3)。よって、対照対0.3nmol/L BNPsp(17〜26)を考慮する場合、0.3nmol/L濃度の注入において収縮性の有意な増加が見られた(+15.4%対対照、P=0.003)。より重要なことに、虚血後の再灌流期において、BNPsp(17〜26)処置した心臓における最大圧に統計的に有意な改善が見られた(0.1〜0.3nmol/L+21%対対照、P=0.007)。解析は、対照並びに0.1及び0.3nmol/Lの間に有意差を示し、これらの濃度は両者共に、解析した全時点に亘る収縮性の改善を達成する。
【0279】
[00292]最大圧における改善と付随的に、BNPsp(17〜26)は、虚血後冠血管収縮の低下が見られるように、冠血管緊張度における改善を誘導する(図5)。再灌流ステージにおいて、群間で灌流圧の有意な変化が見られた。対照値と比較して、事後解析による反復測定ANOVAは、0.1〜0.3nmol/L BNPsp(17〜26)の用量における再灌流血管圧の有意な低下(−25〜−50%、P=0.008)を特定した。これらの影響は、再灌流直後に始まり、サンプリング期間の終了まで続いた。
【0280】
[00293]これに続き、単離されたラット心臓における実験において再灌流のみを行った。再灌流において0.3〜1.0nmol/L BNPsp(17〜26)を与えたラット心臓において、心臓収縮機能は、対照値と比較して有意に改善した(図6)。再灌流ステージにおいて、0.3及び1nmol/L BNPsp(17〜26)を投与した試験心臓において、収縮性の改善が観察された(それぞれ+7%及び+26%対対照、P=0.003)。
【0281】
[00294]これに対応して、BNPsp(17〜26)を与えた心臓において、再灌流の灌流圧及び心臓性トロポニン放出も改善された(図5)。再灌流において、0.3及び1nmol/L BNPsp(17〜26)を投与した心臓は、対照と比較してより低い平均灌流圧(−10%、P<0.05)を有した。
【0282】
[00295]この肯定的な血行動態プロファイルに一致して、虚血性心筋からのトロポニンIの放出は、BNPsp(17〜26)を与えた心臓において有意に低下した。よって、対照と比較して、0.3nmol/Lを投与した心臓における累積トロポニンI放出の50%低下が見られ(P<0.05)、1nmol/L BNPsp(17〜26)を与えた心臓において66%低下(P<0.01)が見られた。
【0283】
[00296]本出願人らは、細胞アポトーシス及び壊死のマーカーにおけるBNPsp(17〜26)の影響も調査した。図8は、HE染色により決定され、BNPsp(17〜26)処置された心臓における形態における統合性の改善及び崩壊の少なさにより示されるBNPsp(17〜26)の細胞保存効果を表示する。
【0284】
[00297]カスパーゼ−3活性の染色を図9に示す。BNPsp(17〜26)で処置された心臓におけるカスパーゼ−3陽性細胞(褐色の呈色で示す)の有意な低下が見られた。
【0285】
[00298]TUNELによる染色は、BNPsp(17〜26)処置した心臓において褐色に呈色した核が少ないことを明らかにし、この結果は、より大きな程度のDNA統合性及び少ない細胞断片化を示す。図10を参照されたい。
実施例4
In vivo心筋梗塞ヒツジモデル(健康及び)
【0286】
[00299]ヒツジにおけるin vivo心虚血におけるヒトBNPsp(17〜26)の注入も、心臓収縮機能における有益な影響、壊死のバイオマーカー(トロポニンI、ミオグロビン)放出の有意な低下及び虚血後の再構築に付随する心室壁ストレス異常の有意な低下を生じるであろう。
【0287】
[00300]この実験セットにおいて、4頭の正常で健康なヒツジに、100〜1000ug/kg.min−1でヒトBNPsp(17〜26)を注入して、正常血圧、心拍数又は腎臓機能におけるいずれかの影響を実証した。本実験は、与えた用量に応答したBNPsp(17〜26)の達成された循環レベルを決定して、血行動態、腎臓又はホルモン指数におけるいずれかの有意な影響を実証するために行った。
【0288】
[00301]8頭の偽手術ヒツジ及び7頭の実験ヒツジにおいて、実験的な心筋梗塞を行った。心拍出量を測定するための頸静脈及び頸動脈アクセスカテーテル、ECG電極並びにスワン・ガンツ(Swan Ganz)カテーテルにより、各ヒツジを麻酔下で外科的に調製した。全15頭のヒツジに、解放できるスネアを用いてLAD冠動脈の第2対角の90分間虚血を起こした。虚血開始の30分前に、各ヒツジに、(その群に応じて)生理食塩水又は500ng/kg/min BNPsp(17〜26)のいずれかを120分間与えた。よって、本試験は、プレコンディショニング及び設計中である。連続的血行動態の記録及び静脈血サンプリングは、麻酔前と、その後、−10、閉塞(O)、O+30、O+60、O+90と、その後、120、150、240及び360分間並びに5、24及び48時間目に行った。連続的心エコー検査(短軸面における基底、中央及び頂端領域)は、閉塞前、閉塞中及び閉塞30分後に行った。
【0289】
[00302]4頭の正常ヒツジにおける100〜1000ug/kg.minのヒトBNPsp(17〜26)の注入は、血行動態、腎臓又はホルモン指数における有意な影響がなかった(図11)。ヒツジにおける循環からのBNPsp(17〜26)のクリアランスは非常に速く、数分間の規模であった。このことは、1分間未満の血漿中半減期又は非免疫反応性形態への非常に急速なタンパク質分解性切断を示唆する。
【0290】
[00303]この肯定的な安全性/耐性プロファイルに従って、次に本出願人らは、冠血管結紮により誘導された心虚血を起こしている7頭のヒツジに500ng/kg.minの合成ヒトBNPsp(17〜26)を投与した。重要なことに、対照生理食塩水注入と比較すると、BNPsp(17〜26)は、虚血後の累積心臓性トロポニンI(P<0.01)放出を有意に低下させた(図12)。
実施例5
虚血においてin vivoで生成されたBNPsp(17〜26)代謝産物の解析
【0291】
[00304]本実施例において、ヒトBNPsp(17〜26)の代謝産物への分解を評価した。2通りの方法を用いた。第1の実験において、40分間虚血後の再灌流時において1nM BNPsp(17〜26)が単離されたラット心臓に注入されるex vivoセットアップを用いた。この系は、BNPsp(17〜26)含有バッファーを再循環させて、当該ペプチドが心臓を2回以上通過して虚血性組織に曝露されるように設定した。20分間の再循環後に灌流液の10ml試料を収集し、Sep Pak C18カートリッジにおいて抽出し、免疫親和性精製及び逆相HPLCにより精製した。次に、この精製した材料を、正確な同定のためタンデムMS/MSに付した。第2の実験は、in vivoで行い、心虚血において500ng/kg.min BNPsp(17〜26)を与えたヒツジの3mlの末梢血漿が、ex vivo単離されたラット心臓灌流液のように精製され、タンデムMS/MSにおいて解析された。
【0292】
[00305]これらの実験は、単離されたラット心臓調製物又は動物全体(ヒツジ)を通ったときの、虚血における代謝産物へのヒトBNPsp(17〜26)の分解を評価した。両方のセットアップにおいて、アミノ末端ロイシンのタンパク質分解性切断により、合成ヒトBNPsp(17〜26)が、より小型の形態、即ちBNPsp(18〜26)に分解された。これは、図13に示されている。単一の鋭いピークが、RP−HPLCにおいて分離され、タンデムMS/MSによりヒトBNPsp(18−26)として確認された。この結果は、アミノ末端が、初期の分解に対し最も感受性が高いことを示す。
実施例6
BNPsp(17〜26)のアミノ酸配列の修飾の影響
【0293】
[00306]この実験セットは、修飾されたBNPsp(17〜26)ペプチドを評価した。本実験は、BNPsp(17〜26)のC末端切除及びN末端延長バージョンを用いる以外は、単離されたラット心臓モデルの実施例において概要を述べたプレコンディショニング操作を反復した。40分間の全虚血及び90分間再灌流の前の、30分間の0.3nmol/L BNPsp(16−26)及びBNPsp(17〜24)の用量により心臓をプレコンディショニングした。心臓収縮性及び灌流圧指数を記録した。
【0294】
[00307]N末端付加又はC末端切除のいずれかによるこれらの初期の実験におけるBNPsp(17〜26)配列の修飾及び単離された心臓において観察される応答における影響を図14に示す。重要なことに、N末端の位置16におけるフェニルアラニン(F)の付加(これにより、BNPsp(16〜26)を作製する)は、BNPsp(17〜26)と同一の血行動態保護的プロファイルを与えた。2個のC末端アミノ酸除去により修飾されたペプチド(即ち、BNPsp(17〜24))も、保護的効果を有した。
【0295】
[00308]本明細書において参照又は言及されているあらゆる特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト並びに他の文書及び材料は、本発明が属す分野の当業者の技能水準を示し、係る参照されている文書及び材料それぞれは、あたかもその全内容が個々に参照によりここに援用されている、或いはその全内容が本明細書に説明されているのと同じ程度まで、これにより参照によりここに援用されている。本出願人らは、係る特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子利用できる情報及び他の参照されている材料又は文書のいずれかから得られるありとあらゆる材料及び情報を本明細書に物理的に取り込む権利を留保する。
【0296】
[00309]本明細書に記載されている特定の方法及び組成物は、好ましい実施形態の代表であり、例示的なものであり、本発明の範囲の限定を企図するものではない。他の目的、態様及び実施形態は、当業者であれば本明細書を検討することによりに想起することができ、これらは、特許請求の範囲に定義されている本発明の精神の内に網羅されている。当業者であれば、本明細書に開示されている本発明に対し、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、様々な置き換え及び修正を行ってよいことが容易に明らかとなろう。例証により本明細書に適切に記載されている本発明は、本明細書において特に本質的であるとは開示されていない要素(単数又は複数)又は限定(単数又は複数)なしで実施することができる。よって、例えば、本明細書における各事例において、本発明の実施形態又は実施例において、用語「含む」、「のみから実質的になる」及び「からなる」のいずれかは、本明細書において他の2用語のいずれかと置き換えることができる。また、用語「含む」、「包含する」、「含有する」等は、包括的に、限定することなく解釈されたい。例証により本明細書に適切に記載されている方法及びプロセスは、異なる順序のステップで実施することができ、本明細書又は特許請求の範囲に示されているステップの順序に必ずしも制限されない。同様に、本明細書及び添付の特許請求の範囲において、文脈がそれ以外の事柄を明らかに指示しない限り、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、複数形の参照を包含する。いかなる状況下においても、本特許は、本明細書において特に開示されている特定の実施例又は実施形態又は方法に限定されると解釈してはならない。いかなる状況下においても、本特許は、特許商標局(Patent and Trademark Office)のいずれかの審査官又はその他の職員若しくは従業者によるいずれかの記載により限定されると解釈してはならないが、但し、係る記載が、本出願人らによる答弁書において特に、資格又は留保なしで明示的に採用される場合を除く。
【0297】
[00310]用いられている用語及び表現は、限定の用語ではなく説明の用語として用いられ、係る用語及び表現の使用には、示され記載されている特色又はその一部のいかなる均等物を除外する意図もないが、請求されている本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。よって、本発明は、好ましい実施形態及び必要に応じた特色により特に開示されてきたが、本明細書に開示されている概念の修正及び変更は、当業者によって用いることができ、係る修正及び変更が、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であると考慮されることが理解されよう。
【0298】
[00311]本発明は、本明細書において広く総括的に記載されてきた。より狭い種及び総括より狭い(subgeneric)グループ分けのそれぞれは、総括的開示の内に収まり、同様に本発明の一部を構成する。これは、但し書き(proviso)による本発明の総括的記載、或いは除かれた材料が本明細書に特に列挙されているか否かにかかわらない、属(genus)からいずれかの対象物を排除する否定的な限定を包含する。
【0299】
[00312]他の実施形態は、次の特許請求の範囲内に収まる。加えて、本発明の特色又は態様が、マーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本発明が、これによりマーカッシュ群のいずれか個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点からも記載されていることを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]