特許第6222783号(P6222783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社松浦機械製作所の特許一覧

<>
  • 特許6222783-樹脂射出成形用金型 図000002
  • 特許6222783-樹脂射出成形用金型 図000003
  • 特許6222783-樹脂射出成形用金型 図000004
  • 特許6222783-樹脂射出成形用金型 図000005
  • 特許6222783-樹脂射出成形用金型 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222783
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】樹脂射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20171023BHJP
   B29C 45/73 20060101ALI20171023BHJP
   B29C 45/72 20060101ALI20171023BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20171023BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C45/73
   B29C45/72
   B33Y80/00
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-121606(P2015-121606)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-199026(P2016-199026A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-81079(P2015-81079)
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】天谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 幸憲
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆三
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−128711(JP,A)
【文献】 特開2011−256435(JP,A)
【文献】 特開2002−292692(JP,A)
【文献】 特開2004−142427(JP,A)
【文献】 特開2009−233980(JP,A)
【文献】 特開平01−210323(JP,A)
【文献】 特表平06−504739(JP,A)
【文献】 特開2005−219384(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124828(WO,A1)
【文献】 国際公開第98/025746(WO,A1)
【文献】 特開2014−031018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00,45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側壁部及び外側壁部を有する樹脂射出成形金型において、加熱又は冷却に際し送風又は吸引される気体又は樹脂の充填に伴って排出される気体の通過が可能である焼結密度を有し、かつ前記内側壁部及び外側壁部の間に設けられている低密度造形部及び上記気体の通過が不可能である焼結密度を有し、かつ前記内側壁部及び外側壁部の間に設けられており、しかも前記低密度造形部を囲んだ状態にある高密度造形部によって樹脂射出成型金型の造形領域が形成されるか、又は前記低密度造形部のみによって前記造形領域が形成されており、外部と連通している第1の通気口と内側の樹脂成形部に連通する第2の通気口との間に介在し、双方を連通している気体の通気経路が高密度造形部及び/又は低密度造形部によって構成されている内側壁部に囲まれることによって空洞状態を形成しており、かつ前記第2の通気口においては、前記の低密度造形部及び高密度造形部によって形成された造形領域、又は前記の低密度造形部のみによって形成された造形領域の厚みよりも気体が通過する方向を基準とする平均厚みが薄い状態にて低密度造形部のみによって形成されている樹脂射出成形用金型。
【請求項2】
外側壁部の内側に突出領域を有するコア型の樹脂射出成形用金型において、内側壁部と突出領域との空隙及び/又は突出領域同士の間の空隙に、第2の通気口を設けていることを特徴とする請求項1記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項3】
外側壁部の内側に突出領域を有していないキャビティ型の樹脂射出成形用金型において、内側壁部によって囲まれている底部に1個又は複数個の第2の通気口を設けていることを特徴とする請求項1記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項4】
高密度造形部と低密度造形部との境界領域において焼結密度の程度が順次変化していることを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項5】
第2の通気口が2mm〜5mmの均等厚みであることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項6】
第2の通気口の端部の領域に比し、当該端部の内側領域において当該端部から遠距離となるにしたがって第2の通気孔の厚みが順次薄くなるように成形されていることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項7】
第2の通気孔の端部から内側に至る全領域における平均厚みが2mm〜5mmであることを特徴とする請求項6記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項8】
1個の第1の通気口に連通している通気経路を複数個設定していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載の樹脂射出成形用金型。
【請求項9】
各通気経路に応じて、送風又は吸引の気圧を個別に制御していることを特徴とする請求項8記載の樹脂射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元光造形によって製造される樹脂射出成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記樹脂射出成形用金型においては、前記三次元光造形によって送風又は吸引された気体の通過が可能である焼結密度を有している低密度造形部と、当該気体の通過が不可能である焼結密度を有する高密度造形部によって区分された造形領域を有する構成が近年採用されるに至っている。
【0003】
このような区分構成の場合には、特許文献1記載のように、樹脂射出成形に際し、低密度造形部を介したガス抜き機能を発揮することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、積極的に樹脂射出成形に際し、送風又は吸引された気体による加熱及び冷却を効率的に実現すること、及び樹脂を充填する際に気体を円滑に流動させることについては特に検討されている訳ではない。
【0005】
これに対し、特許文献2及び同3においては、外部と連通している第1の通気口によって送風又は吸引された気体が通過する通気経路、及び樹脂成形部に接している第2の通気口の全てを低密度造形部によって形成する構成を採用することによって、前記のような加熱及び冷却を効率的に実現しようとしている。
【0006】
しかしながら、前記通気経路及び第2の通気口の全てを低密度造形部によって形成した場合には、前記第1の通気口と第2の通気口との間に介在している低密度造形部における流通抵抗を原因として、送風又は吸引に要する圧力が極めて高圧とならざるを得ない。
【0007】
しかも、低密度造形部内における密度の程度及び金型の形状によって第2の通気口における圧力が均一ではないため、樹脂成形部との間にて流入又は流出する気体の単位面積当りの通気量は必ずしも均一とはなり得ず、一様な加熱及び冷却に支障が生ずる場合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−160580号公報
【特許文献2】特許第5575374号公報
【特許文献3】特開平8−300363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、第2の通気口における圧力を均一状態としながら、気体の効率的な送風又は吸引を可能とするような樹脂射出成形用金型の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、内側壁部及び外側壁部を有する樹脂射出成形金型において、加熱又は冷却に際し送風又は吸引される気体又は樹脂の充填に伴って排出される気体の通過が可能である焼結密度を有し、かつ前記内側壁部及び外側壁部の間に設けられている低密度造形部及び上記気体の通過が不可能である焼結密度を有し、かつ前記内側壁部及び外側壁部の間に設けられており、しかも前記低密度造形部を囲んだ状態にある高密度造形部によって樹脂射出成型金型の造形領域が形成されるか、又は前記低密度造形部のみによって前記造形領域が形成されており、外部と連通している第1の通気口と内側の樹脂成形部に連通する第2の通気口との間に介在し、双方を連通している気体の通気経路が高密度造形部及び/又は低密度造形部によって構成されている内側壁部に囲まれることによって空洞状態を形成しており、かつ前記第2の通気口においては、前記の低密度造形部及び高密度造形部によって形成された造形領域、又は前記の低密度造形部のみによって形成された造形領域の厚みよりも気体が通過する方向を基準とする平均厚みが薄い状態にて低密度造形部のみによって形成されている樹脂射出成形用金型からなる。
【発明の効果】
【0011】
前記基本構成においては、通気経路が高密度造形部及び/又は低密度造形部によって構成されている内側壁部によって囲まれることによって空洞状態であり、かつ第1の通気口と第2の通気口とが連通していることから、第1の通気口によって送風又は吸引された気体は、前記基本構成における他の造形領域の厚みよりも気体が通過する方向を基準として薄い平均厚みを有する第2の通気口を介して効率的に樹脂成形部との間における流入又は流出が可能となり、金型における加熱並びに冷却、及び樹脂の充填に伴う排気の場合に、従来技術のような圧力損失を防止することができる。
【0012】
更には、同一の通気経路においては圧力が均等であるため、金型の形状如何に拘らず、第2の通気口における圧力は均等であって、第2の通気口の厚みを均等に設定することによって単位面積当りの通気量を均等状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】キャビティ型の樹脂射出成形用金型において、複数個の通気経路を設けたことを特徴とする実施例1の状態を示す。
図2】高密度造形部と低密度造形部との境界領域において焼結密度の程度が順次変化していることを特徴とする実施例2の状態を示す。
図3】本発明の典型的な実施形態であって、第2の通気口の気体が通過する方向を基準とする厚みを均等とする実施形態を示す。
図4外側壁部の内側に突出領域を有するコア型における他の実施形態であって、第2の通気口の気体が通過する方向を基準とする厚みを均等とする実施形態を示す。
図5】造形領域が、低密度造形部のみによって形成され、かつ第2の通気口の端部の領域に比し、当該端部の内側領域において当該端部から遠距離となるにしたがって第2の通気孔の厚みが順次薄くなるように成形されている実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図3の典型的な実施形態に示すように、内側壁部及び外側壁部を有する樹脂射出成型金型の基本構成においては、第1の通気口31と第2の通気口33との間に介在する通気経路32が高密度造形部21及び/又は低密度造形部22によって構成されている内側壁部によって囲まれることによって、空洞状態を形成している。
【0015】
このような空洞状態の通気経路32の場合には、特許文献2の場合のように、低密度造形部22を気体が通過する場合に比し、圧力損の発生が少なく、効率的な通気を実現することができる。
【0016】
しかも、通常の通気経路32の場合の圧力は均等であることから、金型の形状如何に拘らず、同一の通気経路32における各第2の通気口33における圧力は均等であって、図3に示すように、第2の通気口33における気体が通過する方向を基準とする厚みを均等とした場合には、単位面積当りの通気量を均等状態とすることができる。
尚、殆ど大抵の樹脂射出成形用金型1は、図3に示すように、外側壁部の内側に突出領域を有するコア型11の金型及び外側壁部の内側に突出領域を有していないキャビティ型12の金型の双方によって構成されているが、コア型11の金型及びキャビティ型12の金型のうちの一方の金型の第1の通気口31によって送風が行われている場合には、コア型11の金型及びキャビティ型12の金型のうちの他方の金型の第1の通気口31から気体の排出が行われており、一方の金型において吸引が行われている場合には、他方の金型の第1の通気口31からは気体の進入が行われることになる。
但し、一方の金型の第1の通気口31において送風を行い、他方の金型の第1の通気口31において吸引を行うという実施形態もまた当然実現可能である。
【0017】
図3は、コア型11の金型及びキャビティ型12の金型の双方において、通気経路32を囲む全内側壁部を高密度造形部21によって形成しているが、当該内側壁部の一部又は全部を低密度造形部22によって形成することもできる。
【0018】
何故ならば、前記内側壁部の一部又は全部を低密度造形部22として形成したとしても、第2の通気口33における気体が通過する方向を基準とする平均厚みが他の造形領域の厚みよりも薄いことを原因として、気体は必ず当該第2の通気口33を通過し、気体が低密度造形部22によって形成された造形領域を通過し、その結果、樹脂成形部6と第1の通気口31との間を連通するという従来技術の場合のような圧力損失を来たす状態が発生する余地はないからである。
但し、低密度造形部22によって構成されている内側壁部の場合には、気体が低密度造形部22の一部領域に進入することによって、第2の通気口33における通気量が減少することを考慮するならば、内側壁部は、図3に示すように、全て高密度造形部21によって形成することが好ましい。
【0019】
樹脂成形部6と接触する内側壁部の形成領域については、図3に示すように、高密度造形部21を採用するか、又は図4に示すように、低密度造形部22を採用するかは任意に選択することができるが、低密度造形部22は内側壁部及び外側壁部の間にて、造形領域を形成している。
但し、金型の寿命を考慮し、造形領域において高密度造形部21を採用する場合には、図及び図に示すように、低密度造形部22を囲んだ状態としている。
【0020】
コア型11の金型においては、図3に示すように、内側壁部と突出領域との空隙及び/又は突出領域同士の間の空隙に、第2の通気口33を設けていることを特徴とする実施形態が採用される場合が多い。
但し、図4に示すように、コア型11の金型において、突出領域の外側壁部に1個又は複数個の第2の通気口33を設けることも十分可能である。
【0021】
キャビティ型12の金型においては、図3に示すように、外側壁部に囲まれた底部に1個又は複数個の第2の通気口33を設ける場合が多い。
【0022】
その根拠は、当該第2の通気口33を介して、均等に気体が樹脂成形部6との間にて流入又は流出することが可能となることにある。
【0023】
第2の通気口33は、樹脂成形に伴う圧力に耐え得る一方、気体が樹脂成形部6との間にて効率的に流出又は流入を実現するという双方の要件を充足することが必要となる。
【0024】
このような双方の要因を考慮した場合の第2の通気口33の厚みは、低密度造形部22の焼結密度によって左右されるが、図3、4に示すように、通常気体が通過する方向、具体的には樹脂成形部から流出し、かつ当該樹脂成形部6に流入する方向を基準として2mm〜5mmの均等の厚みを設定することによって、双方の要件を充足する場合が多い。
【0025】
図5は、造形領域が内壁及び外壁の間に設けられている低密度造形部22のみによって形成され、かつ第2の通気口33において、端部の領域に比し、当該端部の内側領域において当該端部から遠距離となるにしたがって第2の通気孔の厚みが順次薄くなるように成形されていることを特徴とする実施形態を示す。
【0026】
上記実施形態の場合には、樹脂成形に伴う圧力を、第2の通気口33の周辺の領域又はその近傍によって支える一方、中央及びその近傍における厚みが薄い領域において効率的な気体の噴出及び噴入を実現することができる。
尚、図5に示す実施形態においても、第2の通気口33の端部から内側に至る全領域における平均厚みを2mm〜5mmの範囲に設定することによって、樹脂成形に伴う耐圧力特性と気体の効率的な流出又は流入特性とを両立させることが可能となる。
【実施例1】
【0027】
実施例1においては、図1に示すように、1個の第1の通気口31に連通している通気経路32を複数個設定していることを特徴としている。
【0028】
このような特徴点を有する実施例1においては、例えば成形対象となる樹脂成形領域の形状の相違によって、必要とする加熱又は冷却の程度が相違する場合に、各通気経路32毎に通気量を個別に制御することによって対応する樹脂成形領域の加熱又は冷却を適切に実現することができる。
【実施例2】
【0029】
実施例2においては、図2に示すように、高密度造形部21と低密度造形部22との境界領域において焼結密度の程度が順次変化していることを特徴としている。
【0030】
このような特徴点を有する実施例2においては、高密度造形部21及び低密度造形部22をそれぞれ成形する際、低密度造形部22に対する注入圧力を、高密度造形部21の境界近傍において、造形部に対する空気の注入圧力を順次減少することによって高密度造形部21の成形に順次移行することができる。
即ち、図3、4、5のように、双方の境界が明瞭に区分されている場合には、高密度造形部21と低密度造形部22とを個別に成形しなければならないのに対し、実施例2の場合には、連続した成形を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
このように、効率的かつ均一な通気による加熱及び冷却を可能としている本発明は、樹脂射出成形用金型において、広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 樹脂射出成形用金型
11 コア型
12 キャビティ型
21 高密度造形部
22 低密度造形部
31 第1の通気口
32 通気経路
33 第2の通気口
4 ベースプレート
5 樹脂供給部
6 樹脂成形部
7 密閉形成領域部
図1
図2
図3
図4
図5