特許第6222788号(P6222788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6222788
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】耐熱性チーズ様加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23C 20/02 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   A23C20/02
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-73711(P2017-73711)
(22)【出願日】2017年4月3日
【審査請求日】2017年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000189970
【氏名又は名称】植田製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】熊西 敦則
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩志
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−012931(JP,A)
【文献】 特開2015−065948(JP,A)
【文献】 特開2015−065949(JP,A)
【文献】 特開平6−153791(JP,A)
【文献】 特開2010−142181(JP,A)
【文献】 特開平02−211827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/FSTA(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳由来タンパク質含量が0.1質量%以下であって、馬鈴薯、タピオカ、コーン、ワキシーコーン、サゴヤシ、小麦、米、甘藷を起源とするデンプン(少くとも40%重量のアミロース含量を有する高アミロース澱粉を除く)から、酸化デンプン総量中のアミロース含量が25質量%以上となるように選ばれた1種類以上の酸化デンプンを15〜45質量%、上昇融点30℃以上の油脂を20〜41.5質量%、及び水を含有し、酸化デンプンに対する水分の含有比が0.6〜1.7であり、実質的に乳由来タンパク質を含有せずとも保形性を有する耐熱性チーズ様加工食品。
【請求項2】
タンパク質含量が0.1質量%以下で実質的にタンパク質を含有しない請求項1に記載の耐熱性チーズ様加工食品。
【請求項3】
油脂のSFCが10℃で50〜95%、20℃で40〜85%である請求項1または2に記載の耐熱性チーズ様加工食品。
【請求項4】
実質的に乳由来原料を含有しない請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性チーズ様加工食品。
【請求項5】
形状がブロック状、スライス状、サイノメ状、短冊状、シュレッド状、粉状である請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性チーズ様加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱保形性を有する実質的に乳タンパク質を含有しない加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チーズは乳及び/または乳から得られる原料から造られている乳製品の一つであり、牛、水牛、山羊、羊等から得られる乳、中でも牛乳が最もよく使用されている。日本においてチーズとは法令上ナチュラルチーズ、プロセスチーズであり、チーズの文言が入るものとしてチーズフードがあるが、いずれも乳が成分として含まれており、製造方法や成分及びその量に厳格な制約がある。
【0003】
国内においてチーズの需要は年々増加しており、調理に欠かせない食品として定着している。チーズ独特の風味はさることながらチーズの適度な弾力性と独特な粘性を感じる食感が、他のものには代えがたいものとして気に入られていることも理由の1つである。その中でプロセスチーズ類の物量は多くを占めており、様々な調理用途に応じた物性が求められている。一般的なプロセスチーズは耐熱性が弱く、パンや菓子あるいは魚肉練り製品等の生地に入れて焼く、蒸す、揚げる等の加熱をすると形が変形し、溶融してしまう。
【0004】
チーズに耐熱性及び保形性の物性を付与させるには、タンパク質の含有量が非常に重要である。その一方で、食物アレルギーを持つ人が増加している現在、アレルギーの心配なく食事を楽しめるようにするには、アレルギーの原因となる乳タンパク質あるいは更に拡大してタンパク質を含有していない食品が期待されている。耐熱保形性を有するプロセスチーズとして、特許文献1ではナチュラルチーズに酸化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプンの中から選ばれた1種類以上のデンプンを添加し、加熱乳化することで得られるプロセスチーズが提案されている。また、特許文献2では酸処理度の低い酸処理デンプンと上昇融点20〜50℃の油脂及びタンパク質が使用された耐熱保形性を有するチーズ様食品が提案されている。それぞれ耐熱保形性という特性を発揮するには乳タンパク質が重要な役割を果たしており、乳タンパク質の機能を代替するタンパク質を一切使用しないで耐熱保形性の物性を満足させることは非常に困難であった。従って、乳タンパク質あるいはタンパク質を含まず、高温下にさらしても保形性を維持できることで様々な加熱調理に使え、パンや菓子あるいは魚肉練り製品等の生地にも包含できるチーズ様の物性を有する加工食品の提供が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−153791
【特許文献2】特開2015−65948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は実質的に乳タンパク質を含有しないにもかかわらず、加熱時に保形性を維持することができ、加熱後に適度な弾力と粘りのある食感を有する耐熱性チーズ様加工食品を提供することを目的とする。更には乳成分をはじめとする食物アレルギーを引き起こす可能性のある原材料やタンパク質を含有しない耐熱性チーズ様加工食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は酸化デンプン中のアミロースを特定の含量以上とすること、及び上昇融点が30℃以上の油脂及び水を含有させ、微細化された無数の油滴粒子の周りを水により膨潤したデンプンが覆う乳化構造を有する加工食品とすることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。更には該食品の構成成分である油脂を、特定の物性を持つ油脂とすることで乳化構造の安定性を高め、常温及び加熱時でも良好な保形性を有するチーズ様加工食品としたのである。
【0008】
すなわち本発明は、
(1) 乳由来タンパク質含量が0.1質量%以下であって、馬鈴薯、タピオカ、コーン、ワキシーコーン、サゴヤシ、小麦、米、甘藷を起源とするデンプン(少くとも40%重量のアミロース含量を有する高アミロース澱粉を除く)から、酸化デンプン総量中のアミロース含量が25質量%以上となるように選ばれた1種類以上の酸化デンプンを15〜45質量%、上昇融点30℃以上の油脂を20〜41.5質量%、及び水を含有し、酸化デンプンに対する水分の含有比が0.6〜1.7であり、実質的に乳由来タンパク質を含有せずとも保形性を有する耐熱性チーズ様加工食品、
(2) タンパク質含量が0.1質量%以下で実質的にタンパク質を含有しない(1)に記載の耐熱性チーズ様加工食品、
(3) 油脂のSFCが10℃で50〜95%、20℃で40〜85%である(1)または(2)に記載の耐熱性チーズ様加工食品、
(4) 実質的に乳由来原料を含有しない(1)〜(3)のいずれかに記載の耐熱性チーズ様加工食品、
(5) 形状がブロック状、スライス状、サイノメ状、短冊状、シュレッド状、粉状である(1)〜(4)のいずれかに記載の耐熱性チーズ様加工食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐熱性チーズ様加工食品は、常温ではブロック状のものをサイノメ状、短冊状等への形状に自在にカットでき、シュレッド状への裁断や粉状への粉砕も可能となるなど形状の加工適性に優れ、それらをオーブンやトースター等の調理器具内で加熱しても保形性を維持するという特性を有し、チーズより優れた物性を持つ。本発明に使用される原料は、ほぼ無味無臭なため様々な呈味成分や香料を含有させることでチーズ風味にとどまらず、バター風味やチョコレート風味、マヨネーズ風味等任意の風味を付けることでき、様々な食品に使用できる。また本発明の耐熱性チーズ様加工食品は加熱後に適度な弾力と粘りが生まれ、チーズのような食感を楽しむことが可能となる。本発明品は実質的に乳タンパク質や乳成分を含有していないので食物アレルギーを心配する人に配慮した加工食品であり、加える風味成分のアレルゲンに留意することで食物が原因となるアレルギーを引き起こさない加工食品とすることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の耐熱性チーズ様加工食品は、乳タンパク質含量が0.1質量%以下であって、酸化デンプン、上昇融点30℃以上の油脂及び水を含有し、酸化デンプン中のアミロース含量が25質量%以上で、実質的に乳タンパク質を含有せずとも保形性を有する耐熱性チーズ様加工食品であり、酸化デンプンを含む水相部中に油脂が分散された構造を持つ食品である。酸化デンプンを総質量の15〜45質量%含有し、酸化デンプンに対する水の含有比が0.6〜1.7であると更に耐熱性に優れたものとなる。
【0011】
「実質的に」とは、タンパク質が含まれていないか、分析上、わずか痕跡程度である状態をいう。本発明においてナチュラルチーズやプロセスチーズはもちろんのこと、脱脂粉乳やホエーパウダー等の乳タンパク質を含有する原料やあるいは大豆タンパク質や小麦タンパク質等の植物性タンパク質の使用を必要としない。
【0012】
本発明を実施するにあたり主要な構成成分として酸化デンプンを必須とする。酸化デンプンはデンプンを次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理して得られるものである。その酸化処理の程度はカルボキシル基量で規定することができ、カルボキシル基量が多いほど酸化処理程度が進んだことを意味する。未処理のデンプンはカルボキシル基がほぼない。起源原料としては馬鈴薯、タピオカ、コーン、ワキシーコーン、サゴヤシ、エンドウ、小麦、米、甘藷を起源とするデンプンから選ばれた1種類以上の酸化デンプンを用いることができる。含有する酸化デンプン総量中のアミロース含量が25質量%以上であればよい。本発明には、良好な耐熱保形性を備えるためにアミロース含量が25質量%以上の酸化デンプンであるサゴヤシ、コーン由来のどちらか1種類以上用いることがより好ましい。ただし、乳以外にもアレルギー疾患を心配する人を対象とする場合は、対象となるアレルゲンを有する可能性のある植物由来の加工デンプンを選択しないことが必要である。具体的には小麦由来、米由来、エンドウ由来を用いないことである。
また本発明にはアミロース含量が25質量%以上の酸化デンプンと、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンやリン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン等の架橋デンプンを併用することで、更に優れた耐熱保形性を付与させることが可能となる。しかしこれら架橋デンプンの含量が増えると糊液粘度が高くなるため、好ましい含量としては1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。
【0013】
本発明に用いる酸化デンプンの総量は加工食品の総質量の15〜45質量%がよく、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%である。
【0014】
本発明に用いる油脂は食用に使用される油脂であり、上昇融点が30℃以上のものであれば特に制限はなく、パーム油、カカオ脂等の植物油脂や大豆硬化油、なたね硬化油等の植物硬化油、豚脂、牛脂等の動物油脂またはこれらの硬化油、魚油等水産動物油脂の硬化油等が例示でき、これら油脂の分別油やエステル交換油であってもよい。また、これらの油脂から選ばれた2種以上の油脂の混合油脂、さらにその分別油やエステル交換油であってもよい。より好ましい耐熱性チーズ様加工食品の物性のためには上昇融点が30℃以上で10℃のSFCが50〜95%、20℃のSFCが40〜85%である油脂とするのがよい。
【0015】
本発明の耐熱性チーズ様加工食品の含有する水分量は、含有させる水溶性成分を溶解することができる量であればよく、目的とする加工食品の物性に応じて適宜調整すればよい。
酸化デンプンに対する水分の含有比が0.6〜1.7であると膨潤した酸化デンプンによる耐熱保形性の機能が十分に発揮できる。加工食品の総水分量として25〜50質量%がよく、好ましくは30〜45質量%、より好ましくは35〜40質量%である。含有する水分量が少なすぎると粘度が高くなり、製造が困難となる。反対に含有する水分量が多すぎると流動物となってしまい、切断、裁断等の加工ができなくなる。
【0016】
本発明の耐熱性チーズ様加工食品には発明の効果に影響を与えない範囲内において、呈味成分や風味成分を加えることができる。例えば、塩や砂糖等の糖類や甘味料及び化学調味料、ココアパウダーやコーヒーパウダー、イチゴやマスカット等の各種果汁、チーズ香料やバター香料等の各種香料等が挙げられる。このような呈味成分や風味成分を加えることで加熱時の保形性は維持されつつ、チーズ風味はもちろんのこと多岐にわたる風味を付与した加工食品とすることができる。また、着色料や日持ち向上剤も使用することができる。アレルギーに配慮した加工食品とするには、アレルゲンを含有しない原料を選択すればよい。
【0017】
さらに、本発明の加工食品の物性に変化を加えるために増粘安定剤を使用してもよく、例えばグアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストリン、ペクチン、寒天、セルロース、CMC、食物繊維、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。また、本発明の加工食品中の油脂の分散を良くするために乳化剤を使用することも可能である。例えば、レシチンやグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。いずれも発明の効果に影響をきたさない範囲内での使用ができる。
【0018】
本発明の耐熱性チーズ様加工食品の製造としては、酸化デンプン、油脂、水を主原料として、必要に応じて食塩、風味成分、酸味料、乳化剤、日持ち向上剤等の副原料を混合溶解した水相部に油脂を添加し、混合乳化させる。乳化の温度は乳化の効率と殺菌から80℃以上、望ましくは85〜95℃で混合物の粘度を下げた状態で行うのがよい。
【0019】
混合物の乳化機としては、ステファン型乳化機、表面掻取型乳化機、ケトル型乳化機またはスパイラル型乳化機等、通常のプロセスチーズの乳化に用いられる乳化機を使用することができる。また、乳化混合物の粘度が低い場合にはホモミキサーやプロペラミキサーを具備した混合乳化タンクであってもよい。加熱や温度の保持のためにジャケットタイプがよく、この時に直接蒸気の通気が可能な加圧耐用容器であれば短時間で加熱が行えるためより望ましい。乳化物の冷却方法としては、そのまま容器に移し替えて冷蔵庫等で保管することや容器をクーリングトンネルに通して連続式に行う方法が挙げられ、パーフェクターやオンレーター等の掻取式連続熱交換装置での冷却であってもよい。
【0020】
(パーム核極度硬化油の調製)
1リットルのオートクレーブにパーム核油(ヨウ素価18.0)100質量部、ニッケル触媒(堺化学工業株式会社製 SO−750R)0.3質量部添加し、水素圧0.2MPa、回転数750rpmで攪拌しながら、180℃で水素添加反応を行い、油脂のヨウ素価が0.5に低下するまで反応を続けた。その後、活性白土を0.3質量部添加して脱色、脱臭を行い表1に示す分析値を有する油脂1を得た。
【0021】
(エステル交換油の調製)
パーム核極度硬化油60質量部とパームオレイン40質量部を混合した油脂に、0.2質量部のナトリウムメトキシドを加え、80℃で60分混合攪拌してランダムエステル交換反応を行い、反応後、水洗して触媒を除去した。次に脱色、脱臭して表1に示す分析値を有する油脂2を得た。
【0022】
(その他油脂)
その他油脂として、パーム油(ヨウ素価51.2、油脂3)、パームステアリン(ヨウ素価31.5、油脂4)、大豆油(ヨウ素価130.8、油脂5)、パームオレイン(ヨウ素価57.5、油脂6)、パーム核極度硬化油70質量部とパームオレイン30質量部を混合した油脂(ヨウ素価17.6、油脂7)、バターから抽出したバターオイル(ヨウ素価31.7、油脂8)を用いて実施例、比較例を行った。実施例、比較例に使用した油脂1〜8の詳細な情報は表1に示した。
【0023】
実施例、比較例に使用した酸化デンプン及びヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、酸処理デンプンの由来原料は以下の通りである。酸化デンプン1:サゴヤシ、酸化デンプン2:コーン、酸化デンプン3:馬鈴薯、酸化デンプン4:ワキシーコーン、酸化デンプン5:タピオカ、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン:コーン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン:タピオカ、酸処理デンプン:サゴヤシ。
本発明に使用した酸化デンプンのアミロース含量及びカルボキシル基量は由来原料ごとに分類して表2に示し、表3〜表5に示した酸化デンプンの中のアミロース含量は表2の値をもとに算出した。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。尚、本発明の実施例における評価方法は下記の通りである。上昇融点については、基準油脂分析試験法2.2.4.2−1996にて、SFCについては、基準油脂分析試験法2.2.9−2013固体脂含量(NMR法)にて分析を行った。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
耐熱性チーズ様加工食品の品質評価
(耐熱保形性)
耐熱保形性の評価方法は以下の通りで行った。まずダイス状(縦20mm×横20mm×厚さ20mm)に成形した耐熱性チーズ様加工食品を濾紙を敷いたアルミカップの中に置き、190℃で6分間加熱した後、加熱前と加熱後の厚さを比較し、耐熱保形率を以下の式で算出した。
耐熱保形率=(加熱保持後の厚さ/加熱保持前の厚さ)×100(%)
なお耐熱性評価判定は耐熱保形率70%以上をもって耐熱性を有するものとし、以下の基準で3段階で評価した。
◎:90%以上 ○:70%以上90%未満 ×:70%未満
(硬度)
直径50mm、深さ25mmのカップに耐熱性チーズ様加工食品を30g入れ、5℃で3日間冷蔵保管した。株式会社山電製「クリープメータ レオナー(RE−3305S)」に該サンプルをセットし、プランジャーNo.5(5mm×22mm)、試料台速度を5mm/secに設定し、プランジャーを挿入した時の応力(gf)を読みとった。硬度は以下の基準で評価した。
◎:2000gf以上
○:1000gf以上〜2000gf未満
×:1000gf未満
(カット適性)
5℃で3日間冷蔵保管した耐熱性チーズ様加工食品を室温下、ナイフで切断した時の切り易さについて以下の基準で評価した。
◎:耐熱性チーズ様加工食品がナイフに付着することなく切れ、ナイフがほとんど汚れない
○:耐熱性チーズ様加工食品がナイフに付着するが、ナイフと耐熱性チーズ様食品は容易に分離する
×:耐熱性チーズ様加工食品がナイフに付着し、ナイフと耐熱性チーズ様食品が容易に分離しない
(加熱後の食感)
耐熱保形性と同様の方法で耐熱性チーズ様加工食品を加熱し、20℃まで品温を下げた後食した時の感覚を下記の基準で評価した。
〇:適度な弾力と粘りを感じる
×:適度な弾力と粘りを感じない
(30℃での油脂の分離)
ダイス状(縦20mm×横20mm×厚さ20mm)に成形した耐熱性チーズ様加工食品を30℃に静置させ、以下の基準で評価した。
〇:4時間以上経過しても耐熱性チーズ様加工食品の表面に油滴(=オイルオフ)が見られない
×:1時間以上4時間未満で耐熱性チーズ様加工食品の表面に油滴が見られる
【0028】
(実施例1)酸化デンプン:サゴヤシ
水相部として食塩1.5質量部、水39.5質量部を添加して昇温し、50℃に達した後、酸化デンプン1(アミロース含量:25質量%、カルボキシル基量:0.8質量%)33.0質量部を添加し、プロペラミキサー(1,300rpm)で混合攪拌して溶解させた。デンプンがしっかり膨潤糊化した後、油脂1を26.0質量部添加し乳化させ85℃まで混合攪拌した。85℃に到達後、そのままの回転数で1分間攪拌保持した。加熱乳化したチーズ様乳化物を容器に充填し、5℃の冷蔵庫で3日間冷却して耐熱性チーズ様加工食品を得た。このものについて耐熱保形性や加熱後の食感等を評価した。
該耐熱性チーズ様加工食品のタンパク質含量は0.0質量%、酸化デンプンの中のアミロース含量は25.0質量%、5℃における硬度は4,400gfであり、190℃、6分間加熱した際の耐熱保形性及び加熱後の食感とも良好な物性であった。品質評価結果は表3に示した。
【0029】
(実施例2) 酸化デンプン:コーン
表3に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表3に示した。
【0030】
(実施例3) 酸化デンプンの添加量:43質量部
表3に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表3に示した。
【0031】
(実施例4) 酸化デンプンの添加量:22質量部(サゴヤシ11質量部、コーン11質量部)
表3に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表3に示した。
【0032】
(実施例5〜6) 酸化デンプンと架橋デンプンの併用:ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン
表3に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表3に示した。
【0033】
(実施例7〜11) 油脂の変更:エステル交換油、パーム油、パームステアリン、配合油、バターオイル
表3に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表3に示した。
【0034】
(実施例12〜14) チーズ風味+その他副原料使用:大豆タンパク質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム使用
表4に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表4に示した。
【0035】
(実施例15) チーズ風味以外の加工食品:チョコレート風味
水相部として砂糖5.0質量部、水39.8質量部を添加して昇温し、50℃に達した後、酸化デンプン1(アミロース含量:25質量%、カルボキシル基量:0.8質量%)25.0質量部を添加し、プロペラミキサー(1,300rpm)で混合攪拌して溶解させた。デンプンがしっかり膨潤糊化した後、ココアパウダー10.0質量部を添加し、デンプンとよく馴染むように混合攪拌した。次に油脂1を20.0質量部添加し、乳化させ85℃まで混合攪拌した。85℃に到達後、チョコレート香料0.2質量部添加してそのままの回転数で1分間攪拌保持した。加熱乳化したチョコレート風味乳化物を容器に充填し、5℃の冷蔵庫で3日間冷却して耐熱性チョコレート風味加工食品を得た。品質評価結果は表4に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
(比較例1)酸化デンプン:馬鈴薯
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。
加熱後の食感がボソボソしており、適度な弾力と粘りを感じなかった。品質評価結果は表5に示した。
【0039】
(比較例2)酸化デンプン:ワキシーコーン
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。
耐熱保形率が0%であったため、加熱後の食感を評価することはできなかった。品質評価結果は表5に示した。
【0040】
(比較例3)酸化デンプン:タピオカ
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0041】
(比較例4)酸化デンプン添加量:40質量部(馬鈴薯20質量部、ワキシーコーン20質量部)
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。耐熱保形性がほとんどなかったため、加熱後の食感を評価することはできなかった。品質評価結果は表5に示した。
【0042】
(比較例5) 酸化デンプン以外の加工デンプン:酸処理デンプン
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造しようとしたが、水相部が高粘度となり油相部と乳化せず、耐熱性チーズ様加工食品を製造することはできなかった。
【0043】
(比較例6) 酸化デンプン以外の加工デンプン:ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造しようとしたが、水相部が高粘度となり油相部と乳化せず、耐熱性チーズ様加工食品を製造することはできなかった。
【0044】
(比較例7) 水/酸化デンプン:1.7以上
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。耐熱保形性が0%であったため、加熱後の食感を評価することはできなかった。品質評価結果は表5に示した。
【0045】
(比較例8) 水/酸化デンプンの比:0.6未満
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造しようとしたが、水相部が高粘度となり油相部と乳化せず、耐熱性チーズ様加工食品を製造することはできなかった。
【0046】
(比較例9)油脂の変更:大豆油
表5に示した配合により、実施例1と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0047】
(比較例10)油脂の変更:パームオレイン
表5に示した配合により、比較例1〜9と同様の手順で耐熱性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0048】
【表5】
【要約】
【課題】実質的に乳タンパク質を含有しないにもかかわらず、高温下でも耐熱保形性を有するチーズ様加工食品を提供する。更には乳成分をはじめとする食物アレルギーを引き起こす可能性のある原材料を含有しないチーズ様加工食品を提供する。
【解決手段】特定の加工デンプンと油脂と水を含有させ、微細化された無数の油滴粒子の周りを水により膨潤したデンプンが覆う乳化構造を有する加工食品とした。更には該加工食品の構成成分である油脂に特定の物性を持たせることで乳化構造の安定性を高め、高温下でも良好な耐熱保形性を有するチーズ様加工食品とした。

【選択図】なし