(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222794
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】金属箔を切断するために用いる刃物の損傷防止方法
(51)【国際特許分類】
B26D 3/00 20060101AFI20171023BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
B26D3/00 601Z
B32B15/08 H
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-54225(P2013-54225)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-177096(P2014-177096A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 保
(72)【発明者】
【氏名】西尾 宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 正尚
【審査官】
岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−132460(JP,A)
【文献】
特開2007−015795(JP,A)
【文献】
特開2008−174302(JP,A)
【文献】
特開2010−234594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00− 1/62
B26D 3/00− 3/30
B32B 1/00−43/00
B65D 65/38−65/42
B65D 75/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料及び樹脂ワニスとで構成される印刷インキを用いて白ベタ印刷が施されてなる金属箔を切断するために用いる刃物の損傷を防止する方法において、前記白色顔料は二酸化チタン表面が合成樹脂膜によって被覆されたものであることを特徴とする金属箔を切断するために用いる刃物の損傷防止方法。
【請求項2】
金属箔がアルミニウム箔である請求項1記載の金属箔を切断するために用いる刃物の損傷防止方法。
【請求項3】
二酸化チタンがルチル型二酸化チタンである請求項1記載の金属箔を切断するために用いる刃物の損傷防止方法。
【請求項4】
白色顔料は、一次粒子径の大きさが0.3μm以下のものが主体である請求項1記載の金属箔を切断するために用いる刃物の損傷防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白ベタ印刷が施されてなるアルミニウム箔等の金属箔
を切断するために用いる刃物の損傷を防止する方法に関し、特に包装材料として好適に使用しうる金属箔
を切断するために用いる刃物の損傷を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属箔に文字や図柄等の各種表示を印刷する際に、金属箔表面の金属光沢及び金属反射を消すために白ベタ印刷が施されている。たとえば、金属箔にバーコードを印刷する際に、金属光沢や金属反射を持つ金属箔表面に直接印刷すると、バーコードの読み取りが不良となるので、バーコードを印刷する前に、金属箔表面に白ベタ印刷を施すことが行われている。
【0003】
この白ベタ印刷は、二酸化チタン等の白色顔料を含む印刷インキを用い、これで金属箔表面を塗りつぶすことによって行われている。たとえば、特許文献1には、プレススルーパック用蓋材として用いるアルミニウム箔の一方表面に白ベタ印刷を施すことが記載されている(特許文献1、特許請求の範囲及び
図1)。
【0004】
【特許文献1】特開2012−28381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白ベタ印刷が施された金属箔は、包装材料として使用する際には、刃物を使用して所定の大きさに
切断されるわけであるが、本発明者は、この際に刃物の損傷が激しいことに気づいた。すなわち、白ベタ印刷が施されたアルミニウム箔は、白ベタ印刷が施されていないアルミニウム箔に比べて、刃物の刃の損傷が激しく、刃物の寿命が短くなることに気づいた。
【0006】
この原因を本発明者らが検討した結果、白ベタ印刷中に含まれている白色顔料にあるとの結論に至った。すなわち、白色顔料としては、二酸化チタンが用いられることが多く、特にルチル型二酸化チタンは高硬度であり、しかも白ベタ印刷に使われているインキは白色顔料を高濃度で含有しているため、これが刃を損傷すると考えられるのである。したがって、本発明の課題は、白ベタ印刷が施されてなる金属箔を切断する
ために用いる刃物の損傷を防止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは種々の検討を行った。たとえば、白色顔料ではなく染料を使用することも検討した。しかしながら、染料を用いた白ベタ印刷では、刃が損傷しにくくなるものの、顔料に比べて隠蔽力に劣るため、金属箔表面の金属光沢や金属反射を十分に消すことができなかった。しかるに、白色顔料として、その表面を合成樹脂膜で被覆したものを採用すると、刃が損傷しにくくなることを、本発明者らは発見した。本発明は、かかる発見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、白色顔料及び樹脂ワニスとで構成される印刷インキを用いて白ベタ印刷が施されてなる金属箔を
切断するために用いる刃物の損傷を防止する方法において、前記白色顔料は二酸化チタン表面が合成樹脂膜によって被覆されたものであることを特徴とする
金属箔を切断するために用いる刃物の損傷防止方法に関するものである。
【0009】
本発明の特徴は、白ベタ印刷を施す際の印刷インキとして、二酸化チタン表面が合成樹脂膜で被覆された白色顔料(以下、単に「白色顔料」というときは、二酸化チタン表面が合成樹脂膜で被覆されたものを意味している。)を用いる点にある。二酸化チタンには、ルチル型とアナターゼ型とが存在するが、本発明においてはいずれを用いてもよい。特に、ルチル型はアナターゼ型よりも硬度が高いため、より刃を損傷しやすいものであるので、本発明においてはルチル型の二酸化チタンを用いる方が有効である。また、ルチル型は光触媒作用が低いため、白ベタ印刷の顔料として適している。
【0010】
二酸化チタン表面は合成樹脂膜で被覆されている。合成樹脂膜で被覆することにより、高濃度の二酸化チタンが凝集しにくくなり、刃の損傷を防止しうると考えられる。合成樹脂膜を形成する合成樹脂としては、任意の合成樹脂を用いることができるが、具体的には、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体樹脂などを使用するのが好ましい。
【0011】
二酸化チタン表面を合成樹脂膜で被覆するには、加熱溶融させた酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体などの合成樹脂に、二酸化チタンを分散させ、その後、合成樹脂を冷却固化すればよい。また、エステル類やケトン類などの溶剤に合成樹脂を溶解させ、ここに二酸化チタンを分散させ、その後、溶剤を乾燥除去すればよい。二酸化チタンと合成樹脂膜との重量比は任意ではあるが、概ね、二酸化チタン:合成樹脂膜=80〜60:20〜40であるのが好ましい。
【0012】
白色顔料の大きさは、その一次粒子径の大きさが0.3μm以下であるのが好ましい。白色顔料の多くが、0.3μmを超える一次粒子径を持つものであると、刃が二酸化チタンに接触する可能性が高くなり、二酸化チタン表面を合成樹脂膜で被覆して、二酸化チタンの凝集を防止した本発明の作用を十分に発揮できなくなる。ここで、二酸化チタン表面が合成樹脂膜によって被覆された白色顔料の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2100B」)を用いて測定されるものである。
【0013】
本発明で用いられる印刷インキは、白色顔料と樹脂ワニスとで構成されている。樹脂ワニスは、樹脂を溶剤に溶解させたものである。樹脂ワニスに用いられる樹脂としては、従来公知の任意の樹脂を用いうるが、特に酢酸ビニル系重合体、塩化ビニル系重合体又は酢酸ビニル−塩化ビニル系共重合体などを用いるのが好ましい。また、溶剤としても、従来公知の各種有機溶剤を用いうるが、特にケトン類などを用いるのが好ましい。印刷インキを構成している白色顔料と樹脂ワニス中の樹脂との重量比は、任意ではあるが、概ね等量であるか又は白色顔料が若干少ない方が好ましい。また、樹脂ワニス中の溶剤は、所望の粘度となるよう適宜配合される。
【0014】
この印刷インキを用いて、金属箔表面に白ベタ印刷が施される。具体的には、印刷インキをバーコータ等によって、金属箔表面に塗りつぶせばよい。金属箔としては、包装材料として一般に使用されているアルミニウム箔が用いられるが、その他の銅箔や錫箔等の他の金属箔であってもよい。白ベタ印刷する際の印刷インキの塗布量は、従来公知の程度でよく、1〜5g/m
2程度である。
【0015】
白ベタ印刷の表面には、多くの場合、文字や図柄等の表示が印刷されるが、特にバーコードが印刷される。白ベタ印刷によりバーコードが読み取り不良になるのを、よく防止しうるからである。
【0016】
白ベタ印刷が施された金属箔は、包装材料に用いるのに好適である。たとえば、錠剤の容器であるプレススルーパックの蓋材、飲料容器の蓋材、食品包材等の包装材料として用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明
で用いる金属箔は、二酸化チタン表面が合成樹脂膜によって被覆された白色顔料を含む印刷インキを用いて、白ベタ印刷されたものである。この白色顔料は、二酸化チタン表面が合成樹脂膜で被覆されているので、凝集しにくく、良好な分散状態で白ベタ印刷される。したがって、白ベタ印刷層において、白色顔料はよく分散している。よって、
かかる金属箔を刃物で切断したとき、凝集した二酸化チタンに刃が当たる可能性が少なくなり、刃の損傷を防止しうるという効果を奏する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、二酸化チタン表面を合成樹脂膜で被覆した白色顔料を用いて、金属箔に白ベタ印刷を施すと、金属箔の切断時に刃が損傷しにくくなるという発見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0019】
実施例1
酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体30重量部をロール分散機上で加熱溶融させ、そこに、公称平均一次粒子径0.20μmのルチル型二酸化チタン70重量部を添加して分散させて、平均粒径0.26μm程度の白色顔料を得た。この白色顔料は、ルチル型二酸化チタン表面が酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体樹脂で被覆されてなるものである。
【0020】
この白色顔料45gを、塩化ビニル系樹脂40gをシクロヘキサノン200gに溶解させた塩化ビニル系樹脂ワニスに添加して、1時間、塗料分散機で混合分散させて、印刷インキを得た。
【0021】
この印刷インキを、厚さ17μmの硬質アルミニウム箔表面に、乾燥塗布量3.5±0.5g/m
2になるようにバーコータで塗布し、白ベタ印刷を行った。以上のようにして、白ベタ印刷が施されたアルミニウム箔を得た。
【0022】
比較例1
ルチル型二酸化チタン表面を酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体樹脂で被覆しない他は、実施例1と同一の方法で白ベタ印刷が施されたアルミニウム箔を得た。
【0023】
[刃の損傷試験]
実施例1及び比較例1で得られた白ベタ印刷が施されたアルミニウム箔を、以下の方法で切断した。すなわち、フェザー安全剃刀株式会社製のステンレス鋼刃物を、白ベタ印刷面に対して20度の角度で当てて、110mm刃物を移動させて、アルミニウム箔を切断した。この切断を50回行った後に、ステンレス鋼刃物の刃をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した。実施例1で得られたアルミニウム箔を切断した刃のSEM写真を
図1に示し、比較例1で得られたアルミニウム箔を切断した刃のSEM写真を
図2に示した。両者の写真を対比すれば明らかなとおり、実施例1で得られたアルミウニウム箔を切断した場合は、刃の損傷が少ないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1で得られたアルミニウム箔を所定回数切断した後の刃のSEM写真(倍率1500倍)である。
【
図2】比較例1で得られたアルミニウム箔を所定回数切断した後の刃のSEM写真(倍率1500倍)である。