特許第6222795号(P6222795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222795
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】画像診断装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171023BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61B6/03 360Q
   A61B6/03 323A
   A61B6/03 377
   G01T1/161 A
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-139137(P2012-139137)
(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-329(P2014-329A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熨斗 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中西 知
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−045318(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/063957(WO,A1)
【文献】 特開2005−291814(JP,A)
【文献】 特開2007−007415(JP,A)
【文献】 特開2006−320545(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0122575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像位置における撮像で得られた被検体の撮像画像の補正を行う補正部を備え、
前記補正部は、
前記被検体の位置決め画像を収集する位置決め画像収集部と、
前記収集した位置決め画像から、前記被検体の荷重分布を推定する荷重分布推定部と、
前記被検体を載せた天板の支点から撮像位置までの距離、及び、推定された前記荷重分布に基づいて、前記撮像位置における前記天板の撓み量を推定する天板撓み量推定部と、
を含み、
前記撮像位置における前記天板の撓み量に基づいて、前記撮像位置における前記天板の高さ及び傾きを求め、前記撮像位置における前記天板の高さ及び傾きに基づいて、前記撮像位置における撮像で得られた撮像画像の位置を、所定の撮像位置における撮像で得られた前記被検体の撮像画像の位置に合わせる位置合わせを行うことにより、前記補正を行う、
画像診断装置。
【請求項2】
前記荷重分布推定部は、
前記被検体の荷重が、前記天板の複数の点に分布する場合の荷重分布を推定し、
前記天板撓み量推定部は、
推定された前記複数の点に分布する荷重分布と、当該荷重分布における前記天板の支点から荷重位置までの距離とに基づいて、前記天板の撓み量を推定する
請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
推定された前記荷重分布から、前記被検体の重心位置を推定する重心推定部をさらに備え、
前記天板撓み量推定部は、
推定された前記重心位置と、当該重心位置にかかる荷重とに基づいて、前記天板の撓み量を推定する
請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記天板の支点から荷重位置までの距離と、当該荷重位置にかかる荷重とに基づいて、天板の撓み量を推定するテーブルをさらに備え、
前記天板撓み量推定部は、
前記重心推定部で推定された前記重心位置を、前記天板の支点から荷重位置までの距離に換算し、当該換算された天板の支点から荷重位置までの距離と、前記重心位置にかかる荷重とに基づいて、前記テーブルから前記天板の撓み量を推定する
請求項3に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記荷重分布推定部は、
前記収集した位置決め画像において輝度を示す輝度値を体軸位置ごとに積分した輝度値積分値を算出し、当該輝度値積分値に基づいて、前記荷重分布を推定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記荷重分布推定部は、
前記収集した位置決め画像に基づき、前記被検体の体軸位置ごとの水等価厚を推定した水等価厚プロファイルを算出し、当該水等価厚プロファイルに基づいて、前記荷重分布を推定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記補正部は、
複数の撮像位置の各位置における前記天板の撓み量に基づいて、前記各位置における前記天板の高さ及び傾きを推定して、前記補正を行う
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記補正部は、
ヘリカルスキャン方式により撮像されたX線CT画像と、ステップアンドシュート方式により撮像されたPET画像との位置合わせを行うために、前記X線CT画像及び/又は前記PET画像の前記補正を行う
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項9】
前記補正部は、
ステップアンドシュート方式によって連続的に撮像されたX線CT画像のボリュームデータごとに前記補正を行う
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像診断装置。
【請求項10】
画像診断装置における制御方法であって、
撮像位置における撮像で得られた被検体の撮像画像の補正を行う補正ステップを含み、
前記補正ステップは、
前記被検体の位置決め画像を収集する位置決め画像収集ステップと、
前記収集した位置決め画像から、前記被検体の荷重分布を推定する荷重分布推定ステップと、
前記被検体を載せた天板の支点から撮像位置までの距離、及び、推定された前記荷重分布に基づいて、前記撮像位置における前記天板の撓み量を推定する天板撓み量推定ステップと、
を含み、
前記撮像位置における前記天板の撓み量に基づいて、前記撮像位置における前記天板の高さ及び傾きを求め、前記撮像位置における前記天板の高さ及び傾きに基づいて、前記撮像位置における撮像で得られた撮像画像の位置を、所定の撮像位置における撮像で得られた前記被検体の撮像画像の位置に合わせる位置合わせを行うことにより、前記補正を行う、
画像診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、画像診断装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の医用画像診断装置を一体化させた医用画像診断装置が実用化されている。具体的には、被検体の生体組織における機能診断を行うPET(Positron Emission Tomography)診断装置と、被検体の生体組織における形態情報を画像化するX線CT(Computed Tomography)装置を一体化させた装置(これをPET−CT装置ともいう。)が実用化されている。
【0003】
このPET−CT装置は、PET検査とX線CT検査を連続して検査することができる。これにより、PET−CT装置では、一台の装置においてPET画像とX線CT画像を生成して、PET画像とX線CT画像とを重ね合わせたフュージョン画像を生成することができるようになっている。
【0004】
ところで、このような医用画像診断装置では、一般的には、PET診断装置で使用するPET用ガントリ(放射線検出部)と、X線CT装置で使用するX線CT用ガントリ(X線スキャン部)が、互いに近接して配置されるようになっている。また、このような医用画像診断装置は、被験者を載せる天板を有する寝台を備えており、PET診断装置とX線CT装置において、この寝台を共有するようになっている。
【0005】
また、このような医用画像診断装置では、PET診断装置のPET用ガントリとX線CT装置のX線CT用ガントリが順次並ぶよう縦列的な位置関係を有し、PET用ガントリとX線CT用ガントリを通り抜けるように、両ガントリ内にトンネル部が設けられている。寝台は、両ガントリ内のトンネル部へ天板の長さ方向に天板を挿入している。
【0006】
したがって、このような医用画像診断装置では、寝台からPET診断装置の放射線検出部までの距離と、寝台からX線CT装置のX線スキャン部までの距離が異なるため、各ガントリの撮像位置における荷重により天板の沈み込み(これを天板の撓みともいう。)もそれぞれ異なっている。そのため、天板の撓みを補正する方法が種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−167408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、複数の撮像方式を有する医用画像診断装置は、撮像方式ごとに撮像が行われるため、撮像面の示す位置(撮像位置)が異なり、各撮像位置における天板の撓みが異なる。すわなち、PET用ガントリとX線CT用ガントリとにおいて、同一の撮像部位であっても、荷重による天板の撓みはそれぞれ異なる。また、PET診断装置ではPET画像に天板の位置が映らないので、PET画像とX線CT画像とを重ね合わせる際、撮像した画像間で天板の位置の位置合わせが困難となり、PET画像とX線CT画像を適切に重ね合わせた高精度な融合画像を生成することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態によれば、画像診断装置は、撮像位置における撮像で得られた被検体の撮像画像の補正を行う補正部を備え、前記補正部は、前記被検体の位置決め画像を収集する位置決め画像収集部と、前記収集した位置決め画像から、前記被検体の荷重分布を推定する荷重分布推定部と、前記被検体を載せた天板の支点から撮像位置までの距離、及び、推定された前記荷重分布に基づいて、前記撮像位置における前記天板の撓み量を推定する天板撓み量推定部と、を含み、前記撮像位置における前記天板の撓み量に基づいて、前記撮像位置における前記天板の高さ及び傾きを求め、前記撮像位置における前記天板の高さ及び傾きに基づいて、前記撮像位置における撮像で得られた撮像画像の位置を、所定の撮像位置における撮像で得られた前記被検体の撮像画像の位置に合わせる位置合わせを行うことにより、前記補正を行う
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るPET−CT装置の構成例を示す概念図。
図2】本実施形態に係る寝台装置の移動を説明するための説明図。
図3】本実施形態に係るコンソール装置の構成を示した構成図。
図4】本実施形態に係るPET用架台装置が、天板の支点からガンマ線を検出するガンマ線検出範囲までの天板の撓みを含めた撮像範囲について説明するための説明図。
図5】本実施形態に係るPET用架台装置が、ステップアンドシュート方式で撮像した撮像画像における天板だれを説明するための説明図。
図6】本実施形態に係るPET用架台装置が、ステップアンドシュート方式によって被検体を撮像した場合の天板の位置を説明するための説明図。
図7】本実施形態に係るCT用架台装置が、ヘリカルスキャン方式によって被検体を撮像した場合の天板の位置を説明するための説明図。
図8】ステップアンドシュート方式で撮像された撮像画像と、ヘリカルスキャン方式で撮像された撮像画像との画像間での位置ずれを説明するための説明図。
図9】本実施形態に係るPET−CT装置のコンソール装置の補正部の構成を示した機能ブロック図。
図10】本実施形態の荷重分布推定部において、被検体のスキャノ像から、被検体の荷重分布を推定する推定方法の一例を示した説明図。
図11】天板に被検体が載っている状態で、天板に被検体の荷重が4点に分布している状態を示した説明図。
図12】天板上において、支点から撮像位置までの距離の変化と、その撮像位置での天板だれ量との関係を説明した説明図。
図13】本実施形態に係るPET-CT装置の画像処理における全体的な処理手順を示したフローチャート。
図14】本実施形態に係るPET−CT装置の補正部(図9)において、天板だれ補正量を推定する天板だれ補正量推定処理の手順を示したフローチャート。
図15】第2の実施形態に係るPET−CT装置のコンソール装置の補正部の構成を示した機能ブロック図。
図16】第2の実施形態に係る重心推定部において、被写体の重心位置を推定する概念を説明した説明図。
図17】第2の実施形態に係るモーメントと天板だれ量との相関関係を示す説明図。
図18】第2の実施形態に係るPET−CT装置の補正部(図9)において、天板だれ補正量を推定する天板だれ補正量推定処理の手順を示したフローチャート。
図19】第3の実施形態に係る位置合わせ調整部が、ボリュームデータの天板位置が揃うように位置合わせを行った場合のX線CT画像の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態に係るPET−CT装置(画像診断装置)100について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、撮像方式が異なる複数の医用画像診断装置を一体化した装置の一例として、PET−CT装置を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るPET−CT装置100の概略の構成を示した概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、PET−CT装置100は、PET用架台装置1、CT用架台装置2、寝台装置3、コンソール装置4を備えて構成されている。なお、被検体Pは、ラジオアイソトープまたはその標識化合物が投与されているものとする。
【0014】
PET用架台装置1は、被検体Pに投与された陽電子放出核種を取り込んだ生体組織から放出される一対のガンマ線を検出して、PET画像を再構成するためのガンマ線の投影データ(これをガンマ線投影データともいう。)を生成する装置である。すなわち、このPET用架台装置1は、ラジオアイソトープなどの標識化合物が生体内の特定の組織や臓器に選択的に取り込まれる性質を利用して、そのアイソトープから放出されるガンマ線を体外で測定し、ラジオアイソトープの線量分布を画像化するようになっている。
【0015】
CT用架台装置2は、被検体Pの体外からX線を照射し、被検体Pの組織や臓器を透過したX線を検出して、X線CT画像を再構成するためのX線投影データを生成する装置である。すなわち、CT用架台装置2は、組織や臓器におけるX線透過率の差を画像化したり、検出器によってX線の強度を測定して、その値から画像再構成する機能を有している。
【0016】
寝台装置3は、被検体Pを載せるベッドであり、天板31と、寝台32を備えている。寝台装置3は、コンソール装置4を介して受け付けたPET−CT装置100の操作者からの指示に基づいて、PET用架台装置1およびCT用架台装置2それぞれの撮像口に移動される。すなわち、PET−CT装置100は、コンソール装置4からの指示に基づいて寝台装置3を移動させることにより、X線CT画像の撮像を行ったり、PET画像の撮像を行うようになっている。ここで、寝台装置3の移動について説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る寝台装置3の移動を説明するための説明図である。
【0018】
図2に示すように、コンソール装置4は、図示しない駆動機構によって天板31と寝台32を被検体Pの体軸方向に移動させる。例えば、X線CT画像の撮像時には、図2(A)に示すように、PET−CT装置100は、天板31をCT用架台装置2の方向に水平移動させる。そして、PET−CT装置100は、天板31を水平移動させる天板の連続移動方式により、被検体Pの撮像部位に対してスキャンを行う(この一例として、螺旋状でかつ連続的にX線でスキャンを行うヘリカルスキャン方式がある。)。そして、CT用架台装置2は、X線CT画像を撮像する。なお、X線は、電磁波の一種であり、数百オングストロームから0.1オングストロームまでの波長を有している。
【0019】
また、PET−CT装置100は、X線CT画像の撮影を行った後、図2(B)に示すように、天板31が寝台32から繰り出されたままの状態で、寝台32を体軸方向に水平移動させる。そして、PET−CT装置100は、被検体Pの撮像部位をPET用架台装置1の撮像口内に挿入させる。
【0020】
ここで、寝台32は、図2(B)に示すように、PET用架台装置1とCT用架台装置2のそれぞれの検出器の中心位置間の距離「a」と、同一の距離を移動する。すなわち、寝台32が距離「a」を移動することにより、被検体Pの同一部位を撮像する際の寝台32からの繰り出し量を同一にしている。
【0021】
そして、PET−CT装置100は、PET画像を撮像する際は、被検体Pの一部分を撮像した後に、撮像を停止した状態から天板31を所定の移動量だけステップ状に水平移動させ、さらに他の部分を撮像する。このように、PET−CT装置100のPET用架台装置1は、移動と撮像を繰り返す撮像方式(これをステップアンドシュート方式ともいう。)により、被検体Pの広い範囲を撮像することができる。
【0022】
図1に示したコンソール装置4は、操作者からの指示を受け付けて、PET−CT装置100の撮像処理を制御する装置である。ここで、コンソール装置4の構成について説明する。
【0023】
図3は、本実施形態に係るコンソール装置4の構成を示した構成図である。
【0024】
図3に示すように、コンソール装置4は、X線投影データ記憶部41、CT画像再構成部42、ガンマ線投影データ記憶部43、PET用再構成部44、補正データ記憶部45、減弱マップ生成部50、補正部46および制御部47を備えて構成されている。
【0025】
X線投影データ記憶部41は、CT用架台装置2から送信されるX線投影データを記憶するようになっている。具体的には、X線投影データ記憶部41は、X線CT画像を再構成するためのX線投影データを記憶する。また、X線投影データ記憶部41は、スライス画像の撮像に先立って、スライス画像のスライス位置を決定するための位置決め画像(これをスキャノ像ともいう。)を再構成するための投影データも記憶する。なお、スキャノ像を再構成する投影データは、X線投影データと同様に、CT用架台装置2から送信されるようになっている。
【0026】
CT画像再構成部42は、X線投影データ記憶部41が記憶する再構成用のX線投影データを、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法により逆投影処理することにより、X線CT画像を再構成する。具体的には、CT画像再構成部42は、PET-CT装置100を用いた全身検査において、撮像計画により決定された撮像条件(例えば、スライス幅など)に基づいて、被検体Pの体軸方向に直交する複数の断面画像を撮像した複数のX線CT画像を、X線投影データから再構成する。また、CT画像再構成部42は、X線CT画像を再構成する前にスキャノ像をX線投影データから再構成する。そして、CT画像再構成部42は、再構成されたスキャノ像とX線CT画像を、補正データ記憶部45にそれぞれ格納する。
【0027】
ガンマ線投影データ記憶部43は、PET用架台装置1から送信されるガンマ線投影データを記憶する。
【0028】
PET用再構成部44は、ガンマ線投影データ記憶部43が記憶するガンマ線投影データから、例えば、統計的再構成法によりPET画像を再構成する。また、PET用再構成部44は、後述する減弱マップを用いてPET画像の減弱補正を行う。そして、PET用再構成部44は、再構成されたPET画像を補正データ記憶部45に格納する。
【0029】
補正データ記憶部45は、CT画像再構成部42で再構成されたX線CT画像、スキャノ像、PET用再構成部44で再構成されたPET画像を記憶する。また、補正データ記憶部45は、天板だれ量カーブを示す天板だれ量データベースも格納している。なお、この天板だれ量データベースの詳細については後述する。
【0030】
減弱マップ生成部50は、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像を用いて、被検体Pの体内で生じるガンマ線の減弱を補正するための減弱マップ(μMap)を生成する。なお、減弱マップとは、X線CT画像から画素値を変換したものである。また、減弱マップ生成部50は、後述する天板だれ補正量に基づいて、PET画像とX線CT画像の天板の高さが合うように事前に減弱マップを補正する。そして、減弱マップ生成部50は、補正した減弱マップを補正データ記憶部45に格納する。
【0031】
補正部46は、補正データ記憶部45に格納されているスキャノ像、X線CT画像およびPET画像を読み出すとともに、補正データ記憶部45に格納されている天板だれ量データベースを読み出す。補正部46は、PET用再構成部44において減弱補正が行われたPET画像をX線CT画像の位置に補正する。補正部46は、後述する推定された天板だれ補正量に基づいて、減弱補正されたPET画像の位置を補正した後、X線CT画像と融合画像を生成するようになっている。この補正部46の詳細については後述する。
【0032】
制御部47は、PET-CT装置100の全体動作を制御する。具体的には、制御部47は、PET用架台装置1、CT用架台装置2、天板31及び寝台32の動作を制御することにより、PET-CT装置100による撮像処理を制御する。
【0033】
例えば、制御部47は、X線投影データ記憶部41が記憶するX線再構成用のX線投影データを用いて、CT画像再構成部42で再構成する処理を制御する。また、制御部47は、ガンマ線投影データ記憶部43が記憶するガンマ線投影データを用いて、PET用再構成部44で再構成する処理や減弱補正を制御する。また、制御部47は、補正部46の補正処理を制御するとともに、図示しない入出力装置から操作者の指示を受け付けて、図示しない表示部に融合画像を表示させるように制御する。
【0034】
なお、制御部47は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成されている。
【0035】
CPUは、ROMに格納されている各種プログラムをRAMにロードして、そのプログラムを展開することにより、各種プログラムの機能を実現することできる。RAMは、ワークエリア(作業用メモリ)として利用されるようになっている。ROMは、各種プログラムを格納するようになっている。ROMに格納されている各種プログラムには、各撮像処理、各再構成処理、減弱補正および補正部46の補正処理などを実現するためのプログラムが含まれている。
【0036】
次に、PET用架台装置1においてステップアンドシュート方式で撮像する場合と、CT用架台装置2においてヘリカルスキャン方式で撮像する場合の画像間のずれについて、説明する。
【0037】
図4は、本実施形態に係るPET用架台装置1が、天板31の支点0からガンマ線を検出するガンマ線検出範囲までの天板31の撓みを含めた撮像範囲について説明するための説明図である。
【0038】
図4に示すように、PET用架台装置1は、距離z2を中心とする距離z1から距離z3までの撮像範囲のガンマ線を検出するようになっている。この図では、天板31の高さhは、距離z1の撮像位置における天板31の高さh1よりも、距離z2の撮像位置における天板31の高さh2の方が低く、また、距離z3の撮像位置における天板31の高さh3は、距離z1とz2の撮像位置における天板31の高さよりも低いことを示している。なお、距離z1から距離z3は、支点0からの天板31のストローク量(繰り出し量)を示している。また、支点0は、ストローク量の基準となる任意の基準位置である。
【0039】
このように、図4では、天板31の支点0から天板31の撮像位置の距離が遠くなると、天板31が紙面の下方向に撓むことを示している。なお、このように天板31が撓むこと(天板31が沈み込んだ状態)を天板だれと記載し、また、天板31が撓んだ量を天板だれ量と記載することがある。したがって、この天板だれは、天板31の高さhで表現することもできる。
【0040】
図5は、本実施形態に係るPET用架台装置1が、ステップアンドシュート方式で撮像した撮像画像における天板だれを説明するための説明図である。なお、PET画像の撮像領域をスキャン領域として説明する。また、図5に示すベッドB1、ベッドB2およびベッドB3は、PET画像の撮像位置(撮像範囲)を示している。また、図5の各図では、被検体Pが示されていないが、実際には、天板31上に被検体Pが載せられた場合の天板だれを示している。
【0041】
図5に示すように、天板だれ量は、寝台32から天板31を繰り出すストローク量によって異なる。例えば、図5(A)に示すように、寝台32から天板31が繰り出された状態でベッドB1の位置でスキャンを実行する場合、被検体Pの負荷(荷重)が天板31に与える影響が大きく、スキャン領域における天板だれ量も大きくなる。
【0042】
一方、図5(B)および(C)に示すように、天板31を繰り出すストローク量が減少すると、被検体Pの負荷(荷重)が天板31に与える影響が低減し、スキャン領域における天板だれ量も小さくなる。すなわち、図5(B)に示すように、ベッドB2の位置でスキャンを実行する場合、天板31の天板だれ量は、ベッドB1の位置でスキャンを実行する場合の天板だれ量よりも小さくなる。また、図5(C)に示すように、ベッドB3の位置でスキャンを実行する場合、天板31の天板だれ量は、ベッドB1の位置での天板だれ量やベッドB2の位置での天板だれ量よりも小さくなる。
【0043】
図6は、本実施形態に係るPET用架台装置1が、ステップアンドシュート方式によって被検体Pを撮像した場合の天板31の位置を説明するための説明図である。なお、天板31の位置は、撮像位置における天板31の高さと傾きを示しているものとする。
【0044】
図6に示すように、この図では、PET用架台装置1が、ベッドB1、ベッドB2およびベッドB3の位置で天板31を撮像した場合の被検体Pの体軸方向の断面を示している。すなわち、PET用架台装置1がステップアンドシュート方式で被検体Pを撮像した場合、ベッドの撮像位置ごとに天板だれ量が異なるので、天板31の位置はベッド間で段差が生じることを示している。次に、CT用架台装置2が、ヘリカルスキャン方式によって被検体Pを撮像した場合の天板31の位置について説明する。
【0045】
図7は、本実施形態に係るCT用架台装置2が、ヘリカルスキャン方式によって被検体Pを撮像した場合の天板31の位置を説明するための説明図である。
【0046】
図7に示すように、この図では、CT用架台装置2が、ヘリカルスキャン方式で天板31を連続的に撮像した場合の天板31の体軸方向の断面を示している。すなわち、CT用架台装置2がヘリカルスキャン方式で天板31を撮像した場合、撮像したその複数の断面画像を用いて天板31の体軸方向の断面を示している。なお、図7に示す複数の矩形は、断面画像のスライス幅を示している。また、図7に示す直線LN1は、各断面画像における天板31の中心を通る直線を示している。
【0047】
CT用架台装置2がヘリカルスキャン方式で被検体Pを撮影した場合、天板31のストローク量の増加に伴い、天板31の天板だれ量が大きくなることから、各断面画像における天板31の高さは、天板31のストローク量の増加に伴い、徐々に低くなる。
【0048】
ここで、ヘリカルスキャン方式で撮像されたX線CT画像を体軸方向に見た場合の天板31の高さは、天板31の中心を通る直線LN1となる。次に、ステップアンドシュート方式で撮像された撮像画像と、ヘリカルスキャン方式で撮像された撮像画像の位置ずれについて説明する。
【0049】
図8は、ステップアンドシュート方式で撮像された撮像画像と、ヘリカルスキャン方式で撮像された撮像画像との画像間での位置ずれを説明するための説明図である。
【0050】
図8に示すように、この図では、図6で示したステップアンドシュート方式で撮像した撮像画像における天板31の位置(これを直線LN2で示す。)と、図7で示したヘリカルスキャン方式で撮像した撮像画像における天板31の位置(前述した直線LN1である。)とを示している。
【0051】
図8の直線LN1と直線LN2が示すように、各撮像方式によって撮像されたそれぞれの天板31は、天板31の傾きがそれぞれ異なるので、それぞれ撮像画像の位置がずれることを示している。すなわち、このような天板31の位置のずれは、PET画像とX線CT画像を融合する際に画像間のずれを生じさせ、高精度な補正の実行および融合画像を得ることができなくなる。
【0052】
そこで、第1の実施形態に係るPET−CT装置100は、上述した補正部46において、X線CT画像を撮像する際のスキャノ像画像(位置決め画像)から被検体Pの荷重分布を推定して、天板だれ量を推定することにより、撮像画像の補正処理を行うことができるようになっている。
【0053】
これにより、PET−CT装置100は、推定された天板だれ量に基づいて、X線CT画像とPET画像の位置合わせを行うことができるので、天板31の位置合わせを適切に行い、PET画像とX線CT画像を融合した高精度な補正の実行および融合画像を得ることができる。
【0054】
このように、本実施形態に係るPET−CT装置100は、天板31が映っていないスキャノ像からでも天板31の天板だれ量を推定することができるので、天板31が映っているX線CT画像を必要とせず、また、天板31の天板だれ量を実測することなく、撮像画像に対して補正を行うことができる。
【0055】
次に、PET−CT装置100のコンソール装置4における補正部46について説明する。
【0056】
図9は、本実施形態に係るPET−CT装置100のコンソール装置4の補正部46の構成を示した機能ブロック図である。
【0057】
図9に示すように、補正部46は、画像収集部461、荷重分布推定部462、天板撓み量推定部464および位置合わせ調整部465を備えて構成されている。また、補正部46は、補正データ記憶部45に接続されている。
【0058】
画像収集部461は、被検体Pのスキャノ像を補正データ記憶部45から収集するようになっている。
【0059】
荷重分布推定部462は、画像収集部461で収集したスキャノ像から被検体Pの荷重分布を推定するようになっている。ここで、スキャノ像から被検体Pの荷重分布を推定する方法について、図面を用いて説明する。
【0060】
図10は、本実施形態の荷重分布推定部462において、被検体Pのスキャノ像から、被検体Pの荷重分布を推定する推定方法の一例を示した説明図である。
【0061】
図10に示すように、この図では、被検体Pのスキャノ像が表示されている。また、スキャノ像として表示されている部位は、図10の左端に被検体Pの肩が位置し、そこから紙面右方向に向けて、肺、内臓などが表示されている。また、図10に示す輝度値積分値は、被検体Pの臓器や骨などの組織の密度(密集度)を示している。すなわち、輝度値積分値は、被検体Pの体重の分布を示している。
【0062】
荷重分布推定部462は、スキャノ像から輝度値積分値を求めた後、その輝度値積分値から被検体Pの水等価厚を算出して、体軸ごとの水等価厚プロファイルを生成する。荷重分布推定部462は、その生成した水等価厚プロファイルのAUC(Area Under Curve)から、被検体Pの荷重分布を推定する。
【0063】
なお、水等価厚プロファイルの生成は、輝度値積分値から生成されているが、これに限定されるものではなく、スキャノ像の画素値と水ファントムの直径から体厚を計算し、その体厚から水等価厚を推定することもできる。また、AUCとは、水等価厚プロファイルの曲線の下面積のことを意味しており、横軸とその曲線によって囲まれた部分の面積のことをいう。また、水等価厚プロファイルとは、体軸ごとの体重を分析した分析結果または分析情報を意味している。
【0064】
図11は、天板31に被検体Pが載っている状態で、天板31に被検体Pの荷重が4点に分布している状態を示した説明図である。
【0065】
図11に示すように、天板31上には、4点(4箇所)に荷重が分布していることを示している。具体的には、支点0に近いほうから、荷重KJ1、荷重KJ2、荷重KJ3および荷重KJ4が、天板31に分布している。なお、この荷重の分布は例示であり、4点に限定されるものではなく、輝度値積分値や水等価厚プロファイルから、任意の荷重分布を推定することができる。また、被検体Pの性別や年齢なども考慮して、荷重分布を推定するようにしてもよい。
【0066】
天板撓み量推定部464(図9)は、荷重分布推定部462(図9)で推定された荷重分布から、被検体Pを載せた天板31の天板だれ量(撓み量)を推定するようになっている。天板撓み量推定部464は、天板だれ量を推定する任意の算出手段を適用することができる。例えば、公知技術である「梁のダレ量」算出方法を用いて、天板31の支点から撮像位置までの距離、支持部の位置、荷重位置および荷重分布などから天板31の天板だれ量を推定(算出)することができる。ここで、天板31の天板位置の移動と、スキャン位置との関係について、図面を用いて説明する。
【0067】
図12は、天板31上において、支点0から撮像位置までの距離の変化と、その撮像位置での天板だれ量との関係を説明した説明図である。
【0068】
図12に示すように、この図では、天板31の繰り出し量により、天板31が天板位置311から天板位置313までの範囲を移動することを示している。具体的には、天板31の位置が天板位置311の場合、天板31は、撮像位置B1を中心として、撮像位置A1から撮像位置C1までをスキャン領域とするように位置している。
【0069】
一方、天板31の位置が天板位置312の場合、天板31は、撮像位置B2を中心として、撮像位置A2から撮像位置C2までをスキャン領域とするように位置している。他方、天板31の位置が天板位置313の場合、天板31は、撮像位置B3を中心として、撮像位置A3から撮像位置C3までをスキャン領域とするように位置している。
【0070】
図12から明らかなように、天板位置313では、天板31の天板だれ量が最も多く、また、天板位置311では、天板31の天板だれ量が最も少ないことが明示されている。また、支点0から最も撮像範囲の遠い撮像距離Cにおいては、天板だれ量の差が顕著に表れている。
【0071】
天板撓み量推定部464(図9)は、天板だれ量(撓み量)を推定した後、この推定した天板だれ量を補正データ記憶部45に格納する。なお、この推定された天板だれ量は、天板だれ補正量の一部として取り扱うことできるものとする。
【0072】
位置合わせ調整部465(図9)は、天板撓み量推定部464で推定された天板だれ量(撓み量)に基づいて、天板31の傾きを推定して、被検体Pを撮像した撮像画像ごとに位置合わせを行うようになっている。
【0073】
以上説明したように、本実施形態では、PET−CT装置100は、補正部46において、X線CT画像を撮像する際のスキャノ像から天板31にかかる被検体Pの荷重分布を推定し、その荷重分布から天板31の天板だれ量を推定する。これにより、PET−CT装置100は、推定された天板だれ量に基づいて、PET画像およびX線CT画像のそれぞれの位置合わせを行うことができる。なお、位置合わせに用いるPET画像は、PET用再構成部44において減弱補正がされたPET画像であって、補正データ記憶部45に格納されているPET画像が用いられる。
【0074】
このように、本実施形態に係るPET−CT装置100は、天板31が映っていないスキャノ像からでも天板31の天板だれ量を推定することができるので、天板31が映っているX線CT画像を必要とせず、また、天板31の天板だれ量を実測することなく、撮像画像に対して補正を行うことができる。
【0075】
次に、本実施形態に係るPET−CT装置100の画像処理における全体的な処理手順について説明する。
【0076】
図13は、本実施形態に係るPET-CT装置100の画像処理における全体的な処理手順を示したフローチャートである。
【0077】
まず、本実施形態に係るPET−CT装置100のCT用架台装置2は、天板31に載せられている被検体Pに対して、スキャノ像を取得するためにスキャノスキャンを実行する(ステップS001)。CT用架台装置2は、ヘリカルスキャン方式により被検体Pを撮像すると、スキャノ像を生成するためのX線投影データをX線投影データ記憶部41に格納する。
【0078】
次に、PET−CT装置100は、本スキャンを実行する(ステップS003)。具体的には、CT用架台装置2は、天板31に載せられている被検体Pに対してヘリカルスキャン方式によりX線を照射して、X線CT画像を再構成するためのX線投影データを生成する。また、PET用架台装置1は、天板31に載せられている被検体Pに対してステップアンドシュート方式によりガンマ線を検出して、PET画像を再構成するためのガンマ線投影データを生成する。
【0079】
次に、コンソール装置4の補正部46は、PET用架台装置1によって生成されるPET画像の位置合わせを行うための天板だれ補正量推定処理を実行する(ステップS005)。補正部46は、天板だれ補正量推定処理により天板だれ補正量(天板31の天板だれ量と天板31の傾き)を推定し、補正部46に格納する。
【0080】
次に、CT画像再構成部42は、X線投影データ記憶部41に記憶されているX線投影データを用いてX線CT画像を再構成する(ステップS007)。そして、CT画像再構成部42は、再構成したX線CT画像を補正データ記憶部45に格納するとともに、減弱マップ生成部50に送出する。
【0081】
次に、減弱マップ生成部50は、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像を用いて、ガンマ線の減弱を補正するための減弱マップ(μMap)を生成する(ステップS009)。
【0082】
次に、減弱マップ生成部50は、補正データ記憶部45に格納されている天板だれ補正量(天板31の天板だれ量と天板31の傾き)に基づいて、PET画像と天板の高さが合うように減弱マップをPET画像の位置に補正し(ステップS011)、補正された減弱マップを補正データ記憶部45に格納する。
【0083】
次に、PET用再構成部44は、ガンマ線投影データ記憶部43に記憶されているガンマ線投影データを用いてPET画像を再構成する(ステップS013)。この場合、PET用再構成部44は、補正データ記憶部45から減弱マップを読み出し、その読み出した減弱マップとガンマ線投影データを用いてPET画像を再構成(減弱補正)する。そして、PET用再構成部44は、再構成されたPET画像を補正データ記憶部45に格納する。
【0084】
次に、補正部46は、減弱補正されたPET画像と、X線CT画像を補正データ記憶部45から読み出し、位置合わせ調整部465においてPET画像をX線CT画像の位置に補正する(ステップS015)。そして、補正部46は、X線CT画像と補正したPET画像を融合し、その融合画像を補正データ記憶部45に格納する。
【0085】
次に、制御部47は、補正データ記憶部45に格納された融合画像を読み出して、X線CT画像と補正後のPET画像を融合した融合画像をコンソール装置4の図示しない表示部に表示させる(ステップS017)。
【0086】
このように、本実施形態に係るPET-CT装置100は、補正部46において、X線CT画像とPET画像の位置合わせを行って融合画像を生成し、その生成された融合画像を表示部に表示させることにより、処理を終了する。次に、補正部46の詳細な動作について説明する。
【0087】
図14は、本実施形態に係るPET−CT装置100の補正部46(図9)において、天板だれ補正量を推定する天板だれ補正量推定処理の手順を示したフローチャートである。
【0088】
図14に示すように、補正部46の画像収集部461(図9)は、補正データ記憶部45から被検体Pのスキャノ像を収集する(ステップS101)。
【0089】
次に、荷重分布推定部462(図9)は、画像収集部461で収集したスキャノ像から、被検体Pの荷重分布を推定する(ステップS103)。なお、荷重分布推定部462は、例えば、収集したスキャノ像の輝度値を積分した輝度値積分値を算出して水等価厚を算出することにより、体軸ごとの荷重分布を推定してもよく、また、スキャノ像と水ファントムから水等価厚プロファイルを算出して、被検体Pの荷重分布を推定してもよい。
【0090】
次に、天板撓み量推定部464(図9)は、荷重分布推定部462で推定された被検体Pの荷重分布から、被検体Pを載せた天板31の天板だれ量を推定する(ステップS105)。天板撓み量推定部464では、天板だれ量を推定する任意の算出手段を適用することができ、例えば、公知技術である「梁のダレ量」算出方法などを用いて、天板31の支点から撮像位置までの距離、支持部の位置、荷重位置および荷重分布などから天板31の天板だれ量を推定することができる。
【0091】
次に、位置合わせ調整部465(図9)は、天板撓み量推定部464で推定された天板31の天板だれ量に基づいて、天板31の傾きを推定し(ステップS107)、天板31の天板だれ量と天板31の傾きを補正データ記憶部45に格納する。
【0092】
これにより、位置合わせ調整部465は、ステップS015で示したように(図13)、CT用架台装置2において本スキャンによるヘリカルスキャン方式で撮像したX線CT画像と、減弱補正後のPET画像のそれぞれの画像の位置を合わせ、天板だれ補正量(天板31の天板だれ量と天板31の傾き)に基づいて、位置合わせを行うことができる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態では、PET−CT装置100は、補正部46において、X線CT画像を撮像する際のスキャノ像画像(位置決め画像)から天板31にかかる被検体Pの荷重分布を算出し、その荷重分布から天板31の天板だれ量を推定する。
【0094】
これにより、本実施形態に係るPET−CT装置100は、推定された天板31の天板だれ量に基づいて、撮像されたPET画像およびX線CT画像の位置合わせを行うことができるので、天板31の位置合わせを適切に行い、PET画像とX線CT画像を融合した高精度な補正の実行および融合画像を得ることができる。
【0095】
このように、本実施形態に係るPET−CT装置100は、天板31が映っていないスキャノ像からでも天板31の天板だれ量を推定することができるので、天板31が映っているX線CT画像を必要とせず、また、天板31の天板だれ量を実測することなく、撮像画像に対して補正を行うことができる。
【0096】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、荷重分布推定部462が、輝度値積分値や水等価厚プロファイルを算出して被検体Pの荷重分布を推定し、天板撓み量推定部464が、推定された荷重分布に基づいて、本スキャンする際の天板31の天板だれ量を推定するようになっていた。
【0097】
第2の実施形態では、第1の実施形態に係る補正部46は、重心推定部463をさらに備え、天板31に被検体Pの荷重がかかる際の重心位置を考慮した天板31の天板だれ量を補正するようになっている。
【0098】
図15は、第2の実施形態に係るPET−CT装置100のコンソール装置4の補正部467の構成を示した機能ブロック図である。
【0099】
図15に示すように、第2の実施形態に係る補正部467は、第1の実施形態に係る補正部46に、重心推定部463をさらに備えて構成されている。なお、同一の構成については同一の符号を付すこととし、その説明を省略する。
【0100】
重心推定部463は、荷重分布推定部462で推定された荷重分布から、その被検体Pの重心位置を推定するようになっている。
【0101】
まず、荷重分布推定部462では、例えば、図10に示した被検体Pの体軸方向の輝度値を積分して輝度値積分値を算出する。そして、重心推定部463では、荷重分布推定部462で推定された体軸位置ごとの輝度値積分値プロファイルのAUC(Area Under Curve)から被検体Pの重心位置を推定する。なお、輝度値積分値プロファイルとは、輝度値積分値から構成される体重を推測するための分析結果または分析情報を意味している。ここで、この重心位置と支点0からの距離の概念を図で示す。
【0102】
図16は、本実施形態に係る重心推定部463において、被検体Pの重心位置を推定する概念を説明した説明図である。
【0103】
図16に示すように、輝度値積分値プロファイルのAUCに基づいて、天板31に被検体Pの荷重がかかる概念を、荷重KJ5を用いて示している。
【0104】
重心推定部463は、輝度値積分値プロファイルから被検体Pの荷重KJ5が天板31にかかる重心位置を推定すると、その推定された重心位置を天板31の支点0からその重心位置までの距離に換算して、天板31の支点0からその重心位置までの距離z5を推定する。
【0105】
この場合、天板撓み量推定部464は、輝度値積分値プロファイルから推定される荷重KJ5と、天板31の支点0からその重心位置までの距離z5を乗算し、モーメントMwを算出する。このモーメントMwは、天板31の支点0からの距離(z)と、荷重(w)との乗算によって得られる固有な値である。
【0106】
そして、天板撓み量推定部464は、補正データ記憶部45に格納されている天板だれ量データベースを参照し、距離z5における天板だれ量を推定する。ここで、天板だれ量データベースについて、説明する。
【0107】
図17は、第2の実施形態に係るモーメントMwと天板だれ量との相関関係(これを天板だれ量カーブともいう。)を示す説明図である。
【0108】
図17に示すように、天板撓み量推定部464は、モーメントMwを算出することにより、天板31の支点0からの距離を示すA点、B点およびC点(図12参照)における天板だれ量を推定する。
【0109】
具体的には、天板撓み量推定部464は、ある距離z5におけるモーメントMwを算出し、そのモーメントMwに対応する天板だれ量カーブを参照する。図17に示すように、モーメントMwに対応した天板31上のA点の天板だれ量はSAG−Aであり、天板31上のB点の天板だれ量はSAG−Bであり、天板31上のC点の天板だれ量はSAG−Cであることが推定される。なお、この天板だれ量カーブは、あらかじめデータベース化されて補正データ記憶部45に格納されている。
【0110】
このように、この天板だれ量カーブは、任意の距離におけるモーメントMwを算出することにより、天板31の支点0から所定の距離にある点の天板だれ量を推定するテーブルを意味している。
【0111】
なお、本実施形態では、天板だれ量カーブは、天板だれ量があらかじめデータベース化されたテーブルとして補正データ記憶部45に格納されているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、第1の実施形態で示した公知技術の「梁のダレ量」算出方法を適用するようにしてもよい。
【0112】
次に、第2の実施形態に係る補正部467の動作について説明する。
【0113】
図18は、第2の実施形態に係るPET−CT装置100の補正部467(図15)において、天板だれ補正量を推定する天板だれ補正量推定処理の手順を示したフローチャートである。なお、図14に示したフローチャートと同一の処理を行うステップには同一の符号を付すこととし、その説明を省略する。
【0114】
図18の第2の実施形態に係るフローチャートが、図14の第1の実施形態に係るフローチャートと異なる点は、ステップS121が追加挿入されている点である。すなわち、重心推定部463(図15)は、荷重分布推定部462で推定された荷重分布から、その被検体Pの重心位置を推定する(ステップS121)。
【0115】
天板撓み量推定部464は、重心推定部463において推定された被検体Pの重心位置から、例えば、天板だれ量カーブ(図17)を参照して、天板31の天板だれ量を推定したり、または、公知技術の「梁のダレ量」算出手段を用いて天板31の天板だれ量を推定する。
【0116】
以上説明したように、第2の実施形態では、PET−CT装置100は、補正部467において、X線CT画像を撮像する際のスキャノ像画像(位置決め画像)から天板31にかかる被検体Pの荷重分布を算出した後にその重心位置を推定して、推定された重心位置にかかる荷重から天板31の天板だれ量を推定する。
【0117】
これにより、本実施形態に係るPET−CT装置100は、推定された天板31の天板だれ量に基づいて、撮像されたPET画像およびX線CT画像の位置合わせを行うことができるので、天板31の位置合わせを適切に行い、PET画像とX線CT画像を融合した高精度な補正の実行および融合画像を得ることができる。
【0118】
なお、上述した第1の実施形態および第2の実施形態において、PET−CT装置100は、PET用架台装置1を使用してPET画像を生成するようになっていたが、例えば、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置:Single Photon Emission Computed Tomography装置)であってもよい。
【0119】
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態および第2の実施形態では、スキャノ像を利用して、天板撓み量推定部464が天板31の天板だれ量を推定して、その天板だれ量に基づいて、位置合わせ調整部465がPET画像とX線CT画像の位置合わせを行い、融合画像を生成するようになっていた。
【0120】
第3の実施形態では、PET−CT装置100は、PET用架台装置1に代えて、CT用架台装置2がステップアンドシュート方式により連続して被検体Pを撮像し、その連続して撮像されたX線CT画像の位置合わせに、スキャノ像から推定された荷重分布に基づく天板だれ量を適用する形態について説明する。
【0121】
具体的には、天板撓み量推定部464は、スキャノ像から推定される荷重分布をもとに天板31の天板だれ量を推定して、これをステップアンドシュート方式で撮像されたX線CT画像のスキャン領域の天板31の天板だれ量と推定する。そして、位置合わせ調整部465は、CT用架台装置2によってステップアンドシュート方式で連続的に撮像された本スキャンのボリュームデータに対して、天板位置が揃うように位置合わせを行う。
【0122】
図19は、第3の実施形態に係る位置合わせ調整部465が、ボリュームデータの天板位置が揃うように位置合わせを行った場合のX線CT画像の表示例である。なお、ボリュームデータとは、X線CT画像から得られる人体を輪切りにしたときの映像であって、空間における濃度や密度の分布を示す図である。
【0123】
図19に示すように、ステップアンドシュート方式により連続してX線CT画像が撮像された場合であっても、PET−CT装置100は、天板撓み量推定部464において、スキャノ像から推定される荷重分布をもとに天板31の天板だれ量を推定して、X線CT画像のスキャン領域内の天板だれ量を推定することができる。
【0124】
これにより、第3の実施形態に係るPET−CT装置100は、位置合わせ調整部465において、天板撓み量推定部464で推定された天板だれ量に基づいて、ステップアンドシュート方式によって連続して撮像されたX線CT画像のボリュームデータの天板位置に対して、位置合わせを行うことができる。
【0125】
以上、上述した第1の実施形態から第3の実施形態では、ヘリカルスキャン方式によりX線CT画像を撮像する際のスキャノ像を用いて天板の天板だれ量を推定することができるので、この推定される天板だれ量を他の撮像方式で撮像する際の天板だれ量として補正すれば、撮像する際の撮像方式を限定しないで適用することができる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0127】
また、本発明の実施形態では、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0128】
1 PET用架台装置
2 CT用架台装置
3 寝台装置
4 コンソール装置
31 天板
32 寝台
41 X線投影データ記憶部
42 CT画像再構成部
43 ガンマ線投影データ記憶部
44 PET用再構成部
45 補正データ記憶部
46 補正部
47 制御部
100 PET−CT装置(画像診断装置)
461 画像収集部
462 荷重分布推定部
463 重心推定部
464 天板撓み量推定部
465 位置合わせ調整部
467 補正部
P 被検体
LN1 直線
LN2 直線
図1
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