特許第6222797号(P6222797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222797
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】X線診断装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171023BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20171023BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61B6/03 377
   A61B8/00
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 300X
   A61B6/00 360B
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-207497(P2012-207497)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-61094(P2014-61094A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】渕上 航
(72)【発明者】
【氏名】橋本 新一
(72)【発明者】
【氏名】大内 啓之
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−152519(JP,A)
【文献】 特表2009−507600(JP,A)
【文献】 特開2010−162058(JP,A)
【文献】 特開2004−329729(JP,A)
【文献】 特開2002−136507(JP,A)
【文献】 特開平03−158139(JP,A)
【文献】 特開2009−066412(JP,A)
【文献】 特開2008−168128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体のX線撮影を行う撮影手段を保持するアームと、
前記撮影手段により被検体を撮影する撮影空間と、前記被検体に対して超音波プローブが走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、前記超音波プローブによる超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された指定位置と、前記撮影空間における所定の位置とからなる角度を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された角度で前記被検体を撮影するように前記アームを制御する制御手段と、
を備え、
前記算出手段は、前記超音波画像に設定されたランドマークと、前記撮影手段によって撮影されたX線画像上のランドマークに相当する位置とを用いて、前記超音波画像と前記X線画像とを位置合わせすることにより、前記撮影空間と前記走査空間との相対位置を特定することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
被検体のX線撮影を行う撮影手段を保持するアームと、
前記撮影手段により被検体を撮影する撮影空間と、前記被検体に対して超音波プローブが走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、前記超音波プローブによる超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された指定位置と、前記撮影空間における所定の位置とからなる角度を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された角度で前記被検体を撮影するように前記アームを制御する制御手段と、
を備え、
前記算出手段は、前記超音波プローブによる超音波画像と前記被検体を撮影したCT画像とを位置合わせすることで前記走査空間と前記CT画像を撮影するCT撮影空間との相対位置を特定し、前記撮影手段によるX線画像と前記CT画像とを位置合わせすることで前記撮影空間と前記CT撮影空間との相対位置を特定し前記CT撮影空間における前記走査空間の位置と前記CT撮影空間における前記撮影空間の位置とに基づいて、前記撮影空間と前記走査空間との相対位置を特定することを特徴とするX線診断装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記撮影空間におけるアイソセンターを前記所定の位置とし、前記撮影空間の中心を前記アイソセンターとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記撮影空間におけるアイソセンターを前記所定の位置とし、前記撮影空間において撮影された複数のX線画像それぞれの画像中心の交点を算出し、算出した交点を前記アイソセンターとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記超音波画像に含まれる心臓の中心と前記アイソセンターとの位置関係を算出し、
前記制御手段は、前記算出手段によって算出された前記位置関係に基づいて、前記心臓の中心と前記アイソセンターとが略同一位置となるように、前記アーム及び寝台のうち少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
X線撮影を行う撮影手段により被検体を撮影する撮影空間と、前記被検体に対して超音波プローブが走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、前記超音波プローブによる超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された指定位置と、前記撮影空間における所定の位置とからなる角度を算出する算出手順と、
前記算出手順によって算出された角度で前記被検体を撮影するように、前記撮影手段を保持するアームを制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記算出手順は、前記超音波画像に設定されたランドマークと、前記撮影手段によって撮影されたX線画像上のランドマークに相当する位置とを用いて、前記超音波画像と前記X線画像とを位置合わせすることにより、前記撮影空間と前記走査空間との相対位置を特定することを特徴とするプログラム。
【請求項7】
X線撮影を行う撮影手段により被検体を撮影する撮影空間と、前記被検体に対して超音波プローブが走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、前記超音波プローブによる超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された指定位置と、前記撮影空間における所定の位置とからなる角度を算出する算出手順と、
前記算出手順によって算出された角度で前記被検体を撮影するように、前記撮影手段を保持するアームを制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記算出手順は、前記超音波プローブによる超音波画像と前記被検体を撮影したCT画像とを位置合わせすることで前記走査空間と前記CT画像を撮影するCT撮影空間との相対位置を特定し、前記撮影手段によるX線画像と前記CT画像とを位置合わせすることで前記撮影空間と前記CT撮影空間との相対位置を特定し前記CT撮影空間における前記走査空間の位置と前記CT撮影空間における前記撮影空間の位置とに基づいて、前記撮影空間と前記走査空間との相対位置を特定することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心不全治療のひとつとして心臓再同期医療法(Cardiac Resynchronization Therapy, CRT)が知られている。この方法は、例えば、刺激伝導系の異常により、心室を取り巻く心筋へのタイミングが異常になってしまい、左右の心壁が同時に動かず、心室がタイミングよく収縮できず、血液の拍出が不十分になってしまう疾患などの治療に用いられる。
【0003】
CRTは、心臓が同期して収縮するようにするために、心臓の動きが悪い部位(非同期部位:Latest Activation)に電極を留置する治療法である。具体的には、CRTは、超音波診断装置によるストレイン解析により非同期部位を特定し、X線診断装置によって撮影されたX線画像を参照しながら非同期部位に最も近い静脈に電極が留置される。
【0004】
このように留置された電極が、タイミングよく刺激電位を流すことにより、心筋がタイミングよく収縮して、心室の動きをコントロールする。しかしながら、上述した従来技術においては、X線画像と超音波画像の重畳画像において、視認性が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−039429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、X線画像と超音波画像の重畳画像における視認性の低下を抑止することを可能にするX線診断装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態のX線診断装置は、アームと、算出手段と、制御手段とを備える。アームは、被検体のX線撮影を行う撮影手段を保持する。算出手段は、前記撮影手段により被検体を撮影する撮影空間と、前記被検体に対して超音波プローブが走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、前記超音波プローブによる超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された指定位置と、前記撮影空間における所定の位置とからなる角度を算出する。制御手段は、前記算出手段によって算出された角度で前記被検体を撮影するように前記アームを制御する。前記算出手段は、前記超音波画像に設定されたランドマークと、前記撮影手段によって撮影されたX線画像上のランドマークに相当する位置とを用いて、前記超音波画像と前記X線画像とを位置合わせすることにより、前記撮影空間と前記走査空間との相対位置を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るボリュームデータ処理部による処理結果の一例を示す図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係るボリュームデータ処理部による処理の一例を説明するための図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係るボリュームデータ処理部によって生成される画像の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るシステム制御部の構成の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る位置合わせ部による処理の一例を説明するための図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る算出部による処理の一例を説明するための図である。
図9A図9Aは、第1の実施形態に係る角度制御部によって制御された角度で撮影したX線画像を用いたフュージョン画像の一例を示す図である。
図9B図9Bは、第1の実施形態に係る角度制御部による制御を受けずに撮影したX線画像を用いたフュージョン画像の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る算出部による角度の更新処理の一例を説明するための図である。
図11図11は、第1の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態に係る算出部による処理の一例を説明するための図である。
図13図13は、第2の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図14図14は、第3の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本願に係る画像処理装置の詳細について説明する。なお、第1の実施形態では、本願に係るX線診断装置を含むシステムを一例に挙げて説明する。図1は、第1の実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、第1の実施形態に係るシステム1は、X線診断装置100と、画像保管装置200と、超音波診断装置300とを有する。図1に例示する各装置は、例えば、病院内に設置された院内LAN(Local Area Network)により、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっている。例えば、画像処理システム1にPACS(Picture Archiving and Communication System)が導入されている場合、各装置は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則って、医用画像等を相互に送受信する。
【0011】
かかるシステム1においては、X線診断装置100及び超音波診断装置300が、それぞれの技師の操作に応じてX線画像及び超音波画像を収集する。そして、X線診断装置100が、X線画像に位置合わせされた超音波画像を表示することで、医師は、CRTにおいて、超音波診断装置で計画した留置位置に正確に電極をおくことが可能となる。
【0012】
画像保管装置200は、医用画像を保管するデータベースである。具体的には、第1の実施形態に係る画像保管装置200は、超音波診断装置300から送信された超音波画像などを記憶部に格納し、これを保管する。すなわち、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、超音波診断装置300から直接画像データを受信する場合でもよく、或いは、画像保管装置200に一旦保管された画像を取得する場合でもよい。
【0013】
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る超音波診断装置300の構成を説明するための図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置300は、装置本体310と、超音波プローブ320と、入力装置330と、モニタ340と、トランスミッター351と、位置センサー352と、制御装置353と、心電計360とを有する。
【0014】
超音波プローブ320は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体310が有する送受信部311から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、さらに、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ320は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。例えば、超音波プローブ320は、セクタ型、リニア型又はコンベックス型などの超音波プローブである。
【0015】
超音波プローブ320から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ320が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0016】
なお、本実施形態は、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ320や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ320により、被検体Pを3次元でスキャンする。
【0017】
入力装置330は、トラックボール、スイッチ、ボタン、タッチコマンドスクリーンなどを有し、超音波診断装置300の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体310に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置330は、超音波画像と、X線画像などとの位置合わせに係る各種操作を受付ける。
【0018】
モニタ340は、超音波診断装置300の操作者が入力装置330を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体310において生成された超音波画像とX線CT画像などとを並列表示したりする。
【0019】
トランスミッター351は、基準信号を送信する。具体的には、トランスミッター351は、任意の位置に配置され、自装置を中心として外側に向かって磁場を形成する。位置センサー352は、基準信号を受信することにより、3次元空間上の位置情報を取得する。具体的には、位置センサー352は、超音波プローブ320の表面に装着され、トランスミッター351によって形成された3次元の磁場を検出して、検出した磁場の情報を信号に変換して、制御装置353に出力する。
【0020】
制御装置353は、位置センサー352から受信した信号に基づいて、トランスミッター351を原点とする空間における位置センサー352の座標及び向きを算出し、算出した座標及び向きを後述する装置本体310の制御部316に出力する。なお、被検体Pの診断は、超音波プローブ320に装着された位置センサー352が、トランスミッター351の磁場を正確に検出することが可能な磁場エリア内で行われる。なお、本実施形態においては、位置情報を取得するセンサーとして磁気センサーを用いる場合について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、磁気センサーの代わりに、赤外線センサーや、光学センサー、カメラなどを用いる場合であってもよい。
【0021】
心電計360は、装置本体310と接続され、超音波走査が行なわれる被検体Pの心電波形(ECG: Electrocardiogram)を取得する。心電計360は、取得した心電波形及び時間情報を装置本体310に送信する。
【0022】
装置本体310は、超音波プローブ320が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図3に示すように、送受信部311と、Bモード処理部312と、ドプラ処理部313と、画像生成部314と、画像メモリ315と、制御部316と、内部記憶部317と、インターフェース部318と、ボリュームデータ処理部319とを有する。
【0023】
送受信部311は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ320に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ320から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ320に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0024】
また、送受信部311は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ320が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行ない、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0025】
このように、送受信部311は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部311は、後述する制御部316の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部311は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0026】
Bモード処理部312は、送受信部311からゲイン補正処理、A/D変換処理および加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0027】
ドプラ処理部313は、送受信部311から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0028】
画像生成部314は、Bモード処理部312が生成したBモードデータや、ドプラ処理部313が生成したドプラデータから、超音波画像を生成する。具体的には、画像生成部314は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、Bモードデータやドプラデータから表示用の超音波画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成する。ここで、画像生成部314は、生成した各超音波画像に、心電計360から受信した心電波形および時間情報を対応付けて、画像メモリ315に格納する。
【0029】
画像メモリ315は、画像生成部314によって生成された造影像や組織像などの画像データを記憶する。また、画像メモリ315は、送受信部311を経た直後の出力信号(RF:Radio Frequency)や画像の輝度信号、種々の生データ、ネットワークを介して取得した画像データなどを必要に応じて記憶する。画像メモリ315が記憶する画像データのデータ形式は、後述する制御部316によりモニタ340に表示されるビデオフォーマット変換後のデータ形式であっても、Bモード処理部312及びドプラ処理部313によって生成されたRawデータである座標変換前のデータ形式でもよい。
【0030】
制御部316は、超音波診断装置300における処理全体を制御する。具体的には、制御部316は、入力装置330を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部317から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報に基づき、送受信部311、Bモード処理部312、ドプラ処理部313および画像生成部314の処理を制御したり、画像メモリ315が記憶する超音波画像などをモニタ340にて表示するように制御したりする。また、制御部316は、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則って、他のモダリティ(例えば、X線CT装置、MRI装置など)の3次元画像データ(ボリュームデータ)を、ネットワークを介して送受信する。
【0031】
内部記憶部317は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルなどの各種データを記憶する。さらに、内部記憶部317は、必要に応じて、画像メモリ315が記憶する画像の保管などにも使用される。
【0032】
インターフェース部318は、入力装置330、制御装置353と装置本体310との間での各種情報のやり取りを制御するインターフェースである。例えは、インターフェース部318は、制御部316に対する制御装置353が取得した位置情報の転送を制御する。
【0033】
ボリュームデータ処理部319は、ストレイン解析に係る各種処理を実行する。具体的には、3D Wall Motion Trackingにより、心臓における興奮伝播の様相が描出された画像を生成する。ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置300は、まず、被検体Pの心臓のボリュームデータを生成する。一例を挙げると、第1の実施形態に係る超音波診断装置300は、被検体Pの心臓の左心室(LV:Left Ventricular)を1心拍以上の期間にわたり時系列に沿って撮影した複数のボリュームデータ(ボリュームデータ群)を生成する。
【0034】
ボリュームデータ処理部319は、被検体Pの心臓を超音波で3次元走査することで生成された時系列に沿ったボリュームデータ群それぞれから、心壁の運動に関する運動情報を生成する。具体的には、ボリュームデータ処理部319は、ボリュームデータ間のパターンマッチングにより、運動情報を生成する。より具体的には、ボリュームデータ処理部319は、各ボリュームデータに描出された心筋組織に設定された追跡点をスペックルパターンに基づいて追跡することで、各追跡点の移動ベクトルを算出する。そして、ボリュームデータ処理部319は、各追跡点の移動ベクトルを用いて、局所的な心筋の動きを示す運動情報を生成する。換言すると、ボリュームデータ処理部319は、3次元のスペックルトラッキングを行なって、運動情報を生成する。一例を挙げると、ボリュームデータ処理部319は、運動情報として、心臓組織の局所的な面積の変化率を生成する。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係るボリュームデータ処理部319による処理結果の一例を示す図である。例えば、ボリュームデータ処理部319は、図3の左側に示すように、Polar-map像に対して、特異領域を「時相保持型の表示方法」により重畳させた重畳画像を生成することができる。なお、図3に示す「ant-sept」は、前壁中隔であり、「ant」は、前壁であり、「lat」は、側壁であり、「post」は、後壁であり、「inf」は、下壁であり、「sept」は、中隔である。
【0036】
また、ボリュームデータ処理部319は、図3の下側に示すように、時相保持型の重畳画像とともに、心電波形と、16分画ごとの平均運動情報(平均面積変化率)の時間変化曲線のグラフとを合成することもできる。図3では、16分画それぞれの平均面積変化率の時間変化曲線を実線で示している。ただし、実際には、ボリュームデータ処理部319は、各平均運動情報の時間変化曲線がどの分画に対応するものであるか判別可能なように、16分画それぞれの平均運動情報の時間変化曲線を分画ごとに割り当てられた色調で着色する。
【0037】
また、ボリュームデータ処理部319は、ボリュームデータから、短軸断面や、長軸断面の複数のMPR画像を生成する。図3に示す一例では、ボリュームデータ処理部319は、領域Aにおいて、心尖部四腔像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図3に示す一例では、ボリュームデータ処理部319は、領域Bにおいて、心尖部二腔像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。
【0038】
また、図3に示す一例では、ボリュームデータ処理部319は、領域C3において、心尖部に近い短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図3に示す一例では、ボリュームデータ処理部319は、領域C5において、心尖部に近い短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図3に示す一例では、ボリュームデータ処理部319は、領域C7において、心尖部と心基部との中間に位置する短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。また、図3に示す一例では、ボリュームデータ処理部319は、領域C7において、心基部に近い短軸断面画像の左心室心壁上に、特異領域を時相保持型で重畳させた画像を配置した合成画像を生成している。
【0039】
なお、図3に示す一例では、カラーバー及び心電波形とともに、各種の運動情報の値がテーブルとして表示されている。図3に示すEDVは、拡張末期(ED: end diastole)時相での心内腔の体積である。図3に示す一例では、EDVが「156.01mL」であり、拡張末期(基準時相)の時間が「0msec」であることが示されている。また、図3に示すESVは、収縮末期(ES:end systole)時相での心内腔の体積である。図3に示す一例では、ESVが「109.20mL」であり、収縮末期の時間が「422msec」であることが示されている。
【0040】
また、図3に示すEFは、EDV及びESVから定義される駆出率である。図3に示す一例では、EFが「30.01%」であることが示されている。また、図3に示す「1.05×MV」は、心筋の体積(MV)に平均的な心筋密度値である「1.05g/mL」を乗算することで求められる「心筋重量(g)」である。図3に示す一例では、「1.05×MV」が「140.66g」であることが示されている。また、図3に示す一例では、「140.66g」が左心室の心筋の体積から推定されたものであることを表す「est.LV MASS」が示されている。
【0041】
ボリュームデータ処理部319は、運動情報として、局所的な面積の変化率(Area change)の時間変化率(Area change rate)を算出しても良い。すなわち、ボリュームデータ処理部319は、局所的な面積の変化率の時間微分値を推定することで、面積変化率の時間変化率を算出しても良い。かかる場合には、ボリュームデータ処理部319は、図4Aに示すように、所定の値を閾値として、閾値に到達した時刻ごとに色を割り当てるように重畳画像の色調を変化させる。なお、図4Aは、第1の実施形態に係るボリュームデータ処理部319による処理の一例を説明するための図である。
【0042】
図4Bは、第1の実施形態に係るボリュームデータ処理部319によって生成される画像の一例を示す図である。ここで、図4Bにおいては、心臓における興奮伝播の様相が描出された画像を示す。具体的には、図4Bにおいては、NOMAL(健常)及びCLBBB(完全左脚ブロック)について、サーフェスレンダリング画像に色調を重畳した重畳画像と、Polar-map像に対して色調を重畳させた重畳画像とを示す。ここで、CLBBBにおいて、非同期部位(Latest Site)が示されている。
【0043】
次に、第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成について説明する。図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成の一例を示す図である。図5に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、X線高電圧装置111と、X線管112と、X線絞り装置113と、天板114と、Cアーム115と、X線検出器116とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、Cアーム回転・移動機構117と、天板移動機構118と、Cアーム・天板機構制御部119と、絞り制御部120と、システム制御部121と、入力部122と、表示部123とを備える。また、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、画像データ生成部124と、画像データ記憶部125と、画像処理部126と、心電計127とを備える。
【0044】
X線高電圧装置111は、システム制御部121による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管112に供給する。X線管112は、X線高電圧装置111から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0045】
X線絞り装置113は、絞り制御部120による制御の下、X線管112が発生したX線を、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り装置113は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。X線絞り装置113は、絞り制御部120による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管112が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。天板114は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置100に含まれない。
【0046】
X線検出器116は、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器116は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を画像データ生成部124に送信する。
【0047】
Cアーム115は、X線管112、X線絞り装置113及びX線検出器116を保持する。X線管112及びX線絞り装置113とX線検出器116とは、Cアーム115により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0048】
Cアーム回転・移動機構117は、Cアーム115を回転及び移動させるための機構であり、天板移動機構118は、天板114を移動させるための機構である。Cアーム・天板機構制御部119は、システム制御部121による制御の下、Cアーム回転・移動機構117及び天板移動機構118を制御することで、Cアーム115の回転や移動、天板114の移動を調整する。絞り制御部120は、システム制御部121による制御の下、X線絞り装置113が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0049】
心電計127は、図示しない端子が取り付けられた被検体Pの心電波形(ECG:Electrocardiogram)を取得し、取得した心電波形を、時間情報とともに、画像データ生成部124および画像処理部126に送信する。
【0050】
画像データ生成部124は、X線検出器116によってX線から変換された電気信号を用いてX線画像を生成し、生成したX線画像を画像データ記憶部125に格納する。例えば、画像データ生成部124は、X線検出器116から受信した電気信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、X線画像を生成する。
【0051】
ここで、画像データ生成部124は、造影剤が注入された被検体Pの心臓を時系列に沿って撮影した複数のX線画像を生成する。そして、画像データ生成部124は、生成したX線画像を画像データ記憶部125に格納するが、本実施例における画像データ生成部124は、生成した各X線画像に、心電計127から受信した心電波形および時間情報を対応付けて、画像データ記憶部125に格納する。
【0052】
画像データ記憶部125は、画像データ生成部124によって生成されたX線画像を記憶する。例えば、画像データ記憶部125は、画像データ生成部124によって生成されたX線画像を、撮影時間および撮影時間における心電波形に対応付けて記憶する。画像処理部126は、画像データ記憶部125が記憶する画像データに対して各種画像処理を行う。例えば、画像処理部126は、画像データ記憶部125が記憶する時系列に沿った複数のX線画像を処理することにより、動画像を生成する。
【0053】
入力部122は、X線診断装置100を操作する医師や技師などの操作者から各種指示を受け付ける。例えば、入力部122は、マウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有する。入力部122は、操作者から受け付けた指示を、システム制御部121に転送する。例えば、入力部122は、X線診断装置100の電源をONの状態にするための指示を受付ける。
【0054】
表示部123は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像データ記憶部125が記憶する画像データなどを表示する。例えば、表示部123は、モニタを有する。なお、表示部123は、複数のモニタを有してもよい。
【0055】
システム制御部121は、X線診断装置100全体の動作を制御する。例えば、システム制御部121は、入力部122から転送された操作者の指示に従ってX線高電圧装置111を制御し、X線管112に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、システム制御部121は、操作者の指示に従ってCアーム・天板機構制御部119を制御し、Cアーム115の回転や移動、天板114の移動を調整する。また、例えば、システム制御部121は、操作者の指示に従って絞り制御部120を制御し、X線絞り装置113が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0056】
また、システム制御部121は、操作者の指示に従って、画像データ生成部124による画像データ生成処理や、画像処理部126による画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、システム制御部121は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや画像データ記憶部125が記憶する画像などを、表示部123のモニタに表示するように制御する。
【0057】
ここで、本実施形態に係るX線診断装置100においては、CRTが実施される。CRTにおいては、例えば、図4Bに示す重畳画像から非同期部位を特定し、造影剤を用いたX線画像を参照して、非同期部位に最も近い静脈に電極(ペーシングリード:Pacing Lead)が留置される。このとき、X線画像においては、非同期部位の正確な位置が示されているわけではないため、医師は、勘を頼りに手技を行う場合もあり、誤った位置に電極を留置してしまう場合もある。そこで、X線画像における非同期部位に超音波の重畳画像をさらに重畳して表示させることで、電極を正確に留置させる。このとき、X線画像及び超音波画像の重畳させる向きによって、非同期部位を正面から観察することができず、X線画像及び超音波画像の重畳画像の視認性が低下する場合があった。
【0058】
そこで、本実施形態に係るX線診断装置100は、以下、詳細に説明するシステム制御部121の制御により、X線画像と超音波画像の重畳画像における視認性の低下を抑止することを可能にする。なお、以下、X線画像と超音波画像の重畳画像をフュージョン(Fusion)画像と記す。
【0059】
図6は、第1の実施形態に係るシステム制御部121の構成の一例を示す図である。図6に示すように、システム制御部121は、位置合わせ部121aと、算出部121bと、角度制御部121cとを有し、フュージョン画像において非同期部位を正面から観察することができるようにX線画像を撮影する際のアームの角度を制御する。
【0060】
位置合わせ部121aは、X線画像と超音波画像とを重畳させる際の位置合わせを実行する。具体的には、位置合わせ部121aは、X線画像が撮影される空間における座標であるX線座標系と、超音波画像が撮影される空間における座標である超音波座標系との相対的な位置関係から各座標系を関連付ける。図7は、第1の実施形態に係る位置合わせ部121aによる処理の一例を説明するための図である。
【0061】
例えば、位置合わせ部121aは、図7に示すように、X線座標系における超音波座標系の位置を特定する。すなわち、位置合わせ部121aは、超音波画像が収集された座標空間がX線座標系のどこに相当するかを特定する。これにより、位置合わせ部121aは、治療箇所がX線座標系のどこに位置し、どの角度から見れば画像の正面に位置するようになるかを明らかにすることができる。ここで、位置合わせ部121aによる位置合わせの方法としては、例えば、以下の3つの方法が挙げられる。
【0062】
まず、第1の方法としては、位置センサーを用いる方法である。例えば、位置センサー352を取り付けた超音波プローブ320がX線診断装置100によって撮影される。位置合わせ部121aは、撮影されたX線画像に含まれる超音波プローブ320の位置からX線座標系における超音波プローブ320の座標を算出する。さらに、位置合わせ部121aは、X線画像が撮影された際の位置センサー352の位置情報を超音波診断装置300から取得する。すなわち、位置合わせ部121aは、X線画像が撮影された際の超音波座標系における超音波プローブ320の座標を取得する。
【0063】
位置合わせ部121aは、X線座標系における超音波プローブ320の座標と、X線画像が撮影された際の超音波座標系における超音波プローブ320の座標とを関連付けることで、X線座標系における超音波座標系の位置を特定する。これにより、位置合わせ部121aは、超音波画像において特定された治療箇所のX線座標系における座標を算出することができる。
【0064】
また、第2の方法としては、ランドマークを用いる方法である。例えば、観察者が、X線画像にて確認可能な部分を超音波画像上でランドマークとして設定する。位置合わせ部121aは、超音波画像に設定されたランドマークと、X線画像上のランドマークに相当する位置とを用いて、超音波画像とX線画像とを位置合わせする。一例を挙げると、超音波画像における心室の壁をランドマークとして設定させる。位置合わせ部121aは、造影されたX線画像とランドマークが設定された超音波画像とを用いて、X線座標系と超音波座標系とを位置合わせする。
【0065】
また、第3の方法としては、CT画像を用いる方法である。例えば、位置合わせ部121aは、超音波画像とCT画像とを位置合わせすることで、CT座標系における超音波座標系の位置を特定する。また、位置合わせ部121aは、X線画像とCT画像とを位置合わせすることで、CT座標系におけるX線座標系の位置を特定する。そして、位置合わせ部121aは、CT座標系における超音波座標系の位置と、CT座標系におけるX線座標系の位置とから、X線座標系における超音波座標系の位置を特定する。
【0066】
上述したように、位置合わせ部121aは、X線座標系における超音波座標系の位置を特定することで、超音波画像で特定された治療箇所がX線画像においてどこに位置するのかを正確に算出することを可能にする。なお、上述した位置合わせの方法はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、X線座標系における超音波座標系の位置を特定することができる方法であれば、どのような方法が用いられてもよい。
【0067】
図6に戻って、算出部121bは、被検体を撮影する撮影空間と、被検体に対して超音波プローブが走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、超音波プローブによる超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された指定位置と、撮影空間における所定の位置とからなる角度を算出する。具体的には、算出部121bは、位置合わせ部121aによって位置合わせされたX線画像と超音波画像とからX線座標系における非同期部位(治療箇所)の座標を算出する。そして、算出部121bは、算出した治療箇所の座標と所定の位置とを結ぶ直線を算出し、算出した直線の角度を算出する。
【0068】
ここで、算出部121bは、アイソセンターを所定の位置とし、撮影空間の中心をアイソセンターとする。一例を挙げると、算出部121bは、撮影空間において撮影された複数のX線画像それぞれの画像中心の交点を算出し、算出した交点をアイソセンターとする。図8は、第1の実施形態に係る算出部121bによる処理の一例を説明するための図である。なお、図8においては、位置合わせ部121aによって2枚のX線画像と超音波画像とが位置合わせされた後の処理について示す。
【0069】
例えば、算出部121bは、図8に示すように、X線画像10のX線源から画像中心11までの直線と、X線画像20のX線源から画像中心21までの直線とを算出する。そして、算出部121bは、算出した2本の直線の交点をアイソセンター30とする。そして、算出部121bは、超音波画像上に指定された治療箇所40のX線座標系における座標と、アイソセンター30の座標とを結ぶ直線50を算出して、算出した直線50の角度を算出する。
【0070】
図6に戻って、角度制御部121cは、算出部121bによって算出された角度で被検体を撮影するようにアームを制御する。具体的には、角度制御部121cは、Cアーム・天板機構制御部119を制御して、X線管112とX線検出部116とを結ぶ直線及び角度が、算出した直線及び角度と一致するようにCアーム115を制御させる。例えば、角度制御部121cは、図8の直線50の両端にX線管112及びX線検出部116が位置するように、Cアーム・天板機構制御部119を制御する。
【0071】
図9Aは、第1の実施形態に係る角度制御部121cによって制御された角度で撮影したX線画像を用いたフュージョン画像の一例を示す図である。例えば、角度制御部121cによって制御されたCアーム115によって撮影されたX線画像を用いたフュージョン画像は、図9Aに示すように、重畳された超音波画像上の非同期部位40が正面で観察される画像となる。従って、このフュージョン画像においては、X線画像で造影される血管60と、非同期部位40との位置関係を観察者に明瞭に把握させることができ、例えば、CRTにおける電極留置を正確に実行させることができる。
【0072】
一方、本実施形態に係るシステム制御部121による制御をうけていない場合、非同期部位を正面で観察することができず、フュージョン画像の視認性が低下する場合がある。図9Bは、第1の実施形態に係る角度制御部121cによる制御を受けずに撮影したX線画像を用いたフュージョン画像の一例を示す図である。
【0073】
例えば、第1の実施形態に係る角度制御部121cによる制御を受けずに撮影したX線画像を用いたフュージョン画像は、図9Bに示すように、非同期部位40が側面に来てしまい、X線画像で造影される血管60と、非同期部位40との位置関係を観察者に明瞭に把握させることができない。
【0074】
このように、第1の実施形態に係るシステム制御部121は、非同期部位(治療箇所)とアイソセンターとを結ぶ直線の角度でX線画像を撮影し、フュージョン画像を生成することで、非同期部位(治療箇所)を正面から観察することができるフュージョン画像を表示することができる。その結果、フュージョン画像における視認性の低下を抑止することを可能にする。
【0075】
ここで、例えば、CRTの電極留置に係るフュージョン画像を観察している際に、寝台の位置を変更する場合などがある。かかる場合、X線座標系と超音波座標系との位置関係が変更されることとなる。第1の実施形態に係るX線診断装置100は、X線座標系と超音波座標系との位置関係が変更された場合に、Cアームの角度を更新する。
【0076】
上述した場合、算出部121bは、寝台が移動した移動量を用いてX線座標系の座標を補正することで、X線座標系と超音波座標系との位置関係を更新して、Cアームの角度を更新する。図10は、第1の実施形態に係る算出部121bによる角度の更新処理の一例を説明するための図である。
【0077】
例えば、図10の(A)に示すように、X線座標系の中心をアイソセンターとして治療箇所との間で角度が算出されている状態で、寝台が移動されると、算出部121bは、図10の(B)に示すように、寝台の移動量によりX線座標系を移動させる。そして、算出部121bは、移動後のX線座標系におけるアイソセンターと治療箇所との間の角度を算出して、新たな角度として更新する。
【0078】
次に、第1の実施形態に係るX線診断装置100の処理の手順について説明する。図11は、第1の実施形態に係るX線診断装置100による処理の手順を示すフローチャートである。なお、図11においては、X線診断装置100が超音波画像を取得した後の処理について示す。
【0079】
図11に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置100においては、位置合わせ部121aが、治療箇所が決定された超音波画像とX線画像とを位置合わせする(ステップS101)。そして、算出部121bは、位置合わせ部121aによって位置合わせされたX線座標系と超音波座標系とから、X線座標系における治療箇所の座標を算出する(ステップS102)。
【0080】
その後、算出部121bは、算出した治療箇所の座標と、アイソセンターの座標とを結ぶ直線を算出して(ステップS103)、Cアームの角度を決定する(ステップS104)。そして、角度制御部121cが、決定された角度に基づいて、Cアームを回転させて(ステップS105)、処理を終了する。
【0081】
上述したように、第1の実施形態によれば、算出部121bが、被検体を撮影する撮影空間と、被検体に対して超音波プローブ320が走査される走査空間との相対位置の情報に基づいて、超音波プローブ320による超音波の送受信により生成された超音波画像内に指定された治療箇所と、撮影空間におけるアイソセンターの位置とからなる角度を算出する。そして、角度制御部121cが、算出部121bによって算出された角度で被検体を撮影するようにCアーム115を制御する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、治療箇所を正面で観察することができるフュージョン画像を表示することができ、フュージョン画像における視認性の低下を抑止することを可能にする。
【0082】
また、第1の実施形態によれば、算出部121bは、撮影空間の中心をアイソセンターとする。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、治療箇所とアイソセンターとからなる角度を容易に算出することを可能にする。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、算出部121bは、撮影空間において撮影された複数のX線画像それぞれの画像中心の交点を算出し、算出した交点をアイソセンターとする。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、アイソセンターの位置を容易に決定することを可能にする。
【0084】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、複数のX線画像の中心の交点をアイソセンターとする場合について説明した。第2の実施形態では、アイソセンターの位置を心臓の中心に移動させる場合について説明する。すなわち、第2の実施形態に係るX線診断装置100においては、複数のX線画像からアイソセンターの座標を抽出して、抽出した座標に心臓の中心が位置するように、Cアームや寝台を移動させる。
【0085】
第2の実施形態に係る算出部121bは、超音波画像に含まれる心臓の中心とアイソセンターとの位置関係を算出する。具体的には、算出部121bは、超音波診断装置300によって取得された心室の情報をもとに、超音波座標系における心臓の中心の座標を取得する。そして、算出部121bは、取得した座標をもとに、アイソセンターが心臓の中心となるよう移動量を算出する。なお、超音波診断装置300によって取得された心室の情報とは、例えば、心室マップであり、算出部121bは、心室マップの中央(例えば、重心)を心臓の中心として取得する。また、治療箇所を示す画像の短軸像の中心を心臓の中心とする場合であってもよい。
【0086】
図12は、第2の実施形態に係る算出部121bによる処理の一例を説明するための図である。例えば、算出部121bは、図12の(A)に示すように、超音波座標系における心臓の中心の座標を取得して、X線座標系における心臓の中心の座標を算出する。そして、算出部121bは、アイソセンターの座標からX線座標系における心臓の中心の座標までの移動量を算出する。すなわち、算出部121bは、図12の(B)に示すように、アイソセンターの座標と心臓の中心の座標とを重ねるための移動量を算出する。
【0087】
第2の実施形態に係る角度制御部121cは、算出部121bによって算出された位置関係に基づいて、心臓の中心とアイソセンターとが略同一位置となるように、Cアーム115及び寝台のうち少なくとも一方を制御する。具体的には、角度制御部121cは、算出部121bによって算出された移動量の分だけ、Cアーム115及び寝台のうち少なくとも一方を移動させる。
【0088】
次に、第2の実施形態に係るX線診断装置100の処理の手順について説明する。図13は、第2の実施形態に係るX線診断装置100による処理の手順を示すフローチャートである。なお、図13においては、X線診断装置100が超音波画像を取得した後の処理について示す。
【0089】
図13に示すように、第2の実施形態に係るX線診断装置100においては、位置合わせ部121aが、治療箇所が決定された超音波画像とX線画像とを位置合わせする(ステップS201)。そして、算出部121bは、心臓の中心とアイソセンターとの位置関係から、アイソセンターが心臓の中心になるような移動量を算出する(ステップS202)。そして、角度制御部121cは、算出された移動量の分だけCアーム115及び寝台のうち少なくとも一方を移動させることで、アイソセンターが心臓の中心となるように座標を移動させる(ステップS203)。
【0090】
その後、算出部121bは、位置合わせ部121aによって位置合わせされたX線座標系と超音波座標系とから、X線座標系における治療箇所の座標を算出する(ステップS204)。その後、算出部121bは、算出した治療箇所の座標と、アイソセンターの座標とを結ぶ直線を算出して(ステップS205)、Cアームの角度を決定する(ステップS206)。そして、角度制御部121cが、決定された角度に基づいて、Cアームを回転させて(ステップS207)、処理を終了する。
【0091】
上述したように、第2の実施形態によれば、算出部121bは、超音波画像に含まれる心臓の中心とアイソセンターとの位置関係を算出する。角度制御部121cは、算出部121bによって算出された位置関係に基づいて、心臓の中心とアイソセンターとが略同一位置となるように、Cアーム115及び寝台のうち少なくとも一方を制御する。従って、第2の実施形態に係るX線診断装置100は、フュージョン画像を常に心臓の壁から内部に向かった画像で表示させることができ、フュージョン画像の視認性の低下を抑止することを可能にする。
【0092】
例えば、アイソセンターが治療箇所と略同一位置にあったり、アイソセンターが治療箇所の付近(例えば、同一面上)にあったりした場合、心筋に対して垂直方向の画像ではなく、心筋と平行となる方向でフュージョン画像が表示される場合がある。第2の実施形態に係るX線診断装置100は、このような状況を回避して、常に心筋に対して垂直方向(心臓の壁から内部に向かう方向)のフュージョン画像を表示させることを可能にする。言い換えると、第2の実施形態に係るX線診断装置100は、常に心筋を広い面で観察することを可能にする。
【0093】
(第3の実施形態)
上述した第1及び第2の実施形態では、治療箇所とアイソセンターとからなる角度を算出する場合について説明した。第3の実施形態では、治療箇所と心臓中心とからなる角度を算出する場合について説明する。
【0094】
第3の実施形態に係る算出部121bは、X線座標系における治療箇所及び心臓中心の位置をそれぞれ算出する。具体的には、算出部121bは、位置合わせ部121aによって位置合わせされたX線画像と超音波画像とからX線座標系における治療箇所の座標を算出する。さらに、算出部121bは、超音波座標系における心臓中心の座標を取得して、X線座標系における心臓中心の座標を算出する。そして、算出部121bは、算出した治療箇所の座標及び心臓中心に座標を結ぶ直線を算出して、算出した直線の角度を算出する。
【0095】
第3の実施形態に係る角度制御部121cは、算出部121bによって算出された角度で被検体を撮影するようにアームを制御する。具体的には、角度制御部121cは、Cアーム・天板機構制御部119を制御して、X線管112とX線検出部116とを結ぶ直線及び角度が、算出した直線及び角度と一致するようにCアーム115を制御させる。
【0096】
次に、第3の実施形態に係るX線診断装置100の処理の手順について説明する。図14は、第3の実施形態に係るX線診断装置100による処理の手順を示すフローチャートである。なお、図14においては、X線診断装置100が超音波画像を取得した後の処理について示す。
【0097】
図14に示すように、第3の実施形態に係るX線診断装置100においては、位置合わせ部121aが、治療箇所が決定された超音波画像とX線画像とを位置合わせする(ステップS301)。そして、算出部121bは、位置合わせ部121aによって位置合わせされたX線座標系と超音波座標系とから、X線座標系における治療箇所の座標を算出する(ステップS302)。また、算出部121bは、X線座標系における心臓中心の座標を算出する(ステップS303)。
【0098】
その後、算出部121bは、算出した治療箇所の座標と、心臓中心の座標とを結ぶ直線を算出して(ステップS304)、Cアームの角度を決定する(ステップS305)。そして、角度制御部121cが、決定された角度に基づいて、Cアームを回転させて(ステップS306)、処理を終了する。
【0099】
上述したように、第3の実施形態によれば、算出部121bは、心臓中心を所定の位置として、治療箇所(指定位置)の座標と心臓中心の座標とからなる角度を算出する。そして、角度制御部121cは、算出部121bによって算出された角度で被検体を撮影するようにCアームを制御する。従って、第3の実施形態に係るX線診断装置100は、アイソセンターの位置を気にすることなく、常に治療箇所を正面で観察することができるフュージョン画像を表示することを可能にする。
【0100】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の画像処理装置によれば、X線画像と超音波画像の重畳画像における視認性の低下を抑止することが可能となる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0102】
100 X線診断装置
121 システム制御部
121a 位置合わせ部
121b 算出部
121c 角度制御部
300 超音波診断装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
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図8
図9A
図9B
図10
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図12
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図14