(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空を有する歯科用ポストを、その中空部に、中空部による伸縮性を実質上阻害する剛体を入れずに歯内根管に挿入し、ついで、その中空に充填材を充填する治療処置において用いられる中空を有する歯科用ポストであることを特徴とする請求項1又は3に記載の歯科用ポスト。
【背景技術】
【0002】
う蝕の進行などによって歯髄炎が発生する。この根本的な治療法は、感染した歯髄を摘出(抜髄)し、ここに根管充填材を充填することである。
図1の通り、歯はエナメル質、象牙質、セメント質等の硬組織20により、外形が形成され、その内部の空洞である根管31は歯髄を有するものである。根管の先端に根尖孔32があり、これは、歯髄の神経や血管が歯外へ導通するための歯根の先端にある孔である。その根尖孔の周囲は根尖歯周組織によって構成されている。歯髄炎の従来からの治療法は、先ず、術者が患部歯冠21を切削除去した後、根管内の感染した歯髄を摘出し、根管を針状のファイルにより適切な大きさに拡大する。術者は拡大された根管に根管充填材を充填し、根尖孔を閉鎖する。その際に、根管充填材と根管壁との間に生じた隙間にシーラーを充填することもある。以上の処理により、口腔から根管を通じる根尖歯周組織への感染経路が遮断される。同時に根尖歯周組織の組織液が根管内に侵入することも妨げられる。
この治療に際して使用する根管充填材又はシーラーなどの充填材料の具備すべき条件としては、根管壁と根尖孔を密接に封鎖し、唾液や組織液を侵入させないこと、根尖歯周組織に対して有害作用がなく、低抗原性であること、消毒滅菌が可能であること等が挙げられる。そのため、ゴム材と亜鉛などよりなるガッタパーチャ等が広く用いられてきた。ガッタパーチャポイントは、熱可塑性であり、根管と根尖孔を良く封鎖できる理由から、根管充填材として歯科医療において広く使用されている。
なお、ガッタパーチャのように、固形充填材料のみで根管を封鎖できるものもあるが、固定する接着材として、歯質との高い接着性を発現する接着材、所謂、シーラーを使用し、シーリング性を高めることで辺縁漏洩による細菌の侵入を阻み、二次感染そのものを抑制することもできる。かかるシーラーの利用により、ガッタパーチャ以外の材料力学特性に優れた材料など様々な素材をポストとして利用することが可能となってきた。そこで、ガッターパーチャでは満足されない性能を満たす様々な素材や構造体の利用が試みられてきた。
【0003】
例えば、単に封鎖するだけでは歯牙としての機能回復として不十分であり、歯冠欠損部を修復するために設けられた被覆冠等の補綴物を支持して咬合応力に耐えるには、その下部には強固な支台築造体が望まれる。そのような根管用支柱即ち、歯科用ポストが検討されてきた。
歯科用ポストの材質としては特許文献1に示されているように金属材料が使用されている。金属は堅牢な強度を有すると共に、極めて明瞭なレントゲン造影性を有するという利点を有する。
しかしながら、係る金属材料は、歯質等とは化学的接着性を発現させることが極めて困難なため、脱離の危険性があり、スクリュー等の形状を工夫することにより合着性を高めることが図られている。
また、金属材料では、歯質とは弾性率などの材料力学的特性が違いすぎるため、残存歯質の破折を招く危険性も指摘されている。
【0004】
一方、築造体の強度の向上、歯質への保持性の向上に伴い、再根管治療に関わる新たな問題も発生してきている。すなわち、一旦治療が完成した後に根管部の清掃、殺菌が不十分であったり、あるいは辺縁漏洩により歯根部の根管の一部に二次感染が発生した場合、歯根用ポストを含む支台築造体全体を支台歯から除去し、再治療しなければならない。しかるに、ポストとして、高強度の金属材料が使用されている場合、ポストと歯質との機械的接合が強固である場合には、該ポストの除去は非常に困難と言うよりは、むしろ不可能であることがある。よって、やむなく抜歯しなければならないケースが発生し、せっかくの歯冠修復の努力が全く無に帰してしまう事がしばしばである。
そのような問題を解決するために特許文献2に示されているように、歯科用ポストとして、その弾性率が歯牙特に象牙質の弾性率に近似したものを選択することで、歯牙への応力集中を回避する方法である。このような歯根用ポストの材質として繊維強化型樹脂が提案されている。
更に樹脂材料は、金属よりも曲げやすいので、細くわん曲した根管でも、入りやすいという利点もある。
【0005】
さりながら、歯牙の根管の形状は、千差万別である上に、見通しがきかず、上記の通りの歯科用ポストでも、根尖部迄に到達するには、術者にかなりの技量が求められることがしばしばある。根管治療の際には、患部除去や殺菌処置と共に、根管拡大処置が行われるので、前記の困難性は多少は改善しないわけでもないが、近年、歯質の侵襲を最小限にしようとする機運も加えて、歯質の残存量は、治療後の歯牙の強度や耐久性に大きく影響することが判って来たので、前記根管拡大も最小限であることが求められてきている。そのため、殆ど細くわん曲したままの根管にも、容易に挿入でき、加圧充填できることも要求されてきている。
また、樹脂材料では、レントゲン造影性が不明瞭なため、硫酸バリウムなどのX線造影剤を添加したところ、材質劣化を生じること等が問題となっている。前記問題点を克服するために、均一に混合されるように混合助剤の混合や造影剤フィラーの微細化や表面改質なども検討されているが、手間や費用がかかるなどの問題点も抱えてる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1の通り、湾曲して細い根管であっても、容易にポストが挿入できるように、本発明は、以下の第一発明と第二発明を有するものである。
本願の第一の発明は、
一端から他端に亘る中空を有する歯科用ポストであり、
該ポストの直径が1.9mm以下、および/または、該中空の直径が1.4mm以下であることを特徴とする歯科用ポスト
である。
なお、中空が円筒形状でない場合、非円形形状の断面を等面積的に円形に変形させた円の直径を計算すればよいし、一端から他端に架けて断面積が一定でない場合には、当該中空体積を等体積的に一端から他端を長さとする円筒に変形させた円の直径を計算して、当該中空の直径に当てればよい。ポストの直径についても同様である。
【0013】
本願第一発明においては、
ポストの直径が1.9mm以下、および/または、該中空の直径が1.4mm以下であり、
好ましくは、ポストの直径が1.5mm以下、および/または、該中空の直径が1mm以下であり、
より好ましくは、ポストの直径が1.3mm以下、および/または、該中空の直径が0.5mm以下である。
ポストの直径が前記数値範囲の上限値を上回ると、太すぎて、ポストを根管内へ円滑に挿入することが困難となる。又、中空の直径が前記数値範囲の上限値を上回ると、それに押される形で、ポストの直径が大きくなるので、前記の通り、好ましくなくなるし、中空ポストの壁厚が薄くなって、強度が低下したり、挿入する際の滑り抵抗にて、大きく変形して、挿入困難となったり、内面の平滑性を保持し難くなるおそれがある。
【0014】
本願第一発明においては、
好ましくは、ポストの直径が0.7mm以上、および/または、該中空の直径が0.1mm以上である。
より好ましくは、ポストの直径が0.8mm以上、および/または、該中空の直径が0.2mm以上、
更に好ましくは、ポストの直径が0.9mm以上、および/または、該中空の直径が0.3mm以上である。
ポストの直径が前記数値範囲の下限値を下回ると、根管内壁とポスト外面との間隙が空きすぎて、多くのシーラーを用いる必要が生じて、大きな重合収縮などの原因となり好ましくなく、また、シーラーに比してポスト比率が低くなって、ポストの優れた材料力学的特性が発現し難くなる恐れもある。中空の直径が前記数値範囲の下限値を下回ると、根管挿入の際、外見上、圧縮変形や曲げ変形し易く、円滑に、根尖端へ到達可能であるという特性が十分に発揮されなくなるからである。
【0015】
第一発明においては、好ましくは、ポストの直径が該中空の直径よりも0.1mm以上大きいことである。より好ましくは、0.2mm以上大きく、更に好ましくは、0.3mm以上大きくことである。前記数値範囲の下限値を下回ると、中空ポストの壁厚が薄くなることにより、強度が低下したり、挿入する際の滑り抵抗にて、大きく変形して、挿入困難となったり、内面の平滑性を保持し難くなるおそれがある。
【0016】
第一発明の場合、ポストの長さは、実際に根管に埋入する際の長さにほぼ等しい長さに調製されていて、処置の際に余分を切断した後、長さを微調整する態様にも、何倍もの長さに調製されていて、使う分だけ、切り分け、根管挿入後再度微調整する態様にも、いずれにも適切に対応している。
【0017】
第二発明は、
一端から他端に亘る中空を有する歯科用ポストであり、
該一端から該他端へ向かうに方向に平行な軸を平行軸、それに垂直な方向を垂直軸として、
該歯科用ポストの
平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が4以上、であり、かつ、
平行軸での長さ、および/または、長軸での長さが4〜40mm
である形状を有することを特徴とする歯科用ポスト
である。
【0018】
第二発明の場合、ポストの長さは、実際に根管に埋入する際の長さにほぼ等しい長さ、好ましくは、少し長めに調製されていて、処置の際に余分を切断して長さを微調整ような態様に適切に対応している。
第二発明の場合、
平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が4以上である。好ましくは、平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が7以上、より好ましくは、平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が9以上である。前記数値範囲の下限値を下回ると、根管の形状にそぐわない。なお、第二発明の場合、平行軸と長軸、垂直軸と短軸はそれぞれ、一致することが好ましい。また、ポストが、平行軸乃至は長軸を回転軸とする中空円筒形であるならば、対応する垂直軸や短軸の長さは一意的に定まるが、外形が非円筒形(断面が楕円形、長軸方向に先細る円錐台など)のばあいは、外形(中空もつまっているものと仮定する)を、平行軸乃至は長軸の長さと同じ長さの円筒形に等積変形した際の当該円筒形の直径を、対応する垂直軸や短軸の長さとする。
【0019】
また、第二発明の場合、平行軸での長さ、および/または、長軸での長さが4〜40mmである。好ましくは、平行軸での長さ、および/または、長軸での長さが8〜25mm、より好ましくは、平行軸での長さ、および/または、長軸での長さが12〜20mmある。前記数値範囲の下限値を下回ると、歯科用ポストとして、長さが足りず、不都合となる恐れがあり、上限値を上回ると、実際に根管に埋入する際の長さにほぼ等しい長さに調製されていて、処置の際に余分を切断して、長さを微調整するという利用形態には不具合となる。
【0020】
なお、第二発明の場合、好ましくは、平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が30以下である。より好ましくは、平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が20以下、更に好ましくは、平行軸/垂直軸での長さの比、および/または、長軸/短軸での長さの比が13以下である。前記数値範囲の上限値を上回ると、根管の形状にそぐわなく恐れがある。
【0021】
ポストの長さは、実際に根管に埋入する際の長さにほぼ等しい長さ、好ましくは、少し長めに調製されていて、処置の際に余分を切断して長さを微調整ような形態においては、ポストは略円筒形
状であ
る。
これより以降の記載は、特に言及しない限り、原則として、第一発明および第二発明に共通の事項である。
【0022】
本発明のポストの10mm当たりの破損することなく曲げられる角度は、一直線の状態を0度とした際、好ましくは10度以上、より好ましくは15度以上、さらに好ましくは90度以上、特に好ましくは180度以上である。前記数値範囲の下限値よりを下回ると、湾曲した根管に挿入することは困難となる。
しかしながら、余りにも変形しやすいと根管に挿入することがやはり困難となるので、本発明のポストの長さ20mmに置いて、90度以上折れ曲がって変形する圧力は、好ましくは3gf/本以上、より好ましくは15gf/本以上、さらに好ましくは50gf/本以上、特に好ましくは150gf/本以上である。
【0023】
本発明の中空ポストにおいては、局所的な脆弱部等が出来ないように中空部はポストの略中央に位置することが好ましく、中空部の数は1ポストに1本であることが好ましい。
【0024】
強度が低下したり、挿入する際の滑り抵抗にて、大きく変形して、挿入困難となったり、内面の平滑性を保持し難くなるなどの問題が生じない範囲にて、
図2に図示したように、ポスト側面外部と中空の間を連絡する内外連絡管孔13aなどの側孔乃至は側管を有していても良い。前記問題が生じないためには、当該側孔の直径は好ましくは200μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下、および/または、中空ポストの直径の50%以下、
より好ましくは10%以下、更に好ましくは2%以下であり、側孔等によるポスト壁の空隙率(中央の中空部は除外する)は、好ましくは、50%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは2%以下である。空隙率は、樹脂等で包埋乃至は含浸した後、光学顕微鏡乃至は電子顕微鏡にて断面観察して計測できるが、可能な限り、実際に根管に挿入する際の状態に近い条件にて計測することが好ましい。例えば、中空部に圧力をかけることにより、ポストを膨張させて根管に挿入させるならば、そのような状態における空隙率を計測することが合理的である。なお、
図2に図示したように、前記内外連絡管孔以外に、中空部内壁面、および/または、ポスト外壁面に、途中で行き止まりの盲管孔13b、13b’、出入口が何れも中空内壁又はポスト外壁の一方側である出戻り管孔13c、13c’、あるいは内外連絡管孔、盲管孔、出戻り管孔の何れかの形態であり内部に管の分岐がある分岐管系13d、さらに分岐管で3孔以上を有する多孔管系13eなどがあってもよい。
【0025】
前記の通り、空隙率の高過ぎる網目構造も好ましくないが、空隙率が高くなくとも、実質上、網目の交点が結合しておらず、摺動可能な織布のような形態も大きく変形し易く、好ましくない。
なお、ポストの形態として、単相の樹脂マトリックスのみでなく、例えば、分散した繊維、網目状繊維、交絡した繊維、織布形態の繊維、不織布形態の繊維等が、必要に応じて樹脂などで含浸されたものであっても良いが、ポストの外面及び又は内面に当該繊維が露出しているとそれぞれ、根管内壁や中空の充填物との滑り摩擦を増大させる要因となるので好ましくなく、そのため、ポスト外面(中空部内面も同様)において、ポスト長さあたりの露出繊維数は好ましくは100本/cm以下、より好ましくは10本/cm以下、更に好ましくは3本/cm以下、および/または、露出繊維の直径は好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは30μm以下、および/または、露出繊維の露出度は繊維の円周角にて好ましくは180度以下、より好ましくは60度以下、更に好ましくは30度以下、および/または、中空内壁面積に占める繊維が露出している面積は好ましくは50%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは3%以下である。
【0026】
或いは、
図3、4に図示したように、ポスト乃至は中空の略全長に亘って、ポスト側面外部と中空の間を放射方向乃至は放射方向に対して斜め方向に切れ込みを入れ、ポスト自体の弾性復元力にて、外力がない限り、当該切れ込みは密閉されるような、切り込み部14、14’を有していても良い。又、この切れ込み部は、中空に対して略平衡であっても良いし、斜めであっても良いし、らせんを巻いていても良い。この切れ込み部については、前記繊維が上記数値範囲を超えて露出していても問題はない。
【0027】
本発明の中空を有するポストは、中空部が一端から他端へ直線的に何ら障害物無く、導通していても良いが、
図5に図示したように、ポストの先端に根管の根尖孔を封止するため等の目的でプラグ15を有しても良い。当該プラグが脱着式であれば、ポストが実際に根管に埋入する際の長さの何倍もの長さに調製されていて使う分だけ切り分けて根管挿入後再度微調整する態様でも無理なく適用可能である。また、当該プラグ乃至はその近傍にて脱気用乃至は脱液用の抜孔16を設けていても良い。但し、実質的に中空に欠けるプラグが長太いと湾曲した細い根管にスムーズに挿入できるという特性が低下するので、当該先端形状としては、外径がポスト平均外径の90%以上であり、かつ、中空乃至は抜孔の内径がポスト平均内径の10%以下である部分の長さが5mm以上であることは好ましくない。前記外径下限は、より好ましくは80%、さらに好ましくは70%である。また、前記中空内径下限は、より好ましくは20%、さらに好ましくは30%である。また、前記長さ下限は、より好ましくは2mm、さらに好ましくは1mmである。
【0028】
本発明のポストの使用例を以下に例示するが、何らこれに限定されるものではない。
まず、治療対象の歯は、抜髄され、リーマー等にて根管拡大する。但し、歯壁の強度を保持するため、根管拡大は最小限度に留める。次いで、形成された根管を次亜塩素酸系消毒液などで殺菌し、水洗して、気銃乃至はペーパーポイントなどで、水分を除去し、必要に応じて、接着性を向上させるために歯面をエッチングやプライマー処理する。更に、中空ポストを挿入する前に、必要に応じて、重合性単量体を含む接着剤などをシーラーとして、根管に塗布乃至は充填する。このように準備が整った段階で、本発明のポストを根尖部へ向けて根管に挿入する。この際、ポストの中空部には、何も充填していなくても良いし、未硬化の流動性を有する重合性単量体やその溶媒などで満たされていても良い。後の空気抜きの手間を考慮して、このように、予め、気体以外の充填材が含まれていても良い。しかしながら、未だ、この時点では、中空を有する歯科用ポストの中空部に中空部による伸縮性を実質上阻害する剛体は入れない方がよい。剛体とは、外力を加えても実質上圧縮変形しないものであり、例えば、ポストを構成する材料程度か、それより小さい圧縮変形性を有するものである。中空部による伸縮性を実質上阻害する剛体としては、大凡、中空部の内径程度の短径、および/または、ポストの長さ程度の長径を有する形状を有するものである。従って、中空部による伸縮性を実質上阻害しない剛体としては、その短径は、中空部の内径の好ましくは100%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下、および/または、その長径は、ポストの長さの好ましくは50%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。中空部に何も充填されていない場合には、中空部を有するポストを根管に挿入後、当該中空部よりも外径の小さい注入パイプの開口部を根管の先端部までに至らしめて、そこからシーラーを注入してもよい。注入後、当該パイプを引き抜いても良いし、そのまま埋入しても良い。
【0029】
その後、既に充填されている重合性単量体を重合しても良いし、
図6に図示したように、中空の内径にほどよく内接する中空を有さない略円筒形状乃至は略円錐(台)形状乃至は略円筒円錐(台)形状のポストを挿入しても良いし、複数の略円錐形状のポイント40(ガッターパーチャポイント、アクセサリーポイント、シルバーポイント)を入れても良い。これらにより、根尖孔の封止だけでなく、支台築造体としてを咬合力を支持する機能も発揮して、本発明のポストの当該機能を補助出来る。従って、これらの補助機能が十分ならば、本発明のポストは場合によっては、殆ど咬合力支持機能を有さなくとも問題ない。また、流体状充填材とともに、小径のフィラーを充填しても良い。いずれにしても、中空を有するポストなしで、直接、根管に挿入・充填するよりも、摩擦抵抗等が少なく、容易に作業可能である。
【0030】
更に、
図7に図示したように、ポストに緊密に外接可能な内径を有するリング状のスリーブ41を、ポスト外周に近接して配することにより、略逆円錐台状の根管において、上部でのポストのボリューム不足を補うことが可能である。
さらに、X線不透過性付与剤は、本発明の歯科用ポスト材料中に含まれていてもよいが、中空部に挿入乃至は充填する材料に含有させてもよい。歯科用ポストの材料中に当該付与剤を含有させることは、比重が極端に相異する材料を均一に混合成形するという極めて困難な高分子材料成形技術上の課題を解決する必要があり、ある程度首尾良く成形できても、非含有品と比較して、材料特性が劣る事がしばしばである。従って、本発明の中空を有する歯科用ポストの中空部に当該付与剤を含有する流体状充填材を充填する方が好適である。
【0031】
X線不透過性付与剤は、例えば、カルシウム、バリウム、ビスマス、マグネシウム、および原子番号58〜71の希土類金属もしくはそれらの酸化物、炭酸塩、フッ化物または硝酸塩の様な当該技術分野で公知のものが含まれる。これらのX線不透過性付与剤は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0032】
好ましいX線不透過性付与剤には、例えばバリウム、ビスマス、ランタン、ハフニウム、ストロンチウム、タンタル、イッテルビウム、イットリウム、ジルコニウムまたは亜鉛の酸化物、炭酸塩、硝酸塩またはフッ化物が含まれ、より好ましいX線不透過性付与剤には、バリウム、ランタン、ストロンチウム、イッテルビウムまたはタンタルの酸化物、炭酸塩またはフッ化物が含まれる。
より詳細には、特に好ましいX線不透過性付与剤としては、例えばBaO、(BiO)
2CO
3、La
2O
3、La
2(CO
3)
3、SrO、SrCO
3、SrF
2、Ta
2O
5、TaF
5、Y
2O
3、YF
3、ZnO、ZrO、ZrCO
3などが挙げられる。この中でも特に好ましいX線不透過性付与剤としては、フッ化イッテルビウム、次炭酸ビスマスが挙げられる。
【0033】
また、フィラーとしては、例えば従来から使用されている各種の無機,有機,または無機・有機複合充填材を使用できる。その具体例として、二酸化珪素(例えば石英、石英ガラス、シリカゲル)、アルミナを挙げることができる。珪素を主成分とし各種重金属とともにホウ素および/またはアルミニウムを含有する各種ガラス、各種セラミックス、フッ化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等も使用できる。フィラーの表面処理には、通常使用されるシランカップリング剤、例えば、ω−メタクリロキシアルキルトリメトキシシラン(メタクリロキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ω−メタクリロキシアルキルトリエトキシシラン(メタクリロキシ基と珪素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等の有機珪素化合物が使用される。さらに、本発明の歯科用ポストを製造する際には光重合硬化性組成物に必要に応じ有機溶剤、水、安定剤、顔料等の一般的な添加物を配合することもできる。
これらの成分としては、具体的には特開平6−9327号公報、特開平7−97306号公報に記載されているものを使用することができ、またその光硬化性組成物も使用することができる。
【0034】
本発明のポストを構成する素材は特に限定されるものではなく、以下のようなものが例示できる。
ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなど)、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン、スチレンアクリロニトリル樹脂、ABS樹脂、ポリイミド、ポリアリールエステル、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、メラミン、シリコーン、フェノールなどが挙げられる。
また、後述のアクリル等の有機マトリックス、つまり、重合性(メタ)アクリル酸エステルおよび重合開始剤とを含有する硬化性組成物を硬化させたポリマーも好適に用いることが出来る。
これらのポリマーは、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
また、上記のポリマー等に強化繊維を複合させることも好ましい。強化繊維としては、ガラス繊維(EガラスやSガラスなど)、カーボン繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維などの無機繊維、ポリ(メタ)アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらの強化繊維のうち、機械的強度の面で、ガラス繊維が好ましい。前記アルミナ繊維やジルコニア繊維、又、ガラス繊維でも特にバリウムガラス系繊維はX線造影性に優れている。
これらの強化繊維は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0035】
上記のような繊維は、例えばカップリング剤、特にγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のカップリング剤を用いて前処理した後に用いることが好ましい。このようなカップリング剤を用いた前処理には、通常は、有機溶媒にカップリング剤を溶解し、この中に上記繊維、あるいは、編まれた繊維、組まれた繊維を浸潰した後、溶液から引き上げて乾燥する方法が採用される。また、こうしてカップリング剤に浸潰して引き上げた後、この繊維を加熱することが好ましい。
【0036】
また、ポストと根管歯壁の間隙等をシーリングするシーラーとしては、従来の無機セメントやグラスアイオノマー系などの有機系セメントでも良いが、アクリル等の有機マトリックス、つまり、重合性(メタ)アクリル酸エステルおよび重合開始剤とを含有する硬化性組成物であることが好ましい。
【0037】
前記シーラーで使用する重合性(メタ)アクリル酸エステルには、単官能重合性モノマーと、多官能重合性モノマーとがある。単官能重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
【0038】
この(メタ)アクリレートモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2−または1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレンモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン等の(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;および、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
また、多官能重合性モノマーとしては、重合性(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。その例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;下記式(1)〜(3)のそれぞれで表される脂肪族、脂環族または芳香族の(メタ)アクリレート;
【0041】
(上記式において、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、mおよびnは0または正の数を示しそしてR
1は、以下に記載する2価の基である。);
【0043】
下記式(2)で表される脂環族または芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート;
【0045】
(上記式において、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、nは0または正の数を示し、R
2は、それぞれ独立に−(CH
2)
2−、−(CH
2)
4−または下記2価の基である);
【0047】
さらに、下記式(3)で表される分子内にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0049】
(上記式において、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R
3は、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
6−または下記2価の基である)。
【0051】
以上に例示した化合物の中で、単官能の重合性(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような分子内にエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート等が特に好ましく用いられる。
【0052】
また、多官能性の重合性(メタ)アクリル酸エステルとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(メタクリロキシエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4−(または−2,4,4−)トリメチルヘキサンのような分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート、下記式(3)−1〜(3)−3
【0054】
(上記式において、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、m+nは2〜20である)、
【0056】
(上記式において、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す)、
【0058】
(上記式において、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す)、
のそれぞれで表わされる化合物等が特に好ましく用いられる。
【0059】
また、前記シーラーでは、アクリル系有機マトリックスは、分子内に酸性基を有する重合性モノマーを含有していてもよい。この分子内に酸性基を有する重合性モノマーを用いることにより、補強用繊維、無機材料や歯質との接着性能を大幅に向上するため、前記シーラーで使用することが特に望ましい。分子内に酸性基を有する重合性モノマーとしては具体的には、(メタ)アクリル酸およびその無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−m−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸およびその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等のカルボン酸基またはその無水物を含有するモノマー;
(2−(メタ)アクリロキシエチル)ホスホリック酸、(2−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)ホスホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホリック酸等の燐酸基を含有するモノマー;および、p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を含有するモノマーを挙げることができる。
【0060】
これらのうちではカルボン酸基を含有するモノマーが好ましく、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸およびその無水物が特に好ましい。分子内に酸性基を有する重合性モノマーは、アクリル系有機マトリックス中の重合性成分の合計量に基づいて、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは3〜30重量%の範囲内の量で用いられる。
【0061】
前記シーラーにおいて、上記アクリル系有機マトリックス中には、上記の重合性アクリル系エステルおよび必要により分子内に酸性基を有する重合性モノマーが含有されているが、これらはモノマーとして含有されていてもよいし、またこれらの部分重合物として含有されていてもよい。
また、これらは単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0062】
これらの重合性単量体の中で上記成分として、硬化物の柔軟性や除去性等を高める観点から鎖長17原子数以上、好ましくは19〜300原子数、より好ましくは25〜200原子数、更に好ましくは30〜100原子数の構造を持つ長鎖重合性単量体を用いることがより好ましい。かかる長鎖の構造としては、分子鎖が十分長く柔軟性を有しているならば、特定の化学構造に限定されるものではないが、具体例を挙げると、オキシアルキレン繰り返し単位を4個以上有する構造(−(−(−CH
2−)
p−O−)
n−;pは2以上、nは4以上)を持つポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、プロピレングリコールおよび/またはエチレングリコールから誘導される繰り返し単位を4〜60個、より好ましくは9〜40個、更に好ましくは11〜28個有するポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび/またはポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることが更に好ましい。前記原子数乃至は繰り返し単位数の数値範囲の下限値を下回ると除去性が低下し、一方、上限値を上回ると重合が不十分となり、いずれも好ましくない。
【0063】
前記長鎖重合性単量体の鎖長は、各原子間の結合が自由に回転等することが柔軟性に多大な影響を与えているものと推測される。従って、重合後に残存する二重結合等は好ましくないと考えられる。よって、前記原子数等の数値を計算するに際して、当該二重結合等は差っ引いた数値を採用する方が好ましい。具体的には、対象となる分子鎖経路上にて、二重結合にて結合し合っている原子団(>C=C<)は、一原子と見なして計数することである。何故ならば、分子鎖上、単結合している原子は自由回転可能な結合軸は2軸有るのに対して、当該分子鎖経路上にて2つの炭素原子同士が二重結合していると、2原子合わせて自由回転可能な結合軸は2軸しかないからである。芳香環乃至はその縮合環やスピロ環等はそれで一原子と見なして計数すべきである。3、4員環も同様と見なして良い。5員以上の環は、いす形や舟形等の配座変換の自由度があるが、制限があるので、その分は1/4原子分計数加算することにして、結局、合計1+1/4とするのが妥当である。5員以上の環が、縮合環やスピロ環として、付加する毎に、やはり、1/4原子分ずつ加算するのが妥当である。これに従えば、例えば、ビシクロ縮合環系(例:完全水素飽和されたナフタレン環系)ならば、1+1/4+1/4となる。なお、カルボニルの酸素のように当該分子鎖上にない二重結合については特に考慮する必要はない。なお、分子鎖末端の原子(水素等)は、計数に入れないことが好ましい。又、分子鎖が少々短く係数されることになっても、重合性二重結合が分子鎖末端となるように経路を選択して計数することが好ましい。
【0064】
更には、長鎖重合性単量体は、少なくとも2官能以上であることが好ましく、前記長鎖構造の両端部に重合性二重結合を有することがより好ましい。あるいは、少なくとも2つの重合性二重結合の間に当該長鎖構造を有することが重要であると考えられる。恐らく、安定な熱力学的平衡状態においては、当該長鎖構造は伸びきった形態よりも適度に縮まった形態が優勢であり、その両端の重合性二重結合が重合分子の架橋を形成する際もかかる状況にあると考えられる。そして、重合硬化して重合収縮過程に入ると、前記縮まった形態が伸びきった形態に変化することにより、重合収縮の応力緩和に寄与すると推測される。例えば、下記式(3)−4および(3)−5に示されるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールから誘導される繰り返し単位を4〜30のものが特に好ましく用いられる。
【0066】
(ここで、式(3)−4中のRaはそれぞれ独立にHまたはCH
3であり、nは4〜30である。)
【0068】
(ここで、式(3)−5中のRaはそれぞれ独立にHまたはCH
3であり、nは4〜30である。)
全重合性単量体を100重量部とした際に、長鎖重合性単量体は、好ましくは5〜95重量部、より好ましくは9〜70重量部、さらに好ましくは15〜50重量部にて含まれる。前記数値範囲の下限値を下回ると、柔軟性の効果が十分には発現されず、上限値を上回ると長鎖重合性単量体は、前記上限値を上回ると形成された重合体における重合構造の主鎖が相対的に減少して脆くなるなど強度が不足する恐れがあり、特に当該成分が長鎖のオキシアルキレン繰り返し単位よりなる場合では、重合する際に疎水性モノマーとの相溶性が低下したり、重合した硬化体の耐水性が低下する恐れがあり、好ましくない。
【0069】
前記シーラーで用いるアクリル系有機マトリックスは、好ましくは重合開始剤を含有している。かかる重合開始剤としては、例えば有機過酸化物、無機過酸化物、ホウ素含有重合開始剤、α−ジケトン化合物、有機アミン化合物、有機スルフイン酸、有機スルフィン酸塩、無機硫黄化合物、有機燐化合物およびバルビツール酸類を挙げることができる。これらは1種または2種以上用いることができる。これらの重合開始剤は、便宜上、常温化学重合タイプ、光重合タイプ、またはこれらの複合したデュアルタイプなどに分けられる。常温化学重合タイプで使用される過酸化物としては、例えばジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p’−ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p’−ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p’−ジメチルベンゾイルペルオキシド、p,p’−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物および過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物を挙げることができる。これら過酸化物のアクリル系有機マトリックス中の重合性成分に対して、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で使用される。
【0070】
重合開始剤のうちホウ素含有重合開始剤としては、例えば有機ホウ素化合物、またはこれを含有してなる組成物を挙げることができる。有機ホウ素化合物としては、例えばトリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素などのトリ(シクロ)アルキルホウ素;ブトキシジブチルホウ素などのアルコキシアルキルホウ素;ブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンなどのジアルキルボランおよび上記の化合物の一部が部分的に酸化された化合物などを挙げることができる。さらに、これらの化合物は組み合わせて使用することができる。これらの中ではトリブチルホウ素、あるいは部分酸化したトリブチルホウ素が好ましく用いられる。部分酸化したトリブチルホウ素としては、例えばトリブチルホウ素1モルに対し酸素を0.3〜0.9モル付加させたものが好ましく用いられる。これら有機ホウ素化合物は、アクリル系有機マトリックス中に含有される重合性成分に対して、好ましくは0.1重量%〜50重量%の範囲内の量で使用される。
【0071】
また、光重合タイプで使用される重合開始剤としては、例えば紫外光線もしくは可視光線を照射することによって光重合することができる重合開始剤が用いられる。かかる光重合の際に使用できる重合開始剤に特に制限はないが、例えばベンジル、4,4’−ジクロロベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、9,10−アントラキノン、ジアセチル、d,l−カンファーキノン(CQ)、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどの紫外線または可視光線増感剤が挙げられる。これら紫外光線もしくは可視光線を照射することによって光重合することができる重合開始剤は、アクリル系有機マトリックス中の重合性成分に対して、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で使用される。
【0072】
アクリル系有機マトリックスを常温化学重合もしくは光重合によって重合させる際には、還元性化合物を併用することができる。ここで、有機還元性化合物としては、例えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジエタノール−p−トルイジン(DEPT)、N,N−ジメチル−p−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)およびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンツアルデヒド(DMABAd)などの芳香族アミン類;N−フェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン(NTG)、N,N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニルグリシン(NPG−GMA)などを用いることができる。
特に、前記シーラーで使用されるアクリル系有機マトリックスを確実に硬化させ、さらに補強用繊維、無機材料および歯質に対する接着性を向上させるためには、下記式(4)で表わされるアミン化合物または下記式(5)で表わされるアミン化合物の少なくとも一種を含有させることが好ましい。
【0074】
上記式(4)において、R
4およびR
5は互いに独立に水素原子であるかあるいは官能基もしくは置換基を有していてもよいアルキル基であり、そしてR
6は水素原子または金属原子である。
【0076】
上記式(5)において、R
7およびR
8は互いに独立に水素原子またはアルキル基であり、そしてR
9は水素原子、官能基、あるいは官能基もしくは置換基を有していてもよいアルキル基または同様のアルコキシル基である。
これらアミン化合物は、アクリル系有機マトリックス中に、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で配合される。
【0077】
式(4)で表されるアミン化合物の例としては、NPG、NTGおよびNPG−GMAなどを挙げることができる。このうちNPGが特に好ましく用いられる。
【0078】
式(5)で表されるアミン化合物の例としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)およびそのアルキルエステルの他、N,N−ジプロピルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N−イソプロピルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N−イソプロピル−N−メチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステルなどで代表される脂肪族アルキルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル;DMABAd、N,N−ジエチルアミノベンツアルデヒド、N,N−ジプロピルアミノベンツアルデヒド、N−イソプロピル−N−メチルアミノベンツアルデヒドなどで代表される脂肪族アルキルアミノベンツアルデヒド;N,N−ジメチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジエチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピル−N−メチルアミノアセチルベンゼンなどで代表される脂肪族アルキルアミノアセチルベンゼンおよび脂肪族アルキルアミノアシルベンゼンなどを挙げることができる。これらのアミン化合物は単独であるいは組み合わせて使用できる。
【0079】
また、前記シーラーで使用されることがある還元性化合物の例としては、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフイン酸などの芳香族スルフイン酸またはその塩を併用することもできる。無機還元性化合物としては、硫黄を含有する還元性無機化合物が好ましく使用できる。かかる化合物としては、水または水系溶媒などの媒体中でラジカル重合性単量体を重合させる際にレドックス重合開始剤として使用される還元性無機化合物が好ましく、例えば亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。これらの還元性無機化合物は単独でもしくは組み合わせて使用できる。これら還元性無機化合物は、アクリル系有機マトリックス中の重合性成分に対して好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で使用されることが好ましい。
前述の通り、これらの組成にて重合硬化したポリマー乃至は部分的に重合硬化した半硬化物乃至はプレポリマー等は、本発明歯科用ポストを構成する材料として利用しても良い。
【実施例】
【0080】
実施例1
まず、外径0.435mmのポリプロピレン製円柱を芯として、グラスファイバー(セントラル硝子(株)製ECG−150、繊維径9μm、撚数3.6回/25mm)を編組したファイバーチューブ(グラスファイバー200本×3束を16打、内径1.5mm、外径1.9mm、目付量300g/m
2)を作成した。
次に前記芯入りファイバーチューブをγ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(TSL8370:GE東芝シリコーン(株)製)の液体に10分間浸漬し、液体より取り出して室温にて30分間放置した後に、125℃で40分間乾燥させ、グラスファイバー表面をシラン処理した。
周囲のグラスファイバーのみを長軸方向に340gの引張応力をかけた後(周は細くなったが、長軸方向には実質的な延伸は認められなかった)、円柱状構造物を得た。
更に、ファイバー間隙を埋めるマトリックスとしては、アクリル系有機アートレジンSH−500S(50重量%)、NKESTER3G処理品(50重量%)の混合品100gに外添加として重合開始材のDRYBPOを1g、重合禁止材のp−メトキシフェノールを0.02g添加し、溶解したマトリックスを用いた。
即ち、前記マトリックス混合液体に前記円柱状構造物を10分間浸漬し、液体より該構造物を取り出して、室温にて60分間放置した後に、125℃で50分間加熱重合し、得られた構造物から、中心のポリプロピレン製円柱を引き抜いた。
中空内壁についても、順次、各処理剤を中空に注入してから前記と同様の円柱を挿入・引き抜きしてそれぞれ同様の処理を施し、シラン処理とマトリックス処理を行って、中空を有する歯科用ポストとした。直径は1.31mmであった。これを長さ20mmに切断した。ポスト外面や中空内面には、露出した線維は実質上無きことを確認した。
【0081】
トリエチレングリコールジメタクリレート25重量部、1,6−ビス(メタクリロシキエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4−(2,4,4)トリメチルヘキサン75重量部、カンファキノン0.3重量部、N,N−ジメチルアミノ安息香酸−2−ブトキシエチル0.3重量部、および、バリウムガラス(SCHOTTGLASWERKE(株)製、GM8235,平均粒径1μm、通常の方法で1重量γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン処理したもの)200重量部を混合して均一な充填材ペーストを調製した。
レントゲン像にて、根管入り口の軸線と根尖孔近傍の軸線の角度が約60度(真っ直ぐならば0度)と判読される治療対象歯を抜髄し、根尖部を0.5mmの太さで根管拡大して、さらに根管を殺菌処理した。
根管に前記ペーストを塗布した後、中空に前記ペーストを充填した前記ポストを挿入した。術者の挿入時の感触ではスムーズかつ緊密に充填された。
ポストの中空にガッタパーチャポイントを更に挿入し余分な長さのポストやポイントを切断し、余分なペーストを除去した後、可視光線照射器((株)モリタ東京製作所製、アルフアライトII)を用いて可視光線を60秒照射して、ペーストを硬化させ、支台築造を完成させた。
後にレントゲン撮影所見にて確認したところ、根尖孔を塞ぐ緊密なレントゲン像が確認され、ポストも、根管の先端部近傍にまで、挿入されていることが確認された。
【0082】
実施例2
マトリックスを、メチルメタクリレート(MMA)49.9重量部、トリコサエチレングリコールジメタクリレート(23G)33.3重量部、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300)10.8重量部、N−フェニルグリシンナトリウム(NPG−Na)3.6重量部、カンファーキノン(CA)1.2重量部p−トルエンスルフィン酸ナトリウム(p−TSNa)1.2重量部よりなるマトリックスに代え、その重合条件を37℃24時間とする以外は、実施例1と同様に実施したところ、同様の結果を得た。