(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記長孔のうち前記ブレードの径方向内側の内壁面が、前記正圧面から前記負圧面に向かうにしたがって前記ブレードの径方向外側に傾斜する傾斜面であり、前記長孔のうち前記ブレードの径方向外側の内壁面が、ブレードの厚さ方向に延びて前記正圧面に垂直な面又は前記正圧面から前記負圧面に向かうにしたがって前記ブレードの径方向外側に傾斜する傾斜面であるることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロペラファン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブレードの外周縁部において発生する翼端渦もプロペラファンの空力騒音の要因となるため、低騒音化のためには翼端渦の発生を抑制することも必要となる。
しかしながら、特許文献1のプロペラファンでは、翼端渦の発生を抑制することができない。また、特許文献1のプロペラファンでは、そのブレード内部に中空部を形成する必要があるなど、その構造が複雑となるため、プロペラファンの製造コストが高い、という問題もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、翼端渦に起因する空力騒音を低減でき、かつ、低コストで製造可能なプロペラファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明のプロペラファンは、軸線回りに回転されるハブと、該ハブに放射状に設けられて、正圧面及び負圧面を有し、前記ハブとともに回転することで負圧面側から正圧面側へ前記軸線方向に流体を送る複数のブレードと、を備え、前記ブレードに、正圧面から負圧面まで貫通し、前記ブレードの外周縁に沿うように前縁側から後縁側に向
かって延びる長孔が形成され、前記ブレードの径方向における前記長孔の幅寸法が、前縁側から後縁側に向かうにしたがって前記ブレードの径方向内側に張り出すように大きくなることを特徴とする。
【0007】
翼端渦は、正圧面に沿ってブレードの径方向外側に向けて流れる流体が、ブレードの外周縁に到達し、負圧面側に回り込むことで発生する。上記プロペラファンでは孔部が形成されていることで、正圧面に沿ってブレードの径方向外側に向けて流れる流体の一部が孔部に流入するため、ブレードの外周縁に到達する流体の流れを減少させ、翼端渦を弱めることができる。また、翼端渦はブレードの外周縁よりも径方向内側において負圧面に向かう流れを有するが、この流れは、孔部を通して正圧面から負圧面へ流出した流体の流れによって相殺することができる。したがって、上記プロペラファンによれば、翼端渦の発生を抑制できるため、翼端渦に起因する空力騒音を低減することができる。
また、上記プロペラファンは、ブレードに孔部を形成した簡素な構成であるため、低コストで製造することが可能である。
【0008】
さらに、
長孔がブレードの前縁側から後縁側に向かって延び
ているので、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって発達する翼端渦を連続して弱めることができる、すなわち、翼端渦の発生を効率よく抑えることが可能である。
また、翼端渦は、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって発達して、翼端渦の径寸法が大きくなるため、翼端渦のうち負圧面に向かう流れは、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがってブレードの径方向内側にずれる。
これに対し、上記プロペラファンでは、孔部の開口をブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがってブレードの径方向内側に張り出させているため、流体が孔部を通して正圧面から負圧面へ流出する位置を、ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって径方向内側にずらすことができる。
したがって、翼端渦のうち負圧面に向かう流れを、孔部を通して正圧面から負圧面へ流出する流体の流れによって効率よく相殺することができる。
【0009】
そして、前記プロペラファンにおいては、前記負圧面に対する前記孔部の開口位置が、前記ブレードの前縁側から後縁側に向かうにしたがって前記ブレードの径方向内側に変位していると好ましい。
【0012】
この課題を解決するために、本発明の他のプロペラファンは、軸線回りに回転されるハブと、該ハブに放射状に設けられて、正圧面及び負圧面を有し、前記ハブとともに回転することで負圧面側から正圧面側へ前記軸線方向に流体を送る複数のブレードと、を備え、前記ブレードに、正圧面から負圧面まで貫通し、前記ブレードの外周縁に沿うように前縁側から後縁側に向かって延びる長孔が形成され、前記
長孔のうち前記ブレードの径方向内側の内壁面が、前記正圧面から前記負圧面に向かうにしたがって前記ブレードの径方向外側に傾斜する傾斜面であ
り、前記長孔のうち前記ブレードの径方向外側の内壁面が、ブレードの厚さ方向に延びて前記正圧面に垂直な面又は前記正圧面から前記負圧面に向かうにしたがって前記ブレードの径方向外側に傾斜する傾斜面であることを特徴とす
る。
【0013】
上記プロペラファンによれば、孔部が傾斜面を有することで、孔部において正圧面から負圧面に向けて流れる流体の流れ方向を傾斜面に沿う方向に変位させることができる。すなわち、傾斜面によって孔部から負圧面側に流出した流体をブレードの外周縁に向けて流すことができる。このようにブレードの径方向外側に向かう流体の流れにより、翼端渦をブレードの外周縁から径方向外側に追い出すことができる。プロペラファンは、複数のブレードをハブの回転方向に配列して構成されるが、回転方向前方側のブレードにおいて発生した翼端渦が、上記のようにブレードの外周縁から径方向外側に追い出されることで、回転方向後方側のブレードに衝突することを防ぎ、翼端渦の衝突による空力騒音を低減できる。
【0014】
さらに、前記プロペラファンにおいて、前記
長孔の径方向内側において前記負圧面から突出するガイド部を備え、前記ガイド部が、
前記長孔の径方向内側の前記傾斜面に連な
り、前記負圧面から離れる
にしたがって、径方向外側に延びる延長傾斜面を有しているとよい。
【0015】
上記プロペラファンによれば、孔部から負圧面側に流出した流体を、ガイド部の延長傾斜面によってブレードの外周縁に向けて流すことができる。すなわち、負圧面側においてブレードの径方向外側への流体の流れをさらに強めることができ、翼端渦をより確実にブレードの外周縁から径方向外側に追い出すことができる。
【0016】
この課題を解決するために、本発明のさらに他のプロペラファンは、軸線回りに回転されるハブと、該ハブに放射状に設けられて、正圧面及び負圧面を有し、前記ハブとともに回転することで負圧面側から正圧面側へ前記軸線方向に流体を送る複数のブレードと、を備え、前記ブレードに、正圧面から負圧面まで貫通し、前記ブレードの外周縁に沿うように前縁側から後縁側に向かって延びる長孔が形成され、前記ブレードが、前記
長孔の径方向外側において前記負圧面から突出し、前記
長孔の径方向外側の端部から前記ブレードの外周縁まで延在するフィンを備え
ることを特徴とする。
【0017】
上記プロペラファンによれば、フィンの遠心作用によって孔部から負圧面側に流出した流体をブレードの外周縁に向けて流すことができ、このブレードの径方向外側に向かう流体の流れにより、翼端渦をブレードの外周縁から径方向外側に追い出すことができる。また、前述したように孔部やガイド部が傾斜面や延長傾斜面を有する場合には、傾斜面や延長傾斜面によって孔部から負圧面側に流れ出てブレードの外周縁に向かう流体の流れを、フィンの遠心作用によってさらに強めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプロペラファンによれば、翼端渦に起因する空力騒音を低減できる。さらに、プロペラファンを低コストで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第一実施形態〕
以下、
図1〜3を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプロペラファン1は、軸線S周りに回転される円筒状のハブ2と、ハブ2の外周に放射状に設けられる複数のブレード3とを備える。ブレード3は薄板状に形成され、ハブ2の軸線Sに対して傾いた状態でハブ2の外周に支持される(
図3参照)。なお、プロペラファン1が射出成型品である場合、ハブ2及び複数のブレード3は一体に形成される。
このプロペラファン1は、ハブ2に接続される動力源によって、ブレード3が軸線S回りの所定の向き(
図1の矢印方向)に回転される。これにより、
図1の紙面の奥側から手前側(
図3において左側から右側)へと、ブレード3の表面に沿って斜めに拡がるように送風される。以下ではブレード3の回転方向の前方(上流)を回転前方F、後方(下流)を回転後方Bと呼ぶ。
【0021】
ブレード3は、回転前方F側に位置する前縁4と、回転後方B側に位置する後縁5と、前縁4及び後縁5を径方向外側で繋ぐ外周縁6とを有している。前縁4は、外周縁6側の部分が回転前方Fに向けて張り出しており、これによってブレード3が鎌形に形成されている。
ハブ2の軸線Sから同一半径に沿うブレード3の断面形状は、負圧面3A側に膨出するように湾曲した翼形状となっている。さらに、複数のブレード3は、回転前方F側に位置するブレード3の負圧面3Aと回転後方B側に位置するブレード3の正圧面3Bとがハブ2の軸線S方向に間隔をあけて対向するように配される。これにより、回転するブレード3の正圧面3Bによってかきとられる空気(流体)は、前縁4側から回転前方F側に位置するブレード3の負圧面3Aと回転後方B側に位置するブレード3の正圧面3Bとの間に押し込まれることで、
図1の紙面の奥側から手前側(
図3において左側から右側)へと流される。
【0022】
図1,2に示すように、ブレード3には、外周縁6の近傍において正圧面3Bから負圧面3Aまで貫通する孔部10が形成されている。本実施形態の孔部10はブレード3の外周縁6に沿うように前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔となっている。また、本実施形態では、孔部10の貫通方向がブレード3の厚さ方向に設定されている。さらに、ブレード3の径方向に対応する孔部10の幅寸法は一定に設定されている。
【0023】
孔部10の後縁5側の端部の位置は、プロペラファン1を空気調和機の室外機(不図示)に用いる場合に、例えば
図3に示すように、ベルマウス9に対するプロペラファン1の取付位置を考慮して設定されることが好ましい。
詳細に説明すれば、ベルマウス9は、室外機に備えられて室外機内の空気を外部に案内するものである。プロペラファン1は、その軸線S方向下流側の端部がベルマウス9の径方向内側に挿入されるように、室外機内部に配される。これにより、プロペラファン1の空力性能(プロペラファン1の回転により室外機内部(
図3においてプロペラファン1の左側)の空気を外部(
図3においてプロペラファン1の右側)に排出する性能)が確保される。なお、ブレード3の外周縁6とベルマウス9の内周面とのクリアランスが過度に大きいと、プロペラファン1の空力性能は低下する。
【0024】
この挿入状態では、前縁4から後縁5まで延びるブレード3の外周縁6のうち後縁5側の部分(後縁5側部分)が、ベルマウス9の内側に位置する。そして、孔部10がベルマウス9の内側に配されたブレード3の外周縁6近傍に形成されると、ブレード3の外周縁6とベルマウス9の内周面とのクリアランスが実質的に大きくなるのと同様に空力性能が低下し、好ましくない。したがって、孔部10は、ベルマウス9の外側に位置するブレード3の外周縁6、すなわち外周縁6のうち前縁4側の部分(前縁4側部分)に形成されることが好ましい。
具体的には、ベルマウス9の内側に位置するブレード3の外周縁6の後縁5側部分の長さは、外周縁6の全長の略1/2である。このため、孔部10の後縁5側の端部の位置は、孔部10がベルマウス9の内側に入らないように、外周縁6に沿って前縁4から孔部10の前縁4側の端部に至る距離が外周縁6の全長の略1/2以下となるように設定されるとよい。
【0025】
以上のように構成されるプロペラファン1を作動させると、空気がブレード3の負圧面3A及び正圧面3Bに沿ってブレード3の前縁4から後縁5(回転後方B)に向けて流れる。ここで、ブレード3は、負圧面3A側に膨出するように湾曲した翼形状に形成されているため、負圧面3Aに沿って流れる空気の静圧は、正圧面3Bに沿って回転後方Bに向けて流れる空気の静圧よりも小さい。
また、ブレード3の正圧面3Bに沿って流れる空気にはブレード3の回転に伴う遠心力が作用するため、ブレード3の正圧面3B上を流れる空気の一部は、
図2に示すように、ブレード3の径方向外側に向けて流れ、ブレード3の外周縁6に到達する。そして、この空気がブレード3の負圧面3A側に回り込むことで翼端渦Vが発生する。
【0026】
これに対し、本実施形態のブレード3には孔部10が形成されているため、正圧面3Bに沿ってブレード3の径方向外側に向けて流れる空気の一部が正圧面3B側と負圧面3A側との静圧差によって孔部10に流入する。これにより、ブレード3の外周縁6に到達する空気の流れを減少させ、翼端渦Vを弱めることができる。
また、翼端渦Vはブレード3の外周縁6よりも径方向内側において負圧面3Aに向かう流れを有するが、この流れは、孔部10を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出した空気の流れによって相殺することができる。
【0027】
以上説明したように第一実施形態のプロペラファン1によれば、翼端渦Vに供給される空気の流れを減少させることができ、また、翼端渦Vのうち負圧面3Aに向かう流れを相殺することができるため、翼端渦Vの発生を抑制することができる。さらに、孔部10が形成されない場合、翼端渦Vはブレード3の外周縁6の前縁4において発生すると共に、後縁5側に向かうにしたがって発達するが、本実施形態では、孔部10が前縁4側から後縁5側に向けて延びるように形成され、また、ブレード3の前縁4側に寄せて形成されているため、翼端渦Vの発生を効率よく抑えることができる。以上のことから、翼端渦Vに起因する空力騒音を低減することができる。
また、第一実施形態のプロペラファン1は、ブレード3に孔部10を形成した簡素な構成であるため、低コストで製造することが可能である。
【0028】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について、
図4,5を参照して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図4,5に示すように、本実施形態のブレード3には、第一実施形態と同様の孔部11が形成されている。すなわち、孔部11は、ブレード3の外周縁6の近傍において正圧面3Bから負圧面3Aまで貫通し、その貫通方向がブレード3の厚さ方向に設定されている。また、孔部11は、ブレード3の外周縁6に沿うように前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔となっている。さらに、孔部11の延在方向の両端部の位置も、第一実施形態の孔部10と同様に設定されている。
ただし、本実施形態では、負圧面3A及び正圧面3Bに対する孔部11の開口位置が、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがってブレード3の径方向内側に変位している。
【0029】
以上のように構成される本実施形態のプロペラファンでは、第一実施形態と同様の効果を奏することに加え、第一実施形態のプロペラファン1の場合と比較して、翼端渦Vの発生を効率よく抑えることができる。以下、詳細を説明する。
図5に示すように、翼端渦Vはブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって発達し、翼端渦Vの径寸法が大きくなるため、翼端渦Vのうち負圧面3Aに向かう流れは、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがってブレード3の径方向内側にずれる。これに対し、本実施形態のプロペラファンでは、負圧面3Aに対する孔部11の開口位置が前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側に変位するため、空気が孔部11を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出する位置を、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側にずらすことができる。したがって、翼端渦Vの大きさが変化しても、翼端渦Vのうち負圧面3Aに向かう流れを、孔部11を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出する空気の流れによって効率よく相殺することが可能となり、翼端渦Vの発生を効率よく抑制できる。
【0030】
上記第二実施形態では、負圧面3A及び正圧面3Bに対する孔部11の開口位置が、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがってブレード3の径方向内側に変位しているが、少なくとも負圧面3Aに対する孔部11の開口位置がブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがってブレード3の径方向内側に変位していれば、上記第二実施形態と同様の効果を奏する。
【0031】
また、上記第二実施形態では、ブレード3の径方向に対応する孔部11の幅寸法が、一定に設定されているが、例えば
図6に示すように、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側に張り出すように大きくなっていてもよい。
この場合でも、上記第二実施形態の場合と同様に、空気が孔部11を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出する位置を、ブレード3の前縁4側から後縁5側に向かうにしたがって径方向内側にずらすことができるため、翼端渦Vの発生を効率よく抑制できる。
【0032】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について、
図7,8を参照して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図7,8に示すように、本実施形態のブレード3には、第一実施形態の孔部10と同様に、ブレード3の外周縁6の近傍において正圧面3Bから負圧面3Aまで貫通する孔部12が形成されている。また、孔部12は、ブレード3の外周縁6に沿うように前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔となっている。さらに、孔部12の延在方向の両端部の位置も、第一実施形態の孔部10と同様に設定されている。
ただし、本実施形態では、孔部12のうちブレード3の径方向内側の内壁面が、正圧面3Bから負圧面3Aに向かうにしたがってブレード3の径方向外側に傾斜する傾斜面12Aとなっている。なお、孔部12のうち傾斜面12Aに対向するブレード3の径方向外側の内壁面(対向面12B)は、ブレード3の厚さ方向に延びている。
【0033】
また、本実施形態のブレード3は、孔部12の径方向内側において負圧面3Aから突出するガイド部14を備える。このガイド部14は、孔部12の傾斜面12Aに連なって負圧面3Aから離れる方向に延びる延長傾斜面14Aを有する。延長傾斜面14Aは、孔部12の傾斜面12Aと共に同一面をなしている。なお、図示例では、ブレード3の厚さ方向に対する延長傾斜面14Aの傾斜角度が一定に設定されているが、例えばガイド部14の延在方向先端に向かうにしたがって大きくなってもよい。すなわち、延長傾斜面14Aは平坦面に限らず湾曲面であってもよい。
本実施形態のガイド部14は、板状に形成され、傾斜面12Aに対応する方向(負圧面3Aから離れるにしたがってブレード3の径方向外側に傾斜する方向)に延びている。なお、図示例では、ガイド部14の延出方向先端が、孔部12のうちブレード3の径方向外側の内壁面(対向面12B)よりもブレード3の径方向内側に位置しているが、例えば対向面12Bと同じ径方向位置に位置してもよい。
【0034】
さらに、本実施形態のブレード3は、孔部12の径方向外側において負圧面3Aから突出するフィン15を備える。フィン15は、孔部12の径方向外側の端部からブレード3の外周縁6まで延在している。本実施形態のフィン15は、板状に形成されている。
なお、図示例では、フィン15の延在方向が、ブレード3の正圧面3Bに沿ってブレード3の径方向外側に向かう空気の流れ方向(
図7の矢印方向)に一致しているが、これに限ることはない。また、図示例では、フィン15の突出高さが、ブレード3の径方向外側に向かうにしたがって小さくなっているが、これに限ることはない。さらに、フィン15は、孔部12の延在方向に間隔をあけて複数(図示例では二つ)配列されているが、少なくとも孔部12の延在方向の中途部に一つだけ設けられていればよい。
【0035】
また、本実施形態のブレード3は、孔部12内に形成されて、孔部12のうちブレード3の径方向内側の内壁面(傾斜面12A)と径方向外側の内壁面(対向面12B)とを接続するリブ16を備える。リブ16は、孔部12の径方向外側に位置するブレード3の部分の剛性を高め、孔部12の形状を維持する役割を果たす。また、本実施形態のリブ16は、ガイド部14の延長傾斜面14Aにも接続されており、ガイド部14の剛性を高める役割も果たす。
さらに、リブ16は、前述したフィン15と同様の板状に形成され、フィン15と共に単一の板材をなすように一体に形成されている。そして、リブ16は、孔部12をその延在方向に分割している。図示例では、二つのリブ16によって孔部12が三つに分割されているが、これに限ることはない。
なお、ブレード3が射出成型品である場合、これらガイド部14、フィン15及びリブ16はブレード3に一体に形成することが可能である。
【0036】
以上のように構成される本実施形態のプロペラファンを作動させると、第一実施形態の場合と同様に、正圧面3Bに沿ってブレード3の径方向外側に向けて流れる空気の一部が孔部12に流入するため、ブレード3の外周縁6に到達する空気の流れを減少させ、翼端渦Vを弱めることができる。また、翼端渦Vのうち負圧面3Aに向かう流れを、孔部12を通して正圧面3Bから負圧面3Aへ流出した空気の流れによって相殺することができる。
【0037】
さらに、本実施形態では孔部12が傾斜面12Aを有するため、孔部12において正圧面3Bから負圧面3Aに向けて流れる空気の流れ方向を傾斜面12Aに沿う方向に変位させることができる。すなわち、傾斜面12Aによって孔部12から負圧面3A側に流出した空気をブレード3の外周縁6に向けて流すことが可能となる。
また、傾斜面12Aの負圧面3A側の端部にはガイド部14の延長傾斜面14Aが連なっているため、孔部12から負圧面3A側に流出した空気を、延長傾斜面14Aによってブレード3の外周縁6に向けて流すことができる。
【0038】
さらに、フィン15は、その遠心作用(ブレード3の回転に伴う遠心力)によって、負圧面3A上においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れをさらに強めることができる。さらに、リブ16も、その遠心作用によって、孔部12においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れをさらに強めることができる。すなわち、負圧面3A側においてブレード3の外周縁6に向かう空気の流れを強めることができる。
以上のように、負圧面3A側においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れにより、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に追い出すことができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のプロペラファンによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、本実施形態のプロペラファンによれば、負圧面3A側においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れにより、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に追い出すことができる。したがって、回転前方F側に位置するブレード3において発生した翼端渦Vが、回転後方B側に位置するブレード3に衝突することを防止できる。したがって、翼端渦Vの衝突による空力騒音を低減できる。
【0040】
また、本実施形態の孔部12は、第一実施形態の孔部10と同様に、ブレード3の外周縁6の前縁4側部分に形成されているため、プロペラファンが
図3に示すようにベルマウス9の内側に挿入された状態で、翼端渦Vをブレード3の外周縁6の前縁4側部分においてベルマウス9の径方向外側に追い出すことで、翼端渦Vが室外機から外部に出ることを抑制できる。プロペラファンを室外機に用いる場合、騒音の評価は室外機の外部において行われるため、室外機の外部に漏れ出た翼端渦Vに基づく空力騒音を低減することができる。
【0041】
上記第三実施形態では、孔部12のうち傾斜面12Aに対向する対向面12Bが、ブレード3の厚さ方向に延びているが、例えば
図9,10(特に、
図10(a)、(b))に示すように、傾斜面12Aと平行するように延びてもよい。すなわち、ブレード3の厚さ方向に対する孔部12の貫通方向が、正圧面3Bから負圧面3Aに向かうにしたがってブレード3の径方向外側に傾斜してもよい。
この構成によれば、孔部12においてブレード3の径方向外側に向かう空気の流れを強めることができるため、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に効率よく追い出すことが可能となる。
【0042】
さらに、ブレード3の厚さ方向に対する孔部12の貫通方向の傾斜角度(あるいは傾斜面12Aの傾斜角度)は、例えば孔部12の延在方向にわたって一定に設定されてもよいが、例えば
図9,10に示すように、孔部12の前縁4側の端部から後縁5側の端部に向かうにしたがって小さくなっていてもよい。
この構成によれば、ブレード3の前縁4側における孔部12の貫通方向の傾斜角度が大きく設定されていることで、翼端渦Vが発達する前に、翼端渦Vをブレード3の外周縁6から径方向外側に効率よく追い出すことが可能となる。
また、
図9,10に示す構成では、負圧面3Aに対する孔部12の開口位置が、孔部12の前縁4側の端部から後縁5側の端部に向かうにしたがってブレード3の径方向内側に変位するように設定されているため、第二実施形態と同様に、翼端渦Vの発達を効率よく抑制できる効果も奏する。
【0043】
なお、
図9,10においては、孔部12の後縁5側の端部における孔部12の貫通方向がブレード3の厚さ方向に対して傾斜せずに一致しているが、これに限ることはない。また、
図9,10においては、正圧面3Bに対する孔部12の開口位置が、ブレード3の径方向に変位せずに同一の径方向位置に設定されているが、これに限ることはない。
また、第三実施形態のプロペラファンに備えるフィン15やリブ16は、
図1,2に示す第一実施形態の構成、
図4,5に示す第二実施形態の構成、
図6に示す第二実施形態の変形例の構成、及び、上述した
図9,10に示す構成のいずれにも適用可能である。このように適用した場合でも、フィン15の遠心作用によって孔部12から負圧面3A側に流出した流体をブレード3の外周縁に向けて流すことができ、このブレード3の径方向外側に向かう流体の流れにより、翼端渦Vをブレード3の外周縁から径方向外側に追い出す効果を奏する。
【0044】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、ブレード3の外周縁6近傍に形成される孔部10,11,12はブレード3の前縁4側から後縁5側に向けて延びる長孔に限らず、例えばブレード3の前縁4側から後縁5側に向けて配列される複数の小孔であってもよい。この構成では、長孔の場合と比較してブレード3の強度低下を抑えることができる。