(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画素値スケール生成部は、指定された初期の画素値及び指定された周期で前記画素値の変化が繰返されるグレースケール又はカラースケールを作成するように構成される請求項3記載の医用画像処理装置。
前記血管画像生成部は、前記造影剤の濃度が前記特定の条件となるときの前記造影剤の濃度に応じた輝度値を有する血管画像データを生成するように構成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
前記血管画像生成部は、前記造影剤の濃度のサンプリング間隔よりも短いデータ間隔を有する前記造影剤の濃度の時間変化を、補間処理、カーブフィッティング処理又は重心算出処理によって取得するように構成される請求項8記載の医用画像処理装置。
前記画素値スケール生成部は、前記指定された期間以外の期間に前記画素値の変化と異なる画素値を割り当てることによって前記グレースケール又は前記カラースケールを作成するように構成される請求項4記載の医用画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る医用画像処理装置、X線診断装置及び医用画像処理プログラムについて添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係るX線診断装置及び医用画像処理装置の構成図である。
【0011】
X線診断装置1は、撮影系2、制御系3、データ処理系4及びコンソール5を備えている。撮影系2は、X線管6、X線検出器7、C型アーム8、土台9及び寝台10を有する。また、データ処理系4は、A/D (analog to digital)変換器11、医用画像処理装置12、D/A (digital to analog)変換器13及び表示装置14を有する。尚、A/D変換器11は、X線検出器7と一体化される場合もある。
【0012】
X線管6及びX線検出器7は、寝台10を挟んで対向配置するようにC型アーム8の両端に固定される。C型アーム8は、土台9によって保持される。土台9は、モータ9A及び回転機構9Bを備え、モータ9A及び回転機構9Bの駆動により、C型アーム8とともにX線管6及びX線検出器7を所望の位置にプロペラのように高速に回転させることができる。
【0013】
X線検出器7としては、平面検出器(FPD: flat panel detector)やイメージインテンシファイアテレビ(I.I.-TV: image intensifier TV)を用いることができる。また、X線検出器7の出力側は、データ処理系4のA/D変換器11と接続される。
【0014】
制御系3は、撮影系2を構成する各構成要素に制御信号を出力することによって撮影系2を駆動制御する装置である。制御系3は入力装置としてのコンソール5と接続され、制御系3への撮像条件等の指示情報は、コンソール5から入力することができる。
【0015】
そして、撮影系2は、制御系3による制御下において回転可能なX線管6から寝台10にセットされた被検体Oに向けて互いに異なる角度でX線を順次曝射し、複数の方向から被検体Oを透過したX線をX線検出器7によりX線投影データとして順次収集できるように構成される。X線検出器7により収集されたX線投影データは、X線画像データとしてA/D変換器11に出力される。
【0016】
また、寝台10にセットされた被検体Oの近傍には、被検体Oに造影剤を注入するための造影剤注入装置15が設けられる。そして、造影剤注入装置15から被検体Oに造影剤を注入することによって、被検体OのX線造影撮影を行うことができる。造影剤注入装置15についても、制御系3により制御することができる。
【0017】
次に医用画像処理装置12の構成及び機能について説明する。
【0018】
医用画像処理装置12の入力側には、A/D変換器11の出力側に接続される。また、医用画像処理装置12の出力側には、D/A変換器13を介して表示装置14が接続される。また、医用画像処理装置12は、コンソール5と接続される。そして、医用画像処理装置12には、コンソール5の操作によってデータ処理に必要な指示情報を入力することができる。
【0019】
尚、
図1に例示されるようなX線診断装置1に内蔵された医用画像処理装置12とは別に、独立したシステムとして同様な医用画像処理装置をネットワークを介してX線診断装置1と接続してもよい。
【0020】
医用画像処理装置12は、画像メモリ16、サブトラクション部17、フィルタリング部18、アフィン変換部19、階調変換部20及びパラメトリック画像生成部21を有する。パラメトリック画像生成部21は、更に、時相特定部22、カラーコーディング部23及びカラースケール調整部24を有する。
【0021】
このような機能を有する医用画像処理装置12は、コンピュータに医用画像処理プログラムを読込ませることによって構築することができる。但し、医用画像処理装置12を構成するために回路を用いてもよい。
【0022】
画像メモリ16は、撮影系2によって収集されたX線画像データを保存するための記憶装置である。従って、非造影でX線撮影を行えば、非造影のX線画像データが画像メモリ16に保存され、造影剤を被検体Oに注入してX線撮影を行えば、X線造影画像データが画像メモリ16に保存される。
【0023】
サブトラクション部17は、画像メモリ16から読み込んだ非造影のX線画像データと、時系列のX線造影画像データとの差分(サブトラクション)処理によって造影血管が描出された時系列のDSA画像データを生成する機能を有する。
【0024】
フィルタリング部18は、高周波強調フィルタ、ローパスフィルタ及び平滑化フィルタ等の所望のフィルタ処理を任意のデータに対して実行する機能を有する。
【0025】
アフィン変換部19は、コンソール5から入力される指示情報に従ってX線画像データの拡大、縮小、回転移動及び平行移動等のアフィン変換処理を実行する機能を有する。
【0026】
階調変換部20は、LUT(Look Up Table)を参照して、X線画像データの階調変換を行う機能を有する。
【0027】
パラメトリック画像生成部21は、時系列のDSA画像データ又はX線造影画像データに基づいて造影剤の濃度の時間変化を取得する機能と、造影剤の濃度が特定の条件となる時間に対応する画素値を有するパラメトリック画像データを血管画像データとして生成する機能を有する。
【0028】
そのために、、時相特定部22は、造影剤の濃度の時間変化を表すプロファイルに基づいて、造影剤の濃度が特定の条件となる時相を特定する機能を有している。また、カラーコーディング部23は、時相特定部22により特定された時相に対応するカラーを割り当てる機能を有している。カラースケール調整部24は、カラーコーディング部23におけるカラーコーディングに用いられるカラースケールを決定する機能を有する。
【0029】
カラーを割り当てるための特定の条件は、着目する血管に造影剤が流入又は到達した時点に対応する造影剤の濃度や逆に着目する血管から造影剤が流出した時点に対応する造影剤の濃度など、診断目的に応じて決定することができる。例えば、特定の条件となる時間は、造影剤の濃度が最大値、最大値の所定の割合又は閾値となる時間とすることができる。
【0030】
図2は、造影剤の濃度プロファイルに基づいて血管への造影剤の流入時刻又は到達時刻を同定する方法を示す図である。
【0031】
図2において横軸は、時相方向を示し、縦軸は、造影剤の濃度を表すDSA画像データ又は造影画像データの画像信号の強度を示す。
図2に示すように時系列のDSA画像データ又は造影画像データの血管領域に対応するピクセル(画素)に着目すると、時間的に信号強度が変化するカーブとして造影剤の濃度変化プロファイルを取得することができる。
【0032】
典型的な濃度変化プロファイルは、造影剤の流入に伴って値が次第に増加し、造影剤の流出に伴って値が次第に減少するカーブとなる。従って、濃度変化プロファイルの値に対してカーブの立ち上がりを検出するための閾値THを設定すれば、造影剤の濃度が閾値THに達した時相Tthとして、着目する血管への造影剤の流入開始時相を同定することが可能となる。
【0033】
但し、ノイズが大きい場合には、造影剤の流入開始時相が誤って同定される恐れがある。そこで、ノイズの影響が抑制されるように、造影剤の濃度プロファイルの最大値の5パーセントから10パーセントの範囲の所定の割合を閾値としてもよい。或いは、造影剤が血管に到達した時相として、
図2に示すように造影剤の濃度が最大値MAXとなった時相Tmaxや最大値MAXの50パーセントに達した時相T
max/2を濃度プロファイルから検出するようにしてもよい。以降では、主として造影剤の到達時相を同定する場合を例に説明する。
【0034】
図2に示すような造影剤の濃度プロファイルに基づく時相の特定を全ての画素に対して実行し、特定された時相に応じたカラーを割り当てると、造影剤の到達時刻等に応じたカラーで各血管が描出されたパラメトリック画像データを生成することができる。
【0035】
但し、移動平均化処理によって複数の画素を代表する画素について造影剤の濃度の時間変化を求めるようにしてもよい。つまり、平滑化処理を伴って、造影剤の濃度変化を求める対象となる画像データのマトリクスサイズを縮小することができる。また、ローパスフィルタ処理によってノイズを除去した画像データに基づいて造影剤の濃度変化を求めるようにしてもよい。これは、空間方向における造影剤の濃度プロファイルに対する移動平均化処理及びローパスフィルタ処理ということもできる。
【0036】
移動平均化処理及びローパスフィルタ処理は、空間方向に限らず、時間方向に実行することもできる。移動平均化処理及びローパスフィルタ処理を時間方向に実行する場合には、時間方向における造影剤の濃度プロファイルに対して処理が実行されることとなる。
【0037】
従って、時間方向及び空間方向の少なくとも一方における移動平均処理後の造影剤の濃度の時間変化に基づいて、パラメトリック画像データを生成することができる。また、時間方向及び空間方向の少なくとも一方におけるローパスフィルタ処理後の造影剤の濃度の時間変化に基づいて、パラメトリック画像データを生成することができる。これにより、ノイズが除去された平滑なパラメトリック画像データを生成することが可能となる。
【0038】
また、X線造影画像データの撮影間隔に相当する造影剤の濃度のサンプリング間隔よりも短いデータ間隔を有する造影剤の濃度の時間変化に基づいて、パラメトリック画像データを生成することもできる。造影剤の濃度のサンプリング間隔よりも短いデータ間隔を有する造影剤の濃度の時間変化は、補間処理、特定の関数を用いたカーブフィッティング処理又は重心算出処理等の任意の処理によって取得することができる。これにより、より高精度に各画素における造影剤の到達時刻等を同定することが可能となる。特に、移動平均化処理及びローパスフィルタ処理の少なくとも一方を行う場合は一層効果的である。
【0039】
図3は、造影剤の濃度プロファイルの最大値に対応する時相に割り当てられるカラースケールの第1の例を示す図である。
【0040】
図3(A)は2次元の各位置(xi, yj)(i=1, 2, 3, ..., m;j=1, 2, 3, ..., n)における造影剤の濃度プロファイル及び濃度プロファイルの最大値MAXに基づいて特定された造影剤の到達時相Tmax(xi,yj)を示している。造影剤の注入位置に近い位置では相対的に早く造影剤が到達する。従って、特定される時相も相対的に早い時相となる。一方、、造影剤の注入位置から離れた位置では、造影剤の到達時刻が相対的に遅くなる。従って、特定される時相も相対的に遅い時相となる。
【0041】
図3(B)は、
図3(A)に示すように特定された時相に割り当てられるカラースケールの例を示す。
図3(B)に示すように、濃度プロファイルとして取得された造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間Tallに、R値、B値及びG値で構成されるカラーの画素値の変化を割り当てることによって、カラースケールを作成することができる。すなわち、色相の連続的な変化を、造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間Tallに割り当てることによって、カラースケールを作成することができる。
【0042】
そして、
図3(B)に示すようなカラースケールに従って、造影剤の到達時相を表す2次元の時相マップをカラーコーディングすることができる。そうすると、造影剤の到達時相に応じて異なる色で血管が描出されたパラメトリック画像データを生成することができる。
【0043】
但し、
図3(A)に示すように、画素位置(xi, yj)間において造影剤の到達時相Tmax(xi,yj)の相違がカラースケールの範囲に対して相対的に小さい場合には、画素位置(xi, yj)間における色の変化も僅かとなる。このため、色の相違によって血管を区別することが困難となる場合がある。
【0044】
特に、硬膜動静脈瘻や脳動静脈奇形の診断を目的としてX線撮影を行う場合には、動脈と静脈との間における血液の流れを観察することが重要となる。従って、造影剤の到達時刻の差が小さい複数の血管を区別することが必要となる場合が多い。
【0045】
そこで、複数の血管において造影剤の到達時刻の差が小さい場合であっても、色の相違として血管を区別できるように、カラースケール調整部24においてカラースケールを変更することができる。
図3(C)は、造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間Tallに、画素値の変化として色相の連続的な変化を複数回割り当てることによってカラースケールを作成した例を示す。つまり、色相の連続的な変化が周期的に繰返されるカラースケールを作成することができる。
【0046】
図3(C)に示すようなカラースケールは、コンソール5の操作によって濃度プロファイルの初期時相に対応する画素値、画素値の変化の周期Tscale及び周期Tscale内における初期の画素値を指定することによって作成することができる。これにより、指定された初期の画素値及び指定された周期Tscaleで画素値の変化が繰返されるカラースケールを作成することができる。そして、同じ周期Tscale内において
図3(B)に示すような配色を行うことができる。具体的には、1周期Tscale内において最大値を呈する色相が赤、緑及び青の間で変化するカラースケールを作成することができる。
【0047】
図4は、
図3(C)に示すカラースケールの配色例を示す図である。
【0048】
図4において直交する3軸は、それぞれR値、G値及びB値を示す。
図4に示すようなR値の最大値、G値の最大値及びB値の最大値を頂点とする色三角形の辺に沿って、周期Tscale内の各時相に対応するR値、G値及びB値を決定することができる。すなわち、相対時刻がゼロ及びTscaleの時には、G値及びB値がいずれもゼロでR値が最大値、相対時刻がTscale/3の時には、R値及びB値がいずれもゼロでG値が最大値、相対時刻が2Tscale/3の時には、R値及びG値がいずれもゼロでB値が最大値となるように配色を行うことができる。
【0049】
このような配色を行うと、時相が遅くなるにつれて、色が赤から緑を経由して青に変化し、再び赤に戻るパラメトリック画像データを生成することができる。尚、赤、緑及び青の間の色については、例えば、R値、G値及びB値が線形に変化するように時相に割り当てることができる。或いは、色三角形の中心と辺上の点を結ぶ線分の角度が線形に変化するようにR値、G値及びB値を時相に割り当てることもできる。
【0050】
このような配色によって作成されたカラースケールに従ってパラメトリック画像データを生成すると、造影剤の到達時刻の差が僅かであっても、色の相違として血管を区別することが可能となる。すなわち、造影剤の到達時刻を詳細に把握することができる。
【0051】
尚、人間が注意を引く色は赤である。従って、
図4に例示されるように、造影剤の到達時刻が最も早い初期時相の色を赤に設定することが視認性の向上に繋がる。すなわち、カラースケールの初期時相に対応するカラー値をR値の最大値とすることが効果的である。また、別の例として、注目する時相が赤になるように初期時相を調整することも有用である。
【0052】
図5は、造影剤の濃度プロファイルの最大値に対応する時相に割り当てられるカラースケールの第2の例を示す図である。
【0053】
図5(A)は
図3(A)と同様に、2次元の各位置(xi, yj)(i=1, 2, 3, ..., m;j=1, 2, 3, ..., n)における造影剤の濃度プロファイル及び濃度プロファイルの最大値MAXに基づいて特定された造影剤の到達時相Tmax(xi,yj)を示している。
【0054】
そして、造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間Tallにカラーの画素値の変化を割り当てた
図5(B)に示すようなカラースケールを
図5(C)に示すカラースケールに変更することができる。
図5(C)に示すカラースケールは、指定された期間に画素値の変化として色相の連続的な変化を割り当てることによって作成されたものである。画素値の変化を割り当てる期間は、開始時相T1及び終了時相T2を指定することによって決定することができる。開始時相T1及び終了時相T2の指定は、時系列のX線造影画像又はDSA画像から選択することによって行うことができる。
【0055】
図6は、
図5(C)に示すカラースケールの配色例を示す図である。
【0056】
図6において直交する3軸は、それぞれR値、G値及びB値を示す。
図4と同様に色三角形の辺に沿って指定された期間内の各時相に対応するR値、G値及びB値を決定することができる。すなわち、
図4に例示されるように、開始時相T1ではG値及びB値がいずれもゼロでR値が最大値、開始時相T1と終了時相T2との間における中間時相ではR値及びB値がいずれもゼロでG値が最大値、終了時相T2ではR値及びG値がいずれもゼロでB値が最大値となるように配色を行うことができる。
【0057】
図6に示すような配色を行うと、開始時相T1と終了時相T2との間において最大値を呈する色相が赤、緑及び青の間で変化するカラースケールを作成することができる。つまり、指定された期間内において色から赤から緑を経て青に変化するカラースケールを作成することができる。
【0058】
指定された期間以外の期間には、指定された期間における画素値の変化と異なる画素値を割り当てることができる。例えば、指定された期間の内外において色相が変わるようにすることができる。より具体的な例としては、開始時相T1以前の時相では、白から赤へと変化し、終了時相T2以降の時相では、青から白へと変化するようにカラースケールを作成することができる。
【0059】
また、指定された期間以外の期間には、指定された期間における透過度と異なる透過度を割り当てることもできる。具体例として、開始時相T1以前の時相では、透過度が最大値からゼロに変化し、終了時相T2以降の時相では、透過度がゼロから最大値に変化するようにカラースケールを作成することができる。つまり、指定された期間外の時相において透過度を所定の範囲で変化させることができる。この場合、R値及びB値等のカラー値については、指定された期間外において変化させなくてもよい。
【0060】
このように、指定された期間外の時相範囲については、R値、G値及びB値を含む画素値及び透過度の少なくとも一方を、指定された期間内と変えることができる。
【0061】
図3(C)及び
図5(C)に示すような変更後のカラースケールは、動的に変化させることもできる。具体的には、
図3(C)又は
図5(C)に示すようなカラースケールの画素値の変化の位相及び周期の少なくとも一方を変化させることによって複数のカラースケールを作成することができる。画素値の変化の位相を変化させることは、カラースケールを時相方向にシフトさせることに相当する。一方、画素値に変化の周期を変化させることは、カラースケールを時相方向に伸縮させることに相当する。
【0062】
このように配色が異なる複数のカラースケールを用いてパラメトリック画像データのカラーコーディングを行うと、複数のカラースケールに対応する複数のパラメトリック画像データが生成される。そして、生成された複数のパラメトリック画像データをカラースケール方向に動画として表示させることが可能となる。つまり、画素値の変化の位相及び周期の少なくとも一方を変化させることによって作成された複数のカラースケールに従って動画として血管画像データを生成することができる。これにより、造影剤及び血流の流れを一層容易に把握することが可能となる。特に、人間の目は赤に対する視認性が高いので、注目する開始時相T1から終了時相T2まで赤が移動するような動画像を作成すると注目領域の血流動態が理解し易い。
【0063】
具体例として、
図5(C)に示すように指定された期間において色を変化させる場合であれば、各時相に対応する色を時間的に変化させることができる。この場合、同一の時相であっても、色が赤、緑及び青の間で変化することとなる。尚、指定された期間外については、開始時相T1及び終了時相T2の各色からそれぞれ徐々に白に変化させたり、透過度を変化させることができる。
【0064】
一方、周期的にカラー値を変化させたカラースケールの場合には、周期内における初期のカラー値を徐々に変化させることによって、複数のカラースケールを作成することができる。
【0065】
R値、G値及びB値を含むカラー値は、最大値以外の値に変更することもできる。すなわち、上述したカラースケールによってパラメトリック画像データを生成すると、ローパスフィルタ処理等によって造影剤の濃度プロファイルの値がゼロとならなかった画素の輝度値は最大となる。つまり、造影剤の濃度に依らす、造影剤が到達した画素については、輝度値が最大となる。
【0066】
そこで、造影剤の濃度が把握できるように、パラメトリック画像データの輝度値を変更することができる。換言すれば、造影剤の濃度が最大値等の特定の条件となるときの造影剤の濃度に応じた輝度値を有するパラメトリック画像データを血管画像データとして生成することができる。
【0067】
具体的には、輝度値の変更前における最大のR値、G値及びB値をそれぞれR
0, G
0, B
0とすると、式(1)に示すように係数kを乗じることによって輝度値の変更後におけるR値、G値及びB値を決定することができる。
(R, G, B)=(kR
0, kG
0, kB
0) (1)
【0068】
式(1)において係数kは、造影剤の濃度に対応するゼロ以上1以下の値に設定される。係数kは、例えば、式(2)により決定することができる。
k=P(x,y)/P
0 (2)
但し、式(2)においてP(x, y)は、X線造影画像データ又はDSA画像データの画像信号値として取得される位置(x, y)における造影剤の濃度プロファイルの最大値等の特定の条件に対応する値であり、P
0は、定数である。
【0069】
式(2)により係数kを設定すると、係数kは、造影剤の濃度プロファイルの値P(x, y)に比例する値となる。従って、パラメトリック画像データの輝度値(R, G, B)についても、造影剤の濃度プロファイルの値P(x, y)に比例する輝度値にすることができる。また、造影剤の濃度がノイズレベルである画素や、実際にノイズが生じている画素における輝度値を十分に小さくすることができる。
【0070】
尚、定数P
0は、造影剤の濃度プロファイルの値P(x, y)の空間方向における最大値或いは経験的に決定した任意の値とすることができる。但し、定数P
0を、造影剤の濃度プロファイルの値P(x, y)の最大値よりも小さい値に設定すると、式(2)の計算によって係数kが1よりも大きい値となる場合がある。そのような場合には、係数kを1に設定すればよい。
【0071】
そして、式(1)によって値が調整された画素値を各画素位置(x, y)に割り当てると、造影剤の到達時相及び濃度に応じたカラー及び輝度で血管が描出されたパラメトリック画像データを生成することができる。尚、式(1)に示す輝度値の調整は、カラーコーディング部23におけるカラーコーディングの際に実行することができる。
【0072】
このように、パラメトリック画像生成部21において生成されたパラメトリック画像データは、X線造影画像データやDSA画像データと同様に、表示装置14に表示させることができる。また、必要に応じて、画像メモリ16にパラメトリック画像データを保存することができる。
【0073】
図7は、
図1に示すパラメトリック画像生成部21において生成されるパラメトリック画像の例を示す図である。
【0074】
図7に示すように、パラメトリック画像は、造影剤が注入された血管がカラーで表示され、造影剤が存在しない領域では輝度値がゼロの画像となる。また、血管は、造影剤の到達時刻に応じて色が変化する領域として描出される。このため、色によって造影剤とともに血液が流れる様子を観察することができる。
【0075】
以上のような機能及び構成を有するX線診断装置1及び医用画像処理装置12では、撮影系2と制御系3が協働することによって、被検体Oから少なくともX線造影画像データを収集する画像収集系としての機能が備えられる。また、パラメトリック画像生成部21の時相特定部22及びカラーコーディング部23が協働して、少なくともX線造影画像データに基づいて造影剤の濃度の時間変化を取得し、カラースケールに従って造影剤の濃度が特定の条件となる時間に対応する画素値を有する血管画像データを生成する血管画像生成部として機能している。更に、パラメトリック画像生成部21のカラースケール調整部24が造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間よりも短い期間に画素値の変化を割り当てることによってカラースケールを作成する画素値スケール生成部として機能している。
【0076】
但し、同様な画像収集系、血管画像生成部及び画素値スケール生成部としての機能がX線診断装置1及び医用画像処理装置12に備えられれば、他の構成要素によってX線診断装置1及び医用画像処理装置12を構成することができる。例えば、コンピュータを血管画像生成部及び画素値スケール生成部として機能させる医用画像処理プログラムをコンピュータに読み込ませることによって医用画像処理装置12を構成することができる。その場合、医用画像処理プログラムは、汎用コンピュータを医用画像処理装置12として利用できるように情報記録媒体に記録してプログラムプロダクトとして流通させることができる。
【0077】
次にX線診断装置1及び医用画像処理装置12の動作および作用について説明する。
【0078】
図8は、
図1に示すX線診断装置1の動作及び医用画像処理装置12における処理を示すフローチャートである。
【0079】
まずステップS1において、非造影でX線画像データが収集される。具体的には、制御系3による制御下において撮影系2が所定の位置に移動し、寝台10にセットされた被検体Oに向けてX線管6からX線が曝射される。そして、被検体Oを透過したX線がX線検出器7によりX線投影データとして収集される。X線検出器7により収集されたX線投影データは、X線画像データとしてA/D変換器11を通じて医用画像処理装置12に出力される。
【0080】
X線画像データは、1フレーム分収集してもよいし、複数フレーム分収集してもよい。複数フレームのX線画像データを収集し、フィルタリング部18において複数フレームのX線画像データを加算平均すれば、ノイズが低減された1フレームの非造影X線画像データを生成することができる。そして、このように取得された非造影X線画像データは、画像メモリ16に保存される。
【0081】
次に、ステップS2において、X線造影画像データが連続収集される。そのために、制御系3による制御下において造影剤注入装置15が動作し、被検体Oに造影剤が注入される。そして、造影剤の注入開始から予め設定された時間が経過すると、X線造影画像データの撮影が開始される。そして、予め決められた期間において、継続的にX線造影画像データの撮影が行われる。これにより、画像メモリ16には、時系列のX線造影画像データが順次保存される。尚、X線造影画像データの収集の流れは、非造影X線画像データの収集の流れと同様である。
【0082】
次に、ステップS3において、サブトラクション部17によりDSA画像データが生成される。すなわち、非造影X線画像データをマスク画像データとして時系列のX線造影画像データのサブトラクション処理を実行することによって、時系列のDSA画像データが順次生成される。生成された時系列のDSA画像データは、画像メモリ16に順次保存される。
【0083】
また、表示装置14には、時系列のX線造影画像又はDSA画像をライブ像としてリアルタイム表示させることができる。更に、時系列のX線造影画像又はDSA画像をX線撮影後に事後的に表示装置14に表示させることもできる。事後的にDSA画像を表示させる場合には、コンソール5の操作によって指定された時相期間についてのみサブトラクション処理によるDSA画像データの生成を行うようにすることができる。
【0084】
次に、ステップS4において、時相特定部22により、造影剤濃度の時間変化が取得される。具体的には、コンソール5の操作によって指定された時相期間における時系列のX線造影画像データ又はDSA画像データが時相特定部22に取り込まれる。そして、時相特定部22において
図3(A)又は
図5(A)に示すような造影剤の濃度の時間変化を示す濃度プロファイルが画素位置ごとに生成される。
【0085】
尚、造影剤の濃度プロファイルの生成の前処理又は後処理として、フィルタリング部18において空間方向及び時間方向の一方又は双方にローパスフィルタ処理及び移動平均処理の一方又は双方を実行することができる。これにより、ノイズが低減された平滑な造影剤の濃度プロファイルを生成することができる。併せて、時相特定部22において、補間処理、重心の計算又はカーブフィッティングによってサンプリング間隔よりもデータ間隔が短い造影剤の濃度プロファイルを生成することもできる。
【0086】
次に、ステップS5において、時相特定部22により、造影剤の濃度プロファイルに基づいて造影剤の到達時相が画素位置ごとに同定される。具体的には、造影剤の濃度プロファイルに対するピーク検出処理や閾値処理等のデータ処理によって造影剤の到達時相を画素位置ごとに同定することができる。
【0087】
尚、ピーク検出処理や閾値処理等のデータ処理によって時相が特定された後に、特定された時相近傍の期間についてのみ補間処理、重心の計算又はカーブフィッティングによる連続的な濃度プロファイルの取得を実行するようにしてもよい。その場合には、取得された連続的な濃度プロファイルに対して再度、ピーク検出処理や閾値処理等のデータ処理によって、真の造影剤の到達時相が検出される。
【0088】
次に、ステップS6において、時相特定部22により求められた造影剤の到達時相の2次元マップをカラーコーディングするためのカラースケールがカラースケール調整部24において作成される。カラースケール調整部24では、
図3(B)及び
図5(B)に示すような一定の変化率で色相が初期時相から最終時相まで連続的に変化する一般的なカラースケールに限らず、
図3(C)及び
図5(C)に示すように、通常のカラースケールの色相の変化率を増加させたカラースケールを作成することができる。
【0089】
図3(C)に示すような、色相が連続的かつ周期的に変化するカラースケールを作成する場合には、コンソール5の操作によって色相が変化する周期Tscaleを特定し、1周期Tscale内における色相を変化させることによってカラースケールを作成することができる。或いは、デフォルト値として、これらの必要な条件を予め設定してもよい。また、1周期Tscale内の開始時相における色相を任意に指定することができる。更に、造影剤の濃度変化の初期時相における色相を、1周期Tscale内の開始時相の色相から開始しない場合には、初期時相に対応する色相の指定が必要である。
【0090】
一方、
図5(C)に示すような、指定された時相期間内において、指定された時相期間外と異なる色相の連続的な変化を有するカラースケールを作成する場合には、色相の連続的な変化が割り当てられる開始時相T1及び終了時相T2をコンソール5の操作によって指定することによって、カラースケールを作成することができる。開始時相T1及び終了時相T2の指定は、時系列のX線造影画像又はDSA画像を表示装置14に表示させ、コンソール5の操作によって画像を選択することによって行うことができる。
【0091】
次に、ステップS7において、カラースケール調整部24により作成されたカラースケールに基づく造影剤の到達時相の2次元マップのカラーコーディングがカラーコーディング部23において実行される。すなわち、カラースケールに従って、造影剤の到達時相に対応するR値、G値及びB値が各画素に画素値として割り当てられる。これにより、パラメトリック画像データが生成される。
【0092】
このとき、造影剤の到達時相における造影剤の濃度に対応する係数をR値、G値及びB値に乗じることが望ましい。これにより、造影剤の到達時相における造影剤の濃度が相対的に高い画素については輝度値が相対的に大きく、逆に、造影剤の到達時相における造影剤の濃度が相対的に小さい画素については輝度値が相対的に小さいパラメトリック画像データを生成することができる。
【0093】
そして、このようにして生成されたパラメトリック画像は表示装置14に表示させることができる。尚、カラースケールを時相方向にシフト又は伸縮することによってパラメトリック画像を動画として表示することもできる。このため、ユーザは、パラメトリック画像を観察することによって、造影剤が流れ込む複数の血管を確認することができる。特に、カラースケールの色相の変化が短い時相期間に割り当てられているため、造影剤の到達時相が近い複数の血管を色の違いによって容易に区別することができる。
【0094】
つまり以上のようなX線診断装置1及び医用画像処理装置12は、造影剤の到達時相等の特定の時相を、時相に応じたカラースケールでカラーコーディングすることによってカラーの血流画像データを生成し、かつカラースケールにおける色相の連続変化を時相方向に縮めることによってカラーによる時相識別能を向上させるようにしたものである。
【0095】
このため、X線診断装置1及び医用画像処理装置12によれば、隣接する血管の間において造影剤の流入時相、到達時相又は流出時相の差が僅かであっても、色相の違いとして血管を容易に区別することが可能となる。
【0096】
特に、脳動静脈奇形又は硬膜動静脈瘻の診断では、動脈と静脈との間における疾患部への血流の流れを観察することが重要である。従って、造影剤が流れ込む複数の血管を区別することが必要となる。しかしながら、DSA画像は、グレースケールで表示されるため、造影血管の区別が困難となる。
【0097】
これに対して、X線診断装置1及び医用画像処理装置12では、カラースケールにおける色相変化の周期を識別すべき時相差に合わせて短く設定することができる。その結果、着目する複数の血管に殆ど同時に造影剤が流入しても血管ごとに色が変わるため、血管の区別を容易に行うことが可能となる。
【0098】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0099】
例えば、上述した実施形態では、カラースケールを用いてカラーのパラメトリック画像データとして血管画像データを生成する例について説明したが、グレースケールを用いて血管画像データを生成するようにしてもよい。すなわち、グレースケール又はカラースケールに従って造影剤の濃度が特定の条件となる時間に対応する画素値を有する血管画像データを生成することができる。また、造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間よりも短い期間に画素値の変化を割り当てることによってグレースケール又はカラースケールを作成することができる。
【0100】
グレースケールを用いて血流画像データを生成する場合には、造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間よりも短い期間に画素値の変化として色相の変化の代わりに輝度値の連続的な変化が割り当てられることとなる。その場合であっても、造影剤の濃度に応じた係数kを輝度値に乗じることによって輝度値を造影剤の濃度に応じた値にすることができる。
【0101】
同様に、カラースケールを用いて血流画像データを生成する場合においても、画素値の変化として上述したように色相の連続的な変化に限らず、輝度値の連続的な変化を割り当てることもできる。その場合においても、造影剤の濃度に応じた係数kを輝度値に乗じることによって輝度値を造影剤の濃度に応じた値にすることができる。
【0102】
以上のように、造影剤の濃度の時間変化の初期時刻から終了時刻までの期間よりも短い期間に割り当てられる画素値の変化を、色相の連続的な変化、カラーの輝度値の連続的な変化又はグレーの輝度値の連続的な変化とすることができる。