特許第6222813号(P6222813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222813X線コンピュータ断層撮影装置、画像処理装置及び画像処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222813
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置、画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171023BHJP
   G06T 1/00 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   A61B6/03 350X
   !G06T1/00 290B
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-125757(P2013-125757)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2014-407(P2014-407A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年6月10日
(31)【優先権主張番号】13/524,440
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー・ザミャチン
(72)【発明者】
【氏名】ダキシン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・ペトル・ジヌ
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−153893(JP,A)
【文献】 特開2010−259778(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0121155(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管からのX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器からの検出信号に基づく投影データに対して、正規化に基づく逐次近似再構成を施して画像データを再構成する画像再構成部と、を具備するX線コンピュータ断層撮影装置であって、
前記画像再構成部は、
先の逐次近似(n−1)での画像データ(n-1)に対するデータ忠実性更新の画像データを取得し、
前記画像データ(n-1)に対する正規化更新の画像データを取得し、
単一のステップで一緒に、記データ忠実性更新の画像データと前記正規化更新の画像データとを合計すること再構成された画像データx(n)を生成し、前記画像データ(n-1)を前記画像データx(n)に基づいて更新する、
X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記画像再構成部は、データ忠実性更新の画像データおよび前記正規化更新の画像データを、同時に取得する、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記画像再構成部は、前記データ忠実性更新の画像データおよび前記正規化更新の画像データを、連続的に取得する、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記画像再構成部は、前記データ忠実性更新の画像データが、前記正規化更新の画像データの前に取得される、請求項3に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記画像再構成部は、前記正規化更新の画像データが、前記データ忠実性更新の画像データの前に取得される、請求項3に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記画像再構成部は、係数を独立して決定して、前記データ忠実性更新の画像データと前記正規化更新の画像データとを取得する、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記画像再構成部は、前記データ忠実性更新の画像データが、同時代数的再構成法(SART)および代数的再構成法(ART)のうちの1つによって取得される、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記正規化更新の画像データが、全変動(TV)によって得られる、請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
投影データに対して、正規化に基づく逐次近似再構成を施して画像データを再構成する画像再構成部を具備する画像処理装置であって、
前記画像再構成部は、
先の逐次近似(n−1)での画像データ(n-1)に対するデータ忠実性更新の画像データを取得し、
前記画像データ(n-1)に対する正規化更新の画像データを取得し、
単一のステップで一緒に、記データ忠実性更新の画像データと前記正規化更新の画像データとを合計すること再構成された画像データx(n)を生成し、前記画像データ(n-1)画像データx(n)に基づいて更新する、
画像処理装置。
【請求項10】
投影データに対して、正規化に基づく逐次近似再構成を施して画像データを再構成する画像処理装置の画像処理方法であって、
先の逐次近似(n−1)での画像データ(n-1)に対するデータ忠実性更新の画像データを取得し、
前記画像データ(n-1)に対する正規化更新の画像データを取得し、
単一のステップで一緒に、記データ忠実性更新の画像データと前記正規化更新の画像データとを合計すること再構成された画像データx(n)を生成し、前記画像データ(n-1)画像データx(n)に基づいて更新する、
ことを具備する画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、画像処理の方法およびシステムに関し、より詳細には、逐次近似再構成アルゴリズムにおける単一ステップで、一対の画像更新を共に一緒に用いて画像を更新することによって画質を最適化することに関する。
【背景技術】
【0002】
ボリューム画像再構成に関しては、逐次近似アルゴリズムが様々なグループによって開発されてきた。例示的なアルゴリズムの1つは、疎ビューと、制限角度のX線CT再構成とを含む様々な適用例のための全変動(TV)最小化逐次近似再構成アルゴリズムである。別の例示的なアルゴリズムは、多くのビューにおいて切り詰められた投影データを有する関心領域(ROI)再構成、すなわち内部再構成問題に向けられたTV最小化アルゴリズムである。さらに別の例示的なアルゴリズムは、先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)法である。全変動ベースの逐次近似再構成(IRTV)アルゴリズムは、疎ビュー再構成問題に対する利点を有する。
【0003】
従来技術の試みでは、よく知られたIRTVアルゴリズムのデータ処理手続きが、図1に示される。例えば、同時代数的再構成法(SART)は、画像ボリュームから算出投影データを生成し、測定投影データと算出投影データとの間の規格化した差を逆投影して更新された画像ボリュームを再構成する。一般に、鮮明さは、更新された画像のノイズの増加とともに、実際のデータのマッチング時の誤差数の減少によってもたらされる。その結果、更新画像は、シャープに見え得るが、一緒にノイズが多く見え得る。そこで、分解能を犠牲にしてノイズを減少させるために、更新された画像ボリュームを、全変動(TV)最小化ルーチンによって正規化する。
【0004】
図1に示す第1の従来技術の処理手続きは、順次方式である。すなわち、TVモジュールは、SART、または代替として凸射影法(POCS)モジュールに従う。元の画像x(n-1)は、SARTルーチンによって処理されて、実際のデータのマッチング時の誤差の量を減少させ、中間画像または画像更新
【数1】
【0005】
を出力するが、これはこのときノイズの量が増加している。中間画像または画像更新
【数2】
【0006】
が改善されたレベルの分解能で得られるとき、元の画像x(n-1)は、画像更新
【数3】
【0007】
に基づいて更新される。そこで、中間画像
【数4】
【0008】
は、TVルーチンによって処理されてノイズを減少させ、出力画像x(n)を生成するが、これはこのとき誤差の量が増加している。出力画像更新x(n)が得られるとき、元の画像x(n-1)は、出力画像 x(n)に基づいて更新される。上記の順次的な性質の処理により、SARTルーチンの効果は、最初、誤差を減少させつつ、TVルーチンが切り離したやり方でノイズを改善するが、誤差は取り戻される。したがって、ノイズと分解能のトレードオフを制御することが今も望まれている。
【0009】
図2に示す第2の従来技術処理手続きは、出力画像x(n)の生成を別にすれば、まずSARTを実行し、次いでTVを実行する同じ順次方式である。その違いにもかかわらず、図2の手続きは、一般に、図1の手続きに関連して説明したよう同じ望ましくない特徴をもたらす。元の画像x(n-1)は、SARTルーチンによって処理されて、実際のデータのマッチング時の誤差の量を減少させ、第1の中間画像または画像更新
【数5】
【0010】
を出力するが、これはこのときノイズの量が増加している。第1の中間画像
【数6】
【0011】
が改善されたレベルの分解能で得られるとき、元の画像x(nー1)は、第1の中間画像
【数7】
【0012】
に基づいて更新される。そこで、第1の中間画像
【数8】
【0013】
は、TVルーチンによって処理されてノイズを減少させ、第2の中間画像
【数9】
【0014】
を生成するが、これはこのとき誤差の量が増加している。第2の中間画像
【数10】
【0015】
が得られるとき、第2の中間画像
【数11】
【0016】
および第1の中間画像
【数12】
【0017】
は、共に合計されて出力画像x(n)を得ることになり、この元の画像x(n-1)は、出力画像x(n)に基づいて更新される。図2の手続きは、まずSARTの効果を手動で制御し、次いでTVを手動で制御するためのパラメータλを有するが、ノイズと分解能のトレードオフを制御することが今も望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
目的は、逐次近似再構成アルゴリズムにおける単一ステップでデータ忠実性更新と正規化更新とを共に現在適用することにより画像を更新することによって画像の生成を最適化するCT撮像システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管からのX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器からの検出信号に基づく投影データに対して、正規化に基づく逐次近似再構成を施して画像データを再構成する画像再構成部と、を具備するX線コンピュータ断層撮影装置であって、
前記画像再構成部は、先の逐次近似(n−1)での画像データ(n-1)に対するデータ忠実性更新の画像データを取得し、
前記画像データ(n-1)に対する正規化更新の画像データを取得し、
単一のステップで一緒に、記データ忠実性更新の画像データと前記正規化更新の画像データとを合計すること再構成された画像データx(n)を生成し、前記画像データ(n-1)を前記画像データx(n)に基づいて更新する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】全変動逐次近似再構成(TV−IR)の従来技術のプロセスの1つに含まれるステップを示す図。
図2】全変動逐次近似再構成(TV−IR)の別の従来技術のプロセスに含まれるステップを示す図。
図3】本発明によるマルチスライスX線CT装置またはスキャナの一実施形態を示す図。
図4】本発明による再構成デバイスの一実施形態を示す図。
図5】本発明による逐次近似再構成アルゴリズムにおける単一ステップで一対の画像更新を共に一緒に用いて画像更新することによって画質を最適化するプロセスに含まれるステップを示す流れ図。
図6】本発明による逐次近似再構成アルゴリズムにおいてデータ忠実性更新を独立して決定するプロセスに含まれるステップを示す流れ図。
図7】本発明による逐次近似再構成アルゴリズムにおいて正規化更新を独立して決定するプロセスに含まれるステップを示す流れ図。
図8】本発明による逐次近似再構成アルゴリズムの単一ステップで独立して決定された更新を共に一緒に用いて画像を同時に更新するプロセスに含まれるステップを示す流れ図。
図9】本発明による誤差とノイズとの制御における第3の重みパラメータλの効果を示すグラフ。
図10A】本発明による1200個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像。
図10B】本発明による600個のビューを有する投影データおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像。
図10C】本発明による400個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像。
図10D】本発明による240個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像。
図11A】本発明によるノイズ・分解能パラメータ値0.75を投影データにおける2つの更新に同時に適用することによる、所定の逐次近似技法によって死体データから再構成される例示的な画像。
図11B】本発明によるノイズ・分解能パラメータ値0.80を投影データにおける2つの更新に同時に適用することによる、所定の逐次近似技法によって死体データから再構成される例示的な画像。
図11C】本発明によるノイズ・分解能パラメータ値0.90を投影データにおける2つの更新に同時に適用することによる、所定の逐次近似技法によって死体データから再構成される例示的な画像。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に図面を参照すると、同じ参照符号は、各図全体を通じて対応する構造を示しており、特に図3を参照すると、図は、ガントリ100とその他のデバイスまたはユニットとを備える本発明による1つのX線CT装置またはスキャナを示している。ガントリ100は、側面図により示されており、X線管101と、環状フレーム102と、多列アレイ型または2次元アレイ型のX線検出器103とをさらに備える。X線管101およびX線検出器103は、環状フレーム102上の被検体Sを横切って直径に沿って取り付けられ、環状フレーム102は、回転軸RAを中心にして回転可能に支持される。回転ユニット107は、0.4秒/回転などの高速でフレーム102を回転させ、一方、被検体Sは、軸RAに沿って図示のページに出入りする向きに移動している。
【0022】
マルチスライスX線CT装置は、高電圧発生器109と電流レギュレータ111とをさらに備えており、高電圧発生器109および電流レギュレータ111は、それぞれ、スリップリング108を介してX線管101中の管電圧と管電流とを制御し、それによってX線管101は、システムコントローラ110に応答してX線を発生させる。X線は、円によって表される断面積を有する被検体Sに向けて発せられる。X線検出器103は、被検体Sを横切ってX線管101の反対側に位置しており、被検体Sを通じて透過した放射X線を検出するためのものである。X線検出器103は、従来の積分検出器である個々の検出器要素または検出器ユニットをさらに備える。
【0023】
図3をさらに参照すると、X線CT装置またはスキャナが、X線検出器103からの検出した信号を処理するための他のデバイスをさらに含む。データ収集回路またはデータ収集システム(DAS)104は、チャンネルごとのX線検出器103から出力された信号を電圧信号に変換し、この信号を増幅し、この信号をデジタル信号にさらに変換する。X線検出器103およびDAS104は、900TPPRから1800TPPRの間、および900TPPRから3600TPPRの間、最も多くは900TPPRであり得る所定の1回転あたりの総投影数(TPPR)を取扱うように構成される。
【0024】
上記データは、非接触式データ送信器105を介してガントリ100の外側のコンソールに格納される前処理デバイス106に送られる。前処理デバイス106は、ある種の補正、例えば生データに対する感度補正などを実行する。次いで、記憶デバイス112は、投影データとも呼ばれる結果として得られるデータを、再構成処理の直前の段階で記憶する。記憶デバイス112は、データ/制御バスを介して、再構成デバイス114、入力デバイス115、表示デバイス116、およびスキャン計画支援装置200と共に、システムコントローラ110に接続されている。スキャン計画支援装置200は、撮像技師がスキャン計画を策定するのを支援するための機能を含む。
【0025】
再構成デバイス114の一実施形態は、様々なソフトウェア構成要素とハードウェア構成要素とをさらに含む。発明の一態様によれば、CT装置の再構成デバイス114は、並列計算に適した逐次近似再構成技法を用いて全変動(TV)を有利に最小化する。概して、本発明の一実施形態における再構成デバイス114は、全変動逐次近似再構成(TVIR)アルゴリズムを動作させ、TVIRアルゴリズムは、投影データに対して、順序部分集合同時代数的再構成法(OS−SART)のステップと、TV最小化ステップとを実行する。
【0026】
順序部分集合同時代数的再構成法(OS−SART)の最中、再構成デバイス114は、2つの主要な動作も行う。すなわち、再構成デバイス114は、画像ボリュームを再投影して算出投影データを形成し、測定投影データと算出投影データとの間の規格化した差を逆投影して、更新された画像ボリュームを再構成する。さらに詳細には、再構成デバイス114の一実施形態は、システムマトリックスの係数がキャッシュされないレイトレーシング法を用いて画像ボリュームを再投影する。また、再構成デバイス114の一実施形態は、部分集合中の全ての光線を同時に再投影する。逆投影では、再構成デバイス114の一実施形態は、ピクセルドリブン法を使用して、部分集合中の全ての規格化した差の投影データを逆投影して、所望の更新された画像ボリュームを形成する。同時代数的再構成法(SART)などの他の次近似再構成アルゴリズムを実行する本実施形態および他の実施形態が、適宜、添付の特許請求の範囲内により詳細に主張されるように本発明の現在の範囲内で含まれる。
【0027】
OS−SARTのステップおよびTVのステップは、再構成中、画質に幾分逆の効果を与える。OS−SART後、いくらかの鮮明さが、更新された画像中のノイズの増加とともに、実際のデータのマッチング時の誤差数の減少によってもたらされる。結果として、更新画像は、シャープに見えるが、それと一緒にノイズが多く見え得る。全変動(TV)最小化ステップでは、再構成デバイス114の一実施形態は、TV最小化ステップをX回繰り返し、ただし、Xは所定の数であり、これによって分解能を犠牲にしてノイズを改善する。
【0028】
再構成デバイス114の一実施形態は、画質を最適化するように逐次近似再構成アルゴリズムにおける単一ステップで一対の画像更新を共に一緒に用いて画像を更新することによって分解能レベルとノイズレベルとの間のトレードオフを有利に決定する。すなわち、逐次近似ごとに、画像は、データ忠実性更新と正規化更新の両方を一緒に使用して1回で更新され、そのため、ノイズと誤差とを最小化するための制御は、一方の更新、次いで他方の更新を連続したやり方で適用するよりも効率がよい。
【0029】
次に、図4を参照すると、図は、本発明による再構成デバイスの一実施形態を示す。本実施形態は、X線CT装置またはスキャナにおいて、ソフトウェアモジュール、ハードウェアユニット、または両方の組合せのいずれかとして実施される。以下において、用語「ユニット」は、ソフトウェアとハードウェアの実施の任意の組合せを意味するように用いられる。概して、元の画像x(n-1)は、SARTユニットおよびTVユニットによって処理され、SARTユニットとTVユニットとにおける処理は、順次、並列、またはそれらの任意の組合せのいずれかである。すなわち、SARTユニットおよびTVユニットは、独立してそれらの作業を行って、それらの出力を決定する。
【0030】
SARTユニットは、元の画像x(n-1)に対して実際のデータのマッチング時の誤差の量の減少を実行し、第1の中間画像または画像更新
【数13】
【0031】
の出力を行い、このときこれはノイズの量が増加している。第1の中間画像または画像更新
【数14】
【0032】
は、緩和パラメータ値または第1の係数βによって重みが付けられる。同様に、元の画像x(n-1)は、相補的な緩和パラメータ値または第1の相補的な係数(1−β)によって重みが付けられる。2つの重みの付いた画像は、第1の規格化したSARTの更新された画像
【数15】
【0033】
に共に合計される。この独立したプロセス中、元の画像x(n-1)は、更新されない。
【0034】
独立したやり方では、TVユニットは、元の画像x(n-1)に対してノイズレベルの現象を実行し、第2の中間画像また画像更新
【数16】
【0035】
の出力を行い、このときこれは実際のデータのマッチング時の誤差の量が増加している。第2の中間画像または画像更新
【数17】
【0036】
は、正規化強度パラメータ値または第2の係数αによって重みが付けられる。同様に。元の画像x(n-1)は、相補的な正規化強度パラメータ値または第2の相補的な係数(1−α)によって重みが付けられる。2つの重みの付いた画像は、第2の規格化したTVの更新された画像
【数18】
【0037】
共に合計される。この独立したプロセス中、元の画像x(n-1)は、更新されない。
【0038】
第1の規格化したSARTの後、更新された画像
【数19】
【0039】
および第2の規格化したTVの更新された画像
【数20】
【0040】
は、独立して得られ、これら2つの画像は、共に加算されるとともに、再構成された画像x(n)を出力するように規格化中である。第1の規格化したSARTの更新された画像
【数21】
【0041】
は、データ忠実性更新とも呼ばれ、適宜、ノイズ・分解能パラメータ値または第3の係数λによってさらに重みが付けられる。このことについては、第2の規格化したTVの更新された画像
【数22】
【0042】
は、正規化更新とも呼ばれ、適宜、相補的なノイズ・分解能パラメータ値または第3の相補的な係数(1−λ)によってさらに重みが付けられる。すなわち、独立して決定されたデータ忠実性更新および正規化更新は、適宜、第3の対の係数λおよび(1−λ)によって規格化され、これらは概してユーザにより経験的なやり方によって決定される。λ値を決定するための1つの例示的なユーザインターフェースは、回転式ノブとして実装される。
【0043】
最後に、元の画像x(n-1)は、単一のステップで再構成された画像x(n)に基づいて更新される。すなわち、逐次近似ごとに、データ忠実性更新および正規化更新は、単一ステップで共に一緒に合計されて、再構成された画像x(n)を生成し、それによって元の画像x(n-1)は、ここで単一のステップで更新される。したがって、画像は、データ忠実性更新と正規化更新の両方と共に一緒に使用されることによって1回で更新され、そのためノイズと誤差とを最小にするための制御は、これらの更新を連続したやり方で適用するよりも効率的かつ効果的に及ぼされる。したがって、ノイズと分解能のトレードオフは、TV-OS−SARTなどの全変動ベースの逐次近似再構成技法(TV−IR)において、実質的に改善される。
【0044】
次に図5を参照すると、流れ図は、本発明による逐次近似再構成アルゴリズムにおける単一ステップで一対の画像更新を共に一緒に用いて画像更新することによって画質を最適化するプロセスに含まれるステップを示す。第1のステップS10では、データ忠実性更新や正規化更新などの2つの更新は、独立して決定される。他方、2つの更新を得る作業は、順次プロセスおよび/または並列プロセスで実施されてもよい。図4に関連して説明するように、データ忠実性更新や正規化更新などの2つの更新は、OS−SARTやSARTなどの逐次近似再構成アルゴリズム、および全変動(TV)などの正規化アルゴリズムによってそれぞれ決定される。データ忠実性更新と規化更新の両方は、緩和パラメータや正規化強度パラメータなどの所定のパラメータによって重みが付けられる。
【0045】
さらに図5を参照すると、データ忠実性更新や正規化更新などの2つの更新が、所定の独立したやり方で決定された後、本発明による、所定の逐次近似再構成アルゴリズムにおいて一対の2つの画像更新を単一ステップS20で共に一緒に用いて画像が更新される。図4に関連して説明するように、データ忠実性更新や正規化更新などの2つの更新は、ノイズと誤差とに対してほとんど反対の影響を及ぼす。したがって、2つの更新を連続したやり方で適用することによって、これらの効果は、元の画像中のノイズおよび誤差のレベルの減少の一貫した改善になっていない。2つの画像更新を共に同時に適用することによって、データ忠実性更新または正規化更新などの単一の画像更新の効果は、逐次近似ごとに元の画像により容易に混ぜられる。
【0046】
最後に、ステップS30において、逐次近似が、本発明による1つの例示的なプロセスにおいて、所定の逐次近似再構成アルゴリズム、例えばOS−SARTやSARTなどを終わらす必要があるかどうかについて決定される。例示的な一プロセスでは、終了条件は、所定のいくつかの逐次近似に基づいていてもよい。別の例示的なプロセスでは、終了条件は、逐次近似における所定の条件に基づいていてもよい。いずれにせよ、ステップS30で判定されるときに、プロセスがまだ終了する準備ができていない場合、例示的なプロセスは、ステップS10から繰り返される。一方、ステップS30が例示的なプロセスが終了されることを決定する場合、例示的なプロセスは、再構成された画像を出力し、そのプロセスを終了する。
【0047】
次に図6を参照すると、流れ図は、本発明による逐次近似再構成アルゴリズムにおいてデータ忠実性更新を独立して決定するプロセスに含まれるステップを示す。概して、データ忠実性更新は、ノイズおよび/または誤差などのある種の統計的情報に基づいて決定される。ノイズは、元の画像およびその更新された画像におけるノイズレベルであり、一方、誤差は、逐次近似プロセス中の元の画像およびその更新された画像における実際のデータのマッチング時の誤差の量である。データ忠実性更新は、ノイズと誤差との組合せに基づいて決定されるので、ステップS11SnからステップS14Snは、ノイズ情報に基づいてデータ忠実性更新を決定し、一方、ステップS11SeからステップS14Seは、誤差情報に基づいてデータ忠実性更新を決定する。データ忠実性更新は、2つの情報源の任意の組合せを反映する。
【0048】
ノイズに基づく決定については、ステップS11SnからステップS14Snは、最終的に重みの付いたノイズの変化を決定する。第1のステップS11Snでは、逐次近似n−1で画像x(n-1)を考えると、ノイズn(n-1)は、画像x(n-1)において決定される。SARTが含まれる所定の再構成技法は、1などの強い値を有する一定の緩和パラメータ値を用いて画像x(n-1)に適用されて、
【数23】
【0049】
を得て、ステップS12Snの
【数24】
【0050】

【数25】
【0051】
から計算するようになっている。ステップS11Snの上記の決定されたノイズ値n(n-1)、およびステップS12Snの
【数26】
【0052】
に基づいて、ステップS13Snにおいてノイズの変化
【数27】
【0053】
が決定される。最後に、重みの付いたノイズの変化ΔnS=βΔnSARTであり、ただし、βは、S14SnにおけるSARTの強度パラメータまたは緩和パラメータである。
【0054】
同様に、誤差に基づいた決定については、ステップS11SeからS14Seは、最終的に、重みの付いた誤差の変化を決定する。第1のステップS11Seでは、逐次近似n−1で画像x(n-1)を考えると、データ忠実性誤差ε(n-1)は、画像x(n-1)において決定される。SARTが含まれる所定の再構成技法は、1などの強い値を有する一定の緩和パラメータ値を用いて画像x(n-1)に適用されて、
【数28】
【0055】
を得て、ステップS12Seの
【数29】
【0056】

【数30】
【0057】
から計算するようになっている。ステップS11Seの上記の決定されたデータ忠実性誤差値ε(n-1)、およびステップS12Seの
【数31】
【0058】
に基づいて、ステップS13Seにおいてデータ忠実性誤差の変化
【数32】
【0059】
が決定される。最後に、重みの付いたデータ忠実性誤差の変化ΔεS=βΔεSARTであり、ただしβは、S14SeにおけるSARTの強度パラメータまたは緩和パラメータである。
【0060】
詳細には、SART更新またはデータ忠実性更新
【数33】
【0061】
は、
【数34】
【0062】
によって定められ、ただし、
【数35】
【0063】
は、図6のステップS15Sに示すように、ΔnSART単独、ΔεSART単独、またはΔnSARTとΔεSARTとの組合せの観点で得られる。ノイズと誤差との組合せを選択すると、ステップS16Sは、SART更新またはデータ忠実性更新
【数36】
【0064】
を出力する。上記のステップは、SART更新またはデータ忠実性更新
【数37】
【0065】
の決定の例示に過ぎず、本発明の適切な範囲は、上記の例示的なステップによって限定されない。
【0066】
次に図7を参照すると、流れ図は、本発明による逐次近似再構成アルゴリズムにおいて正規化更新を独立して決定するプロセスに含まれるステップを示す。概して、正規化更新は、ノイズおよび/または誤差などのある種の統計的情報に基づいて決定される。ノイズは、元の画像およびその更新された画像におけるノイズレベルであり、一方、誤差は、逐次近似プロセス中の元の画像およびその更新された画像における実際のデータのマッチング時の誤差の量である。正規化更新は、ノイズと誤差との組合せに基づいて決定されるので、ステップS11RnからS14Rnは、ノイズ情報に基づいて正規化更新を決定し、一方、ステップS11ReからS14Reは、誤差情報に基づいて正規化更新を決定する。正規化更新は、2つの情報源の任意の組合せを反映する。
【0067】
ノイズに基づく決定については、ステップS11RnからステップS14Rnは、最終的に、重みの付いたノイズの変化を決定する。第1のステップS11Rnでは、逐次近似n−1で画像x(n-1)を考える場合、ノイズn(n-1)は、画像x(n-1)において決定される。全変動(TV)最小化が含まれる所定の正規化技法が、1などの強い値を有する一定の正規化パラメータ値を用いて画像x(n-1)に適用されて、
【数38】
【0068】
を得て、ステップS12Rnの
【数39】
【0069】

【数40】
【0070】
から計算するようになっている。ステップS11Rnの上記の決定されたノイズ値n(n-1)、およびステップS12Rnの
【数41】
【0071】
に基づいて、ステップS13Rnにおいてノイズの変化
【数42】
【0072】
が決定される。最後に、重みの付いたノイズの変化ΔnR=αΔnREGであり、ただし、αは、S14RnにおけるTVの強さパラメータまたは正規化強度パラメータである。
【0073】
同様に、誤差に基づいた決定については、ステップS11ReからステップS14Reは、最終的に、重みの付いた誤差の変化を決定する。第1のステップS11Reでは、逐次近似n−1で画像x(n-1)を考えると、データ忠実性誤差ε(n-1)は、画像x(n-1)において決定される。TV最小化が含まれる所定の正規化技法では、1などの強い値を有する一定の正規化パラメータ値が画像x(n-1)に適用されて、
【数43】
【0074】
を得て、ステップS12Reの
【数44】
【0075】

【数45】
【0076】
から計算するようになっている。ステップS11Reの上記の決定された正規化誤差値ε(n-1)、およびステップS12Reの
【数46】
【0077】
に基づいて、ステップS13Reにおいて正規化誤差の変化
【数47】
【0078】
が決定される。最後に、重みの付いた正規化誤差の変化ΔεR=αΔεREGであり、ただしαは、S14ReにおけるTVの強さパラメータまたは正規化強度パラメータである。
【0079】
詳細には、TV更新または正規化更新
【数48】
【0080】
は、
【数49】
【0081】
によって定められ、ただし
【数50】
【0082】
は、図7のステップS15Rに示すように、ΔnREG単独、ΔεREG単独、またはΔnREGとΔεREGとの組合せの観点で得られる。ノイズと誤差との組合せを選択すると、ステップS16Rは、TV更新または正規化更新
【数51】
【0083】
を出力する。上記のステップは、TV更新または正規化更新
【数52】
【0084】
の決定の例示に過ぎず、本発明の適切な範囲は、上記の例示的なステップによって限定されない。
【0085】
次に図8を参照すると、流れ図は、本発明による逐次近似再構成アルゴリズムの単一ステップで独立して決定された更新を共に一緒に用いて画像を同時に更新するプロセスに含まれるステップを示す。概して、図6および図7に関連して上述したように、データ忠実性更新
【数53】
【0086】
および正規化更新
【数54】
【0087】
は、ステップS100およびステップS200においてノイズおよび/または誤差などのある種の統計的情報に基づいてそれぞれ独立して得られる。これらの独立して決定された更新
【数55】
【0088】
および
【数56】
【0089】
を、ここで同時に適用して例示的な逐次近似再構成プロセスの単一ステップS300で画像を更新して、本発明による更新された画像を生成する。更新された画像は、本発明による再構成アルゴリズムの次の逐次近似プロセスで使用される。ステップS300では、第3の追加の重みパラメータλが適宜適用されて、更新された画像を生成する。
【0090】
画像x(n)が、データ忠実性更新
【数57】
【0091】
および正規化更新
【数58】
【0092】
に基づいて更新されるので、概して、誤差およびノイズは、追加のパラメータによって適宜制御され得る。図9に示すように、図8のステップS300で生成される更新画像が、本発明による誤差とノイズとの制御において、第3の追加の重みパラメータλに依存する。最終画像x(n)は、2つの更新との関連で
【数59】
【0093】
によって表され、最終画像における誤差およびノイズは、第3の追加の重みパラメータλの値に依存する。言い換えれば、ノイズ・分解能は、第3の追加の重みパラメータλによって適宜制御される。λ値が1まで増加するにつれて、誤差が減少する一方、ノイズが増加する。言い換えれば、画像x(n)は、シャープな外観を伴うよりSART画像らしくなるが、ノイズの多いバックグラウンドになる。一方、λ値が減少するにつれて、誤差が増加する一方、ノイズが減少する。
【0094】
図10Aは、本発明による1200個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像を示す。図10Bは、本発明による600個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像を示す。図10Cは、本発明による400個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像を示す。図10Dは、本発明による240個のビューを有する投影データにおける2つの更新を同時に適用することによって所定の逐次近似技法によって再構成される実際の物理ファントムの例示的な画像を示す。図10Aから図10Dの例示的な画像は、投影データが240個のビューなどの疎ビューから1200個のビューなどフルビューまでの範囲の異なる個数のビューを有するにも関わらず、本発明による同時の更新の適用が、画質で逐次近似技法の再構成特性を実質的に維持することを示す。
【0095】
図11Aは、本発明によるノイズ・分解能パラメータ値0.75を投影データにおける2つの更新に同時に適用することにより、所定の逐次近似技法によって死体データから再構成される例示的な画像を示す。図11Bは、本発明によるノイズ・分解能パラメータ値0.80を投影データにおける2つの更新に同時に適用することにより、所定の逐次近似技法によって死体データから再構成される例示的な画像を示す。図11Cは、本発明によるノイズ・分解能パラメータ値0.90を投影データにおける2つの更新に同時に適用することにより、所定の逐次近似技法によって死体データから再構成される例示的な画像を示す。これらの例示的な画像は、ノイズ・分解能パラメータ値がノイズ・分解能特性を制御することを示す。
【0096】
なお、本発明の多数の特徴および利点が、本発明の構造および機能の詳細と共に、前述の説明に記載されてきたが、本開示は例示に過ぎず、細部において、特に部品の形状、大きさ、および配置の事柄、ならびにソフトウェア、ハードウェア、または両方の組合せにおける位実装形態において、変更がなされてもよいが、この変更は、添付の特許請求の範囲を表現する用語の幅広い一般的な意味によって示される範囲に及ぶ限り本発明の原理の範囲内にあることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C