(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱量調整工程は、前記基板の回転速度と、前記ヒータから与えられる前記単位時間当たりの熱量との対応関係を表す対応テーブルに基づいて、前記単位時間当たりの熱量を決定する工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
前記熱量調整工程は、レシピ記憶手段に記憶されているレシピを参照し、そのレシピで定められている前記基板回転工程における前記基板の回転速度に基づいて、前記単位時間当たりの熱量を決定する工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式的な平面図である。
図1Aに示すように、基板処理装置1は、たとえば基板の一例としてのウエハWの表面(主面)に不純物を注入するイオン注入処理やドライエッチング処理の後に、そのウエハWの表面から不要になったレジストを除去するための処理に用いられる枚葉式の装置である。
【0021】
基板処理装置1は、収容器としての複数のキャリアCを保持する収容器保持ユニットとしてのロードポートLPと、ウエハWを処理する複数(この実施形態では、12台)の処理ユニット100とを含む。処理ユニット100は、上下方向に積層して配置されている。
基板処理装置1は、さらにロードポートLPとセンターロボットCRとの間でウエハWを搬送する搬送ロボットとしてのインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと各処理ユニット100との間でウエハWを搬送する搬送ロボットとしてのセンターロボットCRと、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御するコンピュータ55(制御手段)とを含む。
【0022】
図1Aに示すように、ロードポートLPおよび各処理ユニット100は、水平方向に間隔を空けて配置されている。複数枚のウエハWを収容する複数のキャリアCは、平面視で、水平な配列方向Dに配列されている。インデクサロボットIRは、キャリアCからセンターロボットCRに複数枚のウエハWを一枚ずつ搬送し、センターロボットCRからキャリアCに複数枚のウエハWを一枚ずつ搬送する。同様に、センターロボットCRは、インデクサロボットIRから各処理ユニット100に複数枚のウエハWを一枚ずつ搬入する。また、センターロボットCRは、必要に応じて複数の処理ユニット100の間で基板を搬送する。
【0023】
インデクサロボットIRは、平面視U字状の2つのハンドHを備えている。2つのハンドHは、異なる高さに配置されている。各ハンドHは、ウエハWを水平な姿勢で支持する。インデクサロボットIRは、ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させる。さらに、インデクサロボットIRは、鉛直線軸まわりに回転(自転)することにより、ハンドHの向きを変更する。インデクサロボットIRは、受渡位置(
図1Aに示す位置)を通る経路に沿って配列方向Dに移動する。受渡位置は、平面視で、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRが配列方向Dに直交する方向に対向する位置である。インデクサロボットIRは、任意のキャリアCおよびセンターロボットCRにハンドHを対向させる。インデクサロボットIRは、ハンドHを移動させることにより、キャリアCにウエハWを搬入する搬入動作と、キャリアCからウエハWを搬出する搬出動作を行う。また、インデクサロボットIRは、センターロボットCRと協働して、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRの一方から他方にウエハWを移動させる受渡動作を受渡位置で行う。
【0024】
また、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと同様に、平面視U字状の2つのハンドHを備えている。2つのハンドHは、異なる高さに配置されている。各ハンドHは、ウエハWを水平な姿勢で支持する。センターロボットCRは、ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させる。さらに、センターロボットCRは、鉛直線軸まわりに回転(自転)することにより、ハンドHの向きを変更する。センターロボットCRは、平面視において、各処理ユニットに取り囲まれている。センターロボットCRは、任意の処理ユニット100およびインデクサロボットIRにハンドHを対向させる。そして、センターロボットCRは、ハンドHを移動させることにより、各処理ユニット100にウエハWを搬入する搬入動作と、各処理ユニット100からウエハWを搬出する搬出動作を行う。また、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと協働して、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRの一方から他方にウエハWを移動させる受渡動作を行う。
【0025】
図1Bは、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法が適用される処理ユニット100の構成を模式的に示す図である。
処理ユニット100は、隔壁により区画された処理室2(
図1A参照)内に、ウエハWを保持するウエハ保持機構3(基板保持手段)と、ウエハ保持機構3に保持されているウエハWの表面(上面)に対して、レジスト剥離液の一例としてのSPM液を供給するための剥離液ノズル4と、ウエハ保持機構3に保持されているウエハWの表面に対向して配置されてウエハWや当該ウエハW上のSPM液の液膜を加熱するためのヒータ54(ヒータ)とを備えている。
【0026】
ウエハ保持機構3として、たとえば挟持式のものが採用されている。具体的には、ウエハ保持機構3は、回転駆動機構6(基板回転手段)と、この回転駆動機構6の駆動軸と一体化されたスピン軸7と、スピン軸7の上端にほぼ水平に取り付けられた円板状のスピンベース8と、スピンベース8の周縁部の複数箇所にほぼ等角度間隔で設けられた複数個の挟持部材9とを備えている。回転駆動機構6は、たとえば、電動モータである。そして、複数個の挟持部材9は、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持する。この状態で、回転駆動機構6が駆動されると、その駆動力によってスピンベース8が鉛直線に沿う所定の回転軸線A1まわりに回転され、そのスピンベース8とともに、ウエハWがほぼ水平な姿勢を保った状態で回転軸線A1まわりに回転される。
【0027】
なお、ウエハ保持機構3としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で回転軸線A1まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させる真空吸着式のものが採用されてもよい。
剥離液ノズル4は、たとえば、連続流の状態でSPM液を吐出するストレートノズルである。剥離液ノズル4は、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる第1液アーム11の先端に取り付けられている。第1液アーム11は、鉛直方向に延びる所定の揺動軸線まわりに旋回可能に設けられている。第1液アーム11には、第1液アーム11を所定角度範囲内で揺動させるための第1液アーム揺動機構12が結合されている。第1液アーム11の揺動により、剥離液ノズル4は、ウエハWの回転軸線A1上の位置(ウエハWの回転中心に対向する位置)と、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションとの間で移動される。
【0028】
剥離液ノズル4にSPM液を供給するための剥離液供給機構13(処理液供給手段)は、硫酸(H
2SO
4)と過酸化水素水(H
2O
2)とを混合させるための混合部14と、混合部14と剥離液ノズル4との間に接続された剥離液供給管15とを備えている。混合部14には、硫酸供給管16および過酸化水素水供給管17が接続されている。硫酸供給管16には、後述する硫酸供給部(図示しない)から、所定温度(たとえば約80℃)に温度調節された硫酸が供給される。一方、過酸化水素水供給管17には、過酸化水素水供給源(図示しない)から、温度調節されていない室温(約25℃)程度の過酸化水素水が供給される。
【0029】
硫酸供給管16の途中部には、硫酸バルブ18および流量調節バルブ19が介装されている。また、過酸化水素水供給管17の途中部には、過酸化水素水バルブ20および流量調節バルブ21が介装されている。剥離液供給管15の途中部には、攪拌流通管22および剥離液バルブ23が混合部14側からこの順に介装されている。攪拌流通管22は、たとえば、管部材内に、それぞれ液体流通方向を軸にほぼ180度のねじれを加えた長方形板状体からなる複数の撹拌フィンを、液体流通方向に沿う管中心軸まわりの回転角度を90°ずつ交互に異ならせて配置した構成を有している。
【0030】
剥離液バルブ23が開かれた状態で、硫酸バルブ18および過酸化水素水バルブ20が開かれると、硫酸供給管16からの硫酸および過酸化水素水供給管17からの過酸化水素水が混合部14に流入し、それらが混合部14から剥離液供給管15へと流出する。硫酸および過酸化水素水は、剥離液供給管15を流通する途中、攪拌流通管22を通過することにより十分に攪拌される。攪拌流通管22による攪拌によって、硫酸と過酸化水素水とが十分に反応し、多量のペルオキソ一硫酸(H
2SO
5)を含むSPM液が生成される。そして、SPM液は、硫酸と過酸化水素水との反応熱により、混合部14に供給される硫酸の液温以上の高温に昇温する。その高温のSPM液が剥離液供給管15を通して剥離液ノズル4に供給される。
【0031】
この実施形態では、硫酸供給部(図示しない)の硫酸タンク(図示しない)には、硫酸が溜められており、この硫酸タンク内の硫酸は温度調節器(図示しない)により、所定温度(たとえば約80℃)に温度調節されている。この硫酸タンク内に溜められた硫酸が硫酸供給管16に供給されている。混合部14において、たとえば約80℃の硫酸と、室温の過酸化水素水とが混合されることにより、たとえば約140℃のSPM液が生成される。剥離液ノズル4は、約140℃のSPM液を吐出する。
【0032】
また、処理ユニット100は、ウエハ保持機構3に保持されたウエハWの表面にリンス液としてのDIW(脱イオン化された水)を供給するためのDIWノズル24と、ウエハ保持機構3に保持されたウエハWの表面に対して洗浄用の薬液としてのSC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)を供給するためのSC1ノズル25とを備えている。
【0033】
DIWノズル24は、たとえば、連続流の状態でDIWを吐出するストレートノズルであり、ウエハ保持機構3の上方で、その吐出口をウエハWの回転中心付近に向けて固定的に配置されている。DIWノズル24には、DIW供給源からのDIWが供給されるDIW供給管26が接続されている。DIW供給管26の途中部には、DIWノズル24からのDIWの供給/供給停止を切り換えるためのDIWバルブ27が介装されている。
【0034】
SC1ノズル25は、たとえば、連続流の状態でSC1を吐出するストレートノズルである。SC1ノズル25は、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる第2液アーム28の先端に取り付けられている。第2液アーム28は、鉛直方向に延びる所定の揺動軸線まわりに旋回可能に設けられている。第2液アーム28には、第2液アーム28を所定角度範囲内で揺動させるための第2液アーム揺動機構29が結合されている。第2液アーム28の揺動により、SC1ノズル25は、ウエハWの回転軸線A1上の位置(ウエハWの回転中心に対向する位置)と、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションとの間で移動される。
【0035】
SC1ノズル25には、SC1供給源からのSC1が供給されるSC1供給管30が接続されている。SC1供給管30の途中部には、SC1ノズル25からのSC1の供給/供給停止を切り換えるためのSC1バルブ31が介装されている。
ウエハ保持機構3の側方には、鉛直方向に延びる支持軸33が配置されている。支持軸33の上端には、水平方向に延びるヒータアーム34が結合されており、ヒータアーム34の先端に、ヒータ54が取り付けられている。また、支持軸33には、支持軸33を、その中心軸線まわりに回動させるための揺動駆動機構36と、支持軸33を、その中心軸線に沿って上下動させるための昇降駆動機構37とが結合されている。
【0036】
揺動駆動機構36から支持軸33に駆動力を入力して、支持軸33を所定の角度範囲内で回動させることにより、ウエハ保持機構3に保持されたウエハWの上方で、ヒータアーム34を、支持軸33を支点として揺動させる。ヒータアーム34の揺動により、ヒータ54が、ウエハWの回転軸線A1上を含む位置(ウエハWの回転中心に対向する位置)と、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションとの間で移動される。また、昇降駆動機構37から支持軸33に駆動力を入力して、支持軸33を上下動させることにより、ウエハ保持機構3に保持されたウエハWの表面に近接する近接位置(後述するミドル近接位置や、エッジ近接位置、センター近接位置を含む趣旨である。
図1Bに二点鎖線で示す位置)と、そのウエハWの上方に退避する退避位置(
図1Bに実線で示す位置)との間で、ヒータ54を昇降させる。この実施形態では、近接位置は、ウエハ保持機構3に保持されたウエハWの表面とヒータヘッド35の下端面との間隔がたとえば3mmになる位置に設定されている。
【0037】
図2は、ヒータ54の図解的な断面図である。
図3は、赤外線ランプ38の斜視図である。
図4は、ヒータアーム34およびヒータ54の斜視図である。
図2に示すように、ヒータ54は、ヒータヘッド35と、赤外線ランプ38と、上部に開口部39を有し、赤外線ランプ38を収容する有底容器状のランプハウジング40と、ランプハウジング40の内部で赤外線ランプ38を吊下げ支持する支持部材42と、ランプハウジング40の開口部39を閉塞するための蓋41とを備えている。この実施形態では、蓋41がヒータアーム34の先端に固定されている。
【0038】
図2および
図3に示すように、赤外線ランプ38は、円環状の(円弧状の)円環部43と、円環部43の両端から、円環部43の中心軸線に沿うように鉛直上方に延びる一対の直線部44,45とを有する1本の赤外線ランプヒータであり、主として、円環部43が赤外線を放射する発光部として機能する。この実施形態では、円環部43の直径(外径)は、たとえば約60mmに設定されている。赤外線ランプ38が支持部材42に支持された状態で、円環部43の中心軸線は、鉛直方向に延びている。換言すると、円環部43の中心軸線は、ウエハ保持機構3に保持されたウエハWの表面に垂直な軸線である。また、赤外線ランプ38はほぼ水平面内に配置される。
【0039】
赤外線ランプ38は、フィラメントを石英配管内に収容して構成されている。赤外線ランプ38として、ハロゲンランプやカーボンヒータに代表される短・中・長波長の赤外線ヒータを採用することができる。赤外線ランプ38に、コンピュータ55が接続されており、電力が供給される。
図2および
図4に示すように、蓋41は円板状をなし、ヒータアーム34の長手方向に沿う姿勢で固定されている。蓋41は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂材料を用いて形成されている。この実施形態では、蓋41はヒータアーム34と一体に形成されている。しかしながら、蓋41をヒータアーム34と別に形成してもよい。また、蓋41の材料として、PTFE等の樹脂材料以外にも、セラミックスや石英などの材料を採用できる。
【0040】
図2に示すように、蓋41の下面49には、(略円筒状の)溝部51が形成されている。溝部51は水平平坦面からなる上底面50を有し、上底面50に支持部材42の上面42Aが接触固定されている。
図2および
図4に示すように、蓋41には、上底面50および下面42Bを鉛直方向に貫通する挿通孔58,59が形成されている。各挿通孔58,59は、赤外線ランプ38の直線部44,45の各上端部が挿通するためのものである。なお、
図4では、赤外線ランプ38をヒータヘッド35から取り除いた状態を示している。
【0041】
図2に示すように、ヒータヘッド35のランプハウジング40は有底円筒容器状をなしている。ランプハウジング40は石英を用いて形成されている。
ヒータヘッド35では、ランプハウジング40は、その開口部39を上方に向けた状態で、蓋41の下面49(この実施形態では、溝部51を除く下面)に固定されている。ランプハウジング40の開口側の周端縁からは、円環状のフランジ40Aが径方向外方に向けて(水平方向に)突出している。ボルト等の固定手段(図示しない)を用いて、フランジ40Aが蓋41の下面49に固定されることにより、ランプハウジング40が蓋41に支持されている。
【0042】
ランプハウジング40の底板部52は、水平姿勢の円板状をなしている。底板部52の上面52Aおよび下面52Bは、それぞれ水平平坦面をなしている。ランプハウジング40内において、赤外線ランプ38は、その円環部43の下部が底板部52の上面52Aに近接して対向配置されている。また、円環部43と底板部52とは互いに平行に設けられている。また、見方を変えると、円環部43の下方は、ランプハウジング40の底板部52によって覆われている。なお、この実施形態では、ランプハウジング40の外径は、たとえば約85mmに設定されている。また、赤外線ランプ38(円環部43の下部)の下端縁と上面52Aとの間の上下方向の間隔はたとえば約2mmに設定されている。
【0043】
支持部材42は厚肉の略円板状をなしており、ボルト56等によって、蓋41にその下方から、水平姿勢で取付け固定されている。支持部材42は、耐熱性を有する材料(たとえばセラミックスや石英)を用いて形成されている。支持部材42は、その上面42Aおよび下面42Bを、鉛直方向に貫通する挿通孔46,47を2つ有している。各挿通孔46,47は、赤外線ランプ38の直線部44,45が挿通するためのものである。
【0044】
各直線部44,45の途中部には、Oリング48が外嵌固定されている。直線部44,45を挿通孔46,47に挿通させた状態では、各Oリング48の外周が挿通孔46,47の内壁に圧接し、これにより、直線部44,45の各挿通孔46,47に対する抜止めが達成され、赤外線ランプ38が支持部材42によって吊り下げ支持される。
ヒータ54による赤外線の放射は、コンピュータ55(具体的には、後述するCPU55A)により制御されている。より具体的には、コンピュータ55によりヒータ54が制御されて赤外線ランプ38に電力が供給されると、赤外線ランプ38が赤外線の放射を開始する。赤外線ランプ38から放射された赤外線は、ランプハウジング40を介して、ヒータヘッド35の下方に向けて出射される。後述するレジスト除去処理の際に、ヒータヘッド35の下端面を構成するランプハウジング40の底板部52が、ウエハ保持機構3に保持されているウエハWの表面に対向して配置された状態では、ランプハウジング40の底板部52を介して出射された赤外線が、ウエハWおよびウエハW上のSPM液を加熱する。また、赤外線ランプ38の円環部43が水平姿勢であるので、同じく水平姿勢にあるウエハWの表面に対し均一に赤外線を照射することができ、これにより、赤外線を、ウエハW、およびウエハW上のSPM液に、効率良く照射することができる。
【0045】
ヒータヘッド35は、赤外線ランプ38の周囲がランプハウジング40によって覆われている。また、ランプハウジング40のフランジ40Aと蓋41の下面49とは、ランプハウジング40の全周にわたって密着している。さらに、ランプハウジング40の開口部39が蓋41によって閉塞されている。これらにより、後述するレジスト除去処理の際、ウエハWの表面付近のSPM液の液滴を含む雰囲気等が、ランプハウジング40内に進入して、赤外線ランプ38に悪影響を及ぼすのを防止することができる。また、赤外線ランプ38の石英管の管壁にSPM液の液滴等が付着するのを防止することができるので、赤外線ランプ38から放射される赤外線の光量を長期にわたって安定的に保つことができる。
【0046】
また、蓋41内には、ランプハウジング40の内部にエアを供給するための給気経路60と、ランプハウジング40の内部の雰囲気を排気するための排気経路61とが形成されている。給気経路60および排気経路61は、蓋41の下面に開口する給気ポート62および排気ポート63を有している。給気経路60には、給気配管64の一端が接続されている。給気配管64の他端は、エアの給気源に接続されている。排気経路61には、排気配管65の一端が接続されている。排気配管65の他端は、排気源に接続されている。
【0047】
給気配管64および給気経路60を通して、給気ポート62からランプハウジング40内にエアを供給しつつ、ランプハウジング40内の雰囲気を、排気ポート63および排気経路61を通して排気配管65へ排気することにより、ランプハウジング40内の高温雰囲気を換気することができる。これにより、ランプハウジング40の内部を冷却することができ、その結果、赤外線ランプ38やランプハウジング40、とくに支持部材42を良好に冷却することができる。
【0048】
なお、
図4に示すように、給気配管64および排気配管65(
図4では図示していない。
図2参照)は、ヒータアーム34の一方の側面に配設された板状の給気配管ホルダ66、およびヒータアーム34の他方の側面に配設された板状の排気配管ホルダ67に、それぞれ支持されている。
図5は、ヒータ54の配置位置を示す平面図である。
【0049】
揺動駆動機構36および昇降駆動機構37が制御されることにより、ヒータ54が、ウエハWの表面上を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描くように移動可能に設けられている。
ヒータ54により、ウエハWおよびウエハW上のSPM液およびSC1を加熱する場合、ヒータ54は、ヒータヘッド35の下端面を構成する底板部52がウエハWの表面と微小間隔(たとえば3mm)を隔てて対向する近接位置に配置される。そして、その加熱中は、底板部52(下面52B)とウエハWの表面との間が、その微小間隔に保たれる。
【0050】
ヒータ54の近接位置として、ミドル近接位置(
図5に実線で示す位置)やエッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)、センター近接位置(
図5に一点鎖線で示す位置)を例示することができる。
ミドル近接位置は、ウエハWの表面における半径方向の中央位置(回転中心(回転軸線A1上)と周縁部との間の中央位置)に、平面視円形状のヒータ54の中心が対向するとともに、ヒータヘッド35の底板部52とウエハWの表面との間が微小間隔(たとえば3mm)になるヒータ54の位置である。
【0051】
エッジ近接位置は、ウエハWの表面における周縁部に、平面視円形状のヒータ54の中心が対向するとともに、ヒータヘッド35の底板部52とウエハWの表面との間が微小間隔(たとえば3mm)になるヒータ54の位置である。
センター近接位置は、ウエハWの表面における回転中心(回転軸線A1上)に、平面視円形状のヒータ54の中心が対向するとともに、ヒータヘッド35の底板部52とウエハWの表面との間が微小間隔(たとえば3mm)になるヒータ54の位置である。
【0052】
図6は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、コンピュータ55を備えている。コンピュータ55は、CPU55Aと、記憶装置55D(レシピ記憶手段)とを備えている。記憶装置55Dには、レシピ55Bと、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cと、SC1用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Fとが格納されている。
【0053】
記憶装置55Dに記憶されているデータには、ウエハWに対する処理の内容(手順および条件等)が規定されたプロセスレシピのデータ(レシピ55B)と、ウエハWの回転速度とヒータ54の出力との対応関係を示すテーブル(SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55CおよびSC1用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55F)とが含まれる。
【0054】
SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cでは、SPM液の供給時において、ウエハWの回転速度の上昇に伴って、ヒータ54の出力が低下するような、ウエハWの回転速度とヒータ54の出力との対応関係が規定されている。より具体的には、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cには、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液に十分に熱が届くような、ウエハWの回転速度とヒータ54の出力との対応関係が規定されている。ウエハWの表面に供給されるSPM液の液膜の厚みは、ウエハWの回転速度に依存しており、また、ウエハWの回転速度が速いとSPM液の液膜は薄くなり、ウエハWの回転速度が遅いとSPM液の液膜は厚くなるのであるが、ウエハWの回転速度とヒータ54の出力との対応関係が、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cに規定されている対応関係であれば、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液に十分に熱が届かせることができる。
【0055】
また、SC1用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Fにも、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cと同様の趣旨に基づき、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSC1に十分に熱が届くような、ウエハWの回転速度とヒータ54の出力との対応関係が規定されている。
コンピュータ55には、回転駆動機構6、ヒータ54、揺動駆動機構36、昇降駆動機構37、第1液アーム揺動機構12、第2液アーム揺動機構29、硫酸バルブ18、過酸化水素水バルブ20、剥離液バルブ23、DIWバルブ27、SC1バルブ31、流量調節バルブ19,21等が制御対象として接続されている。
【0056】
レシピ入力操作部57は、ユーザによって操作されるキーボード、タッチパネルその他の入力インタフェースからなる。ユーザは、レシピ入力操作部57を操作することにより、記憶装置55Dに記憶されたデータを呼び出すことができる。また、ユーザは、レシピ入力操作部57を用いてレシピを作成し、当該レシピをレシピ55Bとして記憶装置55Dに登録することができる。
【0057】
図7は、本発明の第1実施形態に係るレジスト除去処理の第1処理例を示すフローチャートである。
図8は、主として、後述するSPM液膜形成工程およびSPM液膜加熱工程におけるCPU55Aによる制御内容を説明するためのタイムチャートである。
図9A〜
図9Cは、SPM液膜形成工程およびSPM液膜加熱工程を説明するための図解的な図である。
図10は、ヒータ54への電力の供給の制御を示すフローチャートである。
図11は、後述するSC1供給・ヒータ加熱工程を説明するためのタイムチャートである。
【0058】
以下、
図1A、
図1Bおよび
図6〜
図11を参照しつつ、レジスト除去処理の第1処理例について説明する。
レジスト除去処理の実行に先立って、まず、ユーザによるレシピ入力操作部57の操作が実行され、ウエハWの処理条件に関するレシピ55Bが決定される。以降、CPU55Aは、当該レシピ55Bに基づき、ウエハWの処理を順次実行する。
【0059】
CPU55Aは、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCR(
図1A参照)を制御して、処理室2内にイオン注入処理後のウエハWを搬入させる(ステップS1:ウエハW搬入)。ウエハWは、レジストをアッシングするための処理を受けていないものとする。ウエハWは、その表面を上方に向けた状態でウエハ保持機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、ヒータ54、剥離液ノズル4およびSC1ノズル25は、それぞれホームポジションに配置されている。
【0060】
ウエハ保持機構3にウエハWが保持されると、CPU55Aは、回転駆動機構6を制御し、ウエハWを回転開始させる(ステップS2)。ウエハWは予め定める第1回転速度まで上昇され、その第1回転速度に維持される。第1回転速度は、ウエハWの表面全域をSPM液でカバレッジ可能な速度であり、たとえば150rpmである。また、CPU55Aは、第1液アーム揺動機構12を制御して、剥離液ノズル4をウエハWの上方位置に移動させ、剥離液ノズル4をウエハWの回転中心(回転軸線A1)上に配置させる。また、CPU55Aは、硫酸バルブ18、過酸化水素水バルブ20および剥離液バルブ23を開いて、剥離液ノズル4からSPM液を吐出させる。
図8および
図9Aに示すように、剥離液ノズル4から吐出されたSPM液は、ウエハWの表面に供給する(ステップS31:SPM液膜形成工程)。
【0061】
ウエハWの表面に供給されたSPM液は、ウエハWの回転遠心力により、ウエハWの表面中央部からウエハWの表面周縁部に拡がる。これにより、SPM液は、ウエハWの表面の全域に行き渡り、ウエハWの表面の全域を覆うSPM液の液膜70が形成される。SPM液の液膜70の厚みとして、たとえば0.4mmを例示することができる。
また、CPU55Aは、揺動駆動機構36および昇降駆動機構37を制御して、ヒータ54を、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションからエッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)の上方に移動させ、その後、エッジ近接位置まで下降させた後、センター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて一定の揺動速度で一方向揺動させる。
【0062】
ステップS31のSPM液膜形成工程、および次に述べるステップS32のSPM液膜加熱工程を合せてステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程といい、このステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程を通じて、ヒータ54による赤外線の照射が行われるのであるが、ヒータ54の出力は、ウエハWの回転速度に対応する大きさに決定される。
図10に示すように、ステップS31のSPM液膜形成工程において、CPU55Aは、レジスト剥離処の進行状況を管理するためのタイマ(図示しない)を参照しつつ、現在、ヒータ54のオン期間中であるか否かを判断する(ステップS21)。
【0063】
ヒータ54のオン期間中である場合(ステップS21のYES)、CPU55Aは、レシピ55Bに記憶されているウエハWの回転速度と、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cとに基づいて、ヒータ54に供給すべき電力の大きさを決定する(ステップS22)。そして、決定された大きさの電力が、ヒータ54に供給される。このようなヒータ54を用いた赤外線照射により、ウエハWの表面上のSPM液の液膜を高温に昇温させることができ、これにより、表面に硬化層を有するレジストであっても、アッシングすることなく、ウエハWの表面から除去することが可能である。
【0064】
一方、ヒータ54がオン期間でないと判断される場合には(ステップS21でNO)、ヒータ54への電力の供給が行われない。このように、ヒータ54の出力は、レシピ55Bに記憶されているウエハWの回転速度に応じた出力に制御される。このとき、ステップS31のSPM液膜形成工程では、ウエハWの回転速度が比較的速い第1回転速度であるので、ウエハWの表面上には比較的薄いSPM液の液膜が形成される。したがって、CPU55Aは、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55C(
図6参照)に規定されたウエハWの回転速度とヒータ54の出力との対応関係から、ヒータ54の出力を比較的小さな第1出力(たとえば、最大出力の40%程度の出力)に制御する。
【0065】
当該第1出力は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液の液膜70に十分に熱が届くような出力である。そのため、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆にSPM液の液膜70が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ステップS31のSPM液膜形成工程において、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面からレジストを効率良く剥離することができる。
【0066】
SPM液の供給開始から予め定める液供給時間が経過すると、CPU55Aは、回転駆動機構6を制御して、ウエハWの回転を第1回転速度から第2回転速度に減速させる。第2回転速度は、たとえば、ウエハWの表面上にSPM液の液膜70よりも厚いSPM液の液膜80を保持可能な速度(1rpm〜30rpmの範囲で、たとえば15rpm)である。SPM液の液膜80の厚みとして、たとえば1.0mmを例示することができる。
【0067】
ウエハWの減速から予め定める時間が経過すると、CPU55Aは、
図8および
図9Bに示すように、硫酸バルブ18、過酸化水素水バルブ20および剥離液バルブ23を閉じて、剥離液ノズル4からのSPM液の供給を停止する。また、CPU55Aは、第1液アーム揺動機構12を制御して、SPM液の供給停止後の剥離液ノズル4をホームポジションに戻す。SPM液供給時間は、ウエハWの表面の全域を覆うSPM液の液膜70,80が形成されるまでに要する期間よりも長ければ足り、剥離液ノズル4からのSPM液の吐出流量やウエハWの回転速度(第1回転速度)によって異なるが、3秒〜30秒間の範囲で、たとえば15秒間である。
【0068】
また、CPU55Aは、ヒータ54による赤外線の照射を続行させる(ステップS32:SPM液膜加熱工程)。
このステップS32のSPM液膜加熱工程においても、ヒータ54の出力の大きさは、ウエハWの回転速度に基づいて決定される。具体的には、ステップS31のSPM液膜形成工程の場合と同様、ヒータ54のオン期間中には(
図10のステップS21でYES)、CPU55Aは、レシピ55Bに記憶されているウエハWの回転速度と、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cとに基づいて、ヒータ54に供給すべき電力を決定しており(
図10のステップS22)、決定された電力が、ヒータ54に供給される。このとき、ステップS32のSPM液膜加熱工程では、ウエハWの回転速度が第1回転速度よりも遅い第2回転速度であるので、ウエハWの表面上には比較的厚いSPM液の液膜が形成される。前述のように、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55C(
図6参照)では、ウエハWの回転速度の上昇に伴って、ヒータ54の出力が低下するような対応関係が規定されているので、ヒータ54の出力は第1出力よりも大きな第2出力(たとえば、最大出力の95%程度の出力)に制御される。
【0069】
当該第2出力は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液の液膜80に十分に熱が届くような出力である。そのため、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆にSPM液の液膜80が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ステップS32のSPM液膜加熱工程においても、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面からレジストを効率良く剥離することができる。
【0070】
ステップS32のSPM液膜加熱工程の開始直後、ヒータ54は、この実施形態では概ねミドル近接位置(
図5に実線で示す位置)に配置されている。そして、CPU55Aは、揺動駆動機構36の制御を継続して、ヒータ54を所定の揺動速度で、ミドル近接位置からセンター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて揺動させる。
ヒータ54がセンター近接位置に到達した後、所定の時間、当該センター近接位置でウエハWの加熱が継続される。ステップS32のSPM液膜加熱工程では、ヒータ54による赤外線の照射により、ウエハWのヒータヘッド35の底板部52に対向する部分が加熱されるとともに、当該部分に存在するSPM液の液膜80が加熱される。ステップS32のSPM液膜加熱工程は、液膜加熱処理時間(2秒〜90秒間の範囲で、たとえば約40秒間)の間が実行される。
【0071】
その後、ウエハWの回転速度が下げられてから、予め定める液膜加熱処理時間が経過すると、CPU55Aは、硫酸バルブ18および過酸化水素水バルブ20を閉じるとともに、ヒータ54を制御して、赤外線の放射を停止させる。また、CPU55Aは、揺動駆動機構36および昇降駆動機構37を制御して、ヒータ54をホームポジションに戻す。
そして、CPU55Aは、回転駆動機構6を制御して、ウエハWを所定の第3回転速度(300rpm〜1500rpmの範囲で、たとえば1000rpm)に加速するとともに、DIWバルブ27を開いて、DIWノズル24の吐出口からウエハWの回転中心付近に向けてDIWを供給する(ステップS4:中間リンス処理工程)。
【0072】
ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上をウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPM液がDIWによって洗い流される。DIWの供給が所定の中間リンス時間にわたって続けられると、DIWバルブ27が閉じられて、ウエハWの表面へのDIWの供給が停止される。
【0073】
次いで、
図11に示すように、CPU55Aは、ウエハWの回転速度を第3回転速度に維持しつつ、SC1バルブ31を開いて、SC1ノズル25からSC1をウエハWの表面に供給する(ステップS5:SC1供給・ヒータ加熱工程)。また、CPU55Aは、第2液アーム揺動機構29を制御して、第2液アーム28を所定角度範囲内で揺動させて、SC1ノズル25を、ウエハWの回転中心上と周縁部上との間で往復移動させる。これによって、SC1ノズル25からのSC1が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する。これにより、SC1は、ウエハWの表面の全域に行き渡り、ウエハWの表面の全域を覆うSC1の薄い液膜が形成される。
【0074】
また、CPU55Aは、ヒータ54を制御して赤外線の照射を開始する。ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程においても、ヒータ54の出力の大きさは、ウエハWの回転速度に基づいて決定される。具体的には、ステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程の場合と同様、ヒータ54のオン期間中には、CPU55Aは、レシピ55Bに記憶されているウエハWの回転速度と、SC1用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Fとに基づいて、ヒータ54に供給すべき電力を決定しており(
図10のステップS22参照)、決定された電力が、ヒータ54に供給される。ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程では、ウエハWの回転速度は、比較的に速い第3回転速度であるので、ヒータ54の出力は当該第3回転速度に応じた比較的小さな第3出力に制御される。当該第3出力は、ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSC1の液膜に十分に熱が届くような出力である。
【0075】
また、CPU55Aは、揺動駆動機構36および昇降駆動機構37を制御して、ヒータ54を、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションからエッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)の上方に移動させ、その後、エッジ近接位置まで下降させた後、センター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて一定の揺動速度で一方向揺動させる。なお、この場合、SC1ノズル25とヒータ54とが互いに干渉し合わないように、SC1ノズル25およびヒータ54のスキャンの態様が定められている。
【0076】
ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程では、ウエハWの表面の全域に、SC1がむらなく供給され、ウエハWの表面に付着したパーティクルを効率的に洗浄除去できる。また、ヒータ54によりSC1が加熱されるため、SC1は高活性化する。その結果、洗浄効率を著しく向上させることができる。
さらに、ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ヒータ54の出力が第3出力に制御されるので、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆にSC1の液膜が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面を洗浄することができる。
【0077】
なお、この実施形態では、ステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程中にウエハWの回転数は変更されず、そのため、SC1供給・ヒータ加熱工程中にヒータ54の出力が変更されることはない。しかしながら、SC1供給・ヒータ加熱工程中にウエハWの回転数が変更される場合は、この回転数の変更に応じて、ヒータ54の出力も変更される。
SC1の供給が所定のSC1供給時間にわたって続けられると、CPU55Aは、SC1バルブ31を閉じるとともに、第2液アーム揺動機構29を制御して、SC1ノズル25をホームポジションに戻す。また、ウエハWの回転速度が第3回転速度に維持された状態で、CPU55Aは、DIWバルブ27を開いて、DIWノズル24の吐出口からウエハWの回転中心付近に向けてDIWを供給する(ステップS6:最終リンス工程)。
【0078】
ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上をウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSC1がDIWによって洗い流される。
最終リンス工程の開始から所定時間が経過すると、CPU55Aは、DIWバルブ27を閉じて、ウエハWの表面へのDIWの供給を停止する。その後、CPU55Aは、回転駆動機構6を駆動して、ウエハWの回転速度を所定の高回転速度(たとえば1500rpm〜2500rpm)に上げて、ウエハWに付着しているDIWを振り切って乾燥されるスピンドライ処理が行われる(ステップS7)。
【0079】
ステップS7のスピンドライ処理によって、ウエハWに付着しているDIWが除去される。なお、ステップS4の中間リンス工程およびステップS6の最終リンス工程において、リンス液として、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、還元水(水素水)、磁気水などを採用することもできる。
スピンドライ処理が予め定めるスピンドライ処理時間にわたって行われると、CPU55Aは、回転駆動機構6を駆動して、ウエハ保持機構3の回転を停止させる。これにより、1枚のウエハWに対するレジスト除去処理が終了し、センターロボットCRによって、処理済みのウエハWが処理室2から搬出される(ステップS8)。
【0080】
以上のように、この実施形態によれば、ステップS31のSPM液膜形成工程、ステップS32のSPM液膜加熱工程およびSステップS5のSC1供給・ヒータ加熱工程の各工程では、ウエハWの回転速度に応じて、ヒータ54の出力が調整される。そのため、ヒータ54の出力を、ウエハWの表面上の処理液(SPM液やSC1)の液膜の厚みに応じた出力とすることができる。これにより、ウエハWの回転速度の変化に伴って処理液(SPM液やSC1)の液膜の厚みが変わったとしても、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆に処理液(SPM液やSC1)が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面に良好な処理を施すことができる。
【0081】
図12は、本発明の第1実施形態に係るレジスト除去処理の第2処理例を示すタイムチャートである。第2処理例が第1処理例と相違する点は、
図8に示すステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程に代えて、
図12に示すステップS33のSPM供給・ヒータ加熱工程を実行させる点である。その他の工程は、前述の第1処理例と同様であるので、第2処理例については、ステップS33のSPM供給・ヒータ加熱工程のみを説明する。
【0082】
ステップS33のSPM供給・ヒータ加熱工程では、第1処理例のステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程と同様、ウエハWの表面をSPM液の液膜で覆うべく、剥離液ノズル4からSPM液がウエハWの表面に供給され、かつヒータ54による赤外線の照射が行われるのであるが、赤外線照射の全期間にわたって、剥離液ノズル4からSPM液を供給し続けている。この点が、ステップS33のSPM供給・ヒータ加熱工程が、
図8に示すステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程と相違する点である。
【0083】
ステップS33のSPM供給・ヒータ加熱工程は、ステップS3のSPM供給・ヒータ加熱工程と同様、所定の期間(たとえば第1処理例における液供給時間に相当する期間。3秒〜30秒間の範囲で、たとえば15秒間)ウエハWを比較的速い速度(第4回転速度)で回転させ、その後、その速度よりも遅い第5速度で、所定の期間(たとえば第1処理例における液膜加熱処理時間に相当する期間。2秒〜90秒間の範囲で、たとえば約40秒間)ウエハWを回転させている。なお、第4回転速度は、ウエハWの表面全域をSPM液でカバレッジ可能な速度でよく、たとえば、前述の第1処理例の第1回転速度と同様の150rpmを例示できる。
【0084】
第2処理例において、ウエハWの回転速度が比較的速い第4回転速度であるときには、ヒータ54の出力は比較的小さな第4出力に制御される。ウエハWの回転速度が比較的速い第4回転速度であるとき、ウエハWの表面上には比較的薄いSPM液の液膜が形成されるが、第4出力は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液の液膜に十分に熱が届くようなヒータ54の出力である。
【0085】
ウエハWの回転速度が比較的遅い第5回転速度(たとえば、15rpm以上)であるときには、ヒータ54の出力は、第4出力より大きい第5出力に制御される。ウエハWの回転速度が比較的遅い第5回転速度に変更されると、SPM液の液膜はそれまでよりも厚くなる。当該第5出力は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面に保持されたSPM液の液膜のうち、境界付近の部分に十分に熱が届くようなヒータ54の出力である。
【0086】
なお、第5回転速度は、第4回転速度より遅く、かつ前述の第1処理例の第2回転速度よりも速い速度である。これにより、ウエハWの表面には、第4回転速度時におけるSPM液の液膜よりもより厚いSPM液の液膜が形成される。第5回転速度は、たとえば、ウエハWの表面上にSPM液の液膜を保持可能な速度である必要がある。
このように、ステップS33のSPM供給・ヒータ加熱工程を採用した処理例であっても、前述の第1処理例において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0087】
図13は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置101の電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態に係るコンピュータ155が前述の第1実施形態のコンピュータ55と異なる点は、SPM液用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Cに代えて、SPM液用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eを備える点、およびSC1用の回転速度−ヒータ出力対応テーブル55Fに代えて、SC1用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Gを備える点、である。その他の構成は、前述の第1実施形態に係る処理ユニット100と同様の構成である。
図13において、前述の第1実施形態の
図6に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
【0088】
SPM液用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eには、ウエハWの回転速度の減速に伴って、ヒータ54の移動速度を減速するような、ウエハWの回転速度と、ヒータ54の移動速度との対応関係が規定されている。SPM液用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eには、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液に十分に熱が届くような、ウエハWの回転速度とヒータ54の移動速度との対応関係が規定されている。
【0089】
ウエハWの表面に供給されるSPM液の液膜の厚みは、ウエハWの回転速度に依存している。したがって、ウエハWの回転速度が速いと、SPM液の液膜は薄くなり、ウエハWの回転速度が遅いと、SPM液の液膜は厚くなるのであるが、ヒータ54の出力が一定である場合、ウエハWの回転速度によっては、SPM液の液膜の所定部分に与えられる熱量が異なってくる。
【0090】
つまり、ヒータ54の移動速度を速くすれば、液膜の所定部分に与えられる熱量は比較的小さくなり、一方、ヒータ54の移動速度を遅くすれば、当該部分に与えられる熱量は比較的大きくなるのであるが、ウエハWの回転速度とヒータ54の移動速度との対応関係が、SPM液用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eに規定されている対応関係であれば、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液に十分に熱が届かせることができる。
【0091】
SC1用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Gにも、前述のSPM液用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eと同様の趣旨に基づき、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSC1に十分に熱が届くような、ウエハWの回転速度とヒータ54の移動速度との対応関係が規定されている。
図14は、本発明の第2実施形態に係るレジスト除去処理の第1処理例を示すフローチャートである。
図15は、主として、後述するSPM液膜形成工程およびSPM液膜加熱工程におけるCPU55Aによる制御内容を説明するためのタイムチャートである。
図16は、ヒータ54の移動速度の制御を示すフローチャートである。
図17は、後述するSC1供給・ヒータ加熱工程を説明するためのタイムチャートである。
【0092】
以下、
図1A、
図1Bおよび
図13〜
図17を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るレジスト除去処理の第1処理例について説明する。
レジスト除去処理の実行に先立って、まず、ユーザによるレシピ入力操作部57の操作が実行され、ウエハWの処理条件に関するレシピ55Bが決定される。以降、CPU55Aは、当該レシピ55Bに基づき、ウエハWの処理を順次実行する。
【0093】
CPU55Aは、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCR(
図1A参照)を制御して、処理室2内にイオン注入処理後のウエハWを搬入させる(ステップS11:ウエハW搬入)。ウエハWは、レジストをアッシングするための処理を受けていないものとする。ウエハWは、その表面を上方に向けた状態でウエハ保持機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、ヒータ54、剥離液ノズル4およびSC1ノズル25は、それぞれホームポジションに配置されている。
【0094】
ウエハ保持機構3にウエハWが保持されると、CPU55Aは、回転駆動機構6を制御し、ウエハWを回転開始させる(ステップS12)。ウエハWは、
図15に示すように、予め定める第6回転速度まで上昇され、その第6回転速度に維持される。第6回転速度は、ウエハWの表面全域をSPM液でカバレッジ可能な速度であり、たとえば前述の第1実施形態における第1処理例の第1回転速度(
図8参照)と同じ150rpmである。
【0095】
また、CPU55Aは、前述の第1実施形態の第1処理例と同様、第1液アーム揺動機構12を制御して、剥離液ノズル4をウエハWの上方位置に移動させ、剥離液ノズル4をウエハWの回転中心(回転軸線A1)上に配置させる。また、CPU55Aは、硫酸バルブ18、過酸化水素水バルブ20および剥離液バルブ23を開いて、剥離液ノズル4からSPM液をウエハWの表面に供給する(ステップS41:SPM液膜形成工程)。
【0096】
ウエハWの表面に供給されたSPM液は、ウエハWの回転遠心力により、ウエハWの表面中央部からウエハWの表面周縁部に拡がる。これにより、SPM液は、ウエハWの表面の全域に行き渡り、ウエハWの表面の全域を覆うSPM液の液膜が形成される。SPM液の液膜の厚みとして、たとえば0.4mmを例示することができる。
また、CPU55Aは、
図15に示すように、揺動駆動機構36および昇降駆動機構37を制御して、ヒータ54を、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションからエッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)の上方に移動させ、その後、エッジ近接位置まで下降させた後、センター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて予め定められた第1移動速度で一方向揺動させる。
【0097】
ステップS41のSPM液膜形成工程、および次に述べるステップS42のSPM液膜加熱工程を合せてステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程といい、このステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程を通じて、ヒータ54による赤外線の照射が行われる。この実施形態では、ヒータ54の出力は一定の値に固定されている。ヒータ54の出力は第6出力である。第6出力は、たとえば前述の第1実施形態における第1出力(
図8参照)よりも大きい出力である。
【0098】
より具体的に、ステップS41のSPM液膜形成工程において、CPU55Aは、
図16に示すように、前述の第1実施形態の第1処理例と同様、レジスト剥離処の進行状況を管理するためのタイマ(図示しない)を参照しつつ、現在、ヒータ54の移動期間中であるか否かを判断する(ステップS23)。
ヒータ54の移動期間中である場合(ステップS23のYES)、CPU55Aは、レシピ55Bに記憶されているウエハWの回転速度と、SPM用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eとに基づいて、ヒータアーム34の揺動速度を決定し、CPU55Aはその揺動速度となるように、揺動駆動機構36を制御する。つまり、ヒータ54の移動速度(ヒータアーム34の揺動速度)は通常等速であるが、このような制御により、ヒータ54の移動期間中に、ヒータ54の移動速度が変更されることになる。ヒータ54からの赤外線照射により、ウエハWの表面上のSPM液の液膜を高温に昇温させることができ、これにより、表面に硬化層を有するレジストであっても、アッシングすることなく、ウエハWの表面から除去することが可能である。
【0099】
一方、ヒータ54の移動期間でないと判断される場合には(ステップS23でNO)、CPU55Aによる揺動駆動機構36の制御は行われない。
このように、ステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程におけるヒータ54の移動速度は、レシピ55Bに記憶されているウエハWの回転速度に応じた移動速度に制御される。ステップS41のSPM液膜形成工程では、ウエハWの回転速度が比較的速い第6回転速度であるので、ウエハWの表面には比較的に薄いSPM液の液膜が形成される。したがって、CPU55Aは、SPM用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55E(
図13参照)に規定されたウエハWの回転速度とヒータ54の移動速度との対応関係から、ヒータ54の移動速度を比較的速い第1移動速度(たとえば5mm/min)に制御する。
【0100】
当該第1移動速度は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液の液膜全域に十分に熱を届かせることができるようなヒータ54の移動速度である。そのため、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆にSPM液の液膜が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ステップS41のSPM液膜形成工程において、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面からレジストを効率良く剥離することができる。
【0101】
SPM液の供給開始から予め定める液供給時間が経過すると、CPU55Aは、
図1Bおよび
図15に示すように、硫酸バルブ18、過酸化水素水バルブ20および剥離液バルブ23を閉じて、剥離液ノズル4からのSPM液の供給を停止する。また、CPU55Aは、第1液アーム揺動機構12を制御して、SPM液の供給停止後の剥離液ノズル4をホームポジションに戻す。SPM液供給時間は、ウエハWの表面の全域を覆うSPM液の液膜が形成されるまでに要する期間よりも長ければ足り、剥離液ノズル4からのSPM液の吐出流量やウエハWの回転速度(第6回転速度)によって異なるが、3秒〜30秒間の範囲で、たとえば15秒間である。
【0102】
また、CPU55Aは、回転駆動機構6を制御して、ウエハWの回転を第6回転速度から第7回転速度に減速させる。第7回転速度は、たとえば、ウエハWの表面への新たなSPM液の供給がなくても、ウエハWの表面上にSPM液の液膜よりも厚いSPM液の液膜を保持可能な速度(1rpm〜30rpmの範囲で、たとえば15rpm)である。このときのSPM液の液膜の厚みとして、たとえば1.0mmを例示することができる。
【0103】
また、CPU55Aは、ヒータ54による赤外線の照射を継続させた状態で、ウエハWの回転速度の変更に応じて、ヒータ54の移動速度を第1移動速度から第1移動速度よりも遅い第2移動速度(たとえば2.5mm/min)に減速させる(ステップS42:SPM液膜加熱工程)。
このステップS42のSPM液膜加熱工程においても、ウエハWの回転速度と、SPM用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eとに基づいて、ヒータ54の揺動速度を決定し、CPU55Aはその揺動速度となるように、揺動駆動機構36を制御する。より具体的には、ステップS42のSPM液膜加熱工程では、ウエハWの回転速度が第6回転速度よりも遅い第7回転速度であるので、ウエハWの表面には第6回転速度時よりも厚いSPM液の液膜が形成される。前述のように、SPM用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Eには、ウエハWの回転速度の減速に伴って、ヒータ54の移動速度を減速するような、ウエハWの回転速度と、ヒータ54の移動速度との対応関係が規定されているので、CPU55Aは、ヒータ54の移動速度を第1移動速度よりも遅い第2移動速度に制御する。
【0104】
当該第2移動速度は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液の液膜全域に十分に熱を届かせることができるようなヒータ54の移動速度である。そのため、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆にSPM液の液膜が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ステップS42のSPM液膜加熱工程においても、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面からレジストを効率良く剥離することができる。
【0105】
ステップS42のSPM液膜加熱工程の開始直後、ヒータ54は、この実施形態では概ねミドル近接位置(
図5に実線で示す位置)に配置されている。そして、CPU55Aは、揺動駆動機構36を制御して、ヒータ54を第2移動速度でミドル近接位置からセンター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて揺動させる。
ヒータ54がセンター近接位置に到達した後、所定の時間、当該センター近接位置でウエハWの加熱が継続される。ステップS42のSPM液膜加熱工程では、ヒータ54による赤外線の照射により、ウエハWのヒータヘッド35の底板部52に対向する部分が加熱されるとともに、当該部分に存在するSPM液の液膜が加熱される。ステップS42のSPM液膜加熱工程は、液膜加熱処理時間(2秒〜90秒間の範囲で、たとえば約40秒間)の間が実行される。
【0106】
その後、ウエハWの回転速度が下げられてから、予め定める液膜加熱処理時間が経過すると、CPU55Aは、硫酸バルブ18および過酸化水素水バルブ20を閉じるとともに、ヒータ54を制御して、赤外線の放射を停止させる。また、CPU55Aは、揺動駆動機構36および昇降駆動機構37を制御して、ヒータ54をホームポジションに戻す。
そして、CPU55Aは、
図15に示すように、回転駆動機構6を制御して、ウエハWを所定の第8回転速度に加速するとともに、DIWバルブ27を開いて、DIWノズル24の吐出口からウエハWの回転中心付近に向けてDIWを供給する(ステップS14:中間リンス処理工程)。第8回転速度は、300rpm〜1500rpmの範囲で、たとえば1000rpmである。
【0107】
ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上をウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPM液がDIWによって洗い流される。DIWの供給が所定の中間リンス時間にわたって続けられると、DIWバルブ27が閉じられて、ウエハWの表面へのDIWの供給が停止される。
【0108】
次いで、CPU55Aは、
図17に示すように、ウエハWの回転速度を第8回転速度に維持しつつ、SC1バルブ31を開いて、SC1ノズル25からSC1をウエハWの表面に供給する(ステップS15:SC1供給・ヒータ加熱工程)。また、CPU55Aは、第2液アーム揺動機構29を制御して、第2液アーム28を所定角度範囲内で揺動させて、SC1ノズル25を、ウエハWの回転中心上と周縁部上との間で往復移動させる。これによって、SC1ノズル25からのSC1が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する。これにより、SC1は、ウエハWの表面の全域に行き渡り、ウエハWの表面の全域を覆うSC1の薄い液膜が形成される。
【0109】
また、CPU55Aは、ヒータ54を制御して赤外線の照射を開始する。ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程においても、ヒータ54の出力の大きさは第6出力に固定されている。
また、CPU55Aは、前述のステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程と同様、揺動駆動機構36および昇降駆動機構37を制御して、ヒータ54を、ウエハ保持機構3の側方に設定されたホームポジションからエッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)の上方に移動させる。なお、この場合、SC1ノズル25とヒータ54とが互いに干渉し合わないように、SC1ノズル25およびヒータ54のスキャンの態様が定められている。
【0110】
ヒータ54をエッジ近接位置の上方に移動させた後、CPU55Aは、ヒータ54をエッジ近接位置まで下降させて、センター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて予め定めた第3移動速度で一方向揺動させる。
このステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程においても、ウエハWの回転速度と、SC1用の回転速度−ヒータ移動速度対応テーブル55Gとに基づいて、ヒータ54の揺動速度を決定し、CPU55Aはその揺動速度となるように、揺動駆動機構36を制御する。ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程では、ウエハWの回転速度は第8回転速度で一定であるので、ヒータ54の移動速度は、ウエハWの回転速度に応じた一定の第3移動速度に制御される。
【0111】
当該第3移動速度は、ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSC1の液膜に十分に熱が届くようなヒータ54の移動速度である。
ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程では、ウエハWの表面の全域に、SC1がむらなく供給され、ウエハWの表面に付着したパーティクルを効率的に洗浄除去できる。また、ヒータ54によりSC1が加熱されるため、SC1は高活性化する。その結果、洗浄効率を著しく向上させることができる。
【0112】
さらに、ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ヒータ54の移動速度が第3移動速度に制御されるので、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆にSC1の液膜が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面を洗浄することができる。
【0113】
なお、この実施形態では、ステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程中にウエハWの回転数は変更されず、そのため、SC1供給・ヒータ加熱工程中にヒータ54の出力が変更されることはない。しかしながら、SC1供給・ヒータ加熱工程中にウエハWの回転数が変更される場合は、この回転数の変更に応じて、ヒータ54の出力も変更される。
SC1の供給が所定のSC1供給時間にわたって続けられると、CPU55Aは、前述の第1実施形態におけるステップS6の最終リンス工程、ステップS7の乾燥工程およびステップS8のウエハW搬出と同様の、ステップS16の最終リンス工程、ステップS17の乾燥工程およびステップS18のウエハW搬出を行う。
【0114】
以上のように、この実施形態によれば、ステップS41のSPM液膜形成工程、ステップS42のSPM液膜加熱工程およびステップS15のSC1供給・ヒータ加熱工程の各工程では、ヒータ54は、揺動駆動機構36により、ウエハWの表面に沿って移動させられる。そして、ヒータ54の移動速度は、ウエハWの回転速度に応じて調整される。そのため、ヒータ54の移動速度を、ウエハWの表面上の液膜の厚みに応じた移動速度とすることができる。つまり、ヒータ54の移動速度を速くすることにより、処理液(SPM液やSC1)の液膜の所定部分に与えられる熱量を比較的小さくすることができ、一方、ヒータ54の移動速度を遅くすることにより、当該部分に与えられる熱量を比較的大きくすることができる。したがって、ウエハWの回転速度の変化に伴って処理液(SPM液やSC1)の液膜の厚さが変わったとしても、ウエハWの表面が過度に加熱されたり、逆に処理液(SPM液やSC1)が十分に昇温されなかったりというようなことがない。その結果、ウエハWの表面にダメージを与えることなく、ウエハWの表面に、ヒータ54を用いた良好な処理を施すことができる。
【0115】
図18は、本発明の第2実施形態に係るレジスト除去処理の第2処理例を示すタイムチャートである。第2実施形態において、第2処理例が第1処理例と相違する点は、
図15に示すステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程に代えて、
図18に示すステップS43のSPM供給・ヒータ加熱工程(
図18参照)を実行させる点である。その他の工程は、前述の第2実施形態の第1処理例と同様であるので、第2処理例については、ステップS43のSPM供給・ヒータ加熱工程のみを説明する。
【0116】
ステップS43のSPM供給・ヒータ加熱工程では、第1処理例のステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程と同様、ウエハWの表面をSPM液の液膜で覆うべく、剥離液ノズル4からSPM液がウエハWの表面に供給され、かつヒータ54による赤外線の照射が行われるのであるが、赤外線照射の全期間にわたって、剥離液ノズル4からSPM液を供給し続けている。この点が、ステップS43のSPM供給・ヒータ加熱工程が、
図15に示すステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程と相違する点である。
【0117】
ステップS43のSPM供給・ヒータ加熱工程は、ステップS13のSPM供給・ヒータ加熱工程と同様、所定の期間(たとえば第1処理例における液供給時間に相当する期間。3秒〜30秒間の範囲で、たとえば15秒間)ウエハWを比較的速い速度(第9回転速度)で回転させ、その後、その速度よりも遅い第10回転速度で、所定の期間(たとえば第1処理例における液膜加熱処理時間に相当する期間。2秒〜90秒間の範囲で、たとえば約40秒間)ウエハWを回転させている。なお、第9回転速度は、ウエハWの表面全域をSPM液でカバレッジ可能な速度でよく、たとえば、前述の第1処理例の第6回転速度と同様の150rpmを例示できる。
【0118】
第2処理例において、ウエハWの回転速度が比較的速い第9回転速度であるときには、ヒータ54の移動速度は、比較的に速い第3移動速度に制御される。ウエハWの回転速度が比較的速い第9回転速度であるとき、ウエハWの表面上には比較的薄いSPM液の液膜が形成されるが、第3移動速度は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面との境界付近のSPM液の液膜に十分に熱が届くようなヒータ54の移動速度である。
【0119】
ウエハWの回転速度が比較的遅い第10回転速度(たとえば、15rpm以上)であるときには、ヒータ54の移動速度は、第3移動速度より遅い第4移動速度に制御される。ウエハWの回転速度が比較的遅い第10回転速度に変更されると、SPM液の液膜はそれまでよりも厚くなる。当該第4移動速度は、ウエハWの表面にダメージを与えず、かつウエハWの表面に保持されたSPM液の液膜のうち、境界付近の部分に十分に熱が届くようなヒータ54の移動速度である。
【0120】
なお、第10回転速度は、第9回転速度より遅く、かつ前述の第1処理例の第7回転速度よりも速い速度である。これにより、ウエハWの表面には、第9回転速度時におけるSPM液の液膜よりもより厚いSPM液の液膜が形成される。第10回転速度は、たとえば、ウエハWの表面上にSPM液の液膜を保持可能な速度である必要がある。
このように、ステップS43のSPM供給・ヒータ加熱工程を採用した処理例であっても、前述の第1処理例において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0121】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、記憶装置55Dに、ウエハWの回転速度、ヒータ54の出力、およびヒータ54の移動速度の3つの対応関係が規定された回転速度−ヒータ出力−ヒータ移動速度対応テーブルが格納されており、当該テーブルを参照しながら、CPU55Aは、ウエハWの回転速度に基づいて、ヘッドの出力と、ヘッドの移動速度(ヒータアーム34の揺動速度)とをそれぞれ決定(変更)するようにしてもよい。
【0122】
また、ステップS3,S13,S33,S43のSPM供給・ヒータ加熱工程、およびステップS5,S15のSC1供給・ヒータ加熱工程において、ヒータ54を、エッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)からセンター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)に向けて一定の揺動速度で一方向揺動させる例について説明したが、エッジ近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)と、センター近接位置(
図5に二点鎖線で示す位置)との間を一定の揺動速度で往復するように揺動させてもよい。また、この場合において、往路と復路とで異なる揺動速度でヒータ54を揺動させてもよい。さらに、この場合において、記憶装置55Dには、往路と復路とで揺動速度が異なるように規定された回転速度−ヒータ移動速度対応テーブルが格納されていてもよい。
【0123】
また、赤外線ランプ38として、1つの円環状ランプを備えるもの例に挙げたが、これに限られずに、同心円状の複数の円環状ランプを備えるものとすることもできる。また、赤外線ランプ38として、水平面に沿って互いに平行に配置された複数本の直線状ランプを備えることもできる。
なお、前述の各実施形態では、ウエハWにレジスト除去処理を施す場合を例に挙げて説明したが、本発明は、リン酸エッチング処理などに代表されるエッチング処理にも適用することができる。この場合、リン酸水溶液やふっ酸水溶液のようなエッチング液や、SC1やSC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水混合液))などの洗浄液用薬液を処理液として採用できる。
【0124】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。