特許第6222826号(P6222826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222826
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】立坑構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/04 20060101AFI20171023BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20171023BHJP
   E04G 21/28 20060101ALI20171023BHJP
   E21D 1/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   E04H15/04
   E04H15/54
   E04G21/28 B
   E21D1/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-227783(P2013-227783)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86629(P2015-86629A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】生井 康丈
(72)【発明者】
【氏名】猪口 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】道嶋 弘志
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−011096(JP,A)
【文献】 特開2010−196292(JP,A)
【文献】 特開2000−145354(JP,A)
【文献】 特開平06−330638(JP,A)
【文献】 特開昭61−256987(JP,A)
【文献】 米国特許第05787914(US,A)
【文献】 特開2008−308864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/00−15/64
E04G 21/28
E21D 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を上から覆うテントシートが取り付けられた立坑の構造であって、
前記立坑の床躯体には、当該立坑の内壁面に沿って立上がり鉄筋がダブル配筋され、
当該床躯体のうち内側の立上がり鉄筋と外側の立上がり鉄筋との間には、止水板が打ち込まれており、
前記テントシートは、防水加工された略円錐形の可撓性を有するシート部材と、当該シート部材の頂部に設けられた環状の吊り部材と、前記シート部材の裏面に設けられて当該シート部材の頂部から外縁に向かって放射状に延びる補強ベルトと、を備え
前記シート部材の頂部には、少なくとも2本の紐状部材が取り付けられ、当該紐状部材は、前記立坑の内壁面の互いに対向する位置に固定され、
前記シート部材の外縁には、所定間隔おきに第2の紐状部材が取り付けられており、当該第2の紐状部材は、前記立上がり鉄筋の外側の鉄筋に固定されていることを特徴とする立坑構造。
【請求項2】
前記シート部材は、展開された状態で扇形状であり、
当該シート部材には、当該扇形状のシート部材の弦同士を接合する接合部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載の立坑構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テントシートに関する。詳しくは、立坑内を上から覆うテントシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、雨天時にコンクリートを打設すると、コンクリート表面のセメント成分などが雨で流されて、コンクリートの品質が低下する。そこで、従来より、コンクリート打設箇所を覆うテントシートが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このテントシートは、4本の傘骨組み部材と、これら傘骨組み部材に連結され傘骨組み部材を開閉させる開閉機構と、傘骨組み部材の全体に亘って被せられた防水シートと、を備える。
このテントシートをクレーンで吊り上げて、コンクリート打設箇所の上に配置し、開閉装置を駆動して防水シートを開いて、コンクリート打設箇所を覆う。これにより、雨天時であっても、コンクリートの品質が低下するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10‐266578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のテントシートでは、大掛かりな開閉機構が必要となるため、テントシートの製作コストがかかる、という問題があった。また、コンクリート打設現場では、コンクリートが飛散して開閉機構に付着し、開閉機構を繰り返し使用することが困難になる、という問題があった。
【0006】
本発明は、製作容易でかつ繰り返し使用できるテントシートが取り付けられた立坑構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の立坑構造は、内部を上から覆うテントシート(例えば、後述のテントシート10)が取り付けられた立坑(例えば、後述の立坑1)の構造であって、防水加工された略円錐形の可撓性を有するシート部材(例えば、後述のシート部材20)と、当該シート部材の頂部に設けられた環状の吊り部材(例えば、後述の吊り部材30)と、前記シート部材の裏面に設けられて当該シート部材の頂部から外縁に向かって放射状に延びる補強ベルト(例えば、後述の補強ベルト40)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、可撓性を有するシート部材を用いてテントシートを構成したので、テントシートの頂部を立坑の内壁面から吊り下げ支持するとともに、このテントシートの外縁を施工箇所の周囲に固定することで、テントシートを拡げて固定できる。よって、従来のようなシートを開閉する開閉装置が不要となるので、簡易な構造であり、製作容易でかつ繰り返し使用できる。
また、吊り部材にクレーンのフックを引っ掛けて、立坑の内部に吊り下ろすことで、テントシートを容易に施工箇所まで運搬できる。
また、シート部材を補強ベルトで裏打ちしたので、シート部材の耐久性を向上できる。
【0009】
請求項2に記載の立坑構造は、前記シート部材は、展開された状態で扇形状であり、当該シート部材には、当該扇形状のシート部材の弦同士を接合する接合部材(例えば、後述の面ファスナ24A、24B)が設けられることを特徴とする。
【0010】
接合部材としては、面ファスナや紐が挙げられる。
この発明によれば、布状の部材を扇形状に加工してシート部材とし、この扇形状のシート部材の弦同士を接合部材で接合するだけで、シート部材を形成できるので、テントシートをさらに容易に製作できる。
【0011】
請求項に記載の立坑構造は、前記シート部材の頂部には、少なくとも2本の紐状部材(例えば、後述の紐状部材50)が取り付けられ、前記シート部材の外縁には、所定間隔おきに第2の紐状部材(例えば、後述の第2の紐状部材62)が取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、シート部材の頂部に紐状部材を取り付けたので、この紐状部材を用いて、テントシートの頂部を容易に吊り下げ支持できる。
また、シート部材の外縁に所定間隔おきに第2の紐状部材を取り付けたので、これら第2の紐状部材を用いて、テントシートの外端を容易に固定できる。
【0013】
請求項に記載の立坑構造は、前記立坑には、内壁面(例えば、後述の内壁面2)に沿って立上がり鉄筋(例えば、後述の立上がり鉄筋4)がダブル配筋され、当該立上がり鉄筋の内側の鉄筋(例えば、後述の内側の鉄筋5)と外側の鉄筋(例えば、後述の外側の鉄筋6)との間には、止水板(例えば、後述の止水板7)が打ち込まれており、前記第2の紐状部材は、前記立上がり鉄筋の外側の鉄筋に固定されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、第2の紐状部材を立上がり鉄筋の外側の鉄筋に固定したので、テントシートが外側の鉄筋の近傍まで延びて、内側の鉄筋を覆うことになる。内側の鉄筋と外側の鉄筋との間には、止水板が打ち込まれているので、テントシート上の雨水は、テントシートの外縁から落下して、止水板の外側に流れ込むので、止水板の内側が浸水するのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可撓性を有するシート部材を用いてテントシートを構成したので、テントシートの頂部を立坑の内壁面から吊り下げ支持するとともに、このテントシートの外縁を施工箇所の周囲に固定することで、テントシートを拡げて固定できる。よって、従来のようなシートを開閉する開閉装置が不要となるので、簡易な構造であり、製作容易でかつ繰り返し使用できる。また、吊り部材にクレーンのフックを引っ掛けて、立坑の内部に吊り下ろすことで、テントシートを容易に施工箇所まで運搬できる。また、シート部材を補強ベルトで裏打ちしたので、シート部材の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るテントシートが取り付けられた立坑の側断面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1の破線Bで囲まれた部分の拡大図である。
図4】前記実施形態に係るテントシートの展開図である。
図5】前記実施形態に係るテントシートの外縁部分の拡大平面図である。
図6】前記実施形態に係るテントシートの取り付け方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るテントシート10が取り付けられた立坑1の側断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1の破線Bで囲まれた部分の拡大図である。
立坑1は、地中で略鉛直に延びる円筒形状であり、内壁面2で囲まれている。この立坑1の内側の下端面には、鉄筋コンクリート造の床躯体3が構築されており、この床躯体3の外周つまり内壁面2に沿って、立上がり鉄筋4が設けられている。
【0018】
立上がり鉄筋4は、内側の鉄筋5と外側の鉄筋6とがダブル配筋されている。内側の鉄筋5と外側の鉄筋6との間には、止水板7が打ち込まれている。
【0019】
テントシート10は、円錐形状であり、立坑1内の立上がり鉄筋4に囲まれた部分を施行箇所として上から覆うものである。
このテントシート10は、防水加工された略円錐形のシート部材20と、このシート部材20の頂部に設けられた環状の吊り部材30と、シート部材20の裏面に設けられてシート部材20の頂部から外縁に向かって放射状に延びる補強ベルト40と、を備える。
【0020】
シート部材20の頂部には、2本の紐状部材50が取り付けられている。これら紐状部材50は、立坑1の内壁面2の互いに対向する位置に固定されている。
また、シート部材20の外縁には、所定間隔おきに第2の紐状部材62が取り付けられている(図5参照)。これら第2の紐状部材62は、立上がり鉄筋4の外側の鉄筋6に固定されている。
【0021】
これによりテントシート10の上の雨水は、図3中矢印で示すように、シート部材20の外縁から落下して、止水板7の外側に流れ込むようになっている。
【0022】
図4は、テントシート10の展開図である。
シート部材20は、可撓性を有する布状の部材を扇形状に切断加工したものである。
である。シート部材20の弦21A、21Bには、接合部材としての面ファスナ24A、24Bが設けられる。この面ファスナ24A、24B同士を接合することで、シート部材20が円錐状となる。そして、シート部材20の中心22は、円錐の頂部となり、シート部材20の弧23は、円錐の外縁となる。
【0023】
図5は、テントシート10の外縁部分の拡大平面図である。
シート部材20の弧23には、所定間隔おきに貫通孔60が設けられ、これら貫通孔60には、それぞれ、ハトメ61が取り付けられて、第2の紐状部材62が取り付けられている。
【0024】
上述の吊り部材30および紐状部材50は、シート部材20の中心22に取り付けられている。
また、補強ベルト40は、可撓性を有する布状の直線状の部材であり、シート部材20の中心22から弧23に向かって放射状に延びている。
【0025】
以上のテントシート10を製作する手順は、以下のようになる。
まず、布状の部材を扇形状に切断加工してシート部材20を形成し、面ファスナ24A、24Bを取り付ける。次に、このシート部材20に貫通孔60を設けてハトメ61を取り付ける。次に、吊り部材30、紐状部材50、および第2の紐状部材62を取り付ける。その後、この扇形状のシート部材20の弦同士を面ファスナ24A、24Bで接合する。
【0026】
以上のテントシート10を取り付ける際は、図6に示すように、テントシート10の吊り部材30をクレーンのフック31に引っ掛けて、立坑1の内部に吊り下ろす。その後、図1に示すように、2本の紐状部材50を立坑1の内壁面2に取り付けるとともに、第2の紐状部材62を立上がり鉄筋4の外側の鉄筋6に結んで固定する。
【0027】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)可撓性を有するシート部材20を用いてテントシート10を構成したので、テントシート10の頂部を立坑1の内壁面2から吊り下げ支持するとともに、このテントシートの外縁を立坑1の立上がり鉄筋4に固定することで、テントシートを拡げて固定できる。よって、従来のようなシートを開閉する開閉装置が不要となるので、簡易な構造であり、製作容易でかつ繰り返し使用できる。
【0028】
また、吊り部材30にクレーンのフック31を引っ掛けて、立坑1の内部に吊り下ろすことで、テントシート10を容易に施工箇所まで運搬できる。
また、シート部材20を補強ベルト40で裏打ちしたので、シート部材20の耐久性を向上できる。
【0029】
(2)布状の部材を扇形状に加工してシート部材20とし、この扇形状のシート部材20の弦21A、21B同士を面ファスナ24A、24Bで接合するだけで、シート部材20を形成できるので、テントシート10をさらに容易に製作できる。
【0030】
(3)シート部材20の頂部に紐状部材50を取り付けたので、この紐状部材50を用いて、テントシートの頂部を容易に吊り下げ支持できる。
また、シート部材20の外縁に所定間隔おきに第2の紐状部材62を取り付けたので、これら第2の紐状部材62を用いて、テントシートの外端を容易に固定できる。
【0031】
(4)第2の紐状部材62を立上がり鉄筋4の外側の鉄筋6に固定したので、テントシート10が外側の鉄筋6の近傍まで延びて、内側の鉄筋5を覆うことになる。内側の鉄筋5と外側の鉄筋6との間には、止水板7が打ち込まれているので、テントシート10上の雨水は、テントシート10の外縁から落下して、止水板7の外側に流れ込むので、止水板7の内側の施工箇所が浸水するのを防止できる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…立坑
2…内壁面
3…床躯体
4…立上がり鉄筋
5…内側の鉄筋
6…外側の鉄筋
7…止水板
10…テントシート
20…シート部材
21A、21B…弦
22…中心
23…弧
24A、24B…面ファスナ(接合部材)
30…吊り部材
31…フック
40…補強ベルト
50…紐状部材
60…貫通孔
61…ハトメ
62…第2の紐状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6