(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明に係る撮像装置1の一実施の形態を示す断面図である。また、
図2は、撮像装置1の分解斜視図である。
図1に示すように、撮像装置1は、レンズホルダ240が保持される筐体200、撮像素子100を搭載する回路基板110、回路基板110が固定されるプレート120、軸ずれ低減部材40、高さ調整部材500,510,520(
図2参照)を備えている。なお、
図2の分解斜視図ではレンズホルダ240の図示を省略した。
【0009】
レンズホルダ240には撮影用のレンズ250が設けられており、そのレンズホルダ240は筐体200に形成されたネジ穴210に装着される。レンズホルダ240の光軸方向位置を調節することにより、ピント合わせが行われる。回路基板110が固定されたプレート120は3つのネジ300(
図2参照)により筐体200に固定される。
図2に示すように、プレート120には、各ネジ300が貫挿される貫通孔130が形成されている。
【0010】
撮像素子100の撮像面は、プレート120の回路基板固定面に対して必ずしも平行となっていない。その場合、撮像素子100の撮像面はレンズ250の光軸Jに対して垂直になっていない。
図1に示す例ではzx平面内において角度θだけ傾いているが、一般的には、撮像面の法線と光軸J(z軸)の成す角度と、法線とx軸の成す角度とで表される。
【0011】
高さ調整部材500〜520は撮像素子100の配置を調整する部材であり、撮像素子100の撮像面が光軸Jに対して垂直になるように用いられている。例えば、撮像面の傾き角度を実測し、撮像面が光軸Jに対して垂直となるような高さ調整部材500〜520を予め用意しておく。各高さ調整部材500〜520にはネジ固定用の貫通孔(不図示)がそれぞれ形成されており、プレート120を筐体200に固定する際に、各ネジ固定部のプレート120と筐体200との間に配置される。
【0012】
図2に示したとおり、ネジ固定部は3箇所あるので、各々の箇所に設けた高さ調整部材500〜520の厚さを調整することで各方向の傾きに対応できる。ここで、組立の作業性を考慮していずれか1箇所を固定の厚みにしても傾きに対して対応可能であり、固定した箇所の高さ調整部材は筐体200と一体にしても良い。
【0013】
図3は、軸ずれ低減部材40を説明する図である。軸ずれ低減部材40は、
図3(a)に示すように凹曲面部材40aと凸曲面部材40bとから成る。凹曲面部材40aは柱状部材であって、軸芯には貫通孔420が形成されている。凹曲面部材40aの図示左側の端面は平面400となっており、図示右側の端面は凹曲面410となっている。凸曲面部材40bは柱状部材であって、軸芯には貫通孔450が形成されている。凸曲面部材40bの図示右側の端面は平面430となっており、図示左側の端面は凸曲面440となっている。
図3に示す例では貫通孔420,450の径寸法を同一としているが、同一でなくても良い。
【0014】
軸ずれ低減部材40は、
図3(b)に示すように、凹曲面部材40aの凹曲面410と凸曲面部材40bの凸曲面440とが当接するように配置される。
図3(b)に示す配置では、凹曲面410と凸曲面440とは正対しており、貫通孔420の軸と貫通孔450の軸とが一致している。ここでは、貫通孔420,450の直径は同一径としている。
【0015】
凹曲面410と凸曲面440とは摺動面を構成しており、凹曲面部材40aに対して凸曲面部材40bを摺動移動させることで、凹曲面部材40aの平面400に対して凸曲面部材40bの平面430の角度を自由に調整することができる。
図3に示す例では、凸曲面440と凹曲面410とは同一曲率(すなわち同一半径r)の球面の一部を成している。
図3(c)に示すように、凹曲面部材40aと凸曲面部材40bとは、凹曲面410の中心Oに関して相対的に摺動移動することができ、このように互いに斜めに当接する場合でも面接触が維持される。
【0016】
図1のネジ300による固定部を見ると、ネジ300の座面とプレート120との間に配置されている軸ずれ低減部材40は、ネジ300の座面側に凸曲面部材40bが配置されている。凸曲面部材40bの平面430がネジ300の座面と接触し、凹曲面部材40aの平面400がプレート120と接触している。一方、プレート120と筐体200との間に配置されている軸ずれ低減部材40の場合には、プレート120側に凸曲面部材40bが配置されている。この場合、凸曲面部材40bの平面430がプレート120と接触し、凹曲面部材40aの平面400が高さ調整部材500の端面と接触している。
【0017】
上述したように、
図3に示した軸ずれ低減部材40の場合には、凸曲面440と凹曲面410とは同一曲率(すなわち同一半径r)の球面の一部を成し、互いに相補形状となっている。そのため、凹曲面部材40aと凸曲面部材40bとは相対的に摺動移動するだけで、相互の間で位置ずれすることはない。ただし、必ずしも厳密な相補形状とする必要はない。例えば、
図4(a)に示す軸ずれ低減部材40では、凹曲面410を構成する球面の半径r1は、凸曲面440を構成する球面の半径r2よりも大きく設定されている。この場合も、
図4(b)に示すような摺動移動が可能である。
【0018】
上述したように、高さ調整部材500〜520を用いる場合、高さ調整部材500〜520の厚さが異なる場合にはプレート120が筐体200に対して傾くことになる。このような状況において上述した軸ずれ低減部材40を使用しない場合(
図5(a)参照)には、プレート120の面に対してネジ300の座面が傾き、ネジ300の座面はある一点でプレート120と接触することになる。そのため、ネジ300を締結する際にプレート120の位置がずれ易くなる。
図5(a)に示す例では、ネジ300を締め付けるとプレート120が矢印方向に移動する。その結果、撮像素子100は光軸方向および光軸に対して垂直方向に位置ずれしてしまう。
【0019】
ここでは、撮像素子100がプレート120に対して傾いていて、それを調整するために高さ調整部材500〜520の厚さが異なる場合について説明したが、高さ調整部材500〜520の厚さが同じ場合でも、寸法公差等により筐体200に対してプレート120が傾斜する場合がある。このような場合にも、プレート120が移動して撮像素子100に上述したような位置ずれが発生してしまう。
【0020】
一方、
図5(b)に示すように軸ずれ低減部材40を使用した場合、ネジ300の座面とプレート120との間に軸ずれ低減部材40を配置することで、ネジ300の座面と凸曲面部材40bの平面430(
図3参照)とが面接触し、凹曲面部材40aの平面400(
図3参照)とプレート120の図示右側の面とが面接触する。さらに、プレート120と高さ調整部材520との間に軸ずれ低減部材40を配置することで、凸曲面部材40bの平面430(
図3参照)とプレート120の図示左側の面とが面接触し、凹曲面部材40aの平面400(
図3参照)と高さ調整部材520の端面とが面接触する。その結果、ネジ締めの際に発生するプレート120の位置ずれを低減できる。
【0021】
軸ずれ低減部材40は高さ調整部材500〜520とプレート120の間あるいはプレート120とネジ300の座面の間のどちらか一方に設置するだけでも効果は得られるが、両方の箇所に設置することがより好ましい。そうすることで、プレート120の変形や不要な応力が加わらないため、撮像素子100の位置の経時変化を低減することができる。
【0022】
(軸ずれ低減部材40の配置の変形例)
図1は軸ずれ低減部材40の配置の一例を示したものであり、様々な配置例が可能である。
図6(a)に示す例では、プレート120のネジ側の面に設けられる軸ずれ低減部材40については、ネジ300の座面側に凹曲面部材40aを配置し、プレート120側に凸曲面部材40bを配置した。同様に、プレート120と高さ調整部材500との間に配置される軸ずれ低減部材40については、プレート120側に凹曲面部材40aを配置し、高さ調整部材500側に凸曲面部材40bを配置した。
【0023】
また、
図6(b)に示す例では、プレート120のネジ側の面に設けられる軸ずれ低減部材40については
図6(a)と同一配置であるが、プレート120と高さ調整部材500との間に配置される軸ずれ低減部材40については、プレート120側に凸曲面部材40bを配置し、高さ調整部材500側に凹曲面部材40aを配置した。
図6のように凹曲面部材40aおよび凸曲面部材40bの内のいずれをプレート120側に配置しても、
図5に示す配置と同様の効果を奏することができる。
【0024】
図7(a)は、
図5(b)に示す構成において、プレート120と高さ調整部材500との間に配置される軸ずれ低減部材40の凹曲面部材40aを、高さ調整部材500と一体に形成した場合を示す。
図7(b)は、
図6(b)に示す構成において、プレート120の高さ調整部材500側に配置される軸ずれ低減部材40については、凹曲面部材40aを高さ調整部材500と一体に形成すると共に凸曲面部材40bをプレート120と一体に形成し、プレート120のネジ300の座面側に配置される軸ずれ低減部材40については、凸曲面部材40bをプレート120と一体に形成した場合を示す。
【0025】
また、
図8(a)に示す例では、プレート120の高さ調整部材500側に配置される軸ずれ低減部材40については、凸曲面部材40bを高さ調整部材500と一体に形成し、プレート120のネジ300の座面側に配置される軸ずれ低減部材40については、凸曲面部材40bをネジ300の座面に一体に形成した。いずれの場合も、軸ずれ低減部材40を構成する凹曲面部材40aおよび凸曲面部材40bの少なくとも一方を、対向する部材(高さ調整部材500、プレート120、ネジ300の座面)に一体に形成するようにした。このような構成とすることで、部品点数の削減を図ることができ、組立て作業の効率化を図ることができる。図示は省略するが、凹曲面部材40aをプレート120と一体化する場合には、プレート120の表面から窪むように
図3の凹曲面410を形成するようにしても良い。
【0026】
なお、一体化をする場合には、後述するようなプレート120の位置調整が可能なように、凹曲面部材40aおよび凸曲面部材40bの少なくとも一方が、筐体200、プレート120およびネジ300から分離独立した構造である必要がある。
【0027】
図8(b)は、
図7(b)に示した軸ずれ低減部材40の変形例を示す図である。
図8(b)に示す例では、プレート120と一体とされた2つの凸曲面部材40bは、それらの凸曲面の曲率中心460が同一となるように形成されている。このように曲率中心460を一致させることで、プレート120に加わる応力を低減することができる。この構成の場合、各軸ずれ低減部材40の凹曲面部材40aは、ネジ300および筐体200と分離された構成とする必要がある。
【0028】
さらに、ネジ300を締結した際の位置ずれを低減するために、軸ずれ低減部材40の凹曲面410と凸曲面440(
図3参照)との間の摩擦は他の接触面より小さくすることが望ましい。例えば、
図7(b)の場合、軸ずれ低減部材40の凹曲面410および凸曲面440の動摩擦および静止摩擦は、筐体200と高さ調整部材500との動摩擦および静止摩擦、軸ずれ低減部材40の凹曲面部材40aとネジ300の座面との動摩擦および静止摩擦よりも小さいことが望ましい。また、
図7(b)の構成の場合における他の接触面とは、ネジ300の座面と凸曲面部材40bとの接触面、凹曲面部材40aとプレート120との接触面、プレート120と凸曲面部材40bとの接触面、および、高さ調整部材500と筐体200との接触面である。摩擦係数で比較した場合、軸ずれ低減部材40の摺動面における摩擦係数(静止摩擦係数、動摩擦係数)は、他の接触面における摩擦係数よりも小さく設定されていることになる。
【0029】
すなわち、凹曲面部材40aと凸曲面部材40bとの間の摺動が滑らかに行われることで、ネジ300の座面と凹曲面部材40aの平面400との面接触、および、高さ調整部材500と筐体200との面接触を確実に行わせることができ、ネジ300を締め付けたときにプレート120が位置ずれするのを防止することができる。
【0030】
ところで、プレート120を筐体200にネジ固定する際には、撮像面の中心が光軸Jと一致するようにプレート120のx軸方向位置およびy軸方向位置(
図2参照)を調整する必要がある。そのため、本実施の形態では、
図2に示したプレート120の貫通孔130の直径は、ネジ300の軸径よりも十分大きく設定されている。これは筐体200に対するプレート120の相対位置をx方向、y方向に調整するためで、これにより撮像素子100の中心をレンズ250の光軸と一致させることができる。具体的な設定方法については後述する。
【0031】
図9はプレート120の位置調整の一例を示す図であり、
図1の高さ調整部材520の部分の拡大図である。
図1に示す構成の場合、6つの軸ずれ低減部材40の全てにおいて、凹曲面部材40a,凸曲面部材40bが分離配置されている。このような構成の場合、ネジ300を仮止めした後に、プレート120と、プレート120を挟んで設けられた一対の軸ずれ低減部材40とを一体にx軸方向(図の左右方向)に移動して、プレート120の位置調整を行うことができる。
図9(a)は最も左側に一体に移動させた場合を示し、
図9(b)は最も右側に一体に移動させた場合を示す。cはx軸方向の調整可能範囲(最大軸ズレ調整量)を表している。
【0032】
プレート120をx軸方向に移動させることは、プレート120を光軸J(z軸)に対して垂直な方向に移動させることなので、撮像面の光軸方向位置が変化しない。そのため、プレート120の位置調整後にレンズ250のピント調整を行う必要がない。
【0033】
図10は、
図9において凹曲面部材40aを高さ調整部材520と一体とするとともに、その一体とした部材をさらに筐体200に固定した場合(例えば、一体とした場合)を示す。この場合、プレート120の下面側(筐体200側)に配置された凸曲面部材40bは高さ調整部材520と一体とされた凹曲面部材40aに対して図示左右方向(光軸に垂直な方向)に平行移動させることはできない。そのため、プレート120と分離配置されている凹曲面部材40aおよび2つの凸曲面部材40bとを、一体に図示左右方向に移動させることができない。プレート120は、矢印に示すようにプレート面に沿った方向のみに移動させることができる。この場合、プレート120の移動方向は光軸に対して垂直ではないので、プレート120の位置調整後に撮像面の光軸方向位置が変化し、位置調整後にレンズ250のピント調整を行う必要がある。
【0034】
なお、
図9に示す構成の場合には、光軸に垂直な方向に移動可能であると共に、プレート120の面に沿った方向にも移動可能である。そのため、プレート120の面に沿った方向の移動(すなわち、撮像面の光軸方向への移動)を防止するためには、少なくともプレート120の下側(筐体側)に配置された凸曲面部材40bがプレート120と一体に設けられている必要がある。例えば、
図7(b)や
図8(a)のような構成とすれば良い。そうすることで、プレート120は面に沿った方向に移動を避けることができる。この場合、3箇所のネジ固定部の内の少なくとも1箇所において一体にされていれば良い。
【0035】
また、
図9において、下側の軸ずれ低減部材40の凹曲面部材40aが
図10のように筐体200と一体となっていて、かつ、上側の軸ずれ低減部材40の凸曲面部材40bがネジ300と一体となっている場合には、プレート120がその面に沿った方向に移動可能であるためには、プレート120を挟むように配置された凸曲面部材40bおよび凹曲面部材40aはプレート120と分離状態とする必要がある。
【0036】
さらに、上述のようなプレート120の位置調整を行えるように、本実施の形態ではネジ300と貫通孔130との隙間寸法が調整可能範囲cよりも大きくなるように設定されている。プレート120が筐体200の取り付け面に対して平行である場合には、プレート120の貫通孔130の孔径a、ネジ300の軸径b、調整可能範囲cの間に、式「a≧b+c」が満足されるように孔径aを設定する。さらに、筐体200に対するプレート120の傾斜の範囲も考慮して、孔径aは設定される。なお、調整可能範囲cは、筐体200の機械精度やレンズ250および撮像素子100の筐体200への取り付け精度など、設計上発生しうるレンズ光軸と撮像素子100の相対位置精度に基づいて設定される。なお、孔径aを設定する際には、プレート120の傾き等も考慮して決定される。
【0037】
また、
図9に示す構成において、プレート120を光軸に対して垂直な方向に位置調整する場合には、プレート120と共に軸ずれ低減部材40や高さ調整部材500〜520も移動することになる。そのため、軸ずれ低減部材40や高さ調整部材500〜520の貫通孔は、前述した適用形態により、ネジ300の軸径bおよびプレート120の位置の調整可能範囲cの他、プレート120の傾斜、各部材の厚みを考慮して加工する必要がある。
【0038】
例えば、凹曲面部材40aや凸曲面部材40bが筐体200やネジ300の座面と一体化している場合は、それらの貫通孔はほぼ軸径bを考慮すればよいが、筐体200やネジ300の座面と当接しているが分離独立した構成である場合には軸径bとプレート120の調整可能範囲cを考慮する必要がある。更に、凹曲面部材40aや凸曲面部材40bがプレート120と一体化している場合には、軸径b,プレート120の傾斜および凹曲面部材40a,凸曲面部材40bの厚みを考慮する必要がある。また、プレート120に当接しているが分離独立した構成である場合には、軸径b、プレート120の調整可能範囲c、プレート120の傾斜および凹曲面部材40a,凸曲面部材40bの厚みを考慮する必要がある。
【0039】
図2に示した例では、3箇所のネジ固定部の全ての箇所に軸ずれ低減部材40を設けたが、3箇所の内の1または2箇所に軸ずれ低減部材40を設けるようにしても良い。
図11は撮像素子100を側方から見た場合の分解斜視図であり、
図11に示す例では、高さ調整部材500が設けられるネジ固定部のみに軸ずれ低減部材40が設けられている。このように、軸ずれ低減部材40を使用するネジ固定部と軸ずれ低減部材40を使用しないネジ固定部とがある場合、軸ずれ低減部材40によるネジ締結時のプレート120の位置ずれ低減効果を得るためには、以下のようにネジ300の締結順やトルク管理を工夫する必要がある。なお、
図11では、ネジの符号を高さ調整部材500〜520毎に区別して、300,310,320とした。ネジ320はネジ310の紙面裏側に位置しているので図示していない。
【0040】
例えば、
図11のように、ネジ300を締結する部分に軸ずれ低減部材40を使用し、他のネジ固定部には軸ずれ低減部材40を使用しない場合、軸ずれ低減部材40が設けられている箇所のネジ300をより早い順番に、かつ高トルクで締結することが望ましい。すなわち、軸ずれ低減部材40が配置された箇所におけるネジ300の締結トルクp、軸ずれ低減部材40が配置されていない箇所のネジ300の締結トルクqとしたとき、p>qのように設定する。
【0041】
ここで、ネジ300をより早い順番とする理由は、軸ずれ低減部材40を使用した部分の方がネジ300を締めるときのプレート120の位置ずれが小さいからである。また、その箇所のネジ300を他のネジ310,320よりも高トルクで締結する理由は、軸ずれ低減部材40を使用しない他の箇所のネジ310,320を締める際における、プレート120の位置ずれを抑止する効果を向上させるためである。
【0042】
また、各ネジ固定部の撮像面中心からの距離が異なる場合、軸ずれ低減部材40をどの箇所に使用するかは距離に応じて選択される。例えば、軸ずれ低減部材40を使用する箇所におけるネジ止めの際の位置ずれをより低減したい場合には、撮像素子の中心から近い順に軸ずれ低減部材40を使用する箇所を選択するのが望ましい。すなわち、ネジ固定箇所がn箇所(nはn≧2の自然数)である場合、軸ずれ低減部材40は撮像素子100から近いm箇所(mはn−1≧m≧1の自然数)に配置される。
【0043】
また、軸ずれ低減部材40を使用しない箇所におけるネジ止めの際の位置ずれを低減したい場合には、撮像面中心から遠い順に軸ずれ低減部材40を使用する箇所を選択するのが望ましい。すなわち、ネジ固定箇所がn箇所(nはn≧2の自然数)である場合、軸ずれ低減部材40は撮像素子100から遠いm箇所(mはn−1≧m≧1の自然数)に配置される。
【0044】
図14は、本実施の形態の撮像装置における位置ずれ低減効果を示す図である。横軸はX方向の位置ずれを示し、縦軸はY方向の位置ずれを示している。単位はμmである。軸ずれ低減部材40を使用していない従来方式に比べて、位置ずれ量がX方向、Y方向ともに低減できていることが分かる。
【0045】
上述した実施形態では、例えば
図1に示すように、撮像素子100が搭載されるプレート120は、高さ調整部材500〜520および軸ずれ低減部材40を介して筐体200にネジ固定されている。しかし、本発明はこのような構成に限らず、
図12のように撮像素子100が搭載されるプレート120を高さ調整部材500〜520を介してプレート260に固定し、そのプレート260を筐体200に固定する構造の撮像装置にも同様に適用することができる。
【0046】
図12に示す構成の場合、軸ずれ低減部材40はプレート260の表裏両面に配置されている。そのため、回路基板110をプレート120にネジ330により固定する際に位置ずれが発生した場合であっても、最終的にプレート260を筐体200にネジ固定する際に、位置調整を行うことで位置ずれを修正することができる。ネジ300を締め付けてプレート260を筐体200に固定する際の位置ずれは、軸ずれ低減部材40を配置したことにより低減することができる。
【0047】
また、
図1に示す構成ではプレート120の表裏両面に軸ずれ低減部材40を配置したが、
図13のように片側のみに軸ずれ低減部材40を配置する構成であっても、位置ずれの低減を図ることはできる。
【0048】
さらにまた、撮像素子100あるいは撮像素子100を搭載した回路基板110を筐体200やカメラレンズの固定部材に直接固定する場合でも、撮像素子100あるいは撮像素子100を搭載した回路基板110の表裏少なくともいずれか一方に軸ずれ低減部材40を配置することで同等の効果を得ることができる。
【0049】
図1に示した例では、筐体200側から順に撮像素子100、回路基板110、プレート120を配置する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プレート120に開口を形成して光路を空けることで、撮像素子100を搭載した回路基板110をプレート120の筐体200とは反対側の面に固定する構造においても同等の効果が得られる。
【0050】
以上説明したように、撮像装置1は、撮像素子100を保持するプレート120と、撮像素子100に被写体像を結像するレンズホルダ240を保持する筐体200と、プレート120を貫通し、筐体200にプレート120を固定する少なくとも2つのネジ300と、ネジ300が貫通する貫通孔420,450を有し、ネジ300の座面とプレート120との間および筐体200とプレート120との間の、少なくとも一方に配置される軸ずれ低減部材40と、を備える。そして、軸ずれ低減部材40は、ネジ300が貫通する凹曲面410が形成された凹曲面部材40aと、ネジ300が貫通する凸曲面440が形成され、該凸曲面440が凹曲面410に対して摺動可能に当接している凸曲面部材40bとを有する。さらに、ネジ300が貫通するプレート120の貫通孔130の孔径a、ネジ300の軸径b、および、筐体200に対するプレート120の最大軸ずれ調整量cは、式「a≧b+c」を満足するように設定されている。
【0051】
上記軸ずれ低減部材40を備えたことにより、ネジ300の座面と軸ずれ低減部材40との接触状態、プレート120の表裏両面に配置された軸ずれ低減部材40とプレート120との接触状態、軸ずれ低減部材40と高さ調整部材500〜520との接触状態の全てが面接触状態となる。その結果、ネジ締め時におけるプレート120の位置ずれを防止することが可能となり、レンズ250に対して撮像素子100を精度良く位置決めすることができる。
【0052】
さらに、貫通孔130の孔径aを、ネジ300の軸径bおよび最大軸ずれ調整量cに対して「a≧b+c」のように設定することにより、ネジ300を締め付ける前に、撮像素子100の撮像中心が光軸と一致するようにプレート120の位置を調整することができる。
【0053】
なお、凸曲面440と凹曲面410とは互いに相補形状を成し、それらが球面の一部を構成するように設定するのが好ましい。摺動面をそのような面形状とすることにより、軸ずれ低減部材40に滑らかな摺動移動を行わせることができる。さらに、凹曲面410と凸曲面440との間の摩擦係数は、ネジ300の座面、プレート120および筐体200と軸ずれ低減部材40との接触面における摩擦係数以上に設定されているのが好ましい。このように設定することで、上述した面接触をより確実に行わせることができる。
【0054】
プレート120を挟むように配置された各軸ずれ低減部材40の凹曲面部材40aおよび凸曲面部材40bの内、少なくとも撮像素子保持部材側に配置された凹曲面部材40aまたは凸曲面部材40bは、プレート120と一体に形成されているのが好ましい。このような構成とすることにより、ネジ締め付け前の位置調整の際に、プレート120が光軸方向に移動するのを防止できる。
【0055】
また、凹曲面部材40aおよび凸曲面部材40bに形成されたネジ300が貫通する貫通孔420,450を、それらの孔径がプレート120に形成された貫通孔130の孔径a以上に設定することで、ネジ締め付け前の位置調整の際に、プレート120と共に軸ずれ低減部材40も移動させることができ、位置調整が行いやすくなる。
【0056】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、凹曲面410および凸曲面440が球面である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、X方向やY方向などのいずれかの方向に対する位置ずれの許容値が十分に大きい場合、軸ずれ低減部材40の摺動面の形状を凹凸の円筒面としても良い。また、X方向やY方向に対してネジ締めの際の位置ずれを冶具により微小にできる場合には、同様に軸ずれ低減部材40の凹凸曲面を円筒面としても良い。これらの場合、軸ずれ低減部材の設置方向は、円筒の軸が位置ずれの許容値が大きい方向あるいは位置ずれが微小にできる方向と一致させれば良い。
【0057】
また、上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。